(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769368
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】閉ループ加速度計システムにおける振動整流誤差の削減システム及びその方法
(51)【国際特許分類】
G01P 15/13 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
G01P15/13 V
G01P15/13 C
【請求項の数】3
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2009-196875(P2009-196875)
(22)【出願日】2009年8月27日
(65)【公開番号】特開2010-54508(P2010-54508A)
(43)【公開日】2010年3月11日
【審査請求日】2012年8月20日
(31)【優先権主張番号】12/201,999
(32)【優先日】2008年8月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100096068
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 住江
(72)【発明者】
【氏名】ドニー・ロジョ
【審査官】
續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−361388(JP,A)
【文献】
特表2008−514959(JP,A)
【文献】
特開昭62−157575(JP,A)
【文献】
特開平06−289045(JP,A)
【文献】
特開2006−162495(JP,A)
【文献】
特開2008−008884(JP,A)
【文献】
特開平08−160073(JP,A)
【文献】
特開2005−151621(JP,A)
【文献】
特開平03−067302(JP,A)
【文献】
特開2003−004522(JP,A)
【文献】
特開平11−215883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 15/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静重力場で用いるための閉ループ加速度計システム(20)であって、当該加速度計システムが、
プルーフマスと、
前記プルーフマスのための静電ドライバ(26)を含む加速度計であって、当該静電ドライバが、再均衡制御器(32)から発せられる信号に対して、非線形的態様で応答するものと、
前記プルーフマスの動作を検知し、当該検知した動作に基づいて静重力場を決定するように構成される構成部と、
前記プルーフマスを再均衡させるように構成された前記再均衡制御器(32)であって、前記再均衡制御器(32)が、前記静電ドライバと通信状態にあり、前記再均衡制御器(32)が、少なくとも一つの可変利得構成部(58、60)を有する比例積分微分(PID)制御部を備え、当該少なくとも一つの可変利得構成部(58、60)が、前記決定された静重力場の絶対値に基づく、
閉ループ加速時計システム。
【請求項2】
請求項1記載の閉ループ加速時計システムにおいて、再均衡制御器のPID制御部は可変P構成部と可変D構成部を含み、可変P構成部と可変D構成部は、前記静重力場に基づき、且つ静重力場に対する最適比例ゲイン及び静重力場に対する微分利得係数の所定の線形関係に基づいていることを特徴とする閉ループ加速時計システム。
【請求項3】
閉ループ加速度計システム(20)を制御する方法であって、
プルーフマスの動作を感知するステップと、
被感知動作に基づいて静重力場を決定するステップと、
決定された静重力場の絶対値に基づいて比例積分微分(PID)制御器の少なくとも一つの可変利得構成部を設定するステップと、
PID制御器を用いてプルーフマスを再均衡するステップであって、非線形的態様で応答する前記プルーフマスのための静電ドライバ(26)に制御信号を送るサブステップを含むものと
からなる、
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉ループ加速度計システムにおける振動整流誤差の削減システム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非線形再均衡ドライバ(nonlinear rebalancing driver)を有する閉ループ加速度計システムは、不規則な振動動作中に振動整流誤差(VRE)を受ける。1g静
重力場でのVREを減少可能な比例積分
微分(PID)制御器が開発されてきた。しかしながら、電流PID制御器は、加速度計システムがさらに高い“g”の静
重力場を経験するとき、VRE減少効果が低減する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、VREを削減する閉ループ加速度計システムを制御するシステム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施の形態によれば、本発明のシステムは、非線形応答のドライバを有する加速度計と、ドライバとの信号通信での再均衡制御器を備える。再均衡制御器は、少なくとも一つの可変利得構成部を有する比例積分
微分(PID)制御部を備える。
本発明の他の形態によれば、ドライバは静電ドライバである。
