特許第5769478号(P5769478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5769478転写材およびこの転写材を用いた成型品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769478
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】転写材およびこの転写材を用いた成型品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20150806BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20150806BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20150806BHJP
   B29C 51/12 20060101ALI20150806BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20150806BHJP
   B44C 1/17 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   B32B27/00 E
   B29C45/16
   B29C51/10
   B29C51/12
   B32B27/18 J
   B44C1/17 E
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-88688(P2011-88688)
(22)【出願日】2011年4月12日
(65)【公開番号】特開2011-235634(P2011-235634A)
(43)【公開日】2011年11月24日
【審査請求日】2014年3月29日
(31)【優先権主張番号】特願2010-92149(P2010-92149)
(32)【優先日】2010年4月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591023859
【氏名又は名称】株式会社千代田グラビヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100099254
【弁理士】
【氏名又は名称】役 昌明
(74)【代理人】
【識別番号】100108729
【弁理士】
【氏名又は名称】林 紘樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139675
【弁理士】
【氏名又は名称】役 学
(72)【発明者】
【氏名】原田 武志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 美穂
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐三
【審査官】 中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−052303(JP,A)
【文献】 特開2008−108182(JP,A)
【文献】 特開2002−347150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00
B44C1/16−1/175
H05K9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型性有する基体シートの表面に、離型性有する保護層、絵柄層および接着層が形成された転写材において、透明性および柔軟性を有する導電層および透明で柔軟性を有する樹脂層を併存させた層を介在させたことを特徴とする転写材。
【請求項2】
透明で柔軟性を有する樹脂層は、高分子ウレタン系樹脂であることを特徴とする請求項
に記載の転写材。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
この発明は、インモールド成型または真空圧空成型に用いる転写材に関し、特に、色彩・図柄などの絵柄層および電磁波シールド層を形成するものである。
【0002】
近年、パーソナルコンピュータなどのデジタル電子機器の筐体に合成樹脂の射出成型品が多用されているが、合成樹脂の筐体内で発生した電磁波が外部へ漏出するので、この電磁波の漏出を防ぐために、導電性材料のシールド材を内部表面に密着させた筐体が用いられている。
【0003】
筐体に電磁性材料のシールド層を形成するために、アルミニウム蒸着層を有する転写材を用いて、インモールド成型時にアルミニウム蒸着層を成型品に転写して、電磁波シールド性を有する成型品を得ることが下記特許文献1に開示されている。
【0004】
この転写材は、図8の断面図に示すように、離型層11を有するPET樹脂などの基体シート10と、保護層(紫外線硬化樹脂層)21と、アンカー層22と、アルミニウム蒸着層20と、接着層24とを積層したものであって、基体シート10は、アルミニウム蒸着層20および保護層21〜接着層24を保持するするものである。
