特許第5769713号(P5769713)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5769713タービンリングを支持するデバイス、そのようなデバイスを有するタービン、およびそのようなタービンを有するタービンエンジン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769713
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】タービンリングを支持するデバイス、そのようなデバイスを有するタービン、およびそのようなタービンを有するタービンエンジン
(51)【国際特許分類】
   F01D 11/08 20060101AFI20150806BHJP
   F01D 9/04 20060101ALI20150806BHJP
   F02C 7/18 20060101ALI20150806BHJP
   F01D 25/12 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   F01D11/08
   F01D9/04
   F02C7/18 A
   F01D25/12 E
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-527329(P2012-527329)
(86)(22)【出願日】2010年9月2日
(65)【公表番号】特表2013-504003(P2013-504003A)
(43)【公表日】2013年2月4日
(86)【国際出願番号】EP2010062914
(87)【国際公開番号】WO2011026921
(87)【国際公開日】20110310
【審査請求日】2013年8月14日
(31)【優先権主張番号】0956049
(32)【優先日】2009年9月4日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501107994
【氏名又は名称】ターボメカ
【氏名又は名称原語表記】TURBOMECA
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モレンヌ,クリストフ−オリビエ
(72)【発明者】
【氏名】パルド,フレデリク・フイリツプ・ジヤン−ジヤツク
【審査官】 佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0232752(US,A1)
【文献】 米国特許第4786232(US,A)
【文献】 米国特許第4251185(US,A)
【文献】 特開2009−121461(JP,A)
【文献】 特開2006−342811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 11/08−24
F01D 9/00−06
F01D 25/12、14、24
F02C 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン(1)のリング(5)のための支持デバイスと、上流から下流に流れるガス流(G)によって駆動されるタービン(1)の動翼(3)を取り囲んでいるタービンリング(5)とによって構成された集合体であって、
前記支持デバイスは、
溝が下流方向に開いたリング(5)の上流溝(8)内に収容される上流を向いた少なくとも1つの上流フック(12)と、
溝が上流方向に開いたリング(5)の下流溝(10)内に収容される下流を向いた少なくとも1つの下流フック(13)とを備えており、
上流フック(12)と下流フック(13)との間には、加圧空洞(C)が形成され、加圧空洞(C)には冷却ガスが供給され、
上流フック(12)が、上流支持部分(14)から内側に向かって延在する半径方向壁(12a)と、半径方向壁(12a)の内側端部から上流方向に延在する長手方向壁(12b)とを含み、下流フック(13)が、下流支持部分(15)から内側に向かって延在する半径方向壁(13a)と、半径方向壁(13a)の内側端部から下流方向に延在する長手方向壁(13b)とを含み、
前記支持デバイスがさらに、上流フック(12)の半径方向壁(12a)の上流に、上流フック(12)を冷却する冷却ガスを注入する手段(16)を備え、かつ/または、下流フック(13)の半径方向壁(13a)の下流に、下流フック(13)を冷却する冷却ガスを注入する手段(17、18)を備え、前記手段は、この注入が前記加圧空洞を通過することなく行われるように構成され、
前記タービンリング(5)は、
溝が下流方向に開いた上流溝(8)と、
溝が上流方向に開いた下流溝(10)とを備え、
リング(5)の上流溝(8)が上流フック(12)と接触する曲面(8’)を含み、かつ/またはリング(5)の下流溝(10)が下流フック(13)と接触する曲面(10’)を含み、
前記集合体がさらに、リング(5)と上流フック(12)との間をガス密閉するように構成され、リング(5)の上流溝(8)内に収容される少なくとも1つの上流封止部(21)を備え、かつ/またはリング(5)と下流フック(13)との間をガス密閉するように構成され、リング(5)の下流溝(10)内に収容される少なくとも1つの下流封止部(22)を備えることを特徴とする、前記集合体
【請求項2】
