(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769307
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
F21V 29/77 20150101AFI20150806BHJP
F21V 29/503 20150101ALI20150806BHJP
F21Y 101/02 20060101ALN20150806BHJP
【FI】
F21V29/77
F21V29/503
F21Y101:02
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-287839(P2011-287839)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-138081(P2013-138081A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】390015244
【氏名又は名称】日本モレックス合同会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100133592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 浩一
(72)【発明者】
【氏名】水田 敬
(72)【発明者】
【氏名】田村 英男
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 浩史
(72)【発明者】
【氏名】福永 倫康
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 克也
【審査官】
米山 毅
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−249045(JP,A)
【文献】
特開2011−003516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 29/00−29/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子に伝熱的に接触して、前記発光素子から伝熱される熱を拡散する熱拡散部材と、
一方が前記熱拡散部材に伝熱的に接触して、熱を前記一方から他方に輸送する熱輸送部材と、
前記熱輸送部材の他方に伝熱的に接触して、前記熱輸送部材から伝熱される熱を環境に放出する熱放出部材とを備え、
前記熱放出部材は、前記熱拡散部材に対して間隙を開けて配置され、前記間隙を通って、前記熱放出部材の下方に流入した空気が、前記熱放出部材の中を通って、前記熱放出部材の上方に流出するように、間隔を空けて複数の冷却フィンを配列した冷却フィン列を複数列備え、
前記複数列の冷却フィン列は、上下に積層配置されて、前記複数列の冷却フィン列を上方から見る場合に、隣接する2個の冷却フィン列の一方の冷却フィン列の冷却フィンが、他方の冷却フィン列の冷却フィンと交差するように、配置されている
照明装置。
【請求項2】
発光素子と、
前記発光素子に伝熱的に接触して、前記発光素子から伝熱される熱を拡散する熱拡散部材と、
一方が前記熱拡散部材に伝熱的に接触して、熱を前記一方から他方に輸送する熱輸送部材と、
前記熱輸送部材の他方に伝熱的に接触して、前記熱輸送部材から伝熱される熱を環境に放出する熱放出部材とを備え、
前記熱放出部材は、前記熱拡散部材に対して間隙を開けて配置され、前記間隙を通って、前記熱放出部材の下方に流入した空気が、前記熱放出部材の中を通って、前記熱放出部材の上方に流出するように、間隔を空けて複数の冷却フィンを配列した冷却フィン列を複数列備え、
前記冷却フィンは、少なくとも一つの側縁に切り欠きを備え、
隣接する前記冷却フィン列の、一方の冷却フィン列の冷却フィンの前記切り欠きと、他方の冷却フィン列の冷却フィンの前記切り欠きとが、嵌合する
照明装置。
【請求項3】
前記熱拡散部材は、前記発光素子と対面する中央部と、前記中央部の一部または全部を取り囲む周縁部とを有し、
前記熱輸送部材は前記周縁部において、前記熱拡散部材に伝熱的に接触する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記複数列の冷却フィン列は、隣接する2個の冷却フィン列の一方の冷却フィン列の配列軸が、他方の冷却フィン列の配列軸に対して「捩れ」の関係になるように配置されている
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記隣接する2個の冷却フィン列の配列軸は、互いに直交するように配置されている
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記隣接する冷却フィンは、その面積が互いに異なる
