【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のものは、圧縮機、凝縮器、蒸発器等を備えた専用の配管洗浄装置が必要なため、それ自体がコスト高となる等の問題があった。また、特許文献2のものは、圧縮機吸入側のアキュームレータに開閉弁等を介して油回収用の容器を接続しなければならず、その設置スペースの確保やコストアップ等の課題があった。更に、特許文献3のものは、既設の冷却ユニットの半数以上を液バック状態で運転し、ガス管を洗浄した後、新規ユニットに置換えるものであり、既設ユニットが運転可能なことが前提となっている。従って、既設ユニットが運転不能な場合、適用できず、しかも多数の冷却ユニットを液バック状態とし、ガス管中の残留油を洗浄するものであるため、圧縮機を保護する必要がある新規ユニットでの配管洗浄運転には、不適当なものであった。
【0007】
一方、新規ユニットの吸入配管系に、リフレッシュキットを接続し、空気調和機を上記の如く(1)ないし(3)の順序で運転して配管洗浄を行う方法では、配管洗浄のための運転時間が長くなってしまうとともに、洗浄運転時間が長くなると、新規ユニットの圧縮機から流出する新油の量が増加し、据付け現場での新油補充量が増加したり、残留油貯留タンク内に冷媒が溜り込んだりする等の問題が生ずる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、既設の冷媒配管系をそのまま流用し、新たな室外機および室内機を接続した後、比較的短時間で冷媒配管を洗浄することができるマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法は、既設の冷媒配管系を再利用し、それに新たな室外機および複数台の室内機を接続することによって更新されるマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法において、前記複数台の室内機を複数のグループに分け、その一のグループの前記室内機台数を全室内機の半数未満の台数とし、当該グループの前記室内機を
その室内電子膨張弁を液バック開度として運転する液バック運転確保グループとするとともに、他の一のグループの前記室内機を
その室内電子膨張弁を吸入過熱度制御して運転する安定運転確保グループとし、
前記液バック運転確保グループとされた前記室内機の中に、前記室外機から最も遠い位置に接続された前記室内機を含め、それら全ての前記室内機を同時に運転しながら、前記冷媒配管系内に残留している油の洗浄運転を行い、該残留油を吸入配管に接続されている油貯留タンクにより回収することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、既設の冷媒配管系を再利用し、新たな室外機および室内機を接続して更新されるマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法において、複数台の室内機を複数のグループに分け、その一のグループの室内機台数を全室内機の半数未満の台数とし、当該グループの室内機を
その室内電子膨張弁を液バック開度として運転する液バック運転確保グループとするとともに、他の一のグループの前記室内機を
その室内電子膨張弁を吸入過熱度制御して運転する安定運転確保グループとし、
液バック運転確保グループとされた室内機の中に、室外機から最も遠い位置に接続された室内機を含め、それら全ての室内機を同時に運転しながら、冷媒配管系内に残留している油の洗浄運転を行い、該残留油を吸入配管に接続されている油貯留タンクにより回収するようにしているため、安定運転確保グループに分けられた室内機の運転によりマルチ形空気調和機の安定的な運転状態、すなわち高低圧が安定した状態となる冷房運転状態を確保しながら、全室内機の半数未満の台数とされた液バック運転確保グループの室内機を液バック運転することにより、配管洗浄に必要な液バック量を確保し、既設の冷媒配管系内に残されていた油を、液バックされる冷媒と共に吸入配管に接続されている油貯留タンク内に回収することができる。このように、空気調和機の安定運転の確保と冷媒の液バックによる配管洗浄とを過剰な液バックを回避しながら同時に行うことによって、配管の洗浄運転時間を短縮することができる。また、配管洗浄運転時間の短縮化により、新規ユニットの圧縮機からの冷凍機油の流出量を抑制することができるとともに、油貯留タンク内への冷媒の溜り込み量を抑制することができるため、据付け現場での冷凍機油の追加補充量の低減や冷媒追出し運転の省略化もしくは短縮化等を図ることができる。
しかも、配管洗浄運転時、室外機から最も遠い位置に接続されている室内機を液バック運転し、その室内機から冷媒配管系に液冷媒を戻すことによって、既設の冷媒配管系の略全長を液冷媒で洗浄することができることから、既設の冷媒配管系を略全長にわたり確実に洗浄することができる。なお、室外機から最も遠い位置の室内機については、例えば全ての室内機の室内電子膨張弁を同時に開き、温度低下のタイミングが最も遅い室内機を温度センサ等で検知することにより、容易に検知することができる。
【0011】
さらに、本発明にかかるマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法は、既設の冷媒配管系を再利用し、それに新たな室外機および複数台の室内機を接続することによって更新されるマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法において、前記複数台の室内機を少なくとも3つのグループに分け、その第1のグループの前記室内機台数を全室内機の半数未満の台数とし、当該グループの前記室内機を
その室内電子膨張弁を液バック開度として運転する液バック運転確保グループとするとともに、第2のグループの前記室内機を
その室内電子膨張弁を吸入過熱度制御して運転する安定運転確保グループ、第3のグループの前記室内機を
その室内電子膨張弁の開度を吸入過熱度の検知により前記安定運転確保グループの前記室内電子膨張弁の開度よりも大きく開閉動作して液バック量を調整する液バック量調整グループとし、