上流フック(12)を備える上流支持部分(14)と下流フック(13)を備える下流支持部分(15)とを備え、上流支持部分(14)と下流支持部分(15)が一部片であり、リング(5)が少なくとも2つのリングセクター(5)に分割されている、請求項1に記載の集合体。
【請求項3】
上流支持部分(14)と下流支持部分(15)が、支持部分(14、15)同士を互いに滑動させ、収縮嵌めすることによってリング(5)が取り付けられるように構成される、請求項2に記載の集合体。
【請求項4】
上流フック(12)を備える上流支持部分(14)と下流フック(13)を備える下流支持部分(15)とを備え、リング(5)が一部片であり、下流支持部分(15)が一部片であり、上流支持部分(14)が少なくとも2つの上流支持部分(14)セクターに分割されている、請求項1に記載の集合体。
【請求項5】
求項からのいずれか一項に記載の集合体を備えるタービン。
【請求項6】
請求項に記載のタービンを備えるターボシャフトエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスタービンの分野、より具体的にはタービンリングおよびそれらの支持デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
飛行機またはヘリコプタなどの航空機用のターボシャフトエンジンは一般的に、ガス流の方向に上流から下流に、ファンと、1つまたは複数の圧縮機段、例えば低圧圧縮機および高圧圧縮機と、燃焼室と、1つまたは複数のタービン段、例えば高圧タービンおよび低圧タービンと、排気ノズルとを備える。圧縮機ごとに1つのタービンが対応する場合があり、2つはシャフトによって接続されて、例えば高圧スプールおよび低圧スプールを形成する。異なった構成では、ターボシャフトエンジンは、圧縮機に接続された第1のタービンと、例えばヘリコプタのロータなどを駆動するシャフトに接続される第2の「自由」タービンとを備える場合がある(したがって、圧縮機に接続された第1タービンは一般的に高圧タービンに指定される)。
【0003】
以下では、「高圧」という用語は「HP」という頭字語によって、「低圧」という用語は「BP」という頭字語によって表わされる。
【0004】
HPタービンは燃焼室の出口に位置付けられる。これは1つまたは複数の段の翼を備え、各段は一般的に、知られている方法で、HPタービンノズルとして知られる静翼車と動翼車とを備える。動翼車は、燃焼室から出るガス流によってターボシャフトエンジンの軸線を中心に回転駆動され、回転のためにターボシャフトエンジンのHPシャフトと一体である。それ自体はHP圧縮機の動翼車と一体である。HPタービンの動翼車の位置のガスストリームの外部はリングの形態のケーシングによって画定される。ケーシングは動翼の周囲に延在し、従来から「タービンリング」という用語によって表わされている。このリングは一部片である場合も、リングセクターにセクター化される場合もある。以下では特に規定がなされない限り、「リング」という用語はこれら2つの可能性の両方、即ち一部片のリングまたはリングセクターにセクター化されたリングのいずれかをも意味する。リングは、リング支持体として知られる部品によって支持され、ターボシャフトエンジンの静止構造部に接続される。
【0005】
動翼が回転することを可能にするために、動翼の半径方向端部と静止タービンリングとの間に間隙が設けられる。前記間隙は翼の半径方向端部と対向して延在する。この間隙が大きい程、HPタービン、したがってターボシャフトエンジンの効率が低下する。これは、燃焼室から出るガス流の一部がこの間隙内へと流れて、タービンの動翼車の回転駆動に寄与しないことによる。
【0006】
HPタービンの区域は、とりわけその位置が燃焼室下流にあることから、大きな熱的ストレスに晒される。この区域の部品は、別個の少なくとも4つの熱的ストレスに晒される:
圧縮機に由来する冷却ガス流の熱対流、
ガスストリームからの、互いに接触し合う部分を通る、熱の移動から生じる熱伝導、
ターボシャフトエンジンの高温部分、特に燃焼室とHPタービンの位置のガスストリームとに由来する熱放射、および
ガスストリームのガス流からの大きな熱対流。これは、ガス流の一部がガスストリームから逃げ、タービンリングとリングの外側のその支持部分との間の接合部の位置で進入する際に悪化する場合がある(したがってこれは、ガスストリームの「再取り込み」または迂回として知られ、タービンリングに対して熱的崩壊とともにエンジン効率の損失をも引き起こされ、これは主ガスストリームからのガスの一部がその正常なコースを辿るのではなく、迂回路を経て通過することによる)。
【0007】
これらの様々な熱的ストレスは、異なったレベルの膨張(関係する様々な部分間の)と静止部分内の温度勾配とをもたらし、それらは管理するのが困難である。とりわけ、ガスストリームの外側のガスの再取り込みによる熱対流に関連付けられる作用は、モデル化するのに複雑である。燃料消費量を軽減するという目的に関連付けられるエンジン出力の開発が、今日のターボシャフトエンジンの燃焼室から出るガスの温度の上昇をもたらすこと考えると、この現象は一層顕著となる。
【0008】
