特許第5769470号(P5769470)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769470
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】樽容器殺菌方法および樽容器殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   B65B 55/06 20060101AFI20150806BHJP
   B65B 55/04 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   B65B55/06 C
   B65B55/04 A
   B65B55/06 B
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-80815(P2011-80815)
(22)【出願日】2011年3月31日
(65)【公開番号】特開2012-214245(P2012-214245A)
(43)【公開日】2012年11月8日
【審査請求日】2013年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅一
(72)【発明者】
【氏名】安田 興史
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−190923(JP,A)
【文献】 特開2008−081156(JP,A)
【文献】 特開2000−142640(JP,A)
【文献】 特開2010−179944(JP,A)
【文献】 特開2006−206158(JP,A)
【文献】 米国特許第02054120(US,A)
【文献】 特開平08−270899(JP,A)
【文献】 米国特許第06015232(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 55/04−55/10
B67C 3/00− 3/34
B67C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樽容器を殺菌する樽容器殺菌方法において、
前記樽容器が倒立した状態で該樽容器の口部を下方に向けて把持し、
蒸気または熱水を供給通路に通して前記樽容器の口部から前記樽容器の内部に供給し、
前記樽容器の口部から流出した蒸気または熱水を排出する排出通路に設置された温度計により前記排出通路内の蒸気または熱水の温度を測定する、樽容器殺菌方法。
【請求項2】
前記温度計により測定された温度が所定の値以下である場合には、前記樽容器を排除する、請求項1に記載の樽容器殺菌方法。
【請求項3】
前記温度計が接触式温度計である請求項1または2に記載の樽容器殺菌方法。
【請求項4】
前記排出通路内の蒸気または熱水の温度の測定は、把持された前記樽容器が環状の回転通路に沿って移動する間に行われる請求項1または2に記載の樽容器殺菌方法。
【請求項5】
樽容器を殺菌する樽容器殺菌装置において、
前記樽容器が倒立した状態で該樽容器の口部を下方に向けて把持する把持部と、
前記樽容器の口部から前記樽容器の内部に蒸気または熱水を供給する供給通路と、
前記樽容器の口部から流出した蒸気または熱水を排出する排出通路と、
該排出通路に設置されていて前記排出通路内の蒸気または熱水の温度を測定する温度計とを具備する、樽容器殺菌装置。
【請求項6】
前記温度計により測定された温度が所定の値以下である場合には、前記樽容器を排除する排除部をさらに具備する、請求項5に記載の樽容器殺菌装置。
【請求項7】
前記温度計が接触式温度計である請求項5または6に記載の樽容器殺菌装置。
【請求項8】
前記排出通路内の蒸気または熱水の温度の測定は、把持された前記樽容器が環状の回転通路に沿って移動する間に行われる請求項5または6に記載の樽容器殺菌装置。
【請求項9】
前記排出通路は、水平部分と、該水平部分の途中から分岐する分岐部分とを含んでおり、前記温度計は、前記水平部分の閉鎖された先端に配置されている、請求項5または6に記載の樽容器殺菌装置。
【請求項10】
前記樽容器は、ビール樽またはハイボール樽である、請求項1に記載の樽容器殺菌方法。
【請求項11】
前記樽容器は、ビール樽またはハイボール樽である、請求項5に記載の樽容器殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樽容器、例えばビール樽またはハイボール樽を殺菌する殺菌方法およびそのような方法を実施する樽容器殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にビールは瓶容器または缶容器に充填された状態で販売される。そのような販売形態に加えて、ビールは、工場においてビール樽または専用タンクに充填され、次いで店舗においてビール樽に取付けられた専用のディスペンサを通じてコップまたはジョッキ等に注出された状態で販売される場合もある。
