(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記通電加熱する領域において、前記清澄槽の内部壁面が前記清澄槽内の気相と接する前記清澄槽の頂部が、前記清澄槽の内部壁面が前記清澄槽内の溶融ガラスと接する前記清澄槽の側部あるいは底部に比べて電気抵抗率が高くなるように、前記清澄槽の金属材料の組成が、前記頂部と、前記側部あるいは前記底部との間で、異なっている、請求項1に記載のガラス板の製造方法。
前記清澄槽の前記金属管には、前記通電加熱する領域の両端のそれぞれにおいて、前記清澄槽の外周と接するように金属製フランジが設けられ、前記金属製フランジは電源と接続されて通電されることにより、前記清澄槽は通電加熱される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
前記電源から電流の供給を受ける前記金属製フランジは、前記通電加熱する領域の両端のうち少なくとも一方の端において、前記金属製フランジの周上の、前記側部あるいは前記底部に対応した場所で、前記電源と接続した引き出し電極と接続されている、請求項4に記載のガラス板の製造方法。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ(以下、「FPD」という。)に用いるガラス基板には、厚さが例えば0.5〜0.7mmと薄いガラス板が用いられている。このFPD用ガラス基板は、例えば第1世代では300×400mmのサイズであるが、第10世代では2850×3050mmのサイズになっている。
【0003】
このような第8世代以降の大きなサイズのFPD用ガラス基板、例えば、TFT(Thin Film Transistor)をガラス表面に形成するガラス基板には、TFTの特性を劣化させないために、アルカリ金属を全く含まないか、含んでも少量であるガラス板が好適に用いられる。また、このようなガラス板は、熱収縮が極めて小さいため、400〜500℃の熱処理を行ってポリシリコンTFTをガラス表面に形成する場合にも好適に用いられる。
【0004】
一方、アルカリ金属を全く含まないか、含んでも少量であるガラス板の製造段階では、溶融ガラスの高温粘性は高い。このため、溶融ガラスの脱泡を行う清澄槽は、上記溶融ガラスの脱泡を効果的に行うために、上記溶融ガラスを、アルカリ金属を含む従来の溶融ガラスに比べて高い温度に昇温する。また、清澄処理では、酸素等を放出して、溶融ガラス内の泡を成長させるための清澄剤が溶融ガラスに含まれているが、昨今の環境負荷の低減の点から、清澄機能は大きいが毒性の高いAs
2O
3に替えて、溶融ガラスを1600〜1630℃以上の高温にして脱泡処理を有効に機能させるSnO
2等の清澄剤を用いる場合が多い。
【0005】
以上の理由から、清澄槽を構成する金属管、例えば高価な白金あるいは白金ロジウム合金は、1600〜1630℃以上の高温、例えば1700℃近くまで加熱されるので、一部の白金あるいは白金ロジウム合金の金属成分が揮発して金属管の厚さが薄くなり易く、従来に比べて清澄槽である金属管は短期間に消耗し易い。特に、溶融ガラスと接触せず、気相と接する金属管の清澄槽の頂部は、それ以外の側部や底部に比べて高温になり易く、金属管の金属成分が揮発し易い。このため、清澄槽である金属管の金属成分の揮発を抑制することが望まれている。
【0006】
一方、溶融ガラスと直接的に接触しない清澄槽の頂部の壁部分、および溶融ガラスと直接的に接触する側部の壁部分を備えた清澄槽内において、上記頂部の壁部分の温度Tと、上記側部の壁部分が温度Tとの差分が10℃以下となるように調整するガラス清澄方法が知られている(特許文献1)。
当該ガラス清澄方法によれば、清澄槽の頂部と側部/底部との間の温度勾配を低く保つことにより、溶融ガラスの清澄温度をかなり高めて、清澄効率および効果を高め、かつガラス品質を改善することができる、と記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の公知のガラス清澄方法では、清澄槽の頂部と側部/底部との間の温度勾配を低く保つために、清澄槽の側部を通電することにより補助的に側部を加熱することが例示されている(当該公報の段落番号0020)。しかし、このような側部を通電する補助的加熱では、清澄槽の加熱システムの構成をより複雑にするため好ましくない。
また、当該公報では、上記頂部の温度Tと、上記側部の温度Tとの差分を10℃以下とするが、上記頂部の温度Tが、上記側部の温度Tに比べて高いことを前提とするので、清澄槽である金属管の金属成分の揮発を十分に抑制することができない場合もある。
