【実施例】
【0015】
本発明による実施例に係る活性炭スラリ化装置及び方法について、図面を参照して説明する。
図1は、実施例に係る活性炭スラリ化装置の概略図である。
図1に示すように、本実施例に係る活性炭スラリ化装置10は、有害物質(例えばPCB)を吸着した活性炭をスラリ化処理する活性炭スラリ化装置であって、有害物質を吸着した粒状活性炭11Aに水12を供給した後に粉砕手段で粉砕する粉砕手段19と、粉砕した粒状活性炭を一次スラリ化粒状活性炭13Aとする第1の一次スラリ化槽14Aと、第1の一次スラリ化槽14A内の一次スラリ化粒状活性炭13Aのスラリ状態を監視する第1のスラリ監視手段15Aと、一次スラリ化粒状活性炭13Aの微粒度(固形物濃度、油分濃度、粒度等)に応じて、一次スラリ化粒状活性炭13Aに添加剤21を供給する第1の添加剤供給手段である添加剤タンク22Aと、有害物質を吸着した微粉末活性炭11Bに水12を供給して一次スラリ化微粉末活性炭13Bとする第2の一次スラリ化槽14Bと、第2の一次スラリ化槽14B内の一次スラリ化微粉末活性炭13Bのスラリ状態を監視する第2のスラリ監視手段15Bと、一次スラリ化微粉末活性炭13Bの微粒度(固形物濃度、油分濃度、粒度等)に応じて、一次スラリ化微粉末活性炭13Bに添加剤21を供給する第2の添加剤供給手段である添加剤タンク22Bと、添加剤を供給する前に設けられ、一次スラリ化粒状活性炭13Aと一次スラリ化微粉末活性炭13Bとを混合して混合スラリ化物23とする混合部24と、添加物を添加した混合スラリ化物23を乳化処理する混合攪拌手段であるラインミキサ25と、前記ラインミキサ25で混合された乳化スラリ化物26の乳化状態を保持する二次スラリ化槽27と、を具備するものである。
図中、V
1〜V
4はバルブ、P
1〜P
5はポンプを図示する。
【0016】
本発明では、2種類の粒径の異なる粒状活性炭11Aと微粉末活性炭11Bとを、各々一次スラリ槽14A、14Bでスラリ化させ、その後混合した後に、添加剤タンク22A、22Bからそのスラリの状態に応じて、添加剤21A、21Bを添加している。その後、添加剤21A、21Bが添加された混合スラリ化物23をラインミキサ25に導入し、ここで乳化させることで、良好な乳化状態の乳化スラリ28としている。この乳化スラリ28は良好なエマルジョンを生成するので、水熱酸化分解装置120に供給する際における供給通路及びポンプでの閉塞が発生することが防止される。
【0017】
ここで粒状活性炭11Aは、3〜8mmのペレット状活性炭であり、供給機31AによりラインL
1Aを介して粉砕機19に供給している。粉砕機19で粉砕された粒状活性炭は第1の一次スラリ化槽14Aに供給される。
また、微粉末活性炭11Bは、1〜100μmの微粉末状活性炭であり、供給機31BによりラインL
1Bを介して第2の一次スラリ化槽14Bに直接供給される。
なお、供給ラインL
1A、L
1Bには、供給水12が水ラインL
2A、L
2Bを介して所定量導入され、第1及び第2の一次スラリ化槽14A、14Bで一次スラリ化がなされる。
ここで、活性炭としては、例えばやし殻系活性炭、石炭系活性炭等を例示できる。
【0018】
活性炭に吸着される有害物質としては、例えばPCBやトリクロロベンゼン以外に農薬類、ダイオキシン類、洗浄有機溶剤、VOC(揮発性有機化合物)類等を例示できる。
【0019】
この第1及び第2の一次スラリ化槽14A、14Bで一次スラリ化の状態を、第1及び第2のスラリ監視手段15A、15Bで各々観察しており、図示しない制御手段にスラリ化情報である微粒度(固形物濃度、油分濃度、粒度等)が送られている。
【0020】
第1及び第2の一次スラリ化槽14A、14Bでスラリ化された一次スラリ化粒状活性炭13A、一次スラリ化微粉末活性炭13Bは、混合部24において混合され、混合スラリ化物23となる。この混合スラリ化物23に対して、図示しない制御手段に送られた微粒度(例えば固形物濃度、油分濃度、粒度等)に応じて、添加剤21Aを第1の添加剤供給手段の添加剤タンク22Aから添加する。
同様に、一次スラリ化微粉末活性炭13Bの微粒度(例えば固形物濃度、油分濃度、粒度等)に応じて、添加剤21Bを第2の添加剤供給手段の添加剤タンク22Bから添加する。
一次スラリ化粒状活性炭13Aと一次スラリ化微粉末活性炭13Bとの微粒度に応じて添加剤21A、21Bが添加された混合スラリ化物23は、混合攪拌手段25に送られここで乳化処理がなされる。
【0021】
この混合攪拌手段25は、混合スラリ化物23を乳化処理するものであれば、特に限定されるものではないが、例えばラインミキサ等の乳化促進手段を用いるのが好ましい。ラインミキサの回転条件としては、例えば1000〜3000rpm程度とし、スラリの完全乳化処理(水中油滴型(O/W型)エマルジョン生成)を図るようにしている。
