特許第5769706号(P5769706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769706
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】ポンプアッセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F04B 53/16 20060101AFI20150806BHJP
   F04B 53/10 20060101ALI20150806BHJP
   F02M 59/44 20060101ALI20150806BHJP
   F02M 59/46 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   F04B53/16 A
   F04B53/16 C
   F04B53/10 C
   F02M59/44 S
   F02M59/46 C
   F02M59/46 Y
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-521014(P2012-521014)
(86)(22)【出願日】2010年7月19日
(65)【公表番号】特表2012-533706(P2012-533706A)
(43)【公表日】2012年12月27日
(86)【国際出願番号】EP2010060440
(87)【国際公開番号】WO2011009839
(87)【国際公開日】20110127
【審査請求日】2012年3月14日
(31)【優先権主張番号】09165876.5
(32)【優先日】2009年7月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514160386
【氏名又は名称】デルファイ・インターナショナル・オペレーションズ・ルクセンブルク・エス・アー・エール・エル
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(74)【代理人】
【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】ホプリー,ダニエル
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−295730(JP,A)
【文献】 実開平02−001480(JP,U)
【文献】 特開2006−207451(JP,A)
【文献】 特表2007−529675(JP,A)
【文献】 特開2001−295770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 53/16
F02M 59/44
F02M 59/46
F04B 53/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジンで使用するためのポンプアッセンブリ(30)であって、
圧送プランジャー(36)が内部でプランジャー軸線に沿って往復動するボア(34)が設けられた、主ポンプハウジングのヘッドを形成し且つ前記主ポンプハウジングに固定されるポンプハウジング(32a、32b)であって、前記ボア(34)の一端に圧送チャンバ(38)が形成され、使用時に前記圧送プランジャー(36)が前記ボア(34)内で往復動するとき、燃料が前記圧送チャンバ(38)の内部で比較的高いレベルまで加圧され、前記ポンプハウジング(32a、32b)内に入口バルブ(40、40a、40b)が収容されており、前記入口バルブ(40、40a、40b)は、前記圧送チャンバ(38)内への燃料の流れを制御するように前記圧送チャンバ(38)と流体連通する、ポンプハウジング(32a、32b)と、
前記ポンプハウジング(32a、32b)にクランプ負荷を加えるためのクランプ部材(46)と、を含み、前記クランプ負荷は、前記プランジャー軸線と整合した、前記ボア(34)のほぼ軸線方向上方に配置された前記ポンプハウジング(32a、32b)の表面を通る少なくとも一つの成分を含み、
前記ポンプアッセンブリ(30)は、さらに、
前記クランプ部材(46)を前記ポンプハウジング(32a、32b)に固定するための少なくとも一つの固定部材(48)を含み、
前記少なくとも一つの固定部材(48)は、前記ボア(34)の半径方向外方に位置決めされており、前記圧送チャンバ(38)を通り且つ前記プランジャー軸線に対して垂直な平面を通って又は当該平面の下に延びており、
前記固定部材(48)は、前記ポンプハウジング(32a、32b)のヘッド区分(32a)の受け入れ穴(47)及び前記主ポンプハウジングにおける、ねじを備えた対応する受け入れ穴を通して配置されるボルトであり、
前記ポンプハウジング(32a、32b)の表面及び前記クランプ部材(46)の内面が、使用時に低圧燃料を受け入れるための充填チャンバ(49)を形成し、燃料は前記充填チャンバ(49)から前記圧送チャンバ(38)に送出され、
