【実施例1】
【0030】
実施例1の発電システムは、固体酸化物形燃料電池(以下、SOFCと称する。)とガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたトリプルコンバインドサイクル(Triple Combined Cycle:登録商標)である。このトリプルコンバインドシステムは、ガスタービンコンバインドサイクル発電(GTCC)の上流側にSOFCを設置することにより、SOFC、ガスタービン、蒸気タービンの3段階で電気を取り出すことができるため、極めて高い発電効率を実現することができる。なお、以下の説明では、本発明の燃料電池として固体酸化物形燃料電池を適用して説明するが、この形式の燃料電池に限定されるものではない。
【0031】
図1は、本発明の実施例1に係る発電システムを表す概略構成図、
図2は、実施例1の発電システムにおける停止時のタイムチャートである。
【0032】
実施例1において、
図1に示すように、発電システム10は、ガスタービン11及び発電機12と、SOFC13と、蒸気タービン14及び発電機15とを有している。この発電システム10は、ガスタービン11による発電と、SOFC13による発電と、蒸気タービン14による発電とを組み合わせることで、高い発電効率を得るように構成したものである。
【0033】
ガスタービン11は、圧縮機21、燃焼器22、タービン23を有しており、圧縮機21とタービン23は、回転軸24により一体回転可能に連結されている。圧縮機21は、空気取り込みライン25から取り込んだ空気(酸化性ガス)Aを圧縮する。燃焼器22は、圧縮機21から第1圧縮空気供給ライン(第1圧縮酸化性ガス供給ライン)26を通して供給された圧縮空気(圧縮酸化性ガス)A1と、第1燃料ガス供給ライン27から供給された燃料ガスL1とを混合して燃焼する。タービン23は、燃焼器22から排ガス供給ライン28を通して供給された排ガス(燃焼ガス)Gにより回転する。なお、図示しないが、タービン23は、圧縮機21で圧縮された圧縮空気A1が車室を通して供給され、この圧縮空気A1を冷却空気として翼などを冷却する。発電機12は、タービン23と同軸上に設けられており、タービン23が回転することで発電することができる。なお、ここでは、燃焼器22に供給する燃料ガスL1及び後述する燃料ガスL2、燃料ガスL4の各燃料ガスは、例えば、液化天然ガス(LNG)、水素(H
2)および一酸化炭素(CO)、メタン(CH
4)などの炭化水素ガス、石炭など炭素質原料のガス化設備により製造したガスを用いることが可能である。
【0034】
SOFC13は、還元剤としての高温の燃料ガスと、酸化剤としての高温の空気(酸化性ガス)とが供給されることで、所定の作動温度にて反応して発電を行うものである。このSOFC13は、圧力容器内に空気極と固体電解質と燃料極が収容されて構成される。空気極に圧縮機21で圧縮された一部の圧縮空気(圧縮酸化性ガス)A2が供給され、燃料極に燃料ガスL2が供給されることで発電を行う。また、SOFC13に供給される酸化性ガスは、酸素を略15%〜30%含むガスであり、代表的には空気が好適であるが、空気以外にも燃焼排ガスと空気の混合ガスや、酸素と空気の混合ガスなどが使用可能である(以下、SOFC13に供給される酸化性ガスを空気という)。
【0035】
このSOFC13は、第1圧縮空気供給ライン26から分岐した第2圧縮空気供給ライン(第2圧縮酸化性ガス供給ライン)31が連結され、圧縮機21が圧縮した一部の圧縮空気A2を空気極の導入部に供給することができる。この第2圧縮空気供給ライン31は、供給する空気量を調整可能な制御弁32と、圧縮空気A2を昇圧可能なブロワ(昇圧機)33とが空気の流れ方向に沿って設けられている。制御弁32は、第2圧縮空気供給ライン31における空気の流れ方向の上流側に設けられ、ブロワ33は、制御弁32の下流側に設けられている。なお、制御弁32とブロワ(昇圧機)33の配置は、
