特許第5769216号(P5769216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5769216金属膜を有する構造体の製造方法、それに用いる母型及びそれにより製造される構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769216
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】金属膜を有する構造体の製造方法、それに用いる母型及びそれにより製造される構造体
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/38 20060101AFI20150806BHJP
   C23C 14/02 20060101ALI20150806BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20150806BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20150806BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   B29C33/38
   C23C14/02 Z
   C23C14/14 B
   C23C14/14 G
   B29C59/02 B
   B29C33/42
【請求項の数】11
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-40990(P2014-40990)
(22)【出願日】2014年3月3日
(62)【分割の表示】特願2009-552564(P2009-552564)の分割
【原出願日】2009年2月9日
(65)【公開番号】特開2014-144639(P2014-144639A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2014年3月24日
(31)【優先権主張番号】特願2008-29631(P2008-29631)
(32)【優先日】2008年2月8日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2008-233873(P2008-233873)
(32)【優先日】2008年9月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】803000115
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】谷口 淳
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2−303820(JP,A)
【文献】 特開平2−73987(JP,A)
【文献】 特開2002−20129(JP,A)
【文献】 特開2005−239519(JP,A)
【文献】 特開2004−338999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/38
B29C 33/42
B29C 59/02
C23C 14/02
C23C 14/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸パターンが形成されている基材の表面に、アルミニウムを含む第1の金属膜を成膜した母型を用意する工程と、
前記第1の金属膜上に第2の金属膜を成膜する工程と、
前記第2の金属膜に支持部材を接着させる工程と、
前記支持部材とともに前記凹凸パターンが反映された前記第2の金属膜を前記第1の金属膜から剥離させる工程と、
を含む金属膜を有する構造体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の金属膜がアルミニウム酸化物、アルミニウム窒化物又はアルミニウム炭化物を含む請求項1に記載の金属膜を有する構造体の製造方法。
【請求項3】
前記第2の金属膜が、Au、Ag、Cu、Al、及びPtからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属を含む膜である請求項1又は請求項に記載の金属膜を有する構造体の製造方法。
【請求項4】
前記第2の金属膜を、蒸着、塗布、又はめっきによって成膜する請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の金属膜を有する構造体の製造方法。
【請求項5】
前記第1の金属膜と前記第2の金属膜との間に、離型剤を付与する工程をさらに含む請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の金属膜を有する構造体の製造方法。
【請求項6】