【0005】
この転写材を可動型・固定型よりなる金型に入れ、金型を閉じて形成したキャビティ内に溶融樹脂を射出させると、接着層24によりインモールド成型品の表面にアルミニウム蒸着層を有する転写材が転写される。
【0006】
そして、基体シート10の側から紫外線を照射して保護層21を硬化させると、基体シート10を容易に剥がすことができ、保護層21で表面硬度が高められたアルミニウム蒸着層20の電磁波シールド材が形成ができる。
【0007】
【特許文献1】特開2006−297642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような従来の転写技術によって筐体の内側に電磁波シールド層を形成しても、筐体の外側に色彩・図柄などの加飾を同時に施すことはできなかった。
【0009】
また、電磁波をシールドする導電性層として、三次元形状に成型したとき、転写材が変形させられても導電性層が破断しないで柔軟性を有し、かつ、透明性を有する転写材を得ることは困難であった。
【0010】
そこで、この発明の転写材は、インモールド成型または真空圧空成型において、電磁波シールド層と絵柄層とを同時に形成できる転写材およびこの転写材を用いた成型品の製造方法を提供することを目的として考えられたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明の転写材は、離型性有する基体シートの表面に、
離型性有する保護層、絵柄層および接着層が形成された転写材において、透明性および柔
軟性を有し、金属ナノ粉末をランダムな網目状パターンのメッシュに形成した導電層およ
び透明で柔軟性を有する樹脂層を併存させた層を介在させたものである。
【0012】
転写材における透明性および柔軟性を有する導電層には、透明で柔軟性を有する高分子ウレタン系樹脂層を併存させた併存層とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の転写材を使用すると、インモールド成型時に電磁波シールド層と絵柄層とを同時に形成することができる。また、真空圧空成型においては、電磁波シールド層と絵柄層とを成型品に対して同時に被覆することができる。さらに、成型工程において、転写材が変形させられても導電層が破断することがないので、優れた電磁波シールド性を有する成型品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の転写材の第1の実施形態を示す断面図、
図2】この発明の転写材の第2の実施形態を示す断面図、
図3】この発明の転写材を用いて射出成型により成型品を成型する状態を示す断面図、
図4】この発明の転写材を用いて真空圧空成型により成型品に被覆する工程1の状態を示す断面図、
図5】工程2の状態を示す断面図、
図6】工程3の状態を示す断面図、
図7】この発明の転写材で使用される金属ナノ粉末をランダムな網目状パターンに形成した導電層の走査型電子顕微鏡写真、
図8】従来の転写材の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
この発明の第1の実施形態の転写材1は、図1(a)の断面図に示すように、離型層11を有するPET樹脂などの基体シート10と、保護層21、アンカー層22、色彩・図柄などの絵柄層23、接着層24よりなる転写層2とを積層したものにおいて、転写層2の何れか1つの層間に、ランダムな網目状パターンの透明導電膜3を介在させたものである。なお、基体シート10は、転写層2を保持するするものである。
【0018】
例えば、図1(b)の断面図に示すように、基体シート10の離型層11 と保護層21 との間に透明導電膜3を形成するか、図1(c)の断面図に示すように、保護層21とアンカー層22との間に透明導電膜3を形成したり、また、図1(d)の断面図に示すように、アンカー層22と絵柄層23との間に透明導電膜3を形成してもよいのである。
【0019】
透明導電膜3には、透明性および柔軟性を有するもので、アメリカ合衆国のCima Nano Tech Inc.社から商品名 「SANTE」として販売されているインクを使用する。なお、このインクに関する詳細は、特許第4636496号公報、特開2005−531679号公報に開示されている。
【0020】
この導電性インクは、金属ナノ粉末を含むもので、
(1)溶媒中で、金属ナノ粉末と、結合剤、界面活性剤、添加剤、重合体、緩衝剤、分散剤および/またはカップリング剤から選択される少なくとも1つとを均質な溶液となるように混合する工程と、
(2)上記工程(1)において均質化された混合物を被覆すべき表面に塗布する工程と、
(3)この均質化された混合物から溶媒を蒸発させる工程と、
(4)0.005Ω/スクエア乃至5Ω/スクエアの抵抗値を有する導電性インクを生成するために、被覆すべき表面の上で、50℃乃至300℃の温度範囲で被覆層を焼結する工程とを経て金属ナノ粉末を網目状パターンに形成した層である。
【0021】