前記液バック運転確保グループとされた前記室内機の中に、前記室外機から最も遠い位置に接続された前記室内機を含め、それら全ての前記室内機を同時に運転しながら、前記冷媒配管系内に残留している油の洗浄運転を行い、該残留油を吸入配管に接続されている油貯留タンクにより回収することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、既設の冷媒配管系を再利用し、新たな室外機および室内機を接続して更新されるマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法において、複数台の室内機を少なくとも3つのグループに分け、その第1のグループの室内機台数を全室内機の半数未満の台数とし、当該グループの室内機を
その室内電子膨張弁を液バック開度として運転する液バック運転確保グループとするとともに、第2のグループの室内機を
その室内電子膨張弁を吸入過熱度制御して運転する安定運転確保グループ、第3のグループの室内機を
その室内電子膨張弁の開度を吸入過熱度の検知により安定運転確保グループの室内電子膨張弁の開度よりも大きく開閉動作して液バック量を調整する液バック量調整グループとし、
液バック運転確保グループとされた室内機の中に、室外機から最も遠い位置に接続された室内機を含め、それら全ての室内機を同時に運転しながら、冷媒配管系内に残留している油の洗浄運転を行い、該残留油を吸入配管に接続されている油貯留タンクにより回収するようにしているため、3つのグループに分けられた複数台の室内機のうち、第2グループの安定運転確保グループとされた室内機の運転によりマルチ形空気調和機の安定的運転状態、すなわち高低圧が安定した状態となる冷房運転状態を確保するとともに、全室内機の半数未満の台数とされた第1グループの液バック運転確保グループの室内機を液バック運転し、更にその液バック量を第3グループの液バック量調整グループとされた室内機で
適正に調整しながら運転することにより、配管洗浄に必要な液バック量を確保し、既設の冷媒配管系内に残っていた油を、液バックされる冷媒と共に吸入配管に接続されている油貯留タンク内に回収することができる。このように、空気調和機の安定運転の確保と冷媒の液バックによる配管洗浄とを過剰な液バックを回避して圧縮機を保護しながら同時に行うことによって、配管の洗浄運転時間を短縮することができる。また、配管洗浄運転時間の短縮化により、新規ユニットの圧縮機からの冷凍機油の流出量を抑制することができるとともに、油貯留タンク内への冷媒の溜り込み量を抑制することができるため、据付け現場での冷凍機油の追加補充量の低減や冷媒追出し運転の省略化もしくは短縮化を図ることができる。
しかも、配管洗浄運転時、室外機から最も遠い位置に接続されている室内機を液バック運転し、その室内機から冷媒配管系に液冷媒を戻すことにより、既設の冷媒配管系の略全長を該液冷媒で洗浄することができることから、既設の冷媒配管系を略全長にわたり確実に洗浄することができる。
【0013】
さらに、本発明のマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法は、上述のいずれかのマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法において、前記液バック運転確保グループとされた前記室内機は、室内電子膨張弁が運転開始時に一旦全開とされた後、徐々に通常の冷房運転時と同様の吸入過熱度制御による開度に移行されるように制御されることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、液バック運転確保グループとされた室内機は、室内電子膨張弁が運転開始時に一旦全開とされた後、徐々に通常の冷房運転時と同様の吸入過熱度制御による開度に移行されるように制御されるため、液バック運転される室内機の室内電子膨張弁が全開状態から徐々に本来の吸入過熱度制御による開度に移行される間、液バック運転確保グループの室内機から適量の液冷媒を既設の冷媒配管系内に液バックさせ、特にガス側配管内に残されていた劣化油等を、液バックされる冷媒と共に吸入配管に接続されている油貯留タンク内に回収することができる。従って、再利用された既設の冷媒配管系内に残留していた旧冷媒用の油や劣化油等を液冷媒により確実に洗浄し、更新されたマルチ形空気調和機の系内から回収、除去することができる。
【0015】
さらに、本発明のマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法は、上述のいずれかのマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法において、前記安定運転確保グループとされた前記室内機は、室内電子膨張弁が運転開始時から通常の冷房運転時と同様の吸入過熱度制御により制御されることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、安定運転確保グループとされた室内機は、室内電子膨張弁が運転開始時から通常の冷房運転時と同様の吸入過熱度制御により制御されるため、安定運転確保グループの室内機の室内電子膨張弁を運転開始時から本来の吸入過熱度制御で制御することにより、既設の冷媒配管系内を洗浄運転する間、マルチ形空気調和機の運転点を高低圧が各々一定で安定化した冷房運転状態に維持することができる。従って、マルチ形空気調和機の安定運転を確保しながら、液バック運転される室内機からの液冷媒により、再利用された既設の冷媒配管系内を確実に洗浄することができる。
【0017】
前記液バック量調整グループとされた前記室内機は、室内電子膨張弁が吸入過熱度を検知しながら開閉動作されるように制御されることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載のマルチ形空気調和機形の冷媒配管洗浄方法。
【0018】
本発明によれば、液バック量調整グループとされた室内機は、室内電子膨張弁が吸入過熱度を検知しながら開閉動作されるように制御されるため、液バック量調整グループの室内機の室内電子膨張弁を検知された吸入過熱度に応じて開閉動作させることにより、冷媒が過剰に液バックされないように、その量を適量にコントロールすることができる。従って、液バック量を適正に調整し、圧縮機を保護しながら、適度な液バック運転により再利用された既設の冷媒配管系内を確実に洗浄することができる。