(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769654
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】バンプストッパ
(51)【国際特許分類】
F16F 9/58 20060101AFI20150806BHJP
F16F 9/38 20060101ALI20150806BHJP
B60G 7/04 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
F16F9/58 B
F16F9/38
B60G7/04
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-63048(P2012-63048)
(22)【出願日】2012年3月21日
(65)【公開番号】特開2013-194833(P2013-194833A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】福井 孝弘
【審査官】
岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−222223(JP,A)
【文献】
実開昭48−038538(JP,U)
【文献】
特開2007−057088(JP,A)
【文献】
特開2001−050329(JP,A)
【文献】
米国特許第06199844(US,B1)
【文献】
特開2004−360835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/58
F16F 9/38
B60G 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部と当該頂部の外周に設けた筒部とを備えたキャップ状であって緩衝器のシリンダ端に嵌合されるバンプストッパにおいて、上記筒部の内周に上記緩衝器のシリンダ端の外周を把持する複数の突起部を備え、少なくとも、上記頂部および上記筒部は合成樹脂材料で形成され、上記突起部は、上記筒部よりも柔軟な材料によって形成されることを特徴とするバンプストッパ。
【請求項2】
上記突起部は、合成樹脂材料で形成されるとともに、上記頂部および上記筒部と一体成型されることを特徴とする請求項1に記載のバンプストッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器のシリンダ端に取り付けられるバンプストッパの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から緩衝器には、バンプクッションラバーとバンプストッパとを設けられており、これらで緩衝器の最大収縮時に発生する衝撃を吸収するようにしている。具体的には、たとえば、緩衝器のロッド側にバンプクッションラバーを、シリンダ端部にバンプストッパとを設けていて、緩衝器の最大収縮時にバンプクッションラバーとバンプストッパとを衝合させてバンプクッションラバーを押し縮めながら最大収縮時に発生する衝撃を吸収するようになっている。
【0003】
バンプストッパは、具体的には、頂部にロッドの挿通を許容する孔を備えてキャップ状とされていて、シリンダ端部に被せることで当該シリンダ端に固定されるが、強固に固定することができるように、内方へ突出する複数の突起部を備えている。詳しくは、これら突起部でシリンダ外周を把持すると、バンプストッパが周方向に若干拡径してシリンダ端を強く締め付けることができ、これによってバンプストッパがシリンダ端に強固に固定することができるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−081075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなバンプストッパは、金属製とされるものが一般的であったが、近年では、車両に電子機器などが多く搭載されるようになってきていて、車両重量が増加する傾向にあるため、緩衝器に対しては徹底した軽量化が要求されるようになってきた。
【0006】
そのため、特開2005−188548号公報に開示されているようにバンプストッパを合成樹脂製として軽量化を図るようになってきている。このように、合成樹脂でバンプストッパを形成する場合、バンプクッションラバーとの衝突に対して充分な耐久性を備えている必要もあって、硬質な合成樹脂を使用することが要求される。
【0007】
しかしながら、硬質な合成樹脂でバンプストッパを形成する場合、金属製のバンプストッパとは異なって延性に乏しいため、バンプストッパの圧入代が大きすぎるとシリンダ端に嵌め込んだ際にバンプストッパが拡径しすぎて割れが生じてしまう恐れがある。
【0008】
そこで、本発明は、上記した問題を解決するために創案されたものであって、その目的とするところは、割れを生じることなく緩衝器のシリンダ端へ固定可能なバンプストッパを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明の課題解決手段は、頂部と当該頂部の外周に設けた筒部とを備えたキャップ状であって緩衝器のシリンダ端に嵌合されるバンプストッパにおいて、上記筒部の内周に上記緩衝器のシリンダ端の外周を把持する複数の突起部を備え、少なくとも、上記頂部および上記筒部は合成樹脂材料で形成され、上記突起部は、上記筒部よりも柔軟な材料によって形成されることを特徴とする。
【0010】
このバンプストッパをシリンダに固定しても、突起部が筒部よりも柔軟な材料で形成されていて突起部が圧縮変形して潰れることで、従来のバンプストッパに比較して筒部が拡径せずに済み、また、突起部が圧縮変形してシリンダの外周を締め付けるのでバンプストッパをシリンダ端へ強固に固定でき固定強度も満足させることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上より、本発明のバンプストッパによれば、割れを生じることなく緩衝器のシリンダ端へ固定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施の形態におけるバンプストッパの縦断面図である。
