【実施例】
【0056】
以下、本発明を、実施例を用いて更に詳細に説明する。ただし、本発明の技術範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0057】
(1)ナガイモレクチンDB1遺伝子の塩基配列決定
ナガイモ塊茎からConcert Plant RNA Reagent(Invitrogen社)を用いてプロトコルに従い全RNAを抽出した。引き続きMicro-FAST Track mRNA Isolation Kit(Invitrogen社)を用いてプロトコルに従ってポリ(A)+RNAを精製した。
【0058】
Marathon cDNA Amplification Kit(BD Biosciences Clontech)を用いて、5’末端にMarathon cDNA Adaptorを付加したcDNAを合成した。そのcDNAを鋳型にして、既報のDB1(DDBJアクセッションNo.AB178475)配列に相補的なプライマーXB/DB1F(5'-
TCTAGAGGATCCATGGCCGATTTCATACTT-3'(配列番号5)、下線部分はXba IとBam HI認識サイト)とS/DB1R(5'-
GAGCTCTCACTTGTTGACGACC-3'(配列番号6)、下線部分はSac I認識サイト)の組合わせでPCRを表1及び表2に示した条件で行い、PCR生成物の塩基配列を決定した。得られたDNA配列は、配列番号3に示したとおりである。さらに本PCR生成物を、pGEM-Tベクター(Invitrogen社)にTAクローニングした。既報のDB1(DDBJアクセッションNo.AB178475)遺伝子が組込まれたプラスミドを持った大腸菌コロニーからQIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN社)によりプラスミド1を単離した。
【0059】
なお、操作の概略を
図1に示した。
【表1】
【表2】
【0060】
(2)DB1タンパク質前駆体に含まれるシグナル配列をコードするDNAのクローニングと塩基配列決定
ナガイモ塊茎からConcert Plant RNA Reagent(Invitrogen社)を用いてプロトコルに従い全RNAを抽出した。引き続きMicro-FAST Track mRNA Isolation Kit(Invitrogen社)を用いてプロトコルに従ってポリ(A)+RNAを精製した。
【0061】
Marathon cDNA Amplification Kit(BD Biosciences Clontech)を用いてcDNAの5’末端にMarathon cDNA Adaptorを付加したcDNAをキットのプロトコルに従い合成した。Marathon cDNA AdaptorがついたDB1cDNAを鋳型にして、cDNA Adaptorに相補的なAdaptor Primer(AP1;5’-CCATCCTAATACGACTCACTATAGGGC-3’(配列番号7))と、既報のDB1(DDBJアクセッションNo.AB178475)配列に相補的なプライマー(DB1midR;5’-CATTTCCCACGTTGGTGT-3’(配列番号8))を用いて、表3及び4に示す条件で5’-RACE PCRを行った。
【表3】
【表4】
【0062】
次に、得られたPCR生成物をpGEM-T Easy Vector(Promega)にTAクローニングし、大腸菌JM109株に導入し、アンピシリン50ppmを含有するLB培地上で選抜した。目的のプラスミドを持った大腸菌コロニーからプラスミドをQIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN社)により回収し、Adaptor primerとDB1midR primerを用いて塩基配列を決定した。Adaptor primerとDB1midR primer間の明らかになった遺伝子配列及び推定アミノ酸配列をそれぞれ配列番号9及び10に示した。
【0063】
次に、配列番号9に示したDNA配列の最初のATGの上流にXba IとBamH Iを付加したプライマー(XB/NDB1F;5’-