【0009】
そこで、本発明は、従来とは異なる方式を用いて、清澄工程における脱泡処理を効果的に行うとともに、清澄槽の金属成分の揮発を抑制して長期間連続してガラス板を製造することができるガラス板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、ガラス板を製造するガラス板の製造方法である。
当該製造方法は、
ガラス原料を熔解して溶融ガラスをつくる熔解工程と、
前記溶融ガラスが内部を流れる金属管で構成された清澄槽を通電加熱することにより、前記溶融ガラスを昇温して前記溶融ガラスの脱泡を行う脱泡工程と、
ガラス板を製造するために、脱泡した前記溶融ガラスをシート状ガラスに成形する成形工程と、を少なくとも含む。
前記清澄槽の通電加熱は、前記清澄槽の長手方向に延びる領域で行われる。
前記清澄槽の内部壁面が前記清澄槽内の気相と接する前記清澄槽の頂部が、前記清澄槽の内部壁面が前記清澄槽内の溶融ガラスと接する前記清澄槽の側部あるいは底部に比べて前記清澄槽の周方向の単位長さ当たりの発熱量に関して小さくなるように、前記通電加熱する領域は通電される。
【発明の効果】
【0011】
上記形態のガラス板の製造方法では、清澄工程における脱泡処理を効果的に行うとともに、清澄槽の金属成分の揮発を抑制して長期間連続してガラス板を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態のガラス板の製造方法について説明する。
【0014】
(ガラス板の製造方法の全体概要)
図1は、ガラス板の製造方法の工程図である。
ガラス板の製造方法は、熔解工程(ST1)と、清澄工程(ST2)と、均質化工程(ST3)と、供給工程(ST4)と、成形工程(ST5)と、徐冷工程(ST6)と、切断工程(ST7)と、を主に有する。この他に、研削工程、研磨工程、洗浄工程、検査工程、梱包工程等を有し、梱包工程で積層された複数のガラス板は、納入先の業者に搬送される。
【0015】
図2は、熔解工程(ST1)〜切断工程(ST7)を行う装置を模式的に示す図である。当該装置は、
図2に示すように、主に熔解装置200と、成形装置300と、切断装置400と、を有する。熔解装置200は、熔解槽201と、清澄槽202と、攪拌槽203と、ガラス供給管204,205,206と、を有する。
【0016】
熔解工程(ST1)では、熔解槽201内に供給されたガラス原料を、図示されない火焔および電気ヒータで加熱して熔解することで溶融ガラスを得る。
清澄工程(ST2)は、ガラス供給管204、清澄槽202およびガラス供給管205において主に行われ、清澄槽202内の溶融ガラスMGを加熱することにより、溶融ガラスMG中に含まれるO
2等の気泡が、清澄剤の酸化還元反応により成長し液面に浮上して放出される、あるいは、気泡中のガス成分が溶融ガラス中に吸収されて、気泡が消滅する。
均質化工程(ST3)では、ガラス供給管205を通って供給された攪拌槽203内の溶融ガラスMGを、スターラを用いて攪拌することにより、ガラス成分の均質化を行う。
供給工程(ST4)では、ガラス供給管206を通して溶融ガラスMGが成形装置300に供給される。
【0017】
成形装置300では、成形工程(ST5)及び徐冷工程(ST6)が行われる。
成形工程(ST5)では、溶融ガラスMGをシート状ガラスGに成形し、シート状ガラスGの流れを作る。本実施形態では、図示されない成形体を用いたオーバーフローダウンドロー法を用いる。徐冷工程(ST6)では、成形されて流れるシート状ガラスGが所望の厚さになり、内部歪が生じないように冷却される。
切断工程(ST7)では、切断装置400において、成形装置300から供給されたシート状ガラスGを所定の長さに切断することで、板状のガラス板を得る。切断されたガラス板はさらに、所定のサイズに切断され、目標サイズのガラス板が作製される。この後、ガラス端面の研削、研磨、及びガラス主面の洗浄が行われ、さらに、気泡や脈理等の異常欠陥の有無が検査された後、検査合格品のガラス板が最終製品として梱包される。
【0018】
(ガラス組成)
本実施形態で製造されるガラス板は、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板に好適に用いられる。例えば、Li、Na、及びKのいずれの成分も含有されていないか、あるいは、Li、Na、及びKのいずれか少なくとも1つの成分が含有されているとしても、Li、Na、及びKの内含有する成分の合計量が、2質量%以下であるガラス組成を有する。清澄剤として、SnO
