特許第5769666号(P5769666)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5769666-排ガス浄化用触媒 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769666
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/89 20060101AFI20150806BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20150806BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   B01J23/89 AZAB
   B01J37/04 101
   B01D53/86 222
【請求項の数】4
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2012-126860(P2012-126860)
(22)【出願日】2012年6月4日
(65)【公開番号】特開2013-248592(P2013-248592A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2014年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 悟
(72)【発明者】
【氏名】田辺 稔貴
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】三浦 真秀
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−075992(JP,A)
【文献】 特開2005−288307(JP,A)
【文献】 特開昭63−116744(JP,A)
【文献】 特開昭55−155739(JP,A)
【文献】 特開平07−068176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
B01D53/86,94
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理混合された第一触媒及び第二触媒を備えており、
前記第一触媒が、セリアを含有しないジルコニア系担体からなる第一担体と、該第一担体に担持されたパラジウム及び鉄とを備える触媒であり、
前記第二触媒が、アルミナ系担体、及び、アルミナ系担体とセリア−ジルコニア系複合酸化物担体との混合担体のうちのいずれか1種からなる第二担体と、該第二担体に担持されたパラジウムとを備える触媒であり、且つ
前記第一担体に担持されたパラジウムの量が、前記第一触媒及び前記第二触媒中のパラジウムの総量100質量部に対して30〜95質量部であること、
を特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記排ガス浄化触媒中のパラジウムの総量が、前記第一担体及び前記第二担体の総量100質量部に対して0.1〜10質量部であることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記第一担体に担持された前記鉄の量が、前記第一担体100質量部に対して0.02〜10質量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記第一触媒と前記第二触媒の含有割合が質量比([第一触媒]:[第二触媒])で10:90〜90:10であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジン等の内燃機関からの排ガス中に含まれる窒素酸化物(NO)等の有害成分を除去するために、従来から様々な排ガス浄化用触媒が用いられてきた。例えば、特開2005−185959号公報(特許文献1)においては、貴金属と、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びZnから選ばれる少なくとも一種以上の遷移金属化合物とを担体に担持してなり、貴金属と遷移金属化合物とが複合物を形成している排ガス浄化用触媒が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載のような従来の排ガス浄化用触媒においては、耐熱性が必ずしも十分なものではなく、高温に長期間晒された後の触媒活性の点では必ずしも十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−185959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分に優れた触媒活性と十分に高度な耐熱性とを有し、高温に長期間晒された後においても十分に高度な触媒活性を示すことが可能な排ガス浄化用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、先ず、上記特許文献1に記載のような従来の排ガス浄化用触媒について検討したところ、アルミナ又はセリア−ジルコニアを担体として該担体に活性成分として鉄とパラジウムを担持した触媒においては、耐熱性が必ずしも十分なものとならないことを見出した。これは、担体に担持されている鉄と、担体の金属成分とが高温(例えば800℃以上の温度)において反応して、パラジウムと鉄との相互作用が十分なものではなくなって、鉄とパラジウムとを担体に併せ担持することにより得られる効果(特性)が消失するためであると本発明者らは推察する。そして、このような知見に基いて、上記目的を達成すべく更に鋭意研究を重ねた結果、セリアを含有しないジルコニア系担体からなる第一担体と該第一担体に担持されたパラジウム及び鉄とを備える第一触媒、及び、アルミナ系担体、及び、アルミナ系担体とセリア−ジルコニア系複合酸化物担体との混合担体のうちのいずれか1種からなる第二担体と該第二担体に担持されたパラジウムとを備える第二触媒を備え、且つ、前記第一担体に担持されたパラジウムの量が、前記第一触媒及び前記第二触媒中のパラジウムの総量100質量部に対して30〜95質量部である排ガス浄化用触媒により、十分に優れた触媒活性と十分に高度な耐熱性とを有するものとすることが可能となって高温に長期間晒された後においても十分に高度な触媒活性を示すことが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の排ガス浄化用触媒は、物理混合された第一触媒及び第二触媒を備えており、
前記第一触媒が、セリアを含有しないジルコニア系担体からなる第一担体と、該第一担体に担持されたパラジウム及び鉄とを備える触媒であり、
前記第二触媒が、アルミナ系担体、及び、アルミナ系担体とセリア−ジルコニア系複合酸化物担体との混合担体のうちのいずれか1種からなる第二担体と、該第二担体に担持されたパラジウムとを備える触媒であり、且つ
前記第一担体に担持されたパラジウムの量が、前記第一触媒及び前記第二触媒中のパラジウムの総量100質量部に対して30〜95質量部であること、
を特徴とするものである。
【0007】
上記本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記排ガス浄化触媒中のパラジウムの総量が、前記第一担体及び前記第二担体の総量100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましい。
【0008】
また、上記本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記第一担体に担持された前記鉄の量が、前記第一担体100質量部に対して0.02〜10質量部であることが好ましい。
【0009】
さらに、上記本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記第一触媒と前記第二触媒の含有割合が質量比([第一触媒]:[第二触媒])で10:90〜90:10であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、十分に優れた触媒活性と十分に高度な耐熱性とを有し、高温に長期間晒された後においても十分に高度な触媒活性を示すことが可能な排ガス浄化用触媒を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1〜5及び比較例1〜11で得られた排ガス浄化用触媒のNO20%浄化温度と、各触媒中のジルコニア系担体に担持されたパラジウムの量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0013】