翼先端部とタービンリングの間隙を制御するために様々な手段が提案されている。例えば欧州特許第1,475,516号明細書は、特定の弾性を有する構造ケーシング(リング支持部分が取り付けられる)を提案している。したがってその形状は、異なったエンジンの動作モードでそれが受ける圧力に依存し、そのようにして翼先端部の位置の間隙の調整を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第1,475,516号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ガスストリームの特徴の安定性を長期間にわたって保証するために、タービン翼先端部のところの間隙のより充分な制御と、部品の経年耐久性の向上とを可能にするタービンリング用支持デバイスを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的のために、本発明は、ガスタービンのリング用の支持デバイスにして、リングは、上流から下流に流れるガス流によって駆動されるタービンの動翼を格納することを目的とする、デバイスであって、溝が下流方向に開いたリングの上流溝内に収容されるように意図された上流に向いた少なくとも1つの上流フックと、溝が上流方向に開いたリングの下流溝内に収容されるように意図された下流に向いた少なくとも1つの下流フックとを備え、上流フックの上流に、上流フックを冷却する冷却ガスを注入する手段(例えばオリフィス)を備え、かつ/または下流フックの下流に、下流フックを冷却する冷却ガスを注入する手段(例えばオリフィス)を備えるデバイスに関する。
【0012】
本発明によって、支持デバイスのフックはそれぞれリングの溝内に収容され、したがってリング自体によってガス流から保護され、そのようにしてタービンの動作モードに関わらずにそれらが一定の形状を保持することを保証する。これは、発生する温度変化がそれらに対して小さな影響しか有さないことによる。このような方法でフックの完全性を保証することは、変化および完全性が長期間にわたってより良好に管理されることから、翼先端部とリングの間の間隙の制御をし易くし、したがって向上させる。冷却ガスを注入する手段は、上流フックおよび/または下流フックの耐熱完全性をより良好に保証し、そのようにしてさらに、過渡的な熱的動作モードの最適化を可能にする。
【0013】
有利な実施形態によると、冷却ガスは、タービンの動翼の上流側のガス流のガス圧力以上の圧力にある。このようにして、冷却ガスは、リングの上流側を経るガス流からのガス再取り込みの可能性に対してバリアとしての働きもする。
【0014】
有利な一実施形態によると、冷却ガスは、タービンの動翼の下流側のガス流のガス圧力以上の圧力にある。このようにして、冷却ガスは、リングの下流側を経るガス流からのガス再取り込みの可能性に対してバリアとしての働きもする。
【0015】
有利な一実施形態によると、デバイスは、2つのフックの間に、冷却ガスが供給される加圧空洞を形成するように構成される。したがって、空洞がフックをタービンのガス流から保護すると考えると、これらのフックはより充分に保護される。とりわけ、加圧空洞の圧力は、タービンの動翼の上流側のガス流の圧力以上であり、そのようにしてガス流に由来するガスの再取り込みを回避する。このような加圧空洞の形成はリングの特有の形状によって可能になる。これは、以下に明記されるものなどの可能な密閉手段の存在によって向上される。
【0016】
有利な一実施形態によると、リングの上流溝は上流フックと接触する曲面を有する(ターボシャフトエンジンの軸線であるリングの軸線に対して軸方向断面で)。
【0017】
有利な一実施形態によると、リングの下流溝は下流フックと接触する曲面を有する(ターボシャフトエンジンの軸線であるリングの軸線に対して軸方向断面で)。
【0018】
有利な一実施形態によると、デバイスは、リングと上流フックの間のガス密閉性を保証するように構成された、リングの上流溝内に収容される少なくとも1つの上流封止部を備える。このような封止部はデバイスのガス密閉性を向上させることを可能にする。このことは、加圧空洞が上流フックと下流フックの間に形成される場合に、かつ/または上流の冷却ガスが、上流フックの上流のタービンのガス流のガスに対するバリアを形成するように意図されている場合にとりわけ有利である。このような封止部はさらに、リングを軸方向位置および半径方向位置に維持するのに寄与することができる。
【0019】
有利な一実施形態によると、デバイスは、リングと下流フックの間のガス密閉性を保証するように構成された、リングの下流溝内に収容される少なくとも1つの下流封止部を備える。このような下流封止部は上流封止部と同じ利点を下流側に提供する。
【0020】
好ましい実施形態によると、上流封止部および/または下流封止部は耐火性材料の編組状封止部のタイプの封止部である。このような封止部はガス密閉性をさらに向上させるとともに、有利にリングを軸方向位置および半径方向位置に維持するのに寄与する。
【0021】
有利な一実施形態によると、デバイスは、リングの上流側に、動翼の上流に延在するタービンの分配ケーシングの外側で流れるガスに対してガス密閉性である周囲封止部を備える。
【0022】
有利な一実施形態によると、デバイスは、上流フックを備える上流支持部分と、上流支持部分とは別個の、下流フックを備える下流支持部分とを備える。
【0023】
特定の一実施形態によると、この場合、上流支持部分と下流支持部分は一部片であり、環状であり、リングは少なくとも2つのリングセクターにセクター化される。
