(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ループ状電極及び前記グランド電極のうち少なくとも一方が前記プリント配線基板の内部に形成されていること、を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の無線ICチップ付きプリント配線基板。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る無線ICチップ付きプリント配線基板及び電子機器の実施例について添付図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部品、部分は同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
(第1実施例、
図1及び
図2参照)
図1に第1実施例を示す。この無線ICデバイスは、所定周波数の送受信信号を処理する無線ICチップ5と、該無線ICチップ5を実装したプリント配線回路基板20と、該回路基板20に形成されたグランド電極21及びループ状電極22とで構成されている。グランド電極21及びループ状電極22は、それぞれプリント配線回路基板20の主面上に導体ペーストの塗布や、回路基板20上に設けた金属箔をエッチングすることなどで設けられている。
【0017】
無線ICチップ5は、クロック回路、ロジック回路、メモリ回路などを含み、必要な情報がメモリされており、
図2に示すように、裏面に入出力端子電極6,6及び実装用端子電極7,7が設けられている。入出力端子電極6,6がループ状電極22の両端に設けた接続用電極22a,22bに金属バンプ8にて電気的に接続されている。また、回路基板20上には一対の接続用電極22c,22dが設けられ、無線ICチップ5の端子電極7,7がこの接続用電極22c,22dに金属バンプ8を介して電気的に接続されている。
【0018】
ループ状電極22はグランド電極21のエッジ部に対して水平方向に近接して設けられ、この両者は電界により結合している。即ち、ループ状電極22をグランド電極21と同一面上で近接させることで、ループ状電極22から垂直方向にループ状の磁界H(
図1(A)の点線参照)が発生し、その磁界Hがグランド電極21に対して垂直に交わることによってグランド電極21のエッジ部にループ状の電界E(
図1(A)の一点鎖線参照)が励振される。このループ状電界Eによりさらにループ状磁界Hが誘起されることにより、ループ状電界Eとループ状磁界Hとがグランド電極21の全面に広がっていき、高周波信号を空中に放射する。このようにグランド電極21とループ状電極22とを同一主面上に近接して、かつ、絶縁状態で配置することによって、両者を確実に電磁界結合させることができ、放射特性が向上する。
【0019】
以上のごとくループ状電極22がグランド電極21と電磁界により結合することにより、リーダライタから放射されてグランド電極21で受信された高周波信号がループ状電極22を介して無線ICチップ5に供給され、無線ICチップ5が動作する。一方、無線ICチップ5からの応答信号がループ状電極22を介してグランド電極21に伝達され、グランド電極21からリーダライタに放射される。
【0020】
グランド電極21は本無線ICデバイスが収容される電子機器のプリント配線回路基板20に既設のものを利用してもよい。あるいは、電子機器に搭載されている他の電子部品のグランド電極として使用されるものである。従って、この無線ICデバイスにおいては、専用のアンテナを作製する必要がなく、それを設置するスペースも必要としない。しかも、グランド電極21は大きなサイズで形成されているため、放射利得が向上する。
【0021】
また、ループ状電極22は、その長さ、電極幅及びグランド電極21との間隔などを調整することで、無線ICチップ5とグランド電極21とのインピーダンスの整合をとることができる。
【0022】
(第2実施例、
図3参照)
図3に第2実施例を示す。この無線ICデバイスは、基本的には前記第1実施例と同様の構成からなり、グランド電極21及びループ状電極22をプリント配線回路基板20の裏面に形成したものである。回路基板20の表面には接続用電極24a〜24dが形成されており、ループ状電極22の両端部とは接続用電極24a,24bがビアホール導体23を介して電気的に接続されている。接続用電極24a〜24dは
図1に示した接続用電極22a〜22dに相当するもので、無線ICチップ5の端子電極6,6,7,7(
図2参照)に金属バンプ8を介して電気的に接続されている。
