(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガイドレールを押圧する押圧位置と前記ガイドレールへの押圧が解除される解除位置との間で変位する非常止めレバーを有しロープの破断または前記ロープの弛緩が発生した場合にかごを停止させるスラックロープ式非常止め装置を、前記かごの速度が所定値を超えた場合に前記かごを停止させる過速度非常止め装置に変更するエレベータの改修方法であって、
ガバナおよびガバナロープを設置するガバナおよびガバナロープ設置工程と、
前記ガバナロープの動作に連動して前記非常止めレバーを変位させる変位装置を設置する変位装置設置工程と
を備えたことを特徴とするエレベータの改修方法。
ガイドレールを押圧する押圧位置と前記ガイドレールへの押圧が解除される解除位置との間で変位する非常止めレバー、回転体を含み前記回転体の回転速度が所定値を越えることにより前記回転体の回転を停止させるガバナ、前記回転体に巻き掛けられたガバナロープおよび前記ガバナロープの動作に連動して前記非常止めレバーを変位させる変位装置を有し前記かごの速度が所定値を超えた場合に前記かごを停止させる過速度非常止め装置の設置位置を変更するエレベータの改修方法であって、
前記ガバナおよび前記ガバナロープの設置位置を変更するガバナおよびガバナロープ設置位置変更工程と、
変更された前記ガバナロープの設置位置に合わせて前記変位装置の設置位置を変更する変位装置設置位置変更工程と
を備えたことを特徴とするエレベータの改修方法。
前記変位装置は、前記非常止めレバーに回動可能に設けられ前記ガバナロープに接続される接続部材を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレベータの改修方法。
ガイドレールを押圧する押圧位置と前記ガイドレールへの押圧が解除される解除位置との間で変位する非常止めレバーと前記非常止めレバーに固定され回動することにより前記非常止めレバーを変位させる第1の回動軸とを有した既設の非常止め装置を、前記かごの速度が所定値を超えた場合に前記かごを停止させる過速度非常止め装置に変更するエレベータの改修方法であって、
ガバナロープの動作に連動して前記第1の回動軸を中心に回動する回動部材および前記回動部材に取り付けられる取付部材を用いて前記第1の回動軸を挟む回動軸挟工程と、
前記第1の回動軸の軸線に交差する直線に沿うように形成された前記回動部材の回動部材ガイド孔および前記取付部材の取付部材ガイド孔に沿って、前記第1の回動軸に貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
前記回動部材に対する前記第1の回動軸の回動および軸線方向の移動を規制するための規制部材を、前記回動部材ガイド孔、前記取付部材ガイド孔および前記貫通孔に挿入して、前記規制部材を前記回動部材と前記取付部材とに渡って取り付ける規制部材取付工程と
を有していることを特徴とするエレベータの改修方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スラックロープ式非常止め装置を、かごの速度が所定値を超えたときにかごを停止させる過速度非常止め装置に変更するエレベータの改修を行う場合、スラックロープ式非常止め装置を全て取り外した後に、過速度非常止め装置を設置しなければならず、エレベータの改修における作業効率が悪いという問題点があった。
【0005】
この発明は、作業効率を向上させることができるエレベータの改修方法および過速度非常止め装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータの改修方法は、ガイドレールを押圧する押圧位置と前記ガイドレールへの押圧が解除される解除位置との間で変位する非常止めレバーを有しロープの破断または前記ロープの弛緩が発生した場合にかごを停止させるスラックロープ式非常止め装置を、前記かごの速度が所定値を超えた場合に前記かごを停止させる過速度非常止め装置に変更するエレベータの改修方法であって、ガバナおよびガバナロープを設置するガバナおよびガバナロープ設置工程と、前記ガバナロープの動作に連動して前記非常止めレバーを変位させる変位装置を設置する変位装置設置工程とを備えている。
【0007】