【0024】
この場合、上流支持部分と下流支持部分は、支持部分同士を互いに滑動させ、収縮嵌めすることによってリングが取り付けられるように構成されることが好ましい。これはリングの軸方向および半径方向の位置決めを保証する。この取り付けは、上述のものなどの上流封止部と下流封止部の存在によって容易にされる。前記封止部は、リングをその支持部分上で半径方向位置および軸方向位置で維持することに寄与することが可能である。
【0025】
少なくとも1つの封止ワッシャが、連続した2つのリングセクターに接触した表面同士の界面で、この目的のために設けられた溝内に、配置される。特定の一実施形態によると、このワッシャは、冷却ガスが、フック同士の間に形成された加圧空洞からガス流に向かって逃げることを可能にするように構成される。このような逃げは、ガスが反対方向に循環すること(即ちタービンのガス流の外側へのガスの逃げ)を防止し、冷却ガスのパージングを可能にする。
【0026】
他の特定の実施形態によると、リングは一部片、環状であり、下流支持部分は一部片、環状であり、上流支持部分は少なくとも2つの支持部分セクターにセクター化される。
【0027】
特定の一実施形態によると、この場合、下流フックの最小半径は上流フックの最小半径よりも大きい。このような径の差は、それらの間に異なった要素を取り付けることをし易くする。
【0028】
本発明はさらに、上流から下流に流れるガス流によって駆動されるタービンの動翼を格納することを目的としたガスタービンリングであって、上述の支持デバイスによって支持されるように意図され、上流に向いた、支持デバイスの少なくとも1つの上流フックを受け取るための下流方向に開いた上流溝と、下流に向いた、支持デバイスの少なくとも1つの下流フックを受け取るための上流方向に開いた下流溝とを備える、リングに関する。
【0029】
本発明は、上述の支持デバイスを備えるタービンにも関する。
【0030】
本発明は、そのようなタービンを備えるターボシャフトエンジン(またはターボジェットエンジン)にも関する。
【0031】
本発明は、本発明の好ましい実施形態についての以下の説明を添付図面参照の上読めば、より充分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1の好ましい実施形態によるタービンリングおよびその支持デバイスの軸方向断面摸式図である。
図2】冷却ガス流を示す、図1のリングおよび支持デバイスの詳細摸式図である。
図3】本発明の第2の好ましい実施形態によるタービンリングおよびその支持デバイスの軸方向断面摸式図である。
図4a図3のリングおよび支持デバイスの取り付けに伴う一ステップを表わす摸式図である。
図4b図3のリングおよび支持デバイスの取り付けに伴う一ステップを表わす摸式図である。
図4c図3のリングおよび支持デバイスの取り付けに伴う一ステップを表わす摸式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1を参照すると、例えば飛行機またはヘリコプタで使用するためのターボシャフトエンジンが、ガスの流れの方向で上流から下流に、ファン、BP圧縮機、HP圧縮機、燃焼室、HPタービン1、BPタービン、および排気ノズルを備える。BPタービンはBPシャフトによってBP圧縮機に接続されて、BPスプールを形成し、HPタービンはHPシャフトによってHP圧縮機に接続されて、HPスプールを形成する。
【0034】
本発明について、上述のタイプのターボシャフトエンジンのHPタービン1に関して、一方の図1および図2、他方の図3から図4cのその実施形態を参照して説明がなされる。当然ながら、本発明は、熱的ストレスに晒される任意のタービンに適用され、とりわけ、HP圧縮機に接続されるHPタービンとヘリコプタのロータを駆動するシャフトに接続される自由タービンとを備えるヘリコプタターボシャフトエンジンのタービンに適用される(したがって本発明はHPタービンに適用されることが好ましいが、自由タービンにも適用される)。本発明は他のタイプのタービンにも適用されてよい。
【0035】
HPタービン1は、HPタービンノズルとして知られる静翼車2と、上流方向から下流方向に燃焼室から流れるガス流Gによって回転駆動される動翼車3とを備える。動翼車3は、ターボシャフトエンジンの軸線である軸線Aを中心に回転する。
【0036】
内側(または内部)と外側(または外部)の概念は、ターボシャフトエンジンの軸線Aに対して規定される。内側(または内部)に位置付けまたは配向されるということは、ターボシャフトエンジンの軸線Aに向けて位置付けまたは配向されることを意味すると理解されている。さらに半径方向と長手方向の概念は、ターボシャフトエンジンの軸線Aに対して規定され、上流と下流の概念はガスの流れの方向に対して規定される。
【0037】
知られている方法で、HPタービン1の位置のガスストリームは、外側で、タービンノズルの静翼2が固定される環状ケーシング4(従来から当業者によって「外側経線」として知られる)と、ケーシング4の下流に取り付けられ、動翼3を格納するケーシングを形成する、タービンリング5として知られるリング5とによって画定される。
【0038】
タービンリング5はその周囲全体にわたって環状、即ち360°である。図1および図2の実施形態では、これは複数のリングセクター5(当該例では10個前後のセクター)に切断される。これらのセクター5は端と端を接して並置されて全体リング5を形成する。リングはセクター化リング5として知られる。
