(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769406
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】電気機械の不均一なエアギャップを補償するための装置
(51)【国際特許分類】
F03D 9/00 20060101AFI20150806BHJP
H02K 7/04 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
F03D9/00 B
H02K7/04
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-273621(P2010-273621)
(22)【出願日】2010年12月8日
(65)【公開番号】特開2011-122590(P2011-122590A)
(43)【公開日】2011年6月23日
【審査請求日】2013年10月11日
(31)【優先権主張番号】09015204.2
(32)【優先日】2009年12月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリク スティースダル
【審査官】
加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−262489(JP,A)
【文献】
米国特許第02575153(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01586769(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 9/00
H02K 1/06
H02K 7/04
H02K 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械(102)における不均一なエアギャップ(119)を補償するための装置であって、
前記電気機械(102)はステータ(108)とロータ(114)とを備えており、
前記ロータ(114)は長軸(A)の周りを回転し、
前記ロータ(114)の少なくとも一部(118)は前記ステータ(108)の一部(111)と相互作用して発電し、
前記エアギャップ(119)は前記ロータ(114)の一部と前記ステータ(108)の一部との間の距離によって画定されており、
前記ステータ(108)の一部は、所定の長さにわたって、前記ロータ(114)の一部に対向しており、
前記エアギャップ(119)の断面積は前記所定の長さにわたって変化し、これにより該エアギャップ(119)は前記所定の長さに関して不均一であり、
前記ロータ(114)は複数の磁石を有しており、
前記エアギャップ(119)内の磁束密度は該エアギャップ(119)の断面積に依存して変化しており、
前記ステータ(108)は、ステータコイルの少なくとも1つの巻線(111)を備えている積層体(110)を有しており、
前記ロータ(114)は前部側端板(115)および円筒状部材(117)を備えており、
前記前部側端板(115)は環状に構成されており、前記円筒状部材(117)は中空に構成されており、
中空に構成されている前記円筒状部材(117)は前記複数の磁石を保持しており、該複数の磁石は前記円筒状部材(117)の内側に配設されており、
前記複数の磁石は前記積層体(110)および支持された前記巻線(111)に対向して配置されており、
前記エアギャップ(119)は、前記複数の磁石と前記ステータコイルの支持された前記巻線(111)との間に形成されており、
前記エアギャップ(119)の前記第1の側(S1)は前記前部側端板(115)に隣接しており、
前記第1の側(S1)に位置する磁石は、前記長軸(A)に対して所定の第1の高さ(H11)を有しており、
前記第2の側(S2)に位置する磁石は、前記長軸(A)に対して所定の第2の高さ(H21)を有しており、
前記第2の高さ(H21)は前記第1の高さ(H11)よりも高い、
ことを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記複数の磁石は永久磁石(118)である、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記磁束密度は、
前記エアギャップ(119)に関する、前記複数の磁石のサイズの変化により、および/または、
前記エアギャップ(119)に関する、前記複数の磁石の高さの変化により、および/または、
前記エアギャップ(119)に関する、前記複数の磁石の強さまたは磁界強度の変化により
変化している、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記複数の磁石のタイプが不均一な前記エアギャップ(119)にわたって変化しており、前記エアギャップ(119)の断面積に依存して、前記複数の磁石の磁界強度または磁束密度が調節されている、請求項2または3記載の装置。
【請求項5】
前記エアギャップ(119)に関して前記複数の磁石(118)の異なる高さ(H11、H21)が均衡するよう、前記複数の磁石は複数のベースメント(BM)上に配置されており、
前記エアギャップ(119)の前記第1の側(S1)に近い磁石(118)のベースメント(BM)は、前記エアギャップ(119)の前記第2の側(S2)に近い磁石(118)のベースメント(BM)より高い、
請求項1記載の装置。
【請求項6】