本発明の排ガス浄化用触媒は、セリアを含有しないジルコニア系担体からなる第一担体と、該第一担体に担持されたパラジウム及び鉄とを備える第一触媒、及び、
アルミナ系担体、及び、アルミナ系担体とセリア−ジルコニア系複合酸化物担体との混合担体のうちのいずれか1種からなる第二担体と、該第二担体に担持されたパラジウムとを備える第二触媒、
を備えており、且つ、前記第一担体に担持されたパラジウムの量が、前記第一触媒及び前記第二触媒中のパラジウムの総量100質量部に対して30〜95質量部であること、
を特徴とするものである。
【0014】
以下、先ず、本発明の排ガス浄化用触媒に用いられる第一触媒と第二触媒とを分けて説明する。
【0015】
(第一触媒)
本発明にかかる第一触媒は、セリアを含有しないジルコニア系担体からなる第一担体と、該第一担体に担持されたパラジウム及び鉄とを備える触媒である。
【0016】
このような第一触媒に用いられる前記第一担体は、セリアを含有しないジルコニア系担体からなるものである。このようなセリアを含有しないジルコニア系担体としては、セリアを含有せず且つジルコニアを主成分とする担体であればよく、特に制限されないが、ジルコニアを金属元素換算で60モル%以上(更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは80〜95モル%)含有する担体であることがより好ましい。
【0017】
また、このようなジルコニア系担体(第一担体)においては、セリア以外の成分であれば触媒の担体に利用することが可能な公知の他の成分を適宜含有することができる。また、このようなジルコニア系担体に含有するジルコニア以外の他の成分としては、担体の熱安定性の観点から、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)等の金属の酸化物を好適に用いることができる。このように、前記ジルコニア系担体としては、耐熱性の観点からは、60モル%以上のジルコニアと、イットリウム、ランタン、プラセオジウム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム及びバナジウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物とからなる担体がより好ましい。
【0018】
また、このような他の成分としての金属酸化物としては、得られる担体の耐熱性をより向上させるという観点からは、Y、La、Pr、Nd、Yb、Mg、Ca、Baの酸化物がより好ましく、Y、La、Pr、Ndの酸化物が更に好ましく、Y、Laの酸化物が特に好ましい。また、このようなジルコニア系担体におけるジルコニア以外の他の成分の含有量としては特に制限されないが、他の成分を含有させることにより得られる効果を十分に発揮させるという観点から、金属元素換算で1モル%以上40モル%未満であることが好ましく、10モル%以上40モル%未満であることがより好ましい。なお、これらの金属の酸化物は、前記金属の酸化物の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
また、このようジルコニア系担体(第一担体)の形状は特に制限されないが、十分な比表面積が得られるという観点から粉末状であることが好ましい。また、このような担体が粉末状の場合には、より高い触媒活性を得るという観点からは、担体の平均粒子径は2〜1000nmであることが好ましく、10〜100nmであることがより好ましい。なお、このような平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行い、任意の100個の粒子の粒径分布を求めることにより測定することができる。
【0020】
また、このようジルコニア系担体(第一担体)としては、比表面積が10〜200m/gであることが好ましく、50〜100m/gであることがより好ましい。前記比表面積が前記上限を超えると、耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では、Pd粒子の凝集が進み易くなる傾向にある。なお、このような比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。また、このようなBET比表面積は、市販の装置を利用して求めることができる。
【0021】
また、このようなジルコニア系担体を製造する方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、このようなジルコニア系担体としては市販のものを用いてもよい。
【0022】
また、本発明においては、前記第一担体にパラジウムが担持されている。このようなパラジウムの担持量は、金属換算で、前記第一担体100質量部に対して0.1〜10質量部(更に好ましくは1〜5質量部)であることがより好ましい。このようなパラジウムの担持量が前記下限未満では十分な触媒活性を発揮することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、担持密度の増大によりパラジウムのシンタリングが促進され易くなるとともに、活性が飽和するためコストが増大する傾向にある。なお、このようなパラジウムは、酸化物として担持されていてもよい。
【0023】
また、前記第一担体にパラジウムを担持させる方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、パラジウムの化合物(例えば、硝酸塩、塩化物、酢酸塩等のパラジウムの塩や、パラジウムの錯体など)を水やアルコール等の溶媒に溶解した溶液に、前記第一担体を接触させた後に乾燥し、焼成する方法を採用してもよい。なお、このような乾燥や焼成の際の条件は特に制限されず、公知の条件を適宜採用することができ、例えば、乾燥条件としては80〜140℃で1〜24時間程度加熱する条件を、焼成条件としては200〜700℃で0.5〜5時間程度加熱する条件を、それぞれ採用してもよい。
【0024】
また、本発明においては、前記第一担体に鉄が担持されている。なお、このような鉄は酸化物として担持されていてもよい。このように前記第一担体にパラジウムとともに鉄を担持した第一触媒を利用することにより、より高度な耐熱性等が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、前記第一担体にパラジウムとともに鉄が担持されると、パラジウムの近傍に鉄が存在することとなり、パラジウムの酸化及び還元が容易となる。そのため、前記第一担体にパラジウムとともに鉄が担持されると、鉄とパラジウムとの相互作用により十分に高度な触媒活性が得られ、しかも高温条件下においてパラジウムが粒成長することを十分に抑制することが可能となる。従って、前記第一触媒を用いることにより高温で長期間使用した後においても触媒活性を十分に維持することが可能となる。なお、本発明においては、鉄が担持される担体が上述のようなセリアを含有しないジルコニア系担体であるため、セリアと鉄とが反応することがなく、高温条件下において、鉄と担体中の金属成分との反応が十分に抑制されて、パラジウムと鉄の相互作用を十分に維持することが可能である。また、このように第一担体に鉄が担持されると、第一触媒の還元性がより十分に向上することから、より高度な触媒性能が得られるものと本発明者らは推察する。
【0025】
また、このような鉄の担持量は、金属換算で前記第一担体100質量部に対して0.02〜10質量部(更に好ましくは0.1〜8質量部、特に好ましくは0.5〜2質量部)であることが好ましい。このような鉄の担持量が前記下限未満では鉄を担持することにより得られる効果が不十分となり、高温条件下においてパラジウムの粒成長を十分に抑制することが困難となって、高温に長期間晒された後に十分に高度な触媒活性を示すことが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、担体の比表面積を低下させる傾向にある。
【0026】
