特許第5769362号(P5769362)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 第一三共株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769362
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】圧縮製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4178 20060101AFI20150806BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20150806BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20150806BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20150806BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20150806BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20150806BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20150806BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20150806BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20150806BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   A61K31/4178
   A61K9/20
   A61K47/38
   A61P9/00
   A61P9/04
   A61P9/06
   A61P9/10
   A61P9/12
   A61P13/12
   C07D405/14
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2008-522575(P2008-522575)
(86)(22)【出願日】2007年6月26日
(86)【国際出願番号】JP2007062734
(87)【国際公開番号】WO2008001734
(87)【国際公開日】20080103
【審査請求日】2010年6月15日
【審判番号】不服2013-21888(P2013-21888/J1)
【審判請求日】2013年11月8日
(31)【優先権主張番号】特願2006-176146(P2006-176146)
(32)【優先日】2006年6月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146581
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 公樹
(72)【発明者】
【氏名】矢田 修一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 晋
(72)【発明者】
【氏名】谷本 充英
【合議体】
【審判長】 蔵野 雅昭
【審判官】 安藤 倫世
【審判官】 村上 騎見高
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/067003号
【文献】 特開2000−336027号公報
【文献】 特開平06−024959号公報
【文献】 特表2008−543728号
【文献】 特表2008−543729号
【文献】 薬剤学マニュアル,株式会社 南山堂,1989年 3月20日,P81,83
【文献】 久保輝一郎 他,粉体,丸善,1962年,P.870−874
【文献】 オルメテック錠20mg添付文書(第2版),2005,P.1−4
【文献】 オルメテック(登録商標)錠10mg、20mgの医薬品インタビューフォーム、2004年1月(新様式第1版)
【文献】 薬剤学マニュアル(1989),南山堂,P.89
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/4178
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物を圧縮する打錠工程を含むことを特徴とするオルメサルタンメドキソミル含有錠剤の溶出性改善方法であって、前記打錠工程が、141-400 N/mm2の圧力を使用する工程であり、ステアリン酸マグネシウムを除く成分を混合した後、ステアリン酸マグネシウムを加えて混合した組成物を打錠する工程であり、前記溶出性改善が打錠用混合末に対しての改善である方法。
【請求項2】
組成物が、溶出改善剤を含む請求項1に記載の溶出性改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶出性の改善されたオルメサルタンメドキソミル含有製剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンジオテンシンII受容体拮抗剤であるオルメサルタンメドキソミルは、高血圧症の治療や予防のための医薬の有効成分として有用である。しかし、オルメサルタンメドキソミル含有製剤を製造するためにはオルメサルタンメドキソミルの溶出性を高める製剤技術が必要であった。
【0003】
難溶性の有効成分を含む製剤を製造する場合、通常は溶解補助剤を添加するなど有効成分の溶出性を高める製剤技術が使用される。一方、組成物を圧縮する工程は、製剤の崩壊速度を遅くし溶出性を低下させるため、難溶性の有効成分を含む製剤を製造する場合は好ましくない技術と考えられていた。
【0004】

