特許第5769691号(P5769691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769691
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】メタルCリングの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/08 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
   F16J15/08 A
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-271710(P2012-271710)
(22)【出願日】2012年12月12日
(65)【公開番号】特開2014-114941(P2014-114941A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2014年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】田窪 毅
(72)【発明者】
【氏名】池田 毅
(72)【発明者】
【氏名】本田 照一
(72)【発明者】
【氏名】柏原 一之
【審査官】 中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−366072(JP,A)
【文献】 特開平11−101346(JP,A)
【文献】 特開平06−300136(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0070272(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジアル内方向に開口する横断面C字形のメタルCリングの製造方法に於て、
円形短筒状素材(2)の内径寸法(D)を維持しつつ、該円形短筒状素材(2)の幅中央部(7)の1箇所をラジアル外方向に延伸させる塑性加工によってラジアル外方向に突出するU字状山型の膨出部(3)を形成し、次に、該膨出部(3)の裾部(4)を切断してラジアル内方向へ開口する横断面U字形の中間部材(5)を分離し、次に、この中間部材(5)のラジアル内端部(6)が相互に接近するように塑性加工して横断面C字形とすることを特徴とするメタルCリングの製造方法。
【請求項2】
ラジアル内方向に開口する横断面C字形のメタルCリングの製造方法に於て、
円形短筒状素材(2)の内径寸法(D)を維持しつつ、該円形短筒状素材(2)の幅中央部(7)の1箇所を、凹凸形状を有する一対のロールにて成形する方法、又は、部分的なプレスを繰り返して成形する方法のいずれかによって、ラジアル外方向に延伸させ、ラジアル外方向に突出するU字状山型の膨出部(3)を形成し、次に、該膨出部(3)の裾部(4)を切断してラジアル内方向へ開口する横断面U字形の中間部材(5)を分離し、次に、この中間部材(5)のラジアル内端部(6)が相互に接近するように塑性加工して横断面C字形とすることを特徴とするメタルCリングの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルCリングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、メタルCリングの製造方法に於て、金属帯板の両端を溶接等で連結し、あるいは、薄肉パイプを輪切りして、円形短筒状素材(フープ材とも言う)から、製造する(例えば、特許文献1参照)。即ち、このような円形短筒状素材を、一対のロールで挟みながら徐々に断面形状をC型に成形していく方法である(例えば、特許文献1参照)。
ところで、Cリングは対向する2平面間の密封(シール)を行うシール材であり、その開口部が、ラジアル外方向、又は、ラジアル内方向を向いた2種類のもの(外圧用と内圧用)が存在している。
図7に於て、ラジアル外方向に開口する横断面C字形のメタルCリング21についての製造方法を示し、円形短筒状素材20を一対のロールで挟みながら徐々に断面をC字形に成形していく方法である。この方法では、図7に示すように、最終的に断面C字形の両端部の径Dは(図7に2点鎖線にて示す)元の円形短筒状素材20の外径Dよりも大きくなり、円形短筒状素材20は周方向に延伸されている。この場合、塑性加工上、特に問題はない。
【0003】
しかし、ロール成形で内側に開口部22があるメタルCリング23を作製する場合、図8に示すように、断面C字形の両端部24の径Dは(図8に2点鎖線にて示す)元の円形短筒状素材20の外径Dよりも小さくなり、周方向に圧縮塑性変形を受ける。円形短筒状素材20は薄肉なので、ほとんどの場合、周方向の圧縮力により、端部24が周方向に均一に圧縮されずに、(座屈により)局部的に凹んでしわが発生し、シール製品として成立しない(流体漏れが発生する)という致命的な欠点があった。即ち、メタルCリング23は、平行な2平面に圧接して密封性を発揮するため、図8に示した圧接密封領域(Z)の平滑性が極めて重要である。ところが上述した端部24に発生する局部的な凹み(しわ)は、この圧接密封領域Zにも発生して、十分な密封性能(シール性)を発揮できない虞れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平01−172682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、ロール成形で内側に開口部があるメタルCリングを作製すると、端部乃至圧接密封領域が周方向に均一に圧縮されずに、局部的に凹んでしわが発生し、密封性能が低下して、シール製品として成立しない点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明に係るメタルCリングの製造方法は、ラジアル内方向に開口する横断面C字形のメタルCリングの製造方法に於て、円形短筒状素材の内径寸法を維持しつつ、該円形短筒状素材の幅中央部の1箇所をラジアル外方向に延伸させる塑性加工によってラジアル外方向に突出するU字状山型の膨出部を形成し、次に、該膨出部の裾部を切断してラジアル内方向へ開口する横断面U字形の中間部材を分離し、次に、この中間部材のラジアル内端部が相互に接近するように塑性加工して横断面C字形とする方法である。
【0007】