図1の配置に限定されることはなく、ブロワ(昇圧機)や制御弁の形式によって順序を逆にして配置してもよい。SOFC13は、空気極で用いられた排空気(排酸化性ガス)A3を排出する排空気ライン34が連結されている。この排空気ライン(排酸化性ガスライン)34は、空気極で用いられた排空気A3を外部に排出する排出ライン35と、燃焼器22に連結される排酸化性ガス供給ライン36とに分岐される。排出ライン35は、排出する空気量を調整可能な制御弁37が設けられ、排酸化性ガス供給ライン36は、循環する空気量を調整可能な遮断弁38が設けられている。
【0036】
また、SOFC13は、燃料ガスL2を燃料極の導入部に供給する第2燃料ガス供給ライン41が設けられている。第2燃料ガス供給ライン41は、供給する燃料ガス量を調整可能な制御弁42が設けられている。SOFC13は、燃料極で用いられた排燃料ガスL3を排出する排燃料ライン43が連結されている。この排燃料ライン43は、外部に排出する排出ライン44と、燃焼器22に連結される排燃料ガス供給ライン45とに分岐される。排出ライン44は、排出する燃料ガス量を調整可能な制御弁46が設けられ、排燃料ガス供給ライン45は、供給する燃料ガス量を調整可能な制御弁47と、燃料を昇圧可能なブロワ48が排燃料ガスL3の流れ方向に沿って設けられている。制御弁47は、排燃料ガス供給ライン45における排燃料ガスL3の流れ方向の上流側に設けられ、ブロワ48は、制御弁47の排燃料ガスL3の流れ方向の下流側に設けられている。なお、制御弁47とブロワ(昇圧機)48の配置は
図1の配置に限定されることはなく、ブロワ(昇圧機)や制御弁の形式によっては順序を逆にして配置してもよい。
【0037】
また、SOFC13は、排燃料ライン43と第2燃料ガス供給ライン41とを連結する燃料ガス再循環ライン49が設けられている。燃料ガス再循環ライン49は、排燃料ライン43の排燃料ガスL3を第2燃料ガス供給ライン41に再循環する再循環ブロワ(再循環送風機)50が設けられている。
【0038】
蒸気タービン14は、排熱回収ボイラ(HRSG)51で生成された蒸気によりタービン52を回転するものである。この排熱回収ボイラ51は、ガスタービン11(タービン23)からの排ガスライン53が連結されており、空気と高温の排ガスGとの間で熱交換を行うことで、蒸気Sを生成する。蒸気タービン14(タービン52)は、排熱回収ボイラ51との間に、蒸気供給ライン54と給水ライン55とが設けられている。そして、給水ライン55は、復水器56と給水ポンプ57とが設けられている。発電機15は、タービン52と同軸上に設けられており、タービン52が回転することで発電することができる。なお、排熱回収ボイラ51で熱が回収された排ガスGは、大気へ放出される。なお、本実施例においては排ガスGをHRSG51の熱源として利用しているが、排ガスGはHRSG以外の各種機器の熱源として利用することも可能である。
【0039】
ここで、実施例1の発電システム10の作動について説明する。発電システム10を起動する場合、ガスタービン11が起動した後に蒸気タービン14、SOFC13が起動する。
【0040】
まず、ガスタービン11にて、圧縮機21が空気Aを圧縮し、燃焼器22が圧縮空気A1と燃料ガスL1とを混合して燃焼し、タービン23が排ガスGにより回転することで、発電機12が発電を開始する。次に、蒸気タービン14にて、排熱回収ボイラ51により生成された蒸気Sによりタービン52が回転し、これにより発電機15が発電を開始する。
【0041】
SOFC13では、まず、圧縮空気A2を供給して昇圧を開始し、加熱を開始する。排出ライン35の制御弁37と排酸化性ガス供給ライン36の遮断弁38を閉止し、第2圧縮空気供給ライン31のブロワ33を停止した状態で、制御弁32を所定開度だけ開放する。すると、圧縮機21で圧縮した一部の圧縮空気A2が第2圧縮空気供給ライン31からSOFC13側へ供給される。これにより、SOFC13側は、圧縮空気A2が供給されることで圧力が上昇する。
