(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一対のリンク部材の一方の端部には、2本の棒材が交差する態様で配置されたX型フレームの一方の端部が回動自在に支持されているとともに、前記X型フレームの他方の端部は、前記一対の後脚フレームに回動自在かつ移動不能に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の折畳み式ベビーカーの開閉装置。
【背景技術】
【0002】
例えば、乳幼児を連れて買い物あるいは散歩などに出向く場合に使用されるベビーカーとして、前後方向および幅方向の寸法をそれぞれ小さくすることが可能ないわゆる折畳み式ベビーカーが提供されている。
【0003】
このような折畳み式ベビーカーでは、折り畳んだ状態から使用状態に、あるいは使用状態から折り畳んだ状態に、姿勢を相互に変更するための開閉装置が具備されている。
開閉装置として、種々提案されているが、いずれの場合もベビーカーを構成する車体フレーム全体に操作者の力が伝達されることにより、開いたり縮まったりする構造となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
なお、本明細書(特許請求の範囲を含む)では、「前」「後」「左」「右」あるいは「背面」「前面」など方向を示す表現は、ベビーカーを押す操作者を基準として示したものであり、進行方向を「前」、操作者の背中側が「後」あるいは「背面」である。また、「左」「右」とは特別な説明がない限り、操作者の手と同じ方向を指し、さらに、ベビーカーの「上」「下」とは、前後輪が接地した状態で天地の方向を示している。
【0005】
すなわち、この特許文献1のベビーカーでは、特許文献1の
図5乃至
図8に示すように、車体フレームの主要構成要素として、背面側に一対の後脚フレーム4,4と、交差した態様の2本の棒部材81,82からなるX型フレーム8とを有しており、このX型フレーム8が後脚フレーム4,4に差し渡されている。このX型フレーム8は、上方に装着されたスライド部材7、7を介して上端部が、一対の後脚フレーム4,4に対し上下方向にスライド自在に設置されている。
【0006】
このような構成の車体フレームを備えたベビーカーでは、X型フレーム8の姿勢を当該特許文献1の
図5に示されるように幅方向に拡開した状態とすれば、ベビーカーの使用状態(走行状態)とされる。一方、当該特許文献1の
図6に示されるようにX型フレーム8を中央側に引き寄せた姿勢とすれば、折り畳まれた姿勢に、すなわち運搬時の姿勢にされる。なお、これら図では、一対の後脚フレーム4,4の幅方向の長さが伸縮されることが示されているが、良く知られているように、図外では、ベビーカーの前後方向(紙面に対して垂直な方向)にも長さが伸縮されている。
【0007】
このような折畳み式ベビーカーでは、X型フレーム8の一方の棒部材81と他方の棒部材82との間を跨るように従来の開閉装置が配置され、この開閉装置から折り畳んだり、拡開したりするための力が加えられている。
【0008】
例えば、このベビーカーの開閉装置では、特許文献1の
図8に示されるように、片方の手で環状の握り部33を握り、そのまま握り部33を上方に引き上げることでスライド部材7,7を上方に移動させ、これにより一対の後脚フレーム4,4の幅を縮ませるように設定されている。
【0009】
なお、このベビーカーでは、このようにして折り畳まれたり、拡開したりされるが、これに加えて、折り畳まれた車体フレームが不用意に拡開してしまうことがないように、開閉装置の側方にロック機構が具備されている。
【0010】
このベビーカーに具備されたロック機構40は、基端側が回動自在に支持された帯状のフック42と、このフック42が着脱自在に係止されるピン41などから構成されている。
【0011】
そして、車体フレームを折り畳んだ姿勢から使用時の姿勢に変更するには、特許文献1の
図8に示されるように、このロック機構40のロックを解除してからでなければ握り部33を上方に引き上げることができない構造になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、このようなロック機構40を備えた従来の開閉装置では、母親などのベビーカー操作者が、右の手で握り部33を操作して力を加えることが前提になっている。したがって、これとは違う態様、すなわち左手で握り部33を引き上げようとした場合には、左手の親指がロック機構40のフック42と反対側に位置してしまう。そのため、ロック機構40を左手一本で操作することが困難になる。このような場合には、両方の手を使用することになる。よって、使い勝手が悪いという問題があった。