【0003】
このようなビール樽は使用後に店舗から工場に返却され、工場において殺菌剤および洗浄液を用いて殺菌されて再利用される(特許文献1および特許文献2)。特許文献3には、飲料用壜などの容器を再利用するために、殺菌剤および洗浄液を用いて容器を殺菌洗浄することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−190923号公報
【特許文献2】特開2002−284121号公報
【特許文献3】特開2003−252313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、一般的にビール樽は飲料用壜よりもかなり大きく、その容量は9リットルから30リットルである。このため、ビール樽を洗浄・殺菌する際には、殺菌剤および温水の供給に加えて、蒸気をビール樽内部に噴射することも行われている。
【0006】
蒸気でビール樽を殺菌するためには、蒸気を用いた殺菌温度と殺菌時間とを管理する必要がある。このうち、殺菌時間は蒸気のビール樽内部への供給時間に相当するので、殺菌時間の管理は比較的容易である。
【0007】
これに対し、殺菌温度については、蒸気が内部に供給されているビール樽の外面の温度を非接触式温度計により測定し、これを殺菌温度としている。このため、樽容器の通過速度に非接触式温度計が対応できずに、一つ一つの樽容器の外面の温度を測定することが難しく、各工場の殺菌装置の寸法および/またはレイアウトによっては、非接触式温度計の設置場所が確保できず、従って、樽容器の外面における温度測定箇所が異なる場合がある。
【0008】
また、同様な理由により、蒸気殺菌を行うビール樽用通路でビール樽の外面の温度を測定できない場合には、蒸気殺菌処理が終了した後の別のビール樽用通路にてビール樽の外面の温度を測定している。
【0009】
このような場合に測定される温度は、周囲環境の影響を受けやすいので、正確でない可能性がある。言い換えれば、例えば非接触式温度計により測定された温度が、殺菌に要求される最低温度よりも低い場合であっても、現実にはビール樽が適切に殺菌されている可能性もある。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、殺菌に要求される最低温度を確実に保証することのできる樽容器殺菌方法およびそのような方法を実施する樽容器殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために1番目の発明によれば、樽容器を殺菌する樽容器殺菌方法において、前記樽容器が倒立した状態で該樽容器の口部を下方に向けて把持し、蒸気または熱水を供給通路に通して前記樽容器の口部から前記樽容器の内部に供給し、前記樽容器の口部から流出した蒸気または熱水を排出する排出通路に設置された温度計により前記排出通路内の蒸気または熱水の温度を測定する、樽容器殺菌方法が提供される。
【0012】
2番目の発明によれば、1番目の発明において、前記温度計により測定された温度が所定の値以下である場合には、前記樽容器を排除する。
3番目の発明によれば、1番目または2番目の発明において、前記温度計が接触式温度計である。
4番目の発明によれば、1番目または2番目の発明において、前記排出通路内の蒸気または熱水の温度の測定は、把持された前記樽容器が環状の回転通路に沿って移動する間に行われる。
【0013】
5番目の発明によれば、樽容器を殺菌する樽容器殺菌装置において、前記樽容器が倒立した状態で該樽容器の口部を下方に向けて把持する把持部と、前記樽容器の口部から前記樽容器の内部に蒸気または熱水を供給する供給通路と、前記樽容器の口部から流出した蒸気または熱水を排出する排出通路と、該排出通路に設置されていて前記排出通路内の蒸気または熱水の温度を測定する温度計とを具備する、樽容器殺菌装置が提供される。
【0014】
6番目の発明によれば、5番目の発明において、前記温度計により測定された温度が所定の値以下である場合には、前記樽容器を排除する排除部をさらに具備する。
7番目の発明によれば、5番目または6番目の発明において、前記温度計が接触式温度計である。
8番目の発明によれば、5番目または6番目の発明において、前記排出通路内の蒸気または熱水の温度の測定は、把持された前記樽容器が環状の回転通路に沿って移動する間に行われる。
