(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、再生医療の研究が発展しつつある。再生医療では、例えば損壊した細胞の代わりに、人工的に培養された細胞を患部に用いて患部を再生治療する。この細胞の培養方法としては例えばシャーレやペトリ皿上で細胞を培養する2次元培養が従来からよく知られており、2次元培養で形成された細胞は特定の処理を行ってシャーレやペトリ皿から剥離され患部に用いられる。例えば特許文献1では、関節における軟骨の損傷を治療するために用いられる軟骨様組織の生成方法が記載され、軟骨様組織の生成方法が改良されている。
【0003】
また、さらに治療効果を高めるため、再生医療用の細胞を立体的に培養する技術が開発されている。細胞の立体的な培養では、培養時の足場となる支持体を用いた培養方法が既に考案されており、例えば特許文献2、3では改良された支持体が記載されている。
一方、足場を用いることなく立体的に細胞を培養する技術も開発されている。例えば特許文献4には、細胞を過剰量の培養液に浸すことにより、足場を用いることなく細胞を立体的に培養する方法が記載されている。
【0004】
ところで、細胞が立体的に培養された立体構造体を移植する場合、細胞の立体構造体を取り扱うための専用の移植用器具(特許文献5参照)を使用することで細菌汚染などのリスクを低減できることがあり、その技術が注目されている。
立体構造体の移植では、穴状形成された移植部に供給される立体構造体をなるべく生体に適合させるために、移植部のサイズに近いサイズの立体構造体を患部に挿入する必要がある。ところが、移植部のサイズに近いサイズの立体構造体を移植部に挿入しようとすると立体構造体と移植部との間のクリアランスが小さくなってしまい、立体構造体を移植部に挿入しにくくなってしまう。
他方、クリアランスを大きくしようとすると立体構造体のサイズが移植部のサイズに対して小さくなってしまい、望ましい治療効果が得られない可能性がある。
そこで、立体構造体と移植部との間が0.2mm以下などといった狭いクリアランスにも対応できるように、肉薄に形成された筒状のガイドを用いて立体構造体を移植部に送達することが考えられたが、このような肉薄のガイドは非常に微細かつ繊細であり、形成された立体構造体をこのような微細なガイド内に移し入れることが困難なことがあった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の移植用ガイドは、
培養液を流通できる底材を有する有底筒状に形成され、
開口端側から供給される細胞塊を前記底材上に載置し、
前記底材側を過剰量の培養液に浸すことによって前記底材上に載置された細胞塊を培養して細胞の立体構造体を形成するモールドとして使用されることを特徴とするものである。
この移植用ガイドは一端側がユーザが保持し、多端側を患者の移植部に挿入されるものであるため、筒の厚さが薄いほど、より大きな細胞の立体構造体を移植部に提供できる。このため、筒の厚さは可能な限り薄い方が好ましい。
【0011】
図1は本発明の移植用ガイドの底材側を過剰量の培養液を収容した容器に浸して培養細胞を培養する説明図である。
図1に示すように、本発明の移植用ガイド2は、底を有する筒状に形成され、筒体4と、この筒体4内に組み込まれた円盤状の底材5とから構成されている。筒の形状は特に制限しないが、筒自体がモールドとして使用されるため
図1に示したような円筒形状でもよいし角筒形状でもよく、患部の形状に合わせて最適なものを適宜選択するとよい。
【0012】
筒体4の一端は開口し他端側には底材5が配置され、これにより、移植用ガイド2は、内部に物体を貯溜できるように器状に形成される。
移植用ガイド2の開口4aからは、スフェロイドなどの培養塊を含有した細胞培養液が注入され、開口4aから注入された細胞塊は底材5によって筒内に保持される。
【0013】
底材5は培養液を流通可能なように微細孔5aを有しており、この微細孔5aによって、筒体4内に注入された培養液が外部へ流通可能となるとともに、外部の培養液が筒体4内に流通することができる。
移植用ガイド2の底材5側が過剰量の培養液を収容した容器7に浸されると、容器7内に満たされた過剰量の培養液10が底材5を通して移植用ガイド2内に流通し、移植用ガイド2内の培養液が容器7側に流通する。このような培養液の流通により、移植用ガイド2内の培養細胞を立体的な細胞塊にまで培養でき、培養された細胞塊は移植用ガイド2の形状に沿って例えば円柱状に形成される。以上のように、スフェロイドなどの培養時、移殖用ガイド2は立体構造体を形成するためのモールド(鋳型)として機能することができる。