【0014】
また、このようなロック機構40を備えた従来の開閉装置では、使用時の姿勢から折り畳まれた姿勢に変更する場合には、開閉装置の握り部33を握ることで対応できるが、逆に折り畳まれた姿勢から使用時の姿勢にするには、操作を行う上で慣れが必要であった。すなわち、開く操作と折畳む操作が同じ箇所に集中して存在していない。これは、ユーザー側にとっては不便であり、改善の余地がある。
【0015】
本発明は、このような実情に鑑み、操作性が良好でユーザーが誰でも容易に操作することのできる折畳み式ベビーカーの開閉装置及びこの開閉装置を備えるベビーカーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る折畳み式ベビーカーの開閉装置では、ロック機能付きの車体フレームがそのロック機能を解除した状態で幅方向および前後方向に折り畳まれる折畳み式ベビーカーの開閉装置であって、前記車体フレームの背面側に位置する互いに平行に配置された一対の後脚フレームに一方の端部が回動自在に支持された一対のリンク部材の他方の端部間の枢軸部分を覆うように装着され、
前記一対のリンク部材の屈曲動作を案内する案内通路が形成された本体胴部と、
前記本体胴部に一体的に形成されるとともに略水平姿勢に配置された平板頭部と、
前記本体胴部と前記平板頭部とを連結するように形成され、親指を上にし、残り4本の指を側方から差し込むことのできる長孔が具備された握り部とを備えるとともに、
前記握り部の上端部に前記ロック機能の操作ボタンが配置されていることを特徴としている。
【0017】
このような構成の開閉装置によれば、右手あるいは左手のいずれの手が握り部を掴んだとしても、その親指の近傍に、操作用ボタンが位置するので、誰でも容易にロック解除などの作業に導くことができる。
【0018】
ここで、本発明では、前記一対のリンク部材の一方の端部には、2本の棒材が交差する態様で配置されたX型フレームの一方の端部が回動自在に支持されているとともに、前記X型フレームの他方の端部は、前記一対の後脚フレームに回動自在かつ移動不能に支持されていることが好ましい。
【0019】
また、本発明に係るベビーカーは、前記いずれかの開閉装置を備えたことを特徴としている。
このような構成であれば、略水平状態に位置する平板頭部を掌で押し下げることで、X型フレームを下方にスライドさせて一対の後脚フレーム間を拡開させることができる。一方、これとは反対に握り部を握って持ち上げれば、X型フレームを拡開した姿勢から折り畳むことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る折畳み式ベビーカーの開閉装置によれば、開閉操作を行う握り部に方向性がないので、いずれの手を用いて操作したとしても、容易にロック機能を解除して折り畳んだり拡開したりすることができる。
【0021】
また、本発明では、力を加えるための平板頭部に力を加え易い。しかも、平板頭部が外部から目立ち易い位置にあるため位置を確認し易い。したがって、あらゆる人にとって使い易いという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施例に係る折畳み式ベビーカーの使用時の姿勢(拡開姿勢)を示した斜視図で、
図2は
図1に示したベビーカーを背面側から見たときの斜視図である。また、
図3はベビーカーを折り畳んだ状態、すなわち非使用時の姿勢(折畳み姿勢)を示した斜視図である。
【0024】
図1〜
図3に示したように、本実施例のベビーカー10は、車体フレームを幅方向および前後方向に拡開したり、あるいは、コンパクトに折り畳んだりすることができるようにした折畳み式ベビーカーである。
【0025】
図2に明示されているように、一対の前脚フレーム16,16と一対の後脚フレーム15,15が上方で鋭角に交わる位置に、左ハンドル12aと右ハンドル12bとが配置されている。これらのハンドルはセパレートタイプであるため、左右のハンドル12a、12b間に水平方向の棒材が存在しない。これにより、後述する開閉装置Aの平板頭部34の上部を開放させることができる。換言すれば、ベビーカーの折畳み姿勢から拡開姿勢にする場合などに、開閉装置Aの上方に操作の邪魔になる部材が存在しない。したがって、本実施例では、開閉装置Aの平板頭部34を押し込み易くなっている。