前記クランプ部材(46)は、前記ボア(34)のほぼ軸線方向上方で前記ポンプハウジング(32a、32b)と係合する少なくとも一つの主接触面(58)と、前記ボア(34)の半径方向外方で前記ポンプハウジング(32a、32b)と係合する少なくとも一つの副接触面とを含む、ポンプアッセンブリ(30)。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプアッセンブリ(30)において、
前記入口バルブは、バルブ本体(40a)及びバルブヘッド(40b)を含み、前記ポンプハウジング(32a、32b)の表面は、前記バルブヘッド(40b)の表面と密封係合するための入口弁座(43)を形成する、ポンプアッセンブリ(30)。
【請求項3】
請求項2に記載のポンプアッセンブリ(30)において、
前記入口弁座(43)は、前記バルブヘッド(40b)の截頭円錐形又は部分球形の表面と協働するため、截頭円錐形又は部分球形である、ポンプアッセンブリ(30)。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載のポンプアッセンブリ(30)において、更に、
前記ポンプハウジング(32a、32b)内に収容された、前記圧送チャンバ(38)から出口通路(42)への燃料の送出を調節するため、前記圧送チャンバ(38)と連通した出口バルブ(44)を含む、ポンプアッセンブリ(30)。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載のポンプアッセンブリ(30)において、
前記ポンプハウジングは、前記ボア(34)が内部に設けられたボア区分(32b)を含み、前記クランプ部材(46)は、前記ボア区分(32b)の軸線方向上方に配置された前記ポンプハウジング(32a、32b)の表面にクランプ負荷を加えるように構成されている、ポンプアッセンブリ(30)。
【請求項6】
請求項5に記載のポンプアッセンブリ(30)において、
前記ボア(34)は、前記圧送チャンバ(38)の少なくとも一部が前記ヘッド区分(32a)内に形成されるように前記ポンプハウジング(32a、32b)の前記ヘッド区分(32a)内に延びている、ポンプアッセンブリ(30)。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載のポンプアッセンブリ(30)において、
前記主接触面(58)又は各主接触面(58)は、前記クランプ部材(46)の突出部(46c)に形成されている、ポンプアッセンブリ(30)。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載のポンプアッセンブリ(30)において、
前記少なくとも一つの主接触面は、円弧形態の少なくとも一つの接触ゾーン(58)を含む、ポンプアッセンブリ(30)。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載のポンプアッセンブリ(30)において、
前記クランプ部材(46)の内面と前記ポンプハウジング(32a、32b)の表面との間にばねが配置されており、クランプ負荷が、前記ばねを通して、前記ポンプハウジング(32a、32b)の表面に加えられる、ポンプアッセンブリ(30)。
【請求項10】
請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載のポンプアッセンブリ(30)において、
前記クランプ部材(46)は、前記ポンプハウジング(32a、32b)にクランプ負荷が加えられたときに弾性変形する材料で形成されている、ポンプアッセンブリ(30)。
【請求項11】
請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載のポンプアッセンブリ(30)において、
前記クランプ部材(46)は、前記ポンプハウジング(32a、32b)にクランプ負荷が加えられたときに塑性変形する材料で形成されている、ポンプアッセンブリ(30)。
【請求項12】
請求項1乃至11のうちのいずれか一項に記載のポンプアッセンブリ(30)において、
前記ポンプハウジング(32a、32b)の外周領域で前記クランプ部材(46)を前記ポンプハウジング(32a、32b)に固定するように、前記少なくとも一つの固定部材(48)が前記クランプ部材(46)及び前記ポンプハウジング(32a、32b)を通って延びている、ポンプアッセンブリ(30)。
【請求項13】
請求項1乃至12のうちのいずれか一項に記載のポンプアッセンブリ(30)において、
前記クランプ部材(46)は全体にシルクハット形状の構造であり、隆起した中央部分(46a)及び外スカート(46b)を有する、ポンプアッセンブリ(30)。
【請求項14】
請求項1乃至13のうちのいずれか一項に記載のポンプアッセンブリ(30)において、
前記入口バルブ(40、40a、40b)は前記プランジャー軸線と軸線方向で整合している、ポンプアッセンブリ(30)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジン用ポンプアッセンブリに関する。詳細には、本発明はコモンレール式圧縮点火(ディーゼル)内燃エンジン用ポンプアッセンブリに関するが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