前記基材として、ガラス状炭素からなる基材を用いる請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の金属膜を有する構造体の製造方法。
【請求項7】
前記凹凸パターンが、先端に向けて縮径する形状を有する突起群からなるパターンである請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の金属膜を有する構造体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の方法により製造された前記第2の金属膜を有する構造体。
【請求項9】
表面に凹凸パターンが形成されている基材と、
前記凹凸パターンが形成されている基材の表面に成膜されたアルミニウムを含む金属膜と、を有する母型。
【請求項10】
前記凹凸パターンが、先端に向けて縮径する形状を有する突起群からなるパターンである請求項に記載の母型。
【請求項11】
前記金属膜が、アルミニウム酸化物、アルミニウム窒化物又はアルミニウム炭化物を含む請求項9又は請求項10に記載の母型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属膜を有する構造体の製造方法、それに用いる母型及びそれにより製造される構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスや樹脂等の基板上にμmオーダー、あるいはnmオーダーの微細な配線パターンを形成する方法の一つとして、形成すべき微細なパターンに対応した型(原版)を用いて転写を行う方法がある。
例えば、ガラス基板上に導電性膜を形成し、導電性膜上にフォトレジストで所定のパターンを形成した後、導電性膜が露出する部分にめっき膜を形成し、さらにそのめっき膜にベースフィルムを貼り合わせてめっき膜を転写させる方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、所定の凹凸パターンが形成されたモールドに離型剤を塗布した後、離型剤を介して金(Au)蒸着膜を形成し、凸部上に形成されたAu膜を基板に押し付けて転写させる方法が開示されている(非特許文献1参照)。
【0004】
さらに、図12に示すような転写方法も提案されている。Si等の基板30上にAu膜32を形成し、一方、PDMS(ポリジメチルシロキサン)で作製した原版36の凹凸パターン面にアルカンチオール膜34を設け、凸部上のアルカンチオール膜34をAu膜32に貼り合わせて転写する。次いで、Au膜32に対し、反応性イオンエッチング(RIE)を施すことにより、アルカンチオール膜34でマスクされていない箇所のAu膜32と基板30とがエッチングされ、マスクされていた部分にAu膜32のパターンが残留する。
【0005】
また、図13に示すように、PDMS製の原版36の凹凸パターン面にAu膜32とTi膜38を順次成膜し、凸部上に形成されているTi膜とAu膜をSi等の基板40上に転写させる方法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−63694号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】APPLIED PHYSICS LETTERS 87, 234110(2005) “Printing electrode for top-contact molecular junction”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、転写により母型の凹凸パターンが反映された金属膜を有する構造体を、母型の微細な凹凸パターンの破損を防いで製造する方法、それに用いる母型及びそれにより製造される構造体を提供することを目的とする。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明では以下の金属膜を有する構造体の製造方法、それに用いる母型及びそれにより製造される構造体が提供される。
【0010】
本発明の第1の側面によれば、凹凸パターンが形成されている基材の表面に、アルミニウムを含む第1の金属膜を成膜した母型を用意する工程と、
前記第1の金属膜上に第2の金属膜を成膜する工程と、
前記第2の金属膜に支持部材を接着させる工程と、
前記支持部材とともに前記凹凸パターンが反映された前記第2の金属膜を前記第1の金属膜から剥離させる工程と、
を含む金属膜を有する構造体の製造方法が提供される。
本発明の第2の側面によれば、表面に凹凸パターンが形成されている基材と、
前記凹凸パターンが形成されている基材の表面に成膜された、アルミニウムを含む金属膜と、を有する母型が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明により金属膜を有する構造体を製造する工程の一例を示す図である。
図2】ECR型のイオンビーム加工装置の一例を示す概略構成図である。
