特許第5769424号(P5769424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5769424超音波による検査対象物の非破壊材料検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769424
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】超音波による検査対象物の非破壊材料検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/265 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
   G01N29/265
【請求項の数】24
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-548044(P2010-548044)
(86)(22)【出願日】2009年1月21日
(65)【公表番号】特表2011-513719(P2011-513719A)
(43)【公表日】2011年4月28日
(86)【国際出願番号】EP2009050614
(87)【国際公開番号】WO2009106383
(87)【国際公開日】20090903
【審査請求日】2010年8月26日
(31)【優先権主張番号】08003487.9
(32)【優先日】2008年2月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【復代理人】
【識別番号】100182556
【弁理士】
【氏名又は名称】島村 暁
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル クロッセン−フォン−ランケン−シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン オーバーマイアー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル オーファイス
【審査官】 比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−504654(JP,A)
【文献】 特開平11−304772(JP,A)
【文献】 実開昭57−113192(JP,U)
【文献】 特開昭61−003059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物に超音波を照射し、当該検査対象物内で反射された超音波を検出することにより、少なくとも部分的に中実の検査対象物を非破壊材料検査する装置であって、当該装置は、
・超音波を送信し、前記検査対象物から反射された超音波を検出するための少なくとも1つの検査ヘッドと、
・前記検査ヘッドを収容するための収容機構(30)と、
・前記検査ヘッドが取り付けられた可動の少なくとも1つのキャリッジ(14)と、
・前記キャリッジ(14)を案内するための長手方向に延在し、検査対象物の表面構造に適合するレール(22)とを有し、
・前記キャリッジ(14)は前記レール(22)に沿って可動であり、前記検査ヘッドは前記キャリッジ(14)に対して可動である装置において、
前記キャリッジ(14)は少なくとも2つのフレーム部材(32,34)を有し、該フレーム部材は相互に旋回可能に接続されており、
前記各フレーム部材(32,34)には少なくとも1つの案内ロール(18)が回転可能に固定されており、
前記少なくとも2つのフレーム部材(32,34)は、前記キャリッジ(14)の運動方向に沿って延在する軸を中心に旋回可能であり、
前記検査ヘッドと前記キャリッジ(14)は少なくとも1つの復帰機構によって相互に結合されており、
前記収容機構(30)は、該復帰機構により、収容機構(30)と第1のフレーム部材(32)とが、及び/又は、第1のフレーム部材(32)と第2のフレーム部材(34)とが、相互に対応する中央位置に自動的に復帰される
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記レール(22)は、ステレオリソグラフ法によって作製される装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の装置において、
前記レール(22)が、紫外線光による処理によって硬化可能な少なくとも1つの材料から作製される装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項記載の装置において、
前記レール(22)は、少なくとも1つのエポキシ樹脂から作製される装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項記載の装置において、
前記レール(22)は、1つまたは複数の案内溝および/または案内ノッチ(26)を有し、該案内溝および/または案内ノッチは前記キャリッジ(14)または当該キャリッジ(14)の一部分に相補的に構成されている装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項記載の装置において、
