(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769353
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物及び光学部材
(51)【国際特許分類】
C09J 201/00 20060101AFI20150806BHJP
C09J 11/02 20060101ALI20150806BHJP
C09J 133/06 20060101ALI20150806BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J11/02
C09J133/06
G02B5/30
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2007-184400(P2007-184400)
(22)【出願日】2007年7月13日
(65)【公開番号】特開2009-19161(P2009-19161A)
(43)【公開日】2009年1月29日
【審査請求日】2010年6月18日
【審判番号】不服2014-7152(P2014-7152/J1)
【審判請求日】2014年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】500005066
【氏名又は名称】チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】小川 博史
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 達弘
(72)【発明者】
【氏名】宋 政訓
【合議体】
【審判長】
田口 昌浩
【審判官】
前田 寛之
【審判官】
小野寺 務
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2006/137559(WO,A1)
【文献】
国際公開第2006/043794(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/043822(WO,A1)
【文献】
特開2006−16595(JP,A)
【文献】
特開2007−84632(JP,A)
【文献】
特表2004−536940(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/034533(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤組成物が光学シートの一面または両面に塗布されてなる光学部材であって、
該粘着剤組成物が、融点50℃以上のイオン性化合物からなる帯電防止剤と、0℃以下のガラス転移温度を有するベースポリマーとが含有されてなり、
前記イオン性化合物が、ピリジニウム塩であり、
前記ベースポリマーと前記帯電防止剤との合計量に対する前記帯電防止剤の配合比が、0.01質量%以上1.8質量%以下の範囲であることを特徴とする光学部材。
【請求項2】
前記ベースポリマーが、炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリレート及び/またはメタクリレートの一種以上を主成分とするポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の光学部材。
【請求項3】
前記ベースポリマーが架橋されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物及び光学部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイパネルやプラズマディスプレイパネル等の所謂フラットディスプレイパネルには、一般に、偏光板、位相差板、反射防止フィルムなどの各種光学フィルムが粘着層を介して積層されている。また、こうした光学フィルムには、流通、製造過程において傷や汚れを防止することを目的として、離形フィルムや表面保護フィルムが貼り合わされている。
【0003】
ところで、フラットディスプレイパネルには、CRTの場合と同様に、表面に静電気が帯電されやすい。パネル表面に静電気が帯電すると、フラットディスプレイパネルの表示面に空気中の埃が引き付けられる場合がある。また、静電気が、フラットディスプレイパネルを構成する基板の表示回路に悪影響を及ぼすか、または、液晶ディスプレイパネルにおいて液晶分子の配向性に悪影響を及ぼすことにより、表示不良を引き起こす原因にもなり得る。そこで従来から、光学フィルムの粘着層に帯電防止剤を含有させたり、光学フィルムとは別に帯電防止層をフラットディスプレイパネルに積層することが行われている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、粘着剤を構成するベースポリマーに、室温で液体であるイオン性液体を含有させた粘着剤組成物及びこの粘着剤組成物を備えた光学部材が開示されている。
また特許文献2には、基材フィルムと、基材フィルムに積層された第四級アンモニウム塩を含む帯電防止層と、帯電防止層に積層された粘着剤層からなる帯電防止性粘着シートが開示されている。
【特許文献1】特開2006−11365号公報
