特許第5769183号(P5769183)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769183
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】自動車車両シャーシ
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20150806BHJP
   B60K 1/04 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   B62D25/20 EZHV
   B60K1/04 Z
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-521180(P2013-521180)
(86)(22)【出願日】2011年7月11日
(65)【公表番号】特表2013-541452(P2013-541452A)
(43)【公表日】2013年11月14日
(86)【国際出願番号】FR2011051644
(87)【国際公開番号】WO2012010770
(87)【国際公開日】20120126
【審査請求日】2014年4月15日
(31)【優先権主張番号】1056043
(32)【優先日】2010年7月23日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ビスロール, オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】モデュイ, トマ
(72)【発明者】
【氏名】カミュ, ギヨーム
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−286664(JP,A)
【文献】 特開2008−006904(JP,A)
【文献】 特開2009−193942(JP,A)
【文献】 特開2006−137213(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02915452(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
B60K 1/00− 6/12
B60K 7/00− 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの側方スカート(2)の間に位置する中央フロア(3)を固定する水平部(2b)を含む2つの側方スカート(2)と、車両の高くした中央フロア(3)に取り付けられた座席(6)を受ける少なくとも1つの水平ビーム(5)と、中央フロア(3)の水平な主面(3a)の下に位置するエネルギー貯蔵容器ハウジング(4)とを含み、側方スカート(2)の水平部(2b)および中央フロア(3)の主面(3a)が高低差(Z)を有する自動車車両シャーシ(1)において、シャーシ(1)の各側に配置され、かつ中央フロア(3)に固定された平坦部(11)と、水平ビーム(5)の一端に固定された傾斜部(12)とを含む連結要素(10)を含み、傾斜(12)および平坦(11)は、互いに連結され、かつ折り曲げられた一体形で製作され、それぞれ水平ビーム(5)および中央フロア(3)に対する連結要素(10)の固定は、溶接によって行われることを特徴とするシャーシ。
【請求項2】
連結要素(10)が、傾斜(12)および平坦部(11)の間の接合を強化するための強化手段(13)を含む、請求項1に記載のシャーシ。
【請求項3】
傾斜部(12)が、水平ビーム(5)を固定するための少なくとも1つの中央フランジ(12a)を含む、請求項1または2に記載のシャーシ。
【請求項4】
傾斜部(12)が、2つの側方フランジ(12b)と、1つの中央フランジ(12a)とを含、請求項1または2に記載のシャーシ。
【請求項5】
側方フランジ(12b)が、車両の中央フロア(3)の形状および高低差(Z)に合致できる、丸くした切り込み(18)を有する、請求項4に記載のシャーシ。
【請求項6】
中央フランジ(12a)が、連結要素(10)を強化できる少なくとも1つの補強材(19)を含む、請求項4または5に記載のシャーシ。
【請求項7】
傾斜部(12)が、電気ケーブル用の通路(20)を含む、請求項1ないし6のいずれか一項に記載のシャーシ。
【請求項8】
