(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の歯科用複合修復材料は、(A)重合性単量体、(B)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子〔I−1〕、(C)有機無機複合フィラー、(D)重合開始剤を含有してなる。ここで有機無機複合フィラーとは、ポリマーと複合酸化物微粒子との複合フィラーを意味する。
【0020】
本発明の最大の特徴は、ペーストの操作性や機械的強度を良好にするために配合する、前記平均一次粒子径が0.01〜0.10μmのシリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II〕について、その少なくとも一部(〔II−1〕)を、(C)有機無機複合フィラー中に含有させた点にある。これにより、その粒子表面に多数存在する強酸点は、有機樹脂マトリックス中に包含されることになり、(A)重合性単量体成分や(D)重合開始剤成分と直接的に接触しなくなる。この結果、(A)重合性単量体成分や(D)重合開始剤成分の変質が抑制され、複合修復材料を長期間保存しても色調が高度に維持され、延いてはオパール効果も低下しないものになる。また、斯様に(C)有機無機複合フィラーを配合することは、複合修復材料の硬化時における重合収縮の低下にも効果的である。
【0021】
以下、本発明の歯科用硬化性材料の各成分について説明する。
<(A)重合性単量体>
本発明の歯科用複合修復材料において重合性単量体は、公知のものが特に制限なく、ラジカル重合性単量体やカチオン重合性単量体等が使用できる。歯科用途として見た場合、重合速度の観点から、ラジカル重合性単量体を用いるのが好ましく、多官能のものがより好ましい。特に好ましいラジカル重合性単量体は、多官能(メタ)アクリレート系重合性単量体である。多官能の(メタ)アクリレート系重合性単量体を例示すれば、下記(イ)〜(ハ)に示すものが挙げられる。
【0022】
(イ)二官能重合性単量体
(i)芳香族化合物系のもの
2,2−ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス[4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル]プロパン、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、
2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、
2(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン
及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;
2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の−OH基を有するメタクリレートあるいはこれらメタクリレートに対応する−OH基を有するアクリレートと、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等。
【0023】
(ii)脂肪族化合物系のもの
エチレングリコールジメタクリレート、
ジエチレングリコールジメタクリレート、
トリエチレングリコールジメタクリレート、
テトラエチレングリコールジメタクリレート、
ネオペンチルグリコールジメタクリレート、
1,3−ブタンジオールジメタクリレート、
1,4−ブタンジオールジメタクリレート、
1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、
1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エチル
およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;
2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の−OH基を有するメタクリレートあるいはこれらメタクリレートに対応する−OH基を有するアクリレートと、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加体から得られるジアダクト等。
【0024】
(ロ)三官能重合性単量体
トリメチロールプロパントリメタクリレート、
トリメチロールエタントリメタクリレート、
ペンタエリスリトールトリメタクリレート、
トリメチロールメタントリメタクリレート
およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等。
【0025】
(ハ)四官能重合性単量体
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、
ペンタエリスリトールテトラアクリレート;
ジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートまたはグリシドールジアクリレートとの付加体から得られるジアダクト等。
【0026】
これらの多官能の(メタ)アクリレート系重合性単量体は、硬化体の屈折率(25℃)が通常、1.45〜1.60、より好適には1.52〜1.56の範囲である。これらの中から、使用する(C)有機無機複合フィラーの屈折率(25℃)に応じて、その差が小さくなるよう選定して使用するのが好ましい(屈折率の差の具体値については後述する)。重合性単量体の2種以上を組合せて、全体で所望の屈折率に調整して用いても良い。一般に、芳香族系重合性単量体は高屈折率を示すものが多く、脂肪族系重合性単量体は低屈折率を示すものが多い。通常は、芳香族系重合性単量体を、重合性単量体の全量に対して20質量%以上配合させて調整するのが好ましい。
【0027】
さらに、必要に応じて、重合性単量体には、
メチルメタクリレート、
エチルメタクリレート、
イソプロピルメタクリレート、
ヒドロキシエチルメタクリレート、
テトラヒドロフルフリルメタクリレート、
グリシジルメタクリレート等のメタクリレート、
及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等
の単官能の(メタ)アクリレート系単量体や、上記(メタ)アクリレート系単量体以外のラジカル重合性単量体を用いても良い。
【0028】
<(B)平均一次粒子径が0.15〜0.50μmの範囲であり、該粒子径分布の標準偏差が1.30以内にある球形のシリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子〔I−1〕>
