(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記組成物が、約25〜75%の式(III)、(IV)、(V)、(VI)の化合物またはそれらの混合物、約5〜50%の前記ステロール、約0.5〜20%の前記PEGまたはPEG修飾脂質および約0.1〜15%の前記中性脂質を含む、請求項1、6または7に記載の組成物。
前記組成物が、約35〜65%の式(III)、(IV)、(V)、(VI)またはそれらの混合物、約15〜45%の前記ステロール、および約0.5〜10%の前記PEGまたはPEG修飾脂質ならびに約3〜15%の前記中性脂質を含む、請求項1、6または7に記載の組成物。
前記組成物が、約40〜65%の式(III)、(IV)、(V)、(VI)の化合物またはそれらの混合物、約25〜40%の前記ステロール、および約0.5〜5%の前記PEGまたはPEG修飾脂質、ならびに約5〜10%の前記中性脂質を含む、請求項1、6または7に記載の組成物。
前記組成物が、約50%の式(III)、(IV)、(V)、(VI)の化合物またはそれらの混合物、約38.5%の前記ステロール、および約1.5%の前記PEGまたはPEG修飾脂質、ならびに約10%の前記中性脂質を含む、請求項1、6または7に記載の組成物。
前記組成物が、約50%の式(V)の化合物またはその混合物、約38.5%の前記ステロール、および約1.5%の前記PEGまたはPEG修飾脂質、ならびに約10%の前記中性脂質を含む、請求項16に記載の組成物。
前記組成物が、約50%の式(VI)の化合物またはその混合物、約38.5%の前記ステロール、および約1.5%の前記PEGまたはPEG修飾脂質、ならびに約10%の前記中性脂質を含む、請求項16に記載の組成物。
前記アポリポタンパク質が、ApoA−I、ApoA−II、ApoA−IV、ApoA−VおよびApoE、ならびに活性のある多型形態、アイソフォーム、変異体および突然変異体、ならびにそれらの断片または切断形態からなる群から選択される、請求項35に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、作用剤、例えば、核酸ベースの作用剤(例えば、RNAべースのコンストラクト)を細胞または対象に送達する上で、その好適性のために本明細書に開示される脂質組成物を提供する。RNAべースのコンストラクトを含む脂質組成物を動物に投与し、標的遺伝子の発現を評価する方法。
【0025】
本発明は、式(I)
【化13】
式中、
各々のX
aおよびX
bは、各存在において、独立にC
1−6アルキレンであり、
nは、0、1、2、3、4、または5であり、
Aは、各存在において、NR
2または1〜3個のRで任意に置換された環状部分であり、
Bは、NRまたは1〜2個のRで任意に置換された環状部分であり、
各々のRは独立に、H、アルキル、
【化14】
但し、少なくとも1つのRは、であり、
【化15】
R
1は、各存在において、独立に、H、R
3、
【化16】
であり、
R
2は、各存在において、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、またはヘテロアルキニルであり、これらは各々、1つ以上の置換基で任意に置換されており、
R
3は、各存在において、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、またはヘテロアルキニルであり、これらは各々、1つ以上の置換基(例えば、親水性置換基)で任意に置換されており、
Yは、各存在において、独立に、O、NR
4、またはSであり、
R
4は、各存在において、独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、またはヘテロアルキニルであり、これらは各々、1つ以上の置換基で任意に置換されている、の化合物と、
ステロールと、
PEGまたはPEG修飾脂質と
を含む組成物を提供する。
【0026】
一実施形態では、式(I)の化合物は少なくとも2個の窒素を含む。一実施形態では、式(I)の化合物は少なくとも3個の窒素を含む。
【0027】
一実施形態では、nは、1、2、または3である。
【0028】
一実施形態では、少なくとも1つのAは環状部分である。一実施形態では、少なくとも1つのAは窒素を含有する環状部分である。一実施形態では、少なくとも1つのAはピペリジニル(piperidinyl)またはピペリジニル(piperizinyl)部分である。
【0029】
一実施形態では、nは2であり、かつ少なくとも1つのAは環状部分である。
【0030】
一実施形態では、少なくとも1つのBは環状部分である。一実施形態では、少なくとも1つのBは窒素を含有する環状部分である。一実施形態では、少なくとも1つのBはピペリジニル(piperidinyl)またはピペリジニル(piperizinyl)部分である。
【0031】
一実施形態では、nは2であり、かつ少なくとも1つのBは環状部分である。
【0032】
一実施形態では、X
aはC
2またはC
3アルキレンである。一実施形態では、X
bはC
2またはC
3アルキレンである。
【0033】
一実施形態では、X
aおよびX
bは各々、C
2またはC
3アルキレンである。一実施形態では、X
aおよびX
bは各々、C
2アルキレンである。
【0034】
一実施形態では、Rは、少なくとも3つの存在について、
【化17】
である。一実施形態では、nは2または3であり、かつRは、少なくとも3つの存在について、
【化18】
である。一実施形態では、nは3であり、かつRは、少なくとも5つの存在について、
【化19】
である。
【0035】
一実施形態では、Rは、少なくとも1つの存在(例えば、1つまたは2つの存在)について、Hである。一実施形態では、YはOまたはNR
4である。
【0036】
一実施形態では、YはOである。一実施形態では、各存在において、YはOである。
【0037】
一実施形態では、R
1はHである。一実施形態では、各存在において、R
1はHである。
【0038】
一実施形態では、R
1は
【化20】
であり、ここで、R
3は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、またはヘテロアルキニルであり、これらは各々、1つ以上の置換基(例えば、親水性置換基)で任意に置換されている。
【0039】
一実施形態では、R
1は
【化21】
であり、R
3は、1つ以上の置換基(例えば、親水性置換基)で任意に置換されたアルキルである。
【0040】
一実施形態では、R
3は−OHで置換されている。
【0041】
一実施形態では、R
1は、R
3、
【化22】
であり、ここで、R
3アルキルは、1つ以上の置換基で任意に置換されている。
【0042】
一実施形態では、R
3は親水性置換基で置換されている。一実施形態では、R
3は−OHで置換されている。
【0043】
一実施形態では、R
2は、アルキル、アルケニル、またはアルキニルである。一実施形態では、R
2は、アルキル(例えば、C
6−C
18アルキル、例えば、C
8−C
12アルキル、例えば、C
10アルキル)である。
【0044】
一実施形態では、Rは、少なくとも3つ(例えば、少なくとも4つまたは5つ)の存在については、
【化23】
である。
【0045】
一実施形態では、R
2は、アルキル(例えば、C
6−C
18アルキル、例えば、C
8−C
12アルキル、例えば、C
10アルキル)である。
【0046】
一実施形態では、組成物は、式(II)
【化24】
式中、
各々のX
aおよびX
bは、各存在において、独立にC
1−6アルキレンであり、nは、0、1、2、3、4、または5であり、
各々のRは独立に、H、アルキル、
【化25】
であり、但し、少なくとも1つのRは、
【化26】
であるか、または2つのRは、それらが結合する窒素とともに、環を形成し、
R
1は、各存在において、独立に、H、R
3、
【化27】
であり、ここで、R
3は、1つ以上の置換基で任意に置換されており、
R
2は、各存在において、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、またはヘテロアルキニルであり、これらは各々、1つ以上の置換基で任意に置換されており、
R
3は、各存在において、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、またはヘテロアルキニルであり、これらは各々、1つ以上の置換基で任意に置換されており、
Yは、各存在において、独立に、O、NR
4、またはSであり、
R
4は、各存在において、独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、またはヘテロアルキニルであり、これらは各々、1つ以上の置換基で任意に置換されている、の化合物と、
ステロールと、
PEGまたはPEG修飾脂質と、を含む。
【0047】
一実施形態では、X
aはC
2またはC
3アルキレンである。一実施形態では、X
bはC
2またはC
3アルキレンである。
【0048】
一実施形態では、X
aおよびX
bは各々、C
2またはC
3アルキレンである。一実施形態では、X
aおよびX
bは各々、C
2アルキレンである。
【0049】
一実施形態では、nは2または3である。
【0051】
一実施形態では、Rは、少なくとも3つの存在について、
【化28】
である。一実施形態では、nは2または3であり、かつRは、少なくとも3つの存在について、
【化29】
である。一実施形態では、nは3であり、かつRは、少なくとも5つの存在について、
【化30】
である。
【0052】
2つのRが、それらが結合する窒素とともに、環を形成する、請求項xの組成物。一実施形態では、それらが結合する窒素とともに、環を形成する2つのRは、隣接する窒素上に位置する。
【0053】
一実施形態では、YはOまたはNR
4である。一実施形態では、YはOである。一実施形態では、各存在において、YはOである。
【0054】
一実施形態では、R
1はHである。一実施形態では、各存在において、R
1はHである。
【0055】
一実施形態では、R
1は
【化31】
であり、ここで、R
3は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、またはヘテロアルキニルであり、これらは各々、1つ以上の置換基(例えば、親水性置換基)で任意に置換されている。一実施形態では、R
1は
【化32】
であり、R
3は、1つ以上の置換基(例えば、親水性置換基)で任意に置換されたアルキルである。
【0056】
一実施形態では、R
3は−OHで置換されている。
【0057】
一実施形態では、R
1はR
3、
【化33】
であり、ここで、R
3アルキルは、1つ以上の置換基で任意に置換されている。
【0058】
一実施形態では、R
3は親水性置換基で置換されている。一実施形態では、R
3は−OHで置換されている。
【0059】
一実施形態では、R
2は、アルキル、アルケニル、またはアルキニルである。一実施形態では、R
2は、アルキル(例えば、C
6−C
18アルキル、例えば、C
8−C
12アルキル、例えば、C
10アルキル)である。
【0060】
一実施形態では、Rは、少なくとも3つ(例えば、少なくとも4つまたは5つ)の存在について、
【化34】
である。
【0061】
一実施形態では、R
2は、アルキル(例えば、C
6−C
18アルキル、例えば、C
8−C
12アルキル、例えば、C
10アルキル)である。
【0062】
一実施形態では、Rは、少なくとも1つの存在(例えば、1つまたは2つの存在)について、Hである。
【0063】
一実施形態では、組成物は、式(III)、(VI)
【化35】
の化合物またはそれらの混合物を含む。
【0064】
一実施形態では、Rは、少なくとも3つの存在について、
【化36】
である。一実施形態では、nは2または3であり、かつRは、少なくとも3つの存在について、
【化37】
である。一実施形態では、nは3であり、かつRは、少なくとも5つの存在について、
【化38】
である。
【0065】
一実施形態では、YはOまたはNR
4である。一実施形態では、YはOである。一実施形態では、各存在において、YはOである。
【0066】
一実施形態では、R
1がHである。一実施形態では、各存在において、R
1はHである。
【0067】
一実施形態では、R
1は
【化39】
であり、ここで、R
3は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、またはヘテロアルキニルであり、これらは各々、1つ以上の置換基(例えば、親水性置換基)で任意に置換されている。一実施形態では、R
1は
【化40】
であり、R
3アルキルは、1つ以上の置換基(例えば、親水性置換基)で任意に置換されている。
【0068】
一実施形態では、R
3は−OHで置換されている。
【0069】
一実施形態では、R
1は、R
3、
【化41】
であり、ここで、R
3アルキルは、1つ以上の置換基で任意に置換されている。
【0070】
一実施形態では、R
3は親水性置換基で置換されている。一実施形態では、R
3は−OHで置換されている。
【0071】
一実施形態では、R
2は、アルキル、アルケニル、またはアルキニルである。一実施形態では、R
2は、アルキル(例えば、C
6−C
18アルキル、例えば、C
8−C
12アルキル、例えば、C
10アルキル)である。
【0072】
一実施形態では、Rは、少なくとも3つ(例えば、少なくとも4つまたは5つ)の存在について、
【化42】
である。
【0073】
一実施形態では、R
2は、アルキル(例えば、C
6−C
18アルキル、例えば、C
8−C
12アルキル、例えば、C
10アルキル)である。一実施形態では、R
2は、アルキル(例えば、C
6−C
18アルキル、例えば、C
8−C
12アルキル、例えば、C
10アルキル)である。
【0074】
一実施形態では、Rは、少なくとも1つの存在(例えば、1つまたは2つの存在)について、Hである。
【0075】
一実施形態では、組成物は、式(V)
【化43】
の化合物を含む。一実施形態では、組成物は、式(VI)
【化44】
の化合物を含む。
【0076】
一実施形態では、組成物は、式(VII):
【化45】
の化合物を含む。
【0077】
一実施形態では、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の化合物は、それらの無機塩または有機塩、例えば、それらのヒドロハライド塩、例えば、それらの塩酸塩である。一実施形態では、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の化合物は、有機酸の塩、例えば、酢酸塩またはギ酸塩である。一実施形態では、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の化合物は、水和物の形態である。
【0078】
一実施形態では、ステロールはコレステロールである。一実施形態では、脂質はPEG修飾脂質である。一実施形態では、PEG修飾脂質はPEG−DMGである。
【0079】
一実施形態では、組成物は、中性脂質をさらに含む。一実施形態では、中性脂質はDSPCである。
【0080】
一実施形態では、組成物は、約25〜75%の式(I)の化合物(例えば、式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の化合物)、約5〜50%のステロール、および約0.5〜20%のPEGまたはPEG修飾脂質を含む。一実施形態では、組成物は、約0.5〜15%の中性脂質をさらに含む。
【0081】
一実施形態では、組成物は、約35〜65%の式(I)の化合物(例えば、式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の化合物)、約15〜45%のステロール、および約0.5〜10%のPEGまたはPEG修飾脂質を含む。
【0082】
一実施形態では、組成物は、約3〜12%の中性脂質をさらに含む。
【0083】
一実施形態では、組成物は、約45〜65%の式(I)の化合物(例えば、式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の化合物)、約25〜40%のステロール、および約0.5〜5%のPEGまたはPEG修飾脂質を含む。
【0084】
一実施形態では、組成物は、約5〜10%の中性脂質をさらに含む。
【0085】
一実施形態では、組成物は、約60%の式(I)の化合物(例えば、式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の化合物)、約31%のステロール、および約1.5%のPEGまたはPEG修飾脂質を含む。一実施形態では、組成物は、約7.5%の中性脂質をさらに含む。
【0086】
一実施形態では、本発明の組成物は、約57.5%の式(I)のカチオン性脂質(例えば、式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の化合物)、約7.5%の中性脂質、約31.5%のステロール、および約3.5%のPEGまたはPEG修飾脂質を含む。好ましい一実施形態では、式(I)のカチオン性脂質は式Vの化合物であり、中性脂質はDSPCであり、ステロールはコレステロールであり、かつPEG脂質はPEG−DMGである。
【0087】
一実施形態では、本発明の組成物は、約50%の式(I)のカチオン性脂質(例えば、式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の脂質)、約10%の中性脂質、約38.5%のステロール、および約1.5%のPEGまたはPEG修飾脂質を含む。好ましい一実施形態では、式(I)のカチオン性脂質は式Vの脂質であり、中性脂質はDSPCであり、ステロールはコレステロールであり、かつPEG脂質はPEG−DMGである。
【0088】
一実施形態では、本発明の組成物は、約50%の式(I)のカチオン性脂質(例えば、式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の脂質)、約10%の中性脂質、約38.5%のステロール、および約1.5%のPEGまたはPEG修飾脂質を含む。好ましい一実施形態では、式(I)のカチオン性脂質は式Vの脂質であり、中性脂質はDSPCであり、ステロールはコレステロールであり、かつPEG脂質はPEG−DSGである。
【0089】
一実施形態では、本発明の組成物は、約50%の式(I)のカチオン性脂質(例えば、式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の脂質)、約10%の中性脂質、約38.5%のステロール、および約1.5%のPEGまたはPEG修飾脂質を含む。好ましい一実施形態では、式(I)のカチオン性脂質は式VIの脂質であり、中性脂質はDSPCであり、ステロールはコレステロールであり、かつPEG脂質はPEG−DMGである。
【0090】
一実施形態では、本発明の組成物は、約50%の式(I)のカチオン性脂質(例えば、式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の脂質)、約10%の中性脂質、約38.5%のステロール、および約1.5%のPEGまたはPEG修飾脂質を含む。好ましい一実施形態では、式(I)のカチオン性脂質は式VIの脂質であり、中性脂質はDSPCであり、ステロールはコレステロールであり、かつPEG脂質はPEG−DSGである。
【0091】
一実施形態では、組成物は会合錯体である。一実施形態では、組成物はリポソームである。
【0092】
一実施形態では、組成物は、核酸剤(例えば、1つ以上の核酸剤)をさらに含む。
【0093】
一実施形態では、組成物は、RNA剤をさらに含む。一実施形態では、組成物は、一本鎖RNA剤(例えば、1つ以上の一本鎖RNA剤)をさらに含む。一実施形態では、組成物は、二本鎖RNA剤(例えば、1つ以上の二本鎖RNA剤)をさらに含む。
【0094】
一実施形態では、脂質組成物は、2つ以上のsiRNAを含み得る。いくつかの実施形態では、脂質組成物は、2つ以上の異なるsiRNAを含む。いくつかの実施形態では、脂質組成物は、5つ以上の異なるsiRNAを含む。いくつかの実施形態では、脂質組成物は、10以上の異なるsiRNAを含む。いくつかの実施形態では、脂質組成物は、20以上の異なるsiRNAを含む。
【0095】
式(III)もしくは(VI)
【化46】
式中、
各々のRは独立に、H、アルキル、
【化47】
であり、
R
1は、各存在において、独立に、H、R
3、
【化48】
であり、
R
2は、各存在において、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、またはヘテロアルキニルであり、これらは各々、1つ以上の置換基で任意に置換されており、
R
3は、各存在において、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、またはヘテロアルキニルであり、これらは各々、1つ以上の置換基(例えば、親水性置換基)で任意に置換されており、
Yは、各存在において、独立に、O、NR
4、またはSであり、
R
4は、各存在において、独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、またはヘテロアルキニルであり、これらは各々、1つ以上の置換基で任意に置換されている、の化合物またはそれらの混合物と、
ステロールと、
PEGまたはPEG修飾脂質と、を含む組成物。
【0096】
押出法またはインライン混合法を含む、本明細書に記載の組成物を産生する方法。
【0097】
一実施形態では、本発明の組成物は、25〜75%の式(I)のカチオン性脂質(例えば、式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の脂質)、0.5〜15%の中性脂質、5〜50%のステロール、および0.5〜20%のPEGまたはPEG修飾脂質を含む。
【0098】
一実施形態では、本発明の組成物は、35〜65%の式(I)のカチオン性脂質(例えば、式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の脂質)、3〜12%の中性脂質、15〜45%のステロール、および0.5〜10%のPEGまたはPEG修飾脂質を含む。
【0099】
一実施形態では、本発明の組成物は、45〜65%の式(I)のカチオン性脂質(例えば、式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の脂質)、5〜10%の中性脂質、25〜40%のステロール、および0.5〜5%のPEGまたはPEG修飾脂質を含む。
【0100】
一実施形態では、本発明の組成物は、約60%の式(I)のカチオン性脂質(例えば、式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の脂質)、約7.5%の中性脂質、約31%のステロール、および約1.5%のPEGまたはPEG修飾脂質を含む。好ましい一実施形態では、式(I)のカチオン性脂質は式Vの化合物であり、中性脂質はDSPCであり、ステロールはコレステロールであり、かつPEG脂質はPEG−DMGである。
【0101】
一実施形態では、本発明の組成物は、約57.5%の式(I)のカチオン性脂質(例えば、式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の脂質)、約7.5%の中性脂質、約31.5%のステロール、および約3.5%のPEGまたはPEG修飾脂質を含む。好ましい一実施形態では、式(I)のカチオン性脂質は式Vの化合物であり、中性脂質はDSPCであり、ステロールはコレステロールであり、かつPEG脂質はPEG−DMGである。
【0102】
一実施形態では、脂質:siRNAの比は、少なくとも約0.5:1、少なくとも約1:1、少なくとも約2:1、少なくとも約3:1、少なくとも約4:1、少なくとも約5:1、少なくとも約6:1、少なくとも約7:1、少なくとも約8:1、少なくとも約9:1、少なくとも約10:1または少なくとも約11:1である。一実施形態では、脂質:siRNAの比は、約1:1〜約20:1、約3:1〜約15:1、約4:1〜約15:1、約5:1〜約13:1である。一実施形態では、脂質:siRNAの比は、約0.5:1〜約12:1である。
【0103】
一態様では、脂質組成物はターゲッティング脂質も含む。いくつかの実施形態では、ターゲッティング脂質は、GalNAc部分(すなわち、N−ガラクトサミン部分)を含む。例えば、GalNAc部分を含むターゲッティング脂質としては、2008年4月12日に出願された米国特許出願第12/328,669号に開示されているものを挙げることができ、この文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ターゲッティング脂質としては、例えば、米国特許出願第12/328,669号または国際公開第2008/042973号に記載されているような当該技術分野で公知の任意の他の脂質(例えば、ターゲッティング脂質)を挙げることもでき、これらの文献の内容は各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ターゲッティング脂質は、複数のGalNAc部分、例えば、2つまたは3つのGalNAc部分を含む。いくつかの実施形態では、ターゲッティング脂質は、複数の、例えば、2つまたは3つのN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)部分を含む。いくつかの実施形態では、ターゲッティング脂質中の脂質は、1,2−ジ−O−ヘキサデシル−sn−グリセリド(すなわち、DSG)である。いくつかの実施形態では、ターゲッティング脂質は、PEG部分(例えば、少なくとも約500Da、例えば、約1000Da、1500Da、2000Daまたはそれよりも大きい分子量を有するPEG部分)を含み、例えば、ターゲッティング部分は、PEG部分を介して脂質に接続されている。
【0104】
いくつかの実施形態では、ターゲッティング脂質は、葉酸部分を含む。例えば、葉酸部分を含むターゲッティング脂質としては、2008年4月12日に出願された米国特許出願第12/328,669号に開示されているものを挙げることができ、この文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。別の実施形態では、葉酸部分を含むターゲッティング脂質としては、式5の化合物を挙げることができる。
【0105】
例示的なターゲッティング脂質は、下記の式L:
(ターゲッティング基)
n−L−脂質
式L
式中、
ターゲッティング基は、当業者に公知のおよび/または本明細書に記載の任意のターゲッティング基(例えば、細胞表面受容体)であり、
nは1〜5の整数(例えば、3)であり、
Lは結合基であり、かつ
脂質は、本明細書に記載の脂質(例えば、DSGなどの中性脂質)などの脂質である。
【0106】
いくつかの実施形態では、結合基はPEG部分を含む。別の実施形態では、PEG部分は、約1,000〜約20,000ダルトン(例えば、約1,500〜約5,000ダルトン、例えば、約1000ダルトン、約2000ダルトン、約3400ダルトン、または約5000ダルトン)の分子量まで大きさが異なる。
【0107】
いくつかの実施形態では、ターゲッティング脂質は、下記に示すような式2、3、4、5、6または7
【化49】
【化50】
【化51】
【化52】
【化53】
【化54】
の化合物である。
【0108】
いくつかの実施形態では、ターゲッティング脂質は、モル基準で約0.001%〜約5%(例えば、約0.005%、0.15%、0.3%、0.5%、1.5%、2%、2.5%、3%、4%、または5%)の量で組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、ターゲッティング脂質は、本明細書に記載の組成物に含まれる。
【0109】
いくつかの実施形態では、脂質組成物は、抗酸化剤(例えば、ラジカルスカベンジャー)も含む。抗酸化剤は、例えば、約0.01%〜約5%の量で組成物中に存在することができる。抗酸化剤は、疎水性または親水性である(例えば、脂質に溶けるか、または水に溶ける)ことができる。いくつかの実施形態では、抗酸化剤は、フェノール化合物、例えば、ブチルヒドロキシトルエン、レスベラトロール、補酵素Q10、または他のフラボノイド類、あるいはビタミン、例えば、ビタミンEもしくはビタミンCである。他の例示的な抗酸化剤としては、リポ酸、尿酸、β−カロテンまたはレチノール(ビタミンA)などのカロテン、グルタチオン、メラトニン、セレン、およびユビキノールが挙げられる。
【0110】
いくつかの実施形態では、ターゲッティング脂質(例えば、GalNAc含有脂質)の受容体は、アシアロ糖タンパク質受容体(すなわち、ASGPR)である。
【0111】
一実施形態では、本発明の組成物は、押出法またはインライン混合法によって産生される。
【0112】
押出法(事前形成法またはバッチプロセスとも表す)は、まず空のリポソーム(すなわち、核酸なし)を調製し、次いで、核酸を空のリポソームに添加する方法である。リポソーム組成物を小孔性ポリカーボネート膜または非対称セラミック膜に通して押し出すことにより、比較的明確な径分布が得られる。通常、所望のリポソーム複合体径分布が達成されるまで膜に通して1回以上懸濁を繰り返す。リポソームを連続的に、より小さくなる膜に通して押し出し、リポソーム径の段階的な減少を達成してもよい。場合によっては、形成される脂質−核酸組成物をサイジングなしで用いることができる。これらの方法は、米国特許第5,008,050号;米国特許第4,927,637号;米国特許第4,737,323号;Biochim Biophys Acta.1979 Oct 19;557(1):9−23;Biochim Biophys Acta.1980 Oct 2;601(3):559−7;Biochim Biophys Acta.1986 Jun 13;858(1):161−8;およびBiochim.Biophys.Acta 1985 812,55−65に開示されており、これらの文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0113】
