(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769319
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】活性成分としてレバミピドを含む骨関節炎の予防用または治療用の薬学組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4704 20060101AFI20150806BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20150806BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20150806BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
A61K31/4704
A61P19/02
A61K9/20
A61K9/48
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-556024(P2012-556024)
(86)(22)【出願日】2011年3月4日
(65)【公表番号】特表2013-521277(P2013-521277A)
(43)【公表日】2013年6月10日
(86)【国際出願番号】KR2011001497
(87)【国際公開番号】WO2011108882
(87)【国際公開日】20110909
【審査請求日】2014年1月7日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0019671
(32)【優先日】2010年3月5日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510058863
【氏名又は名称】ザ カトリック ユニバーシティ オブ コリア インダストリー−アカデミック コーオペレイション ファウンデーション
(73)【特許権者】
【識別番号】512046866
【氏名又は名称】ハンリム ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ミン,ジュンギ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ミラ
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ユンジュ
(72)【発明者】
【氏名】オ,ヘジャ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ユンオク
(72)【発明者】
【氏名】イ,グンヒョグ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ビョンソン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジンハ
(72)【発明者】
【氏名】カク,ウニョン
【審査官】
牧野 晃久
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−012578(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0022473(US,A1)
【文献】
Masayuki Kohashi, Naozmi Ishimaru, Rieko Arakaki, and Yoshio Hayashi,Effective Treatment With Oral Administration of Rebamipide in a Mouse Model of Sjogren's Syndrome,ARTHRITIS & RHEUMATISM,米国,2008年 2月,Vol.58, No.2,389-400
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00− 31/80
A61P 19/00− 19/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分としてのレバミピド及び薬学的に許容可能な担体を含む骨関節炎の治療用の薬学組成物。
【請求項2】
経口投与用であることを特徴とする請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項3】
錠剤形態またはカプセル剤形態の経口用固形剤形を有することを特徴とする請求項2に記載の薬学組成物。
【請求項4】
0.5〜50mg/kgの用量で、レバミピドを経口投与するのに適した単位投与形態に製剤化されることを特徴とする請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項5】
0.6〜6mg/kgの用量で、レバミピドを経口投与するのに適した単位投与形態に製剤化されることを特徴とする請求項4に記載の薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分としてレバミピドを含む骨関節炎の予防用または治療用の薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
骨関節炎は、関節炎の一種であり、変性性関節炎とも呼ばれる。骨関節炎は、滑膜関節において軟骨及び隣接骨に退行性変化が生じることによって引き起こされる関節炎である。すなわち、骨関節炎は、関節軟骨が徐々に減少し、かつ軟骨下骨の肥大、関節縁での骨増生、及び非特異的滑膜炎が見られることを特徴とする。骨関節炎は、加齢及び/または物理的圧力(例えば、肥満、外傷など)による軟骨の損傷により発生する。従って、骨関節炎は、膝関節や関節のような体重のかかる関節における激しい痛み及び/または運動障害を伴い、長期間放置すると関節の変形を招く。
【0003】
一般的に、骨関節炎は、以下の段階を経て進行する。
軟骨内水分量の増加により浮腫が発生する軟骨変化段階(段階1)
軟骨の破壊により軟骨表面の浸食、骨の露出、関節腔狭少化が見られるフィブリル化段階(段階2)
軟骨細胞が補償的な軟骨形成を始めるが、軟骨破壊の速度が形成速度を上回る総軟骨量減少段階(段階3)
骨の変形によって関節の奇形及び機能障害が生じる骨変形段階(段階4)
軟部組織が肥厚する関節軟部組織変化段階(段階5)