【特許文献2】特開2000−273417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の光学部材の粘着層は、低温安定性に劣る問題があった。すなわち、特許文献1に記載の光学部材がフラットディスプレイパネルに使用された際に、同パネルの使用環境温度が粘着層に含まれるイオン性液体の融点より低くなると、粘着層中のイオン性液体が固体となって析出し、これにより粘着層が白濁して透過率が低下し、光学部材の光学特性が劣化するおそれがあった。
また、特許文献1に記載の光学部材では、粘着層に含まれるイオン性液体が滲出する場合があり、滲出したイオン性液体が他の光学部材や金属部材等を劣化させるおそれがあった。
また、特許文献2に記載の帯電防止性粘着シートは、帯電防止層と粘着層とを別個に形成するため、コスト増を招くおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、低温安定性に優れるとともに、粘着剤の構成成分が滲出するおそれがない粘着剤組成物およびこれを備えた光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明の粘着剤組成物は、融点50℃以上のイオン性化合物からなる帯電防止剤と、0℃以下のガラス転移温度を有するベースポリマーとが含有されてなることを特徴とする。
また、本発明の粘着剤組成物においては、前記イオン性化合物が、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルキルピロリジウム塩、アルキルホスホニウム塩のうちのいずれか一種以上であることが好ましい。
更に、本発明の粘着剤組成物においては、前記ベースポリマーが、炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリレート及び/またはメタクリレートの一種以上を主成分とするポリマーであることが好ましい。
更にまた、本発明の粘着剤組成物は、前記ベースポリマーが架橋されていることが好ましい。
また、本発明の光学部材は、先のいずれか一項に記載の粘着剤組成物が、光学シートの一面または両面に塗布されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粘着剤組成物によれば、融点が50℃以上のイオン性化合物からなる帯電防止剤が含まれているので、低温安定性に優れるとともに、粘着剤の構成成分が滲出するおそれのない粘着剤組成物およびこれを備えた光学部材を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。
「粘着剤組成物」
本実施形態の粘着剤組成物は、融点50℃以上のイオン性化合物からなる帯電防止剤と、0℃以下のガラス転移温度を有するベースポリマーとが含有されて構成されている。また、ベースポリマーは架橋剤によって架橋されていることが好ましい。ベースポリマーに帯電防止剤が添加されることによって、光学シート等の基材に粘着剤組成物を塗布して粘着層とした場合の粘着層の表面抵抗値が、例えば、1×10
8〜1×10
13(Ω/□)程度、好ましくは1×10
8〜1×10
11(Ω/□)程度になる。
【0010】
[帯電防止剤]
帯電防止剤は、融点50℃以上のイオン性化合物で構成される。イオン性化合物は、融点が50℃以上のものが好ましく、80℃以上のものがより好ましく、100℃以上のものが更に好ましい。融点が50℃以上のイオン性化合物を含む粘着剤組成物は、例えば、テレビやモニタ等のフラットパネルディスプレイ用の光学部材の粘着層に好適に用いることができる。また、融点が80℃以上のイオン性化合物を含む粘着剤組成物は、例えば、自動車に搭載されるフラットパネルディスプレイ用の光学部材の粘着層に好適に用いることができる。
イオン性化合物は、ベースポリマーに対する相溶性を有するとともに、粘着剤組成物の調製時に使用する有機溶媒に対する相溶性を有し、かつ、ベースポリマーに添加された場合に粘着剤組成物の透明性を維持できるものから選択される。また、光学シート等の基材に粘着剤組成物を塗布して粘着層とした場合の粘着層の表面抵抗値を、1×10
13(Ω/□)以下にできるものから選択される。
【0011】
イオン性化合物は、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルキルピロリジウム塩、アルキルホスホニウム塩のうちのいずれか一種以上が好ましい。
イミダゾリウム塩としては、例えば、1,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド(融点125℃)、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド(融点99℃)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド(融点78℃)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(融点65℃)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート(融点75〜80℃)、1−ブチル−1−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)−イミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(融点120〜121℃)