各連結要素(10)が、傾斜部(12)および対応する側方スカート(2)の垂直部(2a)の間の隔たり(D)を維持させるように固定される、請求項1ないし7のいずれか一項に記載のシャーシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車車両用、特に電気駆動またはハイブリッド駆動車両用シャーシの分野に属する。電気駆動またはハイブリッド駆動車両に十分な航続距離を確保するために、バッテリを搭載する必要がある。これらのバッテリの体積は、ガソリンタンクなど、従来のエネルギー貯蔵容器が占める体積よりも著しく大きい。
【背景技術】
【0002】
1つの解決法は、乗客席下の画定された空間を利用するというもので、その際、その空間を居室から隔離するようにフロアの輪郭に変更を加える。そうすると、乗客席はフロアの高くなったところに直接載ることになる。座席の高さは、熱機関によって駆動されるように製造される同じレベルの車両の座席の高さと同じか、またはさらに高くなり得る。
【0003】
そのため、特許文献1には、前後の乗客席の下の空間が居室から切り離されてバッテリ用に確保されている電気駆動自動車車両用シャーシ構造が記載されている。座席の前後に垂直嵩上げプレートが配置される。持ち上げられたフロア台座部位は、それら垂直嵩上げプレートの間で前後に延び、左右には、車体の両側面にそれぞれ固定された側方嵩上げサポートの間に延びる。
【0004】
後部乗客席は、側方嵩上げサポートが組み立てられる車体の固定された側面によって囲われなければならず、このような構造は3ドア車両に適用することができない。さらに、同じ車両を電気駆動モデルおよび熱機関駆動モデルに利用しようとする場合に、フロア部材を車両のサイドレールに組み立てることを可能にするための溶接ポイントの線が電気車両および熱機関車両に関して同じ幾何学的形状になることができない。そのため、この2種類の車両を製造するために異なる2つの溶接線を用意しなければならず、開発コストも製造コストもかさむことになる。
【0005】
特許文献2は、後部が、中央部に対して高くされ、両方の部分が、サポートによって互いに連結される自動車車両のフロアを記載する。サポートは、中央フロアまたは車両のシャーシに2つの側方サポートを介して固定された2つの横材を含む。
【0006】
このような構造は、中央フロアが熱機関自動車車両のフロアに対して高くされる電気自動車車両またはハイブリッド自動車車両には関係がなく、シャーシおよび座席を受ける水平ビームの間で応力を伝達することを可能にしない。
【0007】
最後に、中央フロアを高くすると、座席を受ける水平ビームを移動せざるを得ない。これらの水平ビームは、車両に対する側方衝撃の際に応力を伝達するように、中央フロアおよび2つの側方スカートに従来固定される。したがって中央フロアを高くすると、水平ビームを一段と高くすることになり、水平ビームはその場合、側方スカートの側壁ともはや直接接触せず、車両のシャーシの剛性を低くする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平07−156826号公報
【特許文献2】仏国特許出願公開第2915452号明細書
【発明の概要】
【0009】
本発明は、多数の共通した構成要素および生産手段を使用して、電気駆動車両および熱機関駆動車両を並行して生産することを可能にする、電気車両用、または広いエネルギー貯蔵容器空間を必要とする他の車両用のシャーシを提案することを目的とする。
【0010】
本発明は、強化され、かつ側方衝撃の際に応力を伝達可能である構造を有するかかるシャーシを提案することも目的とする。
【0011】
一実施形態において、本発明は、2つの側方スカートの間に位置する中央フロアを固定する水平部を含む2つの側方スカートと、車両の高くした中央フロアに取り付けられた座席を受ける少なくとも1つの水平ビームと、中央フロアの水平な主面の下に位置するエネルギー貯蔵容器用ハウジングとを含む自動車車両シャーシに関する。側方スカートの水平部および中央フロアの主面は、エネルギー貯蔵容器用ハウジングの存在のために、高低差を有する。
【0012】
自動車車両シャーシは、シャーシの各側に配置され、かつ中央フロアに固定された平坦部と、水平ビームの一端に固定された傾斜部とを含む連結要素を含み、前記傾斜および平坦部は、互いに連結され、かつ折り曲げられた一体形で製作され、それぞれ水平ビームおよび中央フロアに対する連結要素の固定は、溶接によって行われる。
【0013】
連結要素の使用は、座席を受ける水平ビームおよび側方スカートの間の応力伝達を確実に行えるようにする。このようにして、熱駆動自動車車両用シャーシを構成する要素は、中央フロアを一段と高くした、電気駆動またはハイブリッド駆動車両に関して実質的な変更をせずに使用できる。