【0023】
グランド電極21とループ状電極22との結合状態は前記第1実施例と同様であり、本第2実施例の作用効果は第1実施例と同様である。特に、回路基板20の表面に他の電子部品を実装するスペースを大きく設定できる。
【0024】
(第3実施例、
図4参照)
図4に第3実施例を示す。この無線ICデバイスは、ループ状電極25をプリント配線回路基板20の表面に設けた接続用電極25a,25bとビアホール導体28,28と内部電極29とで形成したものである。このループ状電極25は回路基板20の裏面に設けたグランド電極21と電界結合している。接続用電極25a,25bと接続用電極25c,25dとが無線ICチップ5の端子電極6,6,7,7(
図2参照)と金属バンプ8を介して電気的に接続されている。
【0025】
ループ状電極25はグランド電極21に対して垂直方向に近接して設けられ、この両者は電界により結合している。即ち、ループ状電極25からは磁束がグランド電極21の面付近に発生し、グランド電極21からはその磁界と直交する電界が発生する。これにより、グランド電極21に電界ループが励振され、この電界ループにより発生した磁界ループがグランド電極21の全面に広がっていき、高周波信号を空中に放射する。このようにグランド電極21に対してループ状電極25を垂直方向に近接して、かつ、絶縁状態で配置することにより、ループ状電極25の配置(即ち、無線ICチップ5の配置)の自由度が大きくなる。
【0026】
本第3実施例の動作は前記第1実施例と基本的に同様であり、その作用効果も第1実施例で説明したとおりである。特に、ループ状電極25をプリント配線回路基板20の内部に形成することにより、外部からの磁界の侵入による妨害などが減少する。グランド電極21を回路基板20の内部に形成してもよい。この場合には、回路基板20の表裏面に大きな空きスペースができるので、他の配線を形成したり、電子部品を実装することにより集積密度を高めることができる。
【0027】
(第4実施例、
図5参照)
図5に第4実施例を示す。この無線ICデバイスは、プリント配線回路基板20の表面に設けたグランド電極21の一側部に切欠き21aを形成することによりループ状電極31を設けたもので、接続用電極31a,31bが無線ICチップ5の入出力端子電極6,6(
図2参照)と金属バンプ8を介して電気的に接続されている。また、回路基板20の表面に形成した接続用電極31c,31dが無線ICチップ5の実装用端子電極7,7と金属バンプ8を介して電気的に接続されている。
【0028】
本第4実施例において、ループ状電極31はグランド電極21と電気的に導通状態で結合し、このループ状電極31が介在することで無線ICチップ5とグランド電極21とが結合する。第4実施例の動作は前記第1実施例と基本的に同様であり、その作用効果も第1実施例で説明したとおりである。
【0029】
(第5実施例、
図6参照)
図6に第5実施例を示す。この無線ICデバイスは、基本的には前記第4実施例と同様に、グランド電極21とループ状電極32とを電気的に導通状態で結合させたものである。詳しくは、ループ状電極32は、プリント配線回路基板20の表面に設けた接続用電極33a,33bとビアホール導体34,34とで形成されている。グランド電極21は回路基板20の裏面に形成されており、ビアホール導体34,34の上端が接続用電極33a,33bと電気的に接続され、下端がグランド電極21と電気的に接続されている。そして、接続用電極33a,33bと接続用電極33c,33dとが無線ICチップ5の端子電極6,6,7,7(
図2参照)と金属バンプ8を介して電気的に接続されている。
【0030】
本第5実施例において、ループ状電極32はグランド電極21と電気的に導通状態で結合し、このループ状電極32が介在することで無線ICチップ5とグランド電極21とが結合する。第5実施例の動作は前記第1実施例と基本的に同様であり、その作用効果も第1実施例で説明したとおりである。
【0031】
(第6実施例、
図7参照)
図7に第6実施例を示す。この無線ICデバイスは、無線ICチップ5を給電回路基板10に搭載して電磁結合モジュール1を構成し、該電磁結合モジュール1をプリント配線回路基板20に設けたループ状電極35に電気的に接続したものである。ループ状電極35は、前記第1実施例で示したループ状電極22と同様に、回路基板20の表面に設けたグランド電極21に近接して配置され、グランド電極21と磁界により結合している。
【0032】
無線ICチップ5は、
図2に示した入出力端子電極6,6が給電回路基板10の表面に設けた電極12a,12b(