また、ラジアル内方向に開口する横断面C字形のメタルCリングの製造方法に於て、円形短筒状素材の内径寸法を維持しつつ、該円形短筒状素材の幅中央部の1箇所を、凹凸形状を有する一対のロールにて成形する方法、又は、部分的なプレスを繰り返して成形する方法のいずれかによって、ラジアル外方向に延伸させ、ラジアル外方向に突出するU字状山型の膨出部を形成し、次に、該膨出部の裾部を切断してラジアル内方向へ開口する横断面U字形の中間部材を分離し、次に、この中間部材のラジアル内端部が相互に接近するように塑性加工して横断面C字形とする方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のメタルCリングの製造方法によれば、製造工程上、金属(素材)を圧縮塑性変形させる工程がなく、従って、(座屈による)しわ等を発生せずに内側に開口部があるメタルCリングとして安定して密封性能に優れたものを製造することができる。また、従来のメタルCリングよりも低い締付力により内圧をシールすることが可能な内側開口型のメタルCリングを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の一形態によって製造されたメタルCリングを示す断面側面図である。
図2】円形短筒状素材を示す要部拡大端面図である。
図3】膨出部形成工程を示す要部拡大端面図である。
図4】中間部材分離工程を示す要部拡大端面図である。
図5】内端部接近工程を示す要部拡大端面図である。
図6】変形例を示すと共に作用説明のための要部拡大断面図である。
図7】従来例を示す断面側面図である。
図8】他の従来例を示す断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明に係る製造方法によって製作されたメタルCリング1を示し、このメタルCリング1は、ラジアル内方向に開口する開口部10を有する横断面C字形であり、このメタルCリング1は、例えば、アルミニウム、ステンレス、鉄鋼等から成る。メタルCリング1の横断面の外径寸法dを、例えば、5mm〜7mmに設定する。メタルCリング1の外形寸法dを、例えば、 500mm〜 700mmに設定する。
【0011】
次に、本発明の実施の一形態のメタルCリングの製造方法について説明する。まず、図2に示すような円形短筒状素材2の幅中央部7に、内径寸法Dを維持しつつ、塑性加工によって、図3に示すように、ラジアル外方向に突出するU字状山型の膨出部3を形成する(膨出部形成工程)。円形短筒状素材2は、一般に、フープ材と呼ばれる。
【0012】
膨出部形成工程は、具体的には、例えば、凹凸形状を形成した一対のロール(図示省略)にて成形する方法、部分的なプレスを繰り返して成形する方法、チューブハイドロフォーミング(外側に型を配置し、チューブに内圧を与えて型に沿わせる)による方法等による。
【0013】
円形短筒状素材2の幅寸法W図2参照)と、製造しようとするメタルCリング1の周長寸法L図1参照)を、W≧Lを満たすように設定する。W<Lの場合、メタルCリングを製造することができない。
【0014】
次に、図4に示すように、膨出部3の裾部4を切断してラジアル内方向へ開口する横断面U字形の中間部材5を分離する(中間部材分離工程)。中間部材分離工程は、具体的には、例えば、ソーによる切断、レーザーによる切断等による。
【0015】
次に、図1図5に示すように、中間部材5(図4参照)のラジアル内端部6が相互に接近するように塑性加工して、開口部10を有する横断面C字形とする(内端部接近工程)。内端部接近工程は、具体的には、例えば、ロールフォーミング等による。
【0016】
なお、本発明は、設計変更可能であって、例えば、中間部材分離工程(図4)と内端部接近工程(図5)の間に、コイルバネ11を挿入するコイルバネ挿入工程を有するも良い。つまり、図4のU字状中間部材5内に(図6に示した)コイルバネ11を内装して、次に、内端部6を相互に接近するように塑性加工して、図6に示す断面図のメタルCリング1を作製するも、自由である。
【0017】
図6に示した拡大断面図に於て、本発明によって作製されたメタルCリングの使用方法及び作用効果を説明すると、対向する平行な2平面12,13の間の密封作用をなすシール材であって、開口部10はラジアル内方向(図6の下方向)に開口し、2平面12,13が矢印Y,Y方向から相互接近すると、横断面に於て(開口部10の位置から略直交する)圧接密封領域Z,Zにて圧接力Fを受けて、開口部10が僅かに閉じると共に、横断面形状が僅かに楕円形となるように、圧縮弾性変形して、密封作用をなす。なお、内部にコイルバネ11が内装されている場合は、圧接力Fへの弾発的反力を増加できる。本発明の上述の製法によれば、開口部10を形成する両端部14,14から圧接密封領域Z,Zを含み、メタルCリング1の全外周面にはしわ等の微小凹凸部が全く発生せず、特に圧接密封領域Z,Zにそのような微小凹凸部が存在していない平滑面であることによって、流体シール性(密封性能)は安定して優れたものとなる。あるいは、従来の図8のメタルCリング23に比較して、低い締付力で十分な密封性能を発揮可能となり、図6に於て、圧接力Fが小さくて済み、矢印Y方向の締付力が低減できる。例えば、2平面12,13を形成する部材の材質が脆い場合に好適であるといえる。
【0018】
以上のように、本発明は、ラジアル内方向に開口する横断面C字形のメタルCリングの製造方法に於て、円形短筒状素材2の幅中央部7に、塑性加工によってラジアル外方向に突出するU字状山型の膨出部3を形成し、次に、膨出部3の裾部4を切断してラジアル内方向へ開口する横断面U字形の中間部材5を分離し、次に、この中間部材5のラジアル内端部6が相互に接近するように塑性加工して横断面C字形とするので、製造工程上、金属(素材)を縮める工程(圧縮塑性変形工程)がなく、従って、(座屈による)しわ等の微小凹凸部を発生させることなく、良質な(内側に開口部がある)メタルCリング1を製造することができる。また、従来のメタルCリングよりも低い締付力により内圧をシールすることが可能な内側開口型のメタルCリング1を製造することができる。
【符号の説明】
【0019】
2 円形短筒状素材
3 膨出部
4 裾部
5 中間部材
6 ラジアル内端部
7 幅中央部
D 内径寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8