また、前記第一担体に担持されている前記鉄の担持状態は特に制限されないが、前記鉄が、前記パラジウムのより近傍に担持されている状態となっていることが好ましい。パラジウムのより近傍に鉄を担持させることで、パラジウムの粒成長を抑制する効果がより向上する傾向にある。
【0027】
また、このような鉄を前記第一担体に担持させる方法としては特に制限されないが、例えば、鉄の化合物(例えば、炭酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、硫酸塩等の鉄の塩や鉄の錯体)を水やアルコール等の溶媒に溶解した溶液に、前記第一担体を接触させた後に乾燥し、焼成する方法を採用することができる。なお、このような乾燥や焼成の際の条件は特に制限されず、公知の条件を適宜採用することができ、例えば、乾燥条件としては80〜140℃で1〜24時間程度加熱する条件を、焼成条件としては200〜700℃で0.5〜5時間程度加熱する条件をそれぞれ採用してもよい。また、このような鉄の担持は前記パラジウムの担持と同時に行ってもよく、例えば、パラジウムの塩の水溶液と鉄の塩の水溶液の混合液を前記第一担体に接触させた後に乾燥し、更に焼成する方法を採用する方法を採用してもよい。また、第一担体に鉄とパラジウムとを別々に担持させる場合において、これらの成分を担持する順序は特に制限されない。
【0028】
また、本発明にかかる第一触媒においては、前記第一担体に担持されている前記パラジウムの一部に、前記鉄の一部が固溶していることが好ましい。このように鉄が固溶することにより、高温条件下においてパラジウムが蒸発することが、より十分に抑制されるとともに、担体上をパラジウムが移動してしまうことが鉄により十分に抑制されるため、パラジウムの粒成長をより高度に抑制することができる。なお、このような固溶体は、800℃以上で還元処理することにより生成することができ、鉄とパラジウムとを担持した触媒を高温条件下(例えば800℃以上の温度条件下)において1〜5時間使用することによっても生成することができる。なお、このような第一触媒を含む本発明の排ガス浄化用触媒を、例えば、自動車の排ガスを浄化するために用いた場合においては、その使用環境下においても固溶体が形成され得るため、本発明の排ガス浄化用触媒は耐久性の高い触媒として自動車の排ガスを浄化するための触媒に好適に利用することができる。また、このような固溶体の存在は、X線回析測定により、パラジウムの結晶の(111)面に由来するピークを測定して、格子定数を求めることにより確認することができる。
【0029】
また、前記第一触媒において、前記第一担体に担持されている鉄(Fe)とパラジウム(Pd)の量の比率は金属換算によるモル比([Fe]:[Pd])が0.1:99.9〜80:20(より好ましくは10:90〜50:50)であることが好ましい。このような鉄の担持量の比率が前記下限未満では、鉄を組み合わせて用いることにより得られる効果が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、パラジウムへの鉄の固溶量が多くなり過ぎて排ガス浄化性能が低下する傾向にある。
【0030】
なお、このような第一触媒においては、上記本発明の効果を損なわない範囲において、排ガス浄化用触媒に利用することが可能な公知の成分(例えばNOx吸着材等)を適宜利用してもよい。
【0031】
(第二触媒)
本発明にかかる第二触媒は、アルミナ系担体、及び、アルミナ系担体とセリア−ジルコニア系複合酸化物担体との混合担体のうちのいずれか1種からなる第二担体と、該第二担体に担持されたパラジウムとを備える触媒である。
【0032】
このような第二触媒に用いられる前記第二担体は、アルミナ系担体、又は、アルミナ系担体とセリア−ジルコニア系複合酸化物担体との混合担体である。
【0033】
このようなアルミナ系担体としては、アルミナを主成分とする担体であればよく、特に制限されないが、アルミナを金属元素換算で60モル%以上(更に好ましくは70モル%以上、特に好ましくは80〜98モル%)含有する担体であることがより好ましい。
【0034】
また、このような第二担体として用いられるアルミナ系担体としては、アルミナ以外にも触媒の担体に利用することが可能な公知の他の成分を適宜含有することができる。また、このようなアルミナ系担体に含有するアルミナ以外の他の成分としては、担体の熱安定性や触媒活性の観点から、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジウム(Pr)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)等の金属の酸化物を好適に用いることができる。このように、前記アルミナ系担体としては、耐熱性の観点からは、60モル%以上のアルミナと、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジウム(Pr)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)及びバナジウム(V)からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物とからなる担体がより好ましい。
【0035】
また、このようなアルミナ以外の他の成分としての金属酸化物としては、得られる担体の耐熱性をより向上させるという観点からは、Y、La、Pr、Nd、Yb、Mg、Ca、Baの酸化物がより好ましく、Y、La、Pr、Ndの酸化物が更に好ましく、Y、Laの酸化物が特に好ましい。なお、これらの金属の酸化物は、前記金属の酸化物の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、このようなアルミナ系担体としては、より高い触媒活性と耐熱性とを両立できるという観点からは、ランタン安定化活性アルミナ、アルミナ−セリアがより好ましい。また、このようなアルミナ系担体中のアルミナ以外の成分の含有量としては特に制限されないが、他の成分を含有させることにより得られる効果を十分に発揮させるという観点から、金属元素換算で1モル%以上40モル%未満であることが好ましく、5〜20モル%であることがより好ましい。また、このようなアルミナ系担体の製造方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。更に、このような金属酸化物としては、市販のものを用いてもよい。
【0036】
さらに、このようアルミナ系担体の形状は特に制限されないが、十分な比表面積が得られるという観点から粉末状であることが好ましい。また、このようなアルミナ系担体が粉末状の場合には、より高い触媒活性を得るという観点からは、担体の平均粒子径は2〜1000nmであることが好ましく、10〜100nmであることがより好ましい。なお、このような平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行い、任意の100個の粒子の粒径分布を求めることにより測定することができる。
【0037】
また、このようアルミナ系担体としては、比表面積が10〜200m/gであることが好ましく、50〜100m/gであることがより好ましい。前記比表面積が前記上限を超えると、担体の耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では、パラジウムのシンタリングが進行する傾向にある。なお、このような比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。また、このようなBET比表面積は、市販の装置を利用して求めることができる。
【0038】
また、このようなアルミナ系担体を製造する方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、このようなアルミナ系担体としては市販のものを用いてもよい。
【0039】
また、前記第二担体として用いられる前記混合担体は、アルミナ系担体とセリア−ジルコニア系複合酸化物担体とを含有するものである。このような混合担体中のアルミナ系担体は、上述の第二担体として用いられるアルミナ系担体と同様のものである。
【0040】