【0014】
容器7に収容される過剰量の培養液量は、細胞が増殖・分化することができる限り特に限定されるものではないが、例えば、移植用ガイド2内で例えば直径4mm、厚さ5mmの立体構造体を培養するときでは、移植用ガイド2内の培養液の量が例えば1〜2mlであるのに対して、容器7に満たされる過剰量の培養液の量は、移植用ガイド2内の培養液の5〜10倍程度、例えば10〜20mlが好ましい。
【0015】
移植用ガイド2を構成する筒体4の素材としては、例えばステンレスなどの錆びにくい金属材料や、耐候性、耐薬品性、耐食性に優れた高分子材料などが挙げられる。特に、内側に形成された立体構造体の状態を観察可能な点、柔軟である程度の弾性を有する点、および透明/半透明に形成可能である点で、高分子材料で移植用ガイド2の筒体4を形成することが好ましい。
このような高分子としては、フルオロポリマー類を典型例として挙げることができ、フルオロポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素樹脂系共重合体、などが挙げられ、中でも特にポリテトラフルオロエチレンが好ましい。
筒体4の厚さとしては、例えば0.05mm〜0.3mmの範囲にあるいずれかの厚さで均一に形成されることが好ましく、中でも0.1mm〜0.2mmの範囲にあるいずれかの厚さで形成されることが特に好ましい。
【0016】
底材5は多数の微細孔5aを有する多孔性であり、この微細孔5aのサイズは培養塊のサイズよりも小さくかつ培養液を通過させる程度には大きく形成される必要がある。一例を挙げると、微細孔5aの孔径は10〜500μmであり、これにより立体構造体は底材5の下側へ通過せずに培養液のみが底材5を介して出入することができる。
底材5の形成素材は、体内で分解される素材で形成されることが好ましい。このような生体分解性素材としては、例えば、リン酸カルシウム類の合成セラミックが挙げられ、このようなリン酸カルシウムとしては、例えば、αトリリン酸カルシウム、βトリリン酸カルシウム、およびハイドロキシアパタイトなどが挙げられる。その中でも特に、αトリリン酸カルシウムもしくはβトリリン酸カルシウムが好ましい。
底材5を上記のような生体内で分解される材料で形成することにより、この底材5を立体構造体とともに患部に供給することができ、利便性を高めることができる。
【0017】
培養の対象となる細胞(細胞塊を構成する細胞)は、例えば、幹細胞(ES細胞、臍帯血由来細胞、未分化間葉細胞等)、体細胞、腫瘍細胞、などの未分化細胞またはその分化細胞である。
線維芽細胞、幹細胞、血管内皮細胞、表皮細胞、上皮細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞は未分化間葉系幹細胞から容易に分化誘導ができ、関節軟骨細胞や骨細胞などの細胞も使用することができる。
このように本発明は、中胚葉系の組織を中心として、関節軟骨、骨のほか、乳房などの脂肪細胞、靭帯などにも応用することができる。
【0018】
細胞には、浮遊系細胞と足場依存性細胞とに大きく分類され、前者には血液系や免疫系の細胞が属し、後者には皮膚や骨などの細胞が属する。皮膚や骨などの細胞は、培養液中で浮いている状態では死んでしまい、ガラスなどシャーレに付着することで増殖させる必要がある。このため、ポリテトラフルオロエチレン中に細胞を一カ所に集めるようにすると、細胞は足場を求めて、お互いに接着し合い、細胞凝集塊すなわちスフェロイドが形成される。さらに、スフェロイド同士が接着・融合すると大きな形状のものができる。
スフェロイドを介することにより、細胞周期において細胞は静止期に移行し、タンパク質の産生が増加すると考えられる。従って、本発明では、細胞を静止期に誘導するため、一旦スフェロイドにしてから所定の形状に形成することが好ましい。
【0019】
細胞培養に用いられる培養液は、培養対象の細胞にもよるが、慣用の合成培地または天然培地を用いることができる。
動物由来物質からの細菌ウイルスなどの感染、供給時期や品質の安定性を考慮すると合成培地が好ましい。
合成培地としては、例えば、α―MEM(Mnimum Essential Medium)、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、RPMI 1640培地、CMRC培地、HAM培地、DME/F12培地、MCDB培地、などを用いることができる。
