特許第5769182号(P5769182)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5769182車両のブレーキシステムの作用監視のための方法および装置
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  • 特許5769182-車両のブレーキシステムの作用監視のための方法および装置 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769182
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】車両のブレーキシステムの作用監視のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/92 20060101AFI20150806BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   B60T8/92
   B60T8/17 B
【請求項の数】9
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-258031(P2013-258031)
(22)【出願日】2013年12月13日
(62)【分割の表示】特願2001-588062(P2001-588062)の分割
【原出願日】2001年5月30日
(65)【公開番号】特開2014-76799(P2014-76799A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2013年12月13日
(31)【優先権主張番号】100 26 687.8
(32)【優先日】2000年5月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503159597
【氏名又は名称】クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア シーネンファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr−Bremse Systeme fuer Schienenfahrzeuge GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー、ラインホルト
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ラルフ
【審査官】 莊司 英史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−052769(JP,A)
【文献】 特開平02−290732(JP,A)
【文献】 特開平11−005533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/92
B60T 8/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のブレーキシステムの作用監視のための方法であって、運転者によるブレーキ要求時に、
a)車速(v)を決定するステップと、
b)該車速(v)から車両の実減速度(−bist)を算出するステップと、
c)運転者から要求された目標減速度(−bsoll)と前記実減速度(−bist)を比較するステップと、
d)前記目標減速度(−bsoll)と前記実減速度(−bist)との間の偏差が所定の許容差値を超えるとき、個々の車輪もしくは車軸での実ブレーキ力(Fist)を決定して、前記目標減速度(−bsoll)の達成に必要である目標ブレーキ力(Fsoll)と前記実ブレーキ力(Fist)を比較するステップと、
e)前記実ブレーキ力(Fist,i)が前記目標ブレーキ力(Fsoll,i)より小さいとき、個々の車輪もしくは車軸での実滑り値(sist,i)を算出して、これらの個別の実滑り値(sist,i)が、所定の最小滑り値(smin)よりも大きいか否かを検査するステップと、
f)個々の車輪もしくは車軸について前記実滑り値(sist,i前記最小滑り値(sminよりも大きいか否かという検査の結果を合計して合計滑り信号を形成するステップと、
g)前記合計滑り信号が所定の目標滑りに達しないとき、前記ブレーキシステムのブレーキ力制限装置もしくはブレーキ力低減装置の遮断をするステップと、が実施される方法。
【請求項2】
前記車速(v)は、標準常用ブレーキの制御もしくは調整用に設けられた速度測定装置から独立している個別の測定装置によって算出されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
車速はレーダ測定システムによって算出されることを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項記載の方法。
【請求項4】
車速は非制動車輪もしくは非制動車軸の速度の測定によって算出されることを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記所定の目標減速度(−bsoll)と前記実減速度(−bist)を比較する際に、走行区間の上り勾配もしくは下り勾配が考慮されることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ステップg)で車両の滑走防止システムが全部または一部遮断されることを特徴とする、請求項1ないしのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記実ブレーキ力(Fist,i)が測定されることを特徴とする、請求項1ないしのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記実ブレーキ力(Fi)はブレーキシリンダ圧力から評価されることを特徴とする、請求項1ないしのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
車両のブレーキシステムの作用監視のための装置であって、
a)車速(v)の感知用のセンサと、
b)前記車速(v)から車両の実減速度(−bist)を算出するための装置と、
c)運転者から要求された目標減速度(−bsoll)と前記実減速度(−bist)を比較するための比較器と、
d)個々の車輪もしくは車軸での実ブレーキ力(Fist,i)を決定するためのブレーキ力センサと、
e)前記目標減速度(−bsoll)と前記実減速度(−bist)との間の偏差が所定の許容差値を超えるとき、前記目標減速度(−bsoll)の達成に必要な目標ブレーキ力(Fsoll)と前記実ブレーキ力(Fist,i)を比較する比較器と、
f)前記実ブレーキ力(Fist,i)が前記目標ブレーキ力(Fsoll,i)より小さいとき、車輪速度信号(vi)と前記車速(v)とから個々の車輪もしくは車軸の実滑り値(si)を算出し、かつこれらの個々の実滑り値(sist,i)が所定の最小滑り値(sminよりも大きいか否かを検査する装置と、
g)個々の車輪もしくは車軸についての前記実滑り値(sist,i前記最小滑り値(sminよりも大きいか否かという検査の結果を合計して合計滑り信号を発生する結合装置と、