9番目の発明によれば、5番目または6番目の発明において、前記排出通路は、水平部分と、該水平部分の途中から分岐する分岐部分とを含んでおり、前記温度計は、前記水平部分の閉鎖された先端に配置されている。
10番目の発明によれば、1番目の発明において、前記樽容器は、ビール樽またはハイボール樽である。
11番目の発明によれば、5番目の発明において、前記樽容器は、ビール樽またはハイボール樽である。
【発明の効果】
【0015】
1番目および5番目の発明においては、樽容器から流出した蒸気、つまり樽容器を殺菌した後の蒸気の温度を測定している。従って、この温度を殺菌に要求される最低温度と比較することにより、殺菌に要求される最低温度を確実に保証することができる。また、温度計は蒸気を排出する排出通路に設置されているので、例えば蒸気流により温度計が破損した場合であっても、温度計の一部が樽容器内に混入するのを避けることもできる。さらに、蒸気の排出通路に温度計を設置しているので、殺菌装置の寸法および/またはレイアウトを変更する必要はない。
【0016】
2番目および6番目の発明においては、殺菌に要求される最低温度を満たさなかった樽容器を排除して、この樽容器が再利用されるのを防止できる。
3番目および7番目の発明においては、蒸気の温度を直接的に測定できるので、より正確な温度を把握することができる。
4番目および8番目の発明においては、樽容器の殺菌を比較的省スペースの場所にて行うことができる。
9番目の発明においては、温度計が破損した場合であっても、温度計の一部が樽容器および分岐通路内に混入するのを避けられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に基づくビール樽用の殺菌装置の概念図である。
図2図1の線I−Iに沿ってみた殺菌部の縦断面図である。
図3】(a)排出通路の一部を拡大して示す拡大図である。(b)他の排出通路の一部を拡大して示す拡大図である。
図4】殺菌装置の動作を回転通路の角度位置で示す図である。
図5】一つの実施例における時間と蒸気の温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面において同様の部材には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
図1は本発明に基づくビール樽用の殺菌装置の概念図である。図1に示される殺菌装置10は、複数の空の樽容器、例えばビール樽40またはハイボール樽を矢印A方向に順次搬送するコンベヤなどの搬送経路11と、搬送経路11に隣接して配置されていてビール樽40を矢印B方向に順次搬送する環状の回転通路20とを含んでいる。
【0019】
回転通路20には、ビールをビール樽40に充填するために複数、例えば二十個の殺菌部21が周方向に等間隔で設けられている。図1においては、回転通路20上に位置するビール樽40に対応した位置のそれぞれに、殺菌部21が設けられているものとする。
【0020】
図2図1の線I−Iに沿ってみた殺菌部の縦断面図である。図2においては、ビール樽40は口部を下方に向けた倒立状態で回転通路20上に配置される。殺菌装置10の上方には、伸縮自在なロッド52を備えたエアシリンダ51が設けられている。そして、ロッド52の先端には略「+」字形状のクランプハンド53が取付けられている。エアシリンダ51を作動してロッド52を延ばすことによって、ビール樽40はクランプハンド53と回転通路20との間に把持される。
【0021】
殺菌部21は、図示しない蒸気源からの蒸気を供給する供給通路22と、ビール樽40を殺菌するのに使用された蒸気を排出する排出通路23とを含んでいる。これら供給通路22および排出通路23はヘッド29と一体的になっており、ヘッド29はビール樽40の口部に係合可能に構成されている。供給通路22により供給される蒸気はヘッド29を通じてビール樽40の口部からビール樽40の内部に供給される。なお、供給通路22には圧力センサ27が設けられており、供給通路22内を通る蒸気の圧力を測定する。
【0022】
図3(a)は排出通路の一部を拡大して示す拡大図である。図示されるように、排出通路23は水平部分23aと、水平部分23aの途中から下方に湾曲して分岐する分岐部分23bとを含んでいる。水平部分23aの先端は、水平部分23aを流れる蒸気の温度を検出する接触式の温度計25により閉鎖されている。温度計25の測温抵抗体(または熱電対温度計)25aは水平部分23aの先端から基端に向かって軸方向に部分的に延びている。
【0023】
図3(a)から分かるように、測温抵抗体25aは分岐部分23bに対応する位置まで延びているので、水平部分23aを流れる蒸気は確実に測温抵抗体25aに接触する。従って、本発明においては、排出通路23を流れる蒸気の温度を正確に測定できる。また水平部分23aに到達したときに蒸気の速度が弱められるので、測温抵抗体25aが破損する可能性も小さくて済む。