本発明の歯科用複合修復材料には、オパール効果を与える目的で、平均一次粒子径が0.15〜0.50μmであるシリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子〔I−1〕が配合される。ここで、オパール効果の発現には、該複合酸化物粒子〔I−1〕の平均一次粒子径が0.15〜0.50μmであることが重要である。即ち、オパール効果の発現は、ブラッグ条件に則って回折干渉が起こり、特定波長の光が強調されることによるものであるところ、上記粒子径の粒子を配合すると、その複合修復材料の硬化体には、同審美性状が発現するようになる。オパール効果を一層に高める観点から、シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物の平均一次粒子径は0.15〜0.30μmがより好適であり、0.18〜0.28μmが特に好適である。
【0029】
なお、シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子〔I−1〕は一次粒子径が上記平均値範囲にあることが重要であり、この要件を満足する粒子であれば該一次粒子の個々は多少の凝集粒子として存在していても良い。しかしながら、できるだけ独立粒子として存在しているのが好ましく、具体的には、10μm以上の凝集粒子が10体積%未満
である。
【0030】
本発明において、粒子の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡により粉体の写真を撮影し、その写真の単位視野内に観察される粒子の30個以上を選択し、それぞれの粒子径(最大径)を求めた平均値をいう。
【0031】
また、シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子〔I−1〕の形状は、散乱する光が均一になり、鮮やかな発色が現れるようになることから球形であることが必要である。さらに、粒度が揃っている方が散乱する光の均一性が高まるため、一次粒子径分布の標準偏差が1.30以内、好適には1.20以内のものを用いる。
【0032】
ここで、粒子が球状とは、略球状であればよく、必ずしも完全な真球である必要はない。一般には、走査型電子顕微鏡で粒子の写真を撮り、その単位視野内にあるそれぞれの粒子(30個以上)について、その最大径に直交する方向の粒子径をその最大径で徐した平均均斉度が0.6以上、より好ましくは0.8以上のものであればよい。
【0033】
他方、粒子の粒子径分布は、走査型電子顕微鏡により粉体の写真を撮影し、その写真の単位視野内に観察される粒子の30個以上を選択し、下記算出式より求めた値をいう。
【0035】
本発明においてシリカ・チタン族酸化物系複合酸化物とは、シリカとチタン族(周期律表第IV族元素)酸化物との複合酸化物であり、シリカ・チタニア、シリカ・ジルコニア、シリカ・チタニア・ジルコニア等が挙げられる。このうち表面酸点の酸強度が強くオパール効果の消失の低減効果が顕著に発揮される他、高いX線不透過性も付与できることから、シリカ・ジルコニアが好ましい。その複合比は特に制限されないが、十分なX線不透過性を付与することと、屈折率を後述する好適な範囲にする観点から、シリカの含有量が70〜95モル%であり、チタン族酸化物の含有量が5〜30モル%であるものが好ましい。シリカ・ジルコニアの場合、このように各複合比を変化させることにより、その屈折率を1.48〜1.56の範囲で自在に変化させることができる。
【0036】
なお、これらシリカ・チタン族酸化物系複合酸化物には、少量であれば、シリカ及びチタン族酸化物以外の金属酸化物の複合も許容される。具体的には、酸化ナトリウム、酸化リチウム等のアルカリ金属酸化物を10モル%以内で含有させても良い。
【0037】
こうしたシリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子の製造方法は特に限定されないが、例えば、加水分解可能な有機ケイ素化合物と加水分解可能な有機チタン族金属化合物とを含んだ混合溶液を、アルカリ性溶媒中に添加し、加水分解を行って反応生成物を析出させる、いわゆるゾルゲル法が好適に採用される。
【0038】
これらのシリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子は、シランカップリング剤により表面処理されても良い。シランカップリング剤による表面処理により、(A)重合性単量体の硬化体部分との界面強度に優れたものになる。代表的なシランカップリング剤としては、例えばγ−メタクリロイルオキシアルキルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等の有機ケイ素化合物が挙げられる。これらシランカップリング剤の表面処理量に特に制限はなく、得られる複合修復材料の機械的物性等を予め実験で確認したうえで最適値を決定すればよいが、好適な範囲を例示すれば、粒子100重量部に対して1〜10重量部の範囲である。
【0039】
前記したようにオパール効果は、硬化体の透明性が高い場合により鮮明に発現する。そのためシリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子〔I−1〕は、(A)重合性単量体の硬化体との屈折率差が0.10以下、より好ましくは0.05以下であって、透明性をできるだけ損なわないものを選定して用いるのが好ましい。
【0040】
本発明における(B)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子〔I−1〕の配合量は、(A)重合性単量体100質量部に対して、40〜200質量部である。シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物〔I−1〕を40質量部以上配合することにより、オパール効果が良好に発現するようになる。他方、平均一次粒子径が0.15〜0.5μmの粒子を200質量部を越えて多量に配合するのは一般的には困難である。また、複合酸化物粒子〔I−1〕として、(A)重合性単量体の硬化体との屈折率差が前記0.10を上回るものを用いる場合において、硬化体の透明性が低下して、オパール効果も十分に発現しなくなる虞がある。これらを勘案すると、(B)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子〔I−1〕の配合量は、(A)重合性単量体100質量部に対して60〜180質量部が好適であり、70〜160質量部が特に好適である。
【0041】
<(C)平均一次粒子径が0.01〜0.10μmの範囲のシリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II−1〕を有機樹脂マトリックス中に40〜75質量%分散させてなる、(A)重合性単量体の硬化体との屈折率差が0.10以下である有機無機複合フィラー>