図3】グラッシーカーボン基板をECRにより加工時間を変えて加工した表面を観察したSEM画像である。
図4】微細パターンを形成したGC基板に金属膜を成膜した後の状態を示すSEM画像である。(A)厚さ20nmのCr膜(第1の金属膜)を成膜した後 (B)厚さ1μmのAu膜(第2の金属膜)を成膜した後
図5】接着剤を介してスライドガラスに転写したAu膜を示すSEM画像である。
図6】Cr膜とAu膜とが剥離した後の母型の凹凸(突起)パターンを示すSEM画像である。
図7】実施例2においてSi基板上にSOGの凹凸パターンを形成した工程の一例を示す図である。
図8図7に示す手順で作製した母型にCr膜とAu膜を成膜し、Au膜の一部をPET基板に転写する工程を示す図である。
図9】比較例3において離型剤を介してAu膜を成膜した概略図である。
図10】母型の凹凸パターン上に成膜したAu蒸着膜の表面状態を示すSEM画像である。(a)比較例3 (b)実施例2
図11】実施例2において転写後のAu膜を示すSEM画像である。(a)倍率:10000倍 (b)倍率:40000倍
図12】従来のAu転写方法の一例を示す工程図である。
図13】従来のAu転写方法の他の例を示す工程図である。
図14】実施例3においてモールドの凹凸パターンを示すSEM画像(10000倍)である。
図15】実施例3においてPETフィルムに転写されたAu膜を示すSEM画像(40000倍)である。
図16】転写前後のモールド表面におけるSEM−EDXによる分析結果を示すグラフである。(A)転写前 (B)転写後
図17】転写後のモールド表面におけるXPSの分析結果を示すグラフである。
図18】転写後のモールド最表面におけるCrのスペクトル分離比率を示すグラフである。
図19】PET基板上に転写されたCuパターンを示すSEM画像である。(A)設計溝幅が200nmの場合 (B)設計溝幅が100nmの場合
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しながら本発明について説明する。
nmオーダーの凹凸パターンを樹脂等に転写させる場合、アスペクト比が2程度以内が安定した転写を行う限界値と言われている。そこで本発明者は、nmオーダーの微細な凹凸パターンを有する金属膜を転写によって形成する方法について研究を重ねたところ、転写すべき凹凸パターン(以下、「転写パターン」あるいは「パターン」という場合がある。)を母型となる基材の表面に予め形成し、次いで、転写パターンを形成した面に保護膜となる第1の金属膜を成膜し、さらにその上に第1の金属膜と化学的に結合しないように第2の金属膜を成膜して支持部材への転写を行えば、転写パターンが反映された第2の金属膜を支持部材側に確実に転写することができるとともに、母型の微細な凹凸パターンの破損を防いで転写を繰り返し行うことができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0013】
図1は、本発明に係る金属膜を有する構造体を製造する工程の一例を示す図である。すなわち、本発明に係る金属膜を有する構造体の製造方法は、
(A)凹凸パターン14が形成されている基材12の表面に第1の金属膜16を成膜した母型10を用意する工程と、
(B)前記第1の金属膜16上に第2の金属膜18を成膜する工程と、
(C)前記第2の金属膜18に支持部材20を接着させる工程と、
(D)前記支持部材20とともに前記凹凸パターン14が反映された前記第2の金属膜18を前記第1の金属膜16から剥離させる工程と、
を含む。以下、各工程に沿って具体的に説明する。
【0014】
(A)母型の用意
まず、凹凸パターン14が形成されている基材12の表面に第1の金属膜(保護膜)16を成膜した母型(原版)10を用意する(図1(A))。
【0015】
<基材>
母型10の本体となる基材12の材質や形状は、後に第2の金属膜18に反映させるべき凹凸パターン14を形成することができ、この凹凸パターン14が形成されている面に、第1の金属膜16及び第2の金属膜18を順次成膜することができれば特に限定されない。
基材12の材質(モールド材料)としては、パターン14の形成性、母型10としての機械的強度、耐熱性、金属膜の成膜性などの観点から、シリコン、ガラス状炭素(グラッシーカーボン)、石英、セラミックス、金属等が好ましく挙げられる。
【0016】
基材12の表面における凹凸パターン14は目的に応じて形成すればよく、例えば、リソグラフィ、電子ビーム加工、イオンビーム加工などによって基材12の表面に所望の凹凸パターン14を形成すればよい。
例えば、転写工程後、第2の金属膜18からなる配線パターンを得ることを目的とする場合には、シリコン基板等の基材12の表面(片面)に、例えばリソグラフィ(フォトリソグラフィ、電子ビームリソグラフィなど)とエッチングにより所望の配線パターンを形成することができる。また、シリコン基板等の平坦な基板上に、SOG(Spin on Glass)を焼成した後、所定の凹凸パターンに成形することもできる。