前記キャリッジ(14)は前記少なくとも1つの案内ロール(18)を有する装置。
【請求項7】
請求項5または6記載の装置において、
前記少なくとも1つの案内ロール(18)と少なくとも1つの案内溝(26)とは相互に係合する装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項記載の装置において、
前記キャリッジ(14)は、当該キャリッジ(14)を前記レール(22)に沿って駆動するために少なくとも1つのモータ(21)を有する装置。
【請求項9】
請求項8記載の装置において、
前記キャリッジ(14)は、前記モータ(21)と結合した少なくとも1つの歯車(20)を有し、該歯車は前記レール(22)と係合する装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項記載の装置において、
前記レール(22)は少なくとも1つのラック(28)を有する装置。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一項記載の装置において、
前記レール(22)には少なくとも1つの歯部(28)が設けられている装置。
【請求項12】
請求項9を引用する請求項10を引用する請求項11記載の装置において、前記歯車(20)は、前記ラックまたは歯部(28)と係合する装置。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか一項記載の装置において、
前記キャリッジ(14)にある前記検査ヘッドは、前記レール(22)の長手軸に対して平行に延在する軸を中心にして旋回可能である装置。
【請求項14】
請求項1記載の装置において、
前記復帰機構は、相互作用する少なくとも2つのマグネットエレメントを有する装置。
【請求項15】
請求項1または14記載の装置において、
前記復帰機構は少なくとも1つのバネ要素を有する装置。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか一項記載の装置において、
少なくとも2つの前記案内ロール(18)は相互に可動にキャリッジ(14)に取り付けられており、該案内ロール(18)の位置がレール(22)の経過に適合される装置。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか一項記載の装置において、
前記少なくとも1つのフレーム部材(32,34)には前記2つの案内ロール(18)が並んで配置されている装置。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれか一項記載の装置において、
前記少なくとも2つのフレーム部材(32,34)にはそれぞれ前記2つの案内ロール(18)が並んで配置されており、それぞれ2つの案内ロール(18)を備える両方の軸は相互に旋回可能である装置。
【請求項19】
請求項1から18までのいずれか一項記載の装置において、
前記少なくとも2つのフレーム部材(32,34)は、前記少なくとも1つの復帰機構によって相互に結合されている装置。
【請求項20】
請求項19記載の装置において、
前記復帰機構は、相互作用する少なくとも2つのマグネットエレメント(40)を有する装置。
【請求項21】
請求項19または20記載の装置において、
前記復帰機構は少なくとも1つのバネ要素を有する装置。
【請求項22】
請求項1から21までのいずれか一項記載の装置において、
少なくとも1つの制御装置を有する装置。
【請求項23】
請求項22記載の装置において、
前記制御装置は、超音波の送信および/または検出を制御する装置。
【請求項24】
請求項22または23記載の装置において、
前記制御装置は、検査ヘッドおよび/またはキャリッジ(14)の運動を制御する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物に超音波を照射し、検査対象物内で反射された超音波を検出することにより、少なくとも部分的に中実の検査対象物を非破壊材料検査する、請求項1による装置に関する。
【背景技術】
【0002】
完全にまたは部分的に中実に構成された多数の対象物では、その内部構造を材料損傷について検査しなければならない。このために、内部の不可視の構造に関する情報を得るには非破壊検査方法が必要である。これはとりわけ、機械的負荷の大きな構成部材で必要である。
【0003】
例えばスチールからなる構成部材は鋳造の後、引き続き、回転または他の冷間処理により最終形状にもたらすため鍛造される。ここでこの内部材料損傷についての検査は、鍛造の後に行うことができる。
【0004】
すでに使用されている構成部材も、規則的に材料検査をしなければならない。このことはとりわけ、大きな負荷に曝される構成部材に当てはまる。検査すべき構成部材は例えば、ガスタービンまたは蒸気タービン用のタービン翼である。とりわけタービン翼根は運転中に大きな負荷に曝される。この負荷は亀裂を引き起こすことがあるが、この亀裂は超音波測定法を用いて、表面を走査することにより検出し、位置特定することができる。表面波複雑な形状を有しているから、特別の測定法が必要である。
【0005】