図1は、コモンレール式ディーゼルエンジンで使用するための既知のポンプアッセンブリの部分を示す。ポンプアッセンブリ10は、盲ボア14が設けられたポンプハウジング12を含む。使用時に圧送プランジャー(図示せず)が駆動装置(図示せず)の作用で盲ボア14内で往復動する。プランジャー及びそのボアは、ポンプハウジング12を通って同軸に延び、ボアの盲端が燃料用圧送チャンバ18を形成する。比較的低圧の燃料が、入口逆止弁20の制御下で、入口通路(図示せず)を通って圧送チャンバ18に送出される。燃料は、プランジャーの往復時に圧送チャンバ18内で加圧され、ひとたび所定レベルに達すると、ポンプハウジングの出口バルブ(図示せず)を通って、ボア14に対して横方向に延びる出口通路に送出される。出口通路は、加圧燃料を下流のコモンレールに送出する。
【0003】
ポンプハウジング12には、カバー22が設けられている。カバー22は、ボルト(図示せず)によってポンプハウジング12に固定されている。カバー22は、全体にシルクハット構造であり、ポンプハウジング12の上面と係合する環状スカート22aを有し、この環状スカートを通してボルトが配置される。カバーをこのような形状にし、ポンプアッセンブリの周囲に亘って環状スカート22aを通してボルトを配置することによって、ポンプアッセンブリの全体形状が、ポンプハウジング及びボアの軸線方向上方にカバーが取り付けられた変形例の構成よりもコンパクトになる。かくして、この構成は、空間効率に関して有利であり、これは、混み合ったエンジン空間内で大きな利点である。カバー22の残りの部分の下側及びポンプハウジング12の上面は、低圧燃料を受け入れるための容積28を形成する。この容積は、入口バルブ20の開放時に燃料がここから入口通路を通して圧送チャンバ18に引き出されるリザーバとして作用する。カバー22は、更に、ポンプアッセンブリの構成要素に対する保護体を提供する。
【0004】
圧送サイクル中に圧送チャンバ18内で発生する高圧により、上述の種類のポンプアッセンブリ内で、部品の高圧疲労という一つの問題が生じる。プランジャーがボア14内で往復し、燃料が圧送チャンバ18内で高い圧力レベルまで加圧されると、ポンプハウジング12内でパルス状引張応力が発生し、これにより亀裂が成長する。パルス状引張応力は、ポンプハウジング12内に二つの主要な作用を生じる。即ち、プランジャーボア14の周囲に亘って、特に圧送チャンバ18の近傍にフープ応力が作用し、プランジャーボア14の長さに沿って軸線方向応力が作用するのである。従って、パルス状引張応力及び高圧疲労を減少し、又はなくした、上文中に説明した種類のポンプアッセンブリを提供するのが有利である。
【0005】
GB2107801には、ピストンが往復動するボアが設けられたポンプハウジングを持つ別の種類の燃料噴射ポンプが記載されている。圧送チャンバはピストンボアの一端に形成されており、二つの軸線方向ボア(一方は低圧燃料用燃料入口であり、一方は高圧燃料用燃料出口である)が、ピストンと向き合った圧送チャンバの側部から、ポンプハウジングの上面まで延びている。バルブヘッド(又はブロック)がポンプハウジングの上面に直接的に着座しており、ポンプハウジングとバルブヘッドとの間に密封係合を形成するようにねじで所定の場所に固定されている。これにより、これらの構成要素間で燃料漏れが起こらないようにする。この構成では、バルブヘッドをポンプハウジングの上面の真上に取り付けることにより、圧送チャンバ内の燃料の圧力により生じる引張応力を実質的に相殺する。しかしながら、この構成においてフープ応力及び軸線方向応力を相殺する利点は、アッセンブリの大きさ、特に長さ(又は軸線方向高さ)を犠牲にして得られたものであり、既に混み合ったエンジン空間にパッケージ上の制限を追加して課すことになる。更に、この構成では、バルブヘッドは、高圧燃料(200MPa(2000バール)を越える圧力)の流れを制御するのに必要な出口バルブ部材を含む。この形態には、更に、圧送チャンバ内で発生した高圧燃料が、バルブヘッド(又はブロック)とポンプハウジングとの界面のところに形成された漏洩路を通って漏洩する場合があるという欠点がある。燃料漏れはポンプの性能にとって有害であり、及び従って、燃料漏れの危険又は実際の燃料漏れを軽減するのが望ましい。
【0006】
かくして、従来技術に関し、大きさを小さくした、エンジンのパッケージ上の要件に合った形状の燃料ポンプアッセンブリを提供するのが有利である。更に、燃料漏れを減少した又は燃料漏れが最小の燃料ポンプアッセンブリを提供するのが有利である。更に、軸線方向応力及び/又はフープ応力を減少した、又はなくした燃料ポンプアッセンブリを提供するのが有利である。かくして、本発明は、従来技術における問題点のうちの一つ又はそれ以上を減少する及び/又は解決することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】GB2107801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、全体として、特定の従来技術の装置の内部応力及び疲労を低減した、所望の形状及び大きさの(例えば従来技術と比較して小型であり、エンジンのパッケージの要件に合った有利な形態を有する)ポンプアッセンブリに関する。