さらに、このようなセリア−ジルコニア系複合酸化物担体としては、セリアとジルコニアの総量が金属元素換算で10モル%以上(より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30〜90モル%)のものが好ましい。このようなセリアとジルコニアの総量が前記下限未満では十分な酸化還元性能が得られなくなる傾向にある。
【0041】
また、このようなセリア−ジルコニア系複合担体中のセリアの含有量は、10〜90モル%(より好ましくは20〜80モル%)であることが好ましい。このようなセリアの含有量が前記下限未満では十分な酸化還元性能が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると耐熱性が低下する傾向にある。
【0042】
また、このようなセリア−ジルコニア系複合担体中のジルコニアの含有量は、10〜90モル%(より好ましくは20〜80モル%)であることが好ましい。このようなジルコニアの含有量が前記下限未満では耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると十分な酸化還元性能が得られなくなる傾向にある。
【0043】
また、このようなセリア−ジルコニア系複合担体中のセリアとジルコニアの含有割合はモル比([セリア(CeO)]:[ジルコニア(ZrO)])で10:90〜90:10であることが好ましく、20:80〜80:20であることがより好ましい。このようなセリアの含有割合が前記下限未満では十分な酸化還元性能が得られなくなる傾向にある。
【0044】
また、このようなセリア−ジルコニア系複合酸化物担体は、セリア及びジルコニア以外にも、触媒の担体に利用することが可能な公知の他の成分を適宜含有することができる。このようなセリア−ジルコニア系複合酸化物担体に含有することが可能な他の成分としては、担体の熱安定性や触媒活性の観点から、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)、アルミニウム(Al)等の金属の酸化物を好適に用いることができる。このように、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物担体としては、耐熱性の観点からは、60モル%以上のアルミナと、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジウム(Pr)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)及びアルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物とからなる担体がより好ましい。
【0045】
また、このようなセリア及びジルコニア以外の他の成分としての金属酸化物としては、得られる担体の耐熱性をより向上させるという観点からは、Y、La、Pr、Nd、Yb、Mg、Ca、Baの酸化物がより好ましく、Y、La、Pr、Ndの酸化物が更に好ましく、Y、Laの酸化物が特に好ましい。なお、これらの金属の酸化物は、前記金属の酸化物の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、このようなセリア−ジルコニア系複合酸化物担体中のセリア及びジルコニア以外の他の成分の含有量としては特に制限されないが、このような他の成分を含有させることにより得られる効果を十分に発揮させるという観点から、金属元素換算で1モル%以上90モル%未満であることが好ましく、5〜70モル%であることがより好ましい。
【0046】
また、このようセリア−ジルコニア系複合酸化物担体の形状は特に制限されないが、十分な比表面積が得られるという観点から粉末状であることが好ましい。また、このような担体が粉末状の場合には、より高い触媒活性を得るという観点からは、担体の平均粒子径は2〜1000nmであることが好ましく、10〜100nmであることがより好ましい。なお、このような平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行い、任意の100個の粒子の粒径分布を求めることにより測定することができる。
【0047】
また、このようセリア−ジルコニア系複合酸化物担体としては、比表面積が10〜200m/gであることが好ましく、50〜100m/gであることがより好ましい。前記比表面積が前記上限を超えると担体の耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満ではパラジウムのシンタリングが進行する傾向にある。なお、このような比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。また、このようなBET比表面積は、市販の装置を利用して求めることができる。
【0048】
また、このようなセリア−ジルコニア系複合酸化物担体の製造方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。更に、このようなセリア−ジルコニア系複合酸化物担体としては、市販のものを用いてもよい。
【0049】
また、前記第二担体として用いられる前記混合担体としては、アルミナ系担体とセリア−ジルコニア系複合酸化物担体の含有割合が質量比([アルミナ系担体]:[セリア−ジルコニア系複合酸化物担体])で10:90〜90:10であることが好ましく、30:70〜70:30であることがより好ましい。このようなアルミナ系担体の含有割合が前記下限未満では触媒の耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると十分な触媒性能が得られなくなる傾向にある。なお、このような混合担体は、第二触媒中において前記アルミナ系担体と前記セリア−ジルコニア系複合酸化物担体とが含有された状態となっているものであればよく、第二触媒の調製時に予め各担体を混合して得られた混合物からなるものであってもよく、あるいは、各担体に予めパラジウムを担持した後にこれらを混合して結果として混合担体となっているものであってもよい。
【0050】
また、本発明においては、前記第二担体にパラジウムが担持されている。このようなパラジウムの担持量は、金属換算で、前記第二担体100質量部に対して0.1〜10質量部(更に好ましくは1〜5質量部)であることがより好ましい。このようなパラジウムの担持量が前記下限未満では十分な触媒活性を発揮することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、担持密度の増大によりパラジウムのシンタリングが促進され易くなるとともに、活性が飽和するためコストが増大する傾向にある。なお、このようなパラジウムは、酸化物として担持されていてもよい。
【0051】
また、前記第二担体にパラジウムを担持させる方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、パラジウムの化合物(例えば、硝酸塩、塩化物、酢酸塩等のパラジウムの塩や、パラジウムの錯体など)を水やアルコール等の溶媒に溶解した溶液に、前記第二担体を接触させた後に乾燥し、焼成する方法を採用してもよい。なお、このような乾燥や焼成の際の条件は特に制限されず、公知の条件を適宜採用することができ、例えば、乾燥条件としては80〜140℃で1〜24時間程度加熱する条件を、焼成条件としては200〜700℃で0.5〜5時間程度加熱する条件を、それぞれ採用してもよい。
【0052】
また、このような第二触媒においては、上記本発明の効果を損なわない範囲において、排ガス浄化用触媒に利用することが可能な公知の成分(例えばNOx吸着材等)を適宜利用してもよい。
【0053】
以上、第一触媒及び第二触媒について分けて説明したが、以下、かかる第一触媒及び第二触媒を用いる本発明の排ガス浄化用触媒について説明する。
【0054】
(排ガス浄化用触媒)
本発明の排ガス浄化用触媒は、前記第一担体と該第一担体に担持されたパラジウム及び鉄とを備える第一触媒、及び、前記第二担体と該第二担体に担持されたパラジウムとを備える第二触媒を備えており、且つ、前記第一担体に担持されたパラジウムの量が、前記第一触媒及び前記第二触媒中のパラジウムの総量100質量部に対して30〜95質量部であることを特徴とするものである。
【0055】