【0024】
さらに、図3(a)に示されるように、水平部分23aの基端には、水平部分23a内の水分の有無を検出する音叉センサ24が設けられている。さらに、蒸気の流れに対して分岐部分23bの下流には、蒸気の流量を制御するドレンバルブ26が設けられている。これら音叉センサ24、温度計25およびドレンバルブ26は後述する制御装置30に接続されている。なお、図3(b)に示されるように、垂直方向に延びる排出通路23と水平部分23aとの間に温度計25を配置してもよい。
【0025】
再び図1を参照すると、搬送経路11上に搬送されたビール樽40は、搬送方向Aに対して上流側のスターホイール13およびガイド14によって回転通路20に搬送される。回転通路20に搬送されたビール樽40は回転通路20によって矢印B方向に回転しつつ、一つの殺菌部21によってビール樽40が殺菌処理される。
【0026】
言い換えれば、上流側スターホイール13におけるビール樽投入位置から下流側スターホイール15におけるビール樽排出位置まで回転通路20が回転する間に、一つのビール樽40が殺菌処理される。殺菌処理されたビール樽40は下流側のスターホイール15およびガイド16によって搬送経路11に再び戻る。このような構成であるので、図1においてスターホイール13、15の間に位置している殺菌部21aにはビール樽40が配置されない。
【0027】
図1に示されるように、回転通路20の下流においては分岐搬送通路18が搬送経路11から分岐している。分岐搬送通路18は通常は動作しておらず、起動部19が起動したときにのみ動作する。温度計25により検出された蒸気の温度が所定値を下回った場合には、起動部19が起動して、そのビール樽40は搬送経路11から分岐搬送通路18に排出される。つまり、分岐搬送通路18はそのようなビール樽40を排除する排除部としての役目を果たす。
【0028】
起動部19も制御装置30に接続されている。ここで、制御装置30はデジタルコンピュータであり、殺菌装置10全体を制御するようになっている。図1に示されるように制御装置30は、比較部33と記憶部34とを含んでいる。
【0029】
図4は殺菌装置の動作を回転通路の角度位置で示す図である。以下、図4を参照しつつ、本発明の殺菌装置の動作について説明する。搬送経路11に搬送されるビール樽40はスターホイール13およびガイド14によって、20°の角度位置で回転通路20に移送される。
【0030】
次いで、回転通路20の20°から35°の角度位置において、殺菌部21のエアシリンダ51が作動してロッド52が下降する。従って、ビール樽40はクランプハンド53と回転通路20との間に倒立状態で把持されるようになる。そして、供給通路22および排出通路23と一体的なヘッド29がビール樽40の口部に係合する。その後、35°から55°の角度位置において、ヘッド29のロッド28がビール樽40の底内面41近傍まで上昇し、ヘッド29内の加圧、ヘッド29とビール樽40の口部との間の封止チェックなどの圧力関係の処理が行われる。
【0031】
次いで、55°の角度位置になると、殺菌液を供給通路22に通してビール樽40内部に供給する。そして、ビール樽40内部が洗浄されると、ドレンバルブ26(図3(a)を参照されたい)を開放し、殺菌液を排出通路23に通して排出する。この作業は、角度位置が140°になるまでに行われる。
【0032】
次いで、140°の角度位置になると、ドレンバルブ26を閉鎖すると共に、温水をビール樽40内部に供給して、ビール樽40を濯ぐ。そして、250°の角度位置になるまでに、ドレンバルブ26を開放して、温水を排出通路23に通して排出する。このような殺菌液および温水の供給自体は、後述する蒸気の供給と概ね同様であり、公知であるので、詳細な説明を省略する。
【0033】
そして、音叉センサ24により排出通路23の水平部分23aに液滴が存在していないことが確認されると、250°の角度位置においてドレンバルブ26を閉鎖すると共に、蒸気をビール樽40内部に供給して加圧する。従って、図2に示されるように、蒸気は供給通路22からロッド28を通ってロッド28の先端から噴出される。これにより、蒸気はビール樽40の底内面41に衝突してビール樽40の内面全体に広がり、ビール樽40が殺菌されるようになる。その後、蒸気は液化してビール樽40の天内面42に貯まる。
【0034】
そして、300°の角度位置になるまでに、ドレンバルブ26を開放して蒸気を排出通路23に通して排出する。このとき、温度計25が排出通路23の水平部分23aにおける温度を測定する。温度計25により計測された温度は制御装置30に供給される。
【0035】