【0039】
図1および図2の実施形態についての説明の残りの部分では、リングセクター5の形状について説明がなされる。リング5は軸対称である(これは回転対称の要素である)と理解されている。説明を単純化するために、ここではリング5およびリングセクター5の概念は融合されている。言い換えれば、リングの構造について述べられた特色は一部片のリングに、あるいは代替え的に、リングセクターにセクター化されたリングに当てはまる。1つのリングセクターは、セクター化された形において、即ち小さな円周範囲にわたってではあるが、究極的に、全体リングと同じ形状を有するリングの一部位にすぎないと理解されている。
【0040】
リング5は、ガスストリームの外側の限界を画定する内壁6を備える。翼3の半径方向先端部はこの壁6から距離eのところまで延在し、この距離は翼3の先端部とリング4の間の間隙eに対応する。これを可能な限り最善の度合いに制御し、長期間にわたって管理することが可能であることが望まれる。リング5は、上流溝8を画定する上流ショルダ7と、下流溝10を画定する下流ショルダ9とをさらに備える。
【0041】
上流溝8は下流方向に開いている。この目的のために、上流ショルダ7は、リング5の内壁6から外側に向かって延在する半径方向壁7aと、半径方向壁7aの外端部から下流方向に延在する(当該例ではそれに対して垂直に)長手方向壁7bとを備える。
【0042】
下流溝10は上流方向に開いている。この目的のために、下流ショルダ9は、リング5の内壁6から外側に向かって延在する半径方向壁9aと、半径方向壁9aの外端部から上流方向に延在する(当該例ではそれに対して垂直に)長手方向壁9bとを備える。
【0043】
ターボシャフトエンジンはリング5用の支持デバイス11を備える。このデバイス11は、リング5の上流溝8内に収容される、上流方向に向いた上流フック12と、リング5の下流溝10内に収容される、下流方向に向いた下流フック13とを備える。したがってリング5はフック12、13によって定位置内に支持および保持される。
【0044】
より具体的には、フック12、13の形状は環状であり、図1および図2の実施形態では、リング5の周囲全体にわたって(即ち全てのリングセクター5の周囲にわたって)一部片を成す。
【0045】
ここに示された実施形態では、フック12、13は軸対称である。代替え方法として、フック12、13は透かし目模様(openwork)の構造であってよく、かつ/または円周上に分配された別個の複数のフックを備えてもよい。
【0046】
上流フック12は、全体に長手方向円筒形状(ターボシャフトエンジンの軸線Aに沿って)の上流支持部分14によって支持される。上流支持部分14は、ここで示されない方法で(例えば静止構造部上で相補的フランジにねじ込まれる固定フランジなどによって)ターボシャフトエンジンの静止構造部に接続される。フック12は、上流支持部分14から内側に向かって延在する半径方向壁12aと、上流方向に半径方向壁12aの内側端部から延在する(当該例ではそれに対して垂直に)長手方向壁12bとを備える。
【0047】
下流フック13は、全体に長手方向円筒形状(ターボシャフトエンジンの軸線Aに沿って)の下流支持部分15によって支持される。下流支持部分15は、ここで示されない方法で(例えば静止構造部上で相補的フランジにねじ込まれる固定フランジによって)ターボシャフトエンジンの静止構造部に接続される。フック13は、下流支持部分15から内側に向かって延在する半径方向壁13aと、下流方向に半径方向壁13aの内側端部から延在する(当該例ではそれに対して垂直に)長手方向壁13bとを備える。
【0048】
上流フック12と下流フック13は、それぞれリング5の上流溝8と下流溝10に収容されてリング5を定位置内に保持し、そのようにしてリング5自体によって、より具体的にはその内壁6と、ショルダ7、9を形成して溝8、10をそれぞれ提供する壁(7a、7b)(9a、9b)とによって熱的に保護される。
【0049】
図2を参照すると、上流溝8は上流フック12と接触する表面8’を有する。当該例では、この接触表面8’の軸方向断面の形状は曲線であって、例えば製造許容差になどによって起こり得る取り付け誤差に関係なく、リング5の上流フック12上での安定した位置決めを可能にする。
【0050】
下流溝10は下流フック13と接触する表面10’を有する。当該例では、この接触表面10’の軸方向断面の形状は曲線であって、上流フック12について以上に説明されたように、リング5の下流フック13上での安定した位置決めを可能にする。
【0051】
上流支持部分14は冷却用オリフィス16を備える。冷却用オリフィス16は、冷却ガス(例えば圧縮機から到来する)を上流支持部分14の外側から上流フック12に向けて注入して、上流フック12を冷却することを可能にする(冷却ガスはリング5の上流ショルダ7の冷却も可能にする)。この上流の冷却ガス流は図2の矢印G1によって表わされる。リング5によって保護される上流フック12はこのようにして冷却され、これがその熱的安定性をさらに向上させ、支持デバイス11の軸対称要素の半径方向の動きを制御することを可能にし、このようにして、とりわけリング5も冷却されることから、翼先端部3とリング5の間の間隙eの制御をし易くする。