【0017】
また、第2の金属膜18の表面にnmオーダーの微細な突起群を形成することによって表面積を広くすることを目的とする場合には、グラッシーカーボン(GC)等の基材12を用い、これにイオンビーム加工を施すことで、基材12の表面(加工面)に、nmオーダーの微細な突起群を形成させることができる。例えば、GC基材にECR(電子サイクロトン共鳴)によるイオンビーム加工を施せば、針状、円錐状、角錐状等、根元から先端に向けて縮径する形状を有する微細な突起群からなるパターンを形成することができる。このような根元から先端に向けて縮径する形状の突起群からなる転写パターンであれば、円柱状などの径がほぼ一定の突起群からなる転写パターンよりも転写(剥離)が容易となる点で有利となる。なお、ECRの加工では、加工時間、加速電圧、ガス流量を調節することで、基材の表面に形成される突起の高さやピッチをある程度制御することができる(特開2008−233850号公報参照)。
【0018】
<第1の金属膜>
第1の金属膜16は、基材12とともに母型10を構成するため、基材12を構成する材料(以下、モールド材料という)との密着性が高く、かつ、後の工程で第1の金属膜16上に成膜する第2の金属膜18とは化学的に結合しない金属(金属単体、合金、又は金属酸化物などの金属化合物)により成膜する。
【0019】
基材12と高い密着性を有するためには、第1の金属膜16はモールド材料と化合物を形成し、中間層を形成するようなものが好ましく、例えばクロム(Cr)を含む膜が挙げられる。例えば、モールド材料が石英の場合には、石英上にCrで成膜すれば、中間層として安定な酸化クロム(Cr)が形成され、密着性の高いCr膜が得られる。また、モールド材料がSOGの場合も同様に安定した酸化クロムが形成され、密着性が高いCr膜が得られる。
【0020】
一方、基材12がグラッシーカーボン等の炭素により形成されている場合は、その表面にクロムを成膜すると、中間層として炭化クロム(Cr、CrC)が形成され、やはり密着性の高いCr膜が得られる。
なお、第1の金属膜16はCr膜に限定されず、モールド材料との密着性と、第2の金属膜18との剥離容易性に応じて材質を選択すればよい。
【0021】
第1の金属膜16は、金属単体の膜よりも、金属酸化物、金属炭化物などの金属化合物を含む膜の方が好ましく、特に金属酸化膜が好ましい。第1の金属膜16を構成する金属としては、Crのほか、アルミニウム(Al)も好ましい。CrもAlも、成膜後、大気中で自然に酸化して安定化することで、基材12と強く密着するとともに、第2の金属膜18との化学結合が抑制され、第2の金属膜18の剥離が容易になると推測される。
なお、第1の金属膜16は、意図的に、酸化処理、窒化処理、炭化処理などを施して金属化合物を含む膜としてもよい。
【0022】
第1の金属膜16の成膜方法は特に限定されないが、好ましくは、蒸着、塗布、及びめっきが挙げられる。第1の金属膜16の材質や、基材12を構成するモールド材料に応じて成膜法を選択すればよい。
第1の金属膜16の厚みは、例えば基材12の凹凸パターン14のピッチP等に応じて決めればよいが、第1の金属膜16の厚みが薄過ぎると保護膜として十分に機能せず、転写によって凹凸パターン14が部分的に破損してしまうおそれがある。一方、第1の金属膜16の厚みが厚過ぎると凹凸パターン14が平坦化され、第2の金属膜18に基材12の転写パターン14が反映され難くなるおそれがある。これらの観点から、転写パターン14の凸部間の距離(ピッチ)Pにもよるが、第1の金属膜16の厚みは、好ましくは1〜3000nm、より好ましくは3〜1000nm、特に好ましくは5〜100nmである。
【0023】
(B)第2の金属膜の成膜
上記のような基材12と第1の金属膜16により構成される母型10を用意した後、前記第1の金属膜16上に第2の金属膜18を成膜する(図1(B))。
【0024】
<第2の金属膜>
基材12の転写パターン面に成膜された第1の金属膜16上に第2の金属膜18を成膜するが、第2の金属膜18は、後の転写工程で支持部材20を接着させて第1の金属膜16から剥離させるため、第1の金属膜16とは化学的に結合しない金属(金属単体、合金、又は金属酸化物などの金属化合物)により形成する。
第2の金属膜18は、転写後に得られる金属膜18を有する構造体22の目的に応じて選択すればよいが、例えば、Au、Ag、Cu、Al、及びPtからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属を含む膜が挙げられる。このような材質からなる金属膜であって、母型10の転写パターン14が反映された膜であれば、例えば触媒等の機能を有する機能性膜となり得、また、第1の金属膜16としてCr膜を形成しておけば、Crとの合金等を生じず、その後比較的容易に転写(剥離)を行うことができる。