【0026】
また、
図2の状態において、左右のハンドル12a、12bの鉛直方向直下より後輪13a、13bの方が前輪側に近い位置に配置されている。これにより、操作者がベビーカーを押して歩いたときに、操作者のつま先がベビーカーの後輪13a、13bに引っ掛かることがないように設定されている。
【0027】
このような折畳み式ベビーカー10において、折畳みあるいは拡開の相互の姿勢変更は、
図2に示したように、X型フレーム20の上部に配置された開閉装置Aから片手で行うことができる。
【0028】
以下、このような本実施例の開閉装置Aについて説明するが、それに先だって、本実施例のベビーカーに具備された車体フレームの概略について説明する。
すなわち、本実施例における一対の前脚フレーム16,16と、一対の後脚フレーム15,15は、ともに略直線状であり、互いの間で逆V字をなすように配置されている。また、前脚フレーム16,16は後脚フレーム15,15より全長が長く設定されている。前脚フレーム16、16は折り畳んだときに、後脚フレーム15,15より短くなるように、後脚フレーム15,15との連結部付近に屈曲自在なリンク部分17a、17bが介在されている。
【0029】
なお、本実施例では、各フレーム15,16が直線状に形成されているが、これら各フレーム15,16は、直線状に何ら限定されない。これらフレームは十分な剛性を保てるものであれば曲線状であっても良い。
【0030】
ここで、屈曲自在なリンク部分17a、17bがV字状の連結部に介在されているのは、以下の理由による。
すなわち、通常の使用状態において前脚フレーム16,16の方が後脚フレーム15,15より長く設定されているので、そのまま折り畳むと前輪14a、14bが後輪13a、13bの下方に位置する姿勢となり、後輪13a、13bが接地面から浮いてしまうこととなる。これでは、折り畳んだ時の安定性が悪い。これを避けるために前脚フレーム16,16の上方部に、屈曲自在なリンク部分17a、17bを設けており、このリンク部分17a、17bを屈曲させることにより、余長分を吸収するようにしている。
【0031】
また、本実施例では、
図4に拡大して示したように、一対の後脚フレーム15,15間に2本の棒材18,18からなるX型フレーム20が差し渡されている。このX型フレーム20は、特許文献1のX型フレーム8の場合と同様に、中央部を支点としてそれ自身回動自在であるため、上下方向および幅方向に伸縮自在である。さらに、
図4に示したX型フレーム20の上端部は、スライド部材21、21を介して後脚フレーム15,15にスライド自在に設置されている。すなわち、上下方向に移動可能に設置されている。また、X型フレーム20の下端部は、固定部材23、23により後脚フレーム15,15に対して取付角度を調整できるように回動自在に支持されると同時に、後脚フレーム15,15に対して上下方向に移動不能に設置されている。
【0032】
また、本実施例では、
図1、
図2に示したように、車体フレームの両側面部に、2本の棒部材からλ状に形成されたλ型の連結体27、27が設置されている。なお、このλ型の連結体27から水平方向に延長して、台座の荷重を支えるための底部フレームが存在している。
【0033】
λ型の連結体27は、X型フレーム20の下端部を固定した固定部材23,23の直下近傍に位置する固定部材24,24と、X型フレーム20の上端部をスライド自在に支持したスライド部材21,21と、前脚フレーム16,16への支持部である支点28、28の3箇所で支持され、これらの3点で回動自在に支持されている。さらに、λ型の連結体27は、2本の棒部材が交差する中間支点25aが回動自在となっている。このように構成されたλ型の連結体27は、X型フレーム20に加えられた上下方向の力を、前脚フレーム16,16が水平方向に移動するように伝達する機能を有している。
【0034】
さらに、本実施例の車体フレームでは、
図2、
図4および
図5に示したように、背面側のX型フレーム20の離反した上端部間を互いに連結するように、水平方向に一対のリンク部材30,31が介在されている。これら一対のリンク部材30,31は、スライド部材21,21に対して回動自在に支持されている。