【0042】
一方、SOFC13では、燃料極側に燃料ガスL2、図示されていない圧縮空気ラインの分岐から圧縮空気(酸化性ガス)を供給するか、窒素等の不活性ガスを供給して昇圧を開始する。排出ライン44の制御弁46と排燃料ガス供給ライン45の制御弁47を閉止し、ブロワ48を停止した状態で、第2燃料ガス供給ライン41の制御弁42を開放すると共に、燃料ガス再循環ライン49の再循環ブロワ50を駆動する。なお、再循環ブロワ50は燃料極側の加圧前に起動していてもよい。すると、燃料ガスL2が第2燃料ガス供給ライン41からSOFC13側へ供給されると共に、排燃料ガスL3が燃料ガス再循環ライン49により再循環する。これにより、SOFC13側は、燃料ガスL2、空気、不活性ガス等が供給されることで圧力が上昇する。
【0043】
そして、SOFC13の空気極側の圧力が圧縮機21の出口圧力になると、制御弁32を全開にすると共に、ブロワ33が起動していなければブロワ33を駆動する。それと同時に遮断弁38を開放してSOFC13からの排空気A3を排酸化性ガス供給ライン36から燃焼器22に供給する。このとき、制御弁37も開放してSOFC13からの排空気A3の一部を排出ライン35から排出してもよい。すると、圧縮空気A2がブロワ33によりSOFC13側へ供給される。それと同時に制御弁46を開放してSOFC13からの排燃料ガスL3を排出ライン44から排出する。そして、SOFC13における空気極側の圧力と燃料極側の圧力とが目標圧力に到達すると、SOFC13の昇圧が完了する。
【0044】
その後、SOFC13の圧力制御が安定したら、制御弁37が開となっている場合は閉止する一方、遮断弁38を開放する。すると、SOFC13からの排空気A3が排酸化性ガス供給ライン36から燃焼器22に供給される。また、排燃料ガスL3の成分が燃焼器へ投入可能な成分となったら、制御弁46を閉止する一方、制御弁47を開放してブロワ48を駆動する。すると、SOFC13からの排燃料ガスL3が排燃料ガス供給ライン45から燃焼器22に供給される。このとき、第1燃料ガス供給ライン27から燃焼器22に供給される燃料ガスL1を減量する。
【0045】
ここで、ガスタービン11の駆動による発電機12での発電、SOFC13での発電、蒸気タービン14の駆動により発電機15での発電が全て行われることとなり、発電システム10が定常運転となる。
【0046】
ところで、上述した発電システムにて、ガスタービン11は、圧縮機21が圧縮した圧縮空気A1を燃焼器22と燃料ガスL1を燃焼器22に供給すると、燃焼器22は、圧縮空気A1と燃料ガスL1を混合して燃焼し、発生した排ガス(燃焼ガス)Gによりタービン23を回転して発電機12が発電を行う。一方、SOFC13は、圧縮機21が圧縮した一部の圧縮空気A2と燃料ガスL2を供給することで、圧縮空気A2と燃料ガスL2が反応して発電を行う。
【0047】
このようにガスタービン11とSOFC13が作動して発電を行っている状態から、SOFC13を停止する場合、SOFC13は、ガスタービン11から切り離されることで、圧縮機21からの圧縮空気A2の供給がなくなることから、冷却に長時間を要してしまう。しかし、SOFC13は、その停止直後の高温領域においては、燃料極の酸化による劣化を防止する必要から、速やかに冷却することが望ましい。
【0048】
そこで、実施例1の発電システム10では、燃料ガス再循環ライン49に冷却器64を設け、制御装置(制御部)60は、第2圧縮空気供給ライン31と第2燃料ガス供給ライン41を遮断してSOFC13を停止したときに、この冷却器64を作動させるようにしている。そのため、SOFC13を停止したとき、燃料ガス再循環ライン49によりSOFC13を再循環する排燃料ガスL3を冷却器64により冷却することで、冷却された排燃料ガスL3によりSOFC13を冷却することができ、このSOFC13を速やかに冷却することができる。