【
図2】一実施の形態におけるバンプストッパの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて説明する。一実施の形態のバンプストッパ1は、
図1および
図2に示すように、緩衝器DにシリンダCの端部に被せられる恰好で嵌合されている。
【0014】
そして、バンプストッパ1は、緩衝器DのロッドRの先端側に設けたバンプクッションラバーLに対向しており、緩衝器Dの最大収縮する際に上記バンプクッションラバーLと当接して緩衝器Dの最大収縮時に生じる衝撃を吸収緩和するものである。
【0015】
なお、緩衝器Dは、具体的には図示はしないが、シリンダCと、シリンダC内に摺動自在に挿入された図示しないピストンと、当該ピストンに連結されシリンダC内に移動自在に挿入されたロッドRとを備えて構成され、ロッドRがシリンダCから出没する際に所定の減衰力を発揮するようになっている。緩衝器Dは、シリンダC内にピストンが摺動自在に挿入されるインナーシリンダを備える複筒型緩衝器とされていてもよい。
【0016】
そして、バンプストッパ1は、
図1および
図2に示すように、シリンダCの端部に嵌合可能なように、頂部2と、頂部2の外周に設けた筒部3とを備えたキャップ状であって、筒部3の内周に内方へ突出するように設けた三つ以上の突起部4と、頂部2の中央に設けられて緩衝器DのロッドRの挿通を許容する挿通孔5と、頂部2のシリンダ側面に放射状に設けた三条のリブ6を備えて構成されている。突起部4の設置数は、二つ以上であれば何個でもよく、また、その周方向幅についても任意に設定することができ、リブ6の設置数についても二つ以上であればよい。
【0017】
また、頂部2および筒部3は、ともに、合成樹脂材料で形成されている。なお、頂部2と筒部3は、同じ合成樹脂材料で形成されずともよい。また、特に、頂部2は、バンプクッションラバーLと衝合するので、耐久性と高い強度を実現するべく、合成樹脂にガラス繊維や炭素繊維を混入させた強化合成樹脂材料で形成されてもよく、合成樹脂には、このような樹脂も含まれる。さらに、突起部4は、筒部3の合成樹脂材料よりも柔軟な材料で形成されている。
【0018】
この実施の形態では、具体的には、頂部2および筒部3は、同一の合成樹脂材料で形成され、突起部4は頂部2および筒部3よりも柔軟な合成樹脂材料で形成されており、バンプストッパ1を成形する型内に柔軟性が異なる二種類の合成樹脂材料を射出することで、筒部3と突起部4とが一体化されて一度に成形されるようになっている。
【0019】
なお、突起部4を、たとえば、波型のばね等として、バンプストッパ1を成形する型内に突起部4をインサートしておき、頂部2および筒部3を形作る合成樹脂材料を射出して筒部3と突起部4とが一体化されて一度に成形されるインサート成形してもよい。
【0020】
他方、バンプクッションラバーLは、
図1に示すように、合成樹脂やゴム等で筒状に形成され、外周部に設けた複数の外周側段部7と、内周部に設けた前記外周側段部7と軸方向に互い違いとなる内周側段部8とを備えて構成される。
【0021】
そして、このように構成されたバンプクッションラバーLとバンプストッパ1は、緩衝器Dが収縮して互いに接近し、バンプクッションラバーLの
図1中下端がバンプストッパ1の頂部2と衝合することで、緩衝器Dの最大収縮時の衝撃を吸収して緩和する。
【0022】
つまり、バンプクッションラバーLがバンプストッパ1に衝合して弾性変形することで、運動エネルギを弾性エネルギに変換して、緩衝器Dの最収縮時の衝撃を吸収緩和する。
【0023】
次に、上記のように構成されたバンプストッパ1をシリンダCの端部であるシリンダ端に嵌合する手順について説明する。まず、バンプストッパ1の筒部2の
図1中下端側からシリンダCの上端を挿入する。そうして、シリンダCをバンプストッパ1内の頂部2のシリンダ側面となる
図1中下面に設けたリブ6に当接するまで押し込んでいくと、突起部4がシリンダCによって押圧されて潰されるように変形し、シリンダCの外周を把持することになって、シリンダCに強固にバンプストッパ1を固定することができる。このように、シリンダCにバンプストッパ1を固定しても、突起部4が筒部3よりも柔軟な材料で形成されていて突起部4が圧縮変形して潰れることで、従来のバンプストッパに比較して筒部3が拡径せずに済み、また、突起部4が圧縮変形してシリンダCの外周を締め付けるのでバンプストッパ1をシリンダC端へ強固に固定でき固定強度も満足させることができる。
【0024】
よって、本発明のバンプストッパ1は、割れを生じることなく緩衝器CのシリンダC端へ強固に固定することができるのである。
【0025】
また、突起部4が合成樹脂材料で形成されるとともに、頂部2および筒部3と一体成型される場合には、型を利用した射出成型を利用することができ、加工コストが低減される。
【0026】
なお、突起部4を径方向に波状の帯環や帯状の波板などといった部材で形成される場合には、インサート成形することもでき、加工が容易となる。
【0027】
また、リブ6は、バンクストッパ1とバンプクッションラバーLとが衝合した際に、シリンダCの端部に固定されてロッドRの外周をシールするシールSとバンプクッションラバーLとの干渉を避けることができるのであれば、廃止することも可能である。
【0028】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のバンプストッパは、緩衝器に利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 バンプストッパ
2 頂部
3 筒部
4 突起部
C シリンダ
D 緩衝器