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド(融点74℃)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(融点80〜84℃)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(融点61℃)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド(融点79℃)、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド(融点181℃)、1−メチルイミダゾリウムクロライド(融点75℃)、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムメチルサルフェート(融点113℃)、1−メチル−3−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)−イミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(融点80℃)、1−アリール−3−メチルイミダゾリウムクロライド(融点55℃)、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(融点70℃)、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(融点136℃)、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(融点77℃)等を例示できる。
【0012】
また、ピリジニウム塩としては、1−ブチル−3−メチルピリジニウムブロマイド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムブロマイド(融点137℃)、1−ブチル−4−メチルピリジニウムクロライド(融点158℃)、1−ブチルピリジニウムブロマイド(融点104℃)、1−ブチルピリジニウムクロライド(融点132℃)、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホシフェート(融点75℃)、1−エチルピリジニウムブロマイド(融点120℃)、1−エチルピリジニウムクロライド(融点1140℃)等を例示できる。
【0013】
更に、アルキルアンモニウム塩としては、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド(融点75℃)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(融点119℃)、トリブチルメチルアンモニウムメチルサルフェート(融点62℃)、テトラブチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(融点94〜96℃)、テトラエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート(融点161〜163℃)、テトラブチルアンモニウムベンゾエート(融点64〜67℃)、テトラブチルアンモニウムメタンスルフェート(融点78〜80℃)、テトラブチルアンモニウムノナフルオロブタンスルホネート(融点50〜53℃)、テトラ−n−ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(融点246℃)、テトラブチルアンモニウムトリフルオロアセテート(融点74〜76℃)、テトラヘキシルアンモニウムテトラフルオロボレート(融点90〜92℃)、テトラヘキシルアンモニウムブロマイド(融点97℃)、テトラヘキシルアンモニウムヨージド(融点99℃)、テトラオクチルアンモニウムクロライド(融点50〜54℃)、テトラオクチルアンモニウムブロマイド(融点95〜98℃)、テトラヘプチルアンモニウムブロマイド(融点89〜91℃)、テトラペンチルアンモニウムブロマイド(融点99℃)、n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(融点185℃)等を例示できる。
【0014】
また、アルキルピロリジウム塩としては、1−ブチル−1−メチルピロリジウムブロマイド(融点160℃以上)、1−ブチル−1−メチルピロリジウムクロライド(融点114℃以上)、1−ブチル−1−メチルピロリジウムテトラフルオロボレート(融点152℃)等を例示できる。
【0015】
更に、アルキルホスホニウム塩としては、テトラブチルホスホニウムブロマイド(融点104℃)、テトラブチルホスホニウムクロライド(融点62〜66℃)、テトラブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(融点96〜99℃)、テトラブチルホスホニウムメタンスルホネート(融点59〜62℃)、テトラブチルホスホニウムp−トルエンスルホネート(融点54〜57℃)、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロマイド(融点57〜62℃)等を例示できる。
【0016】
[ベースポリマー]