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記発光素子は基板に実装されるとともに、前記基板が前記熱拡散部材に面接触している
ことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項8】
前記熱拡散部材に面接触する基体を備えるとともに、前記熱輸送部材の一方端は前記基体に結合されている
ことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の照明装置を複数個組み合わせた
ことを特徴とする照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置、特に、発光素子の温度上昇を抑制する放熱手段を備える照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子を備えて、発光素子が放出する可視光で照明を行う装置を照明装置という。一般には、発光素子は発光ダイオード(LED)のような固体発光素子を指すが、本明細書では、電気エネルギーを可視光に変換して放出する装置全般を指す。したがって、本明細書では、白熱灯や蛍光ランプも、発光素子に含まれる。また、本発明に係る照明装置が使用される場所や照明対象は、限定されない。
【0003】
上記において定義したように、発光素子は電気エネルギーを可視光に変換する装置であるが、その変換効率は100%ではない。発光素子に通電すると、無視できない割合の電気エネルギーが熱に変換され、発光素子の温度が上昇する。発光ダイオードは変換効率の高い発光素子であるが、それでも無視できない量の熱が発生する。また、発光素子の温度が上昇すると、発光素子の性能や寿命が低下する。
【0004】
この問題を解決するために、ヒートシンク等の熱放出部材を備えて、発光素子を冷却するようにした照明装置が知られている。
【0005】
例えば、特許文献1には、冷却パネルの片面にLED発光ユニットを取り付けるとともに、該冷却パネルの他方の面に中空部を設け、該中空部に通水管を挿通して、LED発光ユニットを冷却するようにした照明装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、LED光源に接触して、該LED光源で発生した熱を蓄熱する蓄熱部と、蓄熱部に蓄熱した熱を放熱するヒートシンクを備える照明装置が開示されている。この照明装置の蓄熱部及びヒートシンクはアルミニウムの平板であって、ヒートシンクは蓄熱部のLED光源を取り付けた面の反対面に立設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−54529号公報
【特許文献2】特開2011−29205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び特許文献2に開示された照明装置は、水あるいは空気で、発光素子を冷却するので、発光素子の損傷や性能低下を防ぐことができる。また、高輝度発光が可能になる。言い替えれば、高照度の照明装置が実現できる。
【0009】
しかしながら、特許文献1の照明装置は、通水管に冷却水を流すので、設置に手間やコストが掛かると言う問題がある。また、冷却水を掛け流し、つまり発光素子の発熱を吸収して昇温した冷却水をそのまま棄てる場合は、冷却水の消費量が大きいという問題がある。もっとも、冷却水が吸収した熱を環境に放出する装置(例えば、ラジエター)を備えて冷却水を循環させれば、冷却水の消費量を小さくできるが、装置全体が大きくなるとともに、コストがさらに嵩むと言う問題が生じる。
【0010】
一方、特許文献2の照明装置は、ヒートシンクを備えて、発光素子を空気で冷却するので、前述のような問題は生じない。しかしながら、発光素子の発熱のヒートシンクへの輸送は固体中の熱伝導によるので、伝熱性能に限界がある。また、ヒートシンクの周囲の空気の流れについて特別な考慮がなされていないので、放熱性能にも限界がある。そのため、所望の冷却能力を得ようとすれば、冷却手段の外形が大きくなると言う問題が生じる。
【0011】
また、冷却手段を含めた照明装置の外形寸法は、設置場所の条件によって制限されるから、無制限に大きくすることはできない。結局、照明装置の輝度は設置場所の条件によって制限される。つまり、特許文献1あるいは特許文献2に開示された従来技術では、狭い場所には、高輝度発光可能な照明装置を設置できないという問題があった。
【0012】