h)前記合計滑り信号が所定の目標滑りに達しないとき、前記ブレーキシステムのブレーキ力制限装置もしくはブレーキ力低減装置を遮断するための信号を発生する装置と、を備えることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特にレール車両のブレーキシステムの作用監視のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキ制御は、運転者により設定されたブレーキ要求を車両減速度に変換するものである。ブレーキ要求から所望の車両減速度が生ずるか否かの監視は、常法により運転者に委ねられている。レール車両において、車掌は、特に、たとえばブレーキシステムの誤りのある応答もしくはブレーキシステムの故障のような危険な状況を感知し、安全ブレーキを開始する役割を有する。事故を回避するため、特に障害物の適時な感知および即時の非常ブレーキ作動が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、車両ブレーキシステムの作用監視のための方法もしくは装置の創造である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、特許請求の範囲第1項および第10項によって解決される。好ましい実施形態および変更形態は、従属請求項から読み取れる。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、運転者のブレーキ要求を設定する車両応答と比較し、複数の応答基準の連続的な検査によって場合により発生する障害を検出し、かつ非常ブレーキもしくは安全ブレーキを開始する考え方を基礎においている。
【0006】
ブレーキ要求がブレーキシステムによって要求された車両減速度に変換されないときは、監視装置が自動的に非常ブレーキを開始する。その際に、たとえば区間の下り傾斜、車輪とレールとの間の粘着値等のような、車両の既存の運転条件もしくは環境条件が考慮され、それによって運転者から要求された車両減速度もしくは物理的周辺条件によって最大限可能な車両減速度が達成される。
【0007】
「自動にブレーキをかけること」は、従来のレール車両において運転者により作動される「信号経路」を介しても、たとえばブレーキ力制限システムもしくはブレーキ力低減システムの遮断のような、付加的にかける方法によっても行うことができる。換言すると、本発明は、従来レール車両において運転者により作動される常法の非常停止ボタンに代わり、非常の場合に自動的に解除し、かつ必要がある場合は付加的に滑走防止システムを遮断する「インテリジェント非常停止ボタン」を設けることを提案する。
【0008】
本発明は、それによってブレーキシステムにおいて検出可能の障害等の場合に可能な限り速い安全ブレーキの開始を可能にする。これは運転者の負担を軽減し、安全性が申し分なく本質的に向上する。また、たとえば滑走防止システムのようなブレーキシステムの誤りのある部分システムを自動的に遮断できることも好ましい。現在提供可能のブレーキ力を、それによって最適に利用することができる。すなわち、運転者が車両を誤って物理的に伝達可能のブレーキ力レベルより小さいブレーキ力レベルで減速することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実際上、電子制御装置もしくはマイクロコンピュータによって実行される、本発明にしたがって実施される方法ステップである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を、一実施例を利用して図面との関連でより詳しく説明する。
【0011】
この方法において、以下の量を入力量として使用する。
v:地上の車両の速度
−bsoll:運転者のブレーキ要求に相当する車両の目標減速度
i:車輪速度
i:車輪もしくは車軸のブレーキ力
【0012】
ブレーキシステムの障害を検出する際、以下の出力信号を発生させることができる。
− 安全ブレーキの自動的開始のための信号および/または
− 滑走防止システムの遮断信号
【0013】
ステップ1で、運転者のブレーキ要求が有るか否かが確認され、ブレーキ要求が無い場合にステップ1が常時反復される。ブレーキ要求が有るときは、ステップ2で車速が、しかもブレーキシステムの機能に関係なく決定される。この車速vの決定は、この場合、ブレーキシステムの作用監視のために専用に設けた個別の測定装置によって行われる。これは、たとえばレーダ速度測定システムによって、または非制動車軸の速度の個別の感知によって行うことができる。車速は、既知の方法で、車輪回転数信号の評価によっても決定することができ、ここではブレーキ制御装置による標準常用ブレーキ用の基準速度を算出するアルゴリズムとは独立して動作する評価アルゴリズムが使用される。
【0014】
ステップ3において、既知の方法で車速vから実車両減速度−bistが計算される。ステップ4で、運転者により設定されたブレーキ要求から目標車両減速度−bsollが算出される。
【0015】
ステップ5で、目標減速度および実減速度が互いに比較され、ステップ6で、目標値と実値との間の偏差が許容可能であるか否かが決定される。実減速度と目標減速度の比較において、たとえば走行区間の上り傾斜のような環境パラメータが考慮される。その際に、たとえば次式の関係を満たしているか否かが検査される。
|−bist|≧|−bsoll|−g*tanα
式中、gは重力加速度の局所係数であり、αは走行区間の傾斜角度もしくは勾配角度である。実車両減速度と目標車両減速度との間の偏差が許容可能とみなされるときは、ステップ1に復帰する。それ以外の場合は、ステップ7でブレーキ力Fist,iが個々の車輪もしくは車軸で算出される。ブレーキ力監視において、ブレーキ力が個々の車輪もしくは車軸で、要求された車両減速度−bsollの達成に必要である値に相当するか否かが検査される。ステップ8で、要求された車両減速度の達成に必要なブレーキ力Fsollがステップ4で決定した要求された車両減速度−bsollの関数として算出される。
【0016】
ステップ9で、実ブレーキ力が目標ブレーキ力より大きいか否か、すなわち次式が当てはまるか否かが検査される。
ist,i≧F(−bsollsoll,i-
【0017】
個々の車輪もしくは車軸でのブレーキ力が測定によって、たとえばブレーキ圧力測定によって算出することができ、またはブレーキシリンダ圧力またはブレーキシステムの他の既知の量に基づいて評価することができる。ブレーキ力が充分であるときは、ステップ1に復帰する。逆に、ブレーキ力が少なすぎるときは、滑り監視が実施される。そのために、ステップ10で初めに個々の車輪もしくは車軸で車輪滑りsist,iが次式にしたがって判定される。
【数1】
【0018】
滑り判定において、基礎となるブレーキシステムの特殊性が場合により考慮される。たとえば、車軸が台車の中で所定の最小滑りに達するときは、各台車ごとに滑走防止制御で充分であるとしてよい。
【0019】
ステップ11で、滑り信号siが最小滑りsminと比較される。すなわち、次式であるか否かが検査される。
【数2】
【0020】
この検査は、各車輪もしくは各車軸に対して時間基準と結合される。ステップ12で、個々の車輪もしくは車軸についての結果が合計命題、すなわち合計滑り信号にまとめられる。ステップ13で、合計滑り信号が所定の目標滑りと比較される。目標滑りに達したときは、ステップ14でステップ1に復帰する。逆に、許容できない偏差があるときは、ステップ15で自動的に安全ブレーキが開始され、かつ/またはステップ16で滑走防止システムが全部または一部遮断される。
図1