【0052】
下流支持部分15は冷却用オリフィス17を備える。冷却用オリフィス17は、冷却ガス(例えば圧縮機から到来する)を下流支持部分15の外側から下流フック13に向けて注入して、下流フック13を冷却することを可能にする(冷却ガスはリング5の下流ショルダ9の冷却も可能にする)。この下流の冷却ガス流は図2の矢印G2によって表わされる。当該例では、上流支持部分14と下流支持部分15は冷却オリフィス17の区域で部分的に重複することから、上流支持部分14にも下流フック13からの冷却ガスを通過させるためのオリフィス18が形成される。リング5によって保護される下流フック13はこのようにして冷却され、そのことがその熱的安定性をさらに向上させ、支持デバイス11の軸対称要素の半径方向の動きを制御することを可能にし、このようにして、とりわけリング5も冷却されることから、翼先端部3とリング5の間の間隙eの制御をし易くする。
【0053】
上流フック12と下流フック13の同時冷却はとりわけ有利である。したがってリング5は、それによって保護されさらに冷却される手段12、13によって支持されることができる。即ち、例えば動作モードの変化などに関連付けられる熱変動に関わらずに極めて良好な構造的安定性を呈示する。
【0054】
当該例では、上流フック12と下流フック13の半径方向壁12a、13aはさらに、上流支持部分14の長手方向壁の一部位とリング5の長手方向壁6の一部位とともに、加圧された格納空間Cを形成するように構成される。図2でより具体的に注目されるが、フック12、13の半径方向壁12a、13aはそれぞれ、それらの内端部で、リング5の長手方向壁6と接触するリップ12a’、13a’分だけ延長される。接触リップ12a’、13a’は透かし目模様の半径方向壁である。
【0055】
加圧空洞Cには、冷却オリフィス19の位置で注入される冷却ガスが供給される。図2で、この冷却ガスは矢印G3によって表わされる。冷却ガスはフック12、13ならびにリング5、とりわけその長手方向壁6を冷却する。
【0056】
当該例では、上流支持部分14の外側で、加圧空洞Cの位置に、環状の穿孔シート20が取り付けられる。これは、ガス衝突(矢印G4によって表わされる)によって上流支持部分14を冷却し、加圧空洞Cに供給する冷却ガス流の速度G3を調節するためのものである。このシート20によってもたらされるガス衝突は、上流の冷却ガス流G1と下流の冷却ガス流G2と組み合わされて、支持デバイス11の軸対称要素の半径方向の動きを熱力学的に制御することを可能にし、そのようにして翼先端部3とリング5の間の間隙eを最適化することを可能にする。
【0057】
上流フック12の上流端部とリング5の上流溝8の表面との間で、前記溝の内側に、上流O−リング封止部21が取り付けられる。前記封止部は、上流接触リップ12a’、リング5の長手方向壁6、および上流フック12と一緒に空洞C1を形成する。前記封止部21は、加圧空洞Cの上流側の密閉性を向上させる(空洞C1は、上流接触リップ12a’の孔を介して加圧空洞Cと連通する)。
【0058】
下流フック13の下流端部とリング5の下流溝10の表面との間で、前記溝の内側に、下流O−リング封止部22が取り付けられる。前記封止部は、下流接触リップ13a’、リング5の長手方向壁6、および下流フック13と一緒に空洞C2を形成する。前記封止部22は、加圧空洞Cの下流側の密閉性を向上させる(空洞C2は、下流接触リップ13a’の孔を介して加圧空洞Cと連通する)。
【0059】
当該例では、O−リング封止部21、22は「編組状封止部」として知られるタイプである。即ちこれらはそれぞれ、一緒に編み組みされた複数のストランドから形成され、当該例では、ストランドは、リング5が受ける高温度において機械的特徴を保持する耐火性材料で形成される。ここで説明される実施形態では、各封止部21、22はリングセクター5と同じようにセクター化される。代替え方法として、各封止部21、22は、異なるリングセクター5の間でリング5の円周全体にわたって延在してよい。
【0060】
リング5用の支持デバイス11は、上流支持部分14の上流フランジ24によって支持される(金属)「セグメント封止部」タイプの封止部23を追加的に備える。セグメント封止部23は分配機の環状ケーシング4の外側表面と接触し、この位置でのガス密閉性を保証する。
【0061】
リング5およびその支持デバイス11の様々な要素、とりわけ冷却オリフィス16、17、18、19は、冷却ガスG1、G2、G3もタービン1のガス流Gのガスに対して(圧力)バリアの役割を果たすように構成されて、これらのガスの迂回を防止する。これらのガスの迂回とは、即ちガス流Gのガスのリング5の外側を経た循環であり、言い換えればガス流Gのガスの再取り込みである。これが起こればターボシャフトエンジンの効率、また支持デバイス11の静止部分の完全性に対しても極めて有害となる。
【0062】
この目的のためにリング5およびその支持デバイス11は、上流フック12の上流のガス圧力、より具体的には、セグメント封止部23の支持フランジ24と上流フック12との間に画定される空洞C3内のガスの圧力が、タービン翼3の上流のガス流Gのガス圧力よりも大きくなるように構成される。これは例えば、タービン翼3の上流のガス流Gのガス圧力が5バールに相当するとき、6バールに相当してよい。このように、冷却ガスG1は、反対方向に逃げるよりはむしろ、分配機の環状ケーシング4とリング5との間の間隙Jを介して空洞C3からガスストリームへ逃げる傾向がある。このようにフック12、13は上流のガス再取り込みから保護される。これは、結果として生じる熱対流にフックが晒されることを防止し、そのようにして、膨張の程度の差があまり顕著ではないことから、翼先端部3のところの間隙の制御をし易くする。