本発明は、以上のような背景に鑑みて成されたものであり、小型軽量で高輝度発光可能な照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の照明装置は、発光素子と、前記発光素子に伝熱的に接触して、前記発光素子から伝熱される熱を拡散する熱拡散部材と、一方が前記熱拡散部材に伝熱的に接触して、熱を前記一方から他方に輸送する熱輸送部材と、前記熱輸送部材の他方に伝熱的に接触して、前記熱輸送部材から伝熱される熱を環境に放出する熱放出部材とを備える。
前記熱放出部材は、前記熱拡散部材に対して間隙を開けて配置され、前記間隙を通って、前記熱放出部材の下方に流入した空気が、前記熱放出部材の中を通って、前記熱放出部材の上方に流出するように、間隔を空けて複数の冷却フィンを配列した冷却フィン列を複数列備え、前記複数列の冷却フィン列は、上下に積層配置される。そして、前記複数列の冷却フィン列を上方から見る場合に、隣接する2個の冷却フィン列の一方の冷却フィン列の冷却フィンが、他方の冷却フィン列の冷却フィンと交差するように、配置される。
【0014】
本発明の照明装置は、発光素子と、前記発光素子に伝熱的に接触して、前記発光素子から伝熱される熱を拡散する熱拡散部材と、一方が前記熱拡散部材に伝熱的に接触して、熱を前記一方から他方に輸送する熱輸送部材と、前記熱輸送部材の他方に伝熱的に接触して、前記熱輸送部材から伝熱される熱を環境に放出する熱放出部材とを備える。前記熱放出部材は、前記熱拡散部材に対して間隙を開けて配置され、前記間隙を通って、前記熱放出部材の下方に流入した空気が、前記熱放出部材の中を通って、前記熱放出部材の上方に流出するように、間隔を空けて複数の冷却フィンを配列した冷却フィン列を複数列備える。そして、前記冷却フィンは、少なくとも一つの側縁に切り欠きを備え、隣接する前記冷却フィン列の、一方の冷却フィン列の冷却フィンの前記切り欠きと、他方の冷却フィン列の冷却フィンの前記切り欠きとが、嵌合する。
【0015】
前記熱拡散部材は、前記発光素子と対面する中央部と、前記中央部の一部または全部を取り囲む周縁部とを有し、前記熱輸送部材は前記周縁部において、前記熱拡散部材に伝熱的に接触するようにしても良い。
【0018】
さらに、前記複数列の冷却フィン列は、隣接する2個の冷却フィン列の一方の冷却フィン列の配列軸が、他方の冷却フィン列の配列軸に対して「捩れ」の関係になるように配置されてもよい。
【0019】
あるいは、前記隣接する2個の冷却フィン列の配列軸は、互いに直交するように配置されてもよい。
【0021】
さらに、前記隣接する冷却フィンは、その面積が互いに異なるようにしてもよい。
【0022】
また、前記発光素子は基板に実装されるとともに、前記基板が前記熱拡散部材に面接触してもよい。
【0023】
また、前記熱拡散部材に面接触する基体を備えるとともに、前記熱輸送部材の一方端は前記基体に結合されてもよい。
【0024】
また、前述のいずれかの照明装置を複数個組み合わせてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、照明装置に熱拡散部材、熱輸送部材、及び熱放出部を備えて、発光素子で発生する熱を効率良く環境に放出するので、照明装置を小型化、軽量化することができる。また、照明装置の高輝度発光が可能になる。そのため、狭い場所であっても、高輝度発光が可能な照明装置を設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態を示す照明装置の外形図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)においてB方向から見た矢視図である。
【
図5】下部冷却フィン列と上部冷却フィン列の外形を示す斜視図である。
【
図6】発光ユニット、ヒートスプレッダ及び基台の位置関係を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)においてBB’線で切断した断面図である。
【
図7】照明装置周りの冷却空気の流れを示す図である。
【
図10】
図9に示す照明装置の1組の放熱ユニットから冷却フィンを除いた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態を示す照明装置1の外形図である。照明装置1は、発光ユニット2に冷却ユニット3を装着して構成される。発光ユニット2は、発光素子を備えて照明光を放出するユニットであり、冷却ユニット3は発光ユニット2に伝熱的に接触して、発光ユニット2を冷却するユニットである。なお、本明細書において「AとBが伝熱的に接触」と言う場合、AとBが直接または間接に接触して、AとBの間で熱の移動が可能な状態にあることを指す。したがって、AとBの間に熱を輸送する物質や装置が介在する場合も「伝熱的に接触」に該当する。
【0029】
発光ユニット2は、
図2に示すように、基板4の一方の面に、複数個の発光ダイオード(LED)5を実装している。また、基板4の他方の面、つまり発光ダイオード5が実装されていない面は、冷却ユニット3に物理的に接触する(
