(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769193
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】計量容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/20 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
B65D47/20 K
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-146771(P2011-146771)
(22)【出願日】2011年6月30日
(65)【公開番号】特開2013-14346(P2013-14346A)
(43)【公開日】2013年1月24日
【審査請求日】2013年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100113169
【弁理士】
【氏名又は名称】今岡 憲
(72)【発明者】
【氏名】坂本 智
(72)【発明者】
【氏名】角田 義幸
【審査官】
八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3113217(JP,U)
【文献】
実開昭54−153542(JP,U)
【文献】
特開平11−115960(JP,A)
【文献】
米国特許第02904230(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D35/44−35/54、39/00−55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口頸部(4)を起立する容器体(2)と、
上記口頸部(4)の外面に嵌合させた第1周壁(12)の上面を第1蓋板(16)で閉塞し、この第1蓋板(16)のうち中心から離れた偏心位置に、当該蓋板の一部を陥没してなる有底の計量筒部(18)と連通口(20)とを相互に距離を存して形成した下蓋部材(10)と、
上記第1周壁(12)の外面に回動自在に嵌合した第2周壁(26)内に、上記第1蓋板(16)と接する第2蓋板(32)を横設した上蓋部材(24)と、
を具備し、
上記第2蓋板(32)は、計量筒部(18)との対向位置から起立する有頂の収納筒部(34)を有するとともに、この収納筒部(34)から連通口(20)へ周方向に延びる第2蓋板部分を隆起させて隆起部(36)に形成し、この隆起部(36)の裏面で形成する連通溝(37)を介して連通口(20)と収納筒部(34)の内部と連通させ、さらに収納筒部(34)及び隆起部(36)を除く第2蓋板部分から吐出筒部(38)を起立するとともにこの吐出筒部(38)の下端を第1蓋板(16)で密閉しており、
上記下蓋部材(10)に対して上蓋部材(24)を一方向に回動することで吐出筒部(38)と計量筒部(18)とが上方から見て重なるように設けたことを特徴とする、計量容器。
【請求項2】
上記連通溝(37)は連通口(20)から収納筒部(34)へ近づくに従って徐々に深くなるように形成したことを特徴とする、請求項1記載の計量容器。
【請求項3】
上記吐出筒部(38)が計量筒部(18)と対向している吐出操作モード、及び、収納筒部(34)が計量筒部(18)と対向している計量操作モードにおいて、上蓋部材(24)を係止するように形成した位置決め手段(P)を有することを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の計量容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計量容器、例えば紛体用の計量容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種容器として、容器体の口頸部の上に有頂・有底の計量室を設け、計量室の底壁の中央部分をテーパ状に隆起させてこの隆起部の上端に容器体側との連通口を開口し、計量室の頂壁から連通口を囲む計量筒部を垂下し、計量筒部の外側の頂壁部分に連通口を開口したものが知られている(特許文献1)。
【0003】
この容器を上下反転させることで連通口から計量筒部内に一定量の紛体が入り、次に正立状態に戻したときに計量筒部の周壁とテーパ状隆起部の間に蓄積し、再び容器を反転させて、その紛体を連通口から外方へ取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−110063
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成では、容器を正立状態に戻したときに、計量筒部内に計量された紛体の一部が連通口を介して容器体に戻すので、所要量の紛体を取り出すために計量筒部の内容積をどの程度の大きさとするべきかということを設定しにくい。
【0006】
本発明の目的は、所要量の内容物を確実に計量することが可能な計量容器を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の手段は、口頸部4を起立する容器体2と、
上記口頸部4の外面に嵌合させた第1周壁12の上面を第1蓋板16で閉塞し、この第1蓋板16のうち中心から離れた偏心位置に、当該蓋板の一部を陥没してなる有底の計量筒部18と連通口20とを相互に距離を存して形成した下蓋部材10と、
上記第1周壁12の外面に回動自在に嵌合した第2周壁26内に、上記第1蓋板16と接する第2蓋板32を横設した上蓋部材24と、
を具備し、