2が主に用いられる。ガラス組成は、以下に示すものが好適に例示される。
(a)SiO
2:50〜70質量%、
(b)B
2O
3:5〜18質量%、
(c)Al
2O
3:10〜25質量%、
(d)MgO:0〜10質量%、
(e)CaO:0〜20質量%、
(f)SrO:0〜20質量%、
(g)BaO:0〜10質量%、
(h)RO:5〜20質量%(ただしRはMg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種であり、ROは、MgO、CaO、SrOおよびBaOのうち含有する成分の合計)、
(i)R’
2O:0.20質量%を超え2.0質量%以下(ただしR’はLi、NaおよびKから選ばれる少なくとも1種であり、R’
2OはLi
2O、Na
2O及びK
2Oのうち含有する成分の合計)、
(j)SnO
2、Fe
2O
3およびCeO
2などから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を合計で0.05〜1.5質量%。
なお、金属酸化物では、SnO
2が最も多く含有される。したがって、後述する清澄槽202内における脱泡処理では、SnO
2が還元反応を起こす温度、例えば1630℃以上の温度に溶融ガラスMGは昇温される。
また、(i)のR’
2Oの含有が0質量%であっても構わない。
【0019】
上述した成分に加え、本実施形態のガラス板は、ガラスの様々な溶融、清澄、および成形の特性を調節するために、様々な他の酸化物を含有しても差し支えない。そのような他の酸化物の例としては、以下に限られないが、TiO
2、MnO、ZnO、Nb
2O
5、MoO
3、Ta
2O
5、WO
3、Y
2O
3、およびLa
2O
3が挙げられる。
また、本実施形態においては、SnO
2はガラスを失透しやすくする成分であるため、清澄性を高めつつ失透を起こさせないためには、その含有率が0.01〜0.5質量%であることが好ましく、0.05〜0.3質量%であることがより好ましく、0.1〜0.2質量%であることがさらに好ましい。
【0020】
(清澄工程)
図3(a)は、清澄工程を行う装置構成を主に示す図である。清澄工程は、溶融ガラスMGの温度を、例えば1630℃以上に昇温させることにより溶融ガラスMG中に泡Bを生成させて脱泡を行う脱泡処理と、脱泡処理の後、溶融ガラスMGを1600℃以下に降温させることにより、溶融ガラスMG中の泡を溶融ガラスMGに吸収させる吸収処理と、を含む。上述したように、溶融ガラスMGは、清澄剤としてSnO
2を主成分として含むため、SnO
2が還元反応によりO
2を放出して還元するとき、溶融ガラスMG中のSnO
2が放出したO
2は、溶融ガラスMGに既に存在する小さな泡に吸収されて、この小さな泡を成長させる。成長した泡の浮力と溶融ガラスMGの昇温による粘性の低下により、溶融ガラスMG内の泡の浮上速度は大きくなり、泡の浮上による脱泡が促進する。この浮上による脱泡の処理が脱泡処理である。したがって、本実施形態では、SnO
2が還元反応を起こす温度、例えば1630℃以上に溶融ガラスMGは昇温される。
【0021】
一方、清澄槽202のガラス供給管205側の端部近傍あるいはガラス供給管205において、溶融ガラスMGは、SnO
2の還元により得られたSnOが酸化反応によりO
2を吸収する温度、例えば1600℃以下に降温される。このとき、溶融ガラスMG中に残存する泡内のO
2は吸収され、溶融ガラスMGに既に存在する泡内のO
2は減少する。泡内のO
2の減少と溶融ガラスMGの温度の降温により、溶融ガラスMG内での泡のサイズは小さくなり、多くの泡は消滅する。このSnOの酸化反応により泡内のO
2を吸収させる処理が、吸収処理である。
【0022】
清澄槽202は、上記脱泡処理を起こすために、熔解槽210を出た溶融ガラスMGを昇温させて1630℃以上にするために、ガラス供給管204及び清澄槽202に加熱システムが設けられている。以下、清澄槽202に電流を流して発熱した熱で溶融ガラスMGを加熱する加熱システムについて説明する。
【0023】
(加熱システム)
清澄槽202は、白金あるいは白金ロジウム合金の金属管であり、清澄槽202には、熔解槽201と清澄槽202との間を接続するガラス供給管204と、清澄槽202と攪拌槽203との間を接続するガラス供給管205とが接続されている。