【特許文献1】日本特許第2082519号公報
【特許文献2】米国特許第5616599号公報
【非特許文献1】J. Med. Chem., 39, 323-338 (1996)
【非特許文献2】Annu. Rep. Sankyo Res. Lab. (Sankyo Kenkyusho Nempo) 55, 1-91 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、溶出性の改善されたオルメサルタンメドキソミル含有製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、オルメサルタンメドキソミルの溶出性を改善する製剤技術について鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、溶出性を低下させると考えられていた組成物を圧縮する工程を採用することにより、むしろ溶出性が改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、組成物を圧縮する工程を含むことを特徴とするオルメサルタンメドキソミル含有製剤の製造方法を提供する。
【0008】
本発明は下記のとおりである。
(1)組成物を圧縮する工程を含むことを特徴とするオルメサルタンメドキソミル含有製剤の製造方法。
(2)組成物を圧縮する工程が、20 N/mm2以上の圧力を使用する工程である(1)に記載の製造方法。
(3)組成物を圧縮する工程が、40-600 N/mm2の圧力を使用する工程である(1)に記載の製造方法。
(4)組成物を圧縮する工程が、60-400 N/mm2の圧力を使用する工程である(1)に記載の製造方法。
(5)組成物を圧縮する工程が、打錠工程である(1)乃至(4)に記載の製造方法。
(6)製剤が、散剤、細粒剤または顆粒剤である(1)乃至(4)に記載の製造方法。
(7)製剤が、錠剤である(1)乃至(5)に記載の製造方法。
(8)組成物が、溶出改善剤を含む(1)乃至(7)に記載の製造方法。
(9)(1)乃至(8)に記載の方法で製造されたオルメサルタンメドキソミル含有製剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、組成物を圧縮する工程を含むことを特徴とするオルメサルタンメドキソミル含有製剤の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の製造方法に使用する有効成分であるオルメサルタンメドキソミルは特許第2082519号公報(米国特許第5,616,599号公報)等に記載の方法に従い、容易に製造することができる。
【0011】
【化1】
【0012】
本発明のオルメサルタンメドキソミル含有製剤の製造方法としては、「組成物を圧縮する工程」を含んでいれば、その他の工程については特に制限はなく、Powder Technology and Pharmaceutical Processes (D. Chulia他, Elsevier Science Pub Co (December 1, 1993))のような刊行物に記載されている一般的な方法を用いて製造することができる。
【0013】
本発明の「組成物を圧縮する工程」は、オルメサルタンメドキソミルを含有する組成物に対して、外部より機械的に圧力を与えることができる工程であればよく、圧力を与える手段に制限はない。たとえば、組成物に機械的に圧力を与えて混合または撹拌する工程、組成物の混合物を造粒するために実施される圧縮工程、組成物を機械的な圧力またはせん断力により粉砕する粉砕工程、錠剤を圧縮成型するための打錠工程等を挙げることができる。「組成物を圧縮する工程」は、好適には錠剤を成型するための打錠工程である。
【0014】
「組成物を圧縮する工程」において組成物に与えられる圧力の大きさは、有効成分の溶出性を向上させることができる大きさであれば特に制限はないが、好適には、20 N/mm2以上に相当する圧力であり、更に好適には40-600 N/mm2に相当する圧力であり、最も好適には60-400 N/mm2に相当する圧力ある。
【0015】
本発明の製剤は、必要に応じて、適宜の薬理学的に許容される賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、乳化剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤等の添加剤を含むことができる。
【0016】
使用される「賦形剤」としては、例えば、乳糖、白糖、葡萄糖、マンニトール若しくはソルビトールのような糖誘導体;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α-澱粉若しくはデキストリンのような澱粉誘導体;結晶セルロースのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;又はプルランのような有機系賦形剤;或いは、軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム若しくはメタ珪酸アルミン酸マグネシウムのような珪酸塩誘導体;燐酸水素カルシウムのような燐酸塩;炭酸カルシウムのような炭酸塩;又は、硫酸カルシウムのような硫酸塩等の無機系賦形剤を挙げることができる。
【0017】
使用される「滑沢剤」としては、例えば、ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム若しくはステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;タルク;コロイドシリカ;ビーズワックス若しくはゲイ蝋のようなワックス類;硼酸;アジピン酸;硫酸ナトリウムのような硫酸塩;グリコール;フマル酸;安息香酸ナトリウム;D,L-ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム若しくはラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;無水珪酸若しくは珪酸水和物のような珪酸類;又は、上記澱粉誘導体を挙げることができる。
【0018】
使用される「結合剤」としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、又は、前記賦形剤と同様の化合物を挙げることができる。
【0019】
使用される「崩壊剤」としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム若しくは内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体;架橋ポリビニルピロリドン;又は、カルボキシメチルスターチ若しくはカルボキシメチルスターチナトリウムのような化学修飾されたデンプン・セルロース類を挙げることができる。
