(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複合酸化物(B)の組成が、シリカ:5重量%以下、酸化タングステン:3〜30重量%、セリア:5〜40重量%、及びジルコニア:50〜90重量%であることを特徴とする請求項1記載の選択還元型触媒。
複合酸化物(C)の組成が、チタニア:70〜95重量%、シリカ:1〜10重量%、及びジルコニア:5〜20重量%であることを特徴とする請求項3記載の選択還元型触媒。
一体構造型担体の表面に、請求項1〜10のいずれかに記載の少なくとも鉄元素を含むゼオライト(A)と、シリカ、酸化タングステン、セリア、及びジルコニアからなる複合酸化物(B)と、チタニア、シリカ、及びジルコニアからなる複合酸化物(C)を含む触媒層が上下二層に被覆されていることを特徴とする選択還元型触媒。
下層がゼオライト(A)50〜90重量%、複合酸化物(B)10〜40重量%、及び複合酸化物(C)1〜30重量%を含むことを特徴とする請求項11記載の選択還元型触媒。
上層がゼオライト(A)10〜40重量%、複合酸化物(B)50〜90重量%、及び複合酸化物(C)1〜30重量%を含むことを特徴とする請求項11記載の選択還元型触媒。
排気ガス流路に、一酸化窒素、炭化水素の酸化機能を有する酸化触媒(DOC)と、パティキュレートマターを捕集し燃焼除去するフィルター(DPF)と、尿素水溶液もしくはアンモニア水溶液を供給する噴霧手段と、請求項1〜14のいずれかに記載の選択還元型触媒をこの順序で配置したことを特徴とする排気ガス浄化装置。
請求項15に記載の排気ガス浄化装置を用いて、希薄燃焼機関から排出される排気ガスを酸化触媒(DOC)とフィルター(DPF)に通過させ、排気ガス中の炭化水素成分、一酸化炭素を浄化するとともに、一酸化窒素の多くを二酸化窒素に転化した後、尿素水溶液またはアンモニア水溶液を噴霧供給して、選択還元型触媒を通過させて排気ガス中の窒素酸化物を還元することを特徴とする排気ガス浄化方法。
【背景技術】
【0002】
希薄燃焼機関から排出される排気ガスには、燃料や燃焼空気に由来した様々な有害物質が含まれる。このような有害物質としては炭化水素(HC)、可溶性有機成分(Soluble Organic Fraction:SOFともいう)、煤(Soot)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などがあり、これら有害成分の排出量に対する規制は年々強化されている。それら有害成分の浄化方法としては、排気ガスを触媒に接触させて浄化する方法が実用化されている。
【0003】
また、このような希薄燃焼機関では、燃料の種類や供給量や供給のタイミング、空気の量等を制御して有害物質の発生量を抑制することも検討されている。しかし、従来の触媒や制御方法では満足の行く排気ガスの浄化はできていなかった。特に、希薄燃焼機関では、窒素酸化物が排出されやすく、加えて、その規制は益々強化されているが、既存のNOx浄化技術では、自動車に搭載されるディーゼルエンジンの場合、その稼動条件は常に変化することから、有害物質の排出を抑制することは困難であった。
【0004】
NOxの浄化技術(脱硝技術)のうち、触媒を使用するものとしては、NOxを含む排気ガスを、アンモニア(NH
3)成分の存在下で、酸化バナジウム、ゼオライト等を主成分とする選択還元触媒と接触させて還元脱硝する技術が、選択還元法、または選択的触媒還元(Selective Catalytic Reduction:以下、SCRということがある)法として知られている。
【0005】
このNH
3成分を還元剤として用いるSCRでは、主として次に示す反応式(1)〜(3)によって、NOxを最終的にN
2に還元する。
4NO + 4NH
3 + O
2 → 4N
2 + 6H
2O …(1)
6NO
2 + 8NH
3 → 7N
2 + 12H
2O …(2)
NO + NO
2 + 2NH
3 → 2N