インライン混合法は、脂質と核酸の両方を混合チャンバーに同時に添加する方法である。混合チャンバーは、単純なT型コネクターまたは当業者に公知の任意の他の混合チャンバーであることができる。
【0114】
これらの方法は、米国特許第6,534,018号および米国特許第6,855,277号;米国特許公開第2007/0042031号ならびにPharmaceuticals Research,Vol.22,No.3,Mar.2005,p.362−372に開示されており、これらの文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0115】
本発明の組成物を当業者に公知の任意の方法によって調製することができることがさらに理解される。
【0116】
さらなる実施形態では、押出法またはインライン混合法によって調製される代表的な組成物が表1に記載されており、ここで、脂質Tは、
【化55】
【化56】
またはその組合せである。
【表A】
【表B】
【0117】
一実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも75%、少なくとも80%または少なくとも90%封入されている。
【0118】
一実施形態では、本発明の組成物は、緩衝剤(例えば、クエン酸塩、リン酸塩)をさらに含む。
【0119】
一実施形態では、本発明の組成物は、アポリポタンパク質をさらに含む。本明細書で使用されるとき、「アポリポタンパク質」または「リポタンパク質」という用語は、当業者に公知のアポリポタンパク質とその変異体および断片、ならびに下記のアポリポタンパク質アゴニスト、その類似体または断片を指す。
【0120】
好適なアポリポタンパク質としては、ApoA−I、ApoA−II、ApoA−IV、ApoA−VおよびApoEと、活性のある多型形態、アイソフォーム、変異体および突然変異体ならびにそれらの断片または切断形態が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、アポリポタンパク質はチオール含有アポリポタンパク質である。「チオール含有アポリポタンパク質」は、少なくとも1つのシステイン残基を含むアポリポタンパク質、変異体、断片またはアイソフォームを指す。最も一般的なチオール含有アポリポタンパク質は、1つのシステイン残基を含むApoA−Iミラノ(ApoA−I
M)およびApoA−Iパリ(ApoA−Ip)である(Jia et al.,2002,Biochem.Biophys.Res.Comm.297:206−13;Bielicki and Oda,2002,Biochemistry 41:2089−96)。ApoA−II、ApoE2およびApoE3もチオール含有アポリポタンパク質である。その組換えで産生された形態を含む、単離されたApoEおよび/またはその活性断片およびポリペプチド類似体は、米国特許第5,672,685号;同第5,525,472号;同第5,473,039号;同第5,182,364号;同第5,177,189号;同第5,168,045号;同第5,116,739号に記載されており、これらの文献の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。ApoE3は、Weisgraber,et al.,“Human E apoprotein heterogeneity:cysteine−arginine interchanges in the amino acid sequence of the apo−E isoforms”, J.Biol.Chem.(1981) 256:9077−9083;およびRail,et al.,“Structural basis for receptor binding heterogeneity of apolipoprotein E from type III hyperlipoproteinemic subjects”, Proc.Nat.Acad.Sci.(1982) 79:4696−4700に開示されている。GenBankアクセッション番号K00396も参照されたい。
【0121】
特定の実施形態では、アポリポタンパク質は、成熟形態、プレプロアポリポタンパク質形態またはプロアポリポタンパク質形態であることができる。プロApoA−Iおよび成熟ApoA−Iのホモ二量体およびヘテロ二量体(実現可能な場合)(Duverger et al.,1996,Arterioscler.Thromb.Vase.Biol.16(12):1424−29)、ApoA−I Milano(Klon et al.,2000,Biophys.J.79:(3)1679−87;Franceschini et al.,1985,J.Biol.Chem.260:1632−35)、ApoA−I Paris(Daum et al.,1999,J.Mol.Med.77:614−22)、ApoA−II(Shelness et al.,1985,J.Biol.Chem.260(14):8637−46;Shelness et al.,1984,J.Biol.Chem.259(15):9929−35)、ApoA−IV(Duverger et al.,1991,Euro.J.Biochem.201(2):373−83)、およびApoE(McLean et al.,1983,J.Biol.Chem.258(14):8993−9000)を本発明の範囲内で利用することもできる。
【0122】
特定の実施形態では、アポリポタンパク質は、アポリポタンパク質の断片、変異体またはアイソフォームであることができる。「断片」という用語は、天然のアポリポタンパク質のアミノ酸配列よりも短いアミノ酸配列を有し、かつその断片が、脂質結合特性をはじめとする、天然のアポリポタンパク質の活性を保持する任意のアポリポタンパク質を指す。「変異体」とは、アポリポタンパク質のアミノ酸配列の置換または改変を意味し、アミノ酸残基の置換または改変、例えば、付加および欠失は、脂質結合特性をはじめとする、天然のアポリポタンパク質の活性を消失させない。したがって、変異体は、1つ以上のアミノ酸残基が化合的に類似したアミノ酸と保存的に置換されている本明細書で提供される天然のアポリポタンパク質と実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質またはペプチドを含むことができる。保存的置換の例としては、少なくとも1つの疎水性残基(例えば、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニン)の別の疎水性残基への置換が挙げられる。同様に、本発明は、例えば、少なくとも1つの親水性残基の置換、例えば、アルギニンとリジンの間、グルタミンとアスパラギンの間、およびグリシンとセリンの間の置換を企図する(米国特許第6,004,925号、同第6,037,323号および同第6,046,166号を参照されたい)「アイソフォーム」という用語は、同じか、より大きいかまたは部分的な機能と、同様か、同一かまたは部分的な配列とを有するタンパク質を指し、同じ遺伝子の産物で、かつ通常は組織特異的であってもよいし、そうでなくてもよい(Weisgraber 1990,J.Lipid Res.31(8):1503−11;Hixson and Powers 1991,J.Lipid Res.32(9):1529−35;Lackner et al,1985,J.Biol.Chem.260(2):703−6;Hoeg et al.,1986,J.Biol.Chem.261(9):3911−4;Gordon et al.,1984,J.Biol.Chem.259(l):468−74;Powell et al.,1987,Cell 50(6):831−40;Aviram et al.,1998,Arterioscler.Thromb.Vase.Biol.18(10):1617−24;Aviram et al.,1998,J.Clin.Invest.101(8):1581−90;Billecke et al.,2000,Drug Metab.Dispos.28(11):1335−42;Draganov et al.,2000,J.Biol.Chem.275(43):33435−42;Steinmetz and Utermann 1985,J.Biol.Chem.260(4):2258−64;Widler et al.,1980,J.Biol.Chem.255(21):10464−71;Dyer et al.,1995,J.Lipid Res.36(1):80−8;Sacre et al.,2003,FEBS Lett.540(1−3):181−7;Weers,et al.,2003,Biophys.Chem.100(1−3):481−92;Gong et al.,2002,J.Biol.Chem.277(33):29919−26;Ohta et al.,1984,J.Biol.Chem.259(23):14888−93および米国特許第6,372,886号を参照されたい)。
【0123】
特定の実施形態では、本発明の方法および組成物は、アポリポタンパク質のキメラ構築の使用を含む。例えば、アポリポタンパク質のキメラ構築は、虚血再灌流保護特性を含むアポリポタンパク質ドメインと関連する高い脂質結合能を有するアポリポタンパク質ドメインから構成される可能性がある。アポリポタンパク質のキメラ構築は、アポリポタンパク質(すなわち、相同な構築)内部に別々の領域を含む構築であることができるし、またはキメラ構築は、異なるアポリポタンパク質間の別々の領域を含む構築(すなわち、異種の構築)であることができる。キメラ構築を含む組成物は、アポリポタンパク質変異体である部分または特定の特性(例えば、脂質結合、受容体結合、酵素特性、酵素活性化特性、抗酸化特性または還元酸化特性)を有するように設計された部分を含むこともできる(Weisgraber 1990,J.Lipid Res.31(8):1503−11;Hixson and Powers 1991,J.Lipid Res.32(9):1529−35;Lackner et al.,1985,J.Biol.Chem.260(2):703−6;Hoeg et al.,1986,J.Biol.Chem.261(9):3911−4;Gordon et al.,1984,J.Biol.Chem.259(l):468−74;Powell et al.,1987,Cell 50(6):831−40;Aviram et al.,1998,Arterioscler.Thromb.Vase.Biol.18(10):1617−24;Aviram et al.,1998,J.Clin.Invest.101(8):1581−90;Billecke et al.,2000,Drug Metab.Dispos.28(11):1335−42;Draganov et al.,2000,J.Biol.Chem.275(43):33435−42;Steinmetz and Utermann 1985,J.Biol.Chem.260(4):2258−64;Widler et al.,1980,J.Biol.Chem.255(21):10464−71;Dyer et al.,1995,J.Lipid Res.36(l):80−8;Sorenson et al.,1999,Arterioscler.Thromb.Vase.Biol.19(9):2214−25;Palgunachari 1996,Arterioscler.Throb.Vase.Biol.16(2):328−38:Thurberg et al.,J.Biol.Chem.271(11):6062−70;Dyer 1991,J.Biol.Chem.266(23):150009−15;Hill 1998,J.Biol.Chem.273(47):30979−84)。
【0124】
本発明で利用されるアポリポタンパク質には、組換え、合成、半合成または精製アポリポタンパク質も含まれる。本発明で利用されるアポリポタンパク質またはその等価物を得るための方法は当該技術分野で周知である。例えば、アポリポタンパク質は、例えば、密度勾配遠心分離もしくは免疫親和性クロマトグラフィーによって血漿もしくは天然産物から分離することができるし、または合成、半合成で、もしくは当業者に公知の組換えDNA技術を用いて産生することができる(例えば、Mulugeta et al.,1998,J.Chromatogr.798(1−2):83−90;Chung et al.,1980,J.Lipid Res.21(3):284−91;Cheung et al.,1987,J.Lipid Res.28(8):913−29;Persson,et al.,1998,J.Chromatogr.711:97−109;米国特許第5,059,528号、同第5,834,596号、同第5,876,968号および同第5,721,114;ならびに国際公開第86/04920号および同第87/02062号を参照されたい)。
【0125】
本発明で利用されるアポリポタンパク質には、ApoA−I、ApoA−Iミラノ(ApoA−I
M)、ApoA−Iパリ(ApoA−I
P)、ApoA−II、ApoA−IV、およびApoEの活性を模倣するアポリポタンパク質アゴニスト(例えば、ペプチドおよびペプチド類似体)もさらに含まれる。例えば、アポリポタンパク質は、米国特許第6,004,925号、同第6,037,323号、同第6,046,166号、および同第5,840,688号に記載されているもののいずれかであることができ、これらの文献の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる
【0126】
アポリポタンパク質アゴニストペプチドまたはペプチド類似体は、例えば、米国特許第6,004,925号、同第6,037,323号および同第6,046,166号に記載の技術をはじめとする、当該技術分野で公知のペプチド合成の任意の技術を用いて合成または製造することができる。例えば、ペプチドは、Merrifield(1963,J.Am.Chem.Soc.85:2149−2154)によって最初に記載された固相合成技術を用いて調製し得る。他のペプチド合成技術は、Bodanszky et al.,Peptide Synthesis,John Wiley & Sons,第2版(1976)および当業者に容易に入手可能な他の参考文献に見出し得る。ポリペプチド合成技術の概要は、Stuart and Young,Solid Phase Peptide.Synthesis,Pierce Chemical Company,Rockford,Ill.,(1984)に見出すことができる。ペプチドは、The Proteins,Vol.II,第3版,Neurath et.al.,編,p.105−237,Academic Press,New York,N.Y.(1976)に記載されているような溶液法でも合成し得る。様々なペプチド合成で使用される適切な保護基は、上述のテキストおよびMcOmie,Protective Groups in Organic Chemistry,Plenum Press,New York,N.Y.(1973)に記載されている。本発明のペプチドは、例えば、アポリポタンパク質A〜Iのより大きい部分からの化学的または酵素的切断によっても調製し得る。
【0127】
特定の実施形態では、アポリポタンパク質は、アポリポタンパク質の混合物であることができる。一実施形態では、アポリポタンパク質は、均質な混合物、すなわち、1種類のアポリポタンパク質であることができる。別の実施形態では、アポリポタンパク質は、アポリポタンパク質の不均質な混合物、すなわち、2種以上の異なるアポリポタンパク質の混合物であることができる。アポリポタンパク質不均質な混合物の実施形態としては、例えば、動物源由来のアポリポタンパク質と半合成源由来のアポリポタンパク質の混合物を挙げることができる。特定の実施形態では、不均質な混合物としては、例えば、ApoA−IとApoA−Iミラノの混合物を挙げることができる。特定の実施形態では、不均質な混合物としては、例えば、ApoA−IミラノとApoA−Iパリの混合物を挙げることができる。本発明の方法および組成物において使用される好適な混合物は当業者に明白であろう。
【0128】
アポリポタンパク質を自然源から得る場合、それを植物または動物源から得ることができる。アポリポタンパク質は動物源から得られ、アポリポタンパク質は任意の種由来であることができる。特定の実施形態では、アポリポタンパク質を動物源から得ることができる。特定の実施形態では、アポリポタンパク質をヒト源から得ることができる。本発明の好ましい実施形態では、アポリポタンパク質は、アポリポタンパク質が投与される個体と同じ種に由来する。
【0129】
一実施形態では、標的遺伝子は、肝臓で発現される遺伝子、例えば、第VII因子(FVII)遺伝子である。他の実施形態では、標的遺伝子は、内皮(例えば、心臓、肝臓、肺、腎臓、視床下部または骨格筋)で発現される。標的遺伝子、例えば、FVIIの発現の効果は、血清または組織試料などの、生物学的試料におけるFVIIレベルの測定によって評価される。例えば、例えば、FVII活性のアッセイによって測定されるような血液中のFVIIのレベルを決定することができる。一実施形態では、肝臓または内皮におけるmRNAのレベルを評価することができる。別の好ましい実施形態では、少なくとも2種類の評価、例えば、(例えば、血液中の)タンパク質レベルの評価と(例えば、肝臓中の)mRNAレベルの測定を両方とも行なう。
【0130】
一実施形態では、作用剤は、二本鎖RNA(dsRNA)などの核酸である。
【0131】
別の実施形態では、核酸剤は一本鎖DNAもしくはRNA、または二本鎖DNAもしくはRNA、またはDNA−RNAハイブリッドである。例えば、二本鎖DNAは、構造遺伝子、制御および終結領域を含む遺伝子、または自己複製系(例えば、ウイルスもしくはプラスミドDNA)であることができる。二本鎖RNAは、例えば、dsRNAまたは別のRNA干渉試薬であることができる。一本鎖核酸は、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、マイクロRNA、または三重鎖形成オリゴヌクレオチドであることができる。
【0132】
さらに別の実施形態では、候補作用剤を投与した後の様々な時点で、流体試料、例えば、血液、血漿、または血清、あるいは組織試料、例えば、肝臓または(例えば、心臓、腎臓、肺、視床下部もしくは骨格筋由来の)内皮試料などの、生物学的試料を試験対象から採取して、標的タンパク質またはmRNAの発現レベルに対する作用剤の効果を試験する。特に好ましい一実施形態では、候補作用剤は、FVIIを標的とするdsRNAであり、生物学的試料を第VII因子タンパク質またはmRNAのレベルに対する効果について試験する。一実施形態では、例えば、免疫組織化学アッセイまたは発色アッセイを用いて、FVIIタンパク質の血漿レベルをアッセイする。別の実施形態では、肝臓または内皮(例えば、心臓、肝臓、肺、腎臓、視床下部もしくは骨格筋)におけるFVII mRNAのレベルを、分岐DNAアッセイ、またはノーザンブロットもしくはRT−PCRアッセイなどのアッセイで試験する。
【0133】
一実施形態では、作用剤、例えば、脂質組成物を含む組成物を毒性について試験する。さらに別の実施形態では、モデル対象を、例えば、体重または臨床的挙動の変化により、身体的影響についてモニタリングすることができる。
【0134】
一実施形態では、本方法は、作用剤、例えば、脂質組成物を含む組成物をさらなる評価にかけることをさらに含む。さらなる評価としては、例えば、(i)上記の評価の繰返し、(ii)異なる数の動物もしくは異なる用量を用いた上記の評価の繰返し、または(iii)異なる方法、例えば、別の動物モデル(例えば、非ヒト霊長類)における評価によるものを挙げることができる。
【0135】
別の実施形態では、肝臓タンパク質もしくはmRNAのレベルまたは内皮に対する候補作用剤の観察された効果に応じて、さらなる研究(例えば、臨床試験)において作用剤と脂質組成物を含めるかどうかに関する決定を行なう。例えば、候補dsRNAがタンパク質またはmRNAレベルを少なくとも20%、30%、40%、50%、またはそれより大きく減少させることが観察される場合、この作用剤には臨床試験が考慮される。
【0136】
さらに別の実施形態では、肝臓タンパク質、mRNAのレベルまたは内皮に対する候補作用剤とアミノ脂質の観察された効果に応じて、薬学的組成物中に作用剤と脂質組成物を含めるかどうかに関する決定を行なう。例えば、候補dsRNAがタンパク質またはmRNAレベルを少なくとも20%、30%、40%、50%、またはそれより大きく減少させることが観察される場合、この作用剤には臨床試験が考慮される。
【0137】
別の態様では、本発明は、脂質組成物を、RNAべースのコンストラクト、例えば、FVIIを標的とするdsRNAを送達するその好適性について評価する方法を特色とする。本方法は、FVIIを標的とするdsRNAと候補アミノ脂質とを含む組成物を提供すること、この組成物を齧歯類(例えば、マウス)に投与すること、FVIIの発現を血液中のFVIIのレベルまたは肝臓におけるFVII mRNAのレベルのうちの少なくとも1つの関数として評価し、それにより候補アミノ脂質を評価することを含む。
【0138】
脂質含有成分(例えば、リポソーム)を含む組成物、かつこれらは以下でさらに詳細に記載されている。例示的な核酸ベースの作用剤としては、dsRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、マイクロRNA、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、または三重鎖形成オリゴヌクレオチドが挙げられる。これらの作用剤も以下でさらに詳細に記載されている。
【0139】
「LNP」組成物(例えば、LNP01、LNP02など)と表される組成物は、「AF」組成物(例えば、AF01、AF02など)としても知られている。
【0140】
「アルキル」は、1〜24個の炭素原子を含む直鎖または分岐、非環状または環状飽和脂肪族炭化水素を意味する。代表的な飽和直鎖アルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルなどが挙げられ、一方、飽和分岐アルキルとしては、イソプロピル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、イソペンチルなどが挙げられる。代表的な飽和環状アルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられ、一方、不飽和環状アルキルとしては、シクロペンテニルおよびシクロヘキセニルなどが挙げられる。
【0141】
「アルケニル」は、隣接炭素原子間に少なくとも1つの二重結合を含む、上で定義されたようなアルキルを意味する。アルケニルには、シス異性体とトランス異性体の両方が含まれる。代表的な直鎖および分岐アルケニルとしては、エチレニル、プロピレニル、1−ブテニル、2−ブテニル、イソブチレニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−メチル−1−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、2,3−ジメチル−2−ブテニルなどが挙げられる。
【0142】
「アルキニル」は、隣接炭素原子間に少なくとも1つの三重結合をさらに含む、上で定義されたような任意のアルキルまたはアルケニルを意味する。代表的な直鎖および分岐アルキニルとしては、アセチレニル、プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−メチル−1ブチニルなどが挙げられる。
【0143】
「アシル」は、結合点の炭素が、以下で定義するようなオキソ基で置換されている任意のアルキル、アルケニル、またはアルキニルを意味する。例えば、−C(=O)アルキル、−C(=O)アルケニル、および−C(=O)アルキニルがアシル基である。
【0144】
「複素環」は、飽和、不飽和、または芳香族のいずれかであり、かつ窒素、酸素および硫黄から独立に選択される1または2個のヘテロ原子を含む5〜7員単環式、または7〜10員二環式の複素環式環を意味し、ここで、この窒素および硫黄ヘテロ原子は任意に酸化されていてもよく、かつこの窒素ヘテロ原子は四級化されていてもよく、これには、上記の複素環のいずれかがベンゼン環に融合している二環式環が含まれる。複素環は、任意のヘテロ原子または炭素原子を介して結合し得る。複素環としては、以下で定義するようなヘテロアリールが挙げられる。複素環としては、モルホリニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、ピペリジニル(piperidinyl)、ピペリジニル(piperizynyl)、ヒダントイニル、バレロラクタミル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロプリミジニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニルなどが挙げられる。
【0145】
「任意に置換されたアルキル」、「任意に置換されたアルケニル」、「任意に置換されたアルキニル」、「任意に置換されたアシル」、および「任意に置換された複素環」 という用語は、置換されるときに、少なくとも1つの水素原子が置換基と置き換えられることを意味する。オキソ置換基(=O)の場合、2個の水素原子が置き換えられる。そういう意味では、置換基は、オキソ、ハロゲン、複素環、−CN、−OR
x、−NR
xR
y、−NR
xC(=0)R
y、−NR
xSO
2R
y、−C(=O)R
x、−C(=O)OR
x、−C(=0)NR
xR
y、−SO
nR
xおよび−SO
nNR
xR
yを含み、その場合、nは0、1または2であり、R
xおよびR
yは同じものまたは別のもので、かつ独立に水素、アルキルまたは複素環であり、該アルキルおよび複素環置換基は各々、オキソ、ハロゲン、−OH、−CN、アルキル、−OR
x、複素環、−NR
xR
y、−NR
xC(=O)R
y、−NR
xSO
2R
y、−C(=O)R
x、−C(=O)OR
x、−C(=O)NR
xR
y、−SO
nR
xおよび−SO
nNR
xR
yのうちの1つまたは複数でさらに置換されていてもよい。
【0146】
「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。
【0147】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、保護基の使用を必要とする場合がある。保護基に関する方法論は当業者に周知である(例えば、PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS,Green,T.W.et.al.,Wiley−Interscience,New York City,1999を参照されたい)。簡潔に述べると、本発明との関連における保護基は、官能基の望ましくない反応性を低下または消失させる任意の基である。保護基を官能基に付加して、特定の反応の間のその反応性をマスクし、その後、除去して、もとの官能基を暴露することができる。いくつかの実施形態では、「アルコール保護基」を使用する。「アルコール保護基」は、アルコール官能基の望ましくない反応性を減少または消失させる任意の基である。保護基は、当該技術分野で周知の技術を用いて付加および除去することができる。
【0148】
合成
本発明の化合物を既知の有機合成技術により調製し得る。一般に、式(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)の脂質は、アミン化合物を様々なエポキシドと反応させることによって調製することができる。1つの例では、式(V)および(VI)の脂質を以下の反応スキーム1によって作製することができ、その場合、置換基は全て、別途指示しない限り、上で定義されたものである。
【0149】
【化57】
化合物1および2を国際公開第9318017号に記載の報告手順に従って合成した。
【0150】
高温で1とエポキシド3を反応させると、化合物4が得られた。これを標準的なシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。化合物5はアミン2から同様に得られた。
【0151】
スキーム1によるアミノ脂質の形成に好適な他のエポキシドおよびアミンは、Love,K.T.,et al.,“Lipid−like materials for low−dose,in vivo gene silencing”,PNAS Early Edition,www.pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.0910603106に記載されており、この文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0152】
使用可能ないくつかの例示的なエポキシドとしては、
【化58】
を挙げることができる。使用可能ないくつかの例示的なアミンとしては、
【化59】
を挙げることができる。
【0153】
式(V)の化合物
【化60】
を2つの前駆体:
【化61】
から調製することができる。例えば、式(V)の化合物をラセミ化合物3から調製することができる。この場合、最初の産物は、ジアステレオマーの混合物を含むことがあり、これを任意でさらに精製することができる。
【0154】
化合物(R)−6は、式(V)による立体的に制御された化合物である。
【化62】
【0155】
化合物(R)−6は、スキーム1に従って2つの前駆体:
【化63】
から調製することができる。対応する(S)−6化合物は、1および(S)−7(すなわち、(R)−7のエナンチオマー)から調製することができる。
【0156】
1の構造異性体をアミノ脂質の調製において用いることもできる。このような構造異性体としては、
【化64】
が挙げられる。
【0157】
式(VI)
【化65】
の化合物を、2つの前駆体