また、この発明に係るエレベータの改修方法は、ガイドレールを押圧する押圧位置と前記ガイドレールへの押圧が解除される解除位置との間で変位する非常止めレバー、回転体を含み前記回転体の回転速度が所定値を越えることにより前記回転体の回転を停止させるガバナ、前記回転体に巻き掛けられたガバナロープおよび前記ガバナロープの動作に連動して前記非常止めレバーを変位させる変位装置を有し前記かごの速度が所定値を超えた場合に前記かごを停止させる過速度非常止め装置の設置位置を変更するエレベータの改修方法であって、前記ガバナおよび前記ガバナロープの設置位置を変更するガバナおよびガバナロープ設置位置変更工程と、変更された前記ガバナロープの設置位置に合わせて前記変位装置の設置位置を変更する変位装置設置位置変更工程とを備えている。
【0008】
また、この発明に係る過速度非常止め用装置は、ガイドレールを押圧する押圧位置と前記ガイドレールへの押圧が解除される解除位置との間で変位する非常止めレバーと、前記非常止めレバーに固定され、回動することにより前記非常止めレバーを変位させる第1の回動軸と、前記第1の回動軸とガバナロープとに渡って設けられ、前記ガバナロープの動作に連動して前記第1の回動軸を回動させる変位装置とを備えた過速度非常止め装置であって、前記変位装置は、前記第1の回動軸を中心に回動する回動部材と、前記回動部材とともに前記第1の回動軸を挟む取付部材と、前記第1の回動軸を貫通して前記回動部材と前記取付部材とに渡って設けられ、前記回動部材に対する前記第1の回動軸の回動および軸線方向の移動を規制する規制部材とを有している。
【0009】
また、この発明に係るエレベータの改修方法は、ガイドレールを押圧する押圧位置と前記ガイドレールへの押圧が解除される解除位置との間で変位する非常止めレバーと前記非常止めレバーに固定され回動することにより前記非常止めレバーを変位させる第1の回動軸とを有した既設の非常止め装置を、前記かごの速度が所定値を超えた場合に前記かごを停止させる過速度非常止め装置に変更するエレベータの改修方法であって、ガバナロープの動作に連動して前記第1の回動軸を中心に回動する回動部材および前記回動部材に取り付けられる取付部材を用いて前記第1の回動軸を挟む回動軸挟工程と、前記第1の回動軸の軸線に交差する直線に沿うように形成された前記回動部材の回動部材ガイド孔および前記取付部材の取付部材ガイド孔に沿って、前記第1の回動軸に貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記回動部材に対する前記第1の回動軸の回動および軸線方向の移動を規制するための規制部材を、前記回動部材ガイド孔、前記取付部材ガイド孔および前記貫通孔に挿入して、前記規制部材を前記回動部材と前記取付部材とに渡って取り付ける規制部材取付工程とを有している。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係るエレベータの改修方法によれば、ガバナロープの動作に連動して非常止めレバーを変位させる変位装置を設置する変位装置設置工程を備えているので、既設のスラックロープ式非常止め装置の非常止めレバーを過速度非常止め装置の非常止めレバーとして用いることができる。その結果、既設のスラックロープ式非常止め装置一式または既設のスラックロープ式非常止め装置の非常止めレバーを取り外す必要がなくなり、エレベータの改修における作業効率を向上させることができる。
【0011】
また、この発明に係るエレベータの改修方法によれば、変更されたガバナロープの設置位置に合わせて変位装置の設置位置を変更する変位装置設置位置変更工程を備えているので、既設の変位装置を新たな過速度非常止め装置の変位装置として用いることができる。これにより、既設の過速度非常止め装置の非常止めレバーを新規の過速度非常止め装置の非常止めレバーとして用いることができる。その結果、既設の過速度非常止め装置一式または既設の過速度非常止め装置の非常止めレバーを取り外す必要がなくなり、エレベータの改修における作業効率を向上させることができる。
【0012】
また、この発明に係る過速度非常止め装置によれば、非常止めレバーに固定され回動することにより非常止めレバーを変位させる第1の回動軸とガバナロープとに渡って設けられ、ガバナロープの動作に連動して第1の回動軸を回動させる変位装置は、第1の回動軸を中心に回動する回動部材と、回動部材とともに第1の回動軸を挟む取付部材と、第1の回動軸を貫通して回動部材と取付部材とに渡って設けられ、回動部材に対する第1の回動軸の回動および軸線方向の移動を規制する規制部材とを有しているので、既設の非常止めレバーおよび第1の回動軸を、過速度非常止め装置の非常止めレバーおよび第1の回動軸として用いることができる。その結果、既設の非常止め装置の一式または既設の非常止めレバーおよび第1の回動軸を取り外す必要がなくなり、エレベータ改修における作業効率を向上させることができる。