【0049】
この場合、燃料ガス再循環ライン49に再循環ブロワ50が設けられていることから、制御装置60は、SOFC13を停止したとき、この再循環ブロワ50を作動させることで、冷却器64により冷却した排燃料ガスL3をSOFC13に強制的に循環し、このSOFC13を効率的に冷却することができる。
【0050】
具体的に説明すると、燃料ガス再循環ライン49は、再循環ブロワ50より排燃料ガスのL3流れ方向の下流側に遮断弁61が設けられている。また、燃料ガス再循環ライン49は、この遮断弁61を迂回する燃料ガスバイパスライン62が設けられ、この燃料ガスバイパスライン62に遮断弁63が設けられると共に、この遮断弁63より排燃料ガスL3の流れ方向の下流側に冷却器64が設けられている。この冷却器64は、熱交換器であって、冷却水を流通可能な図示しない冷却配管が配置されており、燃料ガス再循環ライン49を流れる排燃料ガスL3は、冷却器64内に配置された冷却配管を流れる冷却水と熱交換することで冷却される。ここで、冷却器64として、冷却水によるものだけではなく、排燃料ガスL3は空気やその他の低温の熱媒との熱交換により冷却させることもできる。
【0051】
従って、制御装置60は、SOFC13の運転時には、遮断弁61を開放する一方、遮断弁63を閉止する。そのため、SOFC13から排出された排燃料ガスL3は、燃料ガス再循環ライン49を通って再循環することができる。また、SOFC13を停止したときには、遮断弁61を閉止する一方、遮断弁63を開放する。そのため、SOFC13から排出された排燃料ガスL3は、燃料ガス再循環ライン49から燃料ガスバイパスライン62を通って再循環することができる。このとき、冷却器64を作動することで、排燃料ガスL3を冷却することができる。
【0052】
また、パージガスNをSOFC13の燃料極に供給するパージガス供給ライン65が設けられ、このパージガス供給ライン65に制御弁66が設けられている。このパージガスNは、不活性ガスが望ましく、例えば、窒素(N)や二酸化炭素とすることが望ましい。そして、制御装置60は、SOFC13を停止したとき、SOFC13の温度が高く、燃料極側を還元性雰囲気とする必要がある場合は、還元性雰囲気を維持するために、第2燃料ガス供給ライン41の制御弁42の開放を継続して、燃料ガスL2と水又は蒸気(図示しない)を供給することが望ましい。その後、SOFC13の温度が低下して、SOFC13の温度が燃料極における酸化に対し、ある程度の耐性を有する場合には、燃料ガスL2に代えて、パージガス供給ライン65により所定量のパージガスNを燃料極に供給するようにしている。このとき、SOFC13や燃料ガス再循環ライン49などで構成される循環経路は、閉塞されていることから、圧力が上昇してしまう。そのため、制御弁46を所定開度だけ開放する、もしくは制御弁46にて圧力制御することで、パージガス供給ライン65から燃料極に供給したパージガスNの供給量と同等の量、または、それより若干多い量の排燃料ガスL3を排出ライン44により外部に排出するようにしている。また、若干多い量の排燃料ガスL3を排出する場合は、合わせて減圧が行われる。
【0053】
SOFC13は、空気極の圧力と燃料極の圧力を同等に維持する必要がある。そのため、制御装置60は、制御弁46を開放して燃料極側の排燃料ガスを排出ライン44から排出するとき、制御弁37を開放して空気極側の排空気A3を排出ライン35から排出することで、空気極の圧力と燃料極の圧力を同等に維持する。この場合、空気極と燃料極にそれぞれ圧力センサを設け、圧力センサが検出した空気極の圧力と燃料極の圧力に基づいて、各制御弁66,46,37の開度を調整することが望ましい。