通例このような金属部分は超音波により検査される。ここでは、金属部分の境界面で反射される音波が検出される。反射された音波の伝搬時間から進んだ行程長を求めることができ、そこから間隔を検出することができる。種々異なる方向からの照射により、材料損傷についてのさらなる情報が得られる。そこから材料損傷が位置特定される。例えば材料損傷の幾何方向をこのようにして求めることができる。反射された音波の形から、材料損傷の種類が推定される。
【0006】
検査対象物の表面を超音波検知器により走査し、検出されたデータを記録することにより、超音波を使用することのできる容積を完全に探査することができる。検出されたデータから、鑑定に使用することのできる音像が発生される。
【0007】
公知の方法では、型枠が例えば注型用樹脂から作製される。型枠を寸法どおりに、操作すべき表面に載せることができる。型枠内には、超音波検査ヘッドが装着される切欠部がある。被検表面全体を操作することができるようにするため、超音波検査ヘッドは手動で離散的間隔でずらされる。しかしこれは非常に面倒である。
【0008】
別の公知の方法では、超音波検査ヘッドがキャリッジに配置され、このキャリッジが保持装置を介して、隣接する検査対象物にもたらされる。保持装置はモータによって、操作表面上を可動である。検査ヘッドはバネにより、検査対象物の表面に押し付けられる。しかしここでは検査ヘッドの理想的配向は不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式の、少なくとも部分的に中実な検査対象物を非破壊材料検査するための装置において、検査ヘッドを位置決めするための手段を改善し、測定技術的コストを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は請求項1に記載されている対象によって解決される。
本発明によれば、冒頭に述べた装置は次のコンポーネントを有する。
・超音波を送信し、検査対象物から反射された超音波を検出するための少なくとも1つの検査ヘッド、
・検査ヘッドが取り付けられた可動の少なくとも1つのキャリッジ、および
・キャリッジを案内するための長手方向に延在し、検査対象物の表面構造に適合するレール、
・ここでキャリッジは前記レールに沿って可動である。
【0011】
検査ヘッドは、キャリッジに対して可動に配置されている。このことは、検査ヘッドの運動の少なくとも1つの別の自由度に作用する。
【0012】
本発明の要点は、キャリッジがレールに沿って可動であり、このレールが検査対象物の表面に適合できることである。レールは所定の行程に沿って検査ヘッドの表面上に延在し、キャリッジはこの行程に沿って運動することができる。キャリッジは、レールに沿って任意の個所に位置決めすることができる。したがってキャリッジは連続的にレールに沿って運動することができる。
【0013】
好ましくはレールは、ステレオリソグラフ法によって作製することができる。これによりレールを、検査対象物の表面の図面だけに基づき作製することができ、検査対象物の表面に適合することができる。したがってレールはとりわけ複雑な表面にも適合することができる。
【0014】
好ましい実施形態では、レールが、紫外線光による処理によって硬化可能な少なくとも1つの材料から作製される。これによりレールをまずフレキシブルな材料から作製し、相応に変形することができる。引き続きレールは所望の形状で硬化される。このようにして特定の検査対象物に対して適合するレールを非常に迅速に作製することができ、したがって適切な検査装置を作製することができる。例えばレールは、少なくとも1つのエポキシ樹脂から作製することができる。
【0015】
とりわけレールは1つまたは複数の案内溝および/または案内ノッチを有する。この案内溝および/または案内ノッチはキャリッジまたはキャリッジの一部分に相補的に構成されている。これは、キャリッジのレール内での正確な案内に寄与する。
【0016】
さらにキャリッジは少なくとも1つの案内ロールを有することができる。これによりキャリッジはレール内を、低摩擦で正確に運動することができる。
【0017】
好ましくは少なくとも1つの案内ロールと、少なくとも1つの案内ノッチまたは案内溝は相互に係合する。これによりキャリッジの運動可能性が一義的に、すなわちレールに沿って設定される。
【0018】
好ましい実施形態では、キャリッジが、レールに沿ってキャリッジを駆動する少なくとも1つのモータを有する。
【0019】
このためにキャリッジは、モータと結合した少なくとも1つの歯車等を有することができ、この歯車はレールと力結合して係合することができる。これにより、モータにより実行される回転数とキャリッジの位置との間に一義的関係が存在する。
【0020】
さらにレールは少なくとも1つのラックを有することができる。その代わりにまたは加えて、レール内にまたはレールに少なくとも1つの歯部を形成することができる。この場合、歯車はラックまたは歯部と係合することができる。これによりキャリッジは滑りなしで運動するようになる。
【0021】
好ましくはキャリッジにある検査ヘッドは、レールの長手軸に対して平行に延在する軸を中心にして旋回可能である。このようにして、検査ヘッドの運動の2つの自由度により検出領域が最適化される。
【0022】
さらに検査ヘッドとキャリッジを、少なくとも1つの復帰機構によって相互に結合することができる。これにより検査ヘッドの安定した位置を規定し、実現することができる。