本発明の最大の特徴は、平均一次粒子径が0.01〜0.10μmの範囲であるシリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II−1〕の少なくとも一部を、有機無機複合フィラーに含有させた点にある。これにより、この粒子表面に存在する強酸点は、(A)重合性単量体成分や(D)重合開始剤成分と直接的に接触しなくなり、長期間保存しても硬化体の透明性は低下せず、オパール効果の低下の問題が大きく改善される。
【0042】
ここで、シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II−1〕の平均一次粒子径は0.01〜0.10μmの範囲であることが必要である。即ち、この粒子径であれば可視光波長よりも十分に小さいため、光の散乱は起き難く、硬化体の透明性を高く保持しつつ、フィラー充填量を増加でき、複合修復材料の硬化体の機械的強度を高めることが可能になる。なお、平均一次粒子径が0.01μm未満の粒子は、粘度が高くなり、取扱が困難である。シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II−1〕の平均一次粒子径は、0.01〜0.08μmであるのがより好適であり、0.05〜0.08μmであるのが特に好適である。
【0043】
シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II−1〕も前記複合酸化物粒子〔I−1〕と同じく多少の凝集粒子が存在していても良い。また、その形状は、十分に小さい粒径であるため、球状でも不定形でも用いることができる。さらに、一次粒子径分布は、特に制限されるものではないが、光散乱効果を阻害しないように、標準偏差が1.30以内のものが好ましく、1.20以内のものが特に好ましい。
【0044】
この複合酸化物微粒子〔II−1〕を構成するシリカ・チタン族酸化物系複合酸化物も、前記複合酸化物粒子〔I−1〕で説明したものと同じものが使用される。もちろん、シランカップリング剤により表面処理したものであっても良い。
【0045】
シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II−1〕の有機無機複合フィラーへの含有量(有機無機複合フィラーに対する充填率)は、40〜75質量%である。有機無機複合フィラーへの含有量が40質量%未満では、複合修復材料の硬化体の機械的強度を十分に高め難くなる。また、複合酸化物微粒子〔II−1〕を75質量%を越えて有機無機複合フィラー中に含有させることは操作上困難であったり、均質なものが得難くなる。複合酸化物微粒子〔II−1〕の有機無機複合フィラーへのより好適な含有量は、45〜75質量%である。
【0046】
(C)有機無機複合フィラーにおいて、有機樹脂マトリックスは、前述の(A)重合性単量体として記載したものと同じ重合性単量体の単独重合体又は複数種の共重合体が、なんら制限なく採択可能である。
【0047】
上記(C)有機無機複合フィラーは、その配合により、複合修復材料の透明性を低下させないために、(A)重合性単量体の硬化体との屈折率差が0.10以下、より好ましくは同屈折率差が0.05以下に調整されたものを用いる必要がある。これにより、(B)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子〔I−1〕によるオパール効果を良好に発現させることが可能になる。このような(C)有機無機複合フィラーの屈折率の調整は、使用する複合酸化物微粒子〔II−1〕や有機樹脂マトリックスの種類や配合比等を適宜に選定して実施すれば良い。
【0048】
本発明において、(C)有機無機複合フィラーは、複合酸化物微粒子〔II−1〕、重合性単量体、及び重合開始剤の各成分の所定量を混合し、加熱あるいは光照射等の方法で重合させた後、粉砕する、有機無機複合フィラーの一般的製造方法に従って製造すれば良い。重合開始剤は、公知の重合開始剤が特に制限なく用いられるが、より黄色度の低い硬化体を得ることができることから、熱重合開始剤を用いるのが好適であり、さらにその構造中に芳香族環を有していない化合物からなるものを用いるのがより好ましい。
【0049】
本発明において(C)有機無機複合フィラーの平均粒子径は、特に制限されるものではないが、硬化体の機械的強度や硬化性ペーストの操作性を良好にする観点から、2〜100μmが好ましく、さらには5〜50μmがより好ましく、15〜30μmであるのが特に好ましい。
【0050】
(C)有機無機複合フィラーには、シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II−1〕の他に、シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子〔I−1〕と同じ範疇の粒子(〔I−2〕)も含有させるのが有効である。オパール効果は、複合修復材料中において、オパール性付与フィラーがより均一に分散しているほど良好に発揮されるため、該複合酸化物粒子〔I−2〕は有機無機複合フィラー中にも含有させることにより、同審美性状を一層に高めることができ好ましい。
【0051】
(C)有機無機複合フィラーにシリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子〔I−2〕を含有させる場合、その含有量は、有機樹脂マトリックス中に5質量%以上で、且つ(A)重合性単量体の硬化体との屈折率差が前述の0.10以下に維持される量が好ましい。また、該シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子の〔I−2〕と〔II−1〕とを併用して含有させる場合には、互いの粒子径の相違による充填性向上効果により、前記〔II−1〕を単独で含有させる場合よりも、その含有総量を増加させることができる。このため、複合酸化物粒子〔I−2〕の有機無機複合フィラーへの配合量は、シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II−1〕との合計が85質量%を越えない量であるのが好ましくなる。
【0052】
さらに、より均一なオパール効果の発現を勘案すれば、有機無機複合フィラー中における、複合酸化物粒子〔I−2〕の含有量は、(A)重合性単量体に対する(B)複合酸化物粒子〔I−1〕の配合量とあまり差がなく(0.5〜2.0質量倍の範囲内)するのが好ましい。
【0053】
なお、有機無機複合フィラーに含有させる上記複合酸化物粒子〔I−2〕は、複合酸化物微粒子〔II−1〕と同種のシリカ・チタン族酸化物系複合酸化物であるのが好ましいが、異種のものであっても構わない。
【0054】