【0013】
また、この発明に係るエレベータの改修方法によれば、ガバナロープの動作に連動して、非常止めレバーに固定された第1の回動軸を中心に回動する回動部材および回動部材に取り付けられる取付部材を用いて第1の回動軸を挟む回動軸挟工程と、第1の回動軸の軸線に交差する直線に沿うように形成された回動部材の回動部材ガイド孔および取付部材の取付部材ガイド孔に沿って、第1の回動軸に貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、回動部材に対する第1の回動軸の回動および軸線方向の移動を規制するための規制部材を、回動部材ガイド孔、取付部材ガイド孔および貫通孔に挿入して、規制部材を回動部材と取付部材とに渡って取り付ける規制部材取付工程とを有しているので、既設の非常止めレバーおよび第1の回動軸を、過速度非常止め装置の非常止めレバーおよび第1の回動軸として用いることができる。その結果、既設の非常止め装置の一式または既設の非常止めレバーおよび第1の回動軸を取り外す必要がなくなり、エレベータ改修における作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の各実施の形態を図に基づいて説明するが、各図において、同一または相当の部材、部位については、同一符号を付して説明する。
【0016】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る改修前のエレベータの要部を示す正面図である。図において、昇降路には、鉛直方向に延びた一対のガイドレール1が設けられている。昇降路内に設けられたかごには、スラックロープ式非常止め装置2が設けられている。スラックロープ式非常止め装置2は、かごに固定された非常止め枠3と、非常止め枠3に設けられた一対のクワエ金4と、非常止め枠3に回動自在に設けられた非常止め用回動軸(第1の回動軸)5と、非常止め用回動軸5に固定された一対の非常止めレバー6と、各非常止めレバー6に設けられたコロ7とを有している。
【0017】
非常止め枠3は、かごの幅方向に沿って延びて形成されている。クワエ金4および非常止めレバー6は、非常止め枠3の長手方向両端部のそれぞれに配置されている。非常止め用回動軸5は、非常止め枠3の長手方向に延びて形成されている。
【0018】
非常止めレバー6は、棒形状に形成されている。非常止め用回動軸5は、非常止めレバー6の長手方向一端部に配置されている。コロ7は、非常止めレバー6の長手方向他端部に配置されている。非常止めレバー6は、非常止め用回動軸5を中心に回動可能である。また、非常止めレバー6は、コロ7を介して非常止めレバー6がガイドレール1を押圧する押圧位置と、コロ7がガイドレール1から離れて非常止めレバー6によるガイドレール1への押圧が解除される解除位置との間で変位する。
【0019】
スラックロープ式非常止め装置2は、ロープの破断またはロープの弛緩が発生した場合に、非常止めレバー6の位置を押圧位置にして、かごを停止させる。また、スラックロープ式非常止め装置2は、ロープが正常の時に、非常止めレバー6の位置を解除位置にして、かごの移動を可能にする。
【0020】
図2は
図1の改修後のエレベータの要部を示す正面図である。図において、昇降路には、ガバナ8およびガバナロープ9が設けられている。ガバナロープ9は、ガバナ8の綱車(回転体)に巻き掛けられている。ガバナロープ9の一部は、かごに接続されている。これにより、ガバナロープ9は、かごの昇降に連動して移動する。ガバナ8は、ガバナロープ9の移動により、かごの速度が所定値を越えることを検出する。また、ガバナ8は、かごの速度が所定値を越えたときに、綱車の回転を停止させて、ガバナロープ9の移動を抑制する。
【0021】
非常止めレバー6とガバナロープ9との間には、変位装置10が設けられている。変位装置10は、非常止めレバー6に設けられたピン11と、ピン11に設けられた引上げ棒(接続部材)12とを有している。
図3は
図2のピン11を拡大した斜視図である。ピン11は、円柱形状に形成されている。ピン11は、非常止めレバー6に固定されている。引上げ棒12には、ピン11が挿入される孔12a(
図2)が形成されている。引上げ棒12は、ピン11に対して回動可能となっている。これにより、引上げ棒12は、ピン11を介して非常止めレバー6に対して回動可能となる。また、引上げ棒12は、ガバナロープ9に接続されている。これにより、変位装置10は、ガバナロープ9の動作に連動して非常止めレバー6を変位させる。
【0022】