これらの培地には、増殖因子や成長因子、ホルモンなどの生理活性物質、薬理作用を有するその他の種々の物質を適宜添加してもよい。このような物質を添加することにより、機能を付与したり変化させることができる。
一例として、成長因子又は細胞増殖因子としては、骨形成蛋白質(BMP:Bone Morphogenetic Protein)、繊維芽細胞増殖因子(FGF:Fibroblast Growth Factor)、トランスフォーミング増殖因子(TGF-β:Transforming Growth Factor−β)、インスリン様増殖因子(IGF:Insulin−like Growth Factor)、血小板由来増殖因子(PDGF:Platelet Derived Growth Factor)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF:Vascular Endothelial Growth Factor)、トランスフェリンなどの既知血清成分(濃度は適宜調整)、各種ビタミンやストレプトマイシンなどの抗生物質などがある。
ホルモンとしては、例えば、インシュリン、トランスフェリン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、チロキシン、3,3',5−トリヨードチロニン、1−メチル−3−ブチルキサンチン、プロゲステロン、などが挙げられる。
その他の生理活性物質として典型的には、例えば、アスコルビン酸(特に、L−アスコルビン酸)、ビオチン、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸二リン酸、ビタミンD等のビタミン類、血清アルブミン、トランスフェリン等のタンパク質、脂質、脂質酸源、リノール酸、コレステロール、ピルビン酸、DNAおよびRNA合成用ヌクレオシド、グルココルチコイド、レチノイン酸、β−グリセロホスフェート、モノチオグリセロールなどが挙げられる。
【0020】
細胞の培養温度は、典型的には35〜40℃であり、好ましくは37℃前後である。培養期間は目的の細胞構造体(細胞プラグ)のサイズに応じて適宜調節するとよい。例えば胚性幹細胞を培養する場合は、37℃の温度で培養を実行し、さらに5%の二酸化炭素濃度の条件下で培養を実行することが一般的によく知られている。
胚性幹細胞由来のスフェロイドの形成は、上記の培養条件のもとに実行することができる。
【0021】
図2は移植用ガイドの開口端側を保持して筒内の立体構造体を移植部に抑留する移植用器具の外観斜視図である。
図2に示すように、移植用器具20は、器具本体22、挟持部材24、25、抑留部材27、ホルダ40、操作ロッド43などを備える。器具本体22は、その両サイドに配置された挟持部材24、25をW方向でスライド移動可能に保持するスライダ22a、抑留部材27を押出し可能なように保持する案内管22b、挟持部材24、25と対向して移植用ガイド2を挟持するためのレシーバ22cを有する。
【0022】
スライダ22aには、例えば、挟持部材24、25をスライド移動させるためのスライドガイド30、31が設けられ、このスライドガイド30、31に嵌め込まれる突起(図示省略)がそれぞれの挟持部材24、25に形成されている。挟持部材24、25をスライド移動可能なように保持する仕組みは上記に限らず、適宜適当なものを用いるとよい。
【0023】
挟持部材24、25の形状や材質などは移植用ガイド2の材質やレシーバ22cの形状などに合わせて適宜定めるとよい。例えば対向する器具本体22のレシーバ22cの形状に合わせて弾性変形可能な比較的摩擦係数の高いポリウレタンなどで形成することもできる。このような材料で挟持部材24、25を形成することにより、挟持部材24、25が器具本体22のレシーバ22cの外周に合わせて凹み、これにより移植用ガイド2の挟持される面積が増えるため、より強固な移植用ガイド2の挟持が期待できる。
【0024】
スライダ22aによってスライド移動可能に保持された挟持部材24、25はW方向でスライド移動し、これにより例えば移植用ガイド2の開口端部4a側を挟持することができる。