上記第2蓋板32は、計量筒部18との対向位置から起立する有頂の収納筒部34を有するとともに、この収納筒部34から連通口20へ周方向に延びる第2蓋板部分を隆起させ
て隆起部(36)に形成し、この隆起部36の裏面で形成する連通溝37を介して連通口20と収納筒部34の内部と連通させ、さらに収納筒部34及び隆起部36を除く第2蓋板部分から吐出筒部38を起立するとともにこの吐出筒部38の下端を第1蓋板16で密閉しており、
上記下蓋部材10に対して上蓋部材24を一方向に回動することで吐出筒部38と計量筒部18とが上方から見て重なるように設けた。
【0008】
本手段は、
図1〜3の如く第1蓋板16に計量筒部18と連通口20とを有する下蓋部材10、並びに第2蓋板32に収納筒部34と隆起部36と吐出筒部38とを有する上蓋部材24を提案している。
図1の状態(以下「計量操作モード」という)で収納筒部34と計量筒部18とが対向しており(
図2参照)、吐出筒部38の下端は第1蓋板16で密閉されている。
図7の状態(以下「吐出操作モード」という)では計量筒部18と吐出筒部38とが連通可能に対向している(
図9参照)。操作を簡単に説明すると、
図1の状態から容器を上下反転させると連通口20から連通溝37を経て収納筒部34へ内容物が流れ込み(
図11(A)参照)、次に容器を正立状態に戻すと収納筒部34内の内容物が計量筒部18内に流入させる(
図11(B)参照)。次に上蓋部材24を回動させると、余分な内容物が収納筒部34により切去されるとともに一定量の内容物が計量筒部18内に残り、また吐出筒部38が計量筒部18との対向位置に移動する(
図11(C)参照)。しかる後に再び容器を上下反転すればよい。
【0009】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ
上記連通溝37は連通口20ら収納筒部34へ近づくに従って徐々に深くなるように形成した。
【0010】
本手段では、
図2に示すように上記連通溝37の深さが収納筒部34に近づくに従って漸増するようにしている。これにより内容物が収納筒部34内に流れ込み易くしている。
【0011】
第3の手段は、第1の手段又は第2の手段を有し、かつ
上記吐出筒部38が計量筒部18と対向している吐出操作モード、及び、収納筒部34が計量筒部18と対向している計量操作モードにおいて、上蓋部材24を係止するように形成した位置決め手段Pを有する。
【0012】
本手段は、吐出操作モードと計量操作モードとの切り替えが容易とするための位置決め手段Pを提案している(
図4参照)。この位置決め手段Pは、第1周壁12及び第2周壁26の一方に設けた周方向に長い係合凹部と、他方に設けられかつ係合凹部内に挿入された位置決め用の凸部(ストッパ)とで形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
第1の手段に係る発明によれば、計量筒部18及び連通口20を有する下蓋部材10と、吐出筒部38及び収納筒部34を有する上蓋部材24とを具備し、
図11(B)の状態から上蓋部材24を回動することで、計量筒部18内に入らない余分な内容物を収納筒部34の筒壁で切去するから的確な計量が可能となり、連通口20から連通溝37を経由して収納筒部34へ内容物を導くから操作が簡単である。
第2の手段に係る発明によれば、上記連通溝37は連通口20から収納筒部34へ近づくに従って徐々に深くなるように形成したから、連通溝37内を内容物が流れ易い。
第3の手段に係る発明によれば、下蓋部材10に対する上蓋部材24の位置合わせを確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る計量容器の計量操作モードでの平面図である。
【
図2】
図1の容器のII−II方向の縦断面図である。
【
図3】
図1の容器のIII−III方向の縦断面図である。
【
図7】
図1の容器の吐出操作モードでの平面図である。
【
図8】
図1の容器のVIII−VIII方向の縦断面図である。
【
図9】
図1の容器のIX−IX方向の縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1から
図11は、本発明の第1の実施形態に係る計量容器を示している。この計量容器は、
図3の如く容器体2と下蓋部材10と上蓋部材24とで構成される。これらの部材は特に断らない限り合成樹脂で形成することができる。
【0016】
容器体2は、胴部から起立する広口の口頸部4を有する。この口頸部4の外面には係止リブ6を周設している。
【0017】
下蓋部材10は、上記口頸部4に対して回動不能に嵌合した第1周壁12を有し、この第1周壁12の上端に第1周壁12の上面を閉塞する水平な第1蓋板16を連結している。
【0018】
上記第1周壁12の内面には上記係止リブ6と係合する凹溝を周設しており、下蓋部材10の不意の上方抜け出しを防止している。また第1周壁12の内面と口頸部4の外面とには図示しない回り止め手段(係合用の凹部と凸部など)を設ける。
【0019】
図示の第1周壁12は、大外径の下半部12aから上向きの段部13を介して小径の上半部12bを突出している(
図3の左半図参照)。そして第1周壁12の下半部12aの周方向の一部に段部13の上面をくぼませて係合凹部14を横設している(
図3右半図参照)。
【0020】
上記第1蓋板16は、
図1に点線で示す如く、中心Oから離れた偏心位置に計量筒部18と連通口20とを有する。
【0021】
上記計量筒部18は、第1蓋板16を凹没させた有底筒形に形成している。図示例では、計量筒部18の底部を丸底に形成しているが、その構造は適宜変更することができる。