(C)有機無機複合フィラーには、その効果を阻害しない範囲で、公知の添加剤を配合することができる。具体的には、顔料、重合禁止剤、蛍光増白剤等が挙げられる。また、有機無機複合フィラーは、歯科用複合修復材料として使用するに先だって、更に洗浄やシランカップリング剤等による表面処理を行ってもよい。
【0055】
本発明における(C)有機無機複合フィラーの配合量は、(A)重合性単量体100質量部に対して90質量部以上で、且つ(B)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子〔I−1〕との合計量が550質量部を越えない配合量である。即ち、有機無機複合フィラーの配合により複合修復材料のペーストの操作性や硬化体の機械的強度を良好にするためには、該有機無機複合フィラーは120質量部以上、より好適には140質量部以上は配合することが必要になる。
【0056】
また、(C)有機無機複合フィラーを(B)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子〔I−1〕との合計量で550質量部を越えて多量に配合させることは操作上困難であり、均質な複合修復材料が得難くなる。さらに、複合修復材料の硬化体の透明性が低下して、オパール効果も十分に発現しなくなる虞がある。これらを勘案すると、(C)有機無機複合フィラーの配合量は、(B)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子〔I−1〕との合計量が470質量部を越えない配合量であるのがより好ましい。
【0057】
<(D)重合開始剤>
本発明で用いる重合開始剤は、本組成を重合硬化させる目的で配合させるが、公知の如何なる重合開始剤が特に制限されることなく用いられる。
【0058】
中でも、口腔内で硬化させる場合が多い歯科の直接充填修復用途では光重合開始剤(組成)、又は化学重合開始剤組成が好ましく、混合操作の必要が無く簡便な点から、光重合開始剤(組成)が好ましい。
【0059】
光重合に用いる重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタールなどのベンジルケタール類、ベンゾフェノン、4,4'−ジメチルベンゾフェノン、4−メタクリロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、ジアセチル、2,3−ペンタジオンベンジル、カンファーキノン、9,10−フェナントラキノン、9,10−アントラキノンなどのα−ジケトン類、2,4−ジエトキシチオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン等のチオキサンソン化合物、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)―フェニルホスフィンオキサイドなどのビスアシルホスフィンオキサイド類等が使用できる。
【0060】
なお、光重合開始剤には、しばしば還元剤が添加されるが、その例としては、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、N−メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン類、ラウリルアルデヒド、ジメチルアミノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどのアルデヒド類、2−メルカプトベンゾオキサゾール、1−デカンチオール、チオサルチル酸、チオ安息香酸などの含イオウ化合物などを挙げることができる。
【0061】
更に、上記光重合開始剤、還元性化合物に加えて光酸発生剤を加えて用いる例がしばしば見られる。このような光酸発生剤としては、ジアリールヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物、スルホン酸エステル化合物、およびハロメチル置換−S−トリアジン有導体、ピリジニウム塩系化合物等が挙げられる。
【0062】
本発明において、シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II−1〕による複合修復材料の色調の変化は、重合開始剤に還元剤としてアミン類が含有されていた場合に顕著に生じるため、本発明では斯様にアミン類を成分に含む重合開始剤に適用するのが特に効果的である。
【0063】
これら重合開始剤は単独で用いることもあるが、2種以上を混合して使用してもよい。重合開始剤の配合量は目的に応じて有効量を選択すればよいが、重合性単量体100重量部に対して通常0.01〜10重量部の割合であり、より好ましくは0.1〜5重量部の割合で使用される。
【0064】
<(E)平均一次粒子径が0.01〜0.10μmの範囲であり、該粒子径分布の標準偏差が1.30以内にあるシリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II−2〕>
本発明の歯科用複合修復材料には、平均一次粒子径が0.01〜0.10μmの範囲のシリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II〕を、前記(C)有機無機複合フィラーに配合させるもの(〔II−1〕)の他に、別成分〔II−2〕として配合させても良い。即ち、複合修復材料の硬化体に十分な機械的強度を付与しようとすると、(B)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子〔I−1〕と(C)有機無機複合フィラーを配合させるだけでは不足する場合があり、また、この機械的強度は複合修復材料のフィラー充填量が多いほど高くなるため、斯様に別成分としても(A)重合性単量体に対してシリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II−2〕を配合するのが好適になる。
【0065】
前記したようにシリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II〕を、有機無機複合フィラーに含有させることなく、そのまま複合修復材料中に配合すると、ペーストを長期間保存した場合にオパール効果が低下して行く。しかし、本発明では、シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II〕のあくまで一部として配合(〔II−2〕)するだけなので、上記有機無機複合フィラーに配合(〔II−1〕)した量分だけは、このオパール性の低減を防止する効果は発揮される。
【0066】