図15及び
図16参照)に金属バンプ8を介して電気的に接続され、実装用端子電極7,7が電極12c,12dに金属バンプ8を介して電気的に接続されている。さらに、給電回路基板10の表面と無線ICチップ5の裏面との間には両者の接合強度を向上させる効果も有する保護膜9が設けられている。
【0033】
給電回路基板10は、インダクタンス素子を有する共振回路(
図7では省略)を内蔵したもので、裏面には外部電極19a,19b(
図15及び
図16参照)が設けられ、表面には接続用電極12a〜12d(
図15及び
図16参照)が形成されている。外部電極19a,19bは基板10に内蔵された共振回路と電磁界結合し、ループ状電極35の接続用電極35a,35bとは図示しない導電性接着剤を介して電気的に導通状態で接続されている。なお、この電気的な接続には半田などを用いてもよい。
【0034】
即ち、給電回路基板10には所定の共振周波数を有する共振回路が内蔵されており、無線ICチップ5から発信された所定の周波数を有する送信信号を外部電極19a,19b及びループ状電極35を介してグランド電極21に伝達し、かつ、グランド電極21で受けた信号から所定の周波数を有する受信信号を選択し、無線ICチップ5に供給する。それゆえ、この無線ICデバイスは、グランド電極21で受信された信号によって無線ICチップ5が動作され、該無線ICチップ5からの応答信号がグランド電極21から外部に放射される。
【0035】
前記電磁結合モジュール1にあっては、給電回路基板10の裏面に設けた外部電極19a,19bが、基板10に内蔵された共振回路と電磁界結合するとともに、アンテナとして機能するグランド電極21と電界結合しているループ状電極35と電気的に導通している。電磁結合モジュール1としては比較的サイズの大きいアンテナ素子を別部品として搭載する必要はなく、小型に構成できる。しかも、給電回路基板10も小型化されているので、無線ICチップ5はこのような小型の給電回路基板10に搭載すればよく、従来から広く使用されているIC実装機などを用いることができ、実装コストが低減する。また、使用周波数帯を変更するに際しては、共振回路の設計を変更するだけでよい。
【0036】
なお、給電回路基板10内に形成される素子としては、インダクタンス素子のみでもよい。インダクタンス素子は無線ICチップ5と放射板(グランド電極21)とのインピーダンス整合機能を有している。
【0037】
(第7実施例、
図8参照)
図8に第7実施例を示す。この無線ICデバイスは、前記第6実施例と同様に、無線ICチップ5を給電回路基板10に搭載して電磁結合モジュール1を構成し、該電磁結合モジュール1をプリント配線回路基板20に設けたループ状電極36に電気的に接続したものである。ループ状電極36は、前記第4実施例で示したループ状電極31と同様に、グランド電極21の一側部に切欠き21aを形成することによりループ状電極としたもので、接続用電極36a,36bが給電回路基板10の裏面に設けた外部電極19a,19bと図示しない導電性接着剤を介して電気的に導通状態で接続されている。なお、本第7実施例における給電回路基板10の構成、作用は前記第6実施例と同様であり、ループ状電極36の作用は前記第4実施例と同様である。
【0038】
(第8実施例、
図9参照)
図9に第8実施例におけるプリント配線回路基板40を分解した状態で示す。この回路基板40は複数の誘電体層又は磁性体層を積層してなる多層基板であり、表面の第1層41A、第2層41B、第3層41C及び裏面の第4層41D上にループ状電極51A〜51Dを形成したものである。
【0039】
各ループ状電極51A〜51Dは、前記第4実施例(
図5参照)と同様に、各層41A〜41D上に設けたグランド電極50A〜50Dに切欠き50a〜50dを形成することにより設けたものである。第1層41A上に設けたループ状電極51Aの接続用電極52a,52bが、無線ICチップ5の入出力端子電極6,6と電気的に接続され、あるいは、給電回路基板10(電磁結合モジュール1)と電磁界結合している。また、各グランド電極50A〜50Dはビアホール導体によって電気的に導通状態としてもよい。なお、アンテナとして機能する電極は必ずしもグランド電極である必要はない。
【0040】
ところで、
図1を参照して説明すると、ループ状電極22はグランド電極21をアンテナとして機能させるために用いており、ループ状電極22もインピーダンス変換の機能を有している。具体的には、ループ状電極22はその接続用電極22a,22bの間でループ形状に起因するインピーダンスを有している。そして、電極22a,22bと結合される無線ICチップ5又は給電回路基板10から送信される信号に相当する電流はループ形状に沿って流れる。