このような工程を経て形成された網目状パターンは、図7の走査型電子顕微鏡写真に示すように、網目の間から光を透過させることができる。この網目の形状は、光透過率および導電性を考慮して設定される。
【0022】
(第2の実施形態)
この発明の第2の実施形態の転写材1は、図2(a)〜(c)の断面図に示すように、離型層11を有する基体シート10と、保護層21、アンカー層22、色彩・図柄などの絵柄層23、接着層24よりなる転写層2とを積層したものにおいて、転写層2の何れか1つの層間に介在させる透明で柔軟性を有する高分子ウレタン系樹脂層31に透明導電膜3を併存させた併存層としたものである。
【0023】
例えば、図2(a)の断面図に示すように、基体シート10の離型層11 と保護層21 との間に、透明導電膜3に透明で柔軟性を有する樹脂層31を併存させた併存層を介在させるか、図2(b)の断面図に示すように、保護層21とアンカー層22との間に、透明導電膜3に透明で柔軟性を有する樹脂層31を併存させた併存層を介在させたり、また、図2(c)の断面図に示すように、アンカー層22と絵柄層23との間に、透明導電膜3に透明で柔軟性を有する樹脂層31を併存させた併存層を介在させてもよいのである。
【0024】
さらに、図2(d)の断面図に示すように、絵柄層23と接着層24との間に、透明で柔軟性を有する樹脂層31に透明導電膜3を併存させた併存層を形成してもよく、また、透明で柔軟性を有する樹脂層31で接着作用を行わせて接着層24を省いてもよいのである。
【0025】
この併存層を積層する際に、透明で柔軟性を有する樹脂層31を先に積層し、透明導電膜3を後で積層するといように順序を逆にしても、併存層の効果は変わらないのである。
【0026】
この透明で柔軟性を有する樹脂層31には、金属ナノ粉末を網目状パターンに形成した透明導電膜3との密着性がよい高分子ウレタン系樹脂が適しており、透明導電膜3に高分子ウレタン系樹脂層31を併存させておくと、成型時に曲げられたり引き伸ばされても、金属ナノ粉末で形成された透明導電膜3のパターンは、高分子ウレタン系樹脂層31とともに変形するので、特定の部分に応力が集中することはなく、透明導電膜3のパターンが破断することはないのである。
【0027】
次に、このように構成された第1および第2の実施形態の転写材1を用いて、インモールド成型品の表面に、絵柄を有する電磁波シールド性を付与する方法を図3の断面図に基づいて説明する。
【0028】
まず、固定型51と可動型52からなる成型用金型5内に、基体シート10が固定型51に向くように転写材1を挟み込む。このとき、位置決め機構を有する送り装置を使用して、転写材1の絵柄層と金型5との見当が一致するように挟み込む。
【0029】
金型5を閉じてキャビティを形成した後、可動型52に設けたゲート53より溶融樹脂をキャビティ内に射出して充満させ、成型品4を成型すると同時にその表面に転写層2を接着させる。
【0030】
樹脂成型品4を冷却した後、金型5を開いて基体シート10を剥離する。そして、成型品4を取り出し、電子線または紫外線を照射することにより保護層21を完全に架橋硬化させる。
【0031】
次に、予め成型された成型品4の表面に、転写材1を被覆させる真空圧空成型法について説明する。
【0032】
成型品4の表面に転写材1を被着する真空圧空成型装置として、図4〜5の断面図に示す装置を使用する。この装置は、上下に接合・離反可能な2つのチャンバー6、7を備え、上チャンバー6にはヒータ61を設け、下チャンバー7には成型品4を載せるテーブル71を設け、両チャンバー内の空気を排気して減圧する真空ポンプ8を備えている。
【0033】
工程1:図4の断面図に示すように、上チャンバー6を上昇させ、テーブル71も上昇させて成型品4を載せる。
【0034】
工程2:図5の断面図に示すように、成型品4を載せたテーブル71を降下させたのち、接着層24を下にして転写材1を下チャンバー7の開口部で保持させる。そして、上チャンバー6をを降下させて、両チャンバー6、7の開口部の間に転写材1を挟んで両開口部を密着させて閉じる。
【0035】
切換バルブ81を切り換え、上チャンバー6を真空ポンプ8に連通させて、両チャンバー6、7を減圧したのち、上チャンバー6のヒータ61を点灯させて転写材1を加熱軟化させる。
【0036】
工程3:転写材1が軟化した状態において、下チャンバー7のテーブル71に載せられた成型品4を上昇させたのち、切換バルブ81を切り換えて、上チャンバー6を大気に連通させて上チャンバー6を加圧状態とすることにより、成型品4の表面に転写材1を押圧して被覆させることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 転写材
10 基体シート
11 離型層
2 転写層
21 保護層
22 アンカー層
23 絵柄層
24 接着層
3 透明導電薄膜
31 透明で柔軟性を有する高分子ウレタン系樹脂層
4 成型品
5 金型
6 上チャンバー
7 下チャンバー
8 真空ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8