非常止め枠3、非常止め用回動軸5、非常止めレバー6、コロ7、ガバナ8、ガバナロープ9および変位装置10から、過速度非常止め装置13が構成されている。
【0023】
次に、過速度非常止め装置13の動作について説明する。かごの速度が所定値を越えたときに、ガバナ8が作動することにより、ガバナロープ9の移動が抑制される。ガバナロープ9の動作に連動して、引上げ棒12が上方に引き上げられる。引上げ棒12の上方への移動に連動して、非常止めレバー6が解除位置から押圧位置へ変位する。その結果、クワエ金4とコロ7とによりガイドレール1が挟持され、かごが停止する。
【0024】
次に、エレベータの改修手順について説明する。まず、ガバナ8およびガバナロープ9を昇降路に設置する(ガバナおよびガバナロープ設置工程)。その後、変位装置10を非常止めレバー6とガバナロープ9との間に設置する(変位装置設置工程)。以上により、スラックロープ式非常止め装置2を過速度非常止め装置13に変更するエレベータの改修が終了する。
【0025】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係るエレベータの改修方法によれば、ガバナロープ9の動作に連動して非常止めレバー6を変位させる変位装置10を設置する変位装置設置工程を備えているので、既設のスラックロープ式非常止め装置2の非常止めレバー6を過速度非常止め装置13の非常止めレバー6として用いることができる。これにより、既設のスラックロープ式非常止め装置2一式または既設のスラックロープ式非常止め装置2の非常止めレバー6を取り外す必要がなくなり、エレベータの改修における作業効率を向上させることができる。その結果、工事期間の短縮、工事コストの削減、廃棄物の削減を図ることができる。
【0026】
また、変位装置10は、非常止めレバー6に回動可能に設けられガバナロープ9に接続される引上げ棒12を有しているので、簡単な構成で、ガバナロープ9の動作に連動して非常止めレバー6を変位させることができる。
【0027】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2に係る改修後のエレベータの要部を示す正面図、
図5は
図4のV−V線に沿った矢視断面図である。図において、変位装置10は、かごに対して固定された軸支持金14と、軸支持金14に回動自在に支持された連結用回動軸(第2の回動軸)15と、連結用回動軸15に固定された引上げレバー16と、非常止め用回動軸5および連結用回動軸15を連結した連結部材(伝達部材)17とをさらに有している。
【0028】
連結用回動軸15の軸線方向は、非常止め用回動軸5の軸線方向と同一となっている。引上げレバー16は、棒形状に形成されている。連結用回動軸15は、引上げレバー16の長手方向一端部に配置されている。引上げ棒12は、引上げレバー16の長手方向他端部に回動自在に接続されている。引上げ棒12は、ガバナロープ9の動作に連動して上昇する。引き上げレバー16は、引上げ棒12の上昇に連動して回動する。その結果、連結用回動軸15が回動する。
【0029】
連結部材17は、非常止め用回動軸5に固定された非常止め用レバー18と、連結用回動軸15に固定された連結用レバー19と、非常止め用レバー18および連結用レバー19のそれぞれに接続された連結棒20とを有している。連結用レバー19は、連結用回動軸15の回動に連動して回動する。連結用レバー19の回動の回動力は、連結棒20を介して、非常止め用レバー18に伝達される。これにより、非常止め用レバー18は、連結用レバー19の回動に連動して回動する。非常止め用回動軸5は、非常止め用レバー18の回動に連動して回動する。つまり、連結用回動軸15の回動力は、連結部材17を介して、非常止め用回動軸5に伝達される。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0030】
以上説明したように、この発明の実施の形態2に係るエレベータの改修方法によれば、過速度非常止め装置13は、非常止めレバー6に固定され回動することにより非常止めレバー6を変位させる非常止め用回動軸5をさらに有し、変位装置10は、ガバナロープ9の動作に連動して回動する連結用回動軸15と、非常止め用回動軸5と連結用回動軸15との間に設けられ連結用回動軸15の回動力を非常止め用回動軸5に伝達する連結部材17とを有しているので、連結部材17の長さまたは連結部材17の方向を変更することにより、ガバナ8およびガバナロープ9の設置位置の自由度を向上させることができる。
【0031】
実施の形態3.