このように、本発明においては、前記第一担体に担持されたパラジウムの量は前記第一触媒及び前記第二触媒中のパラジウムの総量100質量部に対して30〜95質量部である。このような第一担体に担持されたパラジウムの量(第一触媒中のパラジウムの量)が前記下限未満では、鉄との相互作用を利用したパラジウムの量の割合が低くなって、十分な耐熱性や触媒活性を得ることができなくなり、他方、前記上限を超えるとパラジウムのシンタリングが進行する。また、同様の観点から、前記第一担体に担持されたパラジウムの量は前記第一触媒及び前記第二触媒中のパラジウムの総量100質量部に対して40〜95質量部であることがより好ましく、50〜90質量部であることが更に好ましい。
【0056】
また、本発明においては、排ガス浄化用触媒中のパラジウムの総量が、第一担体及び第二担体の総量100質量部に対して、0.1〜10質量部であることがより好ましい。このような触媒中のパラジウムの総量が前記下限未満では、パラジウムの量の割合が低くなって、十分な耐熱性や触媒活性を得ることができなくなり、他方、前記上限を超えると各担体上におけるパラジウムの担持密度の増大によりパラジウムのシンタリングが促進され易くなるとともに、活性が飽和するためコストが増大するとなる。
【0057】
また、本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記第一触媒と前記第二触媒の含有割合が質量比([第一触媒]:[第二触媒])で10:90〜90:10(より好ましくは30:70〜70:30)であることが好ましい。このような第一触媒の含有割合が前記下限未満では鉄の添加効果が十分に得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると十分な触媒性能が得られなくなる傾向にある。また、同様の理由で、本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記第一担体と前記第二担体の含有割合が質量比([第一担体]:[第二担体])で10:90〜90:10(より好ましくは30:70〜70:30)であることが好ましい。
【0058】
なお、本発明においては、第一触媒と第二触媒とを用い、パラジウム及び鉄(Pd−Fe)と、パラジウム(Pd)とを第一担体と第二担体に担持分けしているが、このようにPd−Feをジルコニア系担体(第一担体)に担持し、Pdをアルミナ系担体又は前記混合担体(第二担体)に担持するとともに、第一担体に担持するパラジウムの量を前記第一触媒及び前記第二触媒中のパラジウムの総量100質量部に対して30〜95質量部ととすることにより、それぞれの触媒を単に用いた場合と比較して、より高度な水準で耐久試験後の触媒活性を得ることを可能としている。このように、本発明によって、耐久試験後の触媒活性がより高度な水準で向上する理由は必ずしも定かではないが、第一担体において、高温条件下における鉄と担体中の成分との固相反応が十分に抑制され、高温に晒された場合においてもPd−Feの状態が十分に維持され、触媒反応の際に、これらを活性点(Pd−Fe活性点)として十分に活用することができるとともに、第二担体に担持したパラジウムを酸化触媒として活用することも可能であるため、第一触媒又は第二触媒をそれぞれ単独で利用した場合と比較して、第一触媒と第二触媒とを組み合わせた本発明においては触媒中の異なる担体にPd−Fe活性点とPd活性点を担持分けしたことによる相互作用が得られ、高温に長期間晒された後においても、より高度な触媒活性を示すことが可能となるものと本発明者らは推察する。なお、本発明においては、Pd−Fe活性点とPd活性点を担持する担体を分けることによって達成される効果を十分に得るという観点から、第一触媒中の第一担体のみにパラジウム及び鉄が担持されていることが好ましく、第二触媒中の第二担体には鉄が担持されていないことが好ましい。
【0059】
また、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は特に制限されず、例えば、前記第一触媒及び前記第二触媒を別途製造した後、前記第一担体に担持されたパラジウムの量が、前記第一触媒及び前記第二触媒中のパラジウムの総量100質量部に対して30〜95質量部となるようにして、前記第一触媒及び前記第二触媒を混合することにより製造する方法を採用してもよい。なお、第一及び第二触媒の各触媒は、前述のパラジウム等の担持成分を担体に担持させる方法等を適宜採用することで適宜製造することができる。
【0060】
また、本発明の排ガス浄化用触媒においては、その形態は特に制限されず、例えば、触媒基材に担持したハニカム形状のモノリス触媒や、ペレット形状のペレット触媒の形態等としてもよい。ここで用いられる触媒基材も特に制限されず、パティキュレートフィルタ基材(DPF基材)、モノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等を好適に採用することができる。また、このような触媒基材の材質も特に制限されないが、コーディエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材を好適に採用することができる。また、このような触媒基材に前記排ガス浄化用触媒を担持する方法も特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
(調製例1)
先ず、ZrとLaとYの各硝酸塩を用いて、共沈法で合成することにより、ZrOとLaとYを含有するジルコニア系担体(ZrO系担体:構成成分の質量比(ZrO:La:Y)が68:7:25、平均粒子径20nm、比表面積(BET)50m/g)を準備した。
【0063】
次に、前記ジルコニア系担体を硝酸パラジウムの水溶液中に添加し、分散させて分散液を得た後、加熱して溶媒(水)を蒸発せしめ、得られた固形分を120℃で5時間乾燥させた後、大気中、500℃の温度条件で1時間焼成し、前記ジルコニア系担体にパラジウムを担持した(パラジウム担持工程)。なお、このようなパラジウム担持工程においては、前記ジルコニア系担体100質量部に対してパラジウムの担持量が0.9質量部となるように、用いる担体の量や硝酸パラジウムの量を調整した。
【0064】
次いで、前述のようにしてパラジウムを担持した後の前記ジルコニア系担体を、硝酸鉄の水溶液中に添加し、分散させて分散液を得た後、加熱して溶媒(水)を蒸発せしめ、得られた固形分を120℃で5時間乾燥させた後、大気中、500℃の温度条件で1時間焼成し、前記ジルコニア系担体に鉄を担持した(鉄担持工程)。なお、このような鉄担持工程においては、前記ジルコニア系担体100質量部に対して鉄の担持量が0.52質量部となるように、用いる担体の量や硝酸鉄の量を調整した。
【0065】
このようにしてジルコニア系担体に対してパラジウム担持工程及び鉄担持工程を実施することにより、ジルコニア系担体100質量部に対してパラジウムと鉄をそれぞれ0.9質量部、0.52質量部の割合で担持した触媒(Pd(0.9)−Fe(0.52)/ZrO系担体[なお、各元素に関して括弧内の数値は担体100質量部に対する担持量(質量部)を示す。])を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0066】
(調製例2〜5)
パラジウム担持工程において、ジルコニア系担体へのパラジウムの担持量がジルコニア系担体100質量部に対してそれぞれ0.9質量部から0.8質量部(調製例2)、0.7質量部(調製例3)、0.6質量部(調製例4)、0.5質量部(調製例5)、0.2質量部(調製例6)、1.0質量部(調製例7)となるように用いる担体の量や硝酸パラジウムの量を変更した以外は、調製例1で採用した方法と同様の方法を採用して、ジルコニア系担体に対してパラジウムと鉄を担持した触媒をそれぞれ調製した。各触媒の組成を表1に示す。
【0067】
(調製例8〜14)
パラジウム担持工程においてジルコニア系担体へのパラジウムの担持量がジルコニア系担体100質量部に対してそれぞれ0.9質量部から1.0質量部(調製例8)、0.9質量部(調製例9)、0.8質量部(調製例10)、0.7質量部(調製例11)、0.6質量部(調製例12)、0.5質量部(調製例13)、0.2質量部(調製例14)となるように用いる担体の量や硝酸パラジウムの量を変更し、且つ、鉄の担持工程を実施しなかった以外は、調製例1で採用した方法と同様の方法を採用して、ジルコニア系担体に対してパラジウムを担持した触媒をそれぞれ調製した。各触媒の組成を表1に示す。