【0023】
例えば復帰機構は、相互作用する少なくとも2つのマグネットエレメントを有する。その代わりにまたはそれに加えて、復帰機構は少なくとも1つのバネ要素を有することができる。
【0024】
さらに少なくとも2つの案内ロールを相互に可動にキャリッジに取り付けることができ、これにより案内ロールの位置がレールの経過に適合される。これにより簡単に、キャリッジの形状をレールに適合することができる。
【0025】
好ましくはキャリッジは少なくとも2つのフレーム部材を有し、これらのフレーム部材は相互に旋回可能に接続されている。ここで各部材には少なくとも1つの案内ロールが回動可能に固定されている。ここで少なくとも2つのフレーム部材は、キャリッジの運動方向に沿って延在する軸を中心に旋回可能である。これによりキャリッジの形状が、レールの経過にとりわけ簡単に適合することができる。
【0026】
例えば少なくとも1つのフレーム部材には2つの案内ロールが並んで配置されている。この場合、このフレーム部材は2つの案内ロールとともに固定軸を形成する。この固定軸は他方のフレーム部材を基準にして旋回可能である。
【0027】
好ましい実施形態では、少なくとも2つのフレーム部材にそれぞれ2つの案内ロールが並んで配置されており、したがってそれぞれ2つの案内ロールを備える両方の軸は相互に旋回可能である。
【0028】
フレーム部材を結合するために、少なくとも2つの案内ロールが少なくとも1つの復帰機構により相互に結合されていることができる。
【0029】
例えば復帰機構は、相互作用する少なくとも2つのマグネットエレメントを有する。その代わりにまたはそれに加えて、復帰機構は少なくとも1つのバネ要素を有することができる。
【0030】
さらにこの装置は、少なくとも1つの制御装置を有することができる。制御装置は、超音波の送信および検出を制御することができる。さらに検査ヘッドおよび/またはキャリッジの運動も制御装置により制御することができる。
【0031】
好ましい実施形態では、金属製の検査対象物、とりわけ鍛造構成部材の材料を検査するための装置が設けられている。とりわけこの装置は、タービンホイール、タービン翼またはタービン翼根の材料検査に適する。
【0032】
本発明のさらなる特徴、利点および特別の実施形態は従属請求項の対象である。
【0033】
以下、本発明の方法を好ましい実施形態と添付図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の好ましい実施形態による、検査対象物を非破壊材料検査する装置のためのキャリッジの概略的斜視図である。
図2】本発明の好ましい実施形態による、検査対象物を非破壊材料検査する装置のためのレールの概略的斜視図である。
図3】本発明の好ましい実施形態による、検査対象物を非破壊材料検査する装置のためのレールの詳細斜視図である。
図4】本発明の好ましい実施形態による検査ヘッドを備えるキャリッジの概略的斜視展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明の好ましい実施形態による、検査対象物を非破壊材料検査する装置のためのキャリッジ14の概略的斜視図である。
【0036】
キャリッジ14は、実質的に長方形のフレームとして構成されている。キャリッジ14は、通常はプラスチックから作製される複数の個別の部材を有する。キャリッジ14の2つの外側長手側16には、それぞれ2つの案内ロール18が配置されている。案内ロール18は回転可能にキャリッジ14に固定されている。とりわけ案内ロール18は回転可能に、長方形のフレームに固定されている。この具体的な実施形態では、案内ロール18は金属から作製されている。長方形のフレームはこの実施形態ではツーピースに構成されており、これについては下で詳細に説明する。
【0037】
2つの長手側16の一方では、案内ロール18の上方に歯車20が配置されている。歯車20も同様に回転可能に、長手側16の一方に取り付けられている。さらに歯車20は駆動ホイールとして構成されており、電気モータ21により駆動される。
【0038】
キャリッジ14は少なくとも1つの検査ヘッドを収容するために設けられているが、検査ヘッドは図1に明示されていない。キャリッジ14は実質的に、長方形のフレームと検査ヘッド用の収容機構30有する。検査ヘッド用の収容機構30は復帰機構を介して、長方形のフレームに取り付けられている。
【0039】
検査ヘッドは、超音波を送信し、検査対象物から反射された超音波を検出するために設けられている。好ましい実施形態では、検査ヘッドは旋回可能にキャリッジ14に取り付けられている。例えば旋回軸は、キャリッジ14の運動方向に対して平行に延在している。
【0040】
好ましい実施形態では、キャリッジ14が復帰機構を有し、これにより検査ヘッドは自動的に所定の位置、とりわけ中央位置に旋回可能である。復帰機構はマグネットエレメントまたはバネ要素を有することができる。
【0041】
図2は、本発明の好ましい実施形態による、検査対象物を非破壊材料検査する装置のためのレール22の概略的斜視図である。
【0042】