図6はこの発明の実施の形態3に係る改修後のエレベータの要部を示す正面図、
図7は
図6のA部を拡大した図である。図において、非常止め用回動軸5には、押上げレバー21が固定されている。非常止め用レバー18は、押上げレバー21に固定されている。その他の構成は、実施の形態2と同様である。
【0032】
以上説明したように、この発明の実施の形態3に係るエレベータの改修方法によれば、非常止め用回動軸5には、非常止め用レバー18が固定された押上げレバー21が固定されているので、非常止め用回動軸5に対して、非常止め用レバー18を容易に固定することができる。
【0033】
実施の形態4.
図8はこの発明の実施の形態4に係る改修後のエレベータの要部を示す正面図である。図において、変位装置10は、ワイヤ22とワイヤ22を保持する被覆部材23とを含みワイヤ22が被覆部材23に対して移動可能なケーブル24を有している。ワイヤ22は、ガバナロープ9の動作に連動して被覆部材23に対して移動して、非常止めレバー6を変位させる。被覆部材23の長手方向両端部のそれぞれは、留め具25を介して、非常止め枠3に取り付けられている。ワイヤ22の長手方向一端部は、引上げ棒12に接続されている。ワイヤ22の長手方向他端部は、非常止め用回動軸5とコロ7との間の非常止めレバー6の部分に接続されている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0034】
次に、過速度非常止め装置13の動作について説明する。かごの速度が所定値を越えたときに、実施の形態1と同様にして、引上げ棒12が上方に引き上げられる。引上げ棒12の上方への移動に連動して、ワイヤ22が被覆部材23に対して移動する。これにより、非常止めレバー6が解除位置から押圧位置へ変位する。その結果、クワエ金4とコロ7とによりガイドレール1が挟持され、かごが停止する。
【0035】
以上説明したように、この発明の実施の形態4に係るエレベータの改修方法によれば、変位装置10は、ワイヤ22とワイヤ22を保持する被覆部材23とを含みワイヤ22が被覆部材23に対して移動可能なケーブル24を有し、ワイヤ22は、ガバナロープ9の動作に連動して被覆部材23に対して移動して、非常止めレバー6を変位させるので、ケーブル24の長さを調節することで、ガバナ8およびガバナロープ9の設置位置の自由度を向上させることができる。
【0036】
実施の形態5.
図9はこの発明の実施の形態5に係る改修後のエレベータの要部を示す正面図である。図において、ワイヤ22は、非常止め用回動軸5よりも反コロ7側の非常止めレバー6の部分に接続されている。その他の構成は、実施の形態4と同様である。
【0037】
以上説明したように、この発明の実施の形態5に係るエレベータの改修方法によれば、ワイヤ22は、非常止め用回動軸5よりも反コロ7側の非常止めレバー6の部分に接続されているので、ワイヤ22を非常止めレバー6の下側に接続することができる。これにより、ケーブル24を非常止めレバー6の下側を通って配置する場合に、ケーブル24の長さを短くすることができる。
【0038】
なお、各上記実施の形態では、スラックロープ式非常止め装置2を、過速度非常止め装置13に変更するエレベータの改修について説明したが、既設の過速度非常止め装置13の設置位置を変更するエレベータの改修にも適用することができる。この場合、ガバナ8およびガバナロープ9の設置位置を変更(ガバナおよびガバナロープ設置位置変更工程)した後、ガバナロープ9の設置位置に合わせて変位装置10の設置位置を変更する(変位装置設置位置変更工程)。これにより、既設の過速度非常止め装置13の非常止めレバー6を新規の過速度非常止め装置13の非常止めレバー6として用いることができる。その結果、既設の過速度非常止め装置13一式または既設の過速度非常止め装置13の非常止めレバー6を取り外す必要がなくなり、エレベータの改修における作業効率を向上させることができ、また、工事期間の短縮、工事コストの削減、廃棄物の削減を図ることができる。また、既設の変位装置10を昇降路の外側へ搬出する必要がなくなり、エレベータの改修における作業効率を向上させることができる。
【0039】
実施の形態6.