更に詳細には、本発明は、燃料によるポンプアッセンブリの応力及び疲労を相殺する圧縮力をアッセンブリに加える、ポンプアッセンブリ用のクランプ部材を含む。クランプ部材は、燃料により発生する応力の源である圧送チャンバ及び/又はプランジャーボアとほぼ軸線方向で整合したポンプアッセンブリの領域に圧縮力を及ぼすように形成されている。クランプ部材は、圧送チャンバ及び/又はプランジャーボアと軸線方向で整合していない領域でポンプハウジングに固定されるようになっている。本発明は、更に、高圧燃料出口バルブを別体のバルブブロックでなくポンプヘッド内に設けることによって高圧燃料の漏れを減少し、又はなくしたポンプアッセンブリに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かくして、本発明の一態様によれば、内燃エンジンで使用するためのポンプアッセンブリであって、圧送プランジャーが内部でプランジャー軸線に沿って往復動するボアが設けられたポンプハウジングであって、使用時に圧送プランジャーがボア内で往復動するとき、燃料が内部で比較的高いレベルまで加圧される、ボアの一端に形成された圧送チャンバと、ポンプハウジング内に収容された、圧送チャンバ内への燃料の流れを制御するため、圧送チャンバと流体連通した入口バルブとを含む、ポンプハウジングと、ポンプハウジングにクランプ負荷を加えるためのクランプ部材とを含み、クランプ負荷は、ボアのほぼ軸線方向上方に配置されたポンプハウジングの表面を通る、プランジャー軸線と整合した少なくとも一つの成分を含む、ポンプアッセンブリが提供される。このようにして、クランプ部材は、ポンプハウジングのプランジャーボアのすぐ近くに圧縮応力を発生し、圧送チャンバ内の加圧燃料によるポンプハウジング内の引張応力を相殺する。入口バルブをポンプハウジング自体の内部に収容することによって、別体のバルブハウジングを設ける必要がない。別体のバルブハウジングが設けられると、ポンプアッセンブリの大きさが大きくなる。更に、ポンプハウジングと別体のバルブハウジングとの間に高圧シールを形成できるように二つの別々の構成要素を注意深く機械加工する必要がない。このことは、入口バルブを高圧燃料に対してシールしなければならないため、重要である。
【0010】
入口バルブは、バルブ本体及びバルブヘッドを含むポペット型のバルブである。しかしながら、別の態様では、この他の種類のバルブ(例えばボールバルブ)を使用してもよい。バルブヘッドは、截頭円錐形又は部分球形の着座面と密封係合するため、截頭円錐形又は部分球形であってもよい。有利には、入口バルブの着座面は、ポンプハウジングの表面(例えば内面)によって形成される。幾つかの実施例では、入口バルブの少なくとも部分がポンプハウジング内に、別のバルブハウジングを必要としないように収容されている場合、入口バルブ全体がポンプハウジング内に封入され(又は収容され)なくてよいということは理解されよう。この場合、バルブヘッドが実質的にポンプハウジング内に収容されているので十分である。好ましい実施例では、弁座は、ポンプハウジングの圧送チャンバの表面によって(即ち、入口バルブが配置されたボアと圧送チャンバとの間の交差部に)形成される。便利には、入口バルブは、軸線方向でプランジャー軸線とほぼ整合してよい。
【0011】
クランプ部材は、便利には、本明細書中に記載されているように、少なくとも一つの適当な固定部材によってポンプハウジングに固定される。
別の態様では、圧送プランジャーが内部でプランジャー軸線に沿って往復動するボアと、圧送プランジャーがボア内で往復動するとき、燃料が内部で比較的高いレベルまで加圧される、ボアの一端に形成された圧送チャンバとを含むポンプハウジングが設けられた、内燃エンジンで使用するためのポンプアッセンブリが提供される。クランプ部材は、ポンプハウジングにクランプ負荷を加えるために設けられており、少なくとも一つの固定部材がクランプ部材をポンプハウジングに固定するために設けられている。少なくとも一つの固定部材は、ボア(又はプランジャー軸線)の半径方向外方に位置決めされており、圧送チャンバを通り且つプランジャー軸線に対して垂直な平面を通って即ちその下に延びる。クランプ部材は、クランプ負荷の少なくとも一つの成分がプランジャー軸線と整合し、ボアのほぼ軸線方向上方に配置されたポンプハウジングの外面を通り、圧送チャンバ内の加圧燃料によるポンプハウジング内の引張応力を相殺する圧縮応力を、プランジャーボアのすぐ近くでポンプハウジングに発生するように構成されている。適当には、少なくとも一つの固定部材はプランジャーボアと重なるように圧送チャンバの下を軸線方向に延びる。
【0012】