【0014】
連結要素は、折り曲げられた、型打ちされた、または溶接された金属板で実施できる。
【0015】
傾斜部は、例えば水平ビームの内面に固定されてもよい。
【0016】
好ましくは、連結要素は、例えばリブのような、傾斜および平坦部の間の接合の強化手段を含む。
【0017】
傾斜部は、水平ビームに対する少なくとも1つの固定フランジを含んでもよく、かつ好ましくは、2つの側方フランジと、1つの中央固定フランジとを含んでもよい。
【0018】
側方フランジは、車両の中央フロアの形状および高低差に合致できる、丸くした切り込みを有することができる。
【0019】
好適には、中央フランジは、連結要素を強化できる少なくとも1つの補強材を含む。
【0020】
傾斜部は、電気ケーブル用の通路をさらに含んでもよい。
【0021】
好適には、各連結要素は、シャーシを車両の車体に対して溶接する装置へのアクセスを残すように、傾斜部および対応する側方スカートの垂直部の間の隔たりを維持させるように固定される。
【0022】
本発明のその他の目的、特徴および利点は、専ら非限定的な例として与えられ、かつ添付図面を参照してなされる以下に続く明細書を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明によるシャーシの一部の略断面図である。
図2図1に示した連結要素のうちの1つの斜視図である。
図3図1のシャーシの一部を斜め上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示されるように、シャーシ1の一部は、2つの側方スカート2によって側方に画定されている。「シャーシ」とは、車両のエンジン、居室および車体を支持する平行6面体タイプのあらゆる集合体を意味する。側方スカート、または荷枠は、積荷を維持するための自動車車両用シャーシの側方部を指す。
【0025】
各側方スカート2は、中央フロア3を固定する水平部2bによって互いに連結された2つの垂直部分2aを含む。側方スカート2は、折り曲げられた、または型打ちされた金属板で実施できる。中央フロア3は、水平な主面3aと、中央フロア3を側方スカート2の水平部2bに対して固定するための水平な側方面3bとを含む。2つの水平面3aおよび3bは、バッテリ4の埋設のために中央フロア3の下に設けられた、ハウジングの存在によって生じた高低差Zを有する。
【0026】
水平な横断ビーム5は、中央フロア3の水平な主面3aに取り付けられる。各水平ビーム5は、種々の電気ケーブル(図示せず)の通過を容易にするようにU字形のくぼんだ断面の金属板で製作される。さらに、これらの水平ビーム5は、座席および/または腰掛け6の中央フロア3の固定を可能にする。図1に示したように、座席6は、背もたれ7と、座部8とを含み、かつ案内レール9に対して取り付けられ、案内レール9は、水平ビーム5に対して直接固定される。座部8は、一般的に剛性材料で製作されるサポート8aと、軟質の合成材料で製作される、サポート8aに組み込まれたクッション8bとからなる。2列の座席6を含む車両において、水平ビーム5は、一般的に2つである。
【0027】
水平ビーム5および側方スカート2は、シャーシ1の各側に配置された連結要素10によって互いに連結される。図2に見られる各連結要素10は、中央フロア3に固定された平坦部11と、水平な横断ビーム5の一端に固定された傾斜部12とを含む。平坦11および傾斜12部の両方は、折り曲げられた一体形で、または互いに溶接された2つの部品で実施できる。しかしながら、剛性のため、一体形の使用が、好適である。示した実施例において、連結要素10の剛性をさらに補強するように、2つの強化リブ13が、平坦11および傾斜部12の接合レベルに形成される。
【0028】
連結要素10の各側に連結された各水平な横断ビーム5は、ショックアブソーバの役割を果たし、側方衝撃の場合に、エネルギーを消散させ、かつ応力を配分して乗員を保護できるようにする。
【0029】
各連結要素10の傾斜部12は、図2に見られる1つの中央フランジ12aおよび2つの側方フランジ12bを含む、3つのフランジ12a、12bを媒介として水平ビーム5の内面に固定される。フランジ12a、12bの水平ビーム5の外面に対する固定を検討できることに留意されたい。3つのフランジ12a、12bは、金属板で実施された傾斜部12の切断および折曲げによって実施される。3つのフランジの存在は、この傾斜部12の実施を容易にすることを可能にする。しかしながら、水平ビーム5に対する唯一の固定フランジ12aを含む傾斜部12を検討できることに留意されたい。それぞれ水平ビーム5および中央フロア3に対する連結要素10の固定は、好ましくは溶接によって行われる。