ベースポリマーは、0℃以下のガラス転移温度Tgを有するものであり、好ましくはTgが−100℃〜−5℃であり、より好ましくはTgが−80℃〜−10℃である。ガラス転移温度Tgが0℃を超えると、イオン性化合物を含有する場合に、十分な粘着力が得られなくなる。
【0017】
かかるベースポリマーとしては、炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリレートおよび/またはメタクリレートの1種または2種以上を主成分とするアクリル系ポリマー、天然ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SISブロック共重合体)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBSブロック共重合体)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBSブロック共重合体)、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ブチルゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴムなどの粘着剤のポリマーとして一般的に適用されるポリマーが挙げられる。
【0018】
これらの中でもイオン性化合物との相溶性に優れ、かつ優れた粘着特性が得られることから、炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリレートおよび/またはメタクリレートの1種以上を主成分とするアクリル系ポリマーが好ましく用いられる。
【0019】
炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリレートおよび/またはメタクリレートの1種以上を主成分とするアクリル系ポリマーとしては、炭素数が1〜14のアルキル基を有するアクリレートおよび/またはメタクリレート{以下(メタ)アクリレートと称す。}の1種以上を50質量%〜100質量%含有するものが用いられる。
【0020】
炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。光学部材用の粘着剤組成物のベースポリマーには特に、n−ブチルアクリレートを主成分として含有することが、高い粘着性を発揮できる点で好ましい。
【0021】
ベースポリマーの重量平均分子量は、100万以上200万以下の範囲が好ましい。重量平均分子量が100万〜200万の範囲であれば、光学部材の粘着層を構成する粘着剤組成物として十分な粘着力が得られる。尚、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによってポリスチレン換算で求められる。
【0022】
ベースポリマーには、上記のアクリル系ポリマー以外の成分として、その他の成分を含有させてもよい。その他の成分としては、ベースポリマーのTgが0℃以下(通常−100℃以上)になるようにして、適宜スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物などの凝集力・耐熱性向上成分や、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、N−アクリロイルモルホリン、ビニルエーテル類等の接着力向上や架橋化基点として働く官能基を有す成分を用いることができる。その他の成分は1種または2種以上併用して用いることができる。
【0023】
スルホン酸基含有モノマーとしては、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等を例示できる。
【0024】
リン酸基含有モノマーとしては2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートを例示できる。シアノ基含有モノマーとしてはアクリロニトリルを例示できる。ビニルエステル類としては酢酸ビニルを例示できる。芳香族ビニル化合物としてはスチレンを例示できる。
【0025】
カルボキシル基含有モノマーとしては(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、2−カルボキシエチルアクリレートなどを例示できる。酸無水物基含有モノマーとしては無水マレイン酸、無水イタコン酸などを例示できる。
【0026】
ヒドロキシル基含有モノマーとしては2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどを例示できる。
【0027】
アミド基含有モノマーとしてはアクリルアミド、ジエチルアクリルアミドがあげられる。アミノ基含有モノマーとしてはN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートがあげられる。エポキシ基含有モノマーとしてはグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどを例示できる。ビニルエーテル類としてはビニルエチルエーテルを例示できる。
【0028】
ベースポリマーは、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などアクリル系ポリマーの合成手法として一般的に用いられる重合方法によって得られる。
【0029】
[架橋剤]