また、第1の金属膜16としてAl膜を形成した場合は、第2の金属膜18を構成する金属としては、Cu又はコンスタンタン(NiとCuの合金)を含む膜が好ましく、Cu膜が特に好ましい。
ただし、第2の金属膜18は、上記金属を含むものに限定されず、目的に応じて材質を選択すればよい。
【0025】
第2の金属膜18の成膜方法は、第1の金属膜16と化学的に結合しないように所望の厚さで成膜することができれば限定されず、第2の金属膜18を構成する材料、第1の金属膜16の材料、さらに、基材12を構成するモールド材料を考慮して選択すればよい。成膜容易性、膜厚均一性などの観点から、蒸着、塗布、又はめっきによって第2の金属膜18を成膜することが好ましい。
【0026】
第2の金属膜18の厚みは特に限定されるものではないが、第2の金属膜18の厚みが薄過ぎると転写工程で破損するおそれがあり、厚過ぎるとコストの上昇や転写不良を招くおそれがある。これらの観点から、転写パターン14の凸部間の距離(ピッチ)P及び第1の金属膜16の厚みにもよるが、第2の金属膜18の厚みは、好ましくは10〜3000nm、より好ましくは50〜2000nm、特に好ましくは100〜1500nmである。
【0027】
<離型剤>
なお、第2の金属膜18を成膜する前に、第1の金属膜16と第2の金属膜18との間に離型剤を付与しておいてもよい。離型剤としては、好ましくはシランカップリング剤が挙げられる。第1の金属膜16と第2の金属膜18との間に離型剤を付与しておけば、第2の金属膜18だけをより確実に転写させることができる。
【0028】
(C)支持部材の接着
第1の金属膜16上に第2の金属膜18を成膜した後、前記第2の金属膜18に支持部材20を接着させる(図1(C))。
【0029】
<支持部材>
支持部材20は、第2の金属膜18と接着して第1の金属膜16から剥離させるため、第2の金属膜18との接着性及び転写後の目的に応じて選択すればよい。そのような支持部材20としては、樹脂及びガラスを好適に用いることができる。
樹脂としては、第2の金属膜18に付与する前は流動性を有し、容易に付与することができ、付与後は光又は熱などの外部エネルギーを加えたときに硬化する樹脂が挙げられ、紫外線硬化性樹脂が特に好ましい。硬化性樹脂を付与する方法は特に限定されず、スキージ等による塗布、スピンコート等、硬化性材料の粘度等に応じて公知のコーティング方法から適宜選択すればよい。
【0030】
第2の金属膜18に紫外線硬化性樹脂を塗布した場合には感光波長の紫外線を照射し、熱硬化性樹脂を用いた場合には、所定の温度に加熱して硬化させればよい。なお、室温で液状の硬化性樹脂組成物を用いれば、凹凸パターンが高アスペクト比(例えば2以上)であっても、凸部間に好適に充填させて硬化させることができる。この場合、母型10に成膜した第2の金属膜全体に接着させることができ、硬化後、凸部間に成膜されている第2の金属膜18も支持部材20に好適に転写させることができる。
また、第2の金属膜18に接触させた状態で加熱して軟化させた後、冷却により硬化したときに第2の金属膜18に接着する樹脂フィルム(PETフィルム等)を用いることもできる。
【0031】
また、例えば、SOG(Spin on Glass)のようなガラス材料も支持部材20として好適に用いることができる。SOGであれば、金属膜上にスピンコートして比較的低温(例えば250〜500℃)で焼成することができ、基材12、第1の金属膜16、及び第2の金属膜18に対し加熱による悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0032】
(D)転写(剥離)
第2の金属膜18に支持部材20を接着させた後、前記支持部材20とともに、前記凹凸パターン14が反映された前記第2の金属膜18を前記第1の金属膜16から剥離させる(図1(D))。これにより、第2の金属膜18が支持部材20側に転写され、基材12の転写パターン14が反映された第2の金属膜18を有する構造体22が得られる。
【0033】
上記のような工程を経て転写された第2の金属膜18は、その表面に基材12の転写パターン14が反映されたものとなる。第2の金属膜18は、第1の金属膜16を介して成膜したものを転写した膜であるため、転写パターン14を形成した基材12の表面に直接又は離型剤だけを介して成膜して転写した膜に比べ、表面状態が良好であり、例えば、線幅がnmオーダーの配線パターンであっても、断線を効果的に防止することができる。
また、例えば、表面に微細な突起を形成した基材12を用いた場合には、転写後の第1の金属膜16の表面には、基材12の微細構造が精度良く反映されており、表面積が極めて大きい第2の金属膜18を有する構造体22を得ることができる。
【0034】