【0068】
(調製例15)
パラジウム担持工程を実施しなかった以外は、調製例1で採用した方法と同様の方法を採用して、触媒(組成:Fe(0.52)/ZrO系担体)を調製した。触媒の組成を表1に示す。
【0069】
(調製例16)
調製例1において準備したジルコニア系担体をそのまま触媒とした。触媒の組成を表1に示す。
【0070】
(調製例17)
先ず、LaとAlの各硝酸塩を用いて、共沈法で合成することにより、ランタンで安定化させた活性アルミナ(La安定化γ−Al:Laの含有量(金属換算):4質量%(なお、LaはLaとして含有)、平均粒子径10nm、比表面積(BET)100m/g)からなるアルミナ系担体(Al系担体)を準備した。
【0071】
次に、前記アルミナ系担体を硝酸パラジウムの水溶液中に添加し、分散させて分散液を得た後、加熱して溶媒(水)を蒸発せしめ、得られた固形分を120℃で5時間乾燥させた後、大気中、500℃の温度条件で1時間焼成し、前記アルミナ系担体にパラジウムを担持した(パラジウム担持工程)。なお、このようなパラジウム担持工程においては、前記アルミナ系担体100質量部に対してパラジウムの担持量が0.1質量部となるように、用いる担体の量や硝酸パラジウムの量を調整した。
【0072】
このようにしてアルミナ系担体に対してパラジウム担持工程を実施することにより、アルミナ系担体100質量部に対してパラジウムを0.1質量部の割合で担持した触媒(Pd(0.1)/Al系担体)を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0073】
(調製例18〜23)
アルミナ系担体へのパラジウムの担持量がアルミナ系担体100質量部に対してそれぞれ0.1質量部から0.2質量部(調製例18)、0.3質量部(調製例19)、0.4質量部(調製例20)、0.5質量部(調製例21)、0.8質量部(調製例22)、1.0質量部(調製例23)となるように用いる担体の量や硝酸パラジウムの量を変更した以外は、調製例17で採用した方法と同様の方法を採用して、アルミナ系担体に対してパラジウムを担持した触媒をそれぞれ調製した。各触媒の組成を表1に示す。
【0074】
(調製例24)
調製例17において準備したアルミナ系担体をそのまま触媒とした。触媒の組成を表1に示す。
【0075】
(調製例25)
先ず、CeとZrとLaとYの各硝酸塩を用いて、共沈法で合成することにより、CeOとZrOとLaとYを含有するセリア−ジルコニア系複合酸化物担体(i)(CeO−ZrO系担体(i):構成成分の質量比(CeO:ZrO:La:Y)が30:60:5:5、平均粒子径25nm、比表面積(BET)70m/g)を準備した。
【0076】
次に、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物担体(i)を硝酸パラジウムの水溶液中に添加し、分散させて分散液を得た後、加熱して溶媒(水)を蒸発せしめ、得られた固形分を120℃で5時間乾燥させた後、大気中、500℃の温度条件で1時間焼成し、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物担体(i)にパラジウムを担持した(パラジウム担持工程)。なお、このようなパラジウム担持工程においては、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物担体(i)100質量部に対してパラジウムの担持量が0.5質量部となるように、用いる担体の量や硝酸パラジウムの量を調整した。
【0077】
このようにしてセリア−ジルコニア系複合酸化物担体(i)に対してパラジウム担持工程を実施することにより、セリア−ジルコニア系複合酸化物担体(i)100質量部に対してパラジウムを0.5質量部の割合で担持した触媒(Pd(0.5)/CeO−ZrO系担体(i))を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0078】
(調製例26)
セリア−ジルコニア系複合酸化物担体(i)を準備し、セリア−ジルコニア系複合酸化物担体(i)へのパラジウムの担持量がセリア−ジルコニア系複合酸化物担体100質量部に対して1.0質量部となるように用いる担体の量や硝酸パラジウムの量を変更してパラジウム担持工程を実施した以外は、調製例25で採用した方法と同様の方法を採用して、セリア−ジルコニア系複合酸化物担体(i)に対してパラジウムを担持した。
【0079】
次いで、パラジウムを担持した後の前記セリア−ジルコニア系複合酸化物担体(i)を硝酸鉄の水溶液中に添加し、分散させて分散液を得た後、加熱して溶媒(水)を蒸発せしめ、得られた固形分を120℃で5時間乾燥させた後、大気中、500℃の温度条件で1時間焼成し、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物担体(i)に鉄を担持した(鉄担持工程)。なお、このような鉄担持工程においては、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物担体(i)100質量部に対して鉄の担持量が0.52質量部となるように、用いる担体の量や硝酸鉄の量を調整した。
【0080】
このようにしてセリア−ジルコニア系複合酸化物担体(i)に対してパラジウム担持工程及び鉄担持工程を実施することにより、セリア−ジルコニア系複合酸化物担体(i)100質量部に対してパラジウムと鉄をそれぞれ1.0質量部、0.52質量部の割合で担持した触媒(Pd(1.0)−Fe(0.52)/CeO−ZrO系担体(i))
を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0081】
(調製例27)
先ず、CeとZrとLaとPrの各硝酸塩を用いて、共沈法で合成することにより、CeOとZrOとLaとPrを含有するセリア−ジルコニア系複合酸化物担体(ii)(CeO−ZrO系担体(ii):構成成分の質量比(CeO:ZrO:La:Pr)が60:30:3:7、平均粒子径5nm、比表面積(BET)70m/g)を準備した。
【0082】
次に、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物担体(ii)を硝酸パラジウムの水溶液中に添加し、分散させて分散液を得た後、加熱して溶媒(水)を蒸発せしめ、得られた固形分を120℃で5時間乾燥させた後、大気中、500℃の温度条件で1時間焼成し、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物担体(ii)にパラジウムを担持した(パラジウム担持工程)。なお、このようなパラジウム担持工程においては、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物担体(ii)100質量部に対してパラジウムの担持量が1.0質量部となるように、用いる担体の量や硝酸パラジウムの量を調整した。
【0083】
次いで、前述のようにしてパラジウムを担持した後の前記セリア−ジルコニア系複合酸化物担体(ii)を硝酸鉄の水溶液中に添加し、分散させて分散液を得た後、加熱して溶媒(水)を蒸発せしめ、得られた固形分を120℃で5時間乾燥させた後、大気中、500℃の温度条件で1時間焼成し、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物担体(ii)に鉄を担持した(鉄担持工程)。なお、このような鉄担持工程においては、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物担体(ii)100質量部に対して鉄の担持量が0.52質量部となるように、用いる担体の量や硝酸鉄の量を調整した。
【0084】
このようにしてセリア−ジルコニア系複合酸化物担体(ii)に対してパラジウム担持工程及び鉄担持工程を実施することにより、セリア−ジルコニア系複合酸化物担体(ii)100質量部に対してパラジウムと鉄をそれぞれ1.0質量部、0.52質量部の割合で担持した触媒(Pd(1.0)−Fe(0.52)/CeO−ZrO系担体(ii))
を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0085】
(調製例28)