圧送サイクル中、圧送チャンバ内で発生する高い圧力(代表的には、コモンレール燃料ポンプの用途について、200MPaを越える圧力)により、ポンプハウジング内に、特にプランジャーボアのすぐ近くにパルス状引張応力が発生する。プランジャーボアの近傍でこれらの引張応力を圧縮応力によって相殺することにより、疲労破壊を減少でき、又はなくすことができる。本発明の別の利点は、固定部材をプランジャー軸線の半径方向外方に取り付けることによって、ポンプアッセンブリの軸線方向長さを減少できるということである。クランプ部材は、固定部材がボアの半径方向外方に取り付けられた場合でも、ボアの軸線方向上方の領域にクランプ負荷を及ぼすことができるように構成されている。
【0013】
本発明のこの態様又は任意の他の態様の一実施例では、ポンプハウジングは、内部にプランジャーボアが設けられたボア区分を含む。クランプ部材は、ボア区分のほぼ軸線方向上方に配置されたポンプハウジングの表面を通してポンプハウジングにクランプ負荷を加えるように構成されている。好ましくは、ボアは、圧送チャンバの少なくとも一部がヘッド区分内に形成されるようにポンプハウジングのヘッド区分内に延びる。従って、クランプ負荷は、圧送チャンバ及びプランジャーボアを含む、引張応力が最大のポンプハウジングの領域に加えられる。代表的には、必ずしもそうでなくてもよいが、ボア区分の直径は、ヘッド区分と比較して小さくてもよい。
【0014】
本発明のこの態様又は任意の他の態様の一実施例では、クランプ部材は、ポンプハウジングの外面と係合するための少なくとも一つの接触面(即ち主接触面)を含み、この接触面を通してポンプハウジングにクランプ負荷が加えられる。クランプ部材は、例えば、その内面(又は下面)に(即ちポンプアッセンブリの内部に)、接触面又は各接触面を形成する少なくとも一つの突出部を含んでいてもよい。適当には、クランプ部材は、ボアのほぼ軸線方向上方でポンプハウジングと係合する少なくとも一つの主接触面と、ボアの半径方向外方でポンプハウジングと係合する少なくとも一つの副接触面とを含む。有利には、パッケージ及び空間を考慮すると、クランプ部材は、盛り上がった中央領域及び周囲スカート(半径方向に延びる一つ又はそれ以上のフランジ)を持つように形成されたシルクハット形状であってもよい。この構成では、主接触面はクランプ部材の盛り上がった中央領域と関連し、副接触面はスカート(又はフランジ)と関連している。一実施例では、副接触面は、圧送チャンバとほぼ重なるか或いはその下にあるプランジャー軸線に対して所定の軸線方向高さでポンプハウジングの外面と係合する。一実施例では、接触面(即ち座)は圧送チャンバの軸線方向位置よりも下にある。即ち、プランジャーボアと重なる。
【0015】
ポンプハウジングの外面及びクランプ部材の内面が、使用時に低圧燃料を受け入れるための充填チャンバを形成してもよい。この充填チャンバから燃料が圧送チャンバに送出される。
【0016】
この実施例では、充填チャンバと連通するため、少なくとも一つの充填ポートがポンプハウジングの外面のところで開放している。クランプ部材には、好ましくは、少なくとも二つの突出部が設けられている。これらの突出部は、各々、隣接した充填ポート間の所定位置にポンプハウジングと係合するための接触面を形成する。この実施例及び他の実施例では、接触面は、好ましくは、円弧形態を備えていてよい。
【0017】
プランジャー軸線に沿ったクランプ負荷は、本発明の範疇に入る多くの方法で発生できる。一実施例では、クランプ負荷がばねを通してポンプハウジングに加えられるように、クランプ部材の内面とポンプハウジングの外面との間にばねを配置する。
【0018】
別の実施例では、クランプ部材は、ポンプハウジングにクランプ負荷が加えられたときに弾性変形する材料で形成されている。代表的には、クランプ部材は、降伏応力が1000MPa乃至1800MPaの材料で形成される。この場合、クランプ部材は、上述の実施例において、ばねとしての挙動を効果的に示す。
【0019】
更に別の実施例では、クランプ部材は、ポンプハウジングにクランプ負荷が加えられたときに塑性変形する材料で形成されている。この場合、クランプ部材は、代表的には、降伏応力が200MPa乃至600MPaの材料で形成される。
【0020】
クランプ負荷がポンプハウジングに加わったときに塑性変形する材料を使用することによる利点は、クランプ部材の形状のいかなる変化も、加えられたクランプ負荷及び従って圧縮応力にさほど重要な影響を及ぼさないということである。その結果、有利なことに、ポンプ毎のばらつきが抑えられ、圧送チャンバ内の高圧燃料により発生する引張応力を相殺する、ポンプハウジング内で発生する圧縮応力を更に正確に設定できる。
【0021】
少なくとも一つの固定部材(例えばボルト)をクランプ部材及びポンプハウジングに通し、クランプ部材をポンプハウジングにポンプハウジングの外周領域で固定するのが望ましい。
【0022】
第3の態様では、内燃エンジンで使用するためのポンプアッセンブリにおいて、圧送プランジャーが内部でプランジャー軸線に沿って往復動するボアが設けられたポンプハウジングと、ボアの一端に形成され、圧送プランジャーが使用時にボア内で往復動するとき、燃料が内部で比較的高いレベルまで加圧される圧送チャンバと、圧送チャンバ内の加圧燃料によりポンプハウジング内に発生した引張応力を相殺する圧縮応力を、プランジャーボアのすぐ近くで、ポンプハウジングに発生するように、少なくとも一つの成分がプランジャー軸線と整合したクランプ負荷を、ボアのほぼ軸線方向上方に配置されたポンプハウジングの表面を通してポンプハウジングに加えるためのクランプ部材とを含み、クランプ部材は、クランプ負荷がポンプハウジングに加えられたときに変形する材料で形成されている、ポンプアッセンブリが提供される。