(E)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II−2〕は、光散乱効果を阻害せず、(B)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子〔I−1〕の一次粒子における粒径範囲との区別を明確にするため、その一次粒子径分布の標準偏差が1.30以内であり、さらには1.20以内のものを用いる。なお、この他の(E)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II−2〕の詳細な粒子性状は、(C)有機無機複合フィラーに配合させるシリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II−1〕と同様である。
【0067】
本発明における(E)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II−2〕の配合量は、前記した(C)有機無機複合フィラーの配合理由と同様の理由から、(A)重合性単量体100重量部に対して、(B)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子〔I−1〕及び(C)有機無機複合フィラーとの合計量が550質量部を越えない範囲である。また、前記オパール効果の低下を防止する観点からは、シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II−2〕の配合量は、(A)重合性単量体100重量部に対して120質量部以下、より好適には100質量部以下に留めるのが好ましい。
【0068】
さらに、この(E)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II−2〕の配合効果を十分に発揮させる観点からは、(A)重合性単量体100質量部に対して50質量部以上、より好ましくは70質量部以上を配合するのが望まれる。
【0069】
<その他の添加剤>
本発明の歯科用複合修復材料には、その効果を阻害しない範囲で、上記(A)〜(E)成分の他、公知の他の添加剤を配合することができる。具体的には、重合禁止剤、顔料、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0070】
<歯科用複合修復材料の硬化体のオパール性>
本発明の歯科用複合修復材料の硬化体は、優れた透明性を有し、良好なオパール性状を有する。すなわち、複合修復材料製造時における硬化体において、透明性を示す指標である、1mm厚の試験片のコントラスト比が通常、0.30以下の優れた値であり、より好ましくは0.25以下のものも得られる。ここで、コントラスト比は、色差計を用いて、三刺激値のY値を背景色黒及び白で測定し、下記式に基づいて求めた値である。
【0071】
コントラスト比=背景色黒の場合のY値/背景色白の場合のY値
そして、同1mm厚の試験片は、オパール効果を示す指標である、ΔC*が通常、18以上の優れた値であり、より好ましくは20以上のものも得られる。ここで、ΔC*は、下記式で求められる。なお、透過光のオレンジ色は、赤−緑を表すa
*、反射光の青色は青−黄を表すb
*で表されるものである。
【0072】
ΔC*=√(a
*b−a
*w)
2+(b
*b−b
*w)
2
(a
*b、b
*b:背景色黒での色質指数、a
*w、b
*w: 背景色白での色質指数)
さらに、同1mm厚の試験片の黒背景色の時の分光反射率は、420〜470nmの波長において極大となるものが得られる。黒背景色という条件は、試験片を反射した光の測定を意味し、本発明の歯科用複合修復材料の硬化体は、優れた透明性とオパール性状のため、青色の光を示す420〜470nmの波長で極大を示す。
【0073】
本発明の歯科用複合修復材料における、硬化体が斯様に優れた透明性やオパール性を示す性状は、該複合修復材料を長期間保存しても良好に維持される。
【0074】
本発明の歯科用複合修復材料は、一般に、前記各必須成分及び必要に応じて各任意成分を所定量とって十分に混練し、さらに必要に応じてこのペーストを減圧下脱泡して気泡を除去することによって得ることができる。
【0075】
本発明の歯科用複合修復材料は、充填用コンポジットレジンの一般的使用方法に従って使用すれば良い。具体的には、(D)重合開始剤が光重合開始剤のものであれば、修復すべき歯の窩洞を適切な前処理材や接着材で処理した後に、これを直接充填し、歯牙の形に形成した後に専用の光照射器にて強力な光を照射して重合硬化させる方法等が挙げられる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0077】
本発明における各種物性測定方法は、それぞれ以下のとおりである。
(1)複合酸化物微粒子の平均一次粒子径および粒子径分布の標準偏差
走査型電子顕微鏡(日本電子社製、「T−330A」)で粉体の写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子の数(30個以上)および粒子径を測定し、測定値に基づき下記式により平均粒子径および標準偏差を算出した。
【0078】
【数2】
【0079】
(2)複合酸化物微粒子の平均斉度
走査型電子顕微鏡で粉体の写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子について、その数(n:30以上)、粒子の最大径を長径(Li)、該長径に直交する方向の径を短径(Bi)を求め、下記式により算出した。
【0080】
【数3】
【0081】
(3)複合酸化物微粒子の比表面積測定
比表面積測定装置「フローソーブII2300」(島津製作所製)を用い、BET法にて測定した。なお、窒素30%ヘリウム70%混合気を用い、冷媒として液体窒素を用いた。
【0082】
(4)屈折率の測定
23℃の恒温室において、100mlサンプルビン中、複合酸化物微粒子1gを無水トルエン50ml中に分散させる。この分散液をスターラーで攪拌しながら1−ブロモトルエンを少しずつ滴下し、分散液が最も透明になった時点の分散液の屈折率をアッベ屈折率計にて測定し、得られた値を複合酸化物微粒子の屈折率とした。
【0083】
(5)オパール効果の評価
歯科用複合修復材料のペーストを7mmφ×1mmの孔を有する型にいれ、両面はポリエステルフィルムで圧接した。可視光線照射器(トクヤマ製、パワーライト)で両面を30秒ずつ光照射し硬化させた後、型から取り出して、色差計(東京電色製、「TC−1800MKII」)を用いて、背景色黒および白で測定を行い、下記式に基づいてΔC
*を求め、オパール効果の指標とした。ここで、オパール効果の特徴である透過光のオレンジ色は、赤−緑を表すa
*、反射光の青色は青−黄を表すb
*で表される。
【0084】
ΔC
*=√(a
*b−a
*w)
2+(b
*b−b
*w)
2
(a
*b、b
*b:背景色黒での色質指数、a
*w、b
*w: 背景色白での色質指数)
また、下記指標に基づいて、目視評価を行った。
【0085】
4:背景色黒において非常に鮮やかな青白い発色が見られる。