【0035】
また、リンク部材30,31の中央側に位置する他方の端部は、以下に詳述するように、開閉装置Aの本体胴部33内において、ピン51により互いに回動自在に連結されている。
【0036】
以下に、開閉装置Aについて、特に
図4および
図5を参照して説明する。
本実施例の開閉装置Aは、中空体に構成されているため、
図5では、背面側を切除した状態で示す。
【0037】
すなわち、開閉装置Aは、一対のリンク部分30,31同士の枢軸部分を覆うように装着される本体胴部33と、この本体胴部33の上方部に一体的に膨出して形成された平板頭部34と、左右いずれか一方の手が挿入される握り部35と、握り部35に装着された操作ボタン36とから構成されている。
【0038】
一対のリンク部材30、31は、平板状で本体胴部33の中央部でピン部材51により回動自在に支持されている。また、本体胴部33の側面には、リンク部材30,31の屈曲動作を案内する案内通路38,38が上下方向に形成されている。
【0039】
平板頭部34は、いわゆる操作面部であり、
図4に示したように、操作者の掌を上方向から水平方向に当てて押圧することができるように、大きな面積が確保されている。
前記握り部35は、親指を上にした状態で残り4本の指先を挿入することができるように上下方向の長孔39を有している。
【0040】
このような開閉装置Aは、左右対称形となっている。
本体胴部33および握り部35には、力を加え所定量押し込んだ場合の一対のリンク部材30,31の屈曲動作を許容したり、規制したりするロック機構が構成されている。このロック機構は、押しボタン式の操作ボタン36を介して操作力が加えられるもので、詳細な構成は特に限定されるものではない。
【0041】
但し、ロック機構の操作ボタン36は、親指で操作できるように、略水平方向に突出されていることが好ましい。実施例の操作ボタン36は、コイルスプリングなどからなる付勢手段を具備するもので、その付勢手段の付勢力に抗して操作ボタン36を内方に押し込めば、リンク部材30,31の屈曲を規制していたカンヌキ部材59を、リンク部材30,31から離反させることができる。すなわち、
図5に示したように、リンク部材30、31の連結部に、横幅の大きいカンヌキ部材59が配置されるとともに、それに対応したリンク部材30の溝37,37(一方のみ図示)が形成されている。このように、横幅の大きいカンヌキ部材59が溝37、37に嵌まることで、カンヌキ部材59とリンク部材30,31とのひっかかる位置が、リンク部材の回動支点に寄ることとなり、ロック機構の破壊強度を増すことができる。
【0042】
このロックを操作ボタン36で解除することにより、リンク部材30,31の屈曲を自由に行わせることができる。逆に操作ボタン36から力を解除し、カンヌキ部材59が溝37内に嵌る位置、すなわち拡開した姿勢において、ロック機構が作動する。
【0043】
さらに、本実施例では、
図2に示したように、後脚フレーム15からλ型の連結体27の突起に着脱自在に差し渡される帯状のフック40が具備されている。このフック40は樹脂製であり、樹脂製のフック40が連結体27に形成された係止用の突起に係止されることにより、ベビーカーの折畳み姿勢が保持される。すなわち、折畳み姿勢が不用意に開いてしまうことが防止される。
【0044】
なお、フック40は、連結体27に形成された係止用の突起との係止に限らず、折畳み姿勢を保持するように、例えば前脚フレーム16に係止用の突起を設け、係止するようにしてもよい。
【0045】
また、本実施例では、
図1に示したように、前脚フレーム16,16間に、両端部が円弧状に湾曲されたフロントガード61が着脱自在に差し渡されている。このフロントガード61は、ベビーカーが折畳み姿勢となっても、当該フロントガード61が折れてしまうことがないように、ある程度可撓性を有していることが好ましい。そのためには、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)などから形成されていることが好ましい。
【0046】
本実施例に係る開閉装置Aが具備された折畳み式ベビーカーは、概略上記のように構成されているが、以下に作用について説明する。
今、ベビーカーが
図1あるいは
図2に示したように拡開した姿勢、すなわち使用状態にある。