【0023】
この第3の態様では、クランプ部材、ポンプハウジング、及び任意のこの他の要素は、上掲の第1及び第2の態様で言及したのと同じに定義できる。
第2及び第3の態様では、圧送チャンバ内への燃料の流れを制御するため、入口バルブが設けられていてよい。有利には、入口バルブは、別のバルブハウジングを必要としないようにポンプハウジング内に(少なくとも部分的に)収容されている。入口バルブ及びそのハウジングは、第1の態様で言及したのと同じである。
【0024】
本発明の任意の態様において、ポンプアッセンブリは、更に、圧送チャンバから出口通路への(比較的高圧の)燃料の送出を調節するため、圧送チャンバと連通した出口バルブを含んでいてもよい。有利には、出口バルブは、別のバルブハウジングでなく、ポンプハウジング内に収容される。これにより、別のハウジング部材に対する必要をなくす。出口バルブは、ボールバルブ等の任意の適当な種類のバルブであってもよい。適当には、出口バルブの着座面は、ポンプハウジングの表面によって形成される。着座面及びバルブの対応する表面は、截頭円錐形又は部分球形であってもよい。
【0025】
本発明は、特に、圧縮点火内燃エンジンのコモンレール燃料ポンプで使用されるが、この他の用途、特にポンプの構成要素内で高い引張応力が発生する場合に等しく使用される。
【0026】
逆のことが示されない限り、本発明の一態様に関して説明した特徴は、本発明のその他の任意の態様にも含まれ、特段の記載のない限り、実施例の特徴は、互いに組み合わせられてもよく、こうした組み合わせは、本発明の範疇に含まれると考えられるということは理解されよう。
【0027】
次に、本発明の好ましい実施例を添付図面を参照して例として説明する
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】上文中に説明した図1は、コモンレール燃料ポンプの既知のポンプアッセンブリを示す図である。
図2図2は、ポンプハウジング、圧送チャンバ、及びクランプ部材を含む、本発明の一実施例のポンプアッセンブリの断面図である。
図3図3は、図2のポンプアッセンブリのクランプ部材の斜視図である。
図4図4は、低圧燃料用の入口ポートを示す、図2のポンプハウジングの、クランプ部材が取り除かれた斜視図である。
図5図5は、クランプ部材の接触ゾーンがポンプハウジングと接触する場所を示す、図2のポンプハウジングの外面の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図2を参照すると、本発明の第1実施例の燃料ポンプアッセンブリ30は、大径のヘッド区分32a及びヘッド区分32aから下方に延びる小径のボア区分32bを持つポンプハウジングを含む。ポンプハウジングのボア区分32bにはボア34が設けられており、このボア34内に圧送プランジャー36が受け入れられる。ボア34は、ヘッド区分32aの中央部分内に延びており、圧送チャンバ38で終端する。ポンプハウジング32a及び32bは、図2に示す配向でポンプハウジングの下に配置された主ポンプハウジング(図示せず)に固定されている。従って、ポンプハウジング32a及び32bは、主ポンプハウジングのヘッドを効果的に形成する。
【0030】
圧送プランジャー36は、代表的には、エンジンが駆動するカム(図示せず)によって、又は当業者によく知られる任意の他の適当な手段によって駆動される。使用では、プランジャー36は、その駆動時にプランジャー軸線に沿ってプランジャーボア34内で往復動し、圧送チャンバ38内の燃料を加圧する。プランジャー36は、圧送サイクルを実行する。圧送サイクルは、比較的低レベルの燃料が圧送チャンバ38に送出されるサイクルの充填工程及び圧送チャンバ38内の燃料が比較的高いレベルまで、例えば200MPaを越える圧力まで加圧される圧送工程を含む。
【0031】
圧送チャンバ38には、プランジャー軸線と軸線方向で整合した入口バルブ40、40a、40bが設けられている。入口バルブは、バルブボア41を通って延びるバルブ本体40aと、バルブボア41と圧送チャンバ38との間の交差部のところでボア34が形成する弁座43と係合するバルブヘッド40bとを含み、圧送チャンバ38への燃料の流入を制御する。バルブヘッド40bは、バルブばね(図示せず)によって弁座に押し付けられており、充填工程中、ばね力に抗して弁座から離す方向に移動される。充填工程中、プランジャー36はボア34から後退しており、低圧燃料が圧送チャンバ38に送出される。
【0032】