【0020】
使用される「乳化剤」としては、例えば、ベントナイト若しくはビーガムのようなコロイド性粘土;水酸化マグネシウム若しくは水酸化アルミニウムのような金属水酸化物;ラウリル硫酸ナトリウム若しくはステアリン酸カルシウムのような陰イオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウムのような陽イオン界面活性剤;又は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル若しくはショ糖脂肪酸エステルのような非イオン界面活性剤を挙げることができる。
【0021】
使用される「安定剤」としては、例えば、メチルパラベン若しくはプロピルパラベンのようなパラヒドロキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール若しくはフェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール若しくはクレゾールのようなフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;又は、ソルビン酸を挙げることができる。
【0022】
使用される「矯味矯臭剤」としては、例えば、サッカリンナトリウム若しくはアスパルテームのような甘味料;クエン酸、リンゴ酸若しくは酒石酸のような酸味料;又は、メントール、レモン若しくはオレンジのような香料を挙げることができる。
【0023】
使用される「希釈剤」としては、例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、スクロース、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶性セルロース、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0024】
本発明は「溶解補助剤」を使用しなくとも「組成物を圧縮する工程」を採用することで有効成分の溶出性を改善することができる点に特徴がある。しかし、本発明の製剤は「溶解補助剤」を含んでいてもよく、これにより溶出性が更に改善された製剤を製造することができる。
【0025】
使用される「溶解補助剤」としては、水溶性高分子、界面活性剤等を挙げることができる。
【0026】
「水溶性高分子」としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のようなセルロース誘導体;ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、マクロゴール等のような合成高分子;HA「三共」、アラビアゴム、寒天、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム等を挙げることができ、好適にはヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、HA「三共」、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールであり、さらに好適にはヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムであり、特に好適にはメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースである。本発明においては、これらを単独で用いることもできるし、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。水溶性高分子は、好ましくは処方重量の1〜90重量%、さらに好ましくは5〜85重量%範囲内で含有してもよい。
【0027】
「界面活性剤」としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリソルベート80等を挙げることができる。本発明においては、これらを単独で用いることもできるし、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。 また、本発明においては、必要に応じてその他の有効成分を含有していてもよい。該有効成分としては、例えば、ヒドロクロロチアジド(Hydrochlorothiazide)、メチクロチアジド(Methylclothiazide)、ベンジルヒドロクロロチアジド(Benzylhydrochlorothiazide)、トリクロルメチアジド(Trichloromethiazide)、シクロペンチアジド(Cyclopenthiazide)、ポリチアジド(Polythiazide)、エチアジド(Ethiazide)、シクロチアジド(Cyclothiazide)、ベンドロフルメチアジド(Bendroflumethiazide)、ヒドロフルメチアジド(Hydroflumethiazide)のような利尿剤;アゼルニジピン(Azelnidipine)、アムロジピン(Amlodipine)、ベニジピン(Benidipine)、ニトレンジピン(Nitrendipine)、マニジピン(Manidipine)、ニカルジピン(Nicardipine)、ニフェジピン(Nifedipine)、ニソルジピン(Nisoldipine)、シルニジピン(Cilnidipine)、レルカニジピン(Lercanidipine)、ニモジピン(Nimodipine)、アラニジピン(Aranidipine)、エホニジピン(Efonidipine)、バルニジピン(Barnidipine)、フェロジピン(Felodipine)、ニルバジピン(Nilvadipine)のようなカルシウム拮抗剤;ピオグリタゾン(Pioglitazone)、ロジグリタゾン(Rosiglitazone)、リボグリタゾン(Rivoglitazone)、MCC-555、NN-2344、BMS-298585、AZ-242、LY-519818、TAK-559のようなインスリン抵抗性改善剤;プラバスタチン(Pravastatin)、シンバスタチン(Simvastatin)、アトルバスタチン(Atorvastatin)、ロスバスタチン(Rosuvastatin)、セリバスタチン(Cerivastatin)、ピタバスタチン(Pitavastatin)、フルバスタチン(Fluvastatin)のようなHMG-CoA還元酵素阻害剤;SMP-797、パクチミベ(Pactimibe)のようなACAT阻害剤などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
これらの有効成分の量は、特に限定されるものではなく、通常錠剤に用いられる量を用いればよい。