図3(a)では、清澄槽202が単独で示されているが、清澄槽202の周りは、耐火レンガ及び断熱材等により覆われている。
ガラス供給管204の熔解槽201側の端部には、金属製フランジ202aが設けられている。清澄槽202のガラス供給管204側の端部には、金属製フランジ202bが接続されている。清澄槽202の長手方向のほぼ中央部には、金属製フランジ202cが設けられている。
すなわち、通電加熱する領域として定められている領域の両端のそれぞれにおいて、清澄槽202の外周と接するように金属製フランジ202b、202cが設けられている。金属製フランジ202b、202cは電源と接続されて通電されることにより、清澄槽202を通電加熱する。したがって、清澄槽202では、通電加熱する領域が、清澄槽202の長手方向に延びている。
図3(a)では、本加熱システムに金属製フランジ202a,202b,202cが設けられるが、清澄槽202のガラス供給管205側の端部に金属製フランジが設けられて、通電加熱に用いられてもよい。
【0024】
図3(b)は、金属製フランジ202b及び熔解槽202の断面図である。金属製フランジ202a,202cも同じ構成を有しているので、金属製フランジ202bを代表して説明する。
金属製フランジ202aと金属製フランジ202bとの間には、白金あるいは白金ロジウム合金からなるガラス供給管204を通して電流が流れ、ガラス供給管204が通電加熱される。さらに、金属製フランジ202bと金属製フランジ202cとの間には、白金あるいは白金ロジウム合金からなる清澄槽202を通して電流の供給を受けて電流が流れ、清澄槽202が通電加熱される。これらの通電加熱により、溶融ガラスMGの温度は大幅に上昇し、溶融ガラスMGに清澄剤として含まれるSnO
2の還元反応が生じて、脱泡処理が行われる。
【0025】
図3(b)に示すように、金属製フランジ202bは、その周上に、フランジ本体に比べて厚さの厚い厚肉部202fを有する。金属製フランジ202bの周上(具体的には厚肉部202fの周上)の、側部に対応した両側の2つの場所と、金属製フランジ202bの周上(具体的には厚肉部202fの周上)の、底部に対応した場所において、金属製フランジ202bは、電源と接続した引き出し電極202g,202h,202iと接続されている。厚肉部202fを設けるのは、引き出し電極202g,202h,202iから流れる電流を接続部分の周りに分散させることで、接続部分に電流が集中して接続部分が局部的に発熱することを防止するためである。
図3(b)は、頂部に相当する領域202dと、側部及び底部に相当する領域202eとを示している。領域202dは、清澄槽202内の気相に内壁面が接する部分である。気相は、溶融ガラスMGから浮上した泡を逃がすために清澄槽202内に設けられている。清澄槽202の管内では、溶融ガラスMGの液面の高さが調整されて流れるので、領域202dの位置は予め定められ得る。
【0026】
なお、側部とは、熔解槽202内の内壁面が溶融ガラスMGの液面と接触する、
図3(b)中の両側の壁をいい、底部とは、熔解槽202内の内壁面が溶融ガラスMGの液面と接触する、
図3(b)中の底の壁をいう。より正確には、側部とは、熔解槽202の管の中心軸Oの周りにおいて、水平方向の角度θ=0としたとき、角度θが−45度〜45度及び135度〜225度の範囲内であって、熔解槽202内の内壁面が溶融ガラスMGと接触する壁の部分をいう。また、底部とは、角度θ=225度〜315度の範囲であって、熔解槽202内の内壁面が溶融ガラスMGと接触する壁の部分をいう。一方、頂部とは、角度θ=45度〜135度の範囲であって、熔解槽202内の内壁面が熔解槽202内の気相と接触する壁の部分をいう。
【0027】
このような清澄槽202では、金属製フランジ202bと金属製フランジ202cとの間の通電加熱する領域において、清澄槽202の頂部が、清澄槽202の側部及び底部に比べて、清澄槽202の管の周上における単位長さ当たりの発熱量に関して小さくなるように、通電される。このような通電を行うことにより、清澄槽202の側部、底部の温度を高くして、溶融ガラスMGの昇温を効果的に行う一方、頂部の温度を抑制して、清澄槽202の金属製分の揮発を抑制することができる。例えば、清澄槽202の側部及び底部の温度を、頂部の温度に比べて高くすることもできる。本実施形態では、以下説明するように、清澄槽202の電気抵抗率が、頂部と、側部及び底部との間で金属材料の組成を異ならせて発熱量が上述するように調整されている。