【0022】
この前記混合攪拌手段25で混合された乳化スラリ化物26は、二次スラリ化槽27に送られ、ここで攪拌手段により二次スラリ化した乳化スラリ28の乳化状態が保持されている。
【0023】
この乳化スラリ28は良好な水中油滴型(O/W型)の乳化状態となっているので、水熱酸化分解装置120に送給する際における例えばラインやバルブ等の閉塞、詰まり等が防止される。
よって、本発明によれば、活性炭の乳化スラリ28が粒子分離や凝集して塊化せず分散性と流動性が良好となるので、安定して水熱酸化分解処理装置120への送給が可能となり、閉塞等のトラブルが発生しないので、活性炭の水熱酸化分解処理効率が向上する。
【0024】
ここで、本発明のように、2種類の異なる粒径の活性炭を一次スラリ化し、その後これらを混合物とし、この混合スラリ化物23に一次スラリ化の一次スラリ化粒状活性炭13A、一次スラリ化微粉末活性炭13Bの微粉度の状況に応じて、添加剤を添加し、その後ラインミキサで乳化させているので、得られた乳化スラリ化物26の性状が良好となる。
これは、微粉末のみの一次スラリ化微粉末活性炭13Bだけでは、粒度が細かいので、いくら添加剤を添加しても、スラリの流動性の向上が図れず、流れにくくなるという問題がある。
このため、2種類の異なる粒径の活性炭をスラリ化した一次スラリ化粒状活性炭13Aと一次スラリ化微粉末活性炭13Bとの混合物とすることで、大粒(粗粒)と小粒(微粉)との活性炭の良好な配合状態となり、ここに水が供給されて良好な混合スラリ23とすることができる。
【0025】
さらに、各一次スラリの微粒度微粒度(例えば固形物濃度、油分濃度、粒度等)に応じて、一次スラリ化粒状活性炭13A及び一次スラリ化微粉末活性炭13Bとの混合物に添加剤21A、21Bを添加するので、界面活性剤の添加効果がさらに発揮される。これにより、乳化が促進され、乳化スラリ28の供給停止を回避することができる。この結果、連続して水熱酸化分解装置に、乳化スラリ28を安定して供給することができる。
また、仮にスラリの供給が停止した場合でも、粗粒の粒状活性炭を混合しているので、スラリ送給の復帰の迅速化を図ることができる。
【0026】
ここで、一次スラリ化粒状活性炭13A及び一次スラリ化微粉末活性炭13Bとの混合割合は、通常1:1の混合割合とするのが好ましいが、スラリ監視手段15A、15Bの観察結果、スラリの状態を確認して、この比率を適宜変更するようにしてもよい。
また、二次スラリ化槽27から水熱酸化分解装置120に供給する乳化スラリ28の押出しのポンプP
5の負荷を確認しつつ添加剤の種類及び添加量を変更するようにしてもよい。
【0027】
スラリ監視手段15A、15Bのスラリの微粒度として、固形物濃度の場合には例えば40〜80%とするのが好ましい。油分濃度の場合には例えば5〜10%とするのが好ましい。粒度の場合には50%平均粒径が30〜100μmであり、粒径分布範囲は0.1〜200μmとするのが好ましい。なお、各々活性炭の種類や粒状活性炭の粉砕度合いに応じて、微粒度は適宜変更され、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
また、添加剤21A、21Bの種類は、一種ではなく処理物の分散性、流動性から使い分ける必要があり、2種類以上としてもよい。
【0029】
ここで、添加剤21A、21Bとしては、例えば非イオン系界面活性剤、脂肪酸系界面活性剤(例えばショ糖脂肪酸エステル)、高級アルコール系界面活性剤(例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル)、アルキルフェノール系界面活性剤(例えばポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル)等を例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
乳化スラリ28のスラリ性状例としては、活性炭の割合が50〜70重量%であり、これに添加剤として0.5〜3重量%添加するようにしている。なお、残りは水である。
【0031】
このような活性炭スラリ化装置10を用いて、有害物質(例えばPCB)吸着した活性炭11Aをスラリ化処理するには以下の工程により行うことで良好な乳化スラリを得ることができる。
1) 粉砕工程 この粉砕工程は、有害物質を吸着した粒状活性炭(3〜8mmペレット状)11Aに水12を供給した後に粉砕手段で粉砕する工程である。
2) 第1の一次スラリ化工程 この第1の一次スラリ化工程は、粉砕した粒状活性炭を一次スラリ化粒状活性炭13Aとする工程である。