図1(b)参照)。また、基板4の素材には、熱伝導性を有する材料が選ばれる。そのため、発光ダイオード5で発生した熱は、基板4を通って冷却ユニット3に流れる。つまり、発光ダイオード5は冷却ユニット3に伝熱的に接触する。
【0030】
冷却ユニット3は、
図1に示すように、ヒートスプレッダ6と放熱ユニット7で構成され、放熱ユニット7は、基体8、ヒートパイプ9、下部冷却フィン列10および上部冷却フィン列11とを備える。
【0031】
ヒートスプレッダ6は、一種の平板状ヒートパイプであって、銅製の筐体の内部に、筐体の中央部から周縁部に向かう冷媒流路を備え、冷媒流路の内部に冷媒として機能する流体(例えば、水、エタノール、メタノール,アセトン等)が封入されている。なお、ヒートスプレッダ6の具体的な構成は既に公知なので、詳細な説明は省略する。必要ならば、例えば、特許第4047918号公報を参照されたい。
【0032】
基体8は、
図3に示すように、略「ロ」字形の平面形を有する中実金属部品であり、ヒートパイプ9を装着する穴8aが開けられている。
【0033】
冷却ユニット3は、
図4に示すように、8本のヒートパイプ9を備える。ヒートパイプ9は、全体として「L」字形をなし、一方の端部9aが基体8の穴8a(
図3参照)に装着されて、垂直に立ち上がり、途中でほぼ直角に曲げられて、下部冷却フィン列10あるいは上部冷却フィン列11に挿通され(
図1(b)参照)、下部冷却フィン列10あるいは上部冷却フィン列11と伝熱的に接触する。つまり、ヒートパイプ9は、下部冷却フィン列10あるいは上部冷却フィン列11を構成する冷却フィン10aあるいは11a(
図5参照)のそれぞれに挿通され、挿通箇所で伝熱的に接触している。このように構成されているので、ヒートパイプ9によって、基体8から下部冷却フィン列10あるいは上部冷却フィン列11へ熱を輸送することができる。
【0034】
なお、ヒートパイプ9は、パイプ状の熱輸送部材であり、その動作原理はヒートスプレッダ6と同じである。つまり、ヒートパイプ6は例えば銅のような熱伝導性の高い材料で作られたパイプの中に、例えば水、エタノール、メタノール,アセトン等の冷媒を封入するとともに、前記パイプの内部に、冷媒蒸気が流れる蒸気流路と、液化した冷媒が流れる液体流路が形成されている。なお、液体流路は単なる管路であってもよいし、毛細管現象を利用する流路であってもよい。毛細管現象を利用できれば、ヒートパイプ9の姿勢に関わらずに液体を移動させることができる。例えば、重力に逆らって(下から上に)液体を移動させることができる。ヒートパイプ9は、既に周知の装置であり、市場において入手できるので、ヒートパイプ9の構造・構成等についての詳細な説明は省略する。
【0035】
図5に示すように、下部冷却フィン列10と上部冷却フィン列11は、それぞれ複数の冷却フィン10a、11aを互いに平行に間隔を空けて配列して構成された熱拡散部材である。下部冷却フィン列10と上部冷却フィン列11は上下に積層配置され、下部冷却フィン列10の配列軸X(冷却フィン列を構成する冷却フィンの幾何学的中心を連ねる軸)と上部冷却フィン列11の配列軸Yは互いに直交する。したがって、配列軸Xと配列軸Yは互いに「ねじれ」の関係にある。なお、冷却フィン10a、11aの素材はアルミニウムの平板であるが、熱伝導性を有する素材(たとえば、金属材料、高熱伝導性プラスチック、エンジニアリングプラスチック、グラファイト等)であればいかなるものでもよい。また、
図1(b)参照に示すように、下部冷却フィン列10は基台8から離して配置される。なお、下部冷却フィン列10と上部冷却フィン列11は、それぞれ、冷却フィン10a、11aを12枚備えるが、煩瑣を避けるために、
図5においては、そのうちの1枚だけに符号を付している。
【0036】
発光ユニット2、ヒートスプレッダ6及び基台8は
図6に示すように結合されている。すなわち、発光ユニット2はヒートスプレッダ6の一方の面にあって、ヒートスプレッダ6の中央近傍に発光ダイオード5が位置するように接触して取り付けられている。以下、説明の便宜のために、ヒートスプレッダ6の発光ユニット2と接触する部位を「接触部」と呼ぶ。また、基台8はヒートスプレッダ6の他方の面にあって、ヒートスプレッダ6の周縁に直に接触して取り付けられている。以下、説明の便宜のために、ヒートスプレッダ6の基台8と接触する部位を「拡散部」と呼ぶ。ヒートスプレッダ6を平面視すると、拡散部は接触部を取り囲んで配置される。
【0037】
このように構成されているので、発光ユニット2から接触部を通って、ヒートスプレッダ6に流入した熱は、拡散部に輸送されて基台8に流れる。そのため、接触部の温度上昇が抑制される。言い替えれば、接触部が高温にならない(ホットスポットが生じない)。そのため、発光ユニット2とヒートスプレッダ6の間の熱抵抗が減少する。