【0086】
3:背景色黒において鮮やかな青い発色が見られる。
【0087】
2:背景色黒において青い発色が見られる。
【0088】
1:背景色黒において青い発色が見られない、あるいは、黄色い。
【0089】
(6)硬化体のオパール効果の保存安定性評価
歯科用複合修復材料のペーストを50℃で保存した。保存開始から4週間後、6週間後、8週間後のペーストを(5)と同様に硬化体を作成し、同様な指標に基づいて、目視評価を行った。
【0090】
(7)透明性の評価
(5)と同様に色差計を用いて、三刺激値のY値を背景色黒及び白で測定した。下記式に基づいてコントラスト比を計算し、透明性の指標とした。
【0091】
コントラスト比=背景色黒の場合のY値/背景色白の場合のY値
【0092】
実施例及び比較例で用いた重合性単量体、重合開始剤等は以下のとおりである。
[重合性単量体]
・2,2−ビス[(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]プロパン(以下、「bis−GMA」と略す。)
・トリエチレングリコールジメタクリレート(以下、「3G」と略す。)
・2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(以下、「D−2.6E」と略す。)
・1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)トリメチルオキサン(以下、「UDMA」と略す。)
[重合開始剤]
・アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」と略す。)
・カンファーキノン(以下、「CQ」と略す)。
・N,N−ジメチルp−安息香酸エチル(以下、「DMBE」と略す)。
[重合禁止剤]
・ヒドロキノンモノメチルエーテル(以下、「HQME」と略す。)
・ジブチルヒドロキシトルエン(以下、「BHT」と略す。)
[紫外線吸収剤]
・2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(以下、「BS110」と略す。)
【0093】
製造例1〔有機樹脂マトリックスの調整〕
表1に示すような重合性単量体を各混合し、マトリックスM−1〜M−4を調製した。
【0094】
【表1】
【0095】
本発明で用いた粒子の製造方法を以下に示す。
製造例2〔シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子〔I〕及び微粒子〔II〕の製造〕
以下の方法により、実施例および比較例で使用した、シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子を各製造した。
2−1)〔平均一次粒子径0.25μmの球状シリカ−チタニア粒子の合成〕
テトラエチルシリケート(コルコート社製,製品名:エチルシリケート28)170gをメタノール400gと混合し、0.04質量%塩酸水溶液を5g加えて温度30℃約1時間攪拌しながら加水分解した。その後、この溶液にテトラブチルチタネート27gとナトリウムメチラートメタノール溶液(濃度30質量%)10gをイソプロピルアルコール200gに溶かした溶液を攪拌しながら混合して、テトラエチルシリケートとテトラブチルチタネートの混合溶液を調整した。次に攪拌装置付きの内容積3lのガラス製容器にメタノール1000gを導入し、これに25質量%アンモニア水溶液250gを加えてアンモニア性アルコール溶液を調整した。これにシリカ種粒子をつくるためのテトラエチルシリケート2gを添加し、30分間撹拌した後に上記テトラエチルシリケートとテトラブチルチタネートの混合溶液を約5時間かけて滴下した。
【0096】
なお、反応中は反応槽の温度を40℃に保った。反応終了後、白濁した反応槽液から溶媒を留去し乾燥し950℃、1時間焼成しシリカ−チタニア粒子(PF−1)を得た。このシリカ−チタニア粒子は、粒子径分布0.23〜0.27μm、平均一次粒子径0.25μmであり、その形状はSEM観察から球状であった。得られた粒子は、更にγ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシシランで表面処理した。得られた粒子の各種物性を表2に示した。
【0097】
2−2)〔平均一次粒子径0.19μmの球状シリカ−ジルコニア粒子の合成〕
テトラエチルシリケート(コルコート社製,製品名:エチルシリケート28)120gをイソブチルアルコール(東然石油化学社製)400gと混合し、0.05%希硫酸水溶液5gを加えて40℃で約1時間攪拌しながら加水分解した。その後、この溶液にテトラブチルジルコネート(日本曹達社製)25gとナトリウムメチラートメタノール溶液(濃度28質量%)10gをイソブチルアルコール200gに溶かした溶液を攪拌しながら混合して、テトラエチルシリケートとテトラブチルジルコネートの混合溶液を調整した。次に攪拌装置付き内容積3lガラス製容器にメタノール1000g,25%アンモニア水250gを導入したアンモニア性アルコール溶液中に攪拌しながらテトラエチルシリケートを4g添加し30分間攪拌した後に上記テトラエチルシリケートとテトラブチルジルコネートの混合溶液を約6時間かけて滴下した。
【0098】
なお、反応中は反応槽の温度を40℃に保った。反応終了後、白濁した反応槽液から溶媒を留去し乾燥し950℃、1時間焼成しシリカ−ジルコニア粒子(PF−2)を得た。このシリカ−ジルコニア粒子は、粒子径分布0.16〜0.20μm、平均一次粒子径は0.19μmで、形状は球状であった。得られた粒子は、更にγ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシシランで表面処理した。得られた粒子の各種物性を表2に示した。
【0099】
2−3)〔平均一次粒子径0.08μmの球状シリカ−チタニア微粒子の合成〕
テトラエチルシリケート(コルコート社製,製品名:エチルシリケート28)170gをメタノール400gと混合し、0.04質量%塩酸水溶液を5g加えて温度30℃約1時間攪拌しながら加水分解した。その後、この溶液にテトラブチルチタネート(日本曹達社製)26gとナトリウムメチラートメタノール溶液(濃度28質量%)10gをイソプロピルアルコール200gに溶かした溶液を攪拌しながら混合して、テトラエチルシリケートとテトラブチルチタネートの混合溶液を調整した。次に攪拌装置付き内容積3lのガラス製容器にメタノール1000g導入し、これに25%アンモニア水溶液250gを加えてアンモニア性アルコール溶液を調整した。これにシリカ種粒子をつくるためのテトラエチルシリケート2gを添加し、30分間撹拌した後に上記テトラエチルシリケートとテトラブチルチタネートの混合溶液を約5時間かけて滴下した。
【0100】