【0041】
接続用電極22a,22bにおけるインピーダンス(Z)は実数部(R)と虚数部(X)の和で表され、ループ状電極22の形状が小さくなると電流経路長も短くなるため、ループ状電極22で発生する抵抗(R)も小さくなる。電流経路長が短くなると、その電流により発生するインダクタンス(L)によるインピーダンス(X=ωL)も小さくなる。携帯電話などの機器の小型化などでループ状電極22の配置スペースが小さくなった場合、ループ状電極22のインピーダンスが小さくなりすぎてしまい、無線ICチップや給電(共振/整合)回路とのインピーダンスの差が大きくなり、無線ICチップ5や給電回路から放射板へ十分な電力の伝達ができなくなるという問題が発生する。
【0042】
この問題を解決するためには、ループ状電極22のインピーダンス(Z)を大きくする必要があり、実数部(R)又は虚数部(X)を大きくする必要がある。第8実施例から以下に示す第13実施例はこのような問題を解決するためのものである。従って、本第8実施例はグランド電極50Aがアンテナとして機能して前記第1実施例と同じ作用効果を奏するとともに、特に、第1層41A上に形成されて無線ICチップ5又は給電回路基板10と結合されるループ状電極51Aを他のループ状電極51B〜51Dよりも大きなサイズとしているため、通信時にループ状電極51Aに流れる電流経路が長くなり、抵抗(R)が大きくなるとともに実数部(R)が大きくなり、結果的にインピーダンス(Z)を大きくすることができる。
【0043】
(第9実施例、
図10参照)
図10に第9実施例におけるプリント配線回路基板40を分解した状態で示す。本第9実施例は、前記第8実施例と基本的に同様の構成を有しており、異なるのは、無線ICチップ5又は給電回路基板10と結合される接続用電極54a,54b(第1層41A上に形成されている)を第2層41B上に設けたループ状電極51Bにビアホール導体54cにて電気的に接続し、該ループ状電極51Bを他のループ状電極51A,51C,51Dよりも大きなサイズとした点にある。従って、本第9実施例の作用効果は第8実施例と同様である。
【0044】
(第10実施例、
図11参照)
図11に第10実施例におけるプリント配線回路基板20を示す。この回路基板20の表面に設けたグランド電極21に切欠き21bを形成するとともに、該切欠き21bにループ状電極31を設け、かつ、該ループ状電極31の内側にミアンダ状の整合電極37を配置したものである。整合電極37の端部である接続用電極37a,37bに無線ICチップ5又は給電回路基板10が結合される。
【0045】
本第10実施例においても、グランド電極21がアンテナとして機能し、前記第1実施例と同様の作用効果を奏する。しかも、ループ状電極31の内側に配置したミアンダ状の整合電極37によってループ状電極31の電流経路が長くなり、抵抗(R)が大きくなるとともに実数部(R)が大きくなり、結果的にインピーダンス(Z)を大きくすることができる。なお、
図11における整合電極37の形状は、一例であり、切欠き21bの形状や大きさなどに合わせて変更しても構わない。
【0046】
(第11実施例、
図12参照)
図12に第11実施例におけるプリント配線回路基板20の要部を示す。本第11実施例は、前記第10実施例と基本的に同様の構成を有しており、異なるのは、内側にミアンダ状の整合電極37を配置したループ状電極31をグランド電極21の切欠き21cに設け、ループ状電極31を前記第1実施例と同様にグランド電極21と電界により結合させた点にある。
【0047】
整合電極37の端部である接続用電極37a,37bに無線ICチップ5又は給電回路基板10が結合される点も第10実施例と同様であり、グランド電極21がアンテナとして機能し、前記第1実施例及び第10実施例と同様の作用効果を奏する。
【0048】
(第12実施例、
図13参照)
図13に第12実施例におけるプリント配線回路基板40を分解した状態で示す。この回路基板40は、前記第8実施例(
図9参照)と同様に、複数の誘電体層又は磁性体層を積層してなる多層基板であり、表面の第1層41A、第2層41B、第3層41C及び裏面の第4層41D上にループ状電極51A〜51Dを形成したものである。
【0049】