【0054】
そして、SOFC13が予め設定された所定温度(例えば、400℃)まで低下したら、制御装置60は、制御弁66の開度を大きくすることで、パージガス供給ライン65から供給するパージガスにより還元性ガスを不活性ガスに変更する。すると、SOFC13や燃料ガス再循環ライン49を流れる排燃料ガスL3中の還元性ガスが外部に排出され、化学的に安定な不活性ガスに置換される。
【0055】
実施例1の発電システムの停止方法は、ガスタービン11の圧縮機21からSOFC13の空気極への圧縮空気A2の供給を停止する工程と、SOFC13の燃料極への燃料ガスL2の供給を停止する工程と、燃料極から排出される排燃料ガスL3を燃料極に再循環する工程と、燃料極から排出される排燃料ガスL3を冷却する工程とを有している。
【0056】
ここで、実施例1の発電システムの停止方法を
図2のタイムチャートを用いて具体的に説明する。なお、制御装置60は、各制御弁32,37,42,46,47,66と遮断弁38,61,63と各ブロワ33,48,50を制御可能となっている。
【0057】
実施例1の発電システムの停止方法において、
図1及び
図2に示すように、ガスタービン11とSOFC13が運転状態にあるとき、制御弁32,42,47及び遮断弁38,61を開放する一方、各制御弁37,46,66及び遮断弁63を閉止し、ブロワ33,48,50を作動する。すると、SOFC13は、圧縮空気A2が第2圧縮空気供給ライン31から空気極に供給される一方、燃料ガスL2が第2燃料ガス供給ライン41から燃料極に供給され、圧縮空気A2と燃料ガスL2が反応して発電が行われる。そして、SOFC13は、空気極から排空気A3が排空気ライン34に排出され、排酸化性ガス供給ラインを通して燃焼器22に供給される一方、燃料極から排燃料ガスL3が排燃料ライン43に排出され、排燃料ガス供給ライン45を通して燃焼器22に供給されると共に、燃料ガス再循環ライン49を通して燃料極に戻される。
【0058】
そして、時間t1にて、SOFC13を停止するため、制御弁32,47及び遮断弁38,61を閉止する一方、各制御弁37,42,46及び遮断弁63を開放(制御弁37,46は、例えば、半開)し、ブロワ33,48を停止し、冷却器64を作動する。すると、SOFC13は、空気極への圧縮空気A2の供給が停止される一方、燃料極への燃料ガスL2供給が継続され、燃料極の還元雰囲気が維持された状態で、発電が停止する。また、SOFC13は、燃料極から排燃料ライン43に排出された排燃料ガスL3が燃料ガス再循環ライン49を通して燃料極に循環されており、この排燃料ガスL3が冷却器64により冷却される。そして、この冷却された排燃料ガスL3が燃料極に導入されることで、この燃料極が冷却される。
【0059】
また、時間t2にて、SOFC13が予め設定された所定温度まで冷却されると、制御弁42を閉止する一方、制御弁66,46を開放する。また、SOFC13は、パージガスNがパージガス供給ライン65から燃料極に供給される一方、燃料ガス再循環ライン49の排燃料ガスL3が排出ライン44から外部に排出される。そのため、燃料極は、パージガスNにより還元雰囲気が不活性雰囲気に短時間で置換され、冷却器64により冷却された排燃料ガスL3により冷却が継続される。
【0060】
その後、時間t3にて、SOFC13は、冷却が継続されることで温度がさらに低下し、燃料極がパージガスNにより不活性雰囲気に置換されているので、健全性が維持される。なお、ここで、冷却器64を停止してもよい。
【0061】
