特許第5769304号(P5769304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769304
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】画像提示光学系
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/032 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
   A61B3/02 C
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-188714(P2011-188714)
(22)【出願日】2011年8月31日
(65)【公開番号】特開2013-48754(P2013-48754A)
(43)【公開日】2013年3月14日
【審査請求日】2014年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(72)【発明者】
【氏名】秋山 久則
(72)【発明者】
【氏名】大森 和宏
【審査官】 後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−314116(JP,A)
【文献】 特開平09−098948(JP,A)
【文献】 特開平11−089796(JP,A)
【文献】 特開2009−240727(JP,A)
【文献】 特開2000−217783(JP,A)
【文献】 特開2004−275589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示装置と、該表示装置からの光束により虚像を形成する凸レンズ系とを少なくとも備え、前記凸レンズ系はその焦点距離fが800ミリメートルよりも大きく、かつ、前記表示装置の像高をyミリメートルとして、前記焦点距離fと前記像高yとが、10y<f<24yの条件式を満足するものであり、前記表示装置の表示画面の位置が前記凸レンズ系の焦点距離以内にあることを特徴とする画像提示光学系。
【請求項2】
ウインドウを有する筐体と該筐体を支持する支持台とからなる本体の内部に、画像を表示する表示装置と、該表示装置に表示された画像からの光束を反射する反射ミラーと、該反射ミラーにより反射された反射光束により虚像を形成する凸レンズ系と、該凸レンズ系を通過した反射光束の光路を折り曲げて眼のアイポイントの前方の所定距離の位置に前記虚像を提示する光路折り曲げミラーとが設けられ、前記凸レンズ系はその焦点距離fが800ミリメートルよりも大きく、かつ、前記表示装置の像高をyミリメートルとして、前記焦点距離fと前記像高yとが、10y<f<24yの条件式を満足するものであり、前記表示装置の表示画面の位置が前記凸レンズ系の焦点距離以内にあることを特徴とする画像提示光学系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼に検眼用の画像を提示する画像提示光学系の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被検眼に検眼用画像を提示する画像提示光学系として、筐体の内部に液晶表示装置と、反射ミラーと、ハーフミラーと、凹面鏡とを配設したものが知られている。
その液晶表示装置の表示画面には、検眼用の画像が表示される。
その液晶表示装置の表示画面に表示された検眼用画像からの光束は、反射ミラーによりハーフミラーに向けて反射される。このハーフミラーに導かれた反射光束はこのハーフミラーを透過して凹面鏡に導かれる。
【0003】
この凹面鏡に導かれた反射光束は、この凹面鏡により再びハーフミラーに向けて反射される。その凹面鏡により反射された反射光束は、そのハーフミラーにより被検眼の存在する方向に向けて反射される。そのハーフミラーにより反射された反射光束は、被検眼のアイポイントの前方5mの位置に検眼用の画像として虚像を形成する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−89796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この従来の画像提示光学系は、ハーフミラーと凹面鏡との組み合わせの配置であり、凹面鏡の焦点距離が300mmよりも短いため、視界が狭くてアイポイントのずれによる画像の歪みの変化が大きい。
【0006】
また、凹面鏡やハーフミラーの光学素子の精度を高精度に仕上げなければならず、概してコスト高となる不都合がある。
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、単純な光学構成でアイポイントのずれによる画像歪みの少ない画像提示光学系を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、画像を表示する表示装置と、該表示装置からの光束により虚像を形成する凸レンズ系とを少なくとも備え、前記凸レンズ系はその焦点距離fが800ミリメートルよりも大きく、かつ、前記表示装置の像高をyミリメートルとして、前記焦点距離fと前記像高yとが、10y<f<24yの条件式を満足するものであり、前記表示装置の表示画面の位置が前記凸レンズ系の焦点距離以内にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、凸レンズ系の焦点距離を長くしたので、単純な光学構成でアイポイントのずれによる画像歪みの少ない画像提示光学系を提供できる。また、視界の広い画像歪みの少ない画像提示光学系を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は本発明に係る画像提示光学系を用いた視力表示装置の一例を示す斜視図である。
図2図2は本発明に係る画像提示光学系の一例を示す光学系の構成図である。
図3図3図2に示す表示装置の表示画面に表示された画像の一例を示す説明図である。
図4図4は本発明に係る画像提示光学系の他の例を示す光学系の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0010】