電気コイルが前記ロータ(114)に隣接した磁石として用いられる、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記ステータ(108)および前記ロータ(114)は単一のメインベアリング(120〜123)を介して接続されている、請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記ステータ(108)はステータ支承構造体(109)と積層体(110)とを備えており、
前記積層体(110)はステータコイルの巻線(111)を支持するよう構成されており、
前記ステータ支承構造体(109)は前記積層体(110)を2個所で支承するための2つの支承部材(112)を備えており、
前記支承部材(112)は環状に構成されており、
前記支承部材(112)は前記ロータ(114)に単一のメインベアリング(120〜123)を介して接続されており、
前記環状の支承部材(112)の外周端は中空円筒状の支承部材(113)に取り付けられており、
前記中空円筒状の支承部材(113)は環状の前記積層体(110)および前記巻線(111)を収容している、
請求項1乃至7のいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
複数の前記環状の支承部材(112)は同一の直径を有している、請求項1記載の装置。
【請求項10】
前記電気機械は発電機である、請求項1記載の装置。
【請求項11】
前記発電機は外側に位置するロータと内側に位置するステータとを備えており、ロータはステータの周りを回転する、および/または、
発電機は、風力タービンに設けられるダイレクトドライブ型発電機である、
請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記発電機は中心軸を有する固定シャフトを備えており、
前記ステータ(108)は前記固定シャフトの外面に配置されており、
前記ロータ(114)は前記ステータ(108)の周囲に配置されており、
前記ロータ(114)は単一のメインベアリングにより前記固定シャフトに支承されており、
前記メインベアリングは発電機の前部側に設けられる、
請求項10または11記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械内に存在する不均一なエアギャップを補償する装置に関する。本発明は、特に、発電機のロータとステータとの間のエアギャップを補償することに関する。
【0002】
電気機械は好ましくは、風力タービンに用いられる「ダイレクトドライブ型」発電機のような発電機である。
【背景技術】
【0003】
いずれの発電機も、そのステータの構成要素とロータの構成要素との間にエアギャップを有している。ロータの構成要素には例えば複数の永久磁石が含まれ、ステータの構成要素には、ステータコイルの少なくとも1つの巻線を備えた積層板が含まれる。
【0004】
エアギャップは発電機の高効率性を保証するよう比較的小さくなければならない。したがって、エアギャップはほんの数ミリメートルの幅になければならない。ダイレクトドライブ型発電機のような発電機に関しては、その大きさからこれは非常に難しい。ダイレクトドライブ型発電機は数メートルの直径を有している。
【0005】
ロータの構成要素およびステータの構成要素は互いに対向して配置されているので、エアギャップにより発電機の動作中にそれらの構成要素が確実に接触しないようにしなければならない。
【0006】
したがって、エアギャップは一方で発電機の効率性を保証するように非常に小さくなければならず、他方では、機械的損傷を防止するよう一定の幅のエアギャップが必要とされる。
【0007】
特にダイレクトドライブ型発電機に関しては、エアギャップをわずか数ミリの幅に維持することは困難である。つまりダイレクトドライブ型発電機は、ステータの構成要素とロータの構成要素とに対して、剛性が高く、大きく、また重い支持構造を必要としている。
【0008】
発電機のエアギャップは、
−ロータの一部である永久磁石の公差
−ステータの一部である積層板の公差
−ステータコイルの一部であるコイル巻線の公差
により決定される。
【0009】
発電機の他の構成要素もエアギャップの寸法に関係する。
【0010】
ロータがその回転軸の周りを回転する間に、エアギャップはロータの構成要素とステータの構成要素とが接触しないように設計される。
【0011】
ダイレクトドライブ型発電機のための種々のベアリング装置が公知である。その1つはいわゆる「2ベアリング」装置である。この装置は例えばEP1641102A1またはUS6,483,199B2に開示されている。
【0012】
これらの文献によれば、発電機のロータは風力タービンのシャフトと接続されている。シャフト自体は2つのベアリングを介して支承されている。発電機のステータは一方の側において1つのベアリングを介していわゆる「固定内部シャフト」に取り付けられている。したがって、ロータは固定内部シャフトの周りをステータに対して相対的に回転する。
【0013】
ステータを一方の側で支承されているので、エアギャップを一定にまたは、少なくともほぼ一定に維持することは困難である。また、重力が巨大な発電機に作用し、エアギャップにも影響を及ぼす。ロータの構成部品もまた、その質量慣性のため、エアギャップに影響を及ぼす。発電機の構成要素に作用する磁力、および、発電機の振動もまた、発電機の動作中のエアギャップの幅に影響を及ぼす。
【0014】