【化66】
から調製することができる。
【0158】
式(VII)
【化67】
の化合物を、2つの前駆体
【化68】
から調製することができる。
【0159】
実質的に立体的に純粋なエポキシドを用いて、立体的に制御されたアミノ脂質を提供することができる。
【化69】
【0160】
アミン2および8を反応スキーム2に従って調製することができる。両方とも共通の出発物質である4−(t−ブトキシカルボニル)−1−(2−(フタルイミド)エチル)−ピペラジンから調製し得る。
【0161】
マルチグラム(multigram)量の2および8をスキーム2に従って調製した。アミン1は、1−(2−アミノエチル)ピペラジンから始めて、スキーム3に従って調製することができる。
【0162】
【化70】
あるいは、スキーム4は、1−(2−(フタルイミド)エチル)ピペラジンからの1の調製を図示している。
【0163】
【化71】
スキーム4の方法の規模を大きくして、マルチグラム規模で1を生成させた。最終工程は、もう1つの方法として、酸(例えば、HCl)の代わりに塩基(例えば、KOH)を用いて行なうことができる。反応は、塩基性条件下よりも速やかに進行し得る。
【0164】
別のバリエーションでは、1をスキーム3に示した方法と同様であるが、スキーム5に示すように、異なる還元条件を用いた方法で調製することができる。
【0165】
【化72】
有利なことに、スキーム5の方法は、スキーム3またはスキーム4の方法よりも簡単に規模を大きくすることができ、反応条件は非常に穏やかであり、触媒(10mol%)量の塩化ニッケル(II)しか必要とされず、生成物の単離および精製は簡単である。この手順の規模を大きくして、マルチグラム量の1を生成させた。
【0166】
エポキシド3(n=9)を分割して、高度にエナンチオマー過剰な所望の光学異性体(例えば、(R)−7)を得ることができる。例えば、3(n=9)を、スキーム6に図示するようにJacobsen触媒を用いて分割することができる。
【0167】
【化73】
この反応をマルチグラム(例えば、300g)規模で行なった。
【0168】
アミノ脂質(R)−6を1および(R)−7からマルチグラム(例えば、>16g)規模で調製した。この反応生成物をカラムクロマトグラフィーでさらに精製した。TLCでアッセイしたとき、得られた物質は明らかに純粋であった。しかしながら、いくつかの微量生成物も存在していた。これらの微量生成物(スキーム7参照)は、エポキシド環の開裂が、より遮蔽された炭素上で起こり、1級アルコールを生じさせる反応から生じた。
【0169】
【化74】
微量生成物は、(上述のように固定化された)1級アルコールと選択的に反応する固体支持体のトリチルクロリド試薬(スキーム8)で処理したときに、主要生成物から実質的に分離された。
【0170】
【化75】
立体的に制御されたアミノ脂質への別のアプローチは、アミン(例えば、1)との反応においてエポキシドの代わりに使用可能な立体的に純粋なα−ヒドロキシアルデヒドを必要とすることがある。α−ヒドロキシアルデヒドを使用する場合、アミン(例えば、1)との反応は還元条件下で起こる。スキーム9は、α−オレフィンから始まる、保護α−ヒドロキシアルデヒド10の立体的に制御された合成を図示している。
【化76】
【0171】
スキーム10は、(R)−グリシドールから始まる、保護α−ヒドロキシアルデヒド11への代替経路を表している。
【化77】
【0172】
立体的に制御されたアミノ脂質(例えば、(R)−6)を生成させるために、アミン1を還元剤(例えば、AcOH中のNa(OAc)
3BH)の存在下で所望の立体化学を有する保護α−ヒドロキシアルデヒドと反応させておく。
【0173】
本発明のアミノ脂質はカチオン性脂質である。本明細書で使用されるとき、「アミノ脂質」という用語は、1個もしくは2個の脂肪酸または脂肪アルキル鎖とアミノ頭部基(アルキルアミノまたはジアルキルアミノ基を含む)とを有し、プロトン化されて、生理的pHでカチオン性脂質を形成し得る脂質を含むことが意図される。
【0174】
他のアミノ脂質としては、代わりの脂肪酸基や、アルキル置換基が異なるジアルキルアミノ基(例えば、N−エチル−N−メチルアミノ−、N−プロピル−N−エチルアミノ−など)をはじめとする他のジアルキルアミノ基を有するアミノ脂質が挙げられる。R
11とR
12が両方とも長鎖アルキルまたはアシル基である実施形態の場合、それらは同じものまたは別のものであることができる。一般に、飽和が少ないアシル鎖を有するアミノ脂質は、特に、複合体を、フィルター滅菌するために、約0.3マイクロメートル未満の大きさにしなければならないときに、より簡単に大きさを整えられる。炭素鎖長がC14〜C22の範囲の不飽和脂肪酸を含有するアミノ脂質が好ましい。他のスキャフォールドを用いて、アミノ脂質のアミノ基と脂肪酸または脂肪アルキル部分を隔てることもできる。好適なスキャフォールドは当業者に公知である。
【0175】
特定の実施形態では、本発明のアミノ脂質またはカチオン性脂質は、脂質が生理的pHまたはそれ未満のpH(例えば、pH7.4)で正の電荷を帯び、かつ第2のpHで、好ましくは生理的pHまたはそれを上回るpHで中性となるように、少なくとも1つのプロトン化可能基または脱プロトン化可能基を有する。当然のことながら、pHの関数としてのプロトンの付加または除去は平衡過程であること、および帯電脂質または中性脂質に対する言及は主な種の性質を指し、脂質の全てが帯電形態または中性形態で存在することを必要とするわけではないことが理解されるであろう。2つ以上のプロトン化可能基もしくは脱プロトン化可能基を有するか、または両性イオン性である脂質は、本発明における使用から除外されない。
【0176】
特定の実施形態では、本発明によるプロトン化可能な脂質は、約4〜約11の範囲のプロトン化可能基のpK
aを有する。これらの脂質は、より低いpH製剤の段階ではカチオン性であるが、これらの粒子はpH7.4付近の生理的pHでは表面が(完全にではないものの)大部分は中和されるので、約4〜約7のpK
aが最も好ましい。このpK
aの利点の1つは、粒子の外部表面と関連する少なくともいくつかの核酸が、生理的pHでその静電相互作用を失い、単なる透析で除去されること、したがって、粒子のクリアランスに対する感受性を大いに低下させることである。
【0177】
脂質粒子
本明細書で取り上げられる肝臓または内皮(例えば、心臓、肝臓、肺、腎臓、視床下部もしくは骨格筋)スクリーニングモデルで試験するための作用剤および/またはアミノ脂質を脂質粒子中に製剤化することができる。脂質粒子としては、リポソームが挙げられるが、これに限定されない。本明細書で使用されるとき、リポソームは、水性内部を封入する脂質含有膜を有する構造である。リポソームは1つ以上の脂質膜を有し得る。本発明は、単一膜と呼ばれる単層リポソームと、多重膜と呼ばれる多層リポソームの両方を企図している。核酸と複合体を形成する場合、脂質粒子は、例えば、Feigner,Scientific Americanに記載されているような、DNA層とDNA層の間に挟まれたカチオン性脂質二重層から構成されるリポプレックスでもあり得る。
【0178】
脂質粒子は、1つ以上の追加の脂質および/または他の成分(例えば、コレステロール)をさらに含み得る。脂質酸化の防止またはリガンドのリポソーム表面への付着などの種々の目的のために、他の脂質をリポソーム組成物中に含め得る。両親媒性脂質、中性脂質、カチオン性脂質、およびアニオン性脂質を含む、いくつかの脂質のうちのどれが存在してもよい。このような脂質を単独でまたは組み合わせて使用することができる。存在し得る追加の脂質成分の特定の例を以下に記載する。
【0179】
脂質粒子中に存在し得る追加の成分としては、ポリアミドオリゴマー(例えば、米国特許第6,320,017号を参照されたい)、ペプチド、タンパク質、洗剤、脂質誘導体(例えば、ホスファチジルエタノールアミンと結合したPEGおよびセラミドにコンジュゲートしたPEG)(米国特許第5,885,613号を参照されたい)などの二重層安定化成分が挙げられる
【0180】
脂質粒子は、第2のアミノ脂質またはカチオン性脂質、中性脂質、ステロール、および形成時の脂質粒子の凝集を低下させるために選択される脂質のうちの1つまたは複数を含むことができる。この形成は、形成時の電荷誘導性凝集を防ぐ粒子の立体安定性によって生じ得る。
【0181】
肝臓または内皮(例えば、心臓、肝臓、肺、腎臓、視床下部もしくは骨格筋)スクリーニングモデルで使用可能な核酸剤との結合に好適な脂質の例としては、ポリエチレングリコール(PEG)修飾脂質、モノシアロガングリオシドGm1、および例えば、米国特許第6,320,017号に記載されているようなポリアミドオリゴマー(「PAO」)がある。PEG、Gm1またはATTAのような、製剤化の間の凝集を防ぐ、電荷のない、親水性の、立体障害部分を有する他の化合物を用いて、本発明の方法および組成物に示すように使用される脂質に結合させることができる。ATTA−脂質は、例えば、米国特許第6,320,017号に記載されており、PEG−脂質コンジュゲートは、例えば、米国特許第5,820,873号、同第5,534,499号および同第5,885,613号に記載されている。通常、凝集を低下させるために選択される脂質成分の濃度は、(脂質のモルパーセントで)約1〜15%である。
【0182】
本発明において有用なPEG修飾脂質(または脂質−ポリオキシエチレンコンジュゲート)の具体例は、PEG部分を脂質小胞の表面に固定するための種々の「アンカリング」脂質部分を有することができる。好適なPEG修飾脂質の例としては、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジン酸、参照により本明細書に組み込まれる同時係属の米国特許出願第08/486,214号に記載されているPEG−セラミドコンジュゲート(例えば、PEG−CerC14またはPEG−CerC20)、PEG修飾ジアルキルアミンおよびPEG修飾1,2−ジアシルオキシプロパン−3−アミンが挙げられる。特に好ましいのは、PEG修飾ジアシルグリセロールおよびジアルキルグリセロールである。
【0183】
立体的に大きい部分(例えば、PEGまたはATTA)が脂質アンカーにコンジュゲートしている実施形態では、脂質アンカーの選択は、コンジュゲートが脂質粒子とどのような種類の関連を有することになるかによって決まる。mePEG(分子量:2000)−ジアステアロイルホスファチジルエタノールアミン(PEG−DSPE)は、粒子が循環から除去されるまで、おそらくは数日間、リポソームと関連し続けることがよく知られている。PEG−CerC20などの他のコンジュゲートには同様の滞留能がある。しかしながら、PEG−CerC14は、血清に暴露されると、製剤外に速やかに入れ替わり、いくつかのアッセイでは、T
1/2は60分未満となる。米国特許出願第08/486,214号に示されているように、少なくとも3つの特徴、すなわち、アシル鎖の長さ、アシル鎖の飽和、および立体障害頭部基のサイズが交換速度に影響を与える。これらの特色の好適なバリエーションを有する化合物は本発明に有用であり得る。いくつかの治療用途のために、PEG修飾脂質がインビボで核酸−脂質粒子から速やかに失われることが好ましい場合があり、それにより、PEG修飾脂質が比較的短い脂質アンカーを保有することになる。他の治療用途では、核酸−脂質粒子がより長い血漿循環寿命を示すことが好ましい場合があり、それにより、PEG修飾脂質は比較的長い脂質アンカーを保有することになる。例示的な脂質アンカーとしては、約C
14〜約C
22、好ましくは約C
14〜約C
16の長さを有する脂質アンカーが挙げられる。いくつかの実施形態では、PEG部分(例えば、mPEG−NH
2)のサイズは、約1000、2000、5000、10,000、15,000または20,000ダルトンである。
【0184】
凝集を防ぐ化合物が、適切に機能するために、必ずしも脂質コンジュゲーションを必要とするわけではないことに留意すべきである。凝集を防ぐのに、溶液中の遊離PEGまたは遊離ATTAで十分な場合がある。製剤化した後に粒子が安定である場合、対象に投与する前にPEGまたはATTAを透析して除去することができる。
【0185】
中性脂質は、脂質粒子中に存在する場合、生理的pHで電荷のないまたは中性の両性イオン形態として存在するいくつかの脂質種のいずれかであることができる。このような脂質としては、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリン、およびセレブロシドが挙げられる。本明細書に記載の粒子中で使用される中性脂質の選択は、通常、例えば、リポソームサイズや血流中のリポソームの安定性を考慮して判断される。好ましくは、中性脂質成分は、2つのアシル基を有する脂質(すなわち、ジアシルホスファチジルコリンおよびジアシルホスファチジルエタノールアミン)である。様々な鎖長および飽和度の種々のアシル鎖基を有する脂質が利用可能であるかまたは周知の技術により単離もしくは合成可能である。一群の実施形態では、炭素鎖長がC
14〜C
22の範囲の飽和脂肪酸を含有する脂質が好ましい。別の群の実施形態では、炭素鎖長がC
14〜C
22の範囲の単不飽和脂肪酸または二不飽和脂肪酸を有する脂質を用いる。さらに、飽和脂肪酸鎖と不飽和脂肪酸鎖の混合物を有する脂質を用いることができる。好ましくは、本発明で使用される中性脂質は、DOPE、DSPC、POPC、または任意の関連ホスファチジルコリンである。本発明において有用な中性脂質はまた、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、または他の頭部基(例えば、セリンおよびイノシトール)を有するリン脂質から構成されていてもよい。
【0186】
脂質混合物のステロール成分は、存在する場合、リポソーム、脂質小胞または脂質粒子調製の分野で従来使用されているステロールのうちのいずれかであることができる。好ましいステロールはコレステロールである。
【0187】
上で具体的に記載したものに加えて、生理的pH付近で正味の正電荷を担持する他のカチオン性脂質もまた本発明の脂質粒子に含まれ得る。このようなカチオン性脂質としては、N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド(「DODAC」);N−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル−N,N−N−トリエチルアンモニウムクロリド(「DOTMA」);N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド(「DDAB」);N−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(「DOTAP」);1,2−ジオレイルオキシ−3−トリメチルアミノプロパンクロリド塩(「DOTAP.C1」);3β−(N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル)コレステロール(「DC−Chol」)、N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N−2−(スペルミンカルボキサミド)エチル)−N,N−ジメチルアンモニウムトリフルオロアセタート(「DOSPA」)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(「DOGS」)、1,2−ジレオイル−sn−3−ホスホエタノールアミン(「DOPE」)、1,2−ジオレオイル−3−ジメチルアンモニウムプロパン(「DODAP」)、N,N−ジメチル−2,3−ジオレイルオキシ)プロピルアミン(「DODMA」)、およびN−(1,2−ジミリスチルオキシプロプ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(「DMRIE」)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、例えば、リポフェクチン(GIBCO/BRLから入手可能なDOTMAおよびDOPEを含む)、ならびにリポフェクトアミン(GIBCO/BRLから入手可能なDOSPAおよびDOPEを含む)などの、カチオン性脂質のいくつかの市販の調製物を用いることができる。特定の実施形態では、カチオン性脂質はアミノ脂質である。
【0188】
本発明の脂質粒子において使用するのに好適なアニオン性脂質としては、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N−ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N−スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N−グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リジルホスファチジルグリセロール、および中性脂質に結合した他のアニオン性修飾基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0189】
多くの実施形態では、両親媒性脂質が本発明の脂質粒子に含まれる。「両親媒性脂質」とは、脂質物質の疎水性部分が疎水性相に向けられている一方で、親水性部分が水性相に向けられている任意の好適な物質を指す。このような化合物としては、リン脂質、アミノ脂質、およびスフィンゴ脂質が挙げられるが、これらに限定されない。代表的なリン脂質としては、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、またはジリノレイルホスファチジルコリンが挙げられる。スフィンゴ脂質、スフィンゴ糖脂質ファミリー、ジアシルグリセロール、およびβ−アシルオキシ酸などの、他のリンを欠く化合物を使用することもできる。さらに、このような両親媒性脂質は、トリグリセリド類やステロール類などの他の脂質と容易に混合することができる。
【0190】
プログラム可能な融合脂質も本発明の脂質粒子中に含めるのに好適である。このような脂質粒子は、細胞膜と融合する傾向がほとんどなく、所与のシグナル事象が起こるまで、その積み荷を送達する。これにより、脂質粒子は、生物または疾患部位に注射された後、より均一に分布し、その後に細胞と融合し始めることが可能になる。このシグナル事象は、例えば、pH、温度、イオン環境の変化、または時間であることができる。最後の場合、ATTA−脂質コンジュゲートまたはPEG−脂質コンジュゲートなどの、融合遅延成分または「クローキング」成分は、時間とともに脂質粒子膜外に単に入れ替わることができる。例示的な脂質アンカーとしては、約C
14〜約C
22、好ましくは約C
14〜約C
16の長さを有する脂質アンカーが挙げられる。いくつかの実施形態では、PEG部分(例えば、mPEG−NH
2)のサイズは、約1000、2000、5000、10,000、15,000または20,000ダルトンである。
【0191】
体内に適切に分布するまでに、脂質粒子は、融合するのに十分なクローキング剤を失っている。他のシグナル事象の場合、疾患部位または標的細胞と関連するシグナル(例えば、炎症部位での温度上昇)を選択することが望ましい。
【0192】
核酸剤にコンジュゲートした脂質粒子は、ターゲッティング部分、例えば、細胞型または組織に特異的なターゲッティング部分を含むこともできる。リガンド、細胞表面受容体、糖タンパク質、ビタミン類(例えば、リボフラビン)およびモノクローナル抗体などの、種々のターゲッティング部分を用いた脂質粒子のターゲッティングがこれまでに記載されている(例えば、米国特許第4,957,773号および同第4,603,044号を参照されたい)。ターゲッティング部分は、タンパク質全体またはその断片を含むことができる。ターゲッティング機構は、通常、ターゲッティング部分が標的(例えば、細胞表面受容体)との相互作用に利用可能となるような形で、ターゲッティング剤が脂質粒子の表面に位置付けられることを必要とする。例えば、Sapra,P.and Allen,TM,Prog.Lipid Res.42(5):439−62(2003)およびAbra,RM et al.,J.Liposome Res.12:1−3(2002)に記載されているものをはじめとする、種々の異なるターゲッティング剤およびターゲッティング方法が当該技術分野で知られており、かつ利用可能である。
【0193】
ターゲッティングのために、親水性ポリマー鎖(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)鎖)の表面コーティングを有する脂質粒子、すなわち、リポソームを使用することが提案されている(Allen,et al.,Biochimica et Biophysica Acta 1237:99−108(1995);DeFrees,et al.,Journal of the American Chemistry Society 118:6101−6104(1996);Blume,et al.,Biochimica et Biophysica Acta 1149:180−184(1993);Klibanov,et al.,Journal of Liposome Research 2:321−334(1992);米国特許第5,013556号;Zalipsky,Bioconjugate Chemistry 4:296−299(1993);Zalipsky,FEBS Letters 353:71−74(1994);Zalipsky、Stealth Liposomes 第9章(Lasic and Martin編) CRC Press,Boca Raton Fl(1995)。1つのアプローチでは、脂質粒子を標的とするリガンド(例えば、抗体)を、脂質粒子を形成する脂質の極性頭部基に結合する。別のアプローチでは、ターゲッティングリガンドを、親水性ポリマーコーティングを形成するPEG鎖の遠位末端に結合させる(Klibanov,et al.,Journal of Liposome Research 2:321−334(1992);Kirpotin et al.,FEBS Letters 388:115−118(1996))。
【0194】
標的薬剤を結合させるための標準的な方法を用いることができる。例えば、標的薬剤の結合のために活性化することができるホスファチジルエタノールアミン、または誘導体化された親油性化合物(例えば、脂質誘導体化ブレオマイシン)を用いることができる。
【0195】
例えば、プロテインAを組み込んだリポソームを用いて、抗体をターゲッティングするリポソームを構築することができる(Renneisen,et al.,J.Bio.Chem.,265:16337−16342(1990)およびLeonetti,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),87:2448−2451(1990)を参照されたい)。抗体コンジュゲーションの他の例は、米国特許第6,027,726号に開示されており、この文献の教示は参照により本明細書に組み込まれる。ターゲッティング部分の例としては、新生物または腫瘍と関連する抗原を含む、細胞成分に特異的な他のタンパク質を挙げることもできる。ターゲッティング部分として用いられるタンパク質は、共有結合によってリポソームに結合させることができる(Heath,Covalent Attachment of Proteins to Liposomes,149 Methods in Enzymology 111−119(Academic Press,Inc.1987)を参照されたい)。他のターゲッティング方法としては、ビオチン−アビジンシステムが挙げられる。
【0196】
治療剤−脂質粒子組成物および製剤化
本発明は、本発明の脂質粒子と活性剤とを含む組成物を含み、その場合、この活性剤は、脂質粒子と関連している。特定の実施形態では、活性剤は治療剤である。特定の実施形態では、活性剤は、脂質粒子の水性内部に封入されている。他の実施形態では、活性剤は、脂質粒子の1つ以上の脂質層の内部に存在する。他の実施形態では、活性剤は、脂質粒子の外部または内部脂質表面に結合している。
【0197】
本明細書で使用される「完全に封入された」とは、粒子中の核酸が、血清への暴露または遊離のDNAを相当に分解するヌクレアーゼアッセイの後にそれほど分解されないことを示す。完全に封入された系では、通常は遊離の核酸の100%を分解する処理において、好ましくは粒子核酸の25%未満が分解され、より好ましくは10%未満、および最も好ましくは粒子核酸の5%未満が分解される。あるいは、完全な封入は、Oligreen(登録商標)アッセイにより決定され得る。Oligreen(登録商標)は、溶液中のオリゴヌクレオチドおよび一本鎖DNAを定量するための超高感度蛍光核酸染色剤である(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CAから入手可能)。
【0198】
完全に封入されたとは、粒子が血清安定である、すなわち、インビボ投与によって、粒子がすぐにはその構成部分に分解されないことも示唆する。
【0199】
本明細書で使用される活性剤としては、細胞、組織、器官、または対象に所望の効果を及ぼすことが可能な任意の分子または化合物が挙げられる。このような効果は、例えば、生物学的、生理学的、または美容的であり得る。活性剤は、例えば、核酸、ペプチドならびにポリペプチド(例えば、抗体、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗体断片、ヒト化抗体、組換え抗体、組換えヒト抗体、および霊長類化(Primatized)(商標)抗体、サイトカイン、増殖因子、アポトーシス因子、分化誘導因子、細胞表面受容体およびそのリガンド、ホルモンを含む)ならびに小分子(小さい有機分子または化合物を含む)をはじめとする、任意のタイプの分子または化合物であり得る。
【0200】
一実施形態では、活性剤は、治療剤、またはその塩もしくは誘導体である。治療剤誘導体は、それ自体に治療活性があってもよく、またはさらに修飾されたときに活性を持つようになるプロドラッグであってもよい。したがって、一実施形態では、治療剤誘導体は、未修飾の薬剤と比較したときに、治療活性の一部または全てを保持しているが、別の実施形態では、治療剤誘導体は治療活性を欠いている。
【0201】
様々な実施形態では、治療剤としては、例えば、抗炎症性化合物、抗鬱薬、刺激剤、鎮痛薬、抗生物質、受胎調節剤、解熱薬、血管拡張薬、抗血管新生薬、細胞血管剤(cytovascular agent)、シグナル伝達阻害剤、心臓血管薬(例えば、抗不整脈剤、血管収縮薬)、ホルモンおよびステロイドが挙げられる。
【0202】
特定の実施形態では、治療剤は抗癌薬であり、これは、抗腫瘍剤、抗癌剤、腫瘍薬、抗新生物剤などとも呼ばれる。本発明に従って使用可能な抗癌薬の例としては、アドリアマイシン、アルケラン、アロプリノール、アルトレタミン、アミホスチン、アナストロゾール、araC、三酸化ヒ素、アザチオプリン、ベキサロテン、biCNU、ブレオマイシン、ブスルファン静注、ブスルファン経口、カペシタビン(Xeloda)、カルボプラチン、カルムスチン、CCNU、セレコキシブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、シクロスポリンA、シタラビン、シトシンアラビノシド、ダウノルビシン、シトキサン、ダウノルビシン、デキサメタゾン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドキソルビシン、DTIC、エピルビシン、エストラムスチン、リン酸エトポシド、エトポシドおよびVP−16、エキセメスタン、FK506、フルダラビン、フルオロウラシル、5−FU、ゲムシタビン(Gemzar)、ゲムツズマブ−オゾガミシン、酢酸ゴセレリン、ハイドレア、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、メシル酸イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン(Camptostar、CPT−111)、レトロゾール、ロイコボリン、ロイスタチン、ロイプロリド、レバミゾール、リトレチノイン、メガストロール、メルファラン、L−PAM、メスナ、メトトレキサート、メトキサレン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ナイトロジェンマスタード、パクリタキセル、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペントスタチン、ポルフィマーナトリウム、プレドニゾン、リツキサン、ストレプトゾシン、STI−571、タモキシフェン、タキソテール、テモゾロミド、テニポシド、VM−26、トポテカン(Hycamtin)、トレミフェン、トレチノイン、ATRA、バルルビシン、ベルバン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、VP16、およびビノレルビンが挙げられるが、これらに限定されない。本発明に従って使用可能な抗腫瘍薬の他の例は、エリプチシンおよびエリプチシン類似体または誘導体、エポチロン、細胞内キナーゼ阻害剤ならびにカンプトテシンである。
【0203】
核酸−脂質粒子
特定の実施形態では、本発明の脂質粒子は核酸と関連して、核酸−脂質粒子を生じさせる。特定の実施形態では、核酸は、脂質粒子中に完全に封入されている。本明細書で使用されるとき、「核酸」という用語は、任意のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含むことが意図されている。最大50個のヌクレオチドを含む断片を通常オリゴヌクレオチドと呼び、それよりも長い断片をポリヌクレオチドと呼ぶ。特定の実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは20〜50ヌクレオチド長である。
【0204】