図10はこの発明の実施の形態6に係るエレベータの要部を示す正面図である。図において、連結部材17は、非常止め用回動軸5に固定された非常止め用レバー18と、連結用回動軸15に固定された連結用レバー19と、非常止め用レバー18および連結用レバー19のそれぞれに接続された連結棒20とを有している。
【0040】
図11は
図10の非常止め用レバー18を示す分解正面図である。非常止め用レバー18は、連結棒20(
図10)に接続された第1の連結金具(回動部材)26と、第1の連結金具26に取り付けられ、第1の連結金具26とともに非常止め用回動軸5を挟む第2の連結金具(取付部材)27と、第2の連結金具27を第1の連結金具26に固定する締結部材28と、第1の連結金具26と第2の連結金具27とに渡って設けられ非常止め用回動軸5を貫通するピン(規制部材)29とを有している。
【0041】
締結部材28は、一対のボルト281と、各ボルト281に取り付けられるナット282とを有している。
【0042】
第1の連結金具26には、非常止め用回動軸5の外周面の形状に合うように半円状に切り込まれた凹面261が形成されている。また、第1の連結金具26には、ボルト281が挿入される一対のボルト孔262が形成されている。また、第1の連結金具26には、ピン29が挿入されるガイド孔(回動部材ガイド孔)263が形成されている。
【0043】
第2の連結金具27には、非常止め用回動軸5の外周面の形状に合うように半円状に切り込まれた凹面271が形成されている。また、第2の連結金具27には、ボルト281が挿入される一対のボルト孔272が形成されている。また、第2の連結金具27には、ピン29が挿入されるガイド孔(取付部材ガイド孔)273が形成されている。
【0044】
ボルト孔262の直径の寸法とボルト孔272の直径の寸法とは、同一となっている。ボルト孔262およびボルト孔272は、第2の連結金具27が第1の連結金具26に取り付けられた場合に、ボルト孔262とボルト孔272とが互いに対向するように配置されている。
【0045】
ガイド孔263の直径の寸法とガイド孔273の直径の寸法とは、同一となっている。ガイド孔263およびガイド孔273は、第2の連結金具27が第1の連結金具26に取り付けられた場合に、ガイド孔263とガイド孔273とが互いに対向するように配置されている。
【0046】
ボルト281は、ボルト孔272およびボルト孔262に挿入されている。ボルト281の先端部には、ナット282が螺着されている。ボルト281とナット282とが第1の連結金具26および第2の連結金具27を締め付けることにより、第2の連結金具27が第1の連結金具26に固定される。
【0047】
非常止め用回動軸5は、一対のボルト281の間に配置されている。非常止め用回動軸5には、ピン29が挿入されるための貫通孔51が形成されている。貫通孔51の直径の寸法は、ガイド孔263およびガイド孔273の直径の寸法とほぼ同一となっている。貫通孔51の直径の寸法は、非常止め用回動軸5の直径の寸法よりも十分に小さい寸法である。
【0048】
貫通孔51は、ガイド孔263およびガイド孔273のそれぞれに対向するように配置されている。ガイド孔263およびガイド孔273は、非常止め用回動軸5の軸線に直交する直線に沿うように形成されている。したがって、貫通孔51の中心を通り貫通孔51に沿って延びた直線は、非常止め用回動軸5の軸線に対して直交している。
【0049】
図12は
図11の第2の連結金具27を示す正面図、
図13は
図11の第2の連結金具27を示す側面図である。一対のボルト孔272およびガイド孔273は、ボルト281(
図11)の挿入方向に沿って視たときに、非常止め用回動軸5(
図11)の軸線に直交する直線上に並ぶように配置されている。
【0050】