2ベアリング装置に代わり「1ベアリング装置」が使用される。この技術は、例えばUS2006/0152014A1およびWO02/057624A1に開示されている。固定された内部のベアリング部分は固定内部シャフトに取り付けられており、回転する外側のベアリング部分はダイレクトドライブ型発電機のロータを支承している。
【0015】
図3は、典型的な周知の「1ベアリング」装置を示す。風力タービン401はダイレクトドライブ型発電機402を備えている。ダイレクトドライブ型発電機402は、風力タービン401のタワー403の風上側に配置されている。
【0016】
タワーフランジ404はタワー403の頂部に配置されている。ベッドプレート405はタワーフランジ404に取り付けられている。風力タービン401はヨーシステム(図示せず)を備えている。ヨーシステムは、風力タービン401のベッドプレート405をY軸の周りに回転させるために用いられる。
【0017】
風力タービン401は固定シャフト406を備えており、この固定シャフト406は中心軸Aを有している。固定シャフト406の後部側は保持部材407に取り付けられている。固定シャフト406の前部側には、ダイレクトドライブ型発電機402のステータ408が配置されている。
【0018】
ステータ408はステータ支承構造体409および積層体410を備えている。積層体410は巻線411を備えている。
【0019】
ステータ支承構造体409は、積層体410を2個所で支承するための2つの支承部材412を備えている。支承部材412は環状に構成されている。支承部材412は固定シャフト406の外面に取り付けられている。
【0020】
中空円筒状の支承部材413は環状の支承部材412の外周端に取り付けられている。中空円筒状の支承部材413には環状の積層体410および巻線411が収容されている。
【0021】
ロータ414はステータ408の周囲に配置されている。ロータ414は前部側端板415と、円筒状部材417とを備えている。前部側端板415は環状に構成されており、円筒状部材417は中空に構成されている。
【0022】
円筒状部材417は複数の永久磁石418を備えている。複数の永久磁石418は中空の円筒状部材417の内側に配設されている。
【0023】
複数の永久磁石418は積層体410と、この積層体410に備えられている巻線411に対向して配置されている。
【0024】
約5mm幅のエアギャップ419が、複数の永久磁石418と積層体410との間に設けられている。
【0025】
前部側端板415はベアリング420を介して固定シャフト406に取り付けられている。ベアリング420は軸方向荷重を中心軸Aの両方向の荷重に変換することができる。適切なベアリングは例えばDE20116649U1に開示されている。
【0026】
ベアリング420の固定部421は固定シャフト406に取り付けられている。ベアリング420の回転部422は取り付けリング423に連結されている。前部側端板415とハブ424は取り付けリング423に取り付けられている。ハブ424は風力タービンの回転ブレード(図示せず)のための取り付け機構425を備えている。
【0027】
ここに示すエアギャップ419は均一であり、ロータの構成部材とステータの構成部材との間に一定の距離を形成している。1ベアリングの設計は、設計が簡単なため、非常に魅力的である。その一方で、1ベアリング装置は上述の2ベアリング装置と同じ欠点を有している。
【0028】
いずれのベアリング装置も、それぞれ利点と欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】WO02/057624A1
【特許文献2】US2006/0152014A1
【特許文献3】DE20116649U1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
それらのベアリング装置を風力タービンのダイレクトドライブ型発電機に適用した場合には、エアギャップが均一ではなくなる可能性が高い。発電機の構成部品のサイズに起因して、エアギャップの断面積はその長さ方向において変化する虞がある。つまり、不均一なエアギャップが生じる場合がある。その結果、発電機の効率が低下する虞がある。
【0031】
したがって、本発明の課題は、電気機械、特にダイレクトドライブ型発電機のような巨大な発電機における不均一なエアギャップの影響を補償する装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
この課題は、電気機械がステータとロータとを備えており、ロータが長軸の周りを回転し、ロータの少なくとも一部がステータの一部と相互作用して発電し、エアギャップがロータの一部とステータの一部との間の距離によって画定されており、ステータの一部が、所定の長さにわたって、ロータの一部に対向しており、エアギャップの断面積が所定の長さにわたって変化し、これにより該エアギャップが所定の長さに関して不均一であり、ロータが複数の磁石を有しており、エアギャップ内の磁束密度がエアギャップの断面積に依存して変化していることにより解決される。
【0033】
好適な実施形態は、従属項に記載されている。
【0034】
本発明において、電気機械はステータとロータとを備えている。ロータは長軸の周りを回転する。この長軸は電気機械の長軸であってもよい。
【0035】
ロータの少なくとも一部はステータの一部と相互作用して発電する。エアギャップはロータの一部とステータの一部との間の距離によって画定される。
【0036】
ステータの一部は、所定の長さにわたって、ロータの一部に対向している。
【0037】