TCTAGAGGATCCATGGCTAACCCAGGAGCA-3’(配列番号11)、下線部分はXba IとBam HI認識サイト)および、既報のDB1のcDNA配列(DDBJアクセッションNo.AB178475)のストップコドンを含む17塩基に相補的な配列にSac I配列を付加したプライマー(S/DB1R;5’-
GAGCTCTCACTTGTTGACGACC-3’ (配列番号12)、下線部分はSac I認識サイト)を用い、はじめに合成したナガイモ塊茎のcDNAを鋳型にして表5及び6に示す条件でPCRを行い、全長DB1DNAを得た。全長DB1DNAの配列を配列番号13に示した。全長cDNAから予想されるアミノ酸配列(配列番号14)に基づいて細胞内局在予測データベースpredotarを用いて予測すると、配列番号1及び2に示す領域に小胞体移行シグナル配列が確認された。
【表5】
【表6】
【0064】
次に、本PCR生成物をpGEM-Tベクター(Invitrogen社)にTAクローニングした。全長ナガイモDB1遺伝子が組込まれたプラスミドを持った大腸菌コロニーからQIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN社)によりプラスミド2を単離した。なお、操作の概略を
図1及び
図2に示した。
【0065】
(3)遺伝子組換えイネの作出とDB1遺伝子導入の確認
配列番号13に示す全長ナガイモDB1遺伝子をバイナリーベクターに挿入し、通常のアグロバクテリウム法を用いてイネ(Oryza sativa L.)台中65号に遺伝子導入した。
【0066】
<イネ種子の前培養>
感染用イネカルスの培養として、脱穀済みのイネ種子を50ml遠心用チューブに取り、イネ種子滅菌溶液(次亜塩素酸ナトリウム水溶液、有効塩素濃度2%(wt%)、0.5%Tween20を40ml加え15分間転倒混和しながら洗浄した。溶液のみをデカントで除去し滅菌水で4〜5回洗浄し、次亜塩素酸を除いた。滅菌した濾紙上に種子をあけ、水分を除去しN6CI培地に置床し、30℃、16L/8Dの条件で培養した。2週間ごとに継代し、1ヶ月半継代後のカルスを形質転換に使用した。
【0067】
<コンストラクトの作成>
I)35S-DB1
配列番号13に示す全長ナガイモDB1遺伝子をバイナリーベクターE12-35S-Ω(Mitsuharaら, Plant and Cell Physiology, 37, 49-59(1996))のBamH I/Sac Iサイトに挿入して、コンストラクトを作成した(
図2/バイナリーベクター2)。
【0068】
II)RSs1-DB1
5’末端にSal Iの制限酵素切断部位をつけたプライマー(Sal/RSs1 F)と3’末端にBamH Iの制限酵素切断部位をつけたプライマー(Bam/RSs1 R)を用いて、台中65号から抽出したイネゲノムをテンプレートにしてKOD PLUS(TOYOBO)を用いたPCRを表7及び8に示す条件で行い、Rice sucrose synthase 1プロモーター(RSs1Pro.)をクローニングした。
【表7】
【表8】
【0069】
次に、PCR生成物に対し1.5%アガロースゲルを用いて電気泳動を行い、RSs1プロモーターの断片をゲルから抽出した。rTaq(Takara)を用いたPCRを、表9及び10に示す条件で行い断片の両端にA(adenine)を付加した後、pGEM-T Vector(アンピシリン;Amp耐性)(Promega)に挿入(TA cloning;16℃ o/n)して、大腸菌へクローニングした。
【表9】
【表10】
【0070】
次に、Amp耐性、RSs1Pro.cDNAを持つコロニーをSal/RSs1 F、RSs1 600 Rのプライマーを用いたコロニーPCRによって選抜した。コロニーPCRの条件を表11、12及び13に示した。得られたコロニーを、Ampを加えたLB培地に植菌し、QIAprep spin miniprep kit(QIAGEN)を用いてプラスミドを精製した。得られたプラスミドに対してSal IとBamH Iで制限酵素処理を行い、RSs1 Pro.を切り出した。バイナリーベクター(pBI101H)をSal IとBamH Iで制限酵素処理し、RSs1 Pro.を連結(ligation)した(RSs1バイナリー)。配列番号13に示す全長ナガイモDB1遺伝子を、RSs1バイナリーのBamH I/Sac Iサイトに挿入して、コンストラクトを作成した(