このように実施例1の発電システムにあっては、圧縮機21と燃焼器22を有するガスタービン11と、空気極及び燃料極を有するSOFC13と、圧縮機21で圧縮した圧縮空気A1を燃焼器22に供給する第1圧縮空気ガス供給ライン26と、圧縮機21で圧縮した一部の圧縮空気A2を空気極に供給する第2圧縮空気ガス供給ライン31と、燃料ガスを燃焼器22に供給する第1燃料ガス供給ライン27と、燃料ガスを燃料極に供給する第2燃料ガス供給ライン41と、燃料極から排出される排燃料ガスL3を燃料極に戻す燃料ガス再循環ライン49と、燃料ガス再循環ライン49に設けられる冷却器64と、第2圧縮空気供給ライン31と第2燃料ガス供給ライン41を遮断してSOFC13を停止したときに冷却器64を作動させる制御装置60とを設ける。
【0062】
従って、SOFC13への圧縮空気と燃料ガスの供給を停止して停止したとき、燃料ガス再循環ライン49に設けられる冷却器64を作動させることで、この燃料ガス再循環ライン49を循環する排燃料ガスL3が冷却器64により冷却され、冷却された排燃料ガスL3がSOFC13の燃料極に導入されて冷却されることとなり、SOFC13を停止するときに速やかに冷却することができる。
【0063】
実施例1の発電システムでは、燃料ガス再循環ライン49に再循環ブロワ50を設け、制御装置60は、SOFC13を停止したとき、この再循環ブロワ50を作動させる。従って、再循環ブロワ50により燃料ガス再循環ライン49の排燃料ガスL3が強制的に循環されることとなり、冷却器64により冷却された排燃料ガスL3を効果的にSOFC13に導入することとなり、SOFC13の冷却効率を向上することができる。
【0064】
実施例1の発電システムでは、パージガスNを燃料極に供給するパージガス供給ライン65と、燃料極から排出される排燃料ガスL3を外部に排出する排出ライン44を設け、制御装置60は、SOFC13を停止したとき、パージガス供給ライン65により所定量のパージガスを燃料極に供給する一方、排出ライン44により燃料極からの排燃料ガスL3を外部に排出する。従って、冷却器64により排燃料ガスL3を介してSOFC13を冷却するとき、燃料極の酸化による劣化を防止するためにパージガスNを燃料極に供給する。また、排出ライン44から排燃料ガスL3を外部に排出することで、燃料極の圧力増加を防止することができる。
【0065】
実施例1の発電システムでは、SOFC13が予め設定された所定温度まで低下したら、制御装置60は、パージガス供給ライン65からパージガスを供給することで、燃料極内の排燃料ガスL3を全てパージガスNにより不活性雰囲気に置換することで、燃料極の劣化を防止することができる。
【0066】
実施例1の発電システムでは、冷却器64を熱交換器としている。従って、冷却器64の構造を簡素化することができる。
【0067】
また、実施例1の発電システムの停止方法にあっては、ガスタービン11の圧縮機21からSOFC13の空気極への圧縮空気A2の供給を停止する工程と、SOFC13の燃料極への燃料ガスL2の供給を停止する工程と、燃料極から排出される排燃料ガスL3を燃料極に再循環する工程と、燃料極から排出される排燃料ガスL3を冷却する工程とを有している。
【0068】
従って、燃料極から排出される排燃料ガスL3を冷却することで、冷却された排燃料ガスL3がSOFC13に導入されて冷却することとなり、このSOFC13を停止するときに速やかに冷却することができる。
【実施例5】
【0088】
図6は、本発明の実施例5に係る発電システムを表す概略構成図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0089】
実施例5の発電システム10は、
図6に示すように、燃料ガス再循環ライン49に冷却器101を設け、制御装置60は、第2圧縮空気供給ライン31と第2燃料ガス供給ライン41を遮断してSOFC13を停止したときに、この冷却器101を作動させるようにしている。そのため、SOFC13を停止したとき、燃料ガス再循環ライン49によりSOFC13を再循環する排燃料ガスL3を冷却器101により冷却することで、冷却された排燃料ガスL3によりSOFC13を冷却することができ、このSOFC13を速やかに冷却することができる。