エアギャップの断面積は所定の長さにわたって変化するので、エアギャップは所定の長さに関して不均一である。
【0038】
不均一なエアギャップの好ましくない影響を補償するため、ロータの一部である磁石の磁束密度が、エアギャップの断面積に依存して変化される。
【0039】
好ましくは、永久磁石がロータにおいて用いられている。
【0040】
エアギャップ内の磁束密度は、好ましくは、ロータの一部から特定距離のエアギャップの断面積に依存して変化される。
【0041】
本発明の第1の実施形態において、磁石のタイプを不均一なエアギャップにわたって変更することができる。エアギャップがその第1の側において「短い」第1の距離を有する場合、そこに位置する磁石は第1の磁束密度(または磁界強度)を有してもよい。
【0042】
エアギャップがその第2の側において「比較的長い」第2の距離を有する場合、対応するそこに位置する磁石は、第1の磁束密度に関して増加されている第2の磁束密度(または磁界強度)を有してもよい。
【0043】
本発明の第2の実施形態において、磁石のサイズを不均一なエアギャップにわたって変更することができる。エアギャップがその第1の側において「短い」第1の距離を有する場合、そこに位置する磁石のサイズは第1の距離に関して第1の高さを有する。したがって、磁石は第1の磁束密度(または磁界強度)を有することになる。
【0044】
エアギャップがその第2の側において「比較的長い」第2の距離を有する場合、そこに位置する磁石のサイズはそこで第2の距離に関して第2の高さを有する。したがって、磁石は、第1の磁束密度(または磁界強度)に関して増加されている第2の磁束密度(または磁界強度)を有することになる。エアギャップに関連する磁石の異なる高さが均衡するよう、磁石は異なるベースメントに配置されている。ベースメントの高さはエアギャップの断面積に応じて個別に選択される。
【0045】
好ましくは、電気機械は1ベアリング装置を有する。従って、ただ1つのベアリングがロータの片側支承体として用いられる。ベアリングを介してロータとステータが接続される。ロータは、電気機械の長軸に関して、支承されている第1の端部と好ましくは支承されていない第2の端部とを備えている。
【0046】
好ましくは、電気機械は発電機である。
【0047】
好ましくは、発電機はダイレクトドライブ型発電機である。
【0048】
好ましくは、発電機は風力タービンである。
【0049】
好ましくは、発電機は外側に位置するロータと内側に位置するステータとを有しているので、ロータはステータの周りを回転する。
【0050】
好ましくは、発電機は中心軸を持つ固定シャフトを有する。ステータは固定シャフトの外面に配置されている。ロータは実質的にステータの周囲に配置されている。発電機の前部側には、ロータがメインベアリングにより、固定シャフト上に少なくとも間接的に支承されているか、または固定シャフト上に配置されている。
【0051】
エアギャップの幅は電気機械の動作中に変化しやすい。印加される力を不均一なエアギャップに関して考慮すれば、動作中にロータがステータと衝突する危険性は低減されているか、または、無くなりさえする。
【0052】
他方では、不均一なエアギャップの望ましくない効果が低減されているか、または、無くなりさえするので、電気機械の効率性は向上する。
【0053】
以下では、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。図面は異なる実施形態を示すものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図3】本願明細書の背景技術の項において説明した、ダイレクトドライブ型発電機の周知の「1ベアリング装置」を示す図である。
【0055】
図1は本発明の有利な実施形態を示す。
【0056】
風力タービン101はダイレクトドライブ型発電機102を備えている。ダイレクトドライブ型発電機102は、風力タービン101のタワー103の風上側に配置されている。
【0057】
タワーフランジ104はタワー103の頂部に配置されている。ベッドプレート105はタワーフランジ104に取り付けられている。風力タービン101はヨーシステム(図示せず)を備えている。ヨーシステムは、風力タービン101のベッドプレート105をY軸の周りに回転させるために用いられる。
【0058】
風力タービン101は固定シャフト106を備えており、この固定シャフト106は中心軸Aを有している。固定シャフト106の後部側は保持部材107に取り付けられている。固定シャフト106の前部側には、ダイレクトドライブ型発電機102のステータ108が配置されている。
【0059】
ステータ108はステータ支承構造体109および積層体110を備えている。積層体110は巻線111を備えている。
【0060】
ステータ支承構造体109は、積層体110を2個所で支承するための2つの支承部材112を備えている。支承部材112は環状に構成されている。支承部材112は固定シャフト106の外面に取り付けられている。
【0061】
中空円筒状の支承部材113は環状の支承部材112の外周端に取り付けられている。中空円筒状の支承部材113には環状の積層体110および巻線111が収容されている。
【0062】
ロータ114はステータ108の周囲に配置されている。ロータ114は前部側端板115と、円筒状部材117とを備えている。前部側端板115は環状に構成されており、円筒状部材117は中空に構成されている。
【0063】