なお、反応中は反応槽の温度を40℃に保った。反応終了後、白濁した反応槽液から溶媒を留居し乾燥し1000℃、1時間焼成しシリカ−チタニア粒子(PF−3)を得た。このシリカ−チタニア粒子は、粒子径分布0.072〜0.095μm、平均一次粒子径は0.079μmであり、形状はSEM観察から球状であった。得られた微粒子は、更にγ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシシランで表面処理した。得られた粒子の各種物性を表2に示した。
【0101】
2−4)〔平均一次粒子径0.06μmの球状シリカ−ジルコニア微粒子の合成〕
テトラエチルシリケート(コルコート社製,製品名:エチルシリケート28)80gをイソブチルアルコール(東然石油化学社製)400gと混合し、0.05%希硫酸水溶液5gを加えて40℃で約1時間攪拌しながら加水分解した。その後、この溶液にテトラブチルジルコネート(日本曹達社製)21gとナトリウムメチラートメタノール溶液(濃度28質量%)13gをイソブチルアルコール200gに溶かした溶液を攪拌しながら混合して、テトラエチルシリケートとテトラブチルジルコネートの混合溶液を調整した。次に攪拌装置付き内容積3lガラス製容器にメタノール1000g,25%アンモニア水200gを導入したアンモニア性アルコール溶液中に攪拌しながら上記テトラエチルシリケートとテトラブチルジルコネートの混合溶液を約3時間かけて滴下した。
【0102】
なお、反応中は反応槽の温度を40℃に保った。反応終了後、白濁した反応槽液から溶媒を留去し乾燥し950℃、1時間焼成しシリカ−ジルコニア粒子(PF−4)を得た。このシリカ−ジルコニア粒子は、粒子径分布0.04〜0.08μm、平均一次粒子径は0.064μmで、形状は球状であった。得られた微粒子は、更にγ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシシランで表面処理した。得られた粒子の各種物性を表2に示した。
【0103】
2−5)〔平均一次粒子径0.40μm球状シリカ−ジルコニア粒子の合成〕
テトラエチルシリケート(コルコート社製,製品名:エチルシリケート28)120gをイソブチルアルコール(東然石油化学社製)400gと混合し、0.05質量%希硫酸水溶液5gを加えて40℃で約1時間攪拌しながら加水分解した。その後、この溶液にテトラブチルジルコネート(日本曹達社製)24gとナトリウムメチラートメタノール溶液(濃度28質量%)10gをイソブチルアルコール200gに溶かした溶液を攪拌しながら混合して、テトラエチルシリケートとテトラブチルジルコネートの混合溶液を調整した。次に攪拌装置付き内容積3lガラス製容器にメタノール1000g,25%アンモニア水250gを導入したアンモニア性アルコール溶液中に攪拌しながらテトラエチルシリケートを4g添加し30分間攪拌した後に上記テトラエチルシリケートとテトラブチルジルコネートの混合溶液を約6時間かけて滴下した。
【0104】
なお反応中は反応槽の温度を40℃に保った。反応終了後、白濁した反応槽液から溶媒を留去し乾燥し950℃、1時間焼成しシリカ−ジルコニア粒子(PF−5)を得た。このシリカ−ジルコニア粒子は、粒子径分布0.36〜0.43μm、平均一次粒子径は0.40μmで、形状は球状であった。得られた粒子は、更にγ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシシランで表面処理した。得られた粒子の各種物性を表2に示した。
【0105】
2−6)〔平均一次粒子径0.61μmの球状シリカ−チタニア粒子の合成〕
テトラエチルシリケート(コルコート社製,製品名:エチルシリケート28)120gをメタノール400gと混合し、0.04質量%塩酸水溶液を5g加えて温度30℃約1時間攪拌しながら加水分解した。その後、この溶液にテトラブチルチタネート20gとナトリウムメチラートメタノール溶液(濃度30質量%)10gをイソプロピルアルコール100gに溶かした溶液を攪拌しながら混合して、テトラエチルシリケートとテトラブチルチタネートの混合溶液を調整した。次に攪拌装置付きの内容積3lのガラス製容器にメタノール1000gを導入し、これに25質量%アンモニア水溶液250gを加えてアンモニア性アルコール溶液を調整した。これにシリカ種粒子をつくるためのテトラエチルシリケート2gを添加し、30分間撹拌した後に上記テトラエチルシリケートとテトラブチルチタネートの混合溶液を約5時間かけて滴下した。
【0106】
なお反応中は反応槽の温度を40℃に保った。反応終了後、白濁した反応槽液から溶媒を留去し乾燥し950℃、1時間焼成しシリカ−チタニア粒子(PF−6)を得た。このシリカ−チタニア粒子は、粒子径分布0.56〜0.64μm、平均一次粒子径0.61μmであり、その形状はSEM観察から球状であった。得られた粒子は、更にγ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシシランで表面処理した。得られた粒子の各種物性を表2に示した。
【0107】
【表2】
【0108】
製造例3〔有機無機複合フィラーの製造〕
乳鉢に、表3に示した各複合酸化物粒子を、製造しようとしている有機無機複合フィラー中に表3に示した充填率になる量で夫々計りとった。この複合酸化物粒子に対し、予め、重合開始剤AIBNを0.5質量%溶解してある表3に示したマトリックスを徐々に添加して混合し、各ペースト化した。該ペーストは、95℃、窒素雰囲気中で1時間重合した。得られた重合物をロールクラッシャーで粉砕後、振動ボールミル(中央化工機株式会社製、ニューライトミル)において、φ25mmのジルコニアボールを10個とともに400mlのポットに入れた条件で30分間粉砕し、有機無機複合フィラー原体を得た。
【0109】
この有機無機複合フィラー原体50gの夫々をエタノール75ml、30%過酸化水素水6.6mlの混合液に加え、80℃でリフラックスし、その後、濾過・洗浄し乾燥することにより脱色した有機無機複合フィラーを得た。得られた各有機無機複合フィラーは更にγ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシシランで表面処理した。
得られた有機無機複合フィラーの各種物性を表3に夫々示した。
【0110】
【表3】
【0111】
実施例1
(A)マトリックスM−1に対して、CQを0.2質量%、DMBEを0.3質量%、HQMEを0.15質量%、BHTを0.02質量%、BS110を0.5質量%加えて混合し、均一な重合性単量体組成物を調製した。次に、乳鉢に、(B)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子〔I−1〕、および(C)有機無機複合フィラーCF−1を計りとり、上記マトリックスM−1から調製した重合性単量体組成物100質量部を赤色光下にて徐々に加えていき、暗所にて十分に混練し均一な硬化性ペーストとした。さらにこのペーストを減圧下脱泡して気泡を除去し歯科用複合修復材料を製造した。得られた複合修復材料について、上記の方法に基づいて各物性を評価した。組成及び結果を表4に示した。