2 + 3H
2O …(3)
【0006】
排気ガス中の脱硝に際しては、前記脱硝反応(1)〜(3)において、理論上はNH
3/NOxモル比が1.0であれば良いが、ディーゼルエンジンの稼動時における過渡的なエンジン運転条件の場合や、空間速度や、排気ガスの温度、触媒表面の温度が適していない場合に、充分な脱硝性能を得るために供給するNH
3成分のNH
3/NOx比率を大きくせざるを得ない場合があり、結果的に未反応のNH
3が漏出し、新たな環境汚染などの二次公害を引き起こす危険性が指摘されていた。以下、漏出するNH
3をスリップ、またはNH
3スリップということがある。
【0007】
このような脱硝触媒システムには、還元成分としてNH
3ガスを用いても良いが、NH
3はそれ自体、刺激臭や有害性がある。そのため、NH
3成分として脱硝触媒の上流から尿素水を添加して、熱分解や加水分解によりNH
3を発生させ、これを還元剤として作用させ脱硝性能を発現する方式が提案されている。
このような尿素の分解でNH
3を得る反応式は、以下の(4)〜(6)のとおりである。
NH
2−CO−NH
2 → NH
3 + HNCO (4;尿素熱分解)
HNCO + H
2O → NH
3 + CO
2 (5;イソシアン酸加水分解)
NH
2−CO−NH
2 + H
2O → 2NH
3 + CO
2 (6;尿素加水分解)
【0008】
尿素はSCR触媒の上流から尿素水として噴霧供給される。前述のとおり、NOxの還元浄化に貢献するのは主にNH
3であることから、SCR触媒におけるNOxの反応は、尿素の分解効率によって影響を受ける。尿素の分解効率が低いとNOx浄化の効率が低下することはもちろん、尿素の使用量が増え、未反応の尿素によってNH
3スリップを誘発する恐れがある。
【0009】
このようなNH
3スリップに対しては、SCR触媒の後段にスリップしたNH
3を酸化して浄化するために、酸化触媒を配置する必要があった。しかし、このようなNH
3スリップ浄化用の触媒を配置することは、コスト増につながり、特に自動車では触媒の搭載場所を確保することが難しかった。
また、スリップするNH
3の量が多くなると、触媒に高い酸化能力が要求され、活性種である白金など高価な貴金属を多量に使用する必要があった。
【0010】
また、NH
3成分によるNOxの浄化では、上記式(3)のようにNOとNO
2が概ね半分ずつ含まれる雰囲気で反応が促進する(非特許文献1)。しかしながら、希薄燃焼機関から排出されるNOx成分の殆どは一酸化窒素(NO)である(特許文献2)。そのため、NOxの効率的な浄化のため、排気ガス中のNO
2成分の濃度を増すために、排気ガス流路にNO酸化手段を配置することが提案されている(特許文献2)。
このようなNO酸化手段を利用して、有害微粒子成分、NOxを一つの触媒系で同時に浄化する方法も提案されている。その一つが、排気ガス流路中に酸化触媒、フィルター、SCR触媒をこの順に配置し、SCR触媒の前段でアンモニア成分を噴霧するものである(特許文献3)。
【0011】
また、ガスタービンやガスエンジンからの排ガスは高温かつ高SV(空間速度)であり、このような条件下でのNO
X除去は、選択的接触還元(SCR)触媒作用にとっての課題となっている。約300℃超の排気温度でアンモニアにより窒素酸化物の選択的接触還元を行うための触媒として、ゼオライトを含む第一成分と、セリウム、鉄、銅などの各物質又は混合物からなる第二成分と、酸素貯蔵物質を含むSCR触媒が提案されている(特許文献1)。このSCR触媒として、実施例には、アルミナ、混合ゼオライト、Ce・Zr系酸化物を含む材料を用いた「セリウム混合ウオッシュコート触媒」が例示されており、550℃のような高温で高いNOx除去効率が得られたとしている。
ディーゼル機関からの排気ガスは、特許文献1に記載されているように空間速度が1k〜150khr
−1と広範に変動しうる。特許文献1では、15k〜25khr