本発明における「製剤」としては、例えば、錠剤(舌下錠、口腔内崩壊錠を含む)、カプセル剤(ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)、顆粒剤、細粒剤、散剤、丸剤、トローチ剤等を挙げることができ、好適には散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤又は錠剤であり、最も好適には錠剤である。
【0029】
本発明の錠剤は、例えば、それ自体公知の方法で主薬を賦形剤、結合剤等とともに造粒、乾燥、整粒し、滑沢剤等を加えて混合し、製錠することにより錠剤を得る。ここで、造粒は、湿式造粒法、乾式造粒法あるいは加熱造粒法のいずれの方法によっても行うことができ、具体的には、高速攪拌造粒機、流動造粒乾燥機、押し出し造粒機、ローラーコンパクターなどを用いて行われる。また、造粒の後、必要により乾燥、整粒などの操作を行ってもよい。主薬と賦形剤、結合剤、滑沢剤等の混合物を直接打錠することもできる。
【0030】
ここで造粒とは、粉状、塊状、溶液或いは溶融液状などの原料からほぼ均一な形状と大きさを持つ粒を造る操作をいい、顆粒剤、散剤、細粒剤などの最終製品を作る造粒や、錠剤やカプセル剤などの製造用中間製品を作る造粒がある。
【0031】
このように得られた造粒物は所望の粒子径に整粒し、散剤、細粒剤、顆粒剤の形態の製剤とすることができる。これら製剤はカプセルに充填してカプセル剤とすることもでき、或いは、さらに崩壊剤、滑沢剤等を必要に応じて添加し、打錠機等により圧縮成形することで錠剤形態の製剤にすることもできる。混合や造粒等の操作は、いずれも製剤技術分野において汎用されており、当業者は適宜実施することができる。また、錠剤には少なくとも1層のフィルムコーティングを設けてもよい。
【0032】
コーティングは、例えば、フィルムコーティング装置を用いて行われ、フィルムコーティング基剤としては、例えば、糖衣基剤、水溶性フィルムコーティング基剤、腸溶性フィルムコーティング基剤、徐放性フィルムコーティング基剤などが挙げられる。
【0033】
糖衣基剤としては、白糖が用いられ、さらに、タルク、沈降炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、プルラン、などから選ばれる1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0034】
水溶性フィルムコーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース誘導体;ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドンなどの合成高分子;プルランなどの多糖類などが挙げられる。
【0035】
腸溶性フィルムコーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロースなどのセルロース誘導体;メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーLD、メタアクリル酸コポリマーSなどのアクリル酸誘導体;セラックなどの天然物などが挙げられる。
【0036】
徐放性フィルムコーティング基剤としては、例えば、エチルセルロースなどのセルロース誘導体;アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル・共重合体乳濁液などのアクリル酸誘導体などが挙げられる。
【0037】
上記コーティング基剤は、その2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。また、さらに必要に応じて、適宜の薬理学的に許容される可塑剤、賦形剤、滑沢剤、隠蔽剤、着色剤、防腐剤等の添加剤を含むことができる。
【0038】
本発明の製剤の有効成分であるオルメサルタンメドキソミルの投与量は、患者の症状、年齢、体重等の種々の条件により変化し得る。その投与量は症状、年齢等により異なるが、通常、成人には5-40mgを1日1回経口投与する。好ましくは、5mg、10mg、20mgまたは40mgを含有する錠剤を1日1回経口投与する。
【0039】
本発明の製剤は、例えば、高血圧症又は高血圧症に由来する疾患(より具体的には、高血圧症、心臓疾患[狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全若しくは心肥大]、腎臓疾患[糖尿病性腎症、糸球体腎炎若しくは腎硬化症]又は脳血管性疾患[脳梗塞若しくは脳出血])等の予防又は治療に有効である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例等により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】