円筒状部材117は複数の永久磁石118を備えている。複数の永久磁石118は中空の円筒状部材117の内側に配設されている。
【0064】
複数の永久磁石118は積層体110と、この積層体110に備えられている巻線111に対向して配置されている。
【0065】
平均幅が約5mmの不均一なエアギャップ119が、複数の永久磁石118と積層体110との間に設けられている。
【0066】
前部側端板115はベアリング120を介して固定シャフト106に取り付けられている。ベアリング120は軸方向荷重を中心軸Aの両方向の荷重に変換することができる。適切なベアリングは例えばDE20116649U1に開示されている。
【0067】
ベアリング120の固定部121は固定シャフト106に取り付けられている。ベアリング120の回転部122は取り付けリング123に連結されている。前部側端板115とハブ124は取り付けリング123に取り付けられている。ハブ124は風力タービンの回転ブレード(図示せず)のための取り付け機構125を備えている。
【0068】
本発明によれば、複数の複数の永久磁石118は異なるサイズを有し、したがって、不均一なエアギャップ119の断面積に関して異なる高さH11、H21を有している。
【0069】
エアギャップ119の第1の側S1は前部側端板115に隣接している。エアギャップ119は第1の側S1において第1の幅W1を有している。
【0070】
第1の幅W1は、発電機102の動作中に、ステータ108の構成部材と、ロータ114の構成部材との接触が確実に防止されることを保証しなければならない。
【0071】
エアギャップ119の第2の側S2は第1の側S1とは反対側に位置する。エアギャップ119は第2の側S2において第2の幅W2を有している。
【0072】
ベアリングの構成部材120、122、123の位置に起因して、第2の幅W2は第1の幅W1よりも大きい。
【0073】
第2の幅W2は、発電機102の動作中に、ステータ108の構成部材と、ロータ114の構成部材との接触が確実に防止されることを保証しなければならない。
【0074】
不均一なエアギャップにより、
−ロータの構成部材に働く重力、
−ハブ124からシャフト106を介して発電機102に誘起される空力的な力、
−発電機102の回転する構成部材により生成される質量慣性、
−発電機の構成部材に働く磁力、または、
−振動
が補償および吸収される。
【0075】
積層体110を2個所で支承する2つの支承部材112は、好ましくは同一の長さを有していることを言及しておく。
【0076】
図2は
図1の詳細を示す。
【0077】
複数の磁石118のサイズは不均一なエアギャップ119にわたり変化する。エアギャップ119が、その第1の側S1において「短い」第1の距離または幅W1を有する場合、そこに位置する磁石118は第1の幅W1に関して第1の高さH11を有する。したがって、第1の側S1において磁石118は第1の磁界強度(磁束密度)を有する。
【0078】
エアギャップ119が、その第2の側S2において「比較的長い」第2の距離または幅W2を有する場合、そこに位置する磁石は第2の幅W2に関して第2の高さH21を有する。したがって、磁石118は第2の側S2において、第1の側S1における第1の磁界強度に関して増加されている第2の磁界強度(磁束密度)を有する。し、第1の側S1における第1の磁界強度(束密度)に関して、第2の側S2における磁界強度(束密度)は増大する。
【0079】
エアギャップ119の変化する断面積に関して、複数の磁石118の異なる高さH11およびH21が均衡するよう、複数の磁石118が複数の異なるベースメントBM上に配設される。
【0080】
ベースメントBMの高さは、エアギャップの断面積に応じて個別に選択される。
【0081】
本発明が、セグメント化されたステータおよび/またはセグメント化されたロータを備えている発電機に特に適していることは留意すべきである。このような発電機は、製造工場または製造場所においてステータ/ロータに取り付けられる複数のセグメントを有する。
【0082】
この構造は、典型的に4メートル以上の直径を有する風力タービンのダイレクトドライブ型発電機に特に適している。
【0083】
不均一なエアギャップがロータ近傍での調節により補償されるので、セグメントが組み合わされて発電機全体が形成される前に、調節は容易に行うことができる。
【0084】
複数のベースメントBMの種々の高さを選択することにより、エアギャップの不均一性を増加させるか、不均一性を生じさせることすらできる。
【0085】
エアギャップの断面積および複数の磁石の高さ/厚さを段階的に変化させ、効果的な補償を実現することができる。
【0086】
好ましい実施形態では、エアギャップは、第1の側S1において6mmの距離を有し、また、第1の側S1において第1の磁石の20mmの高さまたは厚さを有する。第2の側S2におけるエアギャップは好ましくは9mmであり、相応する磁石の高さまたは厚さは30mmである。したがって、エアギャップは第1の側S1から第2の側S2まで1.5の係数で増加し、不均一なエアギャップの効果は係数1.5で磁石の高さ/厚さが同様に増加することにより補償される。
【0087】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、不均一なエアギャップの補償は、磁石の強さの増加と組み合わせて達成される。複数の磁石の強さを1.1テスラ〜1.2テスラの範囲で変化させることができる、および/または、複数の磁石の異なる高さ/厚さにより変化させることができる。