ポンプハウジング自体が形成する弁座43にバルブヘッド40bが着座するということに着目されたい。これには、例えばGB2107801に例示した、ポンプハウジングに取り付けられた別体のバルブブロックにバルブ部材が設けられた変形例の設計を越える利点がある。これは、本構成により、漏洩の問題を引き起こす高圧シールの必要をなくすためである。上述のように、弁座43は截頭円錐形形態であり、バルブヘッド40bの対応する截頭円錐形表面と係合する。しかしながら、部分球形の着座面も適している。便利には、入口バルブはポペット型のバルブであるが、変形例では、ボールバルブ等の他のバルブを使用してもよい。例示の装置では、入口バルブ本体40aは一部だけがポンプハウジング内に収容されているということに着目されたい。しかしながら、変形例の構成では、入口バルブ全体がポンプハウジングに収容されていてもよい。
【0033】
ポンプハウジング32a、32bには、更に、加圧燃料を下流のコモンレール(図示せず)に供給するため、圧送チャンバ38から横方向にヘッド区分32aの外部分を通って延びる出口通路42が設けられている。出口通路42には、バルブばね(図示せず)によって閉鎖方向に押圧された出口バルブ44が設けられている。サイクルの圧送工程中、出口バルブ44をばね力に抗して開放し、圧送チャンバ38内で高い圧力レベルまで加圧された燃料を出口通路42を通してコモンレールに送出できる。
【0034】
更に図3及び図4を参照すると、ポンプハウジング32a、32bに被せられるクランプ部材46が提供される。クランプ46は全体にシルクハット構造を備えており、隆起した中央区分46a及び外スカート46bを有する。スカート46bは、ヘッド区分32aの外部分の上面に着座し、ここに四本のボルト(図2には、これらのボルト48のうちの二本だけが示してある)によって固定される。これらのボルトは、スカート46bの受け入れ穴47(図4にのみ示す)、ヘッド区分32aの外周領域、及び下側の主ポンプハウジングからなる整合した対を通って延びる。
【0035】
図示の実施例では、クランプの中央区分46aは、下方に延びる部分46c(図2にのみ示す)を含む。この下方に延びる部分46cは、以下に更に詳細に説明するように、複数の接触ゾーンを介してヘッド区分32aの中央部分の上面と係合する。ヘッド区分32aには、クランプ46をポンプハウジングに正しく位置決めすることにより、クランプ46が入口バルブばねと係合しないようにするガイド要素45が機械加工で形成されている。
【0036】
クランプ46の下面の残りの部分は、ポンプハウジング32aのヘッド区分32aの上面から間隔が隔てられており、クランプの下方に延びる部分46cの半径方向外方に配置された環状容積を形成する。この環状容積は、燃料用の充填チャンバ49を形成し、このチャンバから、燃料が、ポンプハウジングのヘッド区分32aに設けられた複数の入口通路(これらの入口通路50のうちの一つが図2に示してある)を介して、圧送チャンバ38に送出される。
【0037】
入口通路50は、バルブボア41から斜めに延び、充填チャンバ49と連通したポンプハウジングの上面に設けられたポート52(図4及び図5参照)で出る。代表的には、三つの入口通路50が設けられている(しかしながら、これよりも多数の又は少数の通路を使用してもよい)。これらの入口通路は、入口バルブ40a、40bを中心として等角度間隔位置に形成されている。しかしながら、入口通路50を等間隔でない位置に設けてもよい。
【0038】
図5を更に参照すると、ポンプハウジングには、供給通路(図示せず)が更に設けられている。供給通路の一端は、ヘッド区分32aの上面を出て、充填チャンバ49に繋がる追加のポート54を形成する。供給通路の他端は、低圧の上流燃料源(例えば移送ポンプ)と連通する。チャンバ49からの望ましからぬ燃料漏れを阻止するため、充填チャンバ49には、O−リングシール56が配置されている。チャンバ49が比較的低圧の燃料だけを収容し、高圧インターフェース及びシールがポンプハウジング自体の内部に形成されるため、O−リングシールが使用可能であるということに着目されたい。この構成は、少なくとも、ポンプアッセンブリでの燃料漏れをなくすか或いは少なくとも低減するのを補助する。
【0039】
クランプ46の下方に延びる部分46cの接触ゾーンの形状及び位置は、ポート52、54がポンプハウジング32aの上面を出る位置で決まる。例示の実施例では、下方に延びる部分46cは本質的に環状であり、円弧形態の三つの接触ゾーン58を形成する。これらの接触ゾーンは、ポート52、54間に散在する位置で、プランジャーボア34の軸線方向上方に配置されたポンプハウジング32aの対応する形状の領域と係合する。
【0040】
例示の実施例の変形例では、ハウジングの上面に二つのポートしか設けられていない場合には、クランプ部材の下方に延びる部分に二つの接触ゾーンを設けるだけでよい。充填チャンバが圧送チャンバの軸線方向上方に配置されているのでなく、圧送チャンバの一方の側に配置された更に別の実施例では、クランプ部材の下方に延びる部分は、単一の中断していない接触ゾーンをポンプハウジング32a内に形成してもよい。中断していない接触ゾーンは、便利には、リング形状である。
【0041】
ポンプの組み立て時に、先ず最初に、クランプ46の下方に延びる部分46cを、接触ゾーン58を介してヘッド区分32aの上面と係合するまでガイド要素45を使用してヘッド区分32a上に案内することにより、クランプ46をヘッド区分32aの上面上に置く。この段階で、スカート46bの下面と、対向するヘッド区分32aの上面との間に隙間が存在する。ボルト48をヘッド区分32aの受け入れ穴47及び主ポンプハウジングのねじを備えた対応する受け入れ穴に通して配置する。ボルトを締めると、クランプ46が弾性変形を開始し、隙間を閉じる。