【0022】
上記連通口20は、計量筒部18から離して設ける。図示の連通口20は、
図1に点線で示す如く計量筒部18の近傍から周方向に離れる方向に延び、かつ延長方向先端側を細く形成している。計量筒部18の全体形状を後述の隆起部の形状に対応させるためである。もっともその形態は適宜変更することができる。
【0023】
上記連通口20及び計量筒部18は、第1蓋板16の中心Oとして上蓋部材24を回動させることで後述の上蓋部材24の収納筒部34が連通口20及び計量筒部18のいずれとも向き合うことが可能な位置に配置される。但し、連通口20と計量筒部18とは同一直径上には配置しないものとする。後述の計量操作モードで後述の吐出筒部38の下端を第1蓋板16で閉塞することを可能とするためである。
【0024】
上蓋部材24は、上記第1周壁12に一方向及び反対方向への回動自在に嵌合させた第2周壁26と、第2周壁26の内側に横設するとともに第1蓋板16の上面に当接させた第2蓋板32とを有する。
【0025】
上記第2周壁26は、図示例では、
図3の如く上記第1周壁12の外面に嵌合させた下部26aを有し、この嵌合箇所から下蓋部材10の上方へ延長している。上蓋部材24を回動させるときには、この第2周壁26を把持すればよい。第2周壁26の上端部には切欠き28を設ける。
【0026】
上記第2周壁26からは位置決め用ストッパ30を下方に突出する。この位置決め用ストッパ30を係合凹部14内に挿入して、位置決め手段Pを構成する。すなわち、位置決め用ストッパ30が横長の係合凹部14の一方端部に突き当たるときには
図1に示す状態(計量操作モード)になり、他方端部に突き当たるときには
図7に示す状態(吐出操作モードという)になるように形成する。もっとも位置決め手段Pの構成は適宜変更することができる。例えば第1周壁12の外面及び第2周壁26の内面のうち一面に係合凹部を設け、他面から係合凹部と係合する位置決め用ストッパを突出しても構わない。
【0027】
上記第2蓋板32は、
図1の計量操作モードで計量筒部18に対向する収納筒部34と、上蓋部材24を回動することにより計量筒部18に重なり合う位置(ほぼ回転対称な位置)にある吐出筒部38とを有する。さらに第2蓋板32は、収納筒部34と連続する隆起部36を有している。これら収納筒部34と吐出筒部38と隆起部36との形成個所を除いて平坦であり、上記第1蓋板16の上面に密着している。
【0028】
上記収納筒部34は、
図1の状態で容器を上下反転することにより連通口20から入る内容物を収納する役割を有する。収納筒部34は、計量筒部18上方の第2蓋板部分を有頂筒形に隆起させてなる。
【0029】
上記収納筒部34の内容積は、計量筒部18の内容積と同じかそれ以上とする。
【0030】
また
図3に示すように収納筒部34の隆起部36側の筒壁部分の下半部には連絡口35を切り欠いている。
【0031】
上記隆起部36は、
図1の計量操作モードにおいて収納筒部34の連絡口35から連通口20へ周方向に延びている。そして隆起部36の裏面で
図3の如く連通溝37を形成する。
【0032】
上記連通溝37は、図示例では、連通口20からへ近づくに従って深くかつ広くなっている。紛体などの内容物が内を容易に流れるようにするためである。しかしその構造は適宜変更することができる。
【0033】
上記吐出筒部38は、計量筒部18内で計量された内容物を外部へ吐出する役割を有する。吐出筒部38は、計量筒部18上方の第2蓋板部分を開孔し、この孔縁から上端開口の筒壁を起立してなる。
【0034】
吐出筒部38の下面は、計量操作モードでは第1蓋板16の下面で閉塞されているものとする(
図1参照)。また図示例では、吐出筒部38と収納筒部34と第2周壁
26とをほぼ同じ高さとし、かつ吐出筒部38と隣接する第2周壁26の上端部分に上述の切欠き28を設けている。
【0035】
この構成によれば、
図1の計量操作モードで計量容器を上下反転させると、
図11(A)に示すように容器体2内の内容物が連通口20から連通溝37を経て収納筒部34内へ入る。仮に連通溝37を設けないとすると、この段階でまず収納筒部34を連通口20と対向させ、次に収納筒部34が計量筒部18との対向位置まで回動させるという作業が必要となる。本発明の構成の構成により操作が簡単となる。
【0036】
そして容器を正立状態に戻すと、
図11(B)の如く収納筒部34内の内容物が計量筒部18内に流れ落ちる。図示例では、収納筒部34の内容積が計量筒部18の内容積よりも大きいので、一部の内容物は計量筒部18内に入り切らずに収納筒部34内に残っている。上蓋部材24を下蓋部材10に対して反対方向に回動させると、収納筒部34の筒壁が残りの内容物をすり切るように作用する。そして残余の内容物は収納筒部34とともに移動して、連通口20から容器体2内へ戻され、かつ計量筒部18内に定量の内容物が計量される。これとともに吐出筒部38が計量筒部18との対向位置へ移動する(
図11(C)参照)。
【0037】
そして再び容器を上下反転させると、計量筒部18内の一定量の内容物が吐出筒部38を介して吐出される。
【符号の説明】
【0038】
2…容器体 4…口頸部 6…係止リブ
10…下蓋部材 12…第1周壁 12a…下半部 12b…上半部
13…段部 14…係合凹部 16…第1蓋板
18…計量筒部 20…連通口
24…上蓋部材 26…第2周壁 26a…下部 28…切欠き 30…位置決め用ストッパ
32…第2蓋板 34…収納筒部 35…連絡口 36…隆起部 37…連通溝 38…吐出筒部
O…中心 P…位置決め手段