調製例23で採用した方法と同様にしてパラジウムを担持したアルミナ系担体(Pd(1.0)/Al系担体)を準備し、そのパラジウムを担持したアルミナ系担体を硝酸鉄の水溶液中に添加し、分散させて分散液を得た後、加熱して溶媒(水)を蒸発せしめ、得られた固形分を120℃で5時間乾燥させた後、大気中、500℃の温度条件で1時間焼成し、前記アルミナ系担体に鉄を担持した(鉄担持工程)。なお、このような鉄担持工程においては、前記アルミナ系担体100質量部に対して鉄の担持量が0.52質量部となるように、用いる担体の量や硝酸鉄の量を調整した。このようにして、アルミナ系担体100質量部に対してパラジウムと鉄をそれぞれ1.0質量部、0.52質量部の割合で担持した触媒(Pd(1.0)−Fe(0.52)/Al系担体)を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
(実施例1)
調製例1で得られた触媒(Pd(0.9)−Fe(0.52)/ZrO系担体)と、調製例17で得られた触媒(Pd(0.1)/Al系担体)を、各担体の質量比([ZrO系担体]:[Al系担体])が50:50となるようにして物理混合して、排ガス浄化用触媒を得た。
【0088】
(実施例2)
調製例2で得られた触媒(Pd(0.8)−Fe(0.52)/ZrO系担体)と、調製例18で得られた触媒(Pd(0.2)/Al系担体)を、各担体の質量比([ZrO系担体]:[Al系担体])が50:50となるようにして物理混合して、排ガス浄化用触媒を得た。
【0089】
(実施例3)
調製例3で得られた触媒(Pd(0.7)−Fe(0.52)/ZrO系担体)と、調製例19で得られた触媒(Pd(0.3)/Al系担体)を、各担体の質量比([ZrO系担体]:[Al系担体])が50:50となるようにして物理混合して、排ガス浄化用触媒を得た。
【0090】
(実施例4)
調製例4で得られた触媒(Pd(0.6)−Fe(0.52)/ZrO系担体)と、調製例20で得られた触媒(Pd(0.4)/Al系担体)を、各担体の質量比([ZrO系担体]:[Al系担体])が50:50となるようにして物理混合して、排ガス浄化用触媒を得た。
【0091】
(実施例5)
調製例5で得られた触媒(Pd(0.5)−Fe(0.52)/ZrO系担体)と、調製例21で得られた触媒(Pd(0.5)/Al系担体)を、各担体の質量比([ZrO系担体]:[Al系担体])が50:50となるようにして物理混合して、排ガス浄化用触媒を得た。
【0092】
(比較例1)
調製例8で得られた触媒(Pd(1.0)/ZrO系担体)と、調製例24で得られた触媒(Al系担体のみ)を、各担体の質量比([ZrO系担体]:[Al系担体])が50:50となるようにして物理混合して、排ガス浄化用触媒を得た。
【0093】
(比較例2)
調製例9で得られた触媒(Pd(0.9)/ZrO系担体)と、調製例17で得られた触媒(Pd(0.1)/Al系担体)を、各担体の質量比([ZrO系担体]:[Al系担体])が50:50となるようにして物理混合して、排ガス浄化用触媒を得た。
【0094】
(比較例3)
調製例10で得られた触媒(Pd(0.8)/ZrO系担体)と、調製例18で得られた触媒(Pd(0.2)/Al系担体)を、各担体の質量比([ZrO系担体]:[Al系担体])が50:50となるようにして物理混合して、排ガス浄化用触媒を得た。
【0095】
(比較例4)
調製例11で得られた触媒(Pd(0.7)/ZrO系担体)と、調製例19で得られた触媒(Pd(0.3)/Al系担体)を、各担体の質量比([ZrO系担体]:[Al系担体])が50:50となるようにして物理混合して、排ガス浄化用触媒を得た。
【0096】
(比較例5)
調製例12で得られた触媒(Pd(0.6)/ZrO系担体)と、調製例20で得られた触媒(Pd(0.4)/Al系担体)を、各担体の質量比([ZrO系担体]:[Al系担体])が50:50となるようにして物理混合して、排ガス浄化用触媒を得た。
【0097】
(比較例6)
調製例13で得られた触媒(Pd(0.5)/ZrO系担体)と、調製例21で得られた触媒(Pd(0.5)/Al系担体)を、各担体の質量比([ZrO系担体]:[Al系担体])が50:50となるようにして物理混合して、排ガス浄化用触媒を得た。
【0098】
(比較例7)
調製例14で得られた触媒(Pd(0.2)/ZrO系担体)と、調製例22で得られた触媒(Pd(0.8)/Al系担体)を、各担体の質量比([ZrO系担体]:[Al系担体])が50:50となるようにして物理混合して、排ガス浄化用触媒を得た。
【0099】
(比較例8)
調製例16で得られた触媒(ZrO系担体)と、調製例23で得られた触媒(Pd(1.0)/Al系担体)を、各担体の質量比([ZrO系担体]:[Al系担体])が50:50となるようにして物理混合して、排ガス浄化用触媒を得た。
【0100】
(比較例9)
調製例7で得られた触媒(Pd(1.0)−Fe(0.52)/ZrO系担体)と、調製例24で得られた触媒(Al系担体)を、各担体の質量比([ZrO系担体]:[Al系担体])が50:50となるようにして物理混合して、排ガス浄化用触媒を得た。
【0101】
(比較例10)
調製例6で得られた触媒(Pd(0.2)−Fe(0.52)/ZrO系担体)と、調製例22で得られた触媒(Pd(0.8)/Al系担体)を、各担体の質量比([ZrO系担体]:[Al系担体])が50:50となるようにして物理混合して、排ガス浄化用触媒を得た。
【0102】
(比較例11)
調製例15で得られた触媒(Fe(0.52)/ZrO系担体)と、調製例23で得られた触媒(Pd(1.0)/Al系担体)を、各担体の質量比([ZrO系担体]:[Al系担体])が50:50となるようにして物理混合して、排ガス浄化用触媒を得た。
【0103】
実施例1〜5及び比較例1〜11で得られた排ガス浄化用触媒の特性を表2に示す。なお、実施例1〜5及び比較例1〜11で得られた全ての排ガス浄化用触媒において、排ガス浄化用触媒中のパラジウムの総量は、ZrO系担体とAl系担体の総量100質量部に対して0.5質量部である。
【0104】
【表2】
【0105】
(実施例6)
調製例5で得られた触媒(Pd(0.5)−Fe(0.52)/ZrO系担体)と、調製例21で得られた触媒(Pd(0.5)/Al系担体)と、調製例25で得られた触媒(Pd(0.5)/CeO−ZrO系担体(i))とを、各担体の質量比([ZrO系担体]:[Al系担体]:[CeO−ZrO系担体(i)])が50:25:25となるようにして混合することにより排ガス浄化用触媒を製造した。触媒の特性を表3に示す。
【0106】
(比較例12)
調製例13で得られた触媒(Pd(0.5)/ZrO系担体)と、調製例21で得られた触媒(Pd(0.5)/Al系担体)と、調製例25で得られた触媒(Pd(0.5)/CeO−ZrO系担体(i))とを、各担体の質量比([ZrO系担体]:[Al系担体]:[CeO−ZrO系担体(i)])が50:25:25となるようにして混合することにより排ガス浄化用触媒を製造した。触媒の特性を表3に示す。
【0107】
【表3】
【0108】
(比較例13)
調製例26で得られた触媒(Pd(1.0)−Fe(0.52)/CeO−ZrO系担体(i))と、調製例24で得られた触媒(Al系担体)とを用い、各担体の質量比([CeO−ZrO系担体(i)]:[Al系担体])が50:50となるようにして混合することにより排ガス浄化用触媒を製造した。触媒の特性を表4に示す。
【0109】
(比較例14)
調製例27で得られた触媒(Pd(1.0)−Fe(0.52)/CeO−ZrO系担体(ii))と、調製例24で得られた触媒(Al系担体)とを用い、各担体の質量比([CeO−ZrO系担体(ii)]:[Al系担体])が50:50となるようにして混合することにより排ガス浄化用触媒を製造した。触媒の特性を表4に示す。
【0110】
【表4】
【0111】
(比較例15)
調製例23で得られた触媒(Pd(1.0)/Al系担体)と、調製例24で得られた触媒(Al系担体)とを用い、各担体の質量比([調製例23中のAl系担体]:[調製例24中のAl系担体])が50:50となるようにして混合することにより排ガス浄化用触媒を製造した。触媒の特性を表5に示す。
【0112】
(比較例16)