【0047】
この状態からベビーカーを折り畳むには、先ず、操作者が開閉装置Aの握り部35を掴むことから始められる。このとき、握り部35には、上下方向の長孔39が形成されているため、左右いずれの手で握り部35を握っても、親指を除く4本の指が長孔39内に入るように仕向けることができる。そのとき、右手で操作しても、左手で操作しても、残りの親指は、いずれの場合も上を向く姿勢となる。よって、左右いずれの手を用いても、その親指は、
図4に示した操作ボタン36の近傍に配置されるので、操作者が操作ボタン36を押すために困ることはない。
【0048】
例えば、右手で握り部35を掴んだら、右手親指を操作ボタン36にあてがい、操作ボタン36を内方に押し込めば良い。右手親指で操作ボタン36を押し込むことにより、これまで機能していたロック機構が解除される。これにより、X型フレーム20などからなる車体フレームの折畳みが可能になる。
【0049】
次の動作として、
図2などに示したハンドル12a、12bのいずれか一方を残りの左手で下方に押圧するように力を加えながら、握り部35を右手で上方に引き上げていく。すると、握り部35を上方に引き上げていく力が、左右のリンク部材30,31に同時に伝達されることにより、スライド部材21,21が、これに伴って上方にスライドしつつX型フレーム20が折り畳まれていく。
【0050】
このように、ベビーカーが幅方向に縮んで折り畳まれる。このとき、同時にベビーカーの前後方向でもλ型の連結体27に力が伝達されるので、前後方向にも長さが短くなっている。このようにしてベビーカーを
図3に示したように確実に折り畳むことができる。
【0051】
一方、
図3の折畳み姿勢から
図1の使用状態の姿勢となるように車体フレームを押し広げるには、これと反対の動作を行えば良い。すなわち、ハンドル12a、12bを例えば左手で押さえるようにして、右手を開閉装置Aの平板頭部34の上にあてがう。そして、この平板頭部34を掌全体で下方に押し下げれば良い。このように、掌で平板頭部34を下方に押し下げることにより、その力が一対のリンク部材30,31に伝達され、これまで高くなっていたリンク部材30、31の中央側の連結部分が低くされ、最終的には、
図2のようにリンク部材30,31が直線状に配置される。このようにリンク部材30,31が直線状に配置されることにより、ベビーカーは使用時のように拡開姿勢となる。以後、このような動作を繰り返すことにより、拡開と折畳みを変更することができる。
【0052】
なお、上述のように、折畳み姿勢時ではロックが作動しないことに限らず、折畳み姿勢時においてもロックが作動する機構としてもよい。
また、開閉装置Aは、上述のように、折畳み姿勢から拡開姿勢とする場合に、操作面部としての平板頭部34の天井部を操作者が掌により直接操作することに限らない。すなわち、
図6に示すように、握り部35の下部にステップ44を延設し、このステップ44を操作者が足により踏み下ろす構成としても良い。このようにステップ44を踏み下ろす構成とした場合であっても、ベビーカーの折畳み姿勢への操作と、拡開姿勢への操作とを、開閉装置Aにより行うことができ、それぞれの操作が容易に認識することができる。
【0053】
本実施例では、開閉装置Aが略左右対称形に形成されていることから、右手あるいは左手で操作したとしても、同じように操作することができる。
このような開閉装置Aが具備されたベビーカーでは、ベビーカーの方向変換などをする場合は、前輪14a、14bが前脚フレーム16,16の直線上に位置しているため、左右のハンドル12a、12bから前脚フレーム16,16を介して前輪14a、14bを直接軽く浮かせば軽い力で方向変換することができる。
【0054】
一方、本実施例のベビーカーでは、幼児を寝かせる背板19の角度を調整することができる。すなわち、背板19は、臀部位置より肩部に向けて上半部がそれ自身傾倒自在に構成されている。また、この背板19の肩部に作用する荷重は、
図2に示したように、背面側で略水平方向に引き回されたベルト47により支えられている。
【0055】
そして、ベルト47が中央のリクライニングバックル46内に挿通されることによりベルトは固定され、これにより、荷重が作用した際に左右のベルト47a、47bが緊張することになる。
【0056】
このようなリクライニングバックル46は、片手でバンドの引き出し操作を容易に行うことができるので、結果として、片手で背板19の角度を調整することができる。