【0063】
セグメント封止部23の位置で逃げがあった場合にガスの逆流を防止するために、セグメント封止部23の上流のガス圧力も、タービン翼3の上流のガス流Gのガス圧力よりも大きいことに注目されたい。さらに、僅かな量の逃しが意図的にもたらされて、リングのフック12、13を、セグメント封止部23の上流側から到来する冷却ガス流によってさらによく保護する。
【0064】
さらに、リング5およびその支持デバイス11は、下流フック13の下流に位置付けられた空洞C4内に位置付けられたガスの圧力が、タービン翼3の下流のガス流Gのガス圧力よりも大きくなるように構成される。これは例えば、3バールに相当してよく、それに対してタービン翼3の下流のガス流Gのガス圧力は2.5バールに相当する。このように、冷却ガスG1は、反対方向に逃げるよりはむしろ、空洞C3からガスストリームへ(ここに示されない間隙を介して)逃げる傾向がある。このようにフック12、13は上流のガス再取り込みから保護される。これは、結果として生じる熱対流にフックが晒されることを防止し、そのようにして、膨張の程度の差があまり顕著ではないことから、翼先端部3のところの間隙の制御をし易くする。
【0065】
さらに、リング5およびその支持デバイス11は、加圧空洞Cのガス圧力が、タービン翼3の上流のガス流のガスの圧力以上に(当該例では実質的に等しく)なるように構成されて、上流フック12の上流の空洞C3によって形成されるガス流Gのガスに対するバリアを補完する。
【0066】
空洞C3、C、およびC4は、それらの位置で長手方向に流れるガスストリームのガスの圧力よりも大きな圧力を有することから、これらのガスに対してバリアを形成する。このバリアはフック12、13を保護し、したがって翼先端部3のところの間隙eを制御するのにとりわけ有利となる。さらに、これらの異なった空洞C3、C、C4に供給される冷却ガスは、フック12、13、およびリング5も冷却することを可能にする。
【0067】
図2で示されるように、知られているように、リングセクター5は、それらの接触し合った端部間の界面に封止ワッシャ25をさらに備え、前記ワッシャ25は、例えば、接触し合ったリングセクター5の一方または両方の端部表面上に設けられた切り込み内に延在する。これらのワッシャ25は、加圧空洞Cとタービンのガス流Gのガスストリームとの間の最大密閉度を保証するように、またそのようにして加圧空洞C内のストリームガスの再取り込みを防止するように構成される。当然ながら、密閉性は完全にはなり得ないことから、デバイスは、加圧空洞Cから冷却ガスがタービン1のガス流Gのガスストリームへと逃げることを許して、これらの冷却ガスのパージングを可能にする。加圧空洞Cはタービン翼3に対して垂直に延在し(即ち翼3と同じ長手方向位置で)、その圧力は翼3の上流の圧力と等しいことから、したがって加圧空洞の圧力は翼3の位置の圧力よりも大きい(タービン内で圧力が上流から下流へ低下する)。このようにして、ガスは必然的に加圧空洞Cからタービン1のガスストリームに向かって移動し、その反対には移動しない。
【0068】
その熱的保護を尚さらに向上させるため、フック12、13に向かうガス伝導を制限するために、当該例ではリング5は、その長手方向壁6の内側にセラミック材料の被覆部26が被覆される。
【0069】
次にリング5をその支持デバイス11に取り付けについて説明がなされる。前記取り付けは、上流支持部分14と下流支持部分15を互いに対して滑動させ、収縮嵌めすることによって達成される。より具体的には、上流支持部分14は加熱され(例えば100℃の温度に)、上流フック12と下流フック13が互いに接近または実際に互いに接触するように滑動移動される。これは、支持部分14、15が入れ子式であって、上流支持部分14の長手方向壁の半径が下流支持部分15の長手方向壁の半径よりも僅かに大きいことから可能である。次いでリングセクター5が下流フック13上に取り付けられる(下流フック13はリングセクター5の下流溝10内に収容される)。次いで上流支持部分が上流方向に移動されて、リング5の上流溝8内の上流フック12と当接する。この位置で、上流フック12は、その長手方向壁12bの外側の上流角部で上流溝の表面8’と、その長手方向壁12bの内側の上流角部で上流編組み状封止部21と当接する。さらに、下流フック13は、その長手方向壁13bの外側の下流角部で下流溝の表面10’と、その長手方向壁13の内側の上流角部で下流編組み状封止部22と当接する。最終段階として、アセンブリは冷えてゆき、これが、上様々な部分同士の締り嵌めをもたらす。これは、既知の一般的な原理の方法で、上流支持部分14の下流の支持部分15上での収縮嵌め(冷却時にその長手方向壁の半径が小さくなる)によってなされる。
【0070】
続いてセグメント封止部23が、例えば接着などによって取り付けられる。接着手段は作業中に消失する。
【0071】