筒体4の開口端部4a内周がレシーバ22cと対向し、筒体4の開口端部4a外周が挟持部材24、25と対向する。これにより、筒体4の開口端4a側が挟持部材24、25によってレシーバ22cに押さえつけられて挟持される。なお、挟持部材24、25をスライダ22a上で固定する仕組みとしては様々なものがあるが、例えば、ネジで各挟持部材24、25をスライダ22aに固定する方法や、係合爪各挟持部材24、25をスライダ22aに固定する方法など適宜選択するとよい。
【0025】
図3は抑留部材を案内管から突出させた状態を示した移植用器具の外観斜視図である。
図3に示すように、案内管22bは抑留部材27をレシーバ22cから突出させることができるように支持しており、これにより抑留部材27は、レシーバ22cおよび挟持部材24、25によって挟持された移植用ガイド2内に突出することができる。案内管22cは抑留部材27を格納するためのチャンバ28を備え、常時はこのチャンバ28内に抑留部材27が収容される。
【0026】
器具本体22には、ユーザによって保持されるホルダ40と、ユーザによって操作される操作ロッド43とが設けられている。操作ロッド43の一端はユーザに押圧操作され、他端は抑留部材27を備えている。器具本体22は抑留部材27をチャンバ28に自動的に戻すオートリターン構造を備えてもよい。
オートリターン構造の一例を挙げると、例えば、図示はしないが、操作ロッド43は、図示しないバネなどにより、抑留部材27が固定された他端側からユーザに押圧操作される一端側へ付勢されており、ユーザが操作ロッド43を押圧する場合にはこの付勢力に抗して操作ロッド43が押される。操作ロッド43がユーザによって押されると、レシーバ22cから抑留部材27が突出する。このとき、ユーザは立体構造体を傷つけないように抑留部材27を立体構造体に当接させることが好ましい。抑留部材27が立体構造体に当接した後、ホルダ40を引き上げて筒体4を引き抜くことにより、移植部に立体構造体を抑留することができる。ユーザが操作ロッド43から手を離すと、操作ロッド43はバネの付勢力に従ってもとの位置に戻り、これとともに抑留部材27はチャンバ28内に収容され初期の位置に戻る。
【0027】
図4は移植用器具とこの移植用器具に保持された移植用ガイドとを、移植用ガイドの底材側から開口端側に向かう平面で部分的に切断した断面斜視図である。
図4に示すように、移植用ガイド2の開口端部4aの内周にレシーバ22cが当接し、外周には挟持部材24、25が当接する。これにより、移植用ガイド2は移植用器具20によって保持され、移植用ガイド2内の立体構造体50の提供が可能となる。
【0028】
立体構造体50は底材5上に例えば柱状に形成され、抑留部材27はこの立体構造体50に当接して立体構造体を底材5とともに移植部に抑留する。底材5は筒体4内を移動可能に設けられており、抑留部材27が当接した立体構造体50とともに筒体4内を滑動する。移植部に筒体4の開口部4bが挿入された後、立体構造体50に抑留部材27を当接させつつ、移植部から筒体4を引き上げることにより、移植部に底材および立体構造体を残すことができる。
【0029】
底材5および立体構造体50をより確実に移植部に送達させる方法や態様について説明する。以下に例示する構造は必ずしも備える必要はないが、細胞の立体構造体50を安定的かつより確実に移植部に送達するために備えることが望ましい。
図5は、移植部に挿入される移植用ガイド端部の一形態を例示して細胞の立体構造体を移植部に移植する際の流れを説明する説明図である。移植部に挿入される移動用ガイド4端部4bには、例えば略V字形状の切欠き4cが形成されている。底材5には、底材5を安定的に移植部内に導入するための線状部材60を挿通させるための挿通孔5bが穿設され、線状部材60を挿通孔5bに挿通できるようになっている。移植用ガイド4に切欠き4cを形成し、底材に挿通孔5bを形成して予め線状部材60を挿通させておくことにより、より確実に立体構造体を移植部に導入することができる。
図5(A)に示すように、立体構造体50を有する底材5の挿通孔5bを通された線状部材60が移植用ガイド4端部に対で形成された切欠き4cに係合している。切欠きの数は2つ、4つ、6つなど、挿通孔5bの個数に対応させるとよい。ここでは、1つの挿通孔5bが底材5に形成され、この1つの挿通孔5bに対応して2つの切欠き4cが移植用ガイド4端部に形成されている場合につい説明する。
立体構造体50に抑留部材27を当接させた後、切欠き4cに掛けられた線状部材60を緊張させつつ移植用ガイド4の端部を移植部に挿入する。このとき、線状部材60が緊張しているため、底材5が安定して移植用ガイド4の端部に保持ざれ、底材5および立体構造体50が移植部に導入される。底材5および立体構造体50が移植部に導入された後、線状部材60が挿通孔5bから引き抜かれ、底材5が移植用ガイド4内で滑動自在となる(