【0004】
骨関節炎とは異なる関節炎である関節リューマチは、滑膜細胞の炎症と増殖とを特徴とする慢性の自家免疫疾患であり、骨関節炎と異なり、関節周囲に骨粗鬆症及び骨糜爛(こつびらん)などが発生する。関節リューマチは、滑膜の炎症が関節包、靭帯及び腱に広がる段階(段階1)、関節軟骨の破壊の進行によって関節腔が狭くなり、関節包と靭帯の張力が消失する段階(段階2)、炎症が骨に達して骨の部分的侵食が発生する段階(段階3)、及び関節機能が消失する段階(段階4)を経て進行する。従って、関節リウマチと骨関節炎は、その発病原因及び進行段階が全く異なり、それらに対する治療方法も異なる。
【0005】
骨関節炎の従来の治療としては、アセトアミノフェン、トラマドール、非ステロイド抗炎症剤(NSAID)、ジアセレイン、グルコサミンなどの薬物の使用などが挙げられる。これらのうち、NSAIDは、胃潰瘍、十二指腸潰瘍のような胃腸管における副作用を引き起こすことが報告されている。従って、そのような薬物を胃腸管副作用の起こり得る骨関節炎患者に投与する場合、レバミピドなどの細胞保護剤、シメチジン、ラニチジンなどのH2−受容体拮抗剤、及び/またはオメプラゾールなどのプロトンポンプ阻害剤などが同時に投与される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、医療現場において多数の骨関節炎患者を治療する過程で、驚くべきことに、胃腸障害副作用を防止するために併用投与されるレバミピド自体が、骨関節炎に対する予防活性及び治療活性を有することを発見した。レバミピドが骨関節炎の改善や治療活性と関連するという報告がこれまでに全くないことを考えれば、これは非常に驚くべきことである。
【0007】
従って、本発明は、レバミピドを有効成分として含む、骨関節炎の予防用または治療用の薬学組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によって、活性成分としてのレバミピド及び薬学的に許容可能な担体を含む骨関節炎の予防用または治療用の薬学組成物が提供される。
【0009】
前記薬学組成物は、経口投与用形態であってもよく、例えば錠剤形態またはカプセル剤形態の経口用固形剤形を有してもよい。また、前記薬学組成物は、0.5〜50mg/kg、望ましくは、0.6〜6mg/kgの用量でレバミピドを経口投与するのに適した単位投与形態に製剤化されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、レバミピドが
骨関節炎の予防活性または治療活性を有することが明らかになった。従って、本発明の薬学組成物は、
骨関節炎の予防または治療のために、単独で、あるいは他の骨関節炎治療剤と併用して使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】骨関節炎誘発後7日目に、ラットから分離した大腿骨及び脛骨を顕微鏡下で観察して得られた結果である。
【
図2】
TRAP、サフラニンO、H&Eの染色を介して、軟骨損傷を組織化学的に分析して得られた結果である。
【
図3】組織化学的分析から計算した組織学的悪性度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で、「レバミピド」とは、無水物、水和物(例えば、1/2水和物など)、結晶型などのあらゆる形態のレバミピドを含み、またレバミピドの薬学的に許容可能な塩を含む。前記レバミピドの薬学的に許容可能な塩は、カルシウム、カリウム、ナトリウム及びマグネシウムなどに由来する無機イオン塩;塩酸、硝酸、リン酸、臭酸、ヨウ素酸及び硫酸などに由来する無機酸塩;酢酸、ギ酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、グルコン酸、ベンゾ酸、乳酸、フマル酸及びマレイン酸などに由来する有機酸塩;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びナフタレンスルホン酸などに由来するスルホン酸塩;グリシン、アルギニン、リシンなどに由来するアミノ酸塩;並びにトリメチルアミン、トリエチルアミン、アンモニア、ピリジン、及びピコリンなどに由来するアミン塩などを含む。
【0013】
本発明は、活性成分としてのレバミピド及び薬学的に許容可能な担体を含む骨関節炎の予防用または治療用の薬学組成物を提供する。
【0014】
下記実施例に記載されているように、骨関節炎誘発剤として知られているヨード酢酸一ナトリウム(MIA)を投与してラットで骨関節炎を誘発した後、レバミピドを経口投与すると、軟骨損傷が有意に抑制された(
図1参照)。組織化学的分析の結果、レバミピドを経口投与した場合の軟骨及びその構成成分の損失は正常ラットの場合と同様であり、軟骨の破壊及びその構成成分の分解が好転した(
図2及び
図3参照)。これらの結果は、細胞保護剤として使われるレバミピドが、すぐれた骨関節炎治療活性を有することを示している。
【0015】
本発明の薬学組成物は、薬学的に許容可能な担体を含み、それぞれ通常の方法によって、例えば散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、乳剤、シロップ、エアゾールなどの経口型剤形;外用剤;坐剤;または滅菌注射溶液剤に製剤化される。望ましくは、本発明の薬学組成物は、経口投与用形態であって、さらに望ましくは、錠剤形態またはカプセル剤形態の固形経口用剤形を有する。例えば、本発明の薬学組成物は、商業的に市販されているレバミピド含有錠剤[例えば、ムコスタ錠(登録商標)(大塚製薬株式会社)]の形態であってもよい。前記薬学的に許容可能な担体としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、ポリエチレングリコール6000、ポリビニルピロリドン、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、酸化チタン、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油などが挙げられる。また、前記薬学組成物は、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤をさらに含んでもよい。