−1の比較的低い空間速度でSCR触媒の脱硝効率を確認しているが、それを超える比較的高い空間速度では脱硝効率が低下すると考えられる。
【0012】
また、近年、排気ガス規制の強化と共に希薄燃焼機関の排気ガス浄化システムに用いられる触媒の数が増加する傾向にある。特に移動式内燃機関である自動車用の場合、装置の搭載スペースの問題や低燃費化・高出力化の要請がある。これらの要請に対して、1個当たりの触媒を軽量化・小型化することが求められ、また圧力損失を低減する必要がある。特許文献1では、このような問題への検討がなされておらず、排気ガス浄化触媒として実用的とはいえない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の選択還元型触媒、およびそれを用いた排気ガス浄化装置並びに排気ガス浄化方法について説明する。
【0024】
1.選択還元型触媒
本発明の選択還元型触媒(以下、本触媒ということがある)は、希薄燃焼機関から排出される排気ガスに窒素酸化物の還元剤として尿素またはアンモニアを添加し窒素酸化物を選択的に還元するための選択還元型触媒において、少なくとも鉄元素を含むゼオライト(A)と、シリカ、酸化タングステン、セリア、及びジルコニアからなる複合酸化物(B)を含む触媒層を脱硝成分として、一体構造型担体の表面に被覆してなり、複合酸化物(B)の組成が、シリカ:20重量%以下、酸化タングステン:1〜50重量%、セリア:1〜60重量%、及びジルコニア:30〜90重量%であることを特徴とする。
【0025】
2.ゼオライト(A)
本発明においてゼオライト(A)は、少なくとも鉄元素を含む脱硝成分であり、例えば三次元の細孔構造を有するβ型、MFI型のゼオライトをはじめ、A、X、Y、MOR、CHA、SAPOなどのゼオライトが挙げられる。中でも好ましいのは、β型ゼオライト、又はMFI型のゼオライトである。
【0026】
本触媒において好ましく使用されるβ型ゼオライトは、例えば、単位胞組成が下記の平均組成式で表され、かつ正方晶系の合成ゼオライトとして分類される。
M
m/x[Al
mSi
(64−m)O
128]・pH
2O
(式中、Mはカチオン種であり、xは前記Mの価数であり、mは0を越え64未満の数であり、pは0以上の数である)
このβ型ゼオライトは、比較的大きな径を有する一方向に整列した直線的細孔とこれに交わる曲線的細孔とからなる比較的複雑な3次元細孔構造を有し、イオン交換時のカチオンの拡散、およびNH
3等のガス分子の拡散が容易である。また、このような構造はモルデナイト、ホージャサイト等が一方向に整列した直線的な空孔のみを有するのに対して、特異な構造であり、このような複雑な空孔構造であるがゆえに、βゼオライトは、熱による構造破壊が生じ難く安定性が高く、自動車用触媒にとって有効な材料である。
【0027】
一般にゼオライトは、NH
3のような塩基性化合物が吸着できる酸点を有していることが必要であるが、そのSi/Al比に応じてその酸点の数が異なる。一般的にはSi/Al比が低いゼオライトは酸点の数が多いが、水蒸気共存での耐久において劣化度合いが大きく、逆にSi/Al比が高いゼオライトは耐熱性に優れている。本発明の選択還元型触媒において、ゼオライトの酸点にNH
3が吸着し、そこが活性点となってNO
2などの窒素酸化物を還元除去するので、酸点が多い方(Si/Al比が低い方)が脱硝反応には有利である。Si/Al比に相当する指標として、成分分析によりSiO
2とAl
2O
3のモル比(以下でSARと略記する)が一般的に使用される。上述のようにSARについては耐久性と活性がトレードオフの関係であるが、これらを考慮すると、ゼオライトのSARは15〜300が好ましく、17〜60がより好ましい。このような特性はβ型ゼオライト、そしてMFI型ゼオライトも同様に有している。