本発明との関連において、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は、天然に存在する塩基、糖および糖間(骨格)結合からなるヌクレオチドまたはヌクレオシドモノマーのポリマーまたはオリゴマーを指す。「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は、同様に機能する天然に存在しないモノマー、またはその部分を含むポリマーまたはオリゴマーも含む。このような修飾または置換されたオリゴヌクレオチドは、例えば、細胞取込みの強化やヌクレアーゼの存在下における安定性の増加などの特性のために、天然の形態よりも好ましいことが多い。
【0205】
オリゴヌクレオチドは、デオキシリボオリゴヌクレオチドまたはリボオリゴヌクレオチドと分類される。デオキシリボオリゴヌクレオチドは、この糖の5’炭素と3’炭素においてリン酸と共有結合して、交互の非分岐状ポリマーを形成するデオキシリボースと呼ばれる5炭糖からなる。リボオリゴヌクレオチドは、5炭糖がリボースである同様の反復構造からなる。
【0206】
本発明による脂質−核酸粒子中に存在する核酸には、既知の核酸の任意の形態が含まれる。本明細書で使用される核酸は、一本鎖DNAもしくはRNA、または二本鎖DNAもしくはRNA、またはDNA−RNAハイブリッドであることができる。二本鎖DNAの例としては、構造遺伝子、制御領域および終結領域を含む遺伝子、ならびに自己複製系(例えば、ウイルスまたはプラスミドDNA)が挙げられる。二本鎖RNAの例としては、siRNAおよび他のRNA干渉試薬が挙げられる。一本鎖核酸としては、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、マイクロRNA、および三重鎖形成オリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0207】
本発明の核酸は、通常、核酸の特定の形態に依存して様々な長さであり得る。例えば、特定の実施形態では、プラスミドまたは遺伝子は、約1,000〜100,000ヌクレオチド残基長であり得る。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、約10〜100ヌクレオチド長の範囲であり得る。様々な関連実施形態では、一本鎖、二本鎖、および三本鎖のオリゴヌクレオチドの長さの範囲は、約10〜約50ヌクレオチド長、約20〜約50ヌクレオチド長、約15〜約30ヌクレオチド長、約20〜約30ヌクレオチド長であり得る。
【0208】
特定の実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチド(またはその鎖)は、標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイスするかまたは標的ポリヌクレオチドに相補的である。「特異的にハイブリダイズ可能」および「相補的」は、DNAまたはRNA標的とオリゴヌクレオチドの間で安定かつ特異的な結合が起こる程度の十分な相補度を示すために用いられる用語である。オリゴヌクレオチドは、特異的にハイブリダイズ可能となるためにその標的核酸配列と100%相補的である必要はないことが理解される。オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドが標的に結合することで、標的分子の正常な機能が妨げられて、それからの有用性または発現が失われ、かつ特異的結合が望ましい条件下で、すなわち、インビボアッセイもしくは治療的処置の場合は、生理的条件下で、またはインビトロアッセイの場合は、アッセイが行なわれる条件下で、オリゴヌクレオチドが非標的配列に結合するのを妨げるほどの十分な相補度があるときに特異的にハイブリダイズ可能である。したがって、他の実施形態では、このオリゴヌクレオチドは、それが標的としているまたはそれが特異的にハイブリダイズする遺伝子またはmRNA配列の領域と比較したとき、1、2、または3つの塩基置換を含む。
【0209】
RNA干渉核酸
特定の実施形態では、本発明の核酸−脂質粒子は、RNA干渉(RNAi)分子と関連している。RNAi分子を用いたRNA干渉法を用いて、目的の遺伝子またはポリヌクレオチドの発現を妨害し得る。この5年の間に、低分子干渉RNA(siRNA)は、基本的には、開発中の次世代の標的化オリゴヌクレオチド薬物としてアンチセンスODNやリボザイムに取って代わった。siRNAは、RNAi誘導型サイレンシング複合体(RISC)として知られる細胞質の多タンパク質複合体と会合することができる通常21〜30ヌクレオチド 長のRNA二重鎖である。siRNAを搭載したRISCは、相同なmRNA転写産物の分解を仲介し、それゆえ、高い特異性をもってタンパク質発現をノックダウンするよう、siRNAを設計することができる。他のアンチセンス技術とは異なり、自然な機構によるsiRNA機能は、非コードRNAを介して遺伝子発現を制御するよう進化した。これは、その活性が、アンチセンスODNまたはリボザイムよりもインビトロおよびインビボで強力である理由であると一般に考えられている。臨床的に意義のある標的を標的とするsiRNAをはじめとする種々のRNAi試薬は現在、例えば、de Fougerolles,A.et al.,Nature Reviews 6:443−453(2007)に記載されているように、医薬品として開発されているところである。
【0210】
最初に記載されたRNAi分子は、RNAセンス鎖とRNAアンチセンス鎖の両方を含むRNA:RNAハイブリッドであったが、現在、DNAセンス:RNAアンチセンスハイブリッド、RNAセンス:DNAアンチセンスハイブリッド、およびDNA:DNAハイブリッドがRNAiを仲介することができることが証明されている(Lamberton,J.S.and Christian,A.T.,(2003) Molecular Biotechnology 24:111−119)。したがって、本発明は、これらの異なるタイプの二本鎖分子のいずれかを含むRNAi分子の使用を含む。さらに、RNAi分子を種々の形態で用いて、細胞に導入し得ることが理解される。したがって、本明細書で使用されるとき、RNAi分子は、限定するものではないが、2つの別々の鎖、すなわち、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖ポリヌクレオチド、例えば、低分子干渉RNA(siRNA)と、二本鎖領域を形成する相補配列のヘアピンループを含むポリヌクレオチド、例えば、shRNAi分子と、単独でまたは別のポリヌクレオチドと組み合わせて二本鎖ポリヌクレオチドを形成することができる1つ以上のポリヌクレオチドを発現する発現ベクターとを含む、細胞内でRNAi応答を誘導することができる任意のおよび全ての分子を包含する。
【0211】
RNA干渉(RNAi)を用いて、標的ポリヌクレオチドの発現を特異的に阻害し得る。二本鎖RNAを介する遺伝子および核酸発現の抑制は、dsRNA、siRNAまたはshRNAを細胞または生物に導入することにより、本発明に従って達成し得る。siRNAは、二本鎖RNA、またはRNAとDNAの両方、例えば、1つのRNA鎖と1つのDNA鎖を含むハイブリッド分子であり得る。siRNAを細胞に直接導入することにより、哺乳動物細胞内でRNAiを誘発することができることが証明されている(Elshabir,S.M.,et al.,Nature 411:494−498(2001))。さらに、哺乳動物細胞内での抑制はRNAレベルで起こり、標的とされた遺伝子に特異的で、RNAとタンパク質抑制の間に強い相関があった(Caplen,N.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:9746−9747(2001))。さらに、HeLa S3、COS7、293、NIH/3T3、A549、HT−29、CHO−K1およびMCF−7細胞をはじめとする、多種多様な細胞株は、ある程度siRNAサイレンシングに感受性があることが示された(Brown,D.et al.,TechNotes 9(1):1−7、www.dot.ambion.dot.com/techlib/tn/91/912.html(9/1/02)のワールドワイドウェブ上で入手可能)。
【0212】
特定のポリヌクレオチドを標的とするRNAi分子は、当該技術分野で公知の手順に従って容易に調製することができる。効果的なsiRNA分子の構造的特徴が同定されている。Elshabir,S.M.et al.(2001) Nature 411:494−498およびElshabir,S.M.et al.(2001),EMBO 20:6877−6888。したがって、当業者であれば、多種多様な異なるsiRNA分子を用いて、特異的な遺伝子または転写産物を標的し得ることを理解するであろう。特定の実施形態では、本発明によるsiRNA分子は二本鎖であり、16〜30または18〜25ヌクレオチド長(その間にある各々の整数を含む)である。一実施形態では、siRNAは、21ヌクレオチド長さである。特定の実施形態では、siRNAは、0〜7ヌクレオチドの3’突出または0〜4ヌクレオチドの5’突出を有する。一実施形態では、siRNA分子は、2ヌクレオチドの3’突出を有する。一実施形態では、siRNAは、21ヌクレオチド長であり、2ヌクレオチドの3’突出を有する(すなわち、siRNAは、センス鎖とアンチセンス鎖の間に19ヌクレオチドの相補領域を含む)。特定の実施形態では、突出はUUまたはdTdTの3’突出である。
【0213】
1塩基対のミスマッチですらサイレンシングを低下させることが示されているので、通常、siRNA分子は、標的DNA分子の一方の鎖に完全に相補的である。他の実施形態では、siRNAは、例えば、2’−デオキシ−または2’−O−メチル修飾などの修飾された骨格組成を有し得る。しかしながら、好ましい実施形態では、siRNAの鎖全体は、2’デオキシまたは2’−O−修飾塩基のいずれかを含んで作製されない。
【0214】
別の実施形態では、本発明は、細胞内で遺伝子の発現を阻害するためのベクターを含む細胞を提供する。ベクターは、本発明のdsRNAのうちの1つの少なくとも一方の鎖をコードするヌクレオチド配列に機能的に連結された調節配列を含む。
【0215】
一実施形態では、siRNA標的部位は、標的mRNA転写産物配列をAAジヌクレオチド配列の存在についてスキャンすることによって選択される。3’隣接の約19ヌクレオチドと組み合わされた各々のAAジヌクレオチド配列は、潜在的なsiRNA標的部位である。一実施形態では、調節領域に結合するタンパク質がsiRNPエンドヌクレアーゼ複合体の結合を妨害し得るので、siRNA標的部位は、選択的に、5’および3’非翻訳領域(UTR)内または開始コドン付近の領域内(約75塩基以内)には位置しない(Elshabir,S.et al.,Nature 411:494−498(2001);Elshabir,S.et al.,EMBO J.20:6877−6888(2001))。さらに、潜在的標的部位を、適当なゲノムデータベース(例えば、NCBIサーバー(www.ncbi.nlm)上で入手可能な、BLASTN 2.0.5)、および除外された他のコード配列とかなりの相同性を有する潜在的標的配列と比較し得る。
【0216】
特定の実施形態では、短いヘアピンRNAは、本発明の核酸−脂質粒子の核酸成分を構成している。短いヘアピンRNA(shRNA)は、配列特異的に標的遺伝子の発現を低下させることができるヘアピンRNAの形態である。短いヘアピンRNAは、通常、細胞環境においてより安定でかつ分解されにくいので、遺伝子発現を抑制するときにsiRNAに優る利点を提供し得る。このような短いヘアピンRNA媒介性の遺伝子サイレンシングは、種々の正常細胞株および癌細胞株において、ならびにマウス細胞およびヒト細胞をはじめとする哺乳動物細胞において機能することが立証されている。Paddison,P.et al.,Genes Dev.16(8):948−58(2002)。さらに、改変されたshRNAをコードする染色体遺伝子を担持するトランスジェニック細胞株が作製されている。これらの細胞は、shRNAを構成的に合成し、それにより、子孫細胞に受け継がれ得る長時間持続型のまたは構成的な遺伝子サイレンシングを促進することができる。Paddison,P.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99(3):1443−1448(2002)。
【0217】
shRNAはステムループ構造を含む。特定の実施形態では、shRNAは、変えられるステムの長さ、通常、19〜29ヌクレオチド、またはその間の任意の数の長さを含み得る。特定の実施形態では、ヘアピンは、19〜21ヌクレオチドステムを含むが、他の実施形態では、ヘアピンは、27〜29ヌクレオチドステムを含む。特定の実施形態では、ループサイズは4〜23ヌクレオチドの長さであるが、ループサイズは、サイレンシング活性にそれほど影響を及ぼすことなく、23ヌクレオチドより大きいことがあり得る。shRNA分子は、効力を低下させることなく、ミスマッチ、例えば、shRNAステムの2つの鎖の間のG−Uミスマッチを含み得る。実際、特定の実施形態では、例えば、細菌中で増殖させる間、ヘアピンを安定化するために、ヘアピンステム中に1個または数個のG−U対を含むようにshRNAを設計する。しかしながら、通常、標的mRNAに結合するステムの部分(アンチセンス鎖)とmRNAの相補性が必要とされるので、この領域中の1塩基対ミスマッチでさえもサイレンシングを無効にする可能性がある。5’および3’突出は、shRNA機能に重要であるようには見えないので、必要とはされないが、これらが存在していてもよい(Paddison et al.(2002) Genes & Dev.16(8):948−58)。
【0218】
マイクロRNA
マイクロRNA(miRNA)は、植物および動物のゲノム中のDNAから転写されるが、タンパク質には翻訳されない高度に保存された小RNA分子群である。プロセッシングされたmiRNAは、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)に取り込まれるようになる約17〜25ヌクレオチド(nt)の一本鎖RNA分子であり、発生、細胞増殖、アポトーシスおよび分化の重要な調節因子として同定されている。これらは、特定のmRNAの3’−非翻訳領域に結合することによって、遺伝子発現の調節に役割を果たしていると考えられている。RISCは、翻訳阻害、転写産物切断、またはその両方によって、遺伝子発現の下方調節を仲介する。RISCは、広範囲にわたる真核生物の核内での転写サイレンシングにも関与する。
【0219】
これまでに同定されたmiRNA配列の数は多く、かつ増加しており、その実例は、例えば、“miRBase:microRNA sequences,targets and gene nomenclature” Griffiths−Jones S,Grocock RJ,van Dongen S,Bateman A,Enright AJ.NAR,2006,34,Database Issue,D140−D144;“The microRNA Registry” Griffiths−Jones S.NAR,2004,32,Database Issue,D109−D111に、また、microrna.dot.sanger.dot.ac.dot.uk/sequences/におけるワールド・ワイド・ウェブ上でも見られる。
【0220】
アンチセンスオリゴヌクレオチド
一実施形態では、核酸は、標的ポリヌクレオチドに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。「アンチセンスオリゴヌクレオチド」または単に「アンチセンス」という用語は、標的化ポリヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドを含むことが意図される。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、選ばれた配列に相補的な一本鎖のDNAまたはRNAである。アンチセンスRNAの場合、相補的なRNA鎖に結合することによって、その翻訳を妨げる。アンチセンスDNAは、特異的で、相補的な(コードまたは非コード)RNAを標的するために用いることができる。結合が起こる場合、このDNA/RNAハイブリッドを酵素のRNアーゼHで分解することができる。特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約10〜約50ヌクレオチド、より好ましくは約15〜約30ヌクレオチドを含む。この用語は、所望の標的遺伝子と正確には相補的ではない場合があるアンチセンスオリゴヌクレオチドも包含する。したがって、本発明は、非標的特異的活性がアンチセンスで見られる場合に、または標的配列との1つ以上のミスマッチを含むアンチセンス配列が特定の用途で最も好ましい場合に利用することができる。
【0221】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、タンパク質合成の効果的でかつ標的を定めた阻害剤であることが示されており、それゆえに、これを用いて、標的とされた遺伝子によるタンパク質合成を特異的に阻害することができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドがタンパク質合成を阻害する効力は、よく確立されている。例えば、ポリガラクタウロナーゼおよびムスカリンおよびムスカリン2型アセチルコリン受容体の合成は、そのそれぞれのmRNA配列に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドによって阻害される(米国特許第5,739,119号および米国特許第5,759,829号)。さらに、アンチセンス阻害の例が、核タンパク質サイクリン、多剤耐性遺伝子(MDG1)、ICAM−1、E−セレクチン、STK−1、線条体GABA
A受容体およびヒトEGFについて示されている(Jaskulski et al.,Science.1988 Jun 10;240(4858):1544−6;Vasanthakumar and Ahmed,Cancer Commun.1989;1(4):225−32;Peris et al.,Brain Res Mol Brain Res.1998 Jun 15;57(2):310−20;米国特許第5,801,154号;米国特許第5,789,573号;米国特許第5,718,709号および米国特許第号5,610,288)。さらに、種々の異常な細胞増殖(例えば、癌)を阻害し、かつこれらを治療するために使用可能なアンチセンスコンストラクトもまた、記載されている(米国特許第5,747,470号;米国特許第5,591,317号および米国特許第5,783,683号)。
【0222】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを作製する方法は、当該技術分野で公知であり、任意のポリヌクレオチド配列を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを作製するために容易に適応することができる。所与の標的配列に特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチド配列の選択は、選択された標的配列の解析、ならびに二次構造、T
m、結合エネルギーおよび相対的な安定性の決定に基づく。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ダイマー、ヘアピン、または宿主細胞における標的mRNAへの特異的結合を減少させるかもしくは妨げる他の二次構造を相対的に形成することができないことに基づいて選択され得る。mRNAの極めて好ましい標的領域は、AUG翻訳開始コドンにおける領域またはその付近の領域、およびmRNAの5’領域に実質的に相補的な配列を含む。これらの二次構造解析および標的部位の選択の考慮は、例えば、OLIGOプライマー解析ソフトウェアのv.4(Molecular Biology Insights)および/またはBLASTN 2.0.5アルゴリズムソフトウェア(Altschul et al., Nucleic Acids Res. 1997, 25(17):3389−402)を用いて行なうことができる。
【0223】
リボザイム
本発明の別の実施形態によれば、核酸−脂質粒子は、リボザイムと会合する。リボザイムは、エンドヌクレアーゼ活性を有する特定の触媒ドメインを有するRNA−タンパク質複合体である(Kim and Cech,Proc Natl Acad Sci USA.1987 Dec;84(24):8788−92;Forster and Symons,Cell.1987 Apr 24;49(2):211−20)。例えば、多数のリボザイムが、しばしばオリゴヌクレオチド基質内のいくつかのリン酸エステルのうちの1つだけを切断する高度の特異性によって、リン酸エステル転移反応を加速させる(Cech et al.,Cell.1981 Dec;27(3 Pt 2):487−96;Michel and Westhof,J Mol Biol.1990 Dec 5;216(3):585−610;Reinhold−Hurek and Shub,Nature.1992 May 14;357(6374):173−6)。この特異性は、基質が化学反応前に特異的な塩基対形成相互作用を介してリボザイムの内部のガイド配列(「IGS」)に結合する必要があることに起因している。
【0224】
天然に存在する酵素的RNAの少なくとも6つの基本的な種類が現在知られている。各々は、生理的条件下においてトランスで(in trans)RNAホスホジエステル結合の加水分解を触媒することができる(したがって、他のRNA分子を切断することができる)。一般に、酵素的核酸は、まず標的RNAに結合することによって作用する。このような結合は、標的RNAを切断するように作用する分子の酵素的部分に近接して保持されている酵素的核酸の標的結合部分を介して生じる。したがって、酵素的核酸は、まず、標的RNAを認識し、次に、相補的な塩基対形成によってそれに結合し、いったん正確な部位に結合したら、標的RNAを切断するように酵素的に作用する。このような標的RNAの戦略的な切断は、コードされるタンパク質の合成を指示する能力を破壊する。酵素的核酸は、そのRNA標的に結合し、それを切断した後、そのRNAから放出されて、別の標的を捜し、そして、新しい標的への結合とその切断を繰り返すことができる。
【0225】
酵素的核酸分子は、例えば、ハンマーヘッド型、ヘアピン型、δ肝炎ウイルス、グループIイントロンまたはRNaseP RNA(RNAガイド配列と会合した状態)またはアカパンカビVS RNAモチーフとして形成され得る。ハンマーヘッド型モチーフの具体的な例は、Rossi et al.Nucleic Acids Res.1992 Sep 11;20(17):4559−65に記載されている。ヘアピンモチーフの例は、Hampel et al.(欧州特許第EP0360257号)、Hampel and Tritz,Biochemistry 1989 Jun 13;28(12):4929−33;Hampel et al.,Nucleic Acids Res.1990 Jan 25;18(2):299−304および米国特許第5,631,359号に記載されている。δ肝炎ウイルスモチーフの例は、Perrotta and Been,Biochemistry.1992 Dec 1;31(47):11843−52に記載されており、RNasePモチーフの例は、Guerrier−Takada et al.,Cell.1983 Dec;35(3 Pt 2):849−57に記載されており、アカパンカビVS RNAリボザイムモチーフは、Collins(Saville and Collins,Cell.1990 May 18;61(4):685−96;Saville and Collins,Proc Natl Acad Sci USA.1991 Oct 1;88(19):8826−30;Collins and Olive,Biochemistry.1993 Mar 23;32(11):2795−9)に記載されており、グループIイントロンの例は、米国特許第4,987,071号に記載されている。本発明に従って使用される酵素的核酸分子の重要な特徴は、それらが、標的遺伝子のDNA領域またはRNA領域の1または複数に相補的である特異的な基質結合部位を有すること、およびその分子にRNA切断活性を付与するヌクレオチド配列を基質結合部位内または基質結合部位周辺に有することである。したがって、リボザイムコンストラクトは、本明細書中で述べられる特定のモチーフに限定される必要はない。
【0226】
任意のポリヌクレオチド配列を標的とするリボザイムを作製する方法は、当該技術分野で公知である。リボザイムは、各々参照により本明細書に明確に組み込まれる、国際公開第93/23569号および同第94/02595号に記載されているように設計され、かつ合成されて、それらに記載されているようにインビトロおよびインビボで試験され得る。
【0227】
リボザイム活性は、リボザイムの結合アームの長さを変更すること、または血清リボヌクレアーゼによる分解を防ぐ修飾を有するリボザイムを化学的に合成すること(例えば、国際公開第92/07065号;国際公開第93/15187号;国際公開第91/03162号;欧州特許出願公開92110298.4号;米国特許第5,334,711号;および国際公開第94/13688を参照されたい。これらの文献は、酵素的RNA分子の糖部分になされ得る様々な化学修飾を記載している)、細胞内でのそれらの効力を高める修飾、およびRNA合成時間を短縮し、化学的必要性を低下させるステムII塩基の除去によって、最適化することができる。
【0228】
本発明の組成物および方法において使用するのに好適なオリゴヌクレオチド(ODN)の追加の特定の核酸配列は、米国特許出願第60/379,343号、米国特許出願第09/649,527号、国際公開第02/069369号、国際公開第01/15726号、米国特許第6,406,705号およびRaney et al.,Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,298:1185−1192(2001)に記載されている。ある特定の実施形態において、本発明の組成物および方法において使用されるODNは、CpGモチーフ内にホスホジエステル(「PO」)骨格もしくはホスホロチオアート(「PS」)骨格および/または少なくとも1つのメチル化されたシトシン残基を有する。
【0229】
核酸修飾
1990年代、DNAベースのアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)およびリボザイム(RNA)が、薬物のデザインおよび開発に対して興奮させる新しいパラダイムをもたらしたが、それらのインビボでの適用は、エンド−およびエキソ−ヌクレアーゼ活性ならびに首尾よい細胞内送達の欠如によって妨げられた。この分解の問題は、オリゴヌクレオチド(オリゴ)薬物がヌクレアーゼ酵素によって認識されるのを妨げるが、それらの作用機構を阻害しない化学修飾に対する大規模な研究の後、効果的に克服された。この研究は非常に成功したので、現在開発過程のアンチセンスODN薬物は、未修飾分子の場合の数分間と比較して、インビボで数日間インタクトな状態である(Kurreck,J.2003.Antisense technologies.Improvement through novel chemical modifications.Eur J Biochem 270:1628−44)。しかしながら、細胞内送達および作用機序の問題は、これまで、アンチセンスODNおよびリボザイムが臨床的な製品になることを制限している。
【0230】
RNA二重鎖は、本質的に、一本鎖のDNAまたはRNAよりもヌクレアーゼに対して安定であり、かつアンチセンスODNとは異なり、未修飾siRNAは、いったん細胞質に到達すると良好な活性を示す。そうであっても、アンチセンスODNやリボザイムを安定化させるために開発された化学修飾もまた、どれくらいの化学修飾が許容され得るか、薬物動態学的および薬力学的な活性を高めることができるかどうかを明らかにするために、siRNAに体系的に適用されている。siRNA二重鎖によるRNA干渉には、異なる機能を有するアンチセンス鎖およびセンス鎖が必要である。両方とも、siRNAのRISCへの侵入を可能にするために必要であるが、いったん装填されると、2本の鎖は分離し、センス鎖は分解されるのに対し、アンチセンス鎖は残留して、RISCを標的mRNAに導く。RISCへの侵入は、標的mRNAの認識および切断よりも構造的に厳格性の低いプロセスである。結果として、センス鎖の多くの異なる化学修飾が可能であるが、限られた変化しかアンチセンス鎖によって許容されない(Zhang et al.,2006)。
【0231】
当該技術分野で公知の通り、ヌクレオシドは、塩基と糖の組合せである。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合されたリン酸基をさらに含むヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含むヌクレオシドの場合、リン酸基は、その糖の2’、3’または5’ヒドロキシル部分のいずれかに結合させることができる。オリゴヌクレオチドを形成する際、リン酸基は、隣接するヌクレオシドを互いに共有結合して、線状のポリマー化合物を形成する。次に、この線状のポリマー構造のそれぞれの末端がさらに結合されて、環状構造を形成することができる。オリゴヌクレオチド構造内において、リン酸基は、一般にオリゴヌクレオチドのヌクレオシド間骨格を形成すると言われる。RNAおよびDNAの通常の結合または骨格は、3’−5’ホスホジエステル結合である。
【0232】
本発明による脂質−核酸粒子において使用される核酸は、公知である任意の形態の核酸を含む。したがって、この核酸は、ヌクレアーゼ耐性および血清安定性を高めるために以前に使用されたタイプの修飾された核酸であり得る。しかしながら、驚くべきことに、許容可能な治療的な生成物は、天然の核酸ポリマーのホスホジエステル結合に対する修飾を有さない核酸から脂質−核酸粒子を製剤化する本発明の方法を用いても調製することができ、未修飾のホスホジエステル核酸(すなわち、全ての結合がホスホジエステル結合である核酸)を使用することが、本発明の好ましい実施形態である。