【0038】
基台8に流入した熱はヒートパイプ9を通って、下部冷却フィン列10と上部冷却フィン列11(以下、両者を総称する場合に「冷却フィン列」という)に輸送され、そこで、環境に拡散放出される。この時、空気(冷却空気)は、
図7に示すように流れる。すなわち、冷却空気は基台8と下部冷却フィン列10の間の「隙間」から流入し、冷却フィン列の中に入る、冷却フィン列で熱を吸収(つまり、昇温)した冷却空気は密度が小さくなるから、冷却フィン列の中を上昇し、上部冷却フィン列11の上面から排出される。このように、冷却フィン列で放出される熱によって、冷却空気の流れが発生する。
【0039】
このように、冷却空気は、下部冷却フィン列10の下方に流入し、冷却フィン10aから熱を奪いながら冷却フィン10aの間を上昇するが、その間に冷却フィン10aの間の冷却空気において温度境界層が発達する。つまり温度境界層が厚くなる。温度境界層が厚くなると、温度境界層外の比較的低温の冷却空気に熱が伝わり難くなるので、冷却フィン10aによる放熱の能率が低下する。しかし、上部冷却フィン列11の配列軸Yは下部冷却フィン列10の配列軸Xに対して直交しているので、下部冷却フィン列10(冷却フィン10a)から抜け出た冷却空気が上部冷却フィン列11に入ると、下部冷却フィン列10において温度境界層外にあった比較的低温の空気が冷却フィン11aに直接接触する。そのため、冷却フィン11aは能率良く放熱する。
【0040】
このように照明装置1は、発光ダイオード5で発生した熱を能率良く環境に放出して、発光ダイオード5を効果的に冷却することができる。そのため、発光ダイオード5の高輝度発光が可能になる。また、輝度が従来品と同等ならば、照明装置1を小型軽量に構成することができる。
【0041】
なお、上記の実施形態は本発明の実施態様の一例を示すものであって、本発明の技術的範囲は上記の実施形態によっては限定されない。本発明は、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲において、自由に、応用、変形、あるいは改良して実施することができる。
【0042】
例えば、照明装置1の形状や寸法は例示であって、各図面に示されたものには限定されない。ヒートスプレッダ6の平面形は、矩形以外の多角形であっても、円形であってもよい。冷却フィン10a,11aの平面形も矩形には限定されない。
【0043】
また、基板4や基台8は、任意的構成要素であって、これらが省かれていてもよい。例えば、発光ダイオード5はヒートスプレッダ6に直接実装されてもよい。また、ヒートスプレッダ6にヒートパイプ9が直接装着されてもよい。
【0044】
また、照明装置1は、上記の実施形態に例示されていない構成が追加されてもよい。例えば、筐体、グローブ、レンズ、反射板等を備えてもよい。また、発光ダイオード5を点灯するための電源回路や制御回路が内蔵されてもよい。
【0045】
また、上記の実施形態では、熱拡散部材の具体例としてヒートスプレッダ6を例示したが、熱拡散部材はヒートスプレッダ6には限定されない。つまり、容器に密封された冷媒の相変化を利用する熱拡散部材には限定されない。固体の熱伝導を利用するもの、例えば銅やアルミニウムの板や塊であってもよい。もっとも、ヒートスプレッダ6を熱拡散部材として備えれば、銅やアルミニウムの板や塊を熱拡散部材として備える場合に比べて、照明装置1の冷却能力が向上することは言うまでもない。
【0046】
上記の実施形態では、ヒートスプレッダ6の中央部に配置された接触部を、ヒートスプレッダ6の周縁部に配置された拡散部が、「ロ」字形に取り囲む例を示したが、拡散部はヒートスプレッダ6の周縁部にあればよく、その平面形は「ロ」字形には限定されない。例えば、ヒートスプレッダ6の周縁部の一部に拡散部が配置されていない部分があってもよい。つまり拡散部の平面形は「コ」字形や「ニ」字形のであってもよい。
【0047】
また、上記の実施形態において、熱放出部材の具体例として、下部冷却フィン列10と上部冷却フィン列11を示したが、熱放出部材の形態や形状はこれらに限定されない。例えば、冷却フィン列を1段だけ備えても良いし、3段以上備えてもよい。あるいは、3段以上の冷却フィン列を配列軸の方向を交互に変えて、積み重ねてもよい。
【0048】
例えば、
図8に示すように、4組の放熱ユニット7を「田」の字形に配置して、各放熱ユニット7にヒートスプレッダ6(
図8において、図示せず)を介して、発光ユニット2(
図8において、図示せず)を取りつけて、照明装置1(
図8において、図示せず)を構成してもよい。また、各放熱ユニット7には、冷却フィン列12〜15が4段に積み重ねて配置され、冷却フィン列12,14の配列軸と冷却フィン列13,15の配列軸の方向は、互いに直角をなし、隣り合う配列軸は「捩れ」の関係にある。
【0049】
また、