【0030】
一旦シャーシ1が組み立てられると、側方スカート2は、車両の車体14に溶接される。連結要素10の傾斜部12の傾斜、および側方スカート2に対するこの連結要素10の位置のために、図1に非常に概略的に表した溶接装置15の挿入を可能にするように、連結要素10、および側方スカート2の垂直部2aの間に隔たりDが残される。溶接装置15は、例えば溶接用ホルダであってもよく、かつ製造するシャーシのタイプ(熱駆動または電気駆動)に関わらず、垂直部2aを車両の車体14に溶接することを可能にする。
【0031】
連結要素10は、図2に詳述する。示したように、連結要素10は、長方形断面の平坦部11と、3つの固定フランジ12a、12bを含む傾斜部12とを含む。長方形の平坦部11は、2つの切り込み16を含む。切り込み16のない長方形または正方形の基部を含む平坦部11を同様に検討できることに留意されたい。
【0032】
2つの切り込み17が、2つの側方フランジ12bの各々の折曲げを可能にするように、中央フランジ12aの両側に実施される。側方フランジ12bの各々は、図1に示した中央フロア3の形状および高低差Zに従うように、丸められた切り込み18を含む。
【0033】
2つの強化リブ13は、連結要素10の剛性を補強するように、平坦部11および傾斜部12の接合レベルで、金属板を外部に向かって変形することによって形成できる。同じように、補強材19は、中央フランジ12aを強化するように、傾斜部12および中央フランジ12aの間の接合レベルで実施できる。補強材19は、金属板を内部に向かって変形することによって実施できる。
【0034】
示した例において、連結要素10の傾斜部12は、水平ビーム5を通過する電気ケーブル(図示せず)を受けることに適した通路20を含む。通路20は、幾つものケーブルの通過を容易にするために、細長い孔の形状を有してもよい。かかる通路20は、他のあらゆる形状を有し得ること、およびケーブルを中央フロア3に沿って固定するように、ケーブル固定装置を固定することに役立ち得ることに留意されたい。
【0035】
図3は、図1のシャーシ1の一部の部分斜視図を示す。シャーシ1の一部は、側方スカート2に固定された中央フロア3を含む。
【0036】
図3に示したように、水平ビーム5は、金属板の型打ちによって実施された各側の周辺フランジ部5aを含む。各周辺フランジ部5aは、中央フロア3に対して溶接されるための溶接帯になる。連結要素10は、水平ビーム5に対し、フランジ12a、12bを介して、かつ中央フロア3に対し、平坦部11を介して溶接ポイント10aによって固定される。
【0037】
シャーシ1の組立は、最初に中央フロア3を側方スカート2に対して固定することからなる。次に、連結要素10を水平な横断ビーム5に対して、例えば溶接によって固定し、次に水平ビーム5および連結要素10からなるアセンブリを中央フロア3に固定すべきである。
【0038】
水平ビーム5および連結要素10が、中央フロア3を媒介として側方スカート2に固定される時、側方スカート2は、溶接装置15によって車両の車体14に固定できる。溶接装置15は、それぞれシャーシ1および車両の車体の一部をなす、金属板の2つの部分2aおよび14の両側に設置されるようになる、2つの分岐を有する溶接用ホルダ15aからなってもよい。ホルダの一方15aは、車体14の外部に位置する。他方のホルダ15aは、要素12および垂直部2aの間に存在する隔たりDのために、側方スカート2の垂直部2a、および同じ側に位置する連結要素12の間を通過できる。
【0039】
ここまで記載した発明により、優れた応力移転が、側方スカート、および高くしたフロアにして取り付けられた1つまたは複数の水平な横断ビームの間に得られる。
【0040】
フロアの高くした位置を考慮すると、側方スカートまで広がるであろう、型打ちによって水平な横断ビームを実施することは、可能ではない。水平な横断ビームの各端部に対する2つの連結要素の付加は、アセンブリの剛性を増加させ、かつ側方衝撃の場合に応力伝達を保証して、この困難を解決できるようにする。
【0041】
さらに、熱駆動自動車車両用のシャーシを構成する要素は、中央フロアが一段と高くされた、電気駆動またはハイブリッド駆動車両に、実質的な変更なしで使用できる。同様に、電気駆動車両と熱駆動車両を生産するために、同じ自動組立ラインが使用できる。
図1
図2
図3