【0233】
骨格修飾
本発明において有用なアンチセンス、siRNAおよび他のオリゴヌクレオチドとしては、修飾された骨格または非天然のヌクレオシド間結合を含むオリゴヌクレオチドが挙げられるが、これに限定されない。修飾された骨格を有するオリゴヌクレオチドには、骨格内にリン原子を保持するオリゴヌクレオチドと骨格内にリン原子を有さないオリゴヌクレオチドが含まれる。ヌクレオシド間骨格内にリン原子を有さない修飾されたオリゴヌクレオチドもまた、オリゴヌクレオシドと考えることができる。修飾されたオリゴヌクレオチド骨格としては、例えば、ホスホロチオアート、キラルホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリ−エステル、メチルホスホナートおよび他のアルキルホスホナート(3’−アルキレンホスホナートおよびキラルホスホナートを含む)、ホスフィナート、ホスホルアミダート(3’−アミノホスホルアミダートおよびアミノアルキルホスホルアミダートを含む)、チオノホスホルアミダート、チオノアルキルホスホナート、チオノアルキルホスホトリエステル、ホスホロセレナート、メチルホスホナートまたはO−アルキルホスホトリエステル結合、ならびに通常の3’−5’結合を有するボラノホスファート、これらの2’−5’結合類似体、および反転した極性を有するもの(ヌクレオシド単位の隣接する対では、3’−5’と5’−3’または2’−5’と5’−2’とが結合する)が挙げられる。本発明による核酸内に存在し得る特定の修飾の特定の非限定的な例を表2に示す。
【0234】
様々な塩、混合塩および遊離酸形態もまた含まれる。上記結合の調製を教示する代表的な米国特許としては、米国特許第3,687,808号;同第4,469,863号;同第4,476,301号;同第5,023,243号;同第5,177,196号;同第5,188,897号;同第5,264,423号;同第5,276,019号;同第5,278,302号;同第5,286,717号;同第5,321,131号;同第5,399,676号;同第5,405,939号;同第5,453,496号;同第5,455,233号;同第5,466,677号;同第5,476,925号;同第5,519,126号;同第5,536,821号;同第5,541,306号;同第5,550,111号;同第5,563,253号;同第5,571,799号;同第5,587,361号;および同第5,625,050号が挙げられるが、これらに限定されない。
【0235】
特定の実施形態では、その中にリン原子を含まない修飾オリゴヌクレオチド骨格は、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルのヌクレオシド間結合、ヘテロ原子とアルキルもしくはシクロアルキルのヌクレオシド間結合の混合、または1つ以上の短鎖のヘテロ原子もしくは複素環式のヌクレオシド間結合によって形成される骨格を有する。これらとしては、例えば、モルホリノ結合を有するもの(ヌクレオシドの糖部分から部分的に形成される);シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホネートおよびスルホンアミド骨格;アミド骨格;ならびに混合されたN、O、SおよびCH
2構成部分を有するその他のものが挙げられる。上記のオリゴヌクレオシドを記載している代表的な米国特許としては、米国特許第5,034,506号;同第5,166,315号;同第5,185,444号;同第5,214,134号;同第5,216,141号;同第5,235,033号;同第5,264,562号;同第5,264,564号;同第5,405,938号;同第5,434,257号;同第5,466,677号;同第5,470,967号;同第5,489,677号;同第5,541,307号;同第5,561,225号;同第5,596,086号;同第5,602,240号;同第5,610,289号;同第5,602,240号;同第5,608,046号;同第5,610,289号;同第5,618,704号;同第5,623,070号;同第5,663,312号;同第5,633,360号;同第5,677,437号;および同第5,677,439号が挙げられるが、これらに限定されない。
【0236】
ホスホロチオアート骨格修飾(表3、#1)(ホスホジエステル結合内の非架橋酸素が硫黄で置換されている)は、ヌクレアーゼ分解に対して核酸薬物を安定化させるために配置された最も古く最も一般的な手段の1つである。通常、PS修飾は、活性に対して大きく影響せずに、両方のsiRNA鎖に対して広範になされ得るようである(Kurreck,J.,Eur.J.Biochem.270:1628−44,2003)。しかしながら、PSオリゴは、タンパク質と非特異的に貪欲に会合することが知られており、その結果、特にi.v.投与の際に毒性が生じる。それゆえに、PS修飾は、通常、3’および5’末端における1つまたは2つの塩基に制限される。ボラノホスファートリンカー(表3、#2)は、PSよりも明らかに安定であり、siRNA活性を高め、そして低毒性を有する、最近の修飾である(Hall et al.,Nucleic Acids Res.32:5991−6000,2004)。
【表C】
【表D】
【表E】
【0237】
他の有用な核酸誘導体としては、架橋酸素原子(リン酸エステル結合を形成するもの)が−S−、−NH−、−CH
2−などで置換されている核酸分子が挙げられる。特定の実施形態では、使用されるアンチセンス、siRNAまたは他の核酸に対する改変は、核酸と会合する負電荷に完全には影響を及ぼさないであろう。したがって、本発明は、結合の部分が、例えば、中性のメチルホスホナートまたはホスホルアミダート結合で置換されている、アンチセンス、siRNAおよび他の核酸の使用を企図する。中性の結合が使用されるとき、ある特定の実施形態において、80%未満の核酸結合が、そのように置換されるか、または50%未満の結合がそのように置換される。
【0238】
塩基修飾
塩基修飾は、骨格および糖に対する修飾よりも一般的ではない。0.3−6に示す修飾の全てが、ヌクレアーゼに対してsiRNAを安定化させ、活性に対してほとんど効果がないようである(Zhang,H.Y.,Du,Q.,Wahlestedt,C,Liang,Z.2006.RNA Interference with chemically modified siRNA.Curr Top Med Chem 6:893−900)。
【0239】
したがって、オリゴヌクレオチドは、ヌクレオ塩基(当該技術分野では単に「塩基」と表されることが多い)の修飾または置換も含み得る。本明細書中で使用されるとき、「未修飾の」または「天然の」ヌクレオ塩基は、プリン塩基であるアデニン(A)およびグアニン(G)ならびにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)を含む。修飾されたヌクレオ塩基としては、他の合成および天然のヌクレオ塩基(例えば、5−メチルシトシン(5−me−Cまたはm5c)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよび他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン、5−ハロウラシルおよびシトシン、5−プロピニルウラシルおよびシトシン、6−アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5−ウラシル(プソイドウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよび他の8−置換アデニンおよびグアニン、5−ハロ、特に、5−ブロモ、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニン、ならびに3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンが挙げられる。
【0240】
特定のヌクレオ塩基は、本発明のオリゴマー化合物(5−置換ピリミジン、6−アザピリミジンならびにN−2、N−6およびO−6置換プリン(2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシンを含む)を含む)の結合親和性を増加させるのに特に有用である。5−メチルシトシン置換は、核酸二重鎖の安定性を0.6〜1.2℃増加させることが示されている(Sanghvi,Y.S.,Crooke,S.T. and Lebleu,B.,編,Antisense Research and Applications 1993,CRC Press,Boca Raton,pages 276−278)。これらは、特定の実施形態では、2’−O−メトキシエチル糖修飾と組み合わせ得る。これらの修飾されたヌクレオ塩基ならびに他の修飾されたヌクレオ塩基の特定のものの調製を教示する米国特許としては、上で述べた米国特許第3,687,808号ならびに米国特許第4,845,205号;同第5,130,302号;同第5,134,066号;同第5,175,273号;同第5,367,066号;同第5,432,272号;同第5,457,187号;同第5,459,255号;同第5,484,908号;同第5,502,177号;同第5,525,711号;同第5,552,540号;同第5,587,469号;同第5,594,121,5,596,091号;同第5,614,617号;および同第5,681,941号が挙げられるが、これらに限定されない。
【0241】
糖修飾
糖基におけるほとんどの修飾は、好都合に化学的に反応性の部位を提供する、RNA糖環の2’−OHにおいて生じる。(Manoharan,M.2004.RNA interference and chemically modified small interfering RNAs.Curr Opin Chem Biol 8:570−9;Zhang,H.Y.,Du,Q.,Wahlestedt,C,Liang,Z.2006.RNA Interference with chemically modified siRNA.Curr Top Med Chem 6:893−900)。2’−Fおよび2’−OME(0.7および8)が、一般的であり、その両方が、安定性を高め、2’−OME修飾は、1本の鎖あたり4ヌクレオチド未満に制限される限り、活性を低下させない(Holen,T.,Amarzguioui,M.,Babaie,E.,Prydz,H.2003.Similar behaviour of single−strand and double−strand siRNAs suggests they act through a common RNAi pathway.Nucleic Acids Res 31:2401−7)。修飾塩基がその分子の中央領域に限定されるとき、2’−O−MOE(0.9)は、siRNAにおいて最も有効である(Prakash,T.P.,Allerson,C.R.,Dande,P.,Vickers,T.A.,Sioufi,N.,Jarres,R.,Baker,B.F.,Swayze,E.E.,Griffey,R.H.,Bhat,B.2005.Positional effect of chemical modifications on short interference RNA activity in mammalian cells.J Med Chem 48:4247−53)。活性を失わせることなくsiRNAを安定化させることが見出されている他の修飾を、0.10−14に示す。
【0242】
修飾オリゴヌクレオチドは、1つ以上の置換された糖部分も含み得る。例えば、本発明は、以下のうちの1つを2’位に含むオリゴヌクレオチドを含む:OH;F;O−、S−もしくはN−アルキル、O−アルキル−O−アルキル、O−、S−もしくはN−アルケニル、またはO−、S−もしくはN−アルキニル(ここで、このアルキル、アルケニルおよびアルキニルは、置換または非置換のC
1−C
10アルキルまたはC
2−C
10アルケニルおよびアルキニルであり得る)。O[(CH
2)
nO]
mCH
3、O(CH
2)
nOCH
3、O(CH
2)
2ON(CH
3)
2、O(CH
2)
nNH
2、O(CH
2)
nCH
3、O(CH
2)
nONH
2およびO(CH
2)
nON[(CH
2)
nCH
3)]
2(ここで、nおよびmは1〜約10である)が特に好ましい。他の好ましいオリゴヌクレオチドは、以下のもののうちの1つを
2’位に含む:C
1−C
10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリール、アラルキル、O−アルカリールまたはO−アラルキル、SH、SCH
3、OCN、Cl、Br、CN、CF
3、OCF
3、SOCH
3、SO
2CH
3、ONO
2、NO
2、N
3、NH
2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、オリゴヌクレオチドの薬物動態学的特性を改善するための基またはオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改善するための基および同様の特性を有する他の置換基。1つの修飾としては、2’−メトキシエトキシ(2’−O−(2−メトキシエチル)または2’−MOEとしても知られる2’−O−CH
2CH
2OCH
3)(Martin et al.,Helv.Chim.Acta 1995,78,486−504)、すなわち、アルコキシアルコキシ基が挙げられる。他の修飾としては、2’−ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち、2’−DMAOEとしても知られるO(CH
2)
2ON(CH
3)
2基、および2’−ジメチルアミノエトキシエトキシ(2’−DMAEOE)が挙げられる。
【0243】
修飾が、オリゴヌクレオチド上の他の位置、特に、3’末端ヌクレオチド上または2’−5’結合したオリゴヌクレオチド上の糖の3’位および5’末端ヌクレオチドの5’位においても行われ得る。オリゴヌクレオチドは、ペントフラノシル糖の代わりに、シクロブチル部分などの糖模倣物も有し得る。このような修飾された糖構造の調製を教示する代表的な米国特許としては、米国特許第4,981,957号:同第5,118,800号:同第5,319,080号:同第5,359,044号:同第5,393,878号:同第5,446,137号:同第5,466,786号:同第5,514,785号:同第5,519,134号:同第5,567,811号:同第5,576,427号:同第5,591,722号:同第5,597,909号:同第5,610,300号:同第5,627,053号:同第5,639,873号:同第5,646,265号:同第5,658,873号:同第5,670,633号:および同第5,700,920号が挙げられるが、これらに限定されない。
【0244】
他のオリゴヌクレオチド模倣物において、ヌクレオチド単位の糖とヌクレオシド間結合の両方(すなわち、骨格)は、新規の基で置換されるが、塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。1つのこのようなオリゴマー化合物である、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているオリゴヌクレオチド模倣物は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物において、オリゴヌクレオチドの糖−骨格は、アミド含有骨格、特に、アミノエチルグリシン骨格で置換される。ヌクレオ塩基は保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接または間接的に結合される。PNA化合物の生成を教示する代表的な米国特許としては、米国特許第5,539,082号;同第5,714,331号;および同第5,719,262号が挙げられるが、これらに限定されない。PNA化合物のさらなる教示は、Nielsenら(Science,1991,254,1497−1500)に見られる。
【0245】
本発明の特定の実施形態は、ホスホロチオアート骨格を有するオリゴヌクレオチドならびにヘテロ原子骨格、特に、上で参照された米国特許第5,489,677号の−CH
2−NH−O−CH
2−、−CH
2−N(CH
3)−O−CH
2−(メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格と称される)、−CH
2−O−N(CH3)−CH
2−、−CH
2−N(CH
2)−N(CH
3)−CH
2−および−O−N(CH3)−CH
2−CH
2−(ここで、天然のホスホジエステル骨格は、−O−P−O−CH
2−と表現される)および上で参照された米国特許第5,602,240号アミド骨格を有するオリゴヌクレオシドである。上で参照された米国特許第5,034,506号のモルホリノ骨格構造を有するオリゴヌクレオチドも好ましい。
【0246】
キメラオリゴヌクレオチド
所与の化合物における全ての位置が均一に修飾される必要はなく、実際に、上述の修飾のうちの2つ以上が、1つの化合物、またはオリゴヌクレオチド内の1つのヌクレオシドにさえ組み込まれ得る。本発明の特定の好ましいオリゴヌクレオチドは、キメラオリゴヌクレオチドである。「キメラオリゴヌクレオチド」または「キメラ」は、本発明との関連において、各々が少なくとも1つのヌクレオチドで構成されている2つ以上の化学的に異なる領域を含むオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは、通常、1つ以上の有利な特性(例えば、高いヌクレアーゼ耐性、細胞への高い取り込み、RNA標的に対する高い結合親和性)を付与する修飾ヌクレオチドの少なくとも1つの領域、およびRNaseH切断に対する基質である領域を含む。
【0247】
一実施形態では、キメラオリゴヌクレオチドは、標的結合親和性を増加させるために修飾された少なくとも1つの領域を含む。その標的に対するオリゴヌクレオチドの親和性は、オリゴヌクレオチド/標的対のTm(オリゴヌクレオチドと標的が解離する温度であり;解離は、分光光度的に検出される)を測定することによって通例の通りに決定される。Tmが高いほど、標的に対するオリゴヌクレオチドの親和性が高い。一実施形態では、標的mRNA結合親和性を増加させるために修飾されたオリゴヌクレオチドの領域は、糖の2’位において修飾された少なくとも1つのヌクレオチド、最も好ましくは、2’−O−アルキル、2’−O−アルキル−O−アルキルまたは2’−フルオロ−修飾ヌクレオチドを含む。このような修飾は、オリゴヌクレオチドに通例の通りに組み込まれ、これらのオリゴヌクレオチドは、所与の標的に対して2’−デオキシオリゴヌクレオチドよりも高いTm(すなわち、より高い標的結合親和性)を有することが示されている。このような高い親和性の効果は、標的遺伝子発現のオリゴヌクレオチド阻害を大いに高めることになる。
【0248】
別の実施形態では、キメラオリゴヌクレオチドは、RNアーゼHに対する基質として作用する領域を含む。当然、オリゴヌクレオチドが、本明細書に記載の様々な修飾の任意の組合せを含み得ることが理解される。
【0249】
本発明のオリゴヌクレオチドの別の修飾は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布もしくは細胞取込みを高める、1つ以上の部分またはコンジュゲートをオリゴヌクレオチドに化学的に結合させることを含む。このようなコンジュゲートおよびそれを調製する方法は、当該技術分野で公知である。
【0250】
治療効力などのインビボでの有用性について、合理的な経験則は、チオ化されたバージョンの配列が遊離形態で働く場合、任意の化学成分の、同じ配列の封入された粒子も有効であるということを当業者は理解するだろう。封入された粒子は、アンチセンス治療に別段応答性であることが知られていない状態およびモデルにおいて有効性を示す、より広範囲のインビボ有用性も有し得る。本発明を適用することにより、現在アンチセンス治療に応答する古いモデルを見出し得ることを当業者は知っている。さらに、当業者は、本発明を使用することにより、見捨てられたアンチセンス配列または化学成分を再考し、効力を見出し得る。
【0251】
本発明に従って使用されるオリゴヌクレオチドは、周知の固相合成技術によって、好都合にかつ通例の通りに、作製され得る。このような合成のための装置は、Applied Biosystemsを含むいくつかのベンダーによって販売されている。このような合成のための任意の他の手段も使用され得る。オリゴヌクレオチドの実際の合成は、十分に、業務従事者の能力の範囲内である。ホスホロチオアートおよびアルキル化された誘導体などの他のオリゴヌクレオチドを調製するために同様の技術を使用することも周知である。
【0252】
定義
便宜のため、本明細書、実施例、および付随する特許請求の範囲で使用される特定の用語および語句の意味が、以下に提供される。本明細書の他の部分におけるある用語の用法と本節で示されるその定義との間に明白な矛盾がある場合には、本節の定義が優先されるものとする。
【0253】
「G」、「C」、「A」および「U」は各々、通常、塩基としてグアニン、シトシン、アデニン、およびウラシルをそれぞれ含有するヌクレオチドを表す。しかしながら、「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」という用語は、以下にさらに詳述するような修飾ヌクレオチド、または代用置換部分を指すこともできるということが理解されるであろう。当業者にはよく知られていることであるが、このような置換部分を有するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの塩基対形成特性を実質的に変化させないで、グアニン、シトシン、アデニン、およびウラシルを他の部分に置換することが可能である。例えば、限定するものではないが、その塩基としてイノシンを含むヌクレオチドは、アデニン、シトシン、またはウラシルを含有するヌクレオチドと塩基対を形成し得る。したがって、ウラシル、グアニン、またはアデニンを含有するヌクレオチドは、本発明のヌクレオチド配列中で、例えば、イノシンを含有するヌクレオチドに置換し得る。このような置換部分を含む配列は本発明の実施形態である。
【0254】
本明細書で使用される「第VII因子」とは、第VII因子のmRNA、タンパク質、ペプチド、またはポリペプチドを意味する。「第VII因子」という用語は、当技術分野で、AI132620、Cf7、凝固因子VII前駆体、凝固因子VII、FVII、血清プロトロンビン転化促進因子、FVII凝固タンパク質、およびエプタコグαとしても知られている。
【0255】
本明細書で使用されるとき、「標的配列」とは、一次転写産物のRNAプロセッシングの産物であるmRNAを含む、遺伝子の転写の間に形成されるmRNA分子のヌクレオチド配列の連続した部分を指す。
【0256】
本明細書で使用されるとき、「配列を含む鎖」という用語は、標準的なヌクレオチド命名法を用いて参照される配列によって説明される、ヌクレオチドの鎖を含むオリゴヌクレオチドを指す。
【0257】
本明細書で使用されるとき、および別途示されない限り、ヌクレオチド対との関連で使用される場合の「相補的」という用語は、古典的なワトソン−クリック対、すなわち、GC、AT、またはAUを意味する。この用語は、ヌクレオチドの一方または両方が、例えば、リボース修飾またはリン酸骨格修飾によって、本明細書に記載されるように修飾されている古典的なワトソン−クリック対形成にまでも及ぶ。この用語は、イノシンまたは塩基対形成特性を実質的に変化させない他の実体との対形成を含むこともできる。
【0258】
本明細書で使用されるとき、および別途示されない限り、第2のヌクレオチド配列との関連で第1のヌクレオチド配列を説明するのに使用される場合の「相補的」という用語は、当業者に理解されるように、第1のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが、第2のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとハイブリダイズし、特定の条件下で二重鎖構造を形成する能力を指す。相補性は、生理的条件下での、すなわち、生物内で直面し得るような生理的に関連のある条件下でのハイブリダイゼーションを可能にする完全な相補性、実質的な相補性、および十分な相補性を含むことができる。完全な相補性とは、個々の対について上で定義されるような、第1の配列と第2の配列の対の全てにおける相補性を指す。ある配列が、本明細書中の第2の配列に対して「実質的に相補的」である場合、この2つの配列は、完全に相補的であることができるか、またはこれらの配列は、ハイブリダイズしたときに、1つ以上の、しかし通常は、多くて4つ、3つ、もしくは2つのミスマッチの塩基対を形成しながらも、その最終的な適用に最も関連がある条件下でハイブリダイズする能力を保持し得る。実質的な相補性は、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションとして定義することもでき、この場合、ストリンジェントな条件は、以下を含み得る:400mM NaCl、40mM PIPES(pH6.4)、1mM EDTA、50℃または70℃、12〜16時間の後、洗浄。当業者であれば、ハイブリダイズしたヌクレオチドの最終的な適用に従う2つの配列の相補性の試験に最も適当な条件の組を決定することができるであろう。
【0259】
しかしながら、2つのオリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズしたときに、1つ以上の一本鎖突出を形成するように設計される場合、このような突出は、相補性の決定に関してミスマッチとはみなされないものとする。例えば、一方の21ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドと、もう一方の23ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドとを含むdsRNAであって、より長いオリゴヌクレオチドが、より短いオリゴヌクレオチドに完全に相補的な21ヌクレオチドの配列を含むdsRNAは、本発明の目的のために、やはり「完全に相補的」と呼ばれ得る。
【0260】
本明細書で使用される「相補的」配列はまた、ハイブリダイズするそれらの能力に関する上記の要件が満たされる限り、非ワトソン−クリック塩基対および/または非天然ヌクレオチドや修飾ヌクレオチドから形成された塩基対を含んでもよく、またはこれらの塩基対から完全に形成されてもよい。
【0261】
生理的条件下での、例えば、生物内で直面し得るような生理的に関連のある条件下でのハイブリダイゼーションを可能にする「相補的」、「完全に相補的」、「実質的に相補的」、および十分な相補性という用語は、これらを使用する文脈から理解されるように、dsRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖の間の、またはdsRNAのアンチセンス鎖と標的配列の間の塩基ミスマッチに関して本明細書で使用され得る。
【0262】
本明細書で使用されるとき、メッセンジャーRNA(mRNA)「の少なくとも一部に相補的な、例えば、実質的に相補的な」ポリヌクレオチドとは、目的の(例えば、第VII因子をコードする)mRNAの連続した部分に相補的な、例えば、実質的に相補的なポリヌクレオチドを指す。例えば、ポリヌクレオチドは、その配列が第VII因子をコードするmRNAの中断されていない部分に実質的に相補的である場合、第VII因子のmRNAの少なくとも一部に相補的である。
【0263】
本明細書で使用される「二本鎖RNA」または「dsRNA」という用語は、逆平行で、かつ上で定義されたような、実質的に相補的な2つの核酸鎖を含む二重鎖構造を有するリボ核酸分子、またはリボ核酸分子の複合体を指す。二重鎖構造を形成する2つの鎖は、1つのより大きいRNA分子の異なる部分であってもよく、またはその2つの鎖は、別々のRNA分子であってもよい。2つの鎖が1つのより大きい分子の部分であり、したがって、二重鎖構造を形成する一方の鎖の3’末端とそれぞれのもう一方の鎖の5’末端の間の中断されないヌクレオチド鎖によって接続されている場合、接続RNA鎖は「ヘアピンループ」と呼ばれる。2つの鎖が、二重鎖構造を形成する一方の鎖の3’末端とそれぞれのもう一方の鎖の5’末端の間の中断されないヌクレオチド鎖以外の手段で共有結合的に接続されている場合、この接続構造は、「リンカー」と呼ばれる。RNA鎖は、同数または異なる数のヌクレオチドを有し得る。塩基対の最大数は、dsRNAのうち最短の鎖のヌクレオチドの数である。二重鎖構造に加えて、dsRNAは、1つ以上のヌクレオチド突出を含み得る。本明細書で使用されるdsRNAは、「小さい阻害性RNA」、「siRNA」、「siRNA剤」、「iRNA剤」、または「RNAi剤」とも呼ばれる。
【0264】
本明細書で使用されるとき、「ヌクレオチド突出」とは、dsRNAの一方の鎖の3’末端がもう一方の鎖の5’末端を越えて伸びるか、またはその逆である場合に、dsRNAの二重鎖構造から突出する不対ヌクレオチド(単数または複数)を指す。「平滑」または「平滑末端」とは、dsRNAのその末端に不対ヌクレオチドがないこと、すなわち、ヌクレオチド突出がないことを意味する。「平滑末端の」dsRNAとは、その全長にわたって二本鎖である、すなわち、分子のどちらの末端にもヌクレオチド突出がないdsRNAのことである。
【0265】
「アンチセンス鎖」という用語は、標的配列に実質的に相補的な領域を含むdsRNAの鎖を指す。本明細書で使用されるとき、「相補領域」という用語は、本明細書で定義されるように、配列(例えば、標的配列)に実質的に相補的な、アンチセンス鎖上の領域を指す。相補領域が標的配列に完全に相補的ではない場合、ミスマッチは末端領域において最も許容され、かつ存在する場合は、通常、末端領域(単数または複数)に、例えば、5’末端および/または3’末端から6、5、4、3、または2ヌクレオチド以内にある。