本実施形態の粘着剤組成物は、ベースポリマーを適宜架橋することで、更に耐熱性に優れた粘着層が得られる。架橋方法の具体的手段としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、金属キレートなどアクリル系ポリマーに適宜架橋化基点として含ませたカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基などと反応しうる基を有する化合物を添加し反応させるいわゆる架橋剤を用いる方法がある。
【0030】
イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートなどが挙げられる。中でも、主に適度な凝集力を得る観点から、イソシアネート化合物やエポキシ化合物が特に好ましく用いられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0031】
より具体的には、イソシアネート化合物としては、たとえばブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(商品名コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(商品名コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名コロネートHX)[いずれも日本ポリウレタン工業(株)製]などのイソシアネート付加物などが挙げられる。
【0032】
エポキシ化合物としてはN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(商品名TETRAD−X)や1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(商品名TETRAD−C)[いずれも三菱瓦斯化学(株)製]などが挙げられる。
【0033】
これらの架橋剤は単独で、または2種以上の混合系で使用される。架橋剤の使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランスにより、さらには、光学部材の使用用途によって適宜選択される。アクリル粘着剤の凝集力により充分な耐熱性を得るには一般的には、上記ベースポリマー100質量部に対して、0.01質量部以上配合するのが好ましい。また柔軟性、接着性の点から上記ベースポリマー100質量部に対して、5質量部以下で配合するのが好ましい。
【0034】
粘着剤組成物におけるベースポリマーの架橋度は、ゲル分率で50〜80%の範囲が好ましく、70%程度がより好ましい。ゲル分率がこの範囲であれば、粘着剤組成物の粘着強度を高めることができる。尚、ゲル分率は、粘着剤組成物を、25℃の酢酸エチルに1日間浸漬した場合の、初期質量と浸漬乾燥後の質量より、「ゲル分率=浸漬乾燥後の質量/初期質量×100」の式で求められる。
【0035】
[配合比]
ベースポリマーと帯電防止剤との合計量に対する帯電防止剤の配合比は、0.01質量%以上1.8質量%以下の範囲が好ましく、0.05質量%以上1.5質量%以下の範囲がより好ましい。配合比が0.01質量%未満だと十分な帯電防止効果が得られず、1.8質量%を超えると被着体への汚染性が増大する恐れがある。
【0036】
[その他添加成分]
さらに本実施形態の粘着剤組成物には、従来公知の各種の粘着付与剤や表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリンング剤、無機または有機の充項剤、金属粉、顔料などの粉体、粒子状、箔状物などの従来公知の各種の添加剤を使用する用途に応じて適宜添加することが出来る。
【0037】
「粘着剤組成物の製造方法」
本実施形態の粘着剤組成物の製造方法としては、次の二通りの製造方法を例示できる。 第1の方法として例えば、ベースポリマーの原料である各種モノマーを、酢酸エチル、トルエン、アセトン、ヘキサン類、ケトン類、アルコール類等の沸点が120℃以下程度の有機溶媒に混合し、更に重合開始剤等を添加してモノマーを重合反応させることによって、ベースポリマーを調製する。得られたベースポリマーは、有機溶媒に溶解した状態か、あるいは有機溶媒に膨潤された状態で得られる。
次に、ベースポリマーが含まれる有機溶媒に、イオン性化合物からなる帯電防止剤を添加して、ベースポリマーと帯電防止剤とを混合する。
次に、架橋剤を添加してベースポリマーを架橋させ、更に必要に応じてシランカップリング剤等の各種添加剤を添加する。このようにして粘着剤組成物が得られる。
得られた粘着剤組成物は、例えば基材上に塗布した後に乾燥することによって粘着層となる。
【0038】
第2の方法として例えば、ベースポリマーの原料である各種モノマーを酢酸エチル等の有機溶媒に混合するとともに、イオン性化合物からなる帯電防止剤を添加し、更に重合開始剤等を添加してモノマーを重合反応させることによって、帯電防止剤を含有するベースポリマーを調製する。得られたベースポリマーは、第1の方法と同様に、有機溶媒に溶解した状態か、あるいは有機溶媒に膨潤された状態で得られる。
次に、ベースポリマー及び帯電防止剤が含まれる有機溶媒に、架橋剤を添加してベースポリマーを架橋させ、更に必要に応じてシランカップリング剤等の各種添加剤を添加する。このようにして粘着剤組成物が得られる。
得られた粘着剤組成物は、第1の方法と同様に、例えば基材上に塗布した後に乾燥することによって粘着層となる。