図3/バイナリーベクター4)。
【表11】
【表12】
【表13】
【0071】
使用したプライマーを下記にまとめて示す。なお、下線部は制限酵素部位である。
【0072】
XB/NDB1 F: 5’-
TCTAGAGGATCCATGGCTAACCCAGGAGCA-3’(配列番号15)
S/DB1 R: 5’-
GAGCTCTCACTTGTTGACGACC-3’(配列番号16)
Sal/RSs1 F: 5’-
GTCGACCTTTCGTGACTTGTTTTCGC-3’(配列番号17)
Bam/RSs1 R: 5’-
GGATCCTAGCTTGGCAGCCAT-3’(配列番号18)
RSs1 600 R: 5’-CCAAACAAGAACAAACCGGC-3’(配列番号19)
<バイナリーベクターコンストラクトの作成>
プラスミド1及びプラスミド2をSac I(TAKARA BIO社)で処理後、DNA PCR & Gel Purification Kit(GE Healthcare社)でDNAを精製した。引き続きBam HI(TAKARA BIO社)で切断し、アガロースゲル(0.8%)で電気泳動し、プラスミド1からは456bpのバンドを、プラスミド2からは525bpのバンドをアガロースゲルから回収し、DNA PCR & Gel Purification Kit(GE Healthcare社)でDNAを精製した。
【0073】
一方、バイナリーベクター(El2-35S-Ω)をSac I(TAKARA BIO社)で処理後、DNA PCR & Gel Purification Kit(GE Healthcare社)でDNAを精製した。引き続きBam HI(TAKARA BIO社)で切断し、アガロースゲル(0.8%)で電気泳動し、GUS遺伝子を除去したDNA部分をDNA PCR & Gel Purification Kit(GE Healthcare社)を使用して精製した。本バイナリーベクター部分のDNAをプラスミド1及びプラスミド2から切断した456bp及び525bpのDNAをそれぞれDNA Ligation Kit(TAKARA BIO社)を用いてライゲーションし、シグナル配列欠失DB1遺伝子を組込んだバイナリーベクター1と全長DB1遺伝子を組込んだバイナリーベクター2を作製した。
【0074】
<アグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens)へのコンストラクトの導入>
作成した上記のバイナリーベクター1μgを、Agrobacterium tumefaciensのEHA105系統に導入し、カナマイシンにて選抜した。コロニーPCRによりDB1cDNAの導入を確認できたアグロバクテリウムを形質転換に用いた。
【0075】
<アグロバクテリウムの前培養>
形質転換を行う3日前に、アグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens)をAB固形培地(50mg/lハイグロマイシン)に塗布し、24℃、暗黒条件下で3日間培養した。
【0076】
<アグロバクテリウムの感染と共存培養>
50mlファルコンチューブにAA培地を40ml入れ、アセトシリンゴンを40mg/lとなるように加えた。前培養したアグロバクテリウムを200μlチップの先で少量かき取り、前述のAA培地中に溶かし、暗黒条件下で30分間振とうした。1ヵ月半培養したイネカルスを、アグロバクテリウムを入れたAA培地に入れ、1.5分間振とうした。AA培地の上澄みをビーカーに空け、余分なAA培地を滅菌したキムタオル(商品名:株式会社クレシア製)で除去した。N6CO培地(40mg/lアセトシリンゴン添加)に滅菌濾紙を載せ、その上にカルスを置いて24℃、暗黒条件下で3日間培養した。
【0077】
<アグロバクテリウムの除去と選抜>
共存培養したカルスを50mlファルコンチューブに移し、滅菌水で4回洗浄した。その後、滅菌水(50mg/l メロペン)で4回洗浄し、余分な滅菌水を滅菌したキムタオル(商品名:株式会社クレシア製)で除去した。カルスをN6SE(30mg/l ハイグロマイシン、40mg/l メロペン)培地に移植し、30℃、16L/8Dで2〜3週間培養した。