一方、転写後の母型10は、転写パターン14が第1の金属膜16で保護されているため、第2の金属膜18を剥離する際のダメージが抑制され、繰り返し母型として使用することができる。すなわち、転写後、(B)第1の金属膜16上への第2の金属膜18の成膜、(C)第2の金属膜18への支持部材20の接着、(D)第1の金属膜14と第2の金属膜18との間の剥離、を順次繰り返すことで、基材12の転写パターン14が反映された第2の金属膜を有する構造体22を低コストで量産することも可能となる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
[実施例1−1]
‐基材の表面加工‐
表面が研磨されたグラッシーカーボン(東海カーボン株式会社製)の基板(厚さ:1mm、縦横:10mm×10mm)を、図2に示したような構成のECR(電子サイクロトン共鳴)型のイオンビーム加工装置(株式会社エリオニクス製、商品名:EIS−200ER)を用いて表面にイオンビーム加工を施した。
このイオンビーム加工装置50は、基板52を保持するためのホルダ66、ガス導入管54、プラズマ生成室56、エクストラクター58、電磁石60、イオンビーム引き出し電極62、ファラデーカップ64等を備えている。なお、例えば500V以下の低加速電圧では電流密度が小さくなるので、エクストラクター58は、電流密度を上げるために引き出し電極62よりプラズマ側でイオンを引き出すためのグリッドである。エクストラクター58を用いれば、加速電圧が低くても、電流密度が大きくなり加工速度を高めることができる。
【0037】
グラッシーカーボン基板(GC基板)52をホルダ66にセットし、反応ガスとして酸素を導入するとともに所定の加速電圧をかけてGC基板52の表面にイオンビーム加工を施した。加工条件は以下の通りである。
ビーム照射角度:加工面に対して垂直(基板の転写パターン面に対して90°)
反応ガス:酸素
ガス流量:3.0SCCM
マイクロ波:100W
加速電圧:500V
真空度: 1.3×10−2Pa
【0038】
図3は加工時間を変化させて加工したGC基板の表面状態を示すSEM画像である。図3に見られるように、GC基板の表面(加工面)には先端に向けて縮径する形状を有する微小な突起群からなるパターン形成され、加工時間に応じて突起の高さ及びピッチが変化した。
【0039】
‐Cr膜の成膜‐
ECRにより5分間加工を施したGC基板の加工面にクロム(Cr)膜を成膜した。ここでは、真空蒸着装置(真空機工社製、商品名:CPC−260F)を用い、厚さ20nmのCr蒸着膜を成膜した。図4(A)は、GC基板の微細パターン面にCr蒸着膜を成膜した後のSEM画像である。
【0040】
‐Au膜の成膜‐
GC基板の微細パターン面にCr膜を成膜した後、上記真空蒸着装置(CPC−260F)を用い、Cr膜上に厚さ1μmのAu蒸着膜を成膜した。図4(B)は、Au膜を成膜した後のSEM画像である。
【0041】
‐転写‐
Au膜を成膜した後、Au膜上に光硬化性樹脂(PAK−01、東洋合成工業株式会社製)をスピンコートした。以下の条件で、PAK−01をコートした面にスライドガラスを押し付けるとともに、スライドガラス側から紫外光を照射してPAK−01を硬化させた。
押付け圧力:1.2MPa
加圧維持時間:60秒
UV照射時間:4秒
【0042】
硬化後、スライドガラスとGC基板をゆっくり引き離した。図5は、PAK−01を介してスライドガラス上に転写されたAu膜のSEM画像であり、Au膜には突起状の微小な凹凸が形成されていることがわかる。
一方、図6は、剥離後の母型を示すSEM画像であり、突起の破損は生じていないことがわかる。
【0043】
[実施例1−2、1−3]
GC基板の加工時間を10分又は15分とした以外は、実施例1−1と同様に加工、成膜、及び転写を行った。
【0044】
[比較例1−1]
実施例1−1と同様にしてGC基板にイオンビーム加工を施した後、加工面に離型剤(デュラサーフ HD‐1101Z、(株)ハーベス製)を塗布した。次いで、光硬化性樹脂(PAK−01、東洋合成工業株式会社製)をスピンコートした。PAK−01をコートした面をスライドガラスに押し付けるとともに、実施例1と同様の条件で紫外光を照射してPAK−01を硬化させた。硬化後、スライドガラスとGC基板をゆっくり引き離した。
【0045】
[比較例1−2]
GC基板の加工時間を10分とした以外は、比較例1−2と同様に加工、離型剤の塗布、及び転写を行った。
【0046】
[比較例2−1]
実施例1−1と同様にしてGC基板にイオンビーム加工を施した後、加工面に直接Au膜を成膜した。ここでは、真空蒸着装置(真空機工社製、商品名:CPC−260F)を用い、厚さ70nmのAu蒸着膜を成膜した。
次いで、Au膜上に光硬化性樹脂(PAK−01、東洋合成工業株式会社製)をスピンコートした。PAK−01をコートした面にスライドガラスを押し付けるとともに、実施例1と同様の条件で紫外光を照射してPAK−01を硬化させた。
硬化後、スライドガラスとGC基板をゆっくり引き離した。
【0047】
[比較例2−2、2−3]
GC基板の加工時間を10分又は15分とした以外は、比較例2−1と同様に加工、成膜、及び転写を行った。