【0039】
以上のように、本実施形態の粘着剤組成物を製造する際には、ベースポリマーを調製してから帯電防止剤を添加してもよく、ベースポリマーの調製と同時に帯電防止剤を添加してもよい。ベースポリマーに帯電防止剤を均質に添加するためには、帯電防止剤が酢酸エチル等の有機溶媒に対して可溶なものがよい。
【0040】
「光学部材」
本実施形態の光学部材は、以上のごとき粘着剤組成物を含有する粘着層を、通常厚み3〜200μm、好ましくは10〜100μm程度となるように、光学シートの片面又は両面に形成したものである。粘着層の形成は、光学シートに直接塗布する方法や、一旦別の基材(例えば剥離ライナーなど)に塗布形成したものを転写する方法等によって行うことができる。
【0041】
粘着層の塗布形成方法としては粘着テープの製造に用いられる公知の方法が用いられ、具体的にはロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート、ダイコート法などが挙げられる。
【0042】
光学シートとしては各種の表示装置等の製造に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されないが、例えば偏光板、位相差板、輝度向上板、又は防眩シートなどを含むものである。なお、光学シートは、偏光板と位相差板を積層したものや位相差板の積層体、偏光板と輝度向上板または防眩シートの積層体など、光学素材を2層以上積層したものであってもよい。
【0043】
光学シートに形成された粘着層(粘着剤組成物)の粘着強度は、1(N/25mm)〜15(N/25mm)程度が好ましく、5(N/25mm)〜10(N/25mm)程度がより好ましい。粘着強度が1〜15(N/25mm)の範囲であれば、光学部材の粘着層の粘着強度として十分な強度になる。尚、粘着強度は、JIS Z0237の粘着テープ・粘着シート試験方法に準じて測定することによって求められる。具体的には、粘着剤層を備えた光学部材を23℃、50%RHの雰囲気下で7日間放置した後に、25mm幅に裁断し、例えばガラス板に貼り合わせ、50℃×5kg/cm
2×20分オートクレーブ処理を行い、その後、引っ張り試験機を用いて、23℃、50%RHの雰囲気下で剥離角180度、剥離速度0.3m/分でJIS Z0237に準じて粘着力の測定を行い、粘着力を評価すればよい。
【0044】
本実施形態の粘着剤組成物によれば、融点50℃以上のイオン性化合物からなる帯電防止剤とベースポリマーとが含有されているので、20℃〜25℃程度の常温の範囲では、帯電防止剤が粘着剤組成物中で固体の状態で存在することになる。これにより、例えば常温程度において帯電防止剤が液体状態から固体状態に変化することがなく、これにより帯電防止剤の析出による透明性の低下が防止される。また、帯電防止剤が液体に変化して粘着剤組成物から滲出するおそれがなく、被着部材を汚染させたり、腐食させたりするおそれもない。
【0045】
また、帯電防止剤として融点80℃以上のイオン性化合物を用いた場合には、帯電防止剤が少なくとも70℃以下の温度範囲で固体の状態で安定して存在するので、例えば、テレビやモニタ等のフラットパネルディスプレイ用の光学部材の粘着層に好適に用いることができる。
更に、帯電防止剤として融点100℃以上のイオン性化合物を用いた場合には、帯電防止剤が少なくとも95℃以下の温度範囲で固体の状態で安定して存在するので、例えば、車載用のフラットパネルディスプレイのような高温雰囲気に置かれるディスプレイパネル用の光学部材の粘着層に好適に用いることができる。
【0046】
また、帯電防止剤の融点が50℃以上と比較的高いため、例えば室温以下の比較的低温で使用された場合でも帯電防止剤が固体のままで維持される。これにより本実施形態の粘着剤組成物は、室温で液状となる所謂イオン性液体を帯電防止剤に用いた粘着剤組成物に比べて、低温安定性にも優れる。
【0047】
このように本実施形態の粘着剤組成物は、例えば−40℃〜80℃のような広い温度範囲においても変質するおそれがなく、温度の安定性に優れたものとなる。
【0048】
また、本実施形態の粘着剤組成物によれば、光学シート等の基材に粘着剤組成物を塗布して粘着層とした場合の粘着層のシート抵抗が、例えば、1×10
8〜1×10
13(Ω/□)程度、好ましくは1×10
8〜1×10
11(Ω/□)程度になるので、良好な帯電防止性能を発揮できる。
【0049】
また、本実施形態の粘着剤組成物によれば、0℃以下のガラス転移温度を有するベースポリマーが含有されるので、十分な粘着力を発現できる。
また、ベースポリマーが、炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリレート及び/またはメタクリレートの一種以上を主成分とするので、粘着剤組成物の透明性が高くなり、光学部材の粘着層を構成する粘着剤組成物として好適に用いることができる。
また、粘着剤組成物を構成するベースポリマーの重量平均分子量が100万〜200万の範囲であり、ゲル分率が50〜80%の範囲なので、粘着剤組成物を光学部材の粘着層とした場合の粘着力が高くなり、光学部材の粘着層として好適に用いることができる。
【0050】