ループ状電極51A〜51Dは、各層41A〜41D上に設けたグランド電極50A〜50Dに切欠き50a〜50dを形成することにより設けたものである。第1層41A上に設けた接続用電極55a、55bが、無線ICチップ5の入出力端子電極6,6と電気的に接続され、あるいは、給電回路基板10(電磁結合モジュール1)と電磁界結合している。また、各グランド電極50A〜50Dはビアホール導体によって電気的に導通状態としてもよい。なお、アンテナとして機能する電極は必ずしもグランド電極である必要はない。
【0050】
さらに、ループ状電極51B,51Cの内側に整合電極56a,56b,57a,57bが配置されている。接続用電極55aはビアホール導体58aを介して整合電極57aの一端に接続され、該整合電極57aの他端はビアホール導体58bを介して整合電極56aの一端に接続されている。該整合電極56aの他端はビアホール導体58cを介してグランド電極50Aの一端50Aaに接続されている。また、接続用電極55bはビアホール導体58dを介して整合電極57bの一端に接続され、該整合電極57bの他端はビアホール導体58eを介して整合電極56bの一端に接続されている。該整合電極56bの他端はビアホール導体58fを介してグランド電極50Aの他端50Abに接続されている。
【0051】
本第12実施例においても、グランド電極50Aがアンテナとして機能し、前記第1実施例と同様の作用効果を奏する。しかも、ループ状電極51B,51Cの内側に配置した整合電極56a,56b,57a,57bによってループ状電極51Aの電流経路が長くなり、抵抗(R)が大きくなるとともに実数部(R)が大きくなり、結果的にインピーダンス(Z)を大きくすることができる。特に、本第12実施例では、整合電極56a,56b,57a,57bが多層構造にて形成されているため、小型であっても電流経路長を長くすることができ、比較的大きなインピーダンス(Z)を得ることができる。
【0052】
(第13実施例、
図14参照)
図14に第13実施例におけるプリント配線回路基板40を分解した状態で示す。この回路基板40は、前記第8及び第12実施例と同様に、複数の誘電体層又は磁性体層を積層してなる多層基板であり、表面の第1層41A、第2層41B、第3層41C及び裏面の第4層41D上にループ状電極51A〜51Dを形成したものである。
【0053】
ループ状電極51A〜51Dは、各層41A〜41D上に設けたグランド電極50A〜50Dに切欠き50a〜50dを形成することにより設けたものである。第1層41A上に設けた接続用電極61とグランド電極50Aの一端50Aaとが、無線ICチップ5の入出力端子電極6,6と電気的に接続され、あるいは、給電回路基板10(電磁結合モジュール1)と電磁界結合している。また、各グランド電極50A〜50Dはビアホール導体によって電気的に導通状態としてもよい。なお、アンテナとして機能する電極は必ずしもグランド電極である必要はない。
【0054】
さらに、ループ状電極51B,51Cの内側に整合電極62,63が配置されている。接続用電極61はビアホール導体64aを介して整合電極63の一端に接続され、該整合電極63の他端はビアホール導体64bを介して整合電極62の一端に接続されている。該整合電極62の他端はビアホール導体64cを介してグランド電極50Aの他端50Abに接続されている。
【0055】
本第13実施例においても、グランド電極50Aがアンテナとして機能し、前記第1実施例と同様の作用効果を奏する。しかも、ループ状電極51B,51Cの内側に配置した整合電極62,63によってループ状電極51Aの電流経路が長くなり、抵抗(R)が大きくなるとともに実数部(R)が大きくなり、結果的にインピーダンス(Z)を大きくすることができる。特に、本第13実施例では、整合電極62,63が多層構造にて形成されているため、前記第12実施例と同様に小型であっても電流経路長を長くすることができ、比較的大きなインピーダンス(Z)を得ることができる。
【0056】
(共振回路の第1例、
図15参照)
給電回路基板10に内蔵された共振回路の第1例を
図15に示す。この給電回路基板10は、誘電体からなるセラミックシート11A〜11Hを積層、圧着、焼成したもので、シート11Aには接続用電極12a,12bと電極12c,12dとビアホール導体13a,13bが形成され、シート11Bにはキャパシタ電極18aと導体パターン15a,15bとビアホール導体13c〜13eが形成され、シート11Cにはキャパシタ電極18bとビアホール導体13d〜13fが形成されている。さらに、シート11Dには導体パターン16a,16bとビアホール導体13e,13f,14a,14b,14dが形成され、シート11Eには導体パターン16a,16bとビアホール導体13e,13f,14a,14c,14eが形成され、シート11Fにはキャパシタ電極17と導体パターン16a,16bとビアホール導体13e,13f,14f,14gが形成され、シート11Gには導体パターン16a,16bとビアホール導体13e,13f,14f,14gが形成され、シート11Hには導体パターン16a,16bとビアホール導体13fが形成されている。