【0266】
本明細書で使用される「センス鎖」という用語は、アンチセンス鎖のある領域に実質的に相補的な領域を含むdsRNAの鎖を指す。
【0267】
「同一性」という用語は、2つ以上のポリヌクレオチド配列を比較することによって決定される、このような配列間の関係性のことである。同一性はまた、一連のポリヌクレオチド配列間の一致によって決定される、このような配列間の配列関連性の程度を意味する。2つのポリヌクレオチド配列間の同一性を測定するためのいくつかの方法が存在するが、この用語は当業者に周知である(例えば、Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press(1987);およびSequence Analysis Primer,Gribskov.,M. and Devereux,J.,編,M.Stockton Press,New York(1991)を参照されたい)。本明細書で使用される「実質的に同一」とは、dsRNAのセンス鎖と標的遺伝子の対応する部分との間に非常に高い相同性(好ましくは100%の配列同一性)があることを意味する。しかしながら、90%超、または95%の配列同一性を有するdsRNAを本発明で使用してもよく、したがって、遺伝子突然変異、系統多形、または進化的分岐のために見込まれ得る配列のバリエーションも許容することができる。100%同一性が好ましいが、dsRNAは、RNAと標的遺伝子の間に単一または多数の塩基対のランダムなミスマッチを含有してもよい。
【0268】
当業者には理解されるように、「細胞に導入する」とは、dsRNAに関する場合、細胞内への取込みまたは吸収を促進することを意味する。dsRNAの吸収または取込みは、人の手を借りない拡散プロセスまたは能動的な細胞プロセスを通じて、または補助的な薬剤もしくは装置によってなされ得る。この用語の意味は、インビトロの細胞に限定されるものではない。dsRNAは、生きた生物の一部である「細胞に導入される」場合もある。このような例では、細胞への導入は、生物への送達を含むことになる。例えば、インビボ送達については、dsRNAを組織部位に注入することができるし、または全身投与することができる。インビトロでの細胞への導入には、エレクトロポレーションおよびリポフェクションなどの当技術分野で公知の方法が含まれる。
【0269】
「サイレンシングする」および「発現を阻害する」という用語は、これらの用語が第VII因子遺伝子を指すものである限り、本明細書では、第VII因子遺伝子の発現の少なくとも一部の抑制を指し、この抑制は、第VII因子遺伝子が転写される第1の細胞または細胞群であって、第VII因子遺伝子の発現が阻害されるように処理された細胞または細胞群から単離し得る、第VII因子遺伝子から転写されたmRNAの量が、第2の細胞または細胞群であって、第1の細胞または細胞群と実質的に同一であるが、第1の細胞または細胞群のように処理されていない細胞または細胞群(対照細胞)と比較して、低下していることによって明らかにされるようなものである。阻害の程度は、通常
【数1】
で表される。
【0270】
あるいは、阻害の程度は、第VII因子遺伝子の転写に関数関係があるパラメータ(例えば、細胞によって分泌される、第VII因子遺伝子にコードされたタンパク質の量、または特定の表現型(例えば、アポトーシス)を示す細胞の数)の減少という観点から与えられる場合もある。原則として、第VII因子遺伝子のサイレンシングは、構成的にかまたはゲノム工学によるかのいずれかで、標的を発現している任意の細胞において、任意の適当なアッセイによって測定し得る。しかしながら、所与のsiRNAが第VII因子遺伝子の発現を一定の度合いで阻害するかどうか、したがって、このsiRNAが本発明に包含されるかどうかを決定するために参照が必要な場合、以下の実施例に提供されるアッセイが、このような参照としての役割を果たすものとする。
【0271】
例えば、ある例では、第VII因子遺伝子の発現は、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドの投与によって少なくとも約20%、25%、35%、40%、または50%抑制される。一実施形態では、第VII因子遺伝子は、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドの投与によって少なくとも約60%、70%、または80%抑制される。より好ましい実施形態では、第VII因子遺伝子は、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドの投与によって少なくとも約85%、90%、または95%抑制される。
【0272】
「治療する」、「治療」などの用語は、疾患または障害の緩和または軽減を指す。本発明との関連において、以下に本明細書で記載される他の状態(例えば、血栓疾患以外の第VII因子が仲介する状態)のいずれかに関する限り、「治療する」、「治療」などの用語は、このような状態に伴う少なくとも1つの症状を緩和もしくは軽減すること、またはこのような状態の進行を遅延もしくは逆行させることを意味する。
【0273】
「治療的に有意義な」組成物は、適切な用量で投与されたときに、疾患もしくは障害、または疾患もしくは障害の症状を緩和または軽減することができる。
【0274】
本明細書で使用されるとき、「第VII因子が仲介する状態または疾患」という用語ならびに関連用語および関連語句は、不適切な(例えば、正常よりも大きい)第VII因子の活性を特徴とする状態または障害を指す。不適切な第VII因子の機能的活性は、通常は第VII因子を発現しない細胞での第VII因子の発現、または(例えば、ウイルス性出血熱の症状、もしくは血栓を引き起こす)第VII因子発現の増大の結果として生じ得る。第VII因子が仲介する状態または疾患は、不適切な第VII因子の機能的活性によって完全にまたは部分的に仲介され得る。しかしながら、第VII因子が仲介する状態または疾患は、第VII因子の調節によって、根本的な状態または障害にいくらかの影響を及ぼせるものである(例えば、第VII因子の阻害剤によって、少なくとも一部の患者では健康がいくらか改善される)。
【0275】
「出血熱」には、ウイルス感染によって引き起こされる病気の組合せが含まれる。典型的には、発熱と消化管症状に続いて、毛細血管の出血が起こる。
【0276】
「凝固障害」とは、対象の血液凝固機構の任意の欠陥のことである。
【0277】
本明細書で使用されるとき、「血栓障害」とは、好ましくは望ましくないFVII発現に起因する任意の障害のことであり、望ましくない血液凝固を特徴とする任意の障害を含む。
【0278】
本明細書で使用されるとき、「治療的有効量」および「予防的有効量」という語句は、ウイルス性出血熱、またはこのような障害の明らかな症状(例えば、出血、発熱、衰弱、筋肉痛、頭痛、炎症、もしくは循環性ショック)の治療、予防、もしくは管理において治療効果を提供する量を指す。治療的に有効な具体的な量は、普通の医師により容易に決定可能であり、当技術分野で公知の要因、例えば、血栓障害のタイプ、患者の病歴および年齢、疾患の段階、ならびに他の薬剤の投与などによって変わり得る。
【0279】
本明細書で使用されるとき、「薬学的組成物」には、薬理学的有効量のdsRNAと薬学的に許容される担体とが含まれる。本明細書で使用されるとき、「薬理学的有効量」、「治療的有効量」、または単に「有効量」とは、意図される薬理学的結果、治療的結果、または予防的結果をもたらすのに有効なRNAの量を指す。例えば、疾患または障害と関連する測定可能なパラメータが少なくとも25%低下したときに、所与の臨床治療が有効であると考えられる場合、その疾患または障害を治療するための薬物の治療的有効量は、そのパラメータの少なくとも25%低下をもたらすのに必要な量である。
【0280】
「薬学的に許容される担体」という用語は、治療剤を投与するための担体を指す。このような担体には、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。この用語は、細胞培養培地を特に除外する。経口投与される薬物について、薬学的に許容される担体には、薬学的に許容される賦形剤、例えば、不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、甘味料、香料、着色剤、および防腐剤が含まれるが、これらに限定されない。好適な不活性希釈剤には、炭酸ナトリウムおよび炭酸カルシウム、リン酸ナトリウムおよびリン酸カルシウム、ならびにラクトースが含まれ、一方、トウモロコシデンプンおよびアルギン酸は、好適な崩壊剤である。結合剤には、デンプンおよびゼラチンが含まれ得、一方、潤滑剤は、存在する場合には、一般に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクである。所望の場合には、消化管内での吸収を遅らせるために、錠剤をモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの材料でコーティングし得る。
【0281】
本明細書で使用されるとき、「形質転換細胞」とは、dsRNA分子を発現することが可能なベクターが導入された細胞のことである。
【0282】
核酸−脂質粒子の特徴
特定の実施形態では、本発明は、脂質に封入された核酸粒子を生成するための方法および組成物に関し、この粒子中で、核酸は脂質層内に封入される。siRNAオリゴヌクレオチドを組み込んでいるこのような核酸−脂質粒子は:(1)薬物対脂質比;(2)封入効率;および(3)粒径をはじめとする種々の生物物理学的パラメータを用いて特徴付けられる。高い薬物対脂質比、高い封入効率、良好なヌクレアーゼ耐性および血清安定性、ならびに調節可能な粒径(通常、直径200nm未満)が望ましい。さらに、ヌクレアーゼ耐性を付与するための核酸の修飾が、治療薬のコストに加えられるが、多くの場合、限られた耐性しか提供しないので、核酸ポリマーの性質が重要である。特に記述されない限り、これらの基準は、本明細書中で以下の通りに計算される。
【0283】
薬物対脂質比は、規定容量の調製物中の核酸の量を、同じ容量中の脂質の量で割ったものである。これは、モル当たりのモル基準または重量当たりの重量基準またはモル当たりの重量基準に基づくものであり得る。最終的な投与の準備のできた組成物の場合、透析、クロマトグラフィーおよび/または酵素(例えば、ヌクレアーゼ)消化を用いて、可能な限り多くの外部核酸を除去した後に、核酸:脂質比を計算する。
【0284】
封入効率とは、出発混合物の薬物対脂質比を、最終的な投与に適格な組成物の薬物対脂質比で割ったものを指す。これは、相対的な効率の尺度である。絶対的な効率の尺度については、最終的に投与に適格な組成物になる出発混合物に添加された核酸の総量を計算することもできる。製剤化プロセスの間に失われる脂質の量も計算し得る。効率は、組成物の損失量と費用の尺度である
【0285】
サイズは、形成される粒子のサイズ(直径)を示す。サイズ分布は、Nicomp Model370サブマイクロメートル粒子寸法測定器において準弾性光散乱(QELS)を用いて測定され得る。200nm未満の粒子が、新生物や炎症部位などの新生血管形成された(漏出性)組織への分布のために好ましい。
【0286】
脂質粒子の調製方法
本発明の方法および組成物は、特定のカチオン性脂質を利用し、その脂質の合成、調製および特徴づけは、以下および添付の実施例において説明される。さらに、本発明は、治療剤(例えば、核酸)と会合した脂質粒子をはじめとする脂質粒子を調製する方法を提供する。本明細書で記載される方法において、脂質の混合物は、核酸の緩衝水溶液と組み合わされて、脂質粒子内に封入された核酸を含む中間体混合物を生成し、その場合、この封入された核酸は、約3重量%〜約25重量%、好ましくは5〜15重量%という核酸/脂質比で存在する。この中間体混合物は、脂質に封入された核酸粒子を得るために、場合によって大きさが揃えられてもよく、その場合、この脂質部分は、好ましくは30〜150nmの直径、より好ましくは約40〜90nmの直径を有する単層小胞である。次に、pHを上げて、脂質−核酸粒子上の表面電荷の少なくとも一部を中和し、それにより、少なくとも部分的に表面が中和された、脂質に封入された核酸組成物が提供される。
【0287】
上記のように、これらのカチオン性脂質のいくつかは、アミノ基のpK
a未満のpHにおいて帯電しており、pK
aより高いpHにおいて実質的に中性である、アミノ脂質である。これらのカチオン性脂質は、滴定可能なカチオン性脂質と呼ばれ、2工程プロセスを用いて本発明の組成物において使用することができる。第1に、核酸の存在下において、滴定可能なカチオン性脂質と他の小胞成分を用いて、低pHにおいて脂質小胞を形成することができる。この方法で、小胞が核酸を封入し、捕捉する。第2に、媒体のpHを、存在する滴定可能なカチオン性脂質のpK
aより高いレベルに、すなわち、生理学的pHまたはそれよりも高く上昇させることによって、新しく形成された小胞の表面電荷を中和することができる。このプロセスの特に有利な態様は、表面に吸着された任意の核酸の容易な除去と、中性の表面を有する結果として生じる核酸送達ビヒクルの両方を含む。中性の表面を有するリポソームまたは脂質粒子は、循環からの速やかなクリアランスを回避し、かつカチオン性リポソーム調製物と関連する特定の毒性を回避すると予想される。核酸−脂質粒子の組成物におけるこのような滴定可能なカチオン性脂質のこれらの使用に関するさらなる詳細は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,287,591号および米国特許第6,858,225号に提供されている。
【0288】
この方法で形成された小胞は、高含有量の核酸を含む均一な小胞サイズの組成物を提供することにさらに留意する。さらに、これらの小胞は、約30〜約150nm、より好ましくは約30〜約90nmのサイズ範囲を有する。
【0289】
任意の特定の理論に束縛されるつもりはないが、核酸封入の非常に高い効率は、低pHにおける静電相互作用の結果であると考えられる。酸性pH(例えば、pH4.0)において、小胞表面は帯電しており、静電相互作用を介して核酸の一部に結合する。外部の酸性緩衝液が、より中性の緩衝液(例えば、pH7.5)に交換されると、脂質粒子またはリポソームの表面は中和され、任意の外部の核酸を除去することが可能になる。製剤化プロセスに関するより詳細な情報は、様々な刊行物(例えば、米国特許第6,287,591号および米国特許第6,858,225号)に提供されている。
【0290】
上記のことを考慮して、本発明は、脂質/核酸組成物を調製する方法を提供する。本明細書で記載される方法において、脂質の混合物は、核酸の緩衝水溶液と組み合わされて、脂質粒子内に封入された核酸を含む中間体混合物を生成し、例えば、その場合、この封入された核酸は、約10重量%〜約20重量%という核酸/脂質比で存在する。中間体混合物は、脂質に封入された核酸粒子を得るために、場合によって、大きさを揃えてもよく、その場合、この脂質部分は、好ましくは30〜150nm、より好ましくは約40〜90nmの直径を有する単層小胞である。次に、pHを上げて、脂質−核酸粒子上の表面電荷の少なくとも一部を中和し、それにより、少なくとも部分的に表面が中和された脂質で封入された核酸組成物を提供する。
【0291】
特定の実施形態では、脂質の混合物は、少なくとも2つの脂質成分、すなわち、脂質が、pKaよりも低いpHにおいてカチオン性であり、pKaより高いpHにおいて中性であるようなpKaを有する脂質から選択される本発明の第1アミノ脂質成分と、脂質−核酸粒子形成中の粒子凝集を防止する脂質の中から選択される第2脂質成分とを含む。特定の実施形態では、アミノ脂質は、本発明の新規のカチオン性脂質である。
【0292】
本発明の核酸−脂質粒子を調製する際、脂質の混合物は、通常、有機溶媒中の脂質の溶液である。次に、この脂質の混合物を乾燥させて、薄膜を形成させることができるか、または凍結乾燥させて、粉末を形成させ、その後、水性緩衝液で水和して、リポソームを形成させることができる。あるいは、好ましい方法において、脂質混合物をエタノールなどの水混和性アルコール中に可溶化し、このエタノール性溶液を水性緩衝液に添加して、自発的にリポソームを形成させる。ほとんどの実施形態では、アルコールを市販されている形態で使用する。例えば、エタノールを、無水エタノール(100%)として、または95%エタノール(残りの部分は水である)として使用することができる。この方法は、米国特許第5,976,567号でより詳細に記載されている。
【0293】
本発明によって、脂質混合物を、核酸を含み得る緩衝水溶液と組み合わせる。この緩衝水溶液は、通常、緩衝液が脂質混合物中のプロトン化可能な脂質のpK
a未満のpHを有する溶液である。好適な緩衝液の例としては、クエン酸、リン酸、酢酸およびMESが挙げられる。特に好ましい緩衝液はクエン酸緩衝液である。好ましい緩衝液は、封入される核酸の化学成分に応じて1〜1000mMのアニオンの範囲であり、緩衝液濃度の最適化は、高い充填レベルを達成するために重要であり得る(例えば、米国特許第6,287,591号および米国特許第6,858,225号を参照されたい)。あるいは、塩化物、硫酸塩などでpH5〜6に酸性化された純水が有用であり得る。この場合、5%グルコース、または粒子が、エタノールを除去するため、pHを上げるために透析されるか、もしくは通常の食塩水などの薬学的に許容される担体と混合されたときに、粒子膜を超えて浸透ポテンシャルを釣り合わせる別の非イオン性溶質を添加することが好適である場合がある。緩衝液中の核酸の量は、変動し得るが、通常、約0.01mg/mL〜約200mg/mL、より好ましくは約0.5mg/mL〜約50mg/mLである。
【0294】
脂質の混合物と治療用核酸の緩衝水溶液とを組み合わせて中間体混合物を得る。中間体混合物は、通常、封入された核酸を有する脂質粒子の混合物である。さらに、中間体混合物は、負に帯電した核酸のイオン引力および脂質粒子表面上の正に帯電した脂質(アミノ脂質またはプロトン化可能な第1脂質成分を構成している他の脂質は、その脂質上のプロトン化可能な基のpK
a未満のpHを有する緩衝液中で正に帯電している)のために、脂質粒子(リポソームまたは脂質小胞)の表面に付着したいくらかの核酸も含み得る。一群の好ましい実施形態では、脂質の混合物は、脂質のアルコール溶液であり、その溶液の各々の容量は、組み合わせたときに、得られるアルコール含有量が約20容量%〜約45容量%になるように調整される。混合物を組み合わせる方法は、多くの場合、生成される組成物の規模に応じて、種々のプロセスのいずれかを含むことができる。例えば、総容量が約10〜20mL以下であるとき、溶液を試験管内で組み合わせて、ボルテックスミキサーを用いて一緒に撹拌することができる。大規模プロセスを好適な生産規模のガラス製品中で実施することができる。
【0295】
場合により、脂質混合物と治療剤(核酸)の緩衝水溶液とを組み合わせることによって生成される、脂質に封入された治療剤(例えば、核酸)の複合体は、所望のサイズの範囲および比較的狭い分布の脂質粒径を達成するために、大きさを揃えることができる。好ましくは、本明細書で提供される組成物は、約70〜約200nm、より好ましくは約90〜約130nmの平均直径の大きさに揃えられる。所望のサイズにリポソームの大きさを揃えるために、いくつかの技術が利用可能である。大きさを揃える1つの方法は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,737,323号に記載されている。バスまたはプローブ超音波処理によってリポソーム懸濁液を超音波処理することにより、サイズが約0.05マイクロメートル未満の小型の単層小胞(SUV)まで段階的にサイズが縮小される。均質化は、大きなリポソームをより小さなリポソームに断片化する剪断エネルギーに依存する別の方法である。通常の均質化手順では、選択されたリポソームサイズ(通常、約0.1〜0.5マイクロメートル)が観察されるまで、多層小胞を標準的なエマルジョンホモジナイザーに通して再循環させる。両方の方法において、粒径分布は、従来のレーザービーム粒径測定によってモニタリングすることができる。本明細書中の特定の方法の場合、均一な小胞サイズを得るために、押出しを用いることができる。
【0296】
小孔ポリカーボネート膜または非対称セラミック膜を介するリポソーム組成物の押出しによって、比較的明確に規定されたサイズ分布がもたらされる。通常、所望のリポソーム複合体のサイズ分布が達成されるまで、懸濁液を膜に通して1回以上循環させる。リポソームを連続的により小孔の膜に通して押し出し、リポソームのサイズを徐々に小さくすることを達成し得る。いくつかの例では、形成される脂質−核酸組成物を、サイズを揃えることなく使用してもよい。
【0297】
特定の実施形態では、本発明の方法は、脂質−核酸組成物の脂質部分上の表面電荷の少なくとも一部を中和する工程をさらに含む。表面電荷を少なくとも部分的に中和することにより、封入されていない核酸が脂質粒子表面から解放され、従来の技術を用いて組成物から除去され得る。好ましくは、封入されていない核酸や表面に吸着した核酸は、緩衝溶液を交換することにより、得られる組成物から除去される。例えば、クエン酸緩衝液(pH約4.0、組成物を形成するために使用される)をHEPES緩衝食塩水(HBS pH約7.5)溶液で置換することにより、リポソーム表面の中和と、表面からの核酸の放出とがもたらされる。次に、放出された核酸を、標準的な方法を用いるクロマトグラフィーによって除去した後、使用される脂質のpK
aよりも高いpHを有する緩衝液に切り換えることができる。
【0298】
場合により、脂質小胞(すなわち、脂質粒子)を水性緩衝液中での水和によって形成し、核酸を添加する前に、上記の方法のいずれかを用いて大きさを揃えることができる。上記のように、水性緩衝液は、アミノ脂質のpK
aよりも低いpHであるべきである。次に、核酸の溶液を、これらの大きさが揃えられ、予め形成された小胞に添加することができる。このような「予め形成された」小胞内への核酸の封入を可能するために、混合物は、エタノールなどのアルコールを含むべきである。エタノールの場合、それは、約20%(w/w)〜約45%(w/w)の濃度で存在するべきである。さらに、脂質小胞の組成および核酸の性質に応じて、水性緩衝液−エタノール混合物中の予め形成された小胞と核酸の混合物を約25℃〜約50℃の温度に温める必要があることがある。脂質小胞中の核酸の所望のレベルを達成するための封入プロセスの最適化には、エタノール濃度や温度などの変数の操作が必要であることが当業者に明白であろう。核酸の封入のための好適な条件の例を実施例に提供する。一旦核酸が予め形成された小胞内に封入されたら、外部のpHを上げて、少なくとも部分的に表面電荷を中和することができる。次に、封入されていない核酸や表面に吸着した核酸を上記のように除去することができる。
【0299】
使用方法
本発明の脂質粒子は、インビトロまたはインビボで治療剤を細胞に送達するために使用され得る。特定の実施形態では、治療剤は、本発明の核酸−脂質粒子を用いて細胞に送達される核酸である。本発明の脂質粒子および関連する薬学的組成物を使用する様々な方法の以下の説明は、核酸−脂質粒子に関する説明によって例証されるが、これらの方法および組成物が、そのような治療の恩恵を受ける任意の疾患または障害を治療するための任意の治療剤を送達するために容易に適応され得ることが理解される。
【0300】
特定の実施形態では、本発明は、核酸を細胞に導入するための方法を提供する。細胞に導入するための好ましい核酸は、siRNA、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、プラスミド、アンチセンスおよびリボザイムである。これらの方法は、細胞内送達が生じるのに十分な時間にわたって、本発明の粒子または組成物を細胞と接触させることによって行われ得る。
【0301】
本発明の組成物をほとんどの任意の細胞型に吸着させることができる。核酸−脂質粒子は、一旦吸着すると、細胞の一部によってエンドサイトーシスによって取り込まれるか、脂質を細胞膜と交換するか、または細胞と融合することができる。この複合体の核酸部分の移入または取込みは、これらの経路のうちのいずれか1つを介して起こることができる。本発明の範囲に関して限定することを意図するものではないが、エンドサイトーシスによって細胞に取り込まれる粒子の場合、この粒子は、次に、エンドソーム膜と相互作用し、おそらく非二重層の相の形成によってエンドソーム膜の不安定化をもたらし、封入された核酸が細胞質に導入されると考えられる。同様に、粒子と細胞の原形質膜との直接的な融合の場合、融合が起こるとき、リポソーム膜は細胞膜に統合され、リポソームの内容物が細胞内の液体と組み合わされる。インビトロで行われるとき、細胞と脂質−核酸組成物との接触は、生物学的に適合性の媒体中で起こる。組成物の濃度は、特定の用途に応じて広く変動し得るが、通常、約1μmol〜約10mmolである。特定の実施形態では、脂質−核酸組成物による細胞の処置は、一般に、生理学的温度(約37℃)で、約1〜24時間、好ましくは、約2〜8時間行われる。インビトロでの適用では、核酸の送達は、起源が植物であるか動物であるか、脊椎動物あるか無脊椎動物であるか、およびどの組織またはタイプであるかに関係なく、培養で増殖している任意の細胞に対するものであることができる。好ましい実施形態では、細胞は、動物細胞、より好ましくは哺乳動物細胞、最も好ましくはヒト細胞である。
【0302】
一群の実施形態では、脂質−核酸粒子懸濁液を、約10
3〜約10
5細胞/mL、より好ましくは約2×10
4細胞/mLの細胞密度を有する60〜80%コンフルエントでプレーティングされた細胞に添加する。細胞に添加される懸濁液の濃度は、好ましくは約0.01〜20μg/mL、より好ましくは約1μg/mLである。
【0303】
通常の適用は、周知の手順を用いて、siRNAの細胞内送達をもたらし、特定の細胞標的をノックダウンまたはサイレンシングすることを含む。あるいは、適用は、治療的に有用なポリペプチドをコードするDNAまたはmRNA配列の送達を含む。この方法で、欠損しているかまたは存在しない遺伝子産物を供給することによって、遺伝性疾患に対する治療が提供される(すなわち、デュシェンヌ型ジストロフィーの場合は、Kunkel et al.,Brit.Med.Bull.45(3):630−643(1989)を参照されたく、嚢胞性線維症の場合は、Goodfellow,Nature 341:102−103(1989)を参照されたい)。本発明の組成物に対する他の用途は、細胞内へのアンチセンスオリゴヌクレオチドの導入を含む(Bennett et al.,Mol.Pharm.41:1023−1033(1992)を参照されたい)。
【0304】
あるいは、本発明の組成物は、当業者に公知の方法を用いて、インビボで核酸を細胞に送達するために使用することもできる。DNAまたはmRNA配列を送達するための本発明の適用に関して、参照により本明細書に組み込まれる、Zhu,et al.,Science 261:209−211(1993)には、DOTMA−DOPE複合体を用いたサイトメガロウイルス(CMV)−クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)発現プラスミドの静脈内送達が記載されている。参照により本明細書に組み込まれる、Hyde,et al.,Nature 362:250−256(1993)には、リポソームを用いた、マウスの気道の上皮および肺の中の肺胞への嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)遺伝子の送達が記載されている。参照により本明細書に組み込まれる、Brigham,et al.,Am.J.Med.Sci.298:278−281(1989)には、細胞内の酵素であるクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)をコードする機能性原核生物遺伝子によるマウスの肺のインビボトランスフェクションが記載されている。したがって、本発明の組成物は、感染症の治療で使用することができる。
【0305】
インビボ投与の場合、薬学的組成物は、好ましくは、非経口的に、すなわち、関節内、静脈内、腹腔内、皮下または筋肉内に投与される。特定の実施形態では、薬学的組成物は、ボーラス注射によって静脈内または腹腔内に投与される。1つの例として、参照により本明細書に組み込まれる、Stadlerらの米国特許第5,286,634号を参照のこと。細胞内核酸送達は、Straubringer,et al.,METHODS IN ENZYMOLOGY,Academic Press,New York.101:512−527(1983);Mannino,et al.,Biotechniques 6:682−690(1988);Nicolau,et al.,Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.6:239−271(1989)、およびBehr,Ace.Chem.Res.26:274−278(1993)にも論じられている。脂質ベースの治療薬を投与するまた他の方法は、例えば、Rahmanら、米国特許第3,993,754号;Sears,米国特許第4,145,410号;Papahadjopoulosら、米国特許第4,235,871号;Schneider,米国特許第4,224,179号;Lenkら、米国特許第4,522,803号;およびFountainら、米国特許第4,588,578号に記載されている。
【0306】
他の方法では、薬学的調製物は、調製物を組織に直接適用することによって標的組織と接触させ得る。適用は、局所的な「開放系」または「閉鎖系」手順によって行ない得る。「局所的」とは、環境(例えば、皮膚、中咽頭、外耳道など)に露出される組織への薬学的調製物の直接的な適用のことを意味する。「開放系」手順は、患者の皮膚を切開することと、その下にある、薬学的調製物が適用される組織を直接可視化することとを含む手順である。これは、一般に、外科的手順(例えば、肺に到達する開胸術、腹部の内臓に到達する開腹術、または標的組織に対する他の直接的な外科的アプローチ)によって達成される。「閉鎖系」手順は、内部の標的組織を直接可視化しないが、皮膚の小さい創傷から器具を挿入することによって到達する、侵襲的な手順である。例えば、調製物は、洗浄針によって腹膜に投与され得る。同様に、脊髄麻酔または脊髄のメトリザマイドイメージングのために通常行われるような、腰椎穿刺中の注入後に患者を適切な位置にすることによって、薬学的調製物が髄膜または脊髄に投与され得る。あるいは、調製物は、内視鏡デバイスを介して投与され得る。