また、粘着剤組成物にシランカップリング剤を添加して光学部材の粘着層を形成した場合には、シランカップリング剤と被着体の表面の官能基との間で化学結合が形成され、これにより光学部材の粘着層と被着体との界面における接合強度が増大する。このため、被着体と光学シートとの熱膨張係数が大きく異なっていても、粘着層と被着体との界面に熱膨張の差による応力が集中し、これにより光学シートに対する応力を緩和することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例について説明する。本実施例では、まず最初に、実施例1〜11及び比較例1〜7に対応する粘着剤組成物を調製し、次いで、粘着剤組成物を偏光板に塗布することによって実施例1〜11及び比較例1〜7の光学部材を製造した。そして、各光学部材について、性能試験を行った。以下に詳細を説明する。
【0052】
(実施例1に対応する共重合体組成物の製造)
ブチルアクリレートを98.99質量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレートを1質量部と、溶媒として酢酸エチルを120質量部とを、還流器及び攪拌機が装着されたフラスコに仕込み、窒素置換を行いながら65℃まで加熱した。次いで、重合開始剤としてAIBNを0.04質量部を加え、65℃を維持しつつ6時間をかけて重合反応を行った。重合反応の終了後、イオン性化合物として1-エチルピリジニウムブロマイドを0.01質量部添加し、更に粘度調整のために酢酸エチルを更に280質量部添加し、室温まで冷却することにより、実施例1の粘着剤組成物を含む共重合体組成物溶液を得た。共重合体組成物溶液中の粘着剤組成物の濃度は20質量%であり、共重合体組成物溶液の粘度は4000mPa・sであった。表1に、粘着剤組成物の配合比と、共重合体組成物溶液中の粘着剤組成物の濃度と、共重合体組成物溶液の粘度とを示す。また、ベースポリマーについて、ガラス転移点を測定した。具体的には、粘着剤組成物中から酢酸エチルを蒸発させて共重合体組成物溶液からを抽出し、粘着剤組成物を示差走査熱量測定(DSC)を行って、粘着剤組成物中のベースポリマーのガラス転移点を測定した。更に、ベースポリマーの平均重量分子量を、GPC法によって測定した。結果を表1に示す。
【0053】
(実施例2〜11に対応する共重合体組成物溶液の製造)
ブチルアクリレートと、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートまたはアクリル酸のうちのいずれか一種または2種以上のモノマーと、溶媒として酢酸エチルとを、適宜配合するとともに、イオン性化合物として、1-エチルピリジニウムブロマイド、テトラ-n-ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートまたはシクロヘキシルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのいずれかを配合したこと以外は、上記実施例1の場合と同様にして、実施例2〜11の粘着剤組成物を含む共重合体組成物溶液を得た。表1に、実施例2〜11の粘着剤組成物の配合比と、各共重合体組成物溶液中の粘着剤組成物の濃度と、各共重合体組成物溶液の粘度と、ベースポリマーのガラス転移点とを合わせて示す。
【0054】
(比較例1〜7に対応する共重合体組成物溶液の製造)
ブチルアクリレートと、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートまたはアクリル酸のうちのいずれか一種または2種以上のモノマーと、溶媒として酢酸エチルとを適宜配合するとともに、イオン性化合物として、塩化アルキルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、過塩素酸リチウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェートまたは1−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネートのいずれかを配合したこと以外は、上記実施例1の場合と同様にして、比較例1〜7の粘着剤組成物を含む共重合体組成物溶液を得た。表2に、比較例1〜7の粘着剤組成物の配合比と、各共重合体組成物溶液中の粘着剤組成物の濃度と、各共重合体組成物溶液の粘度と、ベースポリマーのガラス転移点とを合わせて示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
(実施例1〜11及び比較例1〜7の光学部材の製造)
表1及び表2に示された、実施例1〜11及び比較例1〜7の共重合体組成物溶液中の粘着剤組成物100質量部に対し、架橋剤(B)としてトリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート型架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名コロネートL)と、シランカップリング剤(C)として3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名信越シリコーンKBM−403)とをそれぞれ、表3及び4に示す配合比となるように添加し、充分に混合して粘着剤組成物溶液とした。