リングおよびその支持デバイスの第2実施形態について、図3図4aから図4cとに関して説明がなされる。この実施形態は既述の実施形態に極めて類似しており、この理由のために、説明を簡単にするため、図1および図2のそれらのタービン要素と同一、均等、または類似の構造または機能を有する図3図4aから図4cとのそれらのタービン要素に対して、同じ参照記号が使用される。さらに、図1および図2のタービンについての説明は全て繰り返されない。不一致のない限りこの説明は図3図4aから図4cとのタービンに当てはまる。重要な構造上および機能上の差異のみが説明される。
【0072】
第2実施形態の主な差異は、リング5が一部片であり、したがって360°にわたる単一の軸対称部分を構成する完全なリングを形成する(言い換えればこれはセクター化されていない)。さらに、下流支持部分15も同様に全周囲(360°)にわたって一部片であるが、上流支持部分14はセクター化される。即ち複数の上流支持部分14のセクター(当該例では10個前後のセクター)に切断される。
【0073】
既述のように、リング5は、リング5の上流溝8と下流溝10内に収容される上流フック12と下流フック13によって支持されて、同じ利点を有する。フック12、13、ならびにリング5を冷却するために冷却ガスを注入する手段(図示されない)が設けられる。これは翼先端部のところの間隙eを制御する。これらのガスは加圧空洞C3、C、C4に供給される。既述のように、これらの注入手段は、冷却ガスが、タービン1のガス流Gのガスに対してバリア機能を果たして、ガスがリング5の外側で循環することを防止することを可能にするように構成される。この目的のために、リング5の外側のガス圧力は、タービン1のガス流Gの対応する圧力よりも大きい。
【0074】
上流溝8と下流溝10が同じ寸法を有する(それらの長手方向壁7b、9bの半径が等しい)図1および図2の実施形態とは異なって、図3の実施形態の上流溝8と下流溝10は同じ寸法を有さない。下流溝10を形成する下流ショルダ9の長手方向壁9bの半径は、上流溝8を形成する上流ショルダ7の長手方向壁7bの半径よりも大きい。リング5の長手方向壁6が、ターボシャフトエンジンの軸線Aと平行であることから、下流溝10を形成する下流ショルダ9の半径方向壁9aの半径寸法は、したがって、上流溝8を形成する上流ショルダ7の半径方向壁7aの半径寸法よりも大きい。このように、下流フック13の長手方向壁13bは、ターボシャフトエンジンの軸線Aから半径距離のところで延在する。これは上流フック12の長手方向壁12bよりも大きい。(フック12、13の長手方向壁12b、13bは、上流溝8、下流溝10を形成するショルダ7、9の長手方向壁7b、9bに接近したこれらの上流溝8、下流溝10内に静止する)。これらの半径の差異は、以下に説明されるアセンブリの取り付けを可能にする。
【0075】
次に、リング5およびその支持デバイス11の取り付けについて、より具体的に図4a、図4b、図4cを参照して説明がなされる。図1および図2に関して説明された取り付けとは対照的に、取り付けは、支持部分を互いに滑動させ、収縮嵌めすることによってではなく、支持部分をリングに対して滑動させ、ねじ込むことによって実施される。
【0076】
図4aを参照すると、第1ステップで下流支持部分15にリング5が取り付けられる。これはリング5の、この部分15に対する、下流から上流への相対的な動きによって行われ(この相対的な動きは矢印F1によって表わされる)、そのようにして下流フック13がリング5の下流溝10内に収容されることを可能にする。
【0077】
図4bを参照すると、第2ステップで上流支持部分14の第1セクターにリング5が取り付けられる。これは、このセクター14の、リング15および下流支持部分によって形成されたアセンブリに対する、外側から内側に向かった、次いで下流から上流への、相対的な動きによって行われ(この相対的な動きは矢印F2によって表わされる)、そのようにして上流フック12がリング5の上流溝8内に収容されることを可能にする。
【0078】
図4cを参照すると、第3ステップで、図3に示されないスペーサ27において、形状が環状であり、上流支持部分14のセクターに円周方向に対応するスペーサ27が、上流支持部分14の下流フランジ14’と下流支持部分15の上流フランジ15’との間に挿入されて、それらの間隔を維持する(スペーサ27の動きは矢印F3によって表わされる)。次いで上流支持部分14と下流支持部分15は、ネジ28によって互いにしっかりと固定される(その動きは矢印F4によって表わされる)。ネジ28は、支持部分14、15のフランジ14’、 15’を互いに固定し、かつそれらの間に挿入されたスペーサ27を固定するために設けられる。
【0079】
最終的に、他方の上流支持部分14をリング5の周囲全体にわたって完成させるために、他方の上流支持部分14セクターに対して第2ステップおよび第3ステップが繰り返される。
【0080】
本発明のこの実施形態によって、環状で全体に軸対称のフック12、13を用いて、一部片のタービンリング5を定位置に保持することがとりわけ可能となる。これは、一部片のリングが、点状または離散的な形で作用を及ぼすアームによって維持される従来技術とは異なる。その結果、一部片のリング5による変形は軸対称であり、したがってより簡単にモデル化できる。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c