(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ワークを把持自在なチャックを備えた水平な主軸を回転自在に備え、前記チャックに把持されたワークの切削加工を行うための複数の加工工具を周囲に備えた複数の工具タレットを回転自在に備えた旋盤であって、前記主軸を回転自在に支持した主軸台のX軸方向の両側に備えたそれぞれの刃物台に、前記工具タレットを、前記主軸の軸心と平行なZ軸方向、このZ軸方向に対して直交する上下方向であるY軸方向及び前記Z軸方向、Y軸方向に対して直交するX軸方向へ移動自在に備え、前記工具タレットの少なくとも一方の工具タレットに、前記チャックに把持していたワークを受け取り可能なワーククランプを備え、この一方の工具タレットの前記ワーククランプに把持されたワーク及び前記チャックに把持されたワークを切削加工するための加工工具を他方の工具タレットに備え、前記ワーククランプは、前記工具タレットの軸心に対して直交する方向の軸心回りに回動可能であることを特徴とする旋盤。
請求項1に記載の旋盤において、前記主軸に対向して備えた心押台を、前記旋盤に着脱可能に備えると共に、当該心押台においてワークを支持自在なワーク支持部材を支持した支持台を、Z軸方向の前後方向で斜め上下方向に上下動自在に備え、Z軸方向の前側で斜めに下降することにより、前記心押台の前記ワーク支持部材は前記主軸に対向した位置から下降する構成であることを特徴とする旋盤。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照するに、本発明の実施形態に係る旋盤1は、箱状のベッド3を備えており、このベッド3上のZ軸方向の一端側(Z軸方向の後側)でX軸方向(左右方向)の中央部には、主軸台5(
図2参照)が一体的に備えられている。この主軸台5には、ワーク(図示省略)を把持自在なスクロールチャックなどのチャック7をZ軸方向の前端部に備えた主軸9が回転自在に備えられている。この主軸9は、前記主軸台5に装着したサーボモータMによって正逆回転されるものである。
【0014】
なお、本明細書において、主軸9の軸心に平行な方向をZ軸方向(前後方向)と称し、主軸9において前記チャック7を備えた側に相当する方向をZ軸方向の前側と称し、反対側をZ軸方向の後側と称す。そして、前記Z軸に対して直交する水平な方向をX軸方向(左右方向)と称し、かつ前記Z軸及びX軸に対して直交する方向をY軸方向(上下方向)と称するものとする。
【0015】
前記主軸台5のX軸方向(左右方向)の両側には、左右の工具タレット11L,11Rが回転自在及び前記X、Y、Z軸方向へ移動自在に備えられている。なお、左右の工具タレット11L,11RをX、Y、Z軸方向へ移動自在かつ回転自在に支持する構成は同一又は左右対称であるから、一方の工具タレット11Rの支持構成のみについて説明し、他方の工具タレット11Lの支持構成については説明を省略する。
【0016】
前記主軸台5のX軸方向の両側方には、
図3に示すように、Z軸方向のガイド部13Gを備えたガイドベース13が前記ベッド3に一体的に備えられている。このガイドベース13は、前記工具タレット11L,11RをZ軸方向、Y軸方向及びX軸方向へ移動自在に支持する刃物台を構成するものである。そして、このガイドベース13の前記ガイド部13Gには、Z軸スライダ15(
図4参照)がZ軸方向へ移動自在に案内支持されている。すなわち、前記ガイドベース13に装着したサーボモータMZによって正逆回転されるZ軸方向(前後方向)のボールネジ17が前記ガイドベース13に回転自在に備えられており、このボールネジ17にZ軸方向へ移動自在に螺合したボールナット19が前記Z軸スライダ15に一体的に連結してある。したがって、前記サーボモータMZによってボールネジ17を正回転、逆回転することにより、前記Z軸スライダ15はZ軸方向に往復動することになる。
【0017】
前記Z軸スライダ15の上部にはX軸方向のガイド部15Gが備えられており、このガイド部15Gには、X軸スライダ21がX軸方向へ移動自在に案内支持されている。すなわち、前記Z軸スライダ15には、当該Z軸スライダ15に装着したサーボモータMX(