本発明の更なる形態によれば、少なくとも一つの可変利得構成部は比例(P)構成部と
微分(D)構成部から選択される。
本発明の更なる他の形態によれば、再均衡制御器のPID制御部は、静
重力場に基づく可変P/D構成部をそれぞれ有する可変P構成部と可変D構成部を備える。
【0005】
本発明の更なる他の形態によれば、本発明の方法は、プルーフマス(加速度計)の動作を感知するステップと、被感知動作に基づく静
重力場を決定するするステップと、決定された静
重力場に基づいてPID制御器の少なくとも一つの可変利得構成部を設定するステップと、PID制御器を用いてプルーフマスを再均衡するステップとを含む。
本発明の更なる他の形態によれば、上記可変利得構成部の設定は、PID制御器の比例(P)構成部と
微分(D)構成部から選択される少なくとも一つの可変利得構成部を設定することである。
本発明の更なる他の形態によれば、PID制御器を用いてプルーフマスを再均衡するステップは、非線形応答のドライバに制御信号を送出することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一実施形態の加速度計システムの図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係わる
図1の加速度計システムの幾つかの制御器の構成要素をさらに詳細に示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係わる閉ループ加速度計システムの制御方法のフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係わる可変利得PID制御器を含むモデル化加速度計システムに於ける、各種の静
重力場レベルについての周波数対VREを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、本発明の一実施形態に係わる加速度計システム20の図である。加速度計システム20は、少なくとも一つの感知板のような感知要素24を有する加速度計22と、非線形的に駆動信号に応答する少なくとも一つの駆動機構26を備える。駆動機構26は、一実施形態として静電容量性の駆動機構である。例えば、微小電子機械システム(MEMS)型加速度計及び、特にシーソー形構成を有するMEMS型加速度計のような各種加速度計を用いてよい。感知電子回路28(詳細は図示せず)は感知要素24と信号通信を行う。感知電子回路28は、例えば、感知要素24からの信号を増幅及び濾波するようにしてもよい
。図示の実施形態では、感知電子回路28はアナログ・デジタル(A/D)変換器30に出力を提供するアナログ回路であり、該A/D変換器30は駆動機構26からの増幅及び濾波済み信号をデジタル化する。
【0008】
制御器32は、A/D変換器30からデジタル信号を受信して制御信号を生成するものであり、該制御信号はデジタル/アナログ(D/A)変換器34においてアナログ信号に変換される。増幅器36は、D/A変換器34の出力を入力とし、駆動機構26へ出力する前に、信号を増幅する。制御器32は、一実施形態では、可変比例(P)利得構成部と可変
微分(D)利得構成部を有する比例積分
微分(PID)制御構成部を含む。一実施例では、P利得構成部とD利得構成部は、加速度計システム20が被る静
重力場に関連し、50ヘルツ〜400ヘルツの周波数範囲の最適P利得と最適D利得との間の所定の線形関係に基づいている。一実施形態では、最適P利得と最適D利得との所定の線形関係は、各静
重力場レベルでの特定な最適P値と特定な最適D値に基づくものであって、該静
重力場レベルは周波数範囲にわたるVREを最小化するものであり、この線形関係は、例えば、1g〜4gの静
重力場の範囲にわたる特定な最適P値と特定な最適D値の変動により定義される。静
重力場レベル範囲にわたる周波数範囲に対する最適P利得と最適D利得との所定の線形な関係性に基づく可変P利得構成部と可変D利得構成部を用いることにより、制御器32は、特定の静
重力場レベルについて典型的に最適化される固定P値と固定D値を有する先行のPID制御器よりも静
重力場範囲において更に効果的な手法でVREを削減することができる。本実施形態において、線形関係は、1g〜4gの静
重力場レベルの範囲にわたる特定の最適P値と特定の最適D値の変動により定義されるものであるが、制御器32は、実施形態では、1g〜4g範囲に基づく最適P利得と最適D利得との間の所定の線形関係を利用して、0gから所定の最大静
重力場レベルのように、この範囲外での動作が可能である。線形関係は、他の実施形態では、異なる静
重力場範囲を用いて決定しても良い。
【0009】
図2は、本発明の実施形態に係わる
図1の加速度計システムの制御器32を更に詳細に示す図である。
図2に示す制御器32の構成要素は、アナログ又はデジタル構成要素を用いて実現可能であり、更にソフトウエアとハードウエアの組み合わせあるいはハードウエアのみを用いて実現してもよい。第1の増幅器50は、A/D変換器30からの信号を入力として主要増幅信号出力を生成するよう、所定の主利得値を有する信号を増幅する。積分器52は、第1の増幅器50に接続されている。積分器52は、主増幅信号出力を積分して積分出力を生成する。第1の加算器54は、積分出力を第1の入力として含む3つの
入力を受け取る。絶対値生成部56は、積分出力を受け取る。絶対値生成部56は、積分出力を入力として積分出力の絶対値を生成する。