【0057】
以上のシート11A〜11Hを積層することにより、ビアホール導体14c,14d,14gにて螺旋状に接続された導体パターン16aにてインダクタンス素子L1が構成され、ビアホール導体14b,14e,14fにて螺旋状に接続された導体パターン16bにてインダクタンス素子L2が構成され、キャパシタ電極18a,18bにてキャパシタンス素子C1が構成され、キャパシタ電極18b,17にてキャパシタンス素子C2が構成される。
【0058】
インダクタンス素子L1の一端はビアホール導体13d、導体パターン15a、ビアホール導体13cを介してキャパシタ電極18bに接続され、インダクタンス素子L2の一端はビアホール導体14aを介してキャパシタ電極17に接続される。また、インダクタンス素子L1,L2の他端は、シート11H上で一つにまとめられ、ビアホール導体13e、導体パターン15b、ビアホール導体13aを介して接続用電極12aに接続されている。さらに、キャパシタ電極18aはビアホール導体13bを介して接続用電極12bに電気的に接続されている。
【0059】
そして、接続用電極12a,12bが金属バンプ8を介して無線ICチップ5の端子電極6,6と電気的に接続される。電極12c,12dは無線ICチップ5の端子電極7,7に接続される。
【0060】
また、給電回路基板10の裏面には外部電極19a,19bが導体ペーストの塗布などで設けられ、外部電極19aはインダクタンス素子L(L1,L2)と磁界により結合し、外部電極19bはビアホール導体13fを介してキャパシタ電極18bに電気的に接続される。外部電極19a,19bはループ状電極35又は36の接続用電極35a,35b又は36a,36bに電気的に接続されることは前述のとおりである。
【0061】
なお、この共振回路において、インダクタンス素子L1,L2は2本の導体パターン16a,16bを並列に配置した構造としている。2本の導体パターン16a,16bはそれぞれ線路長が異なっており、異なる共振周波数とすることができ、無線ICデバイスを広帯域化できる。
【0062】
なお、各セラミックシート11A〜11Hは磁性体のセラミック材料からなるシートであってもよく、給電回路基板10は従来から用いられているシート積層法、厚膜印刷法などの多層基板の製作工程により容易に得ることができる。
【0063】
また、前記シート11A〜11Hを、例えば、ポリイミドや液晶ポリマなどの誘電体からなるフレキシブルなシートとして形成し、該シート上に厚膜形成法などで電極や導体を形成し、それらのシートを積層して熱圧着などで積層体とし、インダクタンス素子L1,L2やキャパシタンス素子C1,C2を内蔵させてもよい。
【0064】
前記給電回路基板10において、インダクタンス素子L1,L2とキャパシタンス素子C1,C2とは平面透視で異なる位置に設けられ、インダクタンス素子L1,L2により外部電極19aと磁界的に結合し、外部電極19bはキャパシタンス素子C1を構成する一方の電極となっている。
【0065】
従って、給電回路基板10上に前記無線ICチップ5を搭載した電磁結合モジュール1は、図示しないリーダライタから放射される高周波信号(例えば、UHF周波数帯)をグランド電極21で受信し、ループ状電極35又は36を介して外部電極19a,19bと磁界結合及び電界結合している共振回路を共振させ、所定の周波数帯の受信信号のみを無線ICチップ5に供給する。一方、この受信信号から所定のエネルギーを取り出し、このエネルギーを駆動源として無線ICチップ5にメモリされている情報を、共振回路にて所定の周波数に整合させた後、外部電極19a,19b及びループ状電極35又は36を介してグランド電極21に伝え、該グランド電極21からリーダライタに送信、転送する。
【0066】
給電回路基板10においては、インダクタンス素子L1,L2とキャパシタンス素子C1,C2で構成された共振回路にて共振周波数特性が決定される。グランド電極21から放射される信号の共振周波数は、共振回路の自己共振周波数によって実質的に決まる。
【0067】