図5参照)によって正逆回転されるX軸方向(左右方向)のボールネジ23が前記Z軸スライダ15に回転自在に備えられている。そして、前記ボールネジ23に左右方向へ移動自在に螺合したボールナット25が前記X軸スライダ21に一体的に連結してある。したがって、前記サーボモータMXによって前記ボールネジ23を正逆回転することにより、前記X軸スライダ21は、前記ガイド部15Gに案内されてX軸方向に往復動するものである。
【0018】
前記X軸スライダ21には、上下方向(Y軸方向)のガイド部21Gが備えられており、このガイド部21Gには、Y軸スライダ29が上下動自在に案内支持されている。すなわち、前記X軸スライダ21には、当該X軸スライダ21に装着したサーボモータMYによって正逆回転されるY軸方向(上下方向)のボールネジ31が回転自在に支持されている。そして、前記ボールネジ31に上下動自在に螺合したボールナット33が前記Y軸スライダ29に一体的に連結してある。したがって、前記サーボモータMYによって前記ボールネジ31を正逆回転することにより、前記Y軸スライダ29を上下動することができるものである。
【0019】
前記Y軸スライダ29には、前記主軸9と平行なZ軸方向のタレット軸35(
図4参照)が回転自在に備えられており、このタレット軸35のZ軸方向の前端部に前記工具タレット11Rが一体的に取付けてある。そして、前記工具タレット11Rの正逆回転及び回転割出しを行うためのサーボモータSM(
図2参照)が前記Y軸スライダ29に装着してある。したがって、前記サーボモータSMによって工具タレット11Rを正逆回転することができると共に、工具タレット11Rに装着した適宜の加工工具を、前記チャック7に対応した位置に割出し位置決めすることができるものである。
【0020】
前記左右の工具タレット11L,11Rの外周面には、
図1に示すように、各種の加工工具37が着脱交換可能に備えられている。各種の加工工具37としては、多種形状のバイト等の切削工具を備えた切削加工工具37Aや、ドリルやフライス等の各種の回転切削工具を備えた回転切削加工工具37Bなどがあり、各種の加工工具37はそれぞれユニット化してある。さらに、前記工具タレット11L,11Rに対して着脱交換される加工工具37としては、サブチャック37Cや各種のワーククランプ37D,37E(
図6、7参照)等が含まれるものである。
【0021】
前記サブチャック37Cは、前記主軸9のチャック7と対向したときに、当該チャック7に一端側を把持されているワークの他端側を把持自在であり、かつ前記チャック7と同様にワークを把持して回転自在である。したがって、当該サブチャック37Cを使用することにより、前記チャック7によって一端側を把持して加工を行っていたワークの前記一端側の端面の加工を行うことができるものである。
【0022】
前記ワーククランプ37Dは、内装した流体圧シリンダ等のアクチュエータによって互いに接近離反するよう対向した一対のクランプジョーJOを備えている。そして、
図6に示すように、前記ワーククランプ37Dの一対のクランプジョーJOは、工具タレット11L,11Rの径方向の外側(放射外方向)を指向して互いに開いている。
【0023】
したがって、前記ワーククランプ37Dは、前記チャック7に把持されている棒状のワークを、当該ワークの長手方向に対して直交するX軸方向から把持することができるものである。よって、前記ワーククランプ37Dによってワークを把持した状態にあるときに、他方の工具タレット11Rに備えた加工工具37によって前記ワークの加工を行うことができるものである。すなわち、ワークの、前記チャック7に把持されていた一端側の加工を行うことができるものであり、チャック7に把持されていたワークの把持を解放しての加工を能率よく行い得るものである。
【0024】
また、前記構成において、前記ワーククランプ37Dを、放射方向(径方向)の軸心回りに回動可能に設けることが望ましいものである。このように、ワーククランプ37Dを、径方向の軸心回りに回動可能な構成とすることにより、前記クランプジョーJOによってワークを把持した状態においてワーククランプ37Dを回動することによって、ワークの前後を反転することができることになる。したがって、前記チャック7に一端側を把持されていたワークの前後を反転し、ワークの他端側をチャック7によって把持して加工できることとなり、ワークの加工を能率よく行い得るものである。