全ての蒸気が排出されると、300°から320°の角度位置において、ビール樽40内に炭酸ガスを充填すると共に、ロッド28を下降させる。次いで、ヘッド29内部を減圧して、ヘッド29をビール樽40の口部から取外す。
【0036】
320°の角度位置になると、殺菌部21のエアシリンダ51が作動してロッド52が上昇し、それにより、ビール樽40の把持が解除される。そして、340°の角度位置においては、ビール樽40はスターホイール15およびガイド16によって回転通路20から搬送経路11に移送される。このようにして殺菌部21によるビール樽40の殺菌処理が終了する。
【0037】
本発明において、温度計25により測定された排出通路23内の蒸気の温度は、制御装置30の比較部33により所定値と比較される。所定値はビール樽40を殺菌するのに要求される蒸気温度の下限値であり、記憶部34に記憶されている。或る実施形態においては、所定値は例えば115度である。
【0038】
そして、ビール樽40を実際に殺菌していたときの蒸気の温度は排出通路23において測定された温度よりも高い。従って、蒸気の温度が所定値よりも大きい場合には、ビール樽40の殺菌処理が十分に行われたと判定される。本発明においては、ビール樽40を通過した後の蒸気の温度に基づいて判定しているので、ビール樽の殺菌に要求される最低温度を確実に保証できる。また、温度計25は殺菌部21のそれぞれに設けられているので、全てのビール樽40に対する殺菌処理を保証できるのが分かるであろう。
【0039】
これに対し、蒸気の温度が所定値よりも大きくない場合には、ビール樽40の殺菌処理が不十分であったと判定される。そのような場合には、制御装置30から信号が起動部19に送信されることによって分岐搬送通路18が起動する。これにより、当該ビール樽40は搬送経路11から分岐搬送通路18に移送され、殺菌装置10から排出される。これにより、殺菌不足のビール樽40が直接的に再利用されるのを防止できる。
【0040】
また、前述したように温度計25は、ビール樽40よりも下流に位置する排出通路23に設置されている。このため、蒸気流により温度計25が破損した場合であっても、温度計25の一部がビール樽40内に混入することはない。また、分岐部分23bが分岐する箇所よりも下流側に位置する水平部分23aの先端に配置されている。従って、温度計25が破損したとしても、温度計25の一部が分岐部分23bに流入し難いのが分かるであろう。
【0041】
さらに、本発明においては、排出通路23内に接触式の温度計25を設けているので、非接触式温度計を設置するのに必要なスペースを考慮する必要がない。従って、殺菌装置10の寸法および/またはレイアウトに依存することなしに、殺菌処理が十分に行われたか否かを判断することができる。
【0042】
図5は、一つの実施例における時間と蒸気の温度との関係を示す図であり、横軸は時間を示すと共に、縦軸は温度計25に検出された温度を示している。本発明の殺菌装置10を図4に示される角度位置に基づいて動作させた場合には、250°から300°の間の蒸気加圧工程において蒸気の供給により排出通路23を通る蒸気の温度が上昇して、所定値(例えば115度)を越える。そして、300°の角度位置を越えると、蒸気の供給が停止するので、温度は急激に低下する。
【0043】
図5においては、蒸気加圧工程において蒸気の温度は所定値よりも高くなっており、また、蒸気の温度が所定値を越えている期間C、例えば5秒も十分に長い。このため、本発明の殺菌装置10により、ビール樽40を確実に殺菌できるのが分かるであろう。
【0044】
なお、図面を参照して説明した実施形態においては、ビール樽40を円形通路20に沿って移動させつつビール樽40を蒸気により殺菌し、その殺菌温度を測定している。しかしながら、ビール樽40が直線通路を搬送するときに同様な機構を用いてビール樽40を蒸気により殺菌し、殺菌温度を同様に測定する場合も本発明の範囲に含まれる。さらに、温水または熱水をビール樽40に流して殺菌する場合にも、同様な機構を用いて殺菌温度を測定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 殺菌装置
11 搬送経路
13、15 スターホイール
14、16 ガイド
18 分岐搬送通路(排除部)
19 起動部
20 円形通路
21 殺菌部
22 供給通路
23 排出通路
24 音叉センサ
23a 水平部分
23b 分岐部分
24 音叉センサ
25 温度計
26 ドレンバルブ
27 圧力センサ
28 ロッド
29 ヘッド
30 制御装置
33 比較部
34 記憶部
40 ビール樽(樽容器)
51 エアシリンダ
52 ロッド
53 クランプハンド(把持部)
図1
図2
図3
図4
図5