【0028】
具体的には、清澄槽202の頂部は、清澄槽202の側部あるいは底部に比べて電気抵抗率(μΩ・cm)が高くなるように、清澄槽202の金属材料の組成が、頂部と、側部及び底部との間で異なっている。例えば、頂部の部分は、ロジウムの質量%含有率が10%である白金ロジウム合金が用いられ、側部及び底部の部分は、ロジウムの質量%含有率が20%である白金ロジウム合金が用いられる。ロジウムを20質量%含有する白金ロジウム合金は、後述するように、ロジウムを10質量%含有する白金ロジウム合金に比べて電気抵抗率が1000℃以上において低い。
このように、清澄槽202の側部及び底部に、頂部に比べて電気抵抗率を小さくするのは、清澄槽202の壁に電流を流すとき、頂部に比べて、側部及び底部に電流を流れ易くし、頂部に比べて側部及び底部の発熱量をより大きくするためである。
【0029】
従来の清澄槽では、清澄槽内の内壁面が気相に接する頂部は、気相が溶融ガラスMGの液相に比べて比熱が低いことにより、側部及び底部に比べて温度が高い。このため、溶融ガラスMGを昇温するのに、溶融ガラスMGと内壁面が直接接触しない頂部の温度が側部及び底部の温度に比べて高いことは、溶融ガラスMGの有効な昇温にとって好ましくない他、頂部が高温になることで頂部の金属成分が揮発し易い。このため、脱泡処理を効果的に行えず、清澄槽202の金属成分の揮発を抑制することができず、長期間連続してガラスを製造することができなかった。
【0030】
これに対して、本実施形態では、清澄槽202内の内壁面が溶融ガラスMGに接する側部及び底部は、頂部に比べて大きく発熱する。このため、溶融ガラスMGを効果的に昇温させることができる。しかも、頂部の発熱を抑制するので、脱泡を行うことができる1630℃以上の温度に溶融ガラスMGを昇温する場合、頂部の温度は、従来のように高くならない。このため、清澄槽202の金属成分の揮発を従来に比べて抑制することができる。
また、引き出し電極202g,202h,202iを側部及び底部において金属製フランジと接続することで、より効果的に側部及び底部の発熱を促すことができる。
したがって、金属製フランジには、側部2箇所及び底部1箇所の3箇所から電流が供給されるが、溶融ガラスMGと内壁面が接する側部の発熱をより効果的に行うために、側部2箇所のみから電流が供給されてもよい。さらには、溶融ガラスMGと内壁面が接する底部の発熱をより効果的に行うために、底部1箇所のみから電流が供給されてもよい。
【0031】
下記表1は、白金及び白金ロジウム合金の電気抵抗率の例を示す。表1に示されるように、ロジウムの含有率が10質量%の場合の電気抵抗率(1000℃以上)は、白金あるいはロジウムの含有率が20質量%の場合の電気抵抗率(1000℃以上)に比べて高い。したがって、白金、白金ロジウム合金、あるいは、白金及び白金ロジウム合金の組み合わせで清澄槽202が構成される場合、頂部におけるロジウムの含有率は、側部及び底部のロジウムの含有率に比べて、10%に近いことが、側部及び底部の発熱量(清澄槽202の管の周上の単位長さ当たりの発熱量)を頂部に比べて大きくする点で、好ましい。
【0033】
本実施形態では、
清澄槽202に設けられる金属製フランジ202b,202cの側部及び底部に対応する部分に引き出し電極が設けられるが、金属製フランジ202b,202cのいずれか一方において、側部及び底部に対応する部分に引き出し電極が設けられてもよい。また、このとき、側部のみに引き出し電極が設けられてもよい。これらの場合においても、頂部に比べて、側部及び底部に電流を流れ易くし、頂部に比べて側部及び底部の加熱をより大きくすることができる。
【0034】
本実施形態では、
清澄槽202の管の周方向における単位長さ当たりの発熱量に関して、清澄槽202の頂部が、清澄槽202の側部及び底部に比べて
小さくなるように、通電されるために、清澄槽202の電気抵抗率が、頂部と、側部及び底部との間で金属材料の組成を異ならせている。しかし、電気抵抗率を異ならせる他に、同じ金属材料の組成であるとき、清澄層202の金属管の側部及び底部の厚さを、頂部の厚さに比べて厚くすることもできる。これにより、清澄槽202の側部及び底部に比べて、清澄槽202の頂部における周方向の単位長さ当たりの発熱量を小さくすることができる。
【0035】
以上、本発明のガラス板の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。