【0025】
前記ワーククランプ37Eは、前記ワーククランプ37Dを90°回動して工具タレット11Lに取付けた態様であって、ワーククランプ37Eに備えた一対のクランプジョーは、工具タレット11Lの軸心と平行なZ軸方向に指向してある。なお、前記クランプジョーを、Z軸の前側又は後側を指向した状態に取付けることもできるものである。
【0026】
前述のごとく、工具タレット11L,11Rにサブチャック37Cやワーククランプ37D,37Eを装着した場合には、前記チャック7に把持して加工したワークを、前記サブチャック37やワーククランプ37D,37Eによって把持して直ちに加工可能であるから、能率よく加工を行うことができるものである。
【0027】
なお、前記左右の工具タレット11L,11Rに備えた加工工具37を、チャック7に対応した位置に割出し位置決めして、例えばドリル等の切削加工工具を回転する構成は、例えば特開2003−225801号公報等に記載されているように公知であるから、切削加工工具等を回転するための構成についての詳細な説明は省略する。
【0028】
前記旋盤1における前記ベッド3上であって、前記主軸台5のZ軸方向の前側には、前記チャック7に一端側を把持されたワークの他端側を支持するための心押台39が備えられている。この心押台39は、前記ベッド3に形成した心押台装着部41(
図2参照)に着脱可能であって、全体的構成はユニット化してある。
【0029】
すなわち、心押台39は、前記心押台装着部41に対してボルト等のごとき適宜の取付具を介して着脱可能な箱状の心押台ベッド43を備えており、この心押台ベッド43上には、可動台45がZ軸方向へ移動自在に備えられている。すなわち、前記心押台ベッド43にはZ軸方向のガイド部材47(
図9,10参照)が一体的に備えられており、このガイド部材47に、前記可動台45が移動自在に案内支持されている。
【0030】
前記可動台45をZ軸方向に移動するために、前記心押台ベッド43内にはサーボモータ49が装着してあると共に、プーリ51やタイミングベルト53などからなる動力伝達機構55を介して前記サーボモータ49によって回転されるボールネジ57がZ軸方向に長く、かつ回転自在に備えられている。そして、前記ボールネジ57に移動自在に螺合したボールナット59は前記可動台45に連結してある。したがって、前記サーボモータ49を駆動して前記ボールネジ57を正回転、逆回転することにより、前記可動台45は、ボールナット59を介してZ軸方向に往復動されるものである。なお、前記可動台45には、前記心押台ベッド43の上面開口部や前記ガイド部材47、ボールネジ57の上方を覆う蛇膜などのごときカバー60の一端側が一体的に取付けてある。
【0031】
前記可動台45には、前記チャック7によって一端側を把持されたワークの他端側を支持自在なセンターなどのごときワーク支持部材61を、適宜構成のワーク支持部材やドリルなどのごとき適宜の切削工具などと着脱交換可能に備えた支持台63が備えられている。この支持台63は、前記主軸9に備えた前記チャック7に対向した対向位置と、対向を回避した非対向位置とへ移動可能に備えられている。
【0032】
前記対向位置は、前記チャック7に対してワーク支持部材61が対向してワークの他端側を支持する位置である。すなわち、ワーク支持部材61が前記対向位置に位置するときには、前記主軸9、チャック7の軸心と前記ワーク支持部材61の軸心とは一致した状態にある。そして、前記非対向位置は、前記主軸9、チャック7の軸心と前記ワーク支持部材61の軸心とが不一致の状態の位置へ前記ワーク支持部材61が移動した位置である。
【0033】
前記ワーク支持台63、ワーク支持部材61を、前記対向位置と前記非対向位置へ往復移動するために、前記可動台45には流体圧シリンダなどのごとき往復作動装置65が備えられている。そして、この往復作動装置65において往復作動を行うピストンロッドなどのごとき往復作動子67に前記支持台63がボルトなどのごとき固定具を介して一体的に取付けてある。前記往復作動装置65は、前記往復作動子67が斜め方向に上下動するように備えられている。
【0034】