【0048】
上記実施例1−1〜比較例2−3における転写結果を表1に示す。表1中の転写評価は以下の通りである。
A:Au膜(比較例2ではPAK−01)が全てスライドガラス側に転写された。
B:Au膜(比較例2ではPAK−01)の一部がGC基板側に残留した。
C:Au膜(比較例2ではPAK−01)の転写ができなかった。
【0049】
【表1】
【0050】
[実施例2]
図7(A)に示すように、Siウエハ12上に、SOG(Honeywell社製、Accuglass(登録商標)512B)13をスピンコートした後、焼成した(プレ加熱:80℃、3分間 メイン加熱:425℃、1時間)。
次いで、図7(B)に示すように、レジストを塗布して電子ビームを任意の部分15に照射した(加速電圧:30kV、ドーズ量:2000〜5500μC/cm)。
さらに、これを現像液であるBHF(2.4%、2分間)に浸漬すことにより、電子ビームが照射された部分が溶解して凹部となり、図7(C)に示すようなSi基板12上にSOGの凹凸パターン14が形成されたモールドを得た。このモールドの凹凸パターンの凸部間の最小ギャップは110nmである。
【0051】
次いで、図8(D)に示すように、得られたモールドにCr蒸着膜16(厚み:10nm)を成膜し、さらにAu蒸着膜18(厚み:60nm)を成膜した。
次いで、図8(E)に示すように、PET基板20をAu膜18上に接触させて80℃で30分間加熱することによりコンタクトプリントを行った。
さらに、冷却後、図8(F)に示すように、PET基板20をゆっくり引き離すことによりAu膜18をPET基板20の表面に転写させた。
【0052】
[比較例3]
図9に示すように、実施例2と同様にしてモールドを作製した後、パターン形成面に、離型剤としてフッ素系樹脂コーティング剤(デュラサーフ HD‐1101Z、(株)ハーベス製)24を塗布し、その上にAu蒸着膜18を成膜した。
【0053】
図10は、実施例2及び比較例3でそれぞれ成膜したAu膜の表面状態を示すSEM画像である。比較例3で成膜したAu膜(図10(a))は多数のヒビ割れが生じていたのに対し、実施例2で成膜したAu膜(図10(b))は滑らかであった。
【0054】
図11は、実施例2においてPET基板への転写後のAu膜を観察したSEM画像である。PETフィルムはだれることなく、また、線幅が約70nmのAuパターンでも断線せずに形成されていた。
【0055】
[実施例3]
図14に示すようにモールドの凸部間の最小ギャップを70nmに変更した以外は実施例2と同様にしてモールドを作製した。次いで、モールドの凹凸パターン面にCr蒸着膜(厚み:10nm)を成膜し、さらにAu蒸着膜(厚み:60nm)を成膜した。
次いで、実施例2と同様にしてAu膜をPETフィルムに転写させた。図15はPETフィルムに転写されたAu膜のSEM画像である。Au膜のラインが断線せずに転写されており、ライン間は約30nmのギャップが確保されている。
【0056】
[実施例4−1]
実施例2と同様にしてSiウエハ上にSOG(Honeywell社製、Accuglass(登録商標)512B)をスピンコートした後、焼成してSOG層(厚さ:500nm)を形成した。SOG層の任意の部分に電子ビームを照射して凹凸パターンが形成されたモールドを得た。このとき、電子ビームのライン幅は400nmに設定し、電圧を変化させて凹部(溝)の深さを変化させた。
次いで、SOGの凹凸パターン面にAl蒸着膜(厚み:20nm)を成膜し、さらにCu蒸着膜(厚み:500nm)を成膜した。
【0057】
次いで、PET基板をCu膜上に接触させて90℃で30分間加熱することによりコンタクトプリントを行った。
冷却後、PET基板をゆっくり引き離すことによりCu膜をPET基板の表面に転写させた。これにより、PET基板上には、SOG層の凹凸パターンが反映されたCuパターンが転写された。
【0058】
[実施例4−2、4−3、4−4]
SOGの凹凸パターンを形成するときに電子ビームのライン幅を300nm、200nm、100nmにそれぞれ変更した以外は、実施例4−1と同様に、SOG凹凸パターンの形成、Al蒸着膜の成膜、Cu蒸着膜の成膜、及び、PET基板へのCu膜の転写を順次行った。図19は、ライン幅を200nm、100nmにそれぞれ設定した場合のPET基板上に転写されたCuパターンを示すSEM画像である。いずれもPET基板上にはSOG層の凹凸パターンが反映されたCuパターンが転写されている。なお、Cuパターンの測定溝幅(ライン間のギャップ)は、それぞれ75nm(設計幅:200nmの場合)、40nm(設計幅:100nmの場合)である。
【0059】
[実施例5]
実施例4−1と同様の方法によりSi基板上にSOG層を形成し、第1の金属膜と第2の金属膜を種々変更して第2の金属膜をPET基板に転写させた。転写状態をSEM画像で評価し、その結果を表2に示す。表中のCu−Niはコンスタンタン(銅とニッケルとの合金)であり、A、B、Cでの評価は以下の通りである。