このように、リクライニングバックル46を片手で操作してベルトの引き出し長さを調整することで背板19の傾倒角度を調整することができ、同様に片手でベルト47の固定を解除して、リクライニング姿勢(背板19の肩部が略180度に近い水平姿勢)とすることができる。
【0057】
これにより、幼児を略水平姿勢に寝かせたい場合には、幼児が寝る背板19を、水平方向に設定することができる。
一方、
図1のベビーカーは、幼児と操作者の視線がともに進行方向を向く、いわゆる背面式のベビーカーを示しているが、これを対面式に変更したいという要望がある。その場合には、
図7に示したように、着脱式の他の延長座席50を別途用意し、この延長座席50を既設の背板19上に着脱自在に装着すれば、ベビーカーを対面式に変更することができる。
【0058】
以下、
図7に示した延長座席50について説明する。
延長座席50は、背板19と同様に、クッション性に富んだ材質からなる。延長座席50は、幼児の頭部を覆う部分は勿論のこと、体全周を覆うように頭部側(
図7の右側)の周縁52が略U字状で、かつ頭部に近い程立ち上がって形成されている。そして、延長座席50の下面に設けた係止片53を、座席底部のパイプフレームに嵌合し、さらに係止片53の孔部を、
図1に示した係止突起55に係合させることで、ベビーカー本体に装着することができる。なお、
図7において符号57は、延長座席50を既設のクッション側に固定するための紐体を示したものである。
【0059】
このような延長座席50は、ベビーカー本体側に備えられた既設の背板19に対し、逆の姿勢で装着される。すなわち、延長座席50の紐体57側を、
図1に示したハンドル12a、12b側に配置して装着される。
【0060】
そして、延長座席50を装着して対面式とする場合には、予め背板19をフラットな姿勢にし、前脚フレーム16,16間に差し渡されたフロントガード61を取り外した後、この背板19の上に重ねるように延長座席50を装着する。これにより、対面式とすることができる。
【0061】
なお、一般にベビーカーにおいて対面式の要望が高いのは、特に低月齢の乳児に対し早期に寝かせた状態で、母親は乳児の顔を確認しながら寝かせつけたり、走行したりすることができることである。そこで、低月齢の乳児に対して用いる場合は、延長座席50を着用することが好ましい。これにより、母親は幼児の顔を確認しながら寝かせつけたり、走行したりすることができる。このような構造では、従来のいわゆる両対面仕様のベビーカーが、ハンドルを切り替えることで、背面仕様と対面仕様を1台で実現していたより操作性において有利である。すなわち、従来の両対面仕様のベビーカーは、長期間使用する背面使用をメイン設計され、対面仕様時はキャスターの位置が前方にあり、操作する際に小回りがしにくい状態となる弊害が生まれるのに対し、本実施例のベビーカーでは、操作時のバランス、操作力に違いもなく、安定した操作が可能となる。
【0062】
しかも、本実施例のベビーカーでは、背板19をフラットな状態にした場合に、その背板19におけるそれまでの背凭れにあたる部分の周縁71が立ち上がるので、延長座席50と合わせて幼児を全周に亘って保護する構造となるので、幼児の安全を図ることができる。
【0063】
ベビーカーを対面式、背面式で使用する際は、乳幼児が直射日光や風を受けないように、幌を装備することが望ましい。本実施例では、背面式、対面式にて幌の位置を前脚フレーム上部または中間部に取り付けが可能であり、対面式、背面式どちらの使用にも可能となっている。
【0064】
以上、本発明の一実施例に係る開閉装置およびこの開閉装置が具備されたベビーカーについて説明したが、本発明は前記実施例に何ら限定されない。
例えば、折畳み状態を保持するためのロック機構は、特に限定されるものではなく、他の様々な構成を適用することができる。
【0065】
また、前述の一実施例では、開閉装置Aの長孔39に4本の指を挿入する例を説明したが、長孔39に入れる指は4本に限定されない。
さらに、操作ボタン36は、親指により操作する位置に設けられることについて述べたが、これに限らず、例えば、握り部35の長孔39の内側に設けるようにしてもよい。この場合、操作ボタンの押圧操作は、長孔39に挿通された親指以外の指(例えば、人指し指)などにより行われるようにすることが望ましい。