より詳細には、前記往復作動装置65は、前記主軸9、チャック7の軸心を含む垂直平面内において前記ワーク支持台63、ワーク支持部材61が斜め方向に上下動するように斜めに配置してある。すなわち、前記ワーク支持部材61が前記チャック7に接近する方向(Z軸の後側の方向)であって、かつ斜め上方向へ移動することにより、前記ワーク支持部材61を前記対向位置に位置決めすることができる。そして、前記ワーク支持部材61を、上昇位置からZ軸の前側の方向(チャック7から離反する方向)へ斜めに下降することにより、前記ワーク支持部材61を前記非対向位置へ位置決めすることができるものである。
【0035】
上記構成により、前記チャック7によって一端側を把持したワークの他端側(先端側)を、心押台39に備えたワーク支持部材61によって支持することができる。そして、工具タレット11L,11Rや工具タレット11L,11Rに備えた加工工具37と前記ワーク支持部材61、支持台63が干渉する場合には、ワーク支持部材61を下降して、非対向位置へ退避することにより、容易に干渉を回避することができるものである。
【0036】
既に理解されるように、前記ワーク支持部材61は、Z軸方向の前側へ斜めに下降することによって非対向位置へ退避するものであるから、前記チャック7から心押台39の装着位置までのZ軸方向の寸法を比較的短くした場合であっても、前記チャック7に一端側を把持されたワークから大きく離反することができるものである。したがって、前記チャック7からの、全体構成のZ軸方向の前側への突出寸法、すなわちチャック7からのZ軸方向の前方への突出寸法を小さく抑制することができる。
【0037】
よって、ベッド3のZ軸方向の前側へ作業者が位置して、前記チャック7に対してチャックワークの供給、取り外し等を行う場合、上記供給等を容易に行うことができるものである。また、この際、心押台39におけるワーク支持部材61は斜め方向に上下動する構成であるから、下降しておくことにより、ワーク支持部材61が邪魔になるようなことはないものである。
【0038】
以上のごとき実施形態の説明より理解されるように、主軸9を回転自在に備えた主軸台5のX軸方向の両側に、左右の工具タレット11L,11RをX、Y、Z軸方向へ移動自在に備えた構成であるから、前記主軸台5からのベッド3の、Z軸方向の前側への突出寸法を小さく抑制することができるものである。よって、前記ベッド3のZ軸方向の前側から主軸9に備えたチャック7に対する半製品等のチャックワークの着脱交換を容易に行うことができるものである。なお、前記チャック7に対するチャックワークの着脱交換を、例えばロボット等のワーク供給手段によって行うような場合であっても、Z軸方向の前側への設置が容易になるものである。
【0039】
また、前記構成においては、左右の工具タレット11L,11Rの適宜一方又は両方に、加工工具37の1例としてのサブチャック37Cやワーククランプ37D,37Eを備えた構成であるから、上記サブチャック37、ワーククランプ37D,37Eにワークを把持し、他方の工具タレットに備えた加工工具によって上記ワークの加工を行い得るものである。したがって、主軸9に備えたチャック7に把持してワークの加工を行った後に、上記チャック7に把持されていた部分の加工を行うことができるものである。また、前述したように、ワークのZ軸方向を反転した後、前記チャック7によってワークを再び把持することも可能である。よって、ワークの全周面の加工を能率よく行い得るものである。
【0040】
さらに、前記構成によれば、
図6、7に示すように、心押台39を取り外した状態でもって使用することも可能であり、構成の簡素化を図ることができるものである。
【0041】
また、前記ワーククランプ、前記工具タレットの軸心に対して直交する方向の軸心回りに回動可能であるワーククランプ、前記サブチャックユニットを備えることにより、ワークの全周面の加工を能率よく行い得るものである。
【0042】
前記工具タレットの軸心に対して直交する方向の軸心回りに回動可能であるワーククランプは、ワークを反転させることにより、前記チャックに一端側を把持されているワークの他端側を加工することができるものである。
【0043】
前記工具タレットの軸心に対して直交する方向の軸心回りに回動可能であるワーククランプは、ワークを任意角度で停止させ対向側の工具タレットで加工することにより斜めの加工を実現するものである。