図11に示すように、第1の連結金具26と第2の連結金具27との間に非常止め用回動軸5が挟まれるように第2の連結金具27が締結部材28を用いて第1の連結金具26に取り付けられている。さらに、ピン29が、非常止め用回動軸5を貫通して、第1の連結金具26と第2の連結金具27とに渡って取り付けられている。これにより、第1の連結金具26に対する非常止め用回動軸5の回動および軸線方向の移動が規制される。その他の構成は、実施の形態2と同様である。
【0051】
次に、過速度非常止め装置13の動作について説明する。
図10に示すように、ガバナロープ9の動作に連動して引上げ棒12が引き上げられると、引上げレバー16は、引上げ棒12側の部分が上昇する方向、つまり、図に示す矢印Aの方向に、連結用回動軸15を中心に回動する。これにより、連結用回動軸15が回動し、連結用レバー19は、連結棒20側の部分が非常止め用レバー18から離れる方向、つまり、図に示す矢印Bの方向に、連結用回動軸15を中心に回動する。
【0052】
連結用レバー19が矢印Bの方向に回動することにより、非常止め用レバー18は、連結棒20側の部分が連結用レバー19に近づく方向に、つまり、図に示す矢印Cの方向に、非常止め用回動軸5を中心に回動する。これにより、非常止め用回動軸5が回動し、非常止めレバー6は、コロ7側の部分が上昇する方向、つまり、図に示す矢印Dの方向に、非常止め用回動軸5を中心に回動する。これにより、非常止めレバー6が解除位置から押圧位置に変位する。
【0053】
次に、エレベータの改修方法について説明する。
図14は
図11の第1の連結金具26および第2の連結金具27に挟まれた非常止め用回動軸5に貫通孔51を形成する様子を示す正面図、
図15は
図14の非常止め用回動軸5にピン29を貫通させた様子を示す側面図である。既設の非常止め装置としては、スラックロープ式非常止め装置2(
図1)であっても、過速度非常止め装置13(
図2)であってもよい。ここでは、変位装置10を非常止めレバー6とガバナロープ9との間に設置する変位装置設置工程について説明する。まず、第1の連結金具26および第2の連結金具27を用いて非常止め用回動軸5を挟む(回動軸狭工程)。
【0054】
その後、ボルト孔262およびボルト孔272にボルト281を挿入し、さらに、ボルト281にナット282を螺着して、第1の連結金具26に対して第2の連結金具27を固定する。その後、ドリル30を用いて、ガイド孔263およびガイド孔273に沿って、つまり、非常止め用回動軸5の軸線に直交する直線に沿って、非常止め用回動軸5に貫通孔51を形成する(貫通孔形成工程)。
【0055】
その後、一直線上に並んだガイド孔273、貫通孔51およびガイド孔263に、ピン29を挿入して、第1の連結金具26と第2の連結金具27とに渡ってピン29を取り付ける(規制部材取付工程)。このとき、ピン29は、ガイド孔273、貫通孔51およびガイド孔263に打ち込まれることにより、第1の連結金具26、非常止め用回動軸5および第2の連結金具27に対して固定される。
【0056】
以上説明したように、この発明の実施の形態6に係る過速度非常止め装置13によれば、非常止めレバー6に固定され回動することにより非常止めレバー6を変位させる非常止め用回動軸5とガバナロープ9とに渡って設けられ、ガバナロープ9の動作に連動して非常止め用回動軸5を回動させる変位装置10は、非常止め用回動軸5を中心に回動する第1の連結金具26と、第1の連結金具26とともに非常止め用回動軸5を挟む第2の連結金具27と、非常止め用回動軸5を貫通して第1の連結金具26と第2の連結金具27とに渡って設けられ、第1の連結金具26に対する非常止め用回動軸5の回動および軸線方向の移動を規制するピン29とを有しているので、既設の非常止めレバー6および非常止め用回動軸5を、過速度非常止め装置13の非常止めレバー6および非常止め用回動軸5として用いることができる。その結果、既設の非常止め装置の一式または既設の非常止めレバー6および非常止め用回動軸5を取り外す必要がなくなり、エレベータ改修における作業効率を向上させることができる。