以下に、図1ないし図4を参照しつつ本発明に係る画像提示光学系を用いた視力表示装置の実施例を図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明に係る画像提示光学系を内蔵する視力表示装置の一例を示す斜視図である。
【0011】
その図1において、1は支持台であり、2は筐体である。筐体2は支持台1の上部に配設される。ここでは、支持台1と筐体2とは一体化されて視力装置の本体を構成している。筐体2の前面にはウインドウWが設けられている。このウインドウWには、ここでは、ポリアクリルレート樹脂(PMMA)が用いられ、その厚さは2mmである。
【0012】
その支持台1と筐体2とからなる本体の内部には、画像提示光学系3が設けられている。この画像提示光学系3は、図2に示すように、表示装置4と、反射ミラーM1と、凸レンズ系L1と、光路折り曲げミラーM2とが設けられている。
【0013】
表示装置4は、例えば、液晶ディスプレイから構成され、物点Oの位置に存在する表示画面4aに図3に示すようにランドルト環等の検眼用の画像を表示する。その図3において、yは像高を示す。
反射ミラーM1はこの表示装置4に表示された画像からの光束を凸レンズ系L1に向けて反射する。
【0014】
凸レンズ系L1は、ここでは、1個の凸レンズにより構成されている。この凸レンズにはBK7等のガラス材料が用いられている。この凸レンズ系L1の焦点距離fは、ここでは、f=1157.7mm(ミリメートル)である。その図2において、符号f0は凸レンズ系L1の焦点を示している。物点Oは凸レンズ系L1の焦点距離以内にある。
この凸レンズ系L1は、反射ミラーM1により反射された反射光束により虚像を形成する。
【0015】
光路折り曲げミラーM2は、凸レンズ系L1を透過した反射光束の光路を折り曲げて眼のアイポイントIの前方の所定距離の像点位置に虚像を提示する。
ここでは、凸レンズ系L1の焦点距離fは、f=1157.7mmとされている。しかしながら、凸レンズ系L1の焦点距離fは800mm(ミリメートル)よりも大きければ、表示装置4の表示画面4aに表示された画像の歪みを小さくできる。
【0016】
また、表示装置4の像高yと焦点距離fとの関係は、10y<f<24yであるのが望ましい。
ライカ版の大きさの液晶ディスプレイから14インチ相当のサイズのテレビ画面等に表示された画像を被検眼に提示する場合でも、画像歪みを小さくして提供できるからである。
【0017】
下記の表1は、その図2に示す画像提示光学系の光学データを示している。
【表1】
この表1において、符号Oは物点の位置、面番号1は反射ミラーM1の面、面番号2は凸レンズ系L1の後面、面番号3は凸レンズ系L1の前面、面番号4は光路折り曲げミラーM2の面、面番号5はウインドウWの内面、面番号6はウインドウWの外面、Iはアイポイント、O’は虚像が形成される像点位置を示す。
【0018】
ここでは、物点Oから反射ミラーM1までの面間距離d1は70mm、反射ミラーM1の曲率半径r1は無限大、反射ミラーM1の面1から凸レンズ系L1の後面2までの面間距離d2は814.819mm、凸レンズ系L1の後面2の曲率半径r2は無限大、凸レンズ1の後面2から凸レンズ系L1の前面3までの面間距離(厚さ)d3は16mm、凸レンズ系L1の前面3の曲率半径r3は600mm、光路折り曲げミラーM2の面4の曲率半径r4は無限大、凸レンズ系L1の前面3から光路折り曲げミラーM2の面4までの面間距離d4は150mm、光路折り曲げミラーM2の面4からウインドウWの内面5までの面間距離d5は98.000mm、ウインドウWの内面5の曲率半径r5は無限大、ウインドウWの内面5からウインドウWの外面6までの面間距離d6は2mm、ウインドウWの外面6の曲率半径r6は無限大、ウインドウWの外面6からアイポイントIまでの面間距離d7は800mmであり、虚像は−5000.000ミリメートル(5m)の像点位置O’に提示される。その像高yは82.6mmである。
【0019】
凸レンズ系L1は、図4に示すように、2枚の凸レンズL1’、L1”から構成しても良い。
下記の表2は、その図3に示す画像提示光学系の光学データを示している。
【表2】
この実施例では、物点Oから反射ミラーM1の面1までの面間距離d1は65mm、反射ミラーM1のミラー面1の曲率半径r1は無限大、反射ミラーM1の面1から凸レンズ系L1の凸レンズL1’の後面2までの面間距離d2は、791.500mm、凸レンズL1’の後面2の曲率半径r2は−454.2265mm、凸レンズL1’の後面2から凸レンズL1’の前面3までの面間距離d3は、35.000mm、凸レンズL1’の前面3の曲率半径r3は、454.2265mm、凸レンズL1’の前面3から凸レンズL1”の後面4までの面間距離d4は5mm、凸レンズL1”の後面4の曲率半径r4は454.2265mm、凸レンズL1”の後面4から凸レンズL1”の前面5までの面間距離d5は5mm、凸レンズL1”の前面5の曲率半径r5は無限大、凸レンズL1”の前面5から光路折り曲げミラーM2の面6までの面間距離d6は150mm、光路折り曲げミラーM2の面6の曲率半径r6は無限大、光路折り曲げミラーM2の面6からウインドウWの内面7までの面間距離d7は98mm、ウインドウWの内面7の曲率半径r7は無限大、ウインドウWの内面7からウインドウWの外面8までの面間距離d8は2mm、ウインドウWの外面8の曲率半径r8は無限大、ウインドウWの外面8からアイポイントIまでの面間距離d9は800mmであり、虚像は−5000.000ミリメートルの像点位置O’に提示される。
この凸レンズ系L1の焦点距離fは1075.8mmであり、像高yは48.8mmである。
【0020】
この図4に示す画像提示光学系によれば、被検眼に提示される画像に対して色消し効果がある。
以上、実施例について説明したが、本発明に係る画像提示光学系は、画像を表示する表示装置4と、この表示装置4からの光束により虚像を形成する凸レンズ系L1とを少なくとも備えていれば成り立つものである。
また、実施例に係る画像提示光学系によれば、支持台1の内部に画像提示光学系の光学要素の一部を配設することにしたので、省スペース化を図ることができる。
【符号の説明】
【0021】
f0…焦点
M1…反射ミラー
M2…光路折り曲げミラー
L1…凸レンズ系
I…アイポイント
f…焦点距離
4…表示装置
4a…表示画面
図1
図2
図3
図4