【0112】
実施例2〜8
実施例1と同じ複合修復材料組成において、(C)有機無機複合フィラーCF−1を表4に示した種類(CF−1またはCF−2)および配合量に変更し、さらに (E)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II−2〕のPF−3も表4に示した配合量で用いる(実施例5では未配合)以外は該実施例1と同様に実施してペーストを調製し、歯科用複合修復材料を製造した。得られた複合修復材料について、各物性を評価した。結果を表4に示した。
【0113】
実施例9〜10
実施例3と同じ複合修復材料組成において、(B)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子〔I−1〕のPF−1に代えて、PF−2またはPF−5を表4に示した配合量で用いる以外は該実施例3と同様に実施してペーストを調製し歯科用複合修復材料を製造した。得られた複合修復材料について、各物性を評価した。結果を表4に示した。
【0114】
実施例11
実施例3と同じ複合修復材料組成において、(A)マトリックスM−1に代えて、マトリックスM−3を用いてペーストを調整し歯科用複合修復材料を製造した。得られた複合修復材料について、各物性を評価した。結果を表4に示した。
【0115】
実施例12
実施例11と同じ複合修復材料組成において、(C)有機無機複合フィラーCF−1に代えて、有機無機複合フィラーCF−2を用いてペーストを調製し歯科用複合修復材料を製造した。得られた複合修復材料について、各物性を評価した。結果を表4に示した。
【0116】
実施例13
実施例3と同じ複合修復材料組成において、(E)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II−2〕のPF−3に代えて、PF−4を用いてペーストを調製し歯科用複合修復材料を製造した。得られた複合修復材料について、各物性を評価した。結果を表4に示した。
【0117】
実施例14
実施例9と同じ複合修復材料組成において、(A)マトリックスM−1、(C)有機無機複合フィラーCF−1、(E)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II−2〕のPF−3に代えて、M−4、CF−3、PF−4を表4に示した配合量で各用いる以外は該実施例9と同様に実施してペーストを調製し歯科用複合修復材料を製造した。得られた複合修復材料について、各物性を評価した。結果を表4に示した。
【0118】
実施例1〜14の全てにおいて、ペーストの操作性が良好で、コントラスト比が小さく、オパール効果の強く、背景色黒の時の分光反射率が440nm付近で極大となる歯科用複合修復材料が得られた。さらに、色調の保存安定性も長期間安定であり、特に、(E)成分のシリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子の配合量が多め〔(A)重合性単量体100重量部に対して100質量部を越える量〕である実施例4,8,14以外は、非常に良好な保存安定性を示した。
【0119】
比較例1
(A)マトリックスM−3に対して、CQを0.2質量%、DMBEを0.3質量%、HQMEを0.15質量%、BHTを0.02質量%、BS110を0.5質量%加えて混合し、均一な重合性単量体組成物を調製した。次に、乳鉢に表5に示した(B)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子〔I−1〕および(E)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II−2〕を計りとり、上記マトリックスM−3から調製した重合性単量体組成物100質量部を赤色光下にて徐々に加えていき、暗所にて十分に混練し均一な硬化性ペーストとした。さらにこのペーストを減圧下脱泡して気泡を除去し歯科用複合修復材料を製造した。得られた複合修復材料について、上記の方法に基づいて各物性を評価した。組成及び結果を表5に示した。
【0120】
比較例1は、本発明の必須成分である(C)有機無機複合フィラーが配合されておらず、ペーストの操作性がべたつきの非常に大きいものとなり、また、(E)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II−2〕の配合量が多いため、オパール効果の保存安定性が非常に低いものとなった。
【0121】
比較例2
実施例11と同じ複合修復材料組成において、(C)有機無機複合フィラーと(E)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II−2〕を表5に示した配合量で用いる以外は該実施例11と同様に実施してペーストを調製し歯科用複合修復材料を製造した。得られた複合修復材料について、各物性を評価した。結果を表5に示した。
【0122】
比較例2は、(C)有機無機複合フィラーの配合量が少なく、また、(E)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物微粒子〔II−2〕の配合量が多いため、オパール効果の保存安定性が低いものとなった。
【0123】
比較例3
実施例1と同じ複合修復材料組成において、(A)マトリックスM−1と(C)有機無機複合フィラーCF−1を代えて、マトリックスM−3、有機無機複合フィラーCF−4を用いてペーストを調製し、歯科用複合修復材料を製造した。得られた複合修復材料について、各物性を評価した。結果を表5に示した。
【0124】
比較例3は、本発明の必須成分である(C)有機無機複合フィラーとして有機フィラーを配合したもので、オパール効果がほとんど発現しないものとなった。
【0125】
比較例4
実施例11と同じ複合修復材料組成において、(B)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子〔I−1〕であるPF−1に代えて、PF−6を用いてペーストを調製し歯科用複合修復材料を製造した。得られた複合修復材料について、各物性を評価した。結果を表5に示した。
【0126】
比較例4は、(B)シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子〔I−1〕の粒径が本発明の範囲外であり、良好なペーストの操作性が得られるが、コントラスト比が高く、またΔC*が小さくなり、オパール効果がほとんど発現しないものとなった。
【0127】
【表4】
【0128】
【表5】