調製例28で得られた触媒(Pd(1.0)−Fe(0.52)/Al系担体と、調製例24で得られた触媒(Al系担体)とを用い、各担体の質量比([調製例28中のAl系担体]:[調製例24中のAl系担体])が50:50となるようにして混合することにより排ガス浄化用触媒を製造した。触媒の特性を表5に示す。
【0113】
【表5】
【0114】
[実施例1〜6及び比較例1〜16で得られた排ガス浄化用触媒の特性評価]
〈耐久試験〉
実施例1〜6及び比較例1〜16で得られた排ガス浄化用触媒をそれぞれ用いて、以下のようにして耐久試験を行った。すなわち、各触媒2.5gに対して、1000℃の温度条件下においてガス流量が0.5L/分となるようにして、H(5容量%)とHO(3容量%)とN(残部)とからなるリッチガスと、O(5容量%)とHO(3容量%)とN(残部)とからなるリーンガスとを、リッチガスを1分間供給した後にリーンガスを9分間供給するようにして、交互に切り替えながら供給し、各触媒にリッチガス及びリーンガスを交互に5時間供給し続けた。
【0115】
〈NO浄化活性の測定試験〉
上記耐久試験を実施した後の1〜6及び比較例1〜16で得られた排ガス浄化用触媒をそれぞれ1g用い、以下のようにしてNO(窒素酸化物)の20%浄化温度を測定した。すなわち、先ず、測定装置としてベスト測器社製の商品名「CATA−5000−SP」を用い、該測定装置に触媒を1gを設置した。そして、前記触媒を1gに対して、O(0.43容量%)、NO(0.12容量%)、CO(1.12容量%)、C(0.17容量%C(炭素原子換算による容量%))、HO(10容量%)、CO(10容量%)、SO(20ppm)及びN(残部)からなるガスを、10L/分の流量で90℃(初期温度)から20℃/分の昇温速度で昇温しながら接触させて、触媒に接触した後のガス(出ガス)中のNOの濃度を測定し、触媒に接触する前のガス中のNOの量を基準として、NOが20%浄化された温度(NO20%浄化温度)を求めた。各触媒のNO20%浄化温度を表6に示す。なお、実施例1〜6と比較例1〜11で得られた排ガス浄化用触媒のNO20%浄化温度と、排ガス浄化用触媒中のパラジウムの全量に対するジルコニア系担体に担持されたパラジウムの量(割合)との関係を示すグラフを図1に示す。
【0116】
【表6】
【0117】
表6及び図1に示す結果からも明らかなように、ジルコニア系担体に担持されているパラジウムの量が、排ガス浄化用触媒中のパラジウムの全量に対して20質量%である比較例10で得られた排ガス浄化用触媒においてはNO浄化性能が必ずしも十分なものとはならないことが確認された。また、ジルコニア系担体に担持されているパラジウムの量が、排ガス浄化用触媒中のパラジウムの全量に対して100質量%である比較例9で得られた排ガス浄化用触媒においてもNO浄化性能が必ずしも十分なものとはならないことが確認された。このような結果や図1に示すグラフから、ジルコニア系担体に担持されているパラジウムの量が排ガス浄化用触媒中のパラジウムの全量に対して30質量%以上95質量%以下の範囲となっている実施例1〜5で得られた排ガス浄化用触媒においては、十分に高度なNO浄化性能が得られることが分かった。
【0118】
また、表6及び図1に示す結果からも明らかなように、鉄を担持せずにパラジウムのみを担持したジルコニア系担体からなる触媒と、アルミナ系担体にパラジウムを担持した触媒とを組み合わせた比較例2〜7で得られた排ガス浄化用触媒においてはいずれもNO浄化性能が必ずしも十分なものとはならなかった。また、表6及び図1に示す結果からも明らかなように、アルミナ系担体にのみパラジウムを担持している比較例8及び比較例11で得られた排ガス浄化用触媒においては、耐久試験後におけるNO浄化性能が必ずしも十分なものとはならないことも分かった。更に、パラジウムのみを担持したジルコニア系担体からなる触媒とアルミナ系担体のみからなる触媒とを組み合わせた比較例1で得られた排ガス浄化用触媒と、鉄とパラジウムとを担持したジルコニア系担体からなる触媒とアルミナ系担体のみからなる触媒とを組み合わせた比較例9で得られた排ガス浄化用触媒とを比較すると、ジルコニア系担体にパラジウムとともに鉄を担持することにより、耐久試験後の触媒活性が向上することが分かった。また、このような結果と、実施例1〜5で得られた排ガス浄化用触媒と比較例2〜6で得られた排ガス浄化用触媒のNO浄化性能の結果を併せ鑑みると、ジルコニア系担体に触媒中の全パラジウムを担持している場合に鉄を更に担持して得られる効果(比較例9において比較例1と比較して達成されている効果)と比較して、パラジウム及び鉄(Pd−Fe)と、パラジウム(Pd)とを分離してジルコニア系担体とアルミナ系担体とに所定の割合で担持した場合(実施例1〜5)においては、耐熱試験後におけるNO浄化性能が飛躍的に向上することが分かり、これにより十分に高度なNO浄化性能が得られることが分かった。
【0119】
以上のような結果から、ジルコニア系担体に鉄とパラジウムとを担持した触媒と、アルミナ系担体にパラジウムを担持した触媒とを組み合わせて用い、且つ、ジルコニア系担体に担持されているパラジウムの量が排ガス浄化用触媒中のパラジウムの全量に対して30質量%以上95質量%以下の範囲となっている場合(実施例1〜5)には、Pd−Fe活性点とPd活性点を異なる担体に分離担持した効果が十分に得られ、これにより1000℃、5時間の耐久試験後の触媒のNO浄化性能が十分に高度なものとなることが確認された。
【0120】
また、表6に示す結果からも明らかなように、実施例6と比較例12で得られた排ガス浄化用触媒は、相違点がジルコニア系担体への鉄の担持の有無のみにあることを併せ勘案すれば、ジルコニア系担体に鉄とパラジウムとを担持した触媒を用いた場合(実施例6)に、セリア−ジルコニア系複合酸化物担体にパラジウムを担持した触媒を組み合わせて利用した場合においても、1000℃、5時間の耐久試験後の触媒のNO浄化性能が十分に高度なものとなることが確認された。このように、実施例6で得られた排ガス浄化用触媒のNO浄化活性の測定試験の結果から、ジルコニア系担体に鉄とパラジウムとを担持した触媒と、アルミナ系担体にパラジウムを担持した触媒と、セリア−ジルコニア系複合酸化物担体にパラジウムを担持した触媒とを組み合わせて利用した場合においても、Pd−Fe活性点とPd活性点を異なる担体に分離担持した効果が十分に得られ、耐久試験後においてもNO浄化性能が十分に高度なものとなることが確認された。
【0121】
さらに、表6に示す結果からも明らかなように、セリア−ジルコニア系担体にパラジウムと鉄を担持した触媒を用いた比較例13〜14で得られた排ガス浄化用触媒においてはNO浄化性能が必ずしも十分なものとならないことが明らかとなった。また、表6に示す結果からも明らかなように、アルミナ系担体上に鉄とパラジウムを担持した触媒を利用した場合(比較例16)と、アルミナ系担体上にパラジウムのみを担持した触媒を利用した場合(比較例15)とを対比すれば、アルミナ系担体上にパラジウムと鉄を担持したとしてもPd−Fe活性点が必ずしも十分な効果を発揮しないことが分かった。このような結果は、耐久試験中に高温によって鉄とアルミナとが固相反応を起してPdとFeとの相互作用が十分に得られず、Pd−Fe活性点が十分に機能しなかったことに起因するものと本発明者らは推察する。
【0122】
以上のような結果から、第一触媒として「ジルコニア系担体に鉄とパラジウムとを担持した触媒」を用い、第二触媒として「アルミナ系担体にパラジウムを担持した触媒、又は、アルミナ系担体及びセリア−ジルコニア系複合酸化物担体の混合担体にパラジウムを担持した触媒」を用い、第一触媒と第二触媒とを組み合わせて、第一触媒中のジルコニア系担体に担持されているパラジウムの量が排ガス浄化用触媒中のパラジウムの全量に対して30質量%以上95質量%以下の範囲とした場合に、Pd−Fe活性点とPd活性点を異なる担体に分離担持した効果が十分に得られ、1000℃、5時間の耐久試験後の触媒のNO浄化性能が十分に高度なものとなることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0123】
以上説明したように、本発明によれば、十分に優れた触媒活性と十分に高度な耐熱性とを有し、高温に長期間晒された後においても十分に高度な触媒活性を示すことが可能な排ガス浄化用触媒を提供することが可能となる。このように、本発明の排ガス浄化用触媒は、高温耐久性に優れることから特に自動車からの排ガスを浄化するための触媒等として有用である。
図1