3) 第2の一次一次スラリ化工程 この第2の一次スラリ化工程は、有害物質を吸着した微粉末活性炭(1〜100μm微粉状)11Bに水12を供給して一次スラリ化微粉末活性炭13Bとする工程である。
4) 混合工程 この混合工程は、一次スラリ化粒状活性炭13Aと一次スラリ化微粉末活性炭13Bとを混合部24で混合して混合スラリ化物23とする工程である。
5) 添加剤供給工程 この添加剤供給工程は、混合スラリ化物23に、第1の一次スラリ化槽14A内の一次スラリ化粒状活性炭13Aのスラリ状態と、第2の一次スラリ化槽14B内の一次スラリ化微粉末活性炭13Bのスラリ状態とに応じて、添加剤21A、21Bを供給する工程である。
6) 混合攪拌工程 この混合攪拌工程は、添加物21A、21Bを添加した混合スラリ化物23を乳化処理する混合攪拌であるラインミキサ25(例えば1000〜3000rpm)で乳化処理する工程である。
7) 二次スラリ化工程 この二次スラリ化工程は、前記混合攪拌手段であるラインミキサ25混合された乳化スラリ化物26を、攪拌手段で二次スラリ化(水中油滴型エマルジョン生成)状態を保持する工程である。この際、必要に応じて更なる添加剤、水等を添加するようにしてもよい。
【0032】
本発明によれば、粒状活性炭11Aと微粉末活性炭11Bとを各々スラリ化し、これを混合して、スラリ状況に応じて、添加剤21A、21Bを供給しつつ混合攪拌装置であるラインミキサ25で乳化するので、流動性の良好な乳化スラリ28を得ることができる。
この乳化スラリ28は良好な水中油滴型(O/W型)の乳化状態となっているので、水熱酸化分解装置120に送給する際の閉塞、詰まり等が防止され、常に安定したスラリ供給を行うことができる。
【0033】
図2は、有害物質を処理する水熱酸化分解装置の構成の概略図である。
次に、
図2を参照して、有害物質の水熱酸化分解処理の一例を説明するが、本願発明はこれに限定されるものではない。
図2に示すように、水熱酸化分解装置120は、筒形状の一次反応塔122と、油(又は有機溶剤)、PCB、水(H
2O)および水酸化ナトリウム(NaOH)の各処理液(油123a、PCBを含む乳化スラリ28、NaOH123c、水123d)を加圧する加圧ポンプ124と、当該水を予熱する予熱器125と、例えば配管を螺旋状に巻いた構成の二次反応塔126と、冷却器127及び減圧弁128とを備えてなるものである。また、減圧弁127の下流には、気液分離装置129、活性炭層130が配置されており、排ガス(CO
2 )131は煙突132から外部へ排出され、排水(H
2 O,NaCl)133は放出タンク134に溜められ、別途必要に応じて排水処理される。
【0034】
なお、油(又は有機溶剤)、PCB、H
2OおよびNaOHの各処理液(油123a、PCBを含む乳化スラリ28、NaOH123c、水123d)は、各処理液タンク135a〜135dから配管136a〜136d及びエジェクタ等の混合器137を介してそれぞれ導入される。また、酸素(O
2)等の酸化剤は高圧酸素供給設備138により供給され、供給配管139は、一次反応塔122に対して直結されている。なお、油(又は有機溶剤)を入れるのは、特に高濃度のPCBの分解反応促進のためと、水熱酸化分解装置120の起動時において反応温度を最適温度まで昇温させるためである。また、処理液として上記PCB、H
2OおよびNaOHを混合させて一次反応塔122に投入するようにしてもよい。
【0035】
上記装置において、加圧ポンプ124による加圧により一次反応塔122内は、例えば26MPaまで昇圧される。また、予熱器125は、H
2Oを例えば300℃程度に予熱する。また、一次反応塔122内には酸素が噴出しており、内部の反応熱により380℃〜400℃まで昇温する。この段階までに、例えばPCBは、脱塩素反応および酸化分解反応を起こし、NaCl、CO
2およびH
2Oに分解されている。つぎに、冷却器127では、二次反応塔126からの流体を100℃程度に冷却すると共に後段の減圧弁128にて大気圧まで減圧する。そして、気液分離装置129によりCO
2および水蒸気と処理液とが分離され、CO
2および水蒸気は、活性炭層130を通過して環境中に排出される。
【0036】
このような水熱酸化分解装置120を用いて有害物質であるPCBを含む乳化スラリ28を処理することで、PCBが脱塩素化されビフェニル((C
6H
5)
2 )等の脱塩素化物とされ、該ビフェニルが酸化剤等の作用によりCO
2、H
2O等へと完全無害化がなされている。
【0037】
よって、本発明によれば、PCB等の有害物質を吸着した活性炭(粒状活性炭11A,微粉松活性炭11B)を、活性炭スラリ化装置10でPCBを含む良好な乳化状態の乳化スラリ28とし、このPCB含む乳化スラリ28を水熱酸化分解装置120に粒子分離や凝集して塊化せずに、安定した活性炭の無害化を図ることができる。