【0010】
可変
微分利得構成部58は、絶対値生成部56からの積分出力の絶対値を入力として、可変
微分利得を生成する。第1の乗算器62は、可変
微分利得と主増幅信号出力を入力として受け取り、中間主
微分利得信号を生成する。
微分構成部64は、中間主
微分利得信号を入力として受け取り、該中間主
微分利得信号の
微分に基づいて主
微分利得信号を生成する。主
微分利得信号は、第1の加算器54への第2の入力として用いられる。
【0011】
可変比例利得構成部60は、入力として積分出力の絶対値が入力され、可変比例利得を生成する。第2の乗算器66は、入力として可変比例利得と主増幅信号を受け取り、主可変比例利得を生成する。主可変比例利得信号は、第1の加算器54において第3の入力として用いられる。第1の加算器54は、積分出力と、主可変
微分利得信号と主可変比例利得信号とを加算し、D/A変換器34に提供する加算された制御信号を生成する。
【0012】
一実施形態では、可変
微分利得構成部58で生成される可変
微分利得は、式DgaIn(gcontrol) = MDgaIn・|gcontrol| + BDgaIn)・I(ωn2)により表され、可変比例利得構成部60にて生成される可変比例利得は、式PgaIn(gcontrol) = MPgaIn・|gcontrol| + BPgaIn)・I(ωn・ Q)により表される。ここで、gcontrolは積分器52からの出力に対応し、|gcontrol|は積分出力の絶対値に対応し、MDgaInとBDgaInとは静
重力場に関連する最適
微分利得の事前確定された線形関係に基づき、MPgaInとBPgaInとは静
重力場に関連する最適比例利得の事前確定された線形関係に基づくものである。上記の等式において、ωnは加速度計22の固有周波数であり、ωn2は加速度計22の固有周波数の二乗値であり、Qは加速度計22の減衰率である。
【0013】
一実施形態では、可変
微分利得構成部58は、初期
微分利得増幅器68を含み、該増幅器68はMDgaInの係数で積分出力の絶対値を増幅し、これにより、初期
微分利得出力を生成する。
微分利得加算器70は、2つの入力を加算し、かくして加算された
微分利得出力を生成する。初期
微分利得出力は、
微分利得加算器70に第1の入力として入力され、BDgaInの値は、
微分利得加算器70に接続された記憶構成部72から第2の入力として受け取られる。記憶構成部72は、例えば、不揮発性メモリ装置である。加算された
微分利得出力は、最終
微分利得増幅器74において1/(ωn2)の係数で増幅され、これによ
り、可変
微分利得が生成される。
【0014】
一実施形態では、可変比例利得構成部60は、第1の比例利得増幅器76を含み、該増幅器76は、MPgaInの係数で積分出力の絶対値を増幅して第1の比例利得出力を生成する。比例利得増幅器78は、2つの入力を加算して加算された比例利得出力を生成する。第1の比例利得出力は、比例利得加算器78に第1の入力として入力され、BPgaInの値は、比例利得加算器78と接続された記憶構成部80から第2の入力として入力される。記憶構成部80は、例えば、不揮発性メモリ装置である。加算された比例利得出力は、第2の比例利得増幅器82において1/(ωn・Q)の係数で増幅されて可変比例利得が生成される。
【0015】
図3は本発明の実施の形態に係わる閉ループ加速度計システム20の制御方法200を示すフロー図である。最初に、ブロック202において、プルーフマスの動作が、例えば、感知部24や感知電子部品28により感知される。そして、ブロック204において、静
重力場が感知動作に基づいて決定される。次に、ブロック206において、例えば、制御器32のようなPID制御器の少なくとも一つの可変利得構成部が、決定済みの静
重力場に基づいて設定される。そして、ブロック208では、プルーフマスがPID制御器を用いて再均衡される。実施形態では、少なくとも一つの可変利得構成部を設定する工程は、静
重力場の絶対値に対する最適比例及び
微分利得係数の所定の線形関係に基づいて、PID制御器の可変P構成部と可変D構成部を設定する工程を含む。一実施形態では、プルーフマスがPID制御器を用いて再均衡される工程は、ドライバ機構26のように、非線形応答の静電ドライバに制御信号を送出する工程を含む。
【0016】
図4は、本発明の実施形態の加速度計システム20に類似するモデル化加速度計システムに於ける、各種静
重力場レベルについての周波数(Hz)対VRE(μg)を示すグラフであり、該加速度計システム20は、制御器32に類似する可変利得PID制御器を備えている。
【0017】
上述のように、本発明の好適な実施形態を例示して説明したが、本発明の技術的思想及び発明の範囲を逸脱することなく、多くの変更が可能である。例えば、制御器32は、マイクロコントローラ、磁界プログラマブル・ゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、もしくはオンチップ・システム(SOC)などを含むアナログ及びデジタルのハードウエア及び/又はソフトウエアの各種組み合わせを用いて実現しても良い。加えて、実施形態では、
図2を参照して説明したもの以外に、異なる数の
微分及び/又は比例利得増幅器を用いてもよい。また、本システムと方法は、実施形態における、50ヘルツ〜400ヘルツ以外の周波数範囲に渡るP及びD利得値と1g〜4gのg電界値との所定の線形関係に基づいても良い。