(実施例A−1)処方A、打錠圧28 N/mm2(杵:Φ-9.5mm平杵)
処方A中のステアリン酸マグネシウムを除く成分を乳鉢混合した後、ステアリン酸マグネシウムを加えて袋混合し、打錠用混合末を得た。得られた打錠用混合末を打錠圧力28 N/mm2で打錠した。
【0042】

処方A
オルメサルタンメドキソミル 20 mg
乳糖 106 mg
L−HPC 20 mg
HPC−L 3 mg
アビセル 10 mg
ステアリン酸マグネシウム 1 mg
----------------------------------------------------------
160 mg

(実施例A−2)処方A、打錠圧85 N/mm2(杵:Φ-9.5mm平杵)
実施例A−1で得られた打錠用混合末を打錠圧力85 N/mm2で打錠した。
【0043】

(実施例A−3)処方A、打錠圧141 N/mm2(杵:Φ-9.5mm平杵)
実施例A−1で得られた打錠用混合末を打錠圧力141 N/mm2で打錠した。
【0044】

(実施例A−4)処方A、打錠圧141 N/mm2(杵:Φ-9.5mm平杵)、粉砕
実施例A-3で得られた錠剤を乳鉢粉砕した。
【0045】

(実施例B−1)処方B、打錠圧28 N/mm2(杵:Φ-9.5mm平杵)
処方B中のステアリン酸マグネシウムを除く成分を乳鉢混合した後、ステアリン酸マグネシウムを加えて袋混合し、打錠用混合末を得た。得られた打錠用混合末を打錠圧力28 N/mm2で打錠した。
【0046】

処方B
オルメサルタンメドキソミル 20 mg
エリスリトール 139.5 mg
D−マンニトール 25 mg
アスパルテーム 7.5 mg
HPC−SSL 6 mg
ステアリン酸マグネシウム 2 mg
----------------------------------------------------------
200 mg

(実施例B−2)処方B、打錠圧85 N/mm2(杵:Φ-9.5mm平杵)
実施例B−1で得られた打錠用混合末を打錠圧力85 N/mm2で打錠した。
【0047】

(実施例B−3)処方B、打錠圧141 N/mm2(杵:Φ-9.5mm平杵)
実施例B−1で得られた打錠用混合末を打錠圧力141 N/mm2で打錠した。
【0048】

(実施例B−4)処方B、打錠圧141 N/mm2(杵:Φ-9.5mm平杵)、粉砕
実施例B-3で得られた錠剤を乳鉢粉砕した。
【0049】

(比較例C−1)処方A、混合
実施例A−1で得られた打錠用混合末を使用した。
【0050】

(比較例C−2)処方B、混合
実施例B−1で得られた打錠用混合末を使用した。
【0051】

(比較例C−3)オルメサルタンメドキソミル原体
オルメサルタンメドキソミル原体を使用した。
【0052】

実施例及び比較例で得られた製剤について、オルメサルタンメドキソミルの溶出性を下記の方法で測定し、結果を表に示した。
【0053】

(試験例)
日本薬局方第14改正の項に記載されている溶出試験法第2法(パドル法)に従い、毎分50回転、試験液として日局第2液(JP-2)900mLを用い、試験を行った。試験開始から30分および60分後の試験液を採取し、吸光度測定法によりオルメサルタンメドキソミルの溶出率を測定した。〔富山産業(株):溶出試験器NTR-6000、(株)島津製作所:分光光度計UV-1600〕。試験は2錠について行い、その平均値を示した。
【0054】

(表1)
-----------------------------------------------------
溶出率(%)
検体 30分後 60分後
-----------------------------------------------------
実施例A−1 65.7 77.5
実施例A−2 77.9 87.4
実施例A−3 83.1 90.3
実施例A−4 79.1 82.9
実施例B−1 61.8 74.3
実施例B−2 71.4 82.5
実施例B−3 81.2 91.4
実施例B−4 83.2 91.2
-----------------------------------------------------
比較例C−1 60.6 71.0
比較例C−2 58.5 71.0
比較例C−3 60.0 68.4
-----------------------------------------------------

表1に示したように、「組成物を圧縮する工程」(打錠工程)を実施した製剤は、「組成物を圧縮する工程」(打錠工程)を実施しなかった製剤または原体と比較して、オルメサルタンメドキソミルの溶出性に優れる結果を得た。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、溶出性の改善されたオルメサルタンメドキソミル含有製剤が得られる。