A:第2の金属膜のラインパターンが断線せずに転写。
B:第2の金属膜(凹凸なし)がPET基板に転写。
C:第2の金属膜がPET基板に転写されたが部分的に剥離又は断線が見られる。
【0060】
【表2】
【0061】
[実施例6]
SOG層を形成せずに、Si基板上に第1の金属膜と第2の金属膜を順次形成し、PET基板に第2の金属膜を転写させた。その結果を表3に示す。評価は実施例5と同様である。
【0062】
【表3】
【0063】
−転写後のモールドの分析−
1.SEM−EDX(エネルギー分散型X線分光法)による分析
実施例2と同様にモールドを作製し、モールドのパターン面にCr蒸着膜(厚み:22nm)、Au蒸着膜(厚み:50nm)を順次成膜した。その後、実施例2と同様にしてAu膜をPETフィルムに転写させた。
転写前後においてモールド表面についてSEM−EDXによる分析を行った。SEM−EDX装置は、エリオニクス社製「ERAX−8900」を用いた。図16(A)は転写前の分析結果を、図16(B)は転写後の分析結果をそれぞれ示している。転写前後で比較すると、転写後においてAuは大きく減少し、Crはほぼ残留していることが分かる。
【0064】
2.XPS(X線光電子分光分析)による分析
Siウエハ上に、SOG(Haneywell社製、Accuglass(登録商標)512B)をスピンコートした後、焼成した(プレ加熱:80℃、3分間 メイン加熱:425℃、1時間)。次いで、Cr蒸着膜(厚み:18nm)を成膜し、さらにAu蒸着膜(厚み:50nm)を成膜した。次いで、実施例2と同様にしてAu膜をPETフィルムに転写させた。
【0065】
転写後のモールドの表面についてXPSによる分析を行った。XPS装置はアルバック・ファイ(株)の「ESCA5600Ci」を用い、モールドの表面を徐々にスパッタしていくことで深さ方向の元素分布の変化を調べた。
図17はXPSの分析結果を示している。矢印Aで示される最表面付近ではCr等のクロム酸化膜が形成されており、このクロム酸化膜が金膜の離型に効いていると考えられる。そして、最表面からOが減少し、Crが増加している部分では、酸化Crが減少する一方、金属Crの割合が増加していると考えられる。さらに矢印Bで示す領域ではCrからSOGに変化し、再度Cr酸化膜が増加していることで、SOGとの密着性が増していると考えられる。
なお、図18は最表面におけるCrのスペクトル分離比率を示しており、576.6eVがCrのピークであり、574.3eVがCr金属のピークである。このグラフからも最表面では主にCr酸化膜が形成されていると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る金属膜を有する構造体の製造方法は、種々の用途に適用することが可能である。例えば、転写後に得られる第2の金属膜は、母型の微細パターンが反映されて表面積が極めて大きくなり得るため、触媒面などとして使用する場合に極めて有利となる。特にPt膜を形成した場合は触媒として極めて有用なものとなる。
【0067】
また、転写する側の支持部材としてPET基板などを用いた場合はモールドの凸部分に形成された第2の金属膜がPET基板に転写されることになる。この場合は、絶縁基板上に金属配線が比較的簡単に形成されることになり、例えば、ワイヤーグリッド偏光子やプラズモン素子などを作製する場合に有利に適用することができる。
【0068】
また、母型の転写パターンが反映された樹脂製品が必要な場合は、転写後、第2の金属を適当な溶媒で溶かせばよい。なお、樹脂はSEM観察で帯電を起こすので、転写後の支持部材のパターンをSEM観察する場合には、金属膜で被覆されている状態のほうが帯電を防止することができる。従って、本発明は、モールドを複製するためのプロセス(レプリカモールド作製プロセス)にも有効であると考えられる。
【0069】
以上、本発明に係る反射防止構造体等について説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されない。例えば、GC基板を用いて本発明に係る母型を製造する場合、図2に示したようなECR型のイオンビーム加工装置に限定されず、ICP等の他の加工装置を使用してもよい。
【符号の説明】
【0070】
10・・・母型(原版)
12・・・基材
14・・・凹凸パターン(転写パターン)
16・・・第1の金属膜(保護膜)
18・・・第2の金属膜(転写膜)
20・・・支持部材
22・・・構造体
50・・・ECR型イオンビーム加工装置
P・・・ピッチ
図8
図9
図12
図13
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図10
図11
図14
図15
図16
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