【0057】
また、この発明の実施の形態6に係るエレベータの改修方法によれば、ガバナロープ9の動作に連動して、非常止めレバー6に固定された非常止め用回動軸5を中心に回動する第1の連結金具26および第1の連結金具26に取り付けられる第2の連結金具27を用いて非常止め用回動軸5を挟む回動軸挟工程と、非常止め用回動軸5の軸線に交差する直線に沿うように形成された第1の連結金具26のガイド孔263および第2の連結金具27のガイド孔273に沿って、非常止め用回動軸5に貫通孔51を形成する貫通孔形成工程と、第1の連結金具26に対する非常止め用回動軸5の回動および軸線方向の移動を規制するためのピンを、ガイド孔263、ガイド孔273および貫通孔51に挿入して、ピン29を第1の連結金具26と第2の連結金具27とに渡って取り付ける規制部材取付工程とを有しているので、既設の非常止めレバー6および非常止め用回動軸5を、過速度非常止め装置13の非常止めレバー6および非常止め用回動軸5として用いることができる。その結果、既設の非常止め装置の一式または既設の非常止めレバー6および非常止め用回動軸5を取り外す必要がなくなり、エレベータ改修における作業効率を向上させることができる。
【0058】
なお、上記実施の形態6では、第1の連結金具26に形成された凹面261の形状が、半円形に切り込まれた形状である例について説明したが、これに限らない。
図16は
図11の第1の連結金具26の凹面261の形状の変形例を示す正面図である。第1の連結金具26に形成される凹面261の形状は、非常止め用回動軸5の外周面の形状に合った形状であれば、例えば、四角形または台形に切り込まれた形状であってもよい。なお、図示していないが、第2の連結金具27に形成される凹面271の形状についても、半円形に切り込まれた形状に限らず、例えば、四角形または台形に切り込まれた形状であってもよい。
【0059】
また、上記実施の形態6では、ガイド孔263およびガイド孔273は、非常止め用回動軸5の軸線に直交する直線に沿うように形成されている例について説明したが、これに限らず、ガイド孔263およびガイド孔273は、非常止め用回動軸5の軸線に交差する直線に沿うように形成されていればよい。したがって、貫通孔51の中心を通り貫通孔51に沿って延びた直線は、非常止め用回動軸5の軸線に対して直交する場合に限らず、非常止め用回動軸5の軸線に対して交差していればよい。
【0060】
また、上記実施の形態6では、既設の非常止め装置を過速度非常止め装置13に変更するエレベータの改修について説明したが、既設の過速度非常止め装置13の設置位置を変更するエレベータの改修にも適用することができる。この場合、ガバナロープ9の設置位置に合わせて変位装置10の設置位置を変更する変位装置設置位置変更工程には、第1の連結金具26および第2の連結金具27を用いて非常止め用回動軸5を挟む回動軸挟工程と、非常止め用回動軸5に貫通孔51を形成する貫通孔形成工程と、ピン29を、ガイド孔263、ガイド孔273および貫通孔51に挿入して、ピン29を第1の連結金具26と第2の連結金具27とに渡って取り付ける規制部材取付工程とが含まれる。これにより、既設の過速度非常止め装置13の非常止めレバー6および非常止め用回動軸5を新規の過速度非常止め装置13の非常止めレバー6および非常止め用回動軸5として用いることができる。その結果、既設の過速度非常止め装置13一式または既設の過速度非常止め装置13の非常止めレバー6および非常止め用回動軸5を取り外す必要がなくなり、エレベータの改修における作業効率を向上させることができ、また、工事期間の短縮、工事コストの削減、廃棄物の削減を図ることができる。また、既設の変位装置10を昇降路の外側へ搬出する必要がなくなり、エレベータの改修における作業効率を向上させることができる。