得られた粘着剤組成物溶液を剥離PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、商品名MRF38)に乾燥後の厚さが25μmになるように塗布し、90℃で3分間乾燥させて、粘着剤組成物からなる粘着層を形成した。そして、粘着層及び剥離PETフィルムを偏光板((株)美舘イメージング製、商品名MLPH)に貼り合わせることにより、実施例1〜11及び比較例1〜7の光学部材を製造した。
得られた光学部材について、粘着力、表面抵抗値、金属腐食性、光漏れ、耐久性、基材に対する密着性、被着体汚染性、低温安定性等の性能試験を行った。また、粘着剤組成物溶液における粘着剤組成物の濃度と、粘着剤組成物溶液の粘度を測定した。また、架橋後の粘着剤組成物について、ゲル分率を測定した。ゲル分率は、粘着剤組成物を、25℃の酢酸エチルに1日間浸漬した場合の、初期質量と浸漬乾燥後の質量より、「ゲル分率=浸漬乾燥後の質量/初期質量×100」の式で求めた。これらの結果を表3及び表4に示す。
尚、性能試験の手順は、以下の通りである。
【0058】
<性能試験の試験方法>
「表面抵抗値」
23℃、50%RHの雰囲気下で7日間放置後の光学部材の粘着剤層の表面抵抗値を、マイクロエレクトロメーター((株)川口電機製作所製)を使用して23℃、50%RHの雰囲気下で測定した。
「金属腐食性」
23℃、50%RHの雰囲気下で7日間放置後の光学部材の粘着剤層に、アルミホイルを貼り合わせて60℃、90%RHの雰囲気下で2日間放置したときの腐食性を観察した。アルミホイルに変化がない場合は○とし、アルミホイルが白化した場合を×とした。
【0059】
「光漏れ」
23℃、50%RHの雰囲気下で7日間放置後の光学部材を120mm(偏光板MD方向)×60mm及び120mm(偏光板TD方向)×60mmの大きさにそれぞれ裁断し、ガラス板の両面に重なり合うように貼り合わせし、50℃、5kg/cm
2×20分オートクレーブ処理を行った。その後、80℃雰囲気下で120時間放置後の外観を観察した。光漏れが観察されなかった場合は○とし、光漏れが観察された場合を×とした。
「耐久性」
23℃、50%RHの雰囲気下で7日間放置後の光学部材を120mm(偏光板MD方向)×60mmの大きさに裁断し、ガラス板に貼り合わせし、50℃×5kg/cm
2×20分オートクレーブ処理を行なった。その後、80℃雰囲気下および60℃、90%RHの雰囲気下で120時間放置した後の外観を観察した。発泡、浮き、または剥がれが観察されなかった場合を○とし、発泡、浮き、または剥がれが観察された場合を×とした。
【0060】
「粘着力及び基材に対する密着性」
23℃、50%RHの雰囲気下で7日間放置後の光学部材を25mm幅に裁断し、これをガラス板に貼り合わせ、50℃×5kg/cm
2×20分オートクレーブ処理を行った。その後、引っ張り試験機を用いて、23℃、50%RHの雰囲気下で、剥離角180度、剥離速度0.3m/分の条件でJIS Z0237(粘着テープ・粘着シート試験方法)に準じて粘着力の測定を行った。そして、偏光板(基材)に対する密着性を評価した。粘着層が偏光板からまったく剥がれない場合を○とし、粘着層が偏光板から剥がれた場合を×とした。
【0061】
「被着体汚染性」
上記粘着力測定前後のガラス板面の接触角を測定した。粘着力測定前後のガラス面の接触角に変化がない場合を○とし、粘着力測定前後のガラス面の接触角に変化あった場合を×とした。尚、接触角の測定は、JIS R3257(基板ガラス表面のぬれ性試験方法)に準じて行った。
「低温安定性」
23℃、50%RHの雰囲気下で7日間放置後の光学部材を120mm(偏光板MD方向)×60mmの大きさに裁断し、これをガラス板に貼り合わせし、50℃×5kg/cm
2×20分オートクレーブ処理を行った。その後、−40℃雰囲気下で120時間放置した後の外観を観察した。発泡、浮き、剥がれ、または析出物が観察されなかった場合を○とし、発泡、浮き、剥がれ、または析出物が観察された場合を×とした。
【0062】
「リワーク性」
上記粘着力測定時に、剥離状態を観察した。界面破壊が観察された場合を○とし、ガラス板(被着体)に転着およびまたは凝集破壊が観察された場合を×とした。
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
表3に示すように、実施例1の光学部材については、室温で7日熟成後の粘着力が4(N/25mm)と適度な強度であった。また、実施例1の粘着層の表面抵抗値は10
13Ω/□と有用な帯電防止性を示した。さらに金属腐食性、光漏れ、耐久性、基材に対する密着性、被着体汚染性、低温安定性およびリワーク性が良好であった。
同様に、実施例2〜11の光学部材についても、粘着力、粘着層の表面抵抗値、金属腐食性、光漏れ、耐久性、被着体に対する密着性、被着体汚染性、低温安定性およびリワーク性のいずれもが良好であった。
【0066】
一方、表4に示すように、比較例1および2については、帯電防止剤が添加されていないため、表面抵抗値が10
15(Ω/□)を示し、帯電防止性能が実施例1〜11に比べて劣る結果になった。また、比較例3〜7については、融点が25℃以下のイオン性化合物を添加したため、被着体汚染性が実施例1〜11に比べて劣る結果になった。更に、比較例5〜7については、低温安定性も劣る結果になった。
【0067】
以上のように、本発明の実施例1〜11の光学部材は、比較例1〜7と比べて、高い帯電防止性を有しながら、適度な粘着力を有し、金属腐食性もなく、基材に対する密着性が良好で、被着体汚染性もなく、低温安定性も良好なものであった。