【0078】
<形質転換体の再分化>
選抜培養後、カルスをイネ再分化培地(30mg/l ハイグロマイシン、40mg/l メロペン)へと移植し30℃、16L/8Dで培養し、再分化を誘導した。2週間ごとに継代を行いシュート、根が分化してきたらイネ発根培地(30mg/l ハイグロマイシン、40mg/l メロペン)へと移植した。各培地組成は下記にまとめて示した。
【0079】
選抜によって得られたカルスから以下に示す簡易法によりゲノムを抽出し、XB/NDB1F、S/DB1 Rプライマーを用いて表14及び15に示す条件でPCRを行い遺伝子の導入を確認した。
【表14】
【表15】
【0080】
PCRによって遺伝子導入が確認された個体は発根培地で十分根が生えるまで培養し、その後、直径8cmのビニールポットに移植して閉鎖系温室(25℃±1℃、16L/8D)で育成した。なお、形質転換体と非形質転換体において、生育に差は見られなかった。
【0081】
<T
0個体における簡易法による遺伝子導入の確認>
植物体から0.5×1cm程度の大きさの葉片を切り取り、2〜3粒のガラスビーズBZ-3(AS ONE)といっしょに1.5mlチューブに入れた。DDW(滅菌水)を100μl加え、組織粉砕機(QIAGEN Tissue Lyser)で30回/秒、5分間高速振とうすることにより破砕した。100μlのDNA抽出バッファ(200mM Tris-HCl(pH7.5)、250mM NaCl、25mM EDTA、0.5%SDS)を加え、転倒混和してから10分間放置した。その後15,000rpmで10 分間遠心分離した。上清100μlを新たな1.5mlチューブに移し、2-プロパノールを等量加え転倒混和した。十分に攪拌した後、15,000rpmで5分間遠心分離した。上清をピペットで完全に取り除き、10分間風乾したのち、DDW100μlを入れボルテックスにより溶解した。抽出したゲノムDNAは4℃で保管した。
【0082】
<T
0個体におけるDB1タンパク質蓄積の確認>
2 mlチューブにイネ葉片0.1gを入れ液体窒素で凍結したのちペッスルで破砕した。50mMのTris-HCl(pH7.0)およびProtease Inhibitor(Roche社製) をそれぞれ0.2mlおよび20μlずつ入れ、氷上にて磨砕した。抽出液を1.5mlチューブに移し、2,000rpmで10分間遠心分離した。上清を新しい1.5mlチューブへ移し、15,000rpm1で10分間遠心分離した。上清をタンパク質抽出液とした。
【0083】
得られたタンパク質抽出液0.5〜10μlと3×サンプルバッファ5μl、50mMのTris-HCl(pH7.0)を計15μlになるように混合し、33分間煮沸した後、氷上で5分間急冷し、泳動用サンプルとした。ポジティブコントロールおよびDB1の濃度定量として、ナガイモ精製DB1(1.0ng/μl)を1、3、5、8、10μlと3×サンプルバッファ5μl、50mMのTris-HCl(pH7.0)を計15μlになるように加えたものを作成し、同様に煮沸、急冷したものを用いた。これらを15%のポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動を行った。
【0084】
電気泳動後、セミドライ式ブロッティングを行った。PVDFメンブレン(0.45μm、Millipore)をメタノールに数秒間浸した後、トランスファーバッファ(グリシン14.42g、Tris-HCl3.02g、SDS1.0g/1L)に浸した。ブロッティング装置にトランスファーバッファで浸した濾紙6枚、ゲル、メンブレン、濾紙6枚の順に空気が入らないように重ね、装置のふたを閉めた。電流をメンブレンの大きさ(cm
2)×0.8mAに設定して1.0時間ブロッティングした。
【0085】
ブロッティング終了後のメンブレンをTBS(50mM Tris-HCl、0.9%NaCl、0.02%NaN
3、pH8.0)に10分間浸した。メンブレンをメンブレンバックに入れ、ブロッキングバッファ(20ml TBS、5%スキムミルク、0.1% Tween20)を入れて、室温で1時間振とう、あるいは4℃で一晩ブロッキングした。
【0086】