【0307】
脂質−核酸組成物は、肺に吸入されるエアロゾルとして(Brigham,et al.,Am.J.Sci.298(4):278−281(1989)を参照のこと)または疾患部位における直接的な注射によって(Culver,Human Gene Therapy,MaryAnn Liebert,Inc.,Publishers,New York.pp.70−71(1994))も投与することもできる。
【0308】
本発明の方法は、種々の宿主において実施し得る。好ましい宿主としては、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジなどの哺乳動物種が挙げられる。
【0309】
本発明の脂質−治療剤粒子に対する投薬量は、治療剤と脂質の比と、患者の年齢、体重および状態に基づく投与医師の見解とによって決まる。
【0310】
一実施形態では、本発明は、標的ポリヌクレオチドまたは標的ポリペプチドの発現を調節する方法を提供する。これらの方法は、一般に、標的ポリヌクレオチドまたは標的ポリペプチドの発現を調節することができる核酸と会合している本発明の脂質粒子と細胞を接触させることを含む。本明細書で使用されるとき、「調節する」という用語、標的ポリヌクレオチドまたは標的ポリペプチドの発現を変化させることを指す。様々な実施形態では、調節するとは、増加させることもしくは増強することを意味することができるし、または減少させることもしくは低下させることを意味することができる。標的ポリヌクレオチドまたは標的ポリペプチドの発現のレベルを測定する方法は、当該技術分野において公知であり、利用可能であり、これらの方法としては、例えば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を利用する方法や免疫組織化学的手法が挙げられる。特定の実施形態では、標的ポリヌクレオチドまたは標的ポリペプチドの発現のレベルは、適当な対照値と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%または50%超、増加しているか、または低下している。例えば、ポリペプチドの発現の増加が望ましい場合、核酸は、所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターであり得る。他方、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現の低下が望ましい場合、核酸は、標的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズし、それにより標的ポリヌクレオチドまたは標的ポリペプチドの発現を妨げるポリヌクレオチド配列を含む、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNAまたはマイクロRNAであり得る。あるいは、核酸は、このようなアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNAまたはマイクロRNAを発現するプラスミドであり得る。
【0311】
特定の一実施形態では、本発明は、細胞によるポリペプチドの発現を調節する方法であって、式(I)のカチオン性脂質(例えば、式(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)の脂質)、中性脂質、ステロール、PEGもしくはPEG修飾脂質からなるかもしくはこれらから本質的になる脂質粒子を、例えば、約35〜65%の式(I)のカチオン性脂質、3〜12%の中性脂質、15〜45%のステロール、および0.5〜10%のPEGまたはPEG修飾脂質のモル比で、細胞に提供することを含み、ここで、この脂質粒子は、ポリペプチドの発現を調節することができる核酸と会合している、方法を提供する。特定の実施形態では、モル脂質比は、約60/7.5/31/1.5または57.5/7.5/31.5/3.5(mol% LIPID I/DSPC/Chol/PEG−DMG)である。特定の実施形態では、モル比は、約50/10/38.5/1.5(mol% LIPID V/DSPC/Chol/PEG−DMG)または約50/10/38.5/1.5(mol% LIPID VI/DSPC/Chol/PEG−DSG)である。別の群の実施形態では、これらの組成物中の中性脂質を、DPPC、POPC、DOPEまたはSMと置き換える。別の群の実施形態では、PEGまたはPEG修飾脂質はPEG−DSGである。
【0312】
特定の実施形態では、治療剤は、siRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、およびsiRNA、マイクロRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドを発現することができるプラスミドから選択され、その場合、このsiRNA、マイクロRNAまたはアンチセンスRNAは、ポリペプチドの発現を低下させるような、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに特異的に結合するポリヌクレオチドまたはその相補物を含む。
【0313】
他の実施形態では、核酸は、ポリペプチドまたはその機能的な変異体もしくは断片の発現を増加させるような、ポリペプチドまたはその機能的な変異体もしくは断片をコードするプラスミドである。
【0314】
関連する実施形態では、本発明は、対象におけるポリペプチドの過剰発現を特徴とする疾患または障害を治療する方法であって、対象に本発明の薬学的組成物を提供することを含み、ここで、この治療剤は、siRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、およびsiRNA、マイクロRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドを発現することができるプラスミドから選択され、かつこのsiRNA、マイクロRNAまたはアンチセンスRNAは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに特異的に結合するポリヌクレオチドまたはその相補物を含む、方法を提供する。
【0315】
一実施形態では、薬学的組成物は、脂質A、DSPC、CholおよびPEG−DMG、PEG−C−DOMGもしくはPEG−DMAからなるかまたはこれらから本質的になる脂質粒子を、例えば、約35〜65%の式(I)のカチオン性脂質(例えば、式(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)の脂質)、3〜12%の中性脂質、15〜45%のステロール、および0.5〜10%のPEGもしくはPEG修飾脂質PEG−DMG、PEG−C−DOMGまたはPEG−DMAのモル比で含み、その場合、この脂質粒子は、治療用核酸と会合している。特定の実施形態では、モル脂質比は、約60/7.5/31/1.5または57.5/7.5/31.5/3.5(mol% 脂質I/DSPC/Chol/PEG−DMG)である。特定の実施形態では、モル比は、約50/10/38.5/1.5(mol% LIPID V/DSPC/Chol/PEG−DMG)または約50/10/38.5/1.5(mol% LIPID VI/DSPC/Chol/PEG−DSG)である。別の群の実施形態では、これらの組成物中の中性脂質を、DPPC、POPC、DOPEまたはSMと置き換える。別の群の実施形態では、PEGまたはPEG修飾脂質はPEG−DSGである。
【0316】
別の関連する実施形態では、本発明は、対象におけるポリペプチドの過小発現を特徴とする疾患または障害を治療する方法であって、対象に本発明の薬学的組成物を提供することを含み、ここで、この治療剤は、ポリペプチドまたはその機能的な変異体もしくは断片をコードするプラスミドである、方法を含む。
【0317】
本発明は、対象における免疫応答を誘導する方法であって、対象に本発明の薬学的組成物を提供することを含み、ここで、この治療剤は、免疫刺激性オリゴヌクレオチドである、方法をさらに提供する。特定の実施形態では、免疫応答は、例えば、約35〜65%の式(I)のカチオン性脂質(例えば、式(II)、(III)、(IV)、(V)または(VI)の脂質)、3〜12%の中性脂質、15〜45%のステロール、および0.5〜10%のPEGもしくはPEG修飾脂質PEG−DMG、PEG−C−DOMGまたはPEG−DMAのモル比の、脂質A、DSPC、CholおよびPEG−DMG、PEG−C−DOMGもしくはPEG−DMAからなるかまたはこれらから本質的になる液性免疫応答または粘膜免疫応答であり、その場合、この脂質粒子は、治療用核酸と会合している。特定の実施形態では、モル脂質比は、約60/7.5/31/1.5または57.5/7.5/31.5/3.5(mol% LIPID I/DSPC/Chol/PEG−DMG)である。特定の実施形態では、モル比は、約50/10/38.5/1.5(mol% LIPID V/DSPC/Chol/PEG−DMG)または約50/10/38.5/1.5(mol% LIPID VI/DSPC/Chol/PEG−DSG)である。別の群の実施形態では、これらの組成物中の中性脂質を、DPPC、POPC、DOPEまたはSMと置き換える。別の群の実施形態では、PEGまたはPEG修飾脂質はPEG−DSGである。
【0318】
さらなる実施形態では、薬学的組成物は、ワクチンまたは抗原と組み合わせて対象に提供される。したがって、本発明自体が、免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含み、かつ免疫応答が望まれる抗原と会合している、本発明の脂質粒子を含むワクチンを提供する。特定の実施形態では、抗原は、腫瘍抗原であるか、または例えば、ウイルス、細菌もしくは寄生虫などの感染体と関連している。
【0319】
種々の腫瘍抗原、感染体抗原、および他の疾患に関連する抗原が、当該技術分野で周知であり、これらの例は、本明細書に引用される参考文献に記載されている。本発明における使用に好適な抗原の例としては、ポリペプチド抗原およびDNA抗原が挙げられるが、これらに限定されない。抗原の特定の例は、A型肝炎、B型肝炎、痘瘡、ポリオ、炭疽、インフルエンザ、チフス、破傷風、麻疹、ロタウイルス、ジフテリア、百日咳、結核および風疹の抗原である。一実施形態では、抗原は、B型肝炎組換え抗原である。別の態様では、抗原はA型肝炎組換え抗原である。別の態様では、抗原は腫瘍抗原である。このような腫瘍関連抗原の例は、MUC−1、EBV抗原およびバーキットリンパ腫に関連する抗原である。さらなる態様では、抗原は、チロシナーゼ関連タンパク質腫瘍抗原組換え抗原である。当業者は、本発明における使用に好適な他の抗原を知っているであろう。
【0320】
本発明における使用に好適な腫瘍関連抗原は、単一の腫瘍タイプを示し、いくつかのタイプの腫瘍間で共有され、および/または正常細胞と比較して腫瘍細胞においてもっぱら発現されるかもしくは過剰発現される可能性がある、突然変異した分子と突然変異していない分子の両方を含む。タンパク質および糖タンパク質に加えて、炭水化物、ガングリオシド、糖脂質およびムチンの発現の腫瘍特異的パターンも報告されている。本癌ワクチンにおいて使用するための例示的な腫瘍関連抗原としては、癌遺伝子、癌抑制遺伝子、および腫瘍細胞に特有の突然変異または再配列を有する他の遺伝子のタンパク質産物、再活性化された胚性遺伝子産物、癌胎児性抗原、組織特異的な(しかし、腫瘍特異的でない)分化抗原、増殖因子受容体、細胞表面炭水化物残基、外来性ウイルスタンパク質、ならびにいくつかの他の自己タンパク質が挙げられる。
【0321】
腫瘍関連抗原の特定の実施形態としては、例えば、突然変異した抗原(例えば、Ras p21癌原遺伝子、腫瘍抑制因子p53およびBCR−abl癌遺伝子のタンパク質産物ならびにCDK4、MUM1、カスパーゼ8およびβカテニン);過剰発現される抗原(例えば、ガレクチン4、ガレクチン9、炭酸脱水酵素、アルドラーゼA、PRAME、Her2/neu、ErbB−2およびKSA)、癌胎児性抗原(例えば、αフェトプロテイン(AFP)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG));自己抗原(例えば、癌胎児抗原(CEA)およびメラノサイト分化抗原(例えば、Mart1/MelanA、gp100、gp75、チロシナーゼ、TRP1およびTRP2));前立腺関連抗原(例えば、PSA、PAP、PSMA、PSM−P1およびPSM−P2);再活性化された胚性遺伝子産物(例えば、MAGE1、MAGE3、MAGE4、GAGE1、GAGE2、BAGE、RAGEおよび他の癌精巣抗原(例えば、NY−ESO1、SSX2およびSCP1));ムチン(例えば、Muc−1およびMuc−2);ガングリオシド(例えば、GM2、GD2およびGD3)、中性糖脂質および糖タンパク質(例えば、Lewis(y)およびグロボ−H);ならびに糖タンパク質(例えば、Tn、Thompson−Freidenreich抗原(TF)およびsTn)が挙げられる。全細胞および腫瘍細胞ライセートならびにその免疫原性部分、ならびにB細胞リンパ腫に対して使用されるBリンパ球のモノクローナル増殖時に発現される免疫グロブリンイディオタイプもまた、本明細書における腫瘍関連抗原として含められる。
【0322】
病原体としては、感染体、例えば、哺乳動物(より特には、ヒト)に感染するウイルスが挙げられるが、これに限定されない。感染性ウイルスの例としては:レトロウイルス科(Retroviridae)(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(例えば、HIV−1(HTLV−III、LAVまたはHTLV−III/LAVとも呼ばれる)またはHIV−III);および他の分離株(例えば、HIV−LP);ピコルナウイルス科(Picornaviridae)(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);カルシウイルス科(Calciviridae)(例えば、胃腸炎を引き起こす株);トガウイルス科(Togaviridae)(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);フラビウイルス科(Flaviridae)(例えば、デング熱ウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス);コロノウイルス科(Coronoviridae)(例えば、コロナウイルス);ラブドウイルス科(Rhabdoviradae)(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);コロナウイルス科(Coronaviridae)(例えば、コロナウイルス);ラブドウイルス科(Rhabdoviradae)(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(Filoviridae)(例えば、エボラウイルス);パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)(例えば、パラインフルエンザウイルス、耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス);オルソミクスウイルス科(Orthomyxoviridae)(例えば、インフルエンザウイルス);ブンガウイルス科(Bungaviridae)(例えば、ハンターンウイルス、ブニアウイルス、フレボウイルスおよびナイロウイルス);アレナウイルス科(Arena viridae)(出血熱ウイルス);レオウイルス科(Reoviridae)(例えば、レオウイルス、オルビウイルスおよびロタウイルス);ビルナウイルス科(Birnaviridae);ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(Parvovirida)(パルボウイルス);パポバウイルス科(Papovaviridae)(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(Adenoviridae)(ほとんどのアデノウイルス);ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)の単純ヘルペスウイルス(HSV)1および2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス;ポックスウイルス科(Poxviridae)(天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス);およびイリドウイルス科(Iridoviridae)(例えば、アフリカブタ熱ウイルス);ならびに未分類のウイルス(例えば、海綿状脳症の病原因子、デルタ肝炎の病原体(B型肝炎ウイルスの欠損サテライトと考えられる)、非A型、非B型肝炎の病原体(クラス1=内部伝染性;クラス2=非経口伝染性(すなわち、C型肝炎);ノーウォークおよび関連ウイルスならびにアストロウイルス)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0323】
また、グラム陰性細菌およびグラム陽性細菌は、脊椎動物において抗原として働く。このようなグラム陽性細菌としては、パスツレラ(Pasteurella)種、ブドウ球菌(Staphylococci)種および連鎖球菌(Streptococcus)種が挙げられるが、これらに限定されない。グラム陰性細菌としては、大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス(Pseudomonas)種およびサルモネラ(Salmonella)種が挙げられるが、これらに限定されない。感染性の細菌の特定の例としては:ヘリコバクターピロリ(Helicobacterpyloris)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borelia burgdorferi)、レジオネラ・ニューモフィリア(Legionella pneumophilia)、マイコバクテリア属の種(Mycobacteria sps)(例えば、結核菌(M.tuberculosis)、M.アウィウム(M.avium)、M.イントラセルラーレ(M.intracellulare)、M.カンサイイ(M.kansaii)、M.ゴルドナエ(M.gordonae))、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)(A群連鎖球菌)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)(B群連鎖球菌)、ストレプトコッカス(ビリダンス群)、大便連鎖球菌(Streptococcusfaecalis)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、ストレプトコッカス(嫌気性種)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、病原性カンピロバクター属の種(Campylobacter sp.)、腸球菌属の種(Enterococcus sp.)、インフルエンザ菌(Haemophilus infuenzae)、炭疽菌(Bacillus antracis)、ジフテリア菌(corynebacterium diphtheriae)、コリネバクテリウム属の種(corynebacterium sp.)、豚丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringers)、破傷風菌(Clostridium tetani)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasturella multocida)、バクテロイデス属の種(Bacteroides sp.)、フゾバクテリウム・ヌクレアートゥム(Fusobacterium nucleatum)、ストレプトバシルス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidium)、トレポネーマ・ペルテヌエ(Treponema pertenue)、レプトスピラ(Leptospira)、リケッチア(Rickettsia)およびアクチノミセス・イスラエリイ(Actinomyces israelii)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0324】
病原体のさらなる例としては、哺乳動物(より特には、ヒト)に感染する感染性真菌が挙げられるが、これに限定されない。感染性真菌の例としては、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラスマ・カプスラートゥム(Histoplasma capsulatum)、コッキディオイデス・イムミティス(Coccidioides immitis)、ブラストミケス・デルマティティディス(Blastomyces dermatitidis)、クラミディア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)、カンディダ・アルビカンス(Candida albicans)が挙げられるが、これらに限定されない。感染性寄生虫の例としては、プラスモディウム(Plasmodium)、例えば、プラスモディウム・ファルキパルム(Plasmodium falciparum)、プラスモディウム・マラリアエ(Plasmodium malariae)、プラスモディウム・オウァレ(Plasmodium ovale)およびプラスモディウム・ウィウァクス(Plasmodium vivax)が挙げられる。他の感染性生物(すなわち、原生生物)としては、トキソプラスマ・ゴンディイ(Toxoplasma gondii)が挙げられる。
【0325】
薬学的組成物
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載の肝臓スクリーニングモデルで同定された核酸剤を含む薬学的組成物を提供する。組成物は、作用剤(例えば、dsRNA)と薬学的に許容される担体とを含む。薬学的組成物は、遺伝子の発現または活性と関連する疾患または障害を治療するのに有用である。このような薬学的組成物は、送達の様式に基づいて製剤化される。1つの例は、非経口送達を介する全身投与用に製剤化される組成物である。
【0326】
同定された薬剤を含む薬学的組成物を、標的遺伝子(例えば、第VII因子遺伝子)の発現を阻害するのに十分な投薬量で投与する。通常、dsRNA剤の好適な用量は、1日にレシピエントの体重1キログラム当たり0.01〜5.0ミリグラムの範囲、通常、1日に体重1キログラム当たり1マイクログラム〜1mgの範囲である。薬学的組成物を1日1回投与してもよく、またはdsRNAを1日を通して適切な間隔で2回、3回、もしくはよりより多くのサブ用量として、または徐放製剤による連続的な注入もしくは送達すら用いて投与してもよい。その場合、各サブ用量に含まれるdsRNAは、総1日投薬量に到達するために相応により少量でなければならない。投薬単位は、例えば、数日間にわたってdsRNAの持続的放出をもたらす従来の持続放出製剤を用いて、数日間かけて送達されるように調合することもできる。持続放出製剤は当該技術分野で周知であり、かつ本発明の薬剤とともに使用し得るような薬剤の膣送達に特に有用である。この実施形態では、投薬単位は、対応する複数の1日用量を含む。
【0327】
当業者であれば、限定するものではないが、対象の疾患もしくは障害の重症度、過去の治療、全般的な健康および/または年齢、ならびに他の存在する疾患をはじめとする、特定の因子が、対象を効果的に治療するのに必要とされる投薬量およびタイミングに影響を与え得ることを理解するであろう。さらに、治療的有効量の組成物による対象の治療は、1回の治療または一連の治療を含むことができる。本発明によって企図される個々のdsRNAについての有効投薬量やインビボ半減期を、従来の方法を用いて、または本明細書の別の場所に記載されているような、適当な動物モデルを用いたインビボ試験に基づいて、推定することができる。
【0328】
特定の実施形態では、本発明の脂質−核酸粒子を含む薬学的組成物は標準的な技術に従って調製され、かつこれは薬学的に許容される担体をさらに含む。通常、食塩水が薬学的に許容される担体として利用される。他の好適な担体としては、例えば、安定性を増強するために糖タンパク質(例えば、アルブミン、リポタンパク質、グロブリンなど)を含む、水、緩衝水、0.9%食塩水、0.3%グリシンなどが挙げられる。食塩水または他の塩含有担体を含む組成物では、担体が、以下の脂質粒子製剤に添加されることが好ましい。したがって、脂質−核酸組成物を生成した後、これらの組成物を薬学的に許容される担体(例えば、食塩水)中に希釈することができる。
【0329】
得られた薬学的調製物を従来的な周知の滅菌技術によって滅菌してもよい。その後、水性溶液を、無菌条件下で、使用のために包装するかまたは濾過し、凍結乾燥させ、凍結乾燥させた調製物を、投与の前に滅菌水性溶液と組み合わせる。組成物は、生理的条件に近づけるために必要とされる薬学的に許容される補助物質、例えば、pH調節剤およびpH緩衝剤、張性調節剤など(例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなど)を含んでもよい。さらに、脂質懸濁液は、保存時のフリーラジカルおよび脂質過酸化による傷害に対して脂質を保護する脂質保護剤を含んでもよい。親油性のフリーラジカルクエンチャー(例えば、α−トコフェロール)および水溶性の鉄特異的キレート剤(例えば、フェリオキサミン)が好適である。
【0330】
薬学的製剤中の脂質粒子または脂質−核酸粒子の濃度は、様々に(すなわち、約0.01重量%未満、通常は、約0.05〜5重量%または少なくとも約0.05〜5重量%から10〜30重量%までにも)異なる可能性があり、主に、選択される特定の投与様式に従う液量、粘性などによって選択される。例えば、治療に伴う流体負荷を下げるために、この濃度を増加させてもよい。これは、アテローム性動脈硬化症に関連する鬱血性心不全または重症高血圧を有する患者で特に望ましい可能性がある。あるいは、投与部位での炎症を緩和するために、刺激性の脂質から構成された複合体を低濃度に希釈してもよい。一群の実施形態では、核酸は、標識が付着しており、(相補的核酸の存在を示すことによって)診断に使用される。この例では、投与される複合体の量は、使用される特定の標識、診断されている病状、および臨床医の判断によって決定されるが、通常、約0.01〜約50mg/kg体重、好ましくは約0.1〜約5mg/kg体重である。
【0331】
上記のように、本発明の脂質−治療剤(例えば、核酸)粒子は、ポリエチレングリコール(PEG)修飾リン脂質、PEG−セラミド、もしくはガングリオシドG
M1修飾脂質、または凝集を防ぐかまたは制限するのに有効な他の脂質を含んでもよい。このような成分の添加は、単に複合体凝集を防ぐだけではない。それどころか、これは、循環寿命を増大させ、標的組織への脂質−核酸組成物の送達を増大させる手段も提供する可能性がある。
【0332】
本発明は、キット形態の脂質−治療剤組成物も提供する。キットは、通常、キットの様々な要素を入れるために区画化された容器から構成されている。キットは、好ましくは脱水または濃縮された形態の、本発明の粒子または薬学的組成物を、それらを再水和または希釈および投与するための指示書とともに含む。特定の実施形態では、粒子は活性剤を含むが、他の実施形態では、含まない。
【0333】
肝臓スクリーニングモデルによって同定された薬剤を含む薬学的組成物を、局所的処置が望ましいかまたは全身的処置が望ましいかによって、および治療されるべき面積によって、いくつかの方法で投与し得る。投与は、局所的、肺(例えば、ネブライザーによるものを含む、粉末またはエアロゾルの吸入または吹入);気管内、鼻腔内、表皮および経皮、経口的または非経口的であってもよい。投与はまた、局所送達を通じて、例えば、関節への直接的な関節内注射によって、消化管および腸への直接的な送達のための直腸投与によって、子宮頸部および膣への送達のための膣内投与によって、眼への送達のための硝子体内投与によって、特定の組織への優先的な局在化をもたらすように設計されてもよい。非経口投与としては、静脈内、動脈内、関節内、皮下、腹腔内または筋肉内への注射もしくは注入;または頭蓋内(例えば、髄腔内もしくは脳室内)投与が挙げられる。
【0334】
局所的投与のための薬学的組成物および製剤としては、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、点滴剤、座薬、スプレー、液剤および粉末剤を挙げることができる。従来の薬学的担体、水性、粉末もしくは油性基剤、増粘剤などが必要であるかまたは望ましい場合がある。コーティングされたコンドーム、グローブなども有用であり得る。好ましい局所製剤としては、本発明のdsRNAが、局所的送達成分(例えば、脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート化剤または界面活性剤)と混合されているものが挙げられる。好ましい脂質およびリポソームとしては、中性(例えば、ジオレオイルホスファチジルDOPEエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリンDMPC、ジステアロイルホスファチジルコリン)、陰性(例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロールDMPG)およびカチオン性(例えば、ジオレオイルテトラメチルアミノプロピルDOTAPおよびジオレオイルホスファチジルエタノールアミンDOTMA)が挙げられる。本発明のdsRNAはリポソーム内に封入され得るし、またはdsRNAは、リポソームへと(特に、カチオン性リポソームへと)複合体を形成し得る。あるいは、dsRNAを脂質へと(特に、カチオン性脂質へと)複合体化し得る。好ましい脂肪酸およびエステルとしては、アラキドン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプラート、トリカプラート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1−モノカプラート、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリンまたはC
1−10アルキルエステル(例えば、イソプロピルミリステートIPM)、モノグリセリド、ジグリセリドまたは薬学的に許容されるそれらの塩が挙げられるが、これらに限られない。局所製剤は1999年5月20日に出願された米国特許出願第09/315,298号に詳細に記載されており、この文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0335】
経口的投与のための組成物および製剤としては、粉末剤または顆粒剤、マイクロ粒子剤、ナノ粒子剤、水中もしくは非水性媒体中の懸濁液または溶液、カプセル、ゲルカプセル、サッシェ、錠剤またはミニ錠が挙げられる。増粘剤、香味料、希釈剤、乳化剤、分散助剤または結合剤が望ましい場合がある。好ましい経口製剤は、本発明のdsRNAが1つ以上の浸透増進剤界面活性剤およびキレート化剤と組み合わせて投与されるものである。好ましい界面活性剤として、脂肪酸および/またはそれらのエステルもしくは塩、胆汁酸および/またはそれらの塩が挙げられる。好ましい胆汁酸/塩としては、ケノデオキシコール酸(CDCA)およびウルソデオキシケノデオキシコール酸(UDCA)、コール酸、デヒドロコール酸、デオキシコール酸、グルコール酸、グリコール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロ−24,25−ジヒドロ−フシジン酸ナトリウムおよびグリコジヒドロフシジン酸ナトリウムが挙げられる。好ましい脂肪酸としては、アラキドン酸、ウンデカン酸、オレイン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプラート、トリカプラート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1−モノカプラート、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリンまたはそれらのモノグリセリド、ジグリセリドもしくは薬学的に許容される塩(例えば、ナトリウム)が挙げられる。浸透増進剤の組合せ、例えば、胆汁酸/塩と組み合わされた脂肪酸/塩も好ましい。特に好ましい組合せは、ラウリン酸のナトリウム塩とカプリン酸とUDCAである。さらなる浸透増進剤としては、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−20−セチルエーテルが挙げられる。本発明のdsRNAを噴霧乾燥した粒子を含む顆粒形態として経口的に送達するか、またはそれを複合体化させてマイクロ粒子もしくはナノ粒子を形成させてもよい。dsRNA複合体化剤としては、ポリ−アミノ酸;ポリイミン;ポリアクリラート;ポリアルキルアクリラート、ポリオキシエタン、ポリアルキルシアノアクリラート;カチオン化ゼラチン、アルブミン、デンプン、アクリラート、ポリエチレングリコール(PEG)およびデンプン;ポリアルキルシアノアクリラート;DEAE誘導体化ポリイミン、ポルラン、セルロースおよびデンプンが含まれる。特に好ましい複合体化剤にはキトサン、N−トリメチルキトサン、ポリ−L−リジン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリスペルミン、プロタミン、ポリビニルピリジン、ポリチオジエチルアミノ−メチルエチレンP(TDAE)、ポリアミノスチレン(例えば、p−アミノ)、ポリ(メチルシアノアクリラート)、ポリ(エチルシアノアクリラート)、ポリ(ブチルシアノアクリレトー)、ポリ(イソブチルシアノアクリラート)、ポリ(イソヘキシルシアノアクリラート)、DEAE−メタクリラート、DEAE−ヘキシルアクリラート、DEAE−アクリルアミド、DEAE−アルブミンおよびDEAE−デキストラン、ポリメチルアクリラート、ポリヘキシルアクリラート、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(DL−乳酸−コ−グリコール酸(PLGA)、アルギナートおよびポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。dsRNA用の経口製剤およびそれらの調製は、米国特許出願第08/886,829号(1997年7月1日出願)、同第09/108,673号(1998年7月1日出願)、同第09/256,515号(1999年2月23日出願)、同第09/082,624号(1998年5月21日出願)および同第09/315,298号(1999年5月20日出願)に詳細に記載されており、これらの文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0336】
非経口、髄腔内または脳室内投与のための組成物および製剤は、緩衝剤、希釈剤および他の好適な添加剤(例えば、限定するものではないが、浸透増進剤、担体化合物および他の薬学的に許容される担体もしくは賦形剤)も含有し得る滅菌水溶液を含み得る。
【0337】
薬学的組成物としては、溶液、エマルジョョンおよびリポソーム含有組成物が挙げられるが、これらに限定されない。これらの組成物を、事前形成された液体、自己乳化性固体および自己乳化性半固体が含まれるが、これらに限定されない種々の成分から生成させ得る。
【0338】
好都合に単位投薬形態で提示し得る本発明の薬学的組成物は、薬学的産業において周知の従来の方法に従って調製され得る。このような技術は、活性成分を薬学的担体または賦形剤と関連させる工程を含む。一般に、組成物は、活性成分を液体担体もしくは微粉砕された固体担体または両方と均一かつ緊密に関連させ、次に、必要ならば、生成物を成形することにより調製される。
【0339】
本発明の組成物を製剤化し、多くの可能な投薬形態、例えば、限定するものではないが、錠剤、カプセル、ゲルカプセル、液体シロップ、軟質ゲル、座薬、および浣腸のいずれかにしてもよい。また、本発明の組成物を、水性、非水性または混合媒体中の懸濁剤として製剤化してもよい。水性懸濁剤は、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールおよび/またはデキストランを含む懸濁剤の粘度を高める物質をさらに含んでいてもよい。懸濁剤はまた、安定剤を含んでいてもよい。
【0340】
本発明の一実施形態では、薬学的組成物を泡剤として製剤化し、使用してもよい。薬学的泡剤としては、限定するものではないが、エマルジョン、マイクロエマルジョン、クリーム、ゼリーおよびリポソームなどの製剤が挙げられる。これらの製剤は性質において基本的に類似しているが、成分および最終的生成物の稠度の点で異なる。このような組成物および製剤の調製は、一般に、製薬および医薬の技術分野における専門家に知られており、かつ本発明の組成物の製剤に適用され得る。
【0341】
本発明は、その適用が以下の説明に示される成分の構築および配置の詳細には制限されない。本発明は、他の実施形態であり得、様々な方法で実施または実行され得る。また、本明細書で用いられる表現および技術用語は、説明目的のものであって、制限とみなされるべきではない。「含む(including)」、「含む(comprising)」、または「有する(having)」、「含む(containing)」、「伴う(involving)」、および本明細書におけるそれらのバリエーションの使用は、以後列挙される項目およびその等価物ならびにさらなる項目を包含することが意図される。
【実施例】
【0342】
以下の実施例は、特許請求された発明を例証するために提供されるのであって、これを限定するために提供されるのではない。
【0343】
実施例1:インビボ齧歯類第VII因子サイレンシング実験。C57BL/6マウス(Charles River Labs,MA)とSprague−Dawleyラット(Charles River Labs,MA)に、尾静脈注射によって、0.01mL/gの容量で、食塩水または製剤化されたsiRNAのいずれかを投与した。投与後の様々な時点で、後眼窩採血によって血清試料を採取する。第VII因子タンパク質の血清レベルを、発色アッセイ(Biophen FVII,Aniara Corporation,OH)を用いて試料中で決定する。第VII因子の肝臓mRNAレベルを決定するために、動物を屠殺し、肝臓を摘出し、液体窒素で瞬間凍結した。凍結した組織から組織ライセートを調製し、第VII因子の肝臓mRNAレベルを、分岐DNAアッセイ(QuantiGene Assay,Panomics,CA)を用いて定量した。
【0344】
実施例2:核酸−脂質粒子を用いた哺乳動物遺伝子発現の調節。凝固カスケードの著名なタンパク質である第VII因子(FVII)は、肝臓(肝細胞)で合成され、血漿中に分泌される。血漿中のFVIIレベルは、簡単なプレートに基づく比色アッセイで決定することができる。したがって、FVIIは、siRNA媒介性の肝細胞由来タンパク質の下方調節の決定、ならびに核酸脂質粒子およびsiRNAの血漿濃度および組織分布のモニタリングのための好都合なモデルである。
【0345】
マウスにおける第VII因子ノックダウン
C57BL/6マウスで静脈内(ボーラス)注射した24時間後、FVII活性をFVII siRNA処理動物で評価した。マイクロプレートスケールで、製造元の指示に従って、血清または組織中のタンパク質レベルを決定するための市販キットを用いてFVIIを測定した。FVIIの低下を未処理の対照マウスに対して決定し、結果を残存FVII%として表した。4つの用量レベル(2、5、12.5、25mg/kg FVII siRNA)を各々の新規リポソーム組成物の初期スクリーンで用い、初期スクリーンで得られた結果を基にして、この用量を後の研究で拡大した。
【0346】
認容性の決定
体重変化、臨床観察、臨床化学検査および、場合によって、血液検査をモニタリングすることにより、各々の新規リポソームsiRNA組成物の認容性を評価した。処理前および処理24時間後に、動物の体重を記録した。データを体重変化%として記録した。体重測定に加えて、肝機能マーカーを含む、完全な臨床化学検査パネルを、FVII解析用に採取された血清のアリコートを用いて、注射24時間後に、各用量レベル(2、5、12.5および25mg/kg siRNA)で得た。解析のために、試料をCentral Laboratory for Veterinarians(Langley,BC)に送付した。場合によっては、血液検査解析用の全血の採取が行えるように、治療群に追加のマウスを含めた。
【0347】
治療指数の決定
治療指数(TI)は、毒性と活性の測定値を比較して生成される任意のパラメータである。これらの研究のために、TIを
【数2】
として計算する。
【0348】
これらの研究についてのMTDは、体重の>7%減少および齧歯類の肝臓の損傷に対する良好な特異性を有する臨床的化学マーカーであるアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の>200倍の増加を引き起こす最低の用量として設定された。ED
50は、FVII用量−活性曲線から求められた。
【0349】
実施例3:押出法の一般的プロトコル
脂質(脂質(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)または(VI):DSPC:コレステロール:DMG−PEG)を可溶化し、所望のモル比に従ってエタノール中で混合する。混合した脂質をpH5.2の酢酸ナトリウム緩衝液に添加するエタノール注入法によって、リポソームを形成させる。これにより、35%エタノール中でリポソームが自然に形成される。リポソームを0.08μmポリカーボネート膜に少なくとも2回通して押し出す。ストックsiRNA溶液を酢酸ナトリウムおよび35%エタノール中に調製し、リポソームに添加して、充填(load)した。siRNA−リポソーム溶液を37℃で30分間インキュベートし、その後、希釈した。エタノールを除去し、透析または接線流濾過でPBS緩衝液に交換した。
【0350】
実施例4:インライン混合法の一般的プロトコル
一方は脂質を含み、もう一方はsiRNAを含む、個々別々のストックを調製する。脂質(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)または(VI);DSPC:コレステロール:PEG脂質を含む脂質ストックを90%エタノールに可溶化して調製する。残りの10%は低pHクエン酸緩衝液である。脂質ストックの濃度は4mg/mLである。このクエン酸緩衝液のpHの範囲は、利用される融合原性脂質の種類によって、pH3〜5であることができる。siRNAを4mg/mLの濃度でクエン酸緩衝液にも可溶化する。小規模用に、5mLの各ストック溶液を調製する。
【0351】
siRNAと組み合わせる前に、ストック溶液は完全に透明であり、かつ脂質は完全に可溶化されなければならない。それゆえに、ストック溶液を加熱して、脂質を完全に可溶化してもよい。このプロセスで使用されるsiRNAは、未修飾オリゴヌクレオチドであっても、修飾オリゴヌクレオチドであってもよく、コレステロールなどの親油性部分とコンジュゲートされていてもよい。
【0352】
各溶液をT字路に汲み上げて、個々のストックを組み合わせる。デュアルヘッド型のWatson−Marlowポンプを用いて、2つのストリームの開始と停止を同時に制御する。線流速を増加させるために、1.6mmのポリプロピレンチューブをさらに小さくして、0.8mmのチューブにする。このポリプロピレンライン(ID=0.8mm)をT字路のどちらかの側に取り付ける。ポリプロピレンTは、4.1mm
3の容積が結果として得られるように、1.6mmの直線状の先端を有する。ポリプロピレンラインの大きい末端(1.6mm)の各々は、可溶化された脂質ストックかまたは可溶化されたsiRNAのいずれかを含む試験管の中に入れられる。T字路の後ろに、組み合わされたストリームが流れるチューブを1本置く。次に、チューブを伸ばして、2×容量のPBSが入った容器中に入れる。PBSを素早く撹拌する。ポンプの流速は、300rpmまたは110mL/分の設定とする。エタノールを除去し、透析でPBSに交換する。次に、脂質組成物を、遠心分離または透析濾過を用いて、適当な作用濃度まで濃縮する。
【0353】
実施例5:様々な脂質比を有する組成物の効力
様々な脂質比を、下記の表に示すように試験した。脂質T(「T」)、コレステロール(「C」)およびPEG−脂質(PEG−DMG)が含まれる。これらの成分の相対モルパーセンテージを以下に記載する。それゆえ、「T50−C40−P10」は、50mol%の脂質Tと、40mol%のコレステロールと、10mol%のPEG−DMGを含む。使用したsiRNA二重鎖は、第VII因子遺伝子(FVII)を標的とするAD−1661であった。
【表F】
【表G】
【表H】
【0354】
実施例6:マウスにおけるインライン混合組成物の効力
【表I】
【表J】
【0355】
実施例7:様々なリポソーム組成物を用いたマウスにおけるインライン混合(IL)組成物の効力
【表K】
【表L】
【0356】
実施例8:様々なPEGおよび中性脂質を用いたマウスにおけるIL組成物の効力
PEG鎖長または中性脂質を修飾する効果を調べた。中性脂質については、DOPC(ジオレオイル−ホスファチジルコリン)またはDMPC(ジミリストイル−ホスファチジルコリン)を試験した。C10またはC18鎖長のmPEG2000コンジュゲート脂質も1.5mol%で試験した。下に「IL」で示されている場合は、粒子をインライン混合法を用いて作製した。
【表M】
【表N】
【0357】
実施例9:マウスにおけるAF12の用量応答
C57BL/6マウス(Charles River Labs,MA)およびSprague−Dawleyラット(Charles River Labs,MA)に、尾静脈注射によって、0.01mL/gの容量で、食塩水または製剤化したsiRNAのいずれかを投与した。投与後の様々な時点で、後眼窩採血によって、血清試料を採取した。第VII因子タンパク質の血清レベルを、発色アッセイ(Biophen FVII,Aniara Corporation,OH)を用いて試料中で決定した。第VII因子の肝臓mRNAレベルを決定するために、動物を屠殺し、肝臓を摘出し、液体窒素中で瞬間凍結した。凍結した組織から組織ライセートを調製し、分岐DNAアッセイ(QuantiGene Assay,Panomics,CA)を用いて、第VII因子の肝臓mRNAレベルを定量した。
【0358】
リポソーム組成物中に様々な濃度のAF12を含むリポソーム組成物を用いて、インビボ実験を行なった。標準の第VII因子(FVII)siRNA二重鎖1661を用いてAF12用量応答を0.001mg/kg〜0.3mg/kgまで試験した。これらの結果を
図6に示すようにルシフェラーゼ対照(二重鎖1955)と比較した。合計40匹の動物の実験において遺伝子型1つ当たり8つの群の各々について5匹の動物を用いた。
図6に示すように、増加する用量のリポソーム組成物は、通常、FVIIのノックダウン量の増加をもたらした。
【表O】
【0359】
実施例10:ApoE KOマウスにおけるAF12リポソーム組成物の効力
様々なAF12リポソーム組成物の効力におけるApoEの役割をさらに調べるために、AD−1661 siRNA組成物を含むものを、様々な濃度で投与した。
【0360】
ApoEまたはN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)コンジュゲート脂質を含むリポソーム組成物を用いてインビボ実験を行なった。GalNAc受容体が肝臓で高度に発現すると考えられることが分かっているので、GalNAcが潜在的ターゲッティングリガンドとして選ばれた。それゆえ、本質的に実施例6に記載したようにC57BL/6およびApoEノックアウトマウスを用いて研究を行ない、様々な濃度のGalNAc3−PEG−DSG脂質をさらに含むAF12製剤の効力を試験した。全ての実験において、PEG−コンジュゲート脂質の総量を一定に保った(例えば、0.5%molのGalNAc3−PEGを添加する場合、PEG−DMGの対応量を0.5%molだけ減らし、総PEG−脂質を1.5%molに保つ)。
【0361】
図7に示すように、ApoEをリポソーム組成物に添加しても、AF12含有リポソーム組成物の用量応答に対して皆無かそれに近い効果しかない。GalNAc3含有組成物は、FVIIのノックダウンにわずかながら効果があるように見える。
【表P】
【0362】
実施例11:WTマウスおよびApoEマウスにおいて、ならびにWTマウスおよびLDLRノックアウトマウスにおいて試験されたAF12
様々なAF12リポソーム組成物のApoE依存性を調べるために、LDLR(LDL受容体)欠損マウスにおけるこれらのリポソーム組成物の効力を評価した。LDLR欠損マウスにおけるリポソーム組成物の効力の減少により、ApoE依存性が示唆された。以下に示すような様々な濃度で、AD−1661 siRNA組成物を含むAF12リポソーム組成物を野生型マウスおよびLDLR KOマウスに投与した。第1の群には陰性対照としてのPBSを投与した。
【表Q】
【0363】
結果を
図8に示す。この結果は、LDLR(LDL受容体)欠損マウスにおける増加した効力と同様であることが明らかになり、これにより、これらのリポソーム組成物がApoE依存的でないことが示唆される。
【0364】
実施例12:ApoE欠損マウスにおけるAF12の効力に対するApoEまたはGalNAc脂質の効果
ApoE欠損マウスに対するAF12組成物の効果を調べるために、ApoEまたは以下に詳述するようなGalNAcターゲッティング脂質の存在下で、様々な濃度のAF12を投与した。
【表R】
【0365】
図9aおよび9bに示すように、ApoEノックアウトマウスと野生型マウスにおけるリポソーム組成物の効力には、皆無かそれに近い差しか観察されなかった。これは、ApoE含有リポソーム組成物とGalNAc3含有組成物の両方で観察された。
図9aは、ApoEノックアウトマウスにおける用量応答を示し、一方、
図9bは野生型マウスにおける用量応答を示す。
【0366】
実施例13:脂質Tを含む製剤によるTie2シグナリング
本明細書に記載の製剤を用いた核酸の送達を試験するために、内皮特異的マーカーのTEKチロシンキナーゼを選んだ。Tie2またはルシフェラーゼ(「Luc」)を標的とする、以下の配列を有するsiRNA二重鎖AD−27430をAF−012またはAF−011とともに製剤化した。
【表S】
【0367】
下記のような「高用量」または「低用量」プロトコルに従って、マウスに製剤を投与した。
【0368】
高用量プロトコルでは、表に記載したように、2用量のPBS、Tie2を標的とする脂質製剤化siRNA、またはルシフェラーゼを標的とする脂質製剤化siRNA(1群当たりn=5)をマウスに投与した。
【表T】
【0369】
「低用量」プロトコルでは、下の表に記載したように、単一用量のTie2を標的とする脂質製剤化siRNA(N=4)またはルシフェラーゼを標的とする脂質製剤化siRNA(n=1、AF−012の場合のみ)の2回の投与をマウスに施した。
【表U】
【0370】
以下の表に示すように、AF−012で製剤化されたsiRNAは、肝臓、肺、心臓、および腎臓をはじめとする、様々な血管床の内皮において効果的なサイレンシングを引き起こした。脂質Tを含まないAF−011製剤では、サイレンシングが観察されなかった。
【表V】
【0371】
結果を
図10A〜15にまとめる。
図10A〜10Cは、GAPDH(
図10A)、VEFG受容体2(VEGFR2)(
図10B)、およびVe−カドヘリン(
図10C)発現と比較したときの、心臓におけるTie2発現のノックダウン(KD)を示す。siRNAをAF−012製剤とともにパッケージングしたときに、Tie2 siRNAのみがTie2をサイレンシングし、siRNAをAF−011製剤とともにパッケージングしたときには、サイレンシングしなかった。
【0372】
図11A、11Bおよび12Aは、AF−011(
図11B)ではなく、AF−012とともに製剤化されたsiRNAによる(
図11Aおよび12A)肝臓におけるTie2発現のノックダウン(KD)を示す。高用量は2.0と表す(これらの処理では、0.6および2.0mg/kgを投与した);低用量は0.6と表す(0.6mg/kgを投与した)。
【0373】
肝臓におけるVEGFR2発現の増加も、Tie2 siRNAの投与に応答して観察された(
図12B)。
【0374】
図13Aおよび13Bは、AF−012とともに製剤化されたsiRNAによる肺におけるTie2発現のKDを示す。Tie2発現をVE−カドヘリン(
図13A)およびVEGFR−2(
図13B)発現と比較した。
図14Aおよび14Bは、siRNAをAF−012とともに製剤化したときに、それぞれ、腎臓および骨格筋においてTie2発現をノックダウンしたが、AF−011とともに製剤化したときには、ノックダウンしなかった。
【0375】
図15は、Tie2 siRNAが、siRNAをAF−012とともにまたはAF−011とともに製剤化したときに、視床下部における遺伝子発現をKDしなかったことを示すグラフである。
【0376】
これらの結果は、脂質T含有リポソームが、内皮組織における遺伝子サイレンシングのために標的化されるべきsiRNAに特によく適していることを示している。
【0377】
7組の(sepate)用量応答実験を行なった。簡潔に述べると、7つの群のC57Bl6メス(1群当たりマウス5匹)に0.25mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、および0.6mg/kg(1日目)+2.0mg/kg(0日目)を投与した。72時間後に組織および器官を摘出し、これらの組織でTie2レベルを測定した。
図16A〜Bは、それぞれ、肝臓および骨格筋におけるTie2発現の用量依存的ノックダウンを示す。
図17A〜Bは、それぞれ、脾臓および心臓におけるTie2ノックダウンを示す。
図18A〜Bは、それぞれ、様々な用量での腎臓および脂肪組織でのTie2のノックダウンを示す。
【0378】
実施例14:多数の異なるsiRNAを取り込んだ脂質組成物
本明細書に記載の製剤によって与えられる比較的広範な治療域の結果として、単回i.v.投与で肝臓における多数の遺伝子をサイレンシングする可能性が試験された。多数の遺伝子を調節する能力は、多数の遺伝子標的が既に同定されている疾患に対して強力な治療的アプローチを提供し得ると想定することができる。このアプローチの実行可能性を調べるために、潜在的な治療的関心のある肝臓の標的である、第VII因子、ApoB、PCSK9、Xbp1、SORT1、TTR1、TTC39B、ITGb1、ApoC3、およびRab5cに対するsiRNA配列をプールし、TechG1脂質を含む粒子とともに製剤化した。
【0379】
多重遺伝子サイレンシング研究では、第VII因子、ApoB、PCSK9、Xbp1、SORT1、TTR1、TTC39B、ITGb1、ApoC3、およびRab5cのmRNAレベルを、TechG1脂質を含む製剤中に10種のsiRNAのプールまたはルシフェラーゼを標的とする無関係な対照siRNAを含む製剤を投与したマウスから摘出した肝臓で評価した。脂質粒子(AF12)は、以下の成分(単位モル%)を含んでいた:約1:1の脂質:siRNA比で製剤化された、TechG1:DSPC:Chol:PEG−DMG(50mol%:10mol%:38.5mol%:1.5mol%)。各siRNAについて0.1mg/kgの用量でマウスの尾静脈に単回注射した48時間後、これらの標的遺伝子の発現をmRNAレベルで解析した。簡潔に述べると、凍結肝臓組織をすり潰し、組織ライセートを調製した。GAPDHのmRNAレベルに対して正規化したこれらの遺伝子のmRNAレベルを、分岐DNAアッセイ(QuantiGene Reagent System,Panomics)を用いてライセート中で決定した。本明細書に記載の10種のsiRNAのプールで処理したマウスにおける標的/GAPDHレベルを、同じ製剤ではあるが、ルシフェラーゼ対照siRNAを含む製剤で処理したマウスにおける対応する標的/GAPDHレベルに対して正規化した後、プロットした。0.1mg/kgから各siRNAの投薬量ごとにサイレンシング効果を調べた。10種全ての遺伝子の有意なサイレンシングは、siRNA当たり0.1mg/kgの用量(1mg/kgトータルsiRNA用量)で観察された(
図5)。
【0380】
10種全ての遺伝子を本明細書に示すように同時にサイレンシングすることにより、同様のまたは異なるシグナル伝達経路に関与する多数の遺伝子を単一の製剤の単回投与で調節し得ることが初めて証明された。例えば、肝臓におけるいくつかの異なる標的の同時サイレンシングは、多数の遺伝子および経路が関与するメタボリックシンドローム、癌、または感染性疾患などの多因子性(multi−factoral)疾患を治療するための新規の戦略を可能にし得る。本発明者らの知る限り、これは、10種の肝臓標的をインビボで同時にsiRNAを介してサイレンシングした最初の報告である。本明細書に記載の脂質を用いた送達の効力を考慮すると、プールしたsiRNA産物でさらにより多くの遺伝子を同時にサイレンシングすることができると仮定される。治療的観点から、これは、多数の標的が治療効果の増強を達成する、より複雑な治療的アプローチを可能にし得る。例えば、この戦略は、急速に進化するウイルスゲノムが、ウイルスゲノムの単一の部位を標的とする単一のsiRNAにとって見付けにくいものであることが分かっているC型肝炎などのウイルス感染の治療において特に有用であり得る。この多重標的アプローチは、低密度リポタンパク質レベルの調節および既に多数の遺伝子が関与するとされている、癌などの疾患の治療において有用であると分かる可能性もある。
【0381】
したがって、2つ以上の核酸組成物(例えば、siRNA)を含む脂質組成物が本明細書に開示されている。いくつかの実施形態では、脂質組成物は、2つ以上の異なる核酸組成物を含む。いくつかの実施形態では、脂質組成物は、5つ以上の異なる核酸組成物を含む。いくつかの実施形態では、脂質組成物は、10以上の異なる核酸組成物を含む。いくつかの実施形態では、脂質組成物は、20以上の異なる核酸組成物を含む。異なる核酸組成物は、同じ標的遺伝子を標的とすることができる。別の実施形態では、異なる核酸組成物は、個別的な標的遺伝子を標的とすることができる。標的遺伝子は、同じ生物学的経路(例えば、抗ウイルス応答などの免疫応答、アポトーシス、コレステロール代謝)の構成要素であってもよいし、または個別的な生物学的経路の構成要素であってもよい。標的遺伝子は、対象由来のものではない遺伝子(例えば、ウイルス遺伝子)を含むことができる。一実施形態では、脂質組成物は、本明細書に記載の少なくとも1種のカチオン性脂質を含む。脂質組成物は、PEGまたはPEG修飾脂質をさらに含むことができる。別の実施形態では、脂質組成物は、ステロール(例えば、コレステロール)をさらに含むことができる。また別の実施形態では、脂質組成物は、中性脂質をさらに含むことができる。
【0382】
本発明の少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様をこのように記載したので、様々な変更、修正、および改良が当業者に容易に思い付くであろうということが理解されるべきである。このような変更、修正、および改良は、本開示の一部であることが意図され、かつ本発明の精神および範囲の範囲内にあることが意図される。したがって、前述の説明は、ほんの一例に過ぎない。