ところで、共振回路は無線ICチップ5のインピーダンスとグランド電極21のインピーダンスを整合させるためのマッチング回路を兼ねている。給電回路基板10は、インダクタンス素子やキャパシタンス素子で構成された共振回路とは別に設けられたマッチング回路を備えていてもよい(この意味で、共振回路を整合回路とも称する)。共振回路にマッチング回路の機能をも付加しようとすると、共振回路の設計が複雑になる傾向がある。共振回路とは別にマッチング回路を設ければ、共振回路、マッチング回路をそれぞれ独立して設計できる。なお、前記ループ状電極35,36はインピーダンス整合機能や共振回路としての機能を備えていてもよい。その場合、ループ状電極の形状や放射板となるグランド電極のサイズなども考慮して給電回路基板10内の共振回路(整合回路)の設計を行うことにより、放射特性を向上させることができる。
【0068】
(共振回路の第2例、
図16参照)
給電回路基板70に設けた共振回路の第2例を、
図16に示す。この給電回路基板70は、フレキシブルなPETフィルムなどからなり、基板70上に、インダクタ素子Lを構成する螺旋形状の導体パターン72と、キャパシタンス素子Cを構成するキャパシタ電極73とを形成したものである。導体パターン72及びキャパシタ電極73から引き出された電極12a,12bは無線ICチップ5の端子電極6,6と電気的に接続される。また、基板70上に形成された電極12c,12dは無線ICチップ5の端子電極7,7に電気的に接続される。
【0069】
給電回路基板70ではインダクタンス素子Lとキャパシタンス素子Cとで共振回路を構成し、それぞれに対向する前記電極35a,35b又は前記電極36a,36bとの間で磁界結合及び電界結合し、所定周波数の高周波信号を送受信する点は前記第1例と同様である。特に、第2例では給電回路基板70がフレキシブルなフィルムから構成されているため、電磁結合モジュール1が低背化される。また、インダクタンス素子Lに関しては、導体パターン72の線幅や線間隔を変更することでインダクタンス値を変更し、共振周波数を微調整することができる。
【0070】
なお、本第2例においても、インダクタンス素子Lは2本の導体パターン72を螺旋形状に配置し、螺旋中心部において2本の導体パターン72を接続している。これらの2本の導体パターン72はそれぞれ異なるインダクタンス値L1,L2を有しており、それぞれの共振周波数を異なる値に設定することができ、前記第1例と同様に無線ICデバイスの使用周波数帯を広帯域化することができる。
【0071】
(電子機器、
図17及び
図18参照)
次に、本発明に係る電子機器の一実施例として携帯電話を説明する。
図17に示す携帯電話80は、複数の周波数に対応しており、地上波デジタル信号、GPS信号、WiFi信号、CDMAやGSM(登録商標)などの通信用信号が入力される。
【0072】
筐体81内には、
図18に示すように、プリント配線回路基板20が設置されている。このプリント配線回路基板20には、無線通信用回路90と電磁結合モジュール1とが配置されている。無線通信用回路90は、IC91と回路基板20に内蔵されたバラン92とBPF93とコンデンサ94とで構成されている。無線ICチップ5を搭載した給電回路基板10は、プリント配線回路基板20上に設けたグランド電極21と結合しているループ状電極(例えば、第6実施例では符号35参照、第7実施例では符号36参照)上に搭載され、無線ICデバイスを構成している。
【0073】
(他の実施例)
なお、本発明に係る無線ICチップ付きプリント配線基板及び電子機器は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0074】
例えば、共振回路は様々な構成のものを採用できる。前記実施例に示した外部電極や給電回路基板の材料はあくまで例示であり、必要な特性を有する材料であれば、任意のものを使用することができる。また、無線ICの機能を給電回路基板に含めて無線ICと給電回路とを一つの基板に形成してもよい。これにより、無線ICデバイスを小型化、低背化することができる。
【0075】
前記第1〜5実施例において、無線ICチップに代えて第6及び第7実施例に示した電磁結合モジュール1を用いてもよい。
【0076】
無線ICチップを給電回路基板に実装するのに、金属バンプ以外の処理を用いてもよい。また、無線ICチップの電極と給電回路基板の接続用電極との間に誘電体を配置して該両電極を容量結合しても構わない。さらに、無線ICチップとループ状電極と、あるいは、給電回路基板とループ状電極とを容量結合しても構わない。
【0077】
また、無線ICデバイスが実装される機器は、携帯電話などの無線通信機器に限らず、グランド電極を有する回路基板を備えた種々の機器(例えば、テレビや冷蔵庫などの家電製品)であってもよい。