メンブレンを40rpmで振とうしながらTBS-T(TBS、0.1% Tween20)で10分間×2回洗った。メンブレンバックに入れ、1次抗体液(10ml TBS-T、0.1g BSA、1μl anti-DB1 rabbit antisera)を加え、室温で1時間振とう、あるいは4℃で一晩、1次抗体反応を行った。
【0087】
1次抗体反応後のメンブレンを40rpmで振とうしながらTBS-Tで10分間×2回洗った。メンブレンバックに入れ、2次抗体液(10ml TBS-T、0.1g BSA、2μl anti-Rabbit IgG(Fc)、AP conjugate(Promega))を加え、室温で1時間振とうして2次抗体反応を行った。
【0088】
2次抗体反応後のメンブレンを40rpmで振とうしながらTBS-Tで10分間洗った。洗浄液を捨てて、AP9.5Buffer(100mM Tris-HCl(pH9.5)、100mM NaCl,50mM MgCl
2)にメンブレンを3分間浸して緩衝化させた。メンブレンをメンブレンバックに入れて発色液(10ml AP9.5Buffer、173mM NBT 50μl、115.3mM BCIP 25μl)を加え、バンドが検出されるまで軽く振とうした。
【0089】
35S-DB1導入系統のT
0個体およびRSs1-DB1導入系統のT
0個体において、DB1cDNAプラスミドと同様の位置(519bp)にバンドが確認できた 。
【0090】
<T
1個体におけるDB1遺伝子導入の確認>
簡易法により目的遺伝子の導入が確認された35S-DB1導入系統およびRSs1-DB1導入系統のT
0個体について自殖次世代T
1個体を展開した。T
0個体の場合と同様に、簡易法によりT
1個体のゲノムを抽出し、XB/NDB1F、S/DB1 Rプライマーを用いてPCRを行い遺伝子の導入を確認した。
【0091】
<T
1個体におけるDB1タンパク質蓄積の確認>
T
1個体について、T
0個体と同様の操作を行い、DB1タンパク質の蓄積を確認した。
【0092】
(4)比較対照用の遺伝子組換えイネの作出とDB1遺伝子導入の確認−1
上記(3)に準じて、配列番号3に示すDB1遺伝子をバイナリーベクターに挿入し、通常のアグロバクテリウム法を用いてイネ(Oryza sativa L.)台中65号に遺伝子導入した。簡易法によりT
0個体のゲノムを抽出し、XB/NDB1F、S/DB1 Rプライマーを用いてPCRを行い遺伝子の導入を確認したが、目的遺伝子の導入は確認されなかった。
【0093】
(5)比較対照用の遺伝子組換えイネの作出とDB1遺伝子導入の確認−2
上記(3)の「RSs1-DB1コンストラクトの作成」におけるGUS遺伝子を導入したバイナリーベクター3(
図3)を用いて、上記(3)と同様の遺伝子組換え操作を行い、目的とする比較対照用の遺伝子組換えイネT
1個体を作出した。
【0094】
(6)遺伝子組換えイネT
0個体のヒメトビウンカ(Laodelphax striatellus)に対する効果試験
PCRによって遺伝子導入が確認された個体を発根培地で十分根が生えるまで培養し、その後、直径8cmのビニールポットに移植して閉鎖系温室(25℃±1℃、16L/8D)で育成した。個体が3葉期に達した段階で、菊川水田土を入れた1/10,000aポットに深度2cmで移植し、ナイロン製の網でポットを被い、移植7日後及び14日後に網の中にそれぞれヒメトビウンカの雌成虫10頭を放した。移植42日後に次世代幼虫数及び成虫数を調査した。その結果を表16に示す。
【表16】
【0095】
表16に示すように、配列番号
13に示すシグナル配列を含むDB1遺伝子を導入したT
0個体は、非組換え体と比較して、ヒメトビウンカに対する非常に優れた防除効果を示した。なお、配列番号3に示すシグナル配列を付加しないDB1遺伝子のみを導入したイネT
0個体は、非組換え体と比較して、ヒメトビウンカに対する防除効果が僅かであった。
【0096】
(7)遺伝子組換えイネT
1個体のヒメトビウンカ(Laodelphax striatellus)に対する効果試験
イネT