レール22はこの好ましい実施形態ではエポキシ樹脂から作製される。これによりレール22を、紫外線光処理によって硬化することができる。さらに好ましくはレール22は、ステレオリソグラフ法によって作製される。これによりレールを、検査対象物表面の図面のみに基づいて作製することができる。
【0043】
レール22は、長手に伸長された長方形のフレームとして構成されている。レール22の輪郭は検査ヘッドの表面に適合されており、面積の大きな2つの側の一方が検査ヘッドの表面に対して実質的に相補形に構成されており、その側が材料検査中に検査ヘッドに向く。
【0044】
両方の内側の長手側24にはそれぞれ1つの案内溝26がある。両方の案内溝26はレール22の長手軸に対して平行に延在しており、案内溝26の2つの開放側は相互に向き合っている。したがって案内溝26は内側に向かって開放している。さらにレール22は歯部28を有し、この歯部はラックの形態でレール22の長手軸に沿って延在している。
【0045】
レール22とキャリッジ14の幾何形状は、キャリッジ14がレール22内をスライド可能であるように適合されている。ここでキャリッジ14の案内ロール18はレール22の案内溝内を可動であり、キャリッジ14の歯車18が歯部28に係合する。
【0046】
図3は、本発明の好ましい実施形態による、検査対象物を非破壊材料検査する装置のためのレール22の詳細斜視図である。
【0047】
図3はレール22の詳細を示す。案内溝26は、2つの内側の長手側24にある。2つの案内溝26も相互に平行である。案内溝26間の間隔は実質的に一定である。案内溝26は内側に向かって開放しており、開放側は相互に向き合っている。歯部28は、歯車20が歯部28と係合し、同時に案内溝18が対応する案内溝26と係合するように構成されている。
【0048】
図4は、本発明の好ましい実施形態による検査ヘッドを備えるキャリッジの概略的斜視展開図である。キャリッジ14は長方形のフレームを有し、このフレームはさらに第1のフレーム部材32と第2のフレーム部材34を有する。検査ヘッド36用の収容機構30は第1のフレーム部材32内に設けられている。検査ヘッド36はさらに収容機構30内に設けられている。歯車20として構成された駆動ホイールは電動機21により駆動される。
【0049】
並置された2つの案内ロール18は、第1のフレーム部材32に取り付けられている。並置された別の案内ロール18は、第2のフレーム部材34に取り付けられている。第1のフレーム部材32と第2のフレーム部材34は相互に旋回可能に、キャリッジ14の長手軸に沿って接続されている。したがって案内ロール18の2つの軸は相互に旋回可能であり、キャリッジ14はレール22の経過に適合することができる。軸が旋回することによって、4つすべての案内ロール18は常にレール22と接触している。
【0050】
キャリッジ14は複数のマグネットエレメント40を有し、これらは2つの復帰機構を形成する。ここで復帰機構の1つは収容機構30と第1のフレーム部材32との間で作用する。別の復帰機構は第1のフレーム部材32と第2のフレーム部材34との間で作用する。第1のフレーム部材32と第2のフレーム部材34がある収容機構30には、マグネットエレメント40を収容するために設けられた切欠部42が配置されている。切欠部42は、対応するマグネットエレメント40よりもわずかに大きい。
【0051】
収容機構30はキャリッジ14の運動方向に垂直に、第1のフレーム部材32を基準にして2つの方向に旋回可能であり、復帰機構によって中央位置に自動的に復帰する。第2のフレーム部材34は、キャリッジ14の運動方向に対して平行に延在する軸を中心に、同様に第1のフレーム部材32を基準にして旋回可能であり、復帰機構によって中央位置に自動的に復帰する。中央位置では対応する切欠部が正確に対向している。
【0052】
したがって検査ヘッドは、一方ではレール22に沿って可動であり、他方ではこれに対して垂直に旋回可能である。これにより比較的大きな領域に音波を発し、検出することができる。このために検査ヘッドには運動の2つの自由度が必要なだけであり、したがって検査ヘッドの制御および反射された音波の検出と評価には比較的簡単なアルゴリズムで十分である。
【0053】
材料検査は、キャリッジ14に取り付けられた検査ヘッドがレール22に沿って、すなわち検査対象物の外表面に沿って移動することによって行われる。このときに検査ヘッドは、長手軸に対して平行の軸、少なくともレール22の接線に対して平行の軸を中心に旋回可能である。
【0054】
本発明の装置により、検査対象物の全容積を検出するために検査対象物の表面全体を走査することは必ずしも必要ではない。例えば特定の区間または特定の行程を表面上で走査することができる。なぜなら検査ヘッドの旋回運動によって、容積の少なくとも関連の領域を、表面を完全に走査しなくても検出することができるからである。
【0055】
検出される信号はとりわけ、検査対象物内の造波抵抗が空間的に突然変化する個所での超音波の反射成分により発生する。この変化は、そこに構造的な材料境界または材料移行が存在しない場合には、材料エラーとして解釈される。検出された信号は、反射された音波の振幅および伝搬時間についての情報を含む。検査対象物の材料内の音波速度は既知であるから、材料エラーと検査ヘッドの位置との距離も伝搬時間から求められる。
図1
図2
図3
図4