経口用固形製剤は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などを含み、このような固形製剤は、少なくとも1以上の賦形剤、例えば、澱粉、カルシウムカーボネート、スクロースまたはラクトース、ゼラチンなどを含むことができ、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤などを含んでもよい。具体的には、本発明の薬学組成物は、有効成分としてレバミピドを含み、担体として、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、酸化チタン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、ポリエチレングリコール6000、ヒドロキシプロピルセルロース及びステアリン酸マグネシウムを含む錠剤形態であってもよい。経口用液状製剤は、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などを含み、水、流動パラフィンなどの希釈剤;湿潤剤;甘味剤;着香剤;保存剤などを含んでもよい。非経口用製剤は、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤を含み、非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール;ポリエチレングリコール;オリーブオイルのような植物性油;オレイン酸エチルのような注射可能なエステル類などを含む。坐剤の基剤としては、ウィテプゾール、マクロゴール、ツイーン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが用いられる。
【0016】
本発明の薬学組成物に含まれる前記レバミピドの投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び期間によって異なるが、当業者によって適切に選択される。例えば、前記レバミピドは、1日0.1〜100mg/kg、望ましくは、0.5〜50mg/kgの用量で経口投与可能であり、特に望ましくは、約0.6〜6mg/kgの用量で経口投与可能である。従って、本発明の薬学組成物は、レバミピドが0.5〜50mg/kg、望ましくは、0.6〜6mg/kgの用量で経口投与されるのに適した単位投与形態に製剤化されてもよい。前記投与は、1日に1回でもよく、数回に分けて投与してもよい。本発明の薬学組成物は、単独で投与されるか、あるいは他の骨関節炎治療剤、例えば、非ステロイド抗炎症剤(NSAID)と併用して投与され、併用投与の場合、順次に投与されても同時に投与されてもよい。
【0017】
以下、本発明について、実施例によってさらに詳細に説明する。しかし、実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0018】
経口投与によるレバミピドの骨関節炎治療効能の評価
(1)試験方法
【0019】
約5週齢の雄性のウィスター系ラットを使用した。ヨード酢酸一ナトリウム(MIA)を生理食塩水に溶解し、4mg/50μlの用量でラットの右膝から投与し、骨関節炎を誘発した。
【0020】
ラットを各群5匹ずつの3群に分けた。第1の群(非関節炎群)は、何ら処理を行っていない群、すなわち、正常対照群であった。第2の群(MIA)は、MIAの投与を介して骨関節炎を誘発した群であった。第3の群(MIA+レバミピド)には、MIAを投与して骨関節炎を誘発した後、レバミピドを7日間毎日経口投与した。
【0021】
MIA誘発後7日目に、各群のラットから大腿骨及び脛骨を分離した後、解剖顕微鏡下で観察した。H&E染色後、低倍率レンズを用いて、膝関節部を観察した。結果として、核は青紫色、細胞質はピンク色で示されている。染色完了後、膝の上部(「大腿骨」と表示)と下部(「脛骨」と表示)の2つの部位に分け、組織を詳細に観察した。また、膝関節をサフラニンOで染色した。これは、軟骨のプロテオグリカンの損失を示すものである。破骨細胞を染色するための酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRAP)染色は、leukocyte acid phosphatase kit(Sigma 387−A、USA)を利用し、37℃で30分間かけて実施した。TRAP陽性細胞は、赤紫色で示される。3個以上の核を有する多核細胞をTRAP陽性細胞(破骨細胞)と見なし、これを光学顕微鏡下で計数した。
(2)試験結果
【0022】
骨関節炎誘発後7日目に、各群のラットから分離した大腿骨及び脛骨を、解剖顕微鏡下で観察した結果、レバミピドを投与していない群は、軟骨部位の損傷が見られた(
図1、中央の写真の赤色矢印)。しかし、レバミピドを経口投与した群では、軟骨部位の損傷はほとんど見られない(
図1)。
【0023】
また、
TRAP、サフラニンO及びH&Eの染色を介した組織化学的分析の結果、レバミピドを投与していない群では深刻な軟骨損傷が見られたが、レバミピドを経口投与した群では、軟骨が分解されることなく維持されていた(
図2)。すなわち、H&E染色を介した組織化学的分析の結果、レバミピドを経口投与した群(MIA+レバミピド)で、MIA群に比べて炎症が好転していることが観察された。また、サフラニンO染色を介した分析の結果、レバミピドを経口投与した群(MIA+レバミピド)で、大腿骨の軟骨部位の表面は滑らかであり、また強い橙赤色で示されていた。この結果は、非骨関節炎群と類似している。一方、MIA群では、プロテオグリカンの損失によって軟骨全体の染色が弱く、またその表面の荒れが観察された。さらに、TRAP染色を介して脛骨の軟骨下骨に存在する破骨細胞の数を測定した結果、MIA群と比べて、レバミピドを投与した群では、破骨細胞数が有意に減少した。
【0024】
また、組織学的悪性度を、以下の表1の基準によって点数化して評価し、その結果を
図3に示した。
図3から、MIA誘発群ではサフラニンO染色が弱く、軟骨表面が不規則であることがわかる。しかし、レバミピド処理群では、軟骨部位におけるサフラニンOの損失はわずかであり、軟骨の表面は滑らかなままであった。
【0025】
【表1】
【0026】
前記の結果は、レバミピドが軟骨損傷を抑制し、すなわち骨関節炎に対してすぐれた予防活性及び治療活性を示すことを示唆している。