図5(B)参照)。立体構造体50の上側に抑留部材27が当接した状態で、移植用ガイド4が移植部から引き抜かれることにより、底材5および立体構造体50が移植部に抑留される(
図5(C)参照)。
【0030】
次に本発明の作用について説明する。筒状の移植用ガイド2内に細胞塊が載置され、移植用ガイド2の底材5側が、過剰量の培養液を収容した容器7に浸される。移植用ガイド2の底材5側は移植用ガイド2の内外間で培養液を流通し、この培養液によってスフェロイドなどの細胞塊が立体的にさらに培養される。筒体4は例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)によって透明に形成され、外部から立体構造体50の様子を観察することができる。スフェロイドの培養によって立体的な立体構造体50が形成され、立体構造体50は筒体4の内部形状に沿って例えば柱状に成形される。このように立体構造体50の形成時、移植用ガイド2はモールド(鋳型)として機能する。
【0031】
立体構造体50の形成後、移植用ガイド2の開口端部4aが移植用器具20の挟持部材24、25とレシーバ22cとによって挟持される。移植用器具20に挟持された移植用ガイド2の底材5側の開口4bが患部に挿入され、ユーザによって移植用ガイド2から立体構造体50が患者の移植部へ提供される。
このときのユーザの手順としては、例えば、ユーザが移植用器具20のレシーバ22cを移植用ガイド2の開口端部4aに挿入し、両サイドから挟持部材24、25をレシーバ22c側にスライド移動させて移植用ガイド2の開口端部4aを挟持する。
開口端部4aが挟持された後、ユーザは移植用ガイド2の開口部4bを移植部に挿入する。
図5に示したような、筒体4の切欠き4cに底材5の挿通孔5bを通された線状部材60が係合して底材5を保持する構造を有する場合は、線状部材60を緊張させながら移植用ガイド2を移植部に挿入することで、底材5および立体構造体50を確実かつ安定的に移植部に送達することができる。底材5および立体構造体50の送達を確認した後、線状部材60を引き抜くことにより、筒体4内で底材5が滑動可能となる。
筒体4の開口部4bが移植部に挿入された後、ユーザは抑留部材27が立体構造体50に当接するように操作ロッド43を押圧操作する。このときユーザは立体構造体50を抑留部材27で潰したり傷つけたりしないように注意する。
抑留部材27を立体構造体50に当接させた後、ユーザは、抑留部材27で立体構造体50を移植部に留めつつホルダ40(
図3参照)を引き上げることにより、筒体4のみを移植部から引き抜くとともに、底材5および立体構造体50を移植部に抑留することができる。底材5は生体分解性材料で形成されているためやがて消失し、移植部には立体構造体50のみが残留して患部が治療される。底材5は、立体構造体50の培養形成後、立体構造体50を患部に挿入する直前にメスなどで除去してもよいが、生体分解性材料で形成することでユーザは簡便に立体構造体50の移植作業を行うことができ、利便性をさらに高めることができる。
【0032】
筒体4は例えば0.1mmの厚さで形成されており、これにより移植部のサイズにより近いサイズの立体構造体50を移植部に供給することが可能となる。これにより、より高い治療効果を期待することができる。また、移植用ガイド2の厚さは薄ければ薄いほど、患部に提供できる立体構造体のサイズが患部サイズに近づきより高い治療効果を期待できるため、筒態4にはなるべく薄くて丈夫な素材を用いる。
【0033】
このように、本発明の移植用ガイドは立体構造体を形成するためのモールドとして機能しつつ、細胞の立体構造体を移植部に提供するためのガイドとしても機能するから、培養および移植におけるユーザの作業数を減らすことができ、利便性を高めることができる。
また、本発明の移植用器具によれば、細胞の立体構造体を移植部に抑留しつつ移植部に挿入された移植用ガイドを移植部から引き抜いて移植部に細胞の立体構造体を抑留することができる。
【0034】
上記では移植用器具20を用いて移植用ガイド2内の立体構造体を患部に送達したが、ステンレスなどの比較的リジッドな材質で移植用ガイド2を形成した場合には、ユーザが移植用ガイドの筒対外周を直接把持することができ、マニュアル操作で移植用ガイド内の立体構造体を移植部に抑留してもよい。