【0042】
クランプ46が変形するとき、プランジャーボア34の上方のヘッド区分の上面と係合する接触ゾーン58を通してポンプハウジングのヘッド区分32aにクランプ負荷が加わる。クランプ負荷は、少なくとも、プランジャー軸線と軸線方向に整合した成分を有し、従って、接触ゾーン58の下のポンプハウジングの領域に軸線方向圧縮応力が発生する。換言すると、圧送チャンバ38の近傍の、即ちすぐ近くの領域でポンプハウジングのヘッド区分32aに軸線方向圧縮応力が発生する。ひとたび隙間が閉鎖すると、ヘッド区分32aに加わる接触力は、ボルト48を更に締め付けた場合でも実質的に同じままである。従って、ボルトを締め付けることによってポンプハウジングに発生する軸線方向圧縮応力は、クランプ46とヘッド区分32aとの間の初期隙間で決まる。
【0043】
クランプ46が発生した軸線方向圧縮応力は、圧送チャンバ38内に発生した高い圧力によりプランジャーボア34の近傍のポンプハウジングの領域に発生した軸線方向引張応力を相殺する。代表的には、例えば、圧送チャンバ38内の燃料圧力は、コモンレールの用途については、200MPaを越えるレベルまで上昇し、ポンプハウジング32a、32b内に高いパルス状引張応力を発生する。本発明は、ボルト48を通してポンプハウジングにクランプ負荷が加えられる図1に示す既知のポンプ構成とは異なり、引張応力が最大のポンプハウジングの最も壊れ易い領域に影響を及ぼさない。従って、本発明は、ポンプハウジング内の軸線方向引張応力により生じる疲労破壊等の問題点を実質的になくす。
【0044】
クランプ46は、ボルト48を締め付けるときにクランプ46が弾性変形することによりクランプ負荷を増大するように、降伏応力が、代表的には、1000MPa乃至1800MPaの焼入鋼及び焼戻鋼(例えばばね鋼)から形成されてもよい。従って、クランプ46は、ボルト48を締め付けたとき、ばねとして有効に作用する。クランプ46の変形の程度が大きければ大きい程、クランプ負荷及びこれにより発生する圧縮応力が大きくなる。製造許容差のため、スカート46bとヘッド区分32aの外部分との間の隙間がポンプアッセンブリによって異なり、そのため、クランプ負荷(及び従って、発生する圧縮応力)が僅かに異なる。
【0045】
本発明の別の実施例(図示せず)は、クランプ負荷を提供するため、プランジャーボア34のほぼ真上の領域でクランプ46とヘッド区分32aとの間に配置された(例えばこれらの間に挟まれた)ばねを使用する。しかしながら、この実施例は、ばねの剛性及びばねの長さの変化の影響を受け易い。クランプ46とポンプハウジング32a、32bとの間の隙間は、製造許容差により僅かに異なり、ばねの長さもまたポンプアッセンブリによって僅かに異なり、そのため、ばね力及び従ってクランプ負荷は、ばね定数に応じて僅かに異なる。ばねは、更に、ポンプアッセンブリの全体としての大きさを増大し、従って、比較的小さい空間に適用する上では好ましい実施例ではない。
【0046】
更に別の実施例では、クランプ46は、降伏応力が200MPa乃至600MPaの軟鋼から形成されてもよい。この場合、ボルト48を締め付けてスカート46aとヘッド区分32aの外部分との間の隙間が閉鎖すると、クランプ46が変形する。しかしながら、この場合、クランプ46は、隙間の閉鎖前にその弾性変形限度に達する材料特性を有し、従って、ボルト48を更に締め付けると塑性変形する。クランプ46がその弾性変形限度に達する点が、接触ゾーン58を通してポンプハウジングに加えられるクランプ負荷を決定する。従って、軟鋼を使用することは、クランプ46とヘッド区分32aとの間の隙間の変化の影響を受け難くするという点で有利である。更に、軟鋼には、比較的低価格であるという利点がある。
【0047】
入口バルブ40a、40bが圧送チャンバの軸線方向上方に配置されておらず、チャンバの一方の側に配置されたポンプアッセンブリ(例えばEP1629191A1参照)では、上文中に説明したのと同じ利点が得られるようにクランプが設けられて、このクランプがプランジャーの中央軸線と軸線方向に整合した一つまたは複数の接触ゾーンを介してポンプハウジングと係合してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、ディーゼルエンジン用コモンレール燃料ポンプ以外の用途があり、特に圧送チャンバ内で高い圧力が発生するこの他のポンプの用途で使用してもよいということは理解されよう。
【符号の説明】
【0049】
32a ヘッド区分
32b ボア区分
34 ボア
36 圧送プランジャー
38 圧送チャンバ
40 入口バルブ
40a バルブ本体
40b バルブヘッド
41 バルブボア
42 出口通路
43 弁座
44 出口バルブ
45 ガイド要素
46 クランプ部材
46a 中央区分
46b 外スカート
47受け入れ穴
48 ボルト
49 充填チャンバ
50 入口通路
図1
図2
図3
図4
図5