【0090】
この場合、燃料ガス再循環ライン49に再循環ブロワ50が設けられていることから、制御装置60は、SOFC13を停止したとき、この再循環ブロワ50を作動させることで、冷却器101により冷却した排燃料ガスL3をSOFC13に強制的に循環し、このSOFC13を効率的に冷却することができる。
【0091】
具体的に説明すると、燃料ガス再循環ライン49は、再循環ブロワ50より排燃料ガスの流れ方向の下流側に冷却器101が設けられている。親水性炭化水素と水の混合液を貯留可能な貯留タンク102は、溶液供給ライン103の基端部が連結されており、この溶液供給ライン103は、制御弁104が設けられ、先端部が冷却器101まで延出されてスプレーノズル105が設けられている。このスプレーノズル105は、燃料ガス再循環ライン49における燃料ガスL3の流れ方向の下流側に向けて溶液を噴霧することできる。なお、水流量の調整が不要な場合は制御弁104を遮断弁とすることもできる。
【0092】
この場合、親水性炭化水素とは、メタノールやエタノールであって、水と重量比が1対1から1対3程度の範囲になるように混合する。また、貯留タンク102を燃料ガス再循環ライン49より上方に配置し、貯留された溶液を自重(自然落下)により溶液供給ライン103を通してスプレーノズル105から噴霧できるようにしている。
【0093】
従って、SOFC13を停止するとき、制御装置60は、冷却器101において、制御弁104を開放することで、貯留タンク102の水を溶液供給ライン103からスプレーノズル105に送り、このスプレーノズル105から燃料ガス再循環ライン49を流れる排燃料ガスL3に対して溶液を噴霧する。すると、噴霧された溶液(親水性炭化水素と水)が高温の排燃料ガスL3により気化されることで、この気化潜熱の発生により排燃料ガスL3を冷却することができる。
【0094】
また、溶液(親水性炭化水素と水)が燃料極に導入されることで、改質されて水素が発生して還元雰囲気に維持されることから、燃料極の酸化が防止される。
CH
3OH+H
2O → CO
2+3H
2
【0095】
なお、ここでは、貯留タンク102を燃料ガス再循環ライン49より上方に配置し、溶液を自重によりスプレーノズル105から噴霧するようにしたが、この構成に限定されるものではない。例えば、ポンプにより溶液を圧送してもよいし、タンク内に不活性ガス(例えば、窒素など)を加圧充填しておき、溶液を圧送してもよいし、また、エゼクタにより供給したりしてもよい。また、自重で噴霧する流体は水として、燃料ガスを別途供給することにより還元性雰囲気を維持してもよい。
【0096】
このように実施例5の発電システムにあっては、冷却器101として、燃料ガス再循環ライン49に親水性炭化水素と水の混合液を供給するスプレーノズル105を設けている。
【0097】
従って、燃料ガス再循環ライン49に親水性炭化水素と水の混合液を供給することで、溶液が燃料極で改質されて水素が発生し、還元雰囲気を維持することができると共に、溶液が高温の排燃料ガスL3により気化され、この気化潜熱の発生により排燃料ガスL3を冷却することができ、燃料極を冷却することができる。
【0098】
なお、上述した実施例にて、SOFC13の燃料極からの排燃料ライン43に排燃料ガス供給ライン45を連結すると共に、排燃料ライン43と第2燃料ガス供給ライン41を燃料ガス再循環ライン49により連結したが、この構成に限定されるものではない。例えば、排燃料ライン43と第2燃料ガス供給ライン41を燃料ガス再循環ライン49により連結し、燃料ガス再循環ライン49における再循環ブロワ50より排燃料ガスL3の流れ方向の下流側に排燃料ガス供給ライン45を連結してもよい。