1種子を育苗培土の入ったペーパーポットに1粒ずつ播種し、隔離温室で栽培した。播種後19日後、葉の一部からDNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN)を用いて、ゲノムDNAを抽出してPCR解析に供試した。ハイグロマイシン耐性遺伝子を確認するために、フォワードプライマーとしてHph-1S(5’-tgtcacgttgcaagacct-3’(配列番号20))、リバースプライマーとしてHph-1A(5’-caaccaagctctgatagagttg-3’(配列番号21))を使用した。PCR反応は95℃で2分間行った後、95℃/30秒、54℃/1分、72℃/1分、を35サイクル行い、最終伸張反応は72℃で10分間行った。反応終了後、PCR反応液をアガロースゲル電気泳動に供し、ハイグロマイシン耐性遺伝子の導入が確認された個体を、菊川水田土を入れた1/10,000aポットに深度2cmで移植した。移植7日後に、ナイロン製の網でポットを被い、網の中にヒメトビウンカの雌成虫5頭を放した。移植12日後に全ての雌成虫を取り除き、移植28日後に次世代幼虫に対する効果を調査した。その結果を表17に示す。
【表17】
【0097】
(8)遺伝子組換えイネのトビイロウンカ(Nilaparvata lugens)に対する効果試験
イネT
1種子を育苗培土の入ったペーパーポットに1粒ずつ播種し、隔離温室で栽培した。播種後19日後、葉の一部からDNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN)を用いて、ゲノムDNAを抽出してPCR解析に供試した。ハイグロマイシン耐性遺伝子を確認するために、フォワードプライマーとしてHph-1S(5’-tgtcacgttgcaagacct-3’ (配列番号20))、リバースプライマーとしてHph-1A(5’-caaccaagctctgatagagttg-3’(配列番号21))を使用した。PCR反応は95℃で2分間行った後、95℃/30秒、54℃/1分、72℃/1分、を35サイクル行い、最終伸張反応は72℃で10分間行った。反応終了後、PCR反応液をアガロースゲル電気泳動に供し、ハイグロマイシン耐性遺伝子の導入が確認された個体を、菊川水田土を入れた1/10,000aポットに深度2cmで移植した。移植9日後に、ナイロン製の網でポットを被い、網の中にトビイロウンカの雌成虫5頭を放した。移植14日後に全ての雌成虫を取り除き、さらに、移植29日後にトビイロウンカの雌成虫5頭を追加放虫し、移植43日後に次世代幼虫に対する効果を調査した。その結果を表18に示す。
【表18】
【0098】
(9)遺伝子組換えイネのセジロウンカ(Sogatella furcifera)に対する効果試験
イネT
1種子を育苗培土の入ったペーパーポットに1粒ずつ播種し、隔離温室で栽培した。播種後19日後、葉の一部からDNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN)を用いて、ゲノムDNAを抽出してPCR解析に供試した。ハイグロマイシン耐性遺伝子を確認するために、フォワードプライマーとしてHph-1S(5’-tgtcacgttgcaagacct-3’ (配列番号20))、リバースプライマーとしてHph-1A(5’-caaccaagctctgatagagttg-3’ (配列番号21))を使用した。PCR反応は95℃で2分間行った後、95℃/30秒、54℃/1分、72℃/1分、を35サイクル行い、最終伸張反応は72℃で10分間行った。反応終了後、PCR反応液をアガロースゲル電気泳動に供し、ハイグロマイシン耐性遺伝子の導入が確認された個体を、菊川水田土を入れた1/10,000aポットに深度2cmで移植した。移植9日後に、ナイロン製の網でポットを被い、網の中にトビイロウンカの雌成虫5頭を放した。移植14日後に全ての雌成虫を取り除き、移植43日後に次世代幼虫に対する効果を調査した。その結果を表19に示す。
【表19】
【0099】
以上のように、本発明に係るシグナルペプチドを利用して、ナガイモレクチンDB1遺伝子を発現、蓄積した組み換えイネは、種々の吸汁性害虫に対する耐虫活性を有していることが明らかとなった。
【0100】
なお、本実施例で使用した培地組成を下記の表20にまとめて示した。
【表20】
【0101】
【0102】
【0103】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。