図1の実施形態では、例えば、一つの冷却フィン列10に対し、互いに向かい合うように曲げられた一対のヒートパイプ9を2組、すなわち、計4本のヒートパイプ9を備えているが、
図8の実施形態では、一つの冷却フィン列12に対し、互いに向かい合うように曲げられた一対のヒートパイプ9が1組、すなわち計2本を備えている。同様に、各冷却フィン列13,14,15に対して、ヒートパイプ9を1組、すなわち計2本のヒートパイプ9を備えている。このようにして、冷却フィン列12,13,14,15を4段に積み重ねて配置された放熱ユニット7は、合計8本のヒートパイプ9を備える。
【0050】
また、
図9に示すように、冷却フィン列12〜15の一部を互いに重ねて配置してもよい。つまり、冷却フィン列を構成する冷却フィンに切り込みを設けて、該切り込みに、隣接する他の冷却フィン列を挿しこんで、放熱ユニット7の高さを低くしてもよい。
【0051】
なお、
図1および
図8の実施形態で説明したヒートパイプ9は、全体として「L」字状をなしているが、
図9の実施形態においては、
図10に示されるように、2本の直管状のヒートパイプ9を基台8に対し垂直方向と水平方向に配置される。また、それら2本のヒートパイプ9は、ジョイント部材9bを用いて連結され、垂直方向及び水平方向に延びる連結型のヒートパイプが形成される。なお、
図10は、
図9に示す照明装置の1組の放熱ユニット7から冷却フィンを除いた状態を示す斜視図である。
【0052】
また、
図10に示された放熱ユニット7は、基材8と、その基材8と熱的に接触して垂直方向に延びる4本のヒートパイプ9と、冷却フィン列に熱的に接触して水平方向に延びる4本のヒートパイプと、それらのヒートパイプ9を相互に接続する4個のジョイント部材9bから形成されているが、ヒートパイプ9やジョイント部材9bの数は前記の数には限定されない。要するに、基台8と冷却フィン列10〜15が、ヒートパイプを介して伝熱的に接続されればよい。
【0053】
また、
図9および
図10においては、ヒートパイプ9は基台8の側壁に形成された凹部8bに外側から固定部材8cで挟み込む状態で固定されているが、少なくともヒートパイプ9と基台8が熱的に接続されるならば、いかなる方法で接続されてもよい。
【0054】
また、
図8および
図9に示された冷却フィン列12〜15は、隣接する冷却フィンの面積が異なる。具体的には、
図8および
図9の放熱ユニット7の冷却フィン列12において隣接する冷却フィン12aの面積は、冷却フィンの配列軸に沿って徐々に小さくなっている。これにより、
図8に示されるように、4組の放熱モジュール7を配置すると、照明装置1の全体の形状が円柱状に形成され、その結果、照明装置を小型化および軽量化することができる。なお、
図8および
図9に示されるように、他の冷却フィン列13〜15も、冷却フィン列12と同様に構成される。
【0055】
また、上記の実施形態において、下部冷却フィン列10の配列軸Xと上部冷却フィン列11の配列軸Yが互いに直交する例を示したが、配列軸Xと配列軸Yは互いに「ねじれ」の関係にあれば足りるので、他の角度で交わっても良い。要するに、下部冷却フィン列10を流れる間に生成された温度境界層の外側にある空気が上部冷却フィン列11に当たるように配置されていれば良い。
【0056】
また、上記の実施形態において、発光素子の具体例として発光ダイオード5を例示したが、本発明の技術的範囲は、発光ダイオードを光源とする照明装置には限定されない。他の固体発光素子、例えばEL(Electroluminescence)素子を光源としてもよい。また、白熱電球や放電(蛍光)ランプを光源としてもよい。つまり、発光素子は白熱電球や放電(蛍光)ランプであってもよい。又、将来出現する新規な光源を発光素子としてもよい。
【0057】
そもそも、本発明は発光ダイオード等を備える照明装置において、高輝度発光を可能にするとともに、照明装置を小型軽量化することを目的としているが、高輝度発光と小型軽量化が矛盾することは白熱電球や放電(蛍光)ランプを光源に使用する照明装置においても同様である。したがって、このような照明装置に本発明を適用する意義がある。
【0058】
また、上記実施形態の説明において、各構成要素を結合する手段について特に言及しなかったが、各種公知の手段、例えば、かしめ、溶接、蝋付け、ねじ止めを利用できる。また、ヒートパイプとフィンの接合には、例えば、圧入、接着、半田付け、溶接、溶着などの手段を用いることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 照明装置
2 発光ユニット
3 冷却ユニット
4 基板
5 発光ダイオード
6 ヒートスプレッダ
7 放熱ユニット
8 基体
9 ヒートパイプ
9b ジョイント部材
10 下部冷却フィン列
11 上部冷却フィン列
12〜15 冷却フィン列