本触媒のゼオライト(A)には、鉄元素を含むゼオライトが主成分として含有される。通常、ゼオライトには固体酸点として、カチオンがカウンターイオンとして存在する。カチオンとしては、アンモニウムイオンやプロトンが一般的であるが、本触媒に使用されるβ型ゼオライトにはカチオン種として鉄元素が添加され、以下、本発明では「Fe−β」ということがある。
鉄元素でイオン交換されたβ型ゼオライトによって本発明の作用が向上する理由は定かではないが、ゼオライト表面においてNOをNO
2に酸化してNH
3との反応活性を高め、ゼオライトの骨格構造が安定化され、耐熱性の向上に寄与していると考えられる。
ゼオライトに対するFeの添加量は、Fe
2O
3換算で0.1〜5重量%が好ましく、0.5〜4.5重量%がより好ましい。鉄元素の量がFe
2O
3換算で5重量%を超えると、活性な固体酸点の数が確保できなくなり活性が下がる。鉄元素の量がFe
2O
3換算で0.1重量%未満では、充分なNOx浄化性能が得られず排気ガスの浄化性能が低下するので好ましくない。なお、イオン交換種として添加される鉄元素は、その全てがイオン交換されても良いが、その一部が酸化鉄の状態で存在していても良い。
【0028】
すなわち、鉄元素(以下、これを金属触媒成分ともいう)の担持の方法は、イオン交換でも含浸による方法でも構わない。本発明では、ゼオライトの少なくとも一部が、金属触媒成分によりイオン交換されていることが望ましい。適切にイオン交換されることにより、ゼオライトの骨格構造が安定化され、ゼオライトそのものの耐熱性が向上する。なお、金属触媒成分は、完全にイオン交換されなくてもよく、その一部が酸化物として存在しても良い。
【0029】
ゼオライトへの鉄元素の担持方法については特に制限はない。このような鉄元素を添加したゼオライトは、メーカーから様々なグレードのものが市販されており、また、特開2005−502451号公報などに記載された要領で製造できる。一般的な担持方法としては、イオン交換法の他、鉄元素を含む硝酸塩、酢酸塩、塩化物等を水溶液に溶解させた後、ゼオライトを加えて含浸法で担持してもよいし、アルカリ等でpH調整することにより得られた沈殿物を乾燥・焼成してもよいし、ゼオライトに上記鉄元素を含む硝酸塩、酢酸塩、塩化物等を溶解させた水溶液に浸漬した後、蒸発乾固させてもよい。焼成温度は、300〜800℃が好ましく、400〜600℃がより好ましい。加熱手段については、電気炉やガス炉等の公知の加熱手段によって行う事ができる。
【0030】
本触媒のゼオライトとして好ましい三次元細孔構造を有するゼオライトとして、例えばMFI型ゼオライトもSCR成分として知られている。ここでMFI型ゼオライトのSi/Al比も上述したβ型ゼオライトと同様である。MFI型ゼオライトは、β型ゼオライト同様に鉄元素が含まれていることが好ましい。このうち、鉄元素が含まれるMFI型ゼオライトについては、以下「Fe−MFI」ということがある。
【0031】
また、ゼオライト種としては上記のゼオライトに加え、他にA、X、Y、MOR、CHA、SAPO等様々なタイプのゼオライトの一種以上と組み合わせて使用してもよい。
本触媒を他のタイプのゼオライトと併用する場合には、全ゼオライト中、前記各種β型ゼオライト若しくはMFI型ゼオライトのトータルの比率が50〜100%であることが好ましい。
また、ゼオライトは、前記鉄元素の他に、他の遷移金属、希土類金属、また貴金属などを含んでいてもよい。具体的には、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、銅などの遷移金属、セリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジウムなどの希土類金属、などを挙げることができる。
また、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム等の貴金属やニオブ、タングステン、タンタル、スズ、ガリウムなどの元素、セリア、セリウム・ジルコニウム複合酸化物、酸化ランタン、アルミナ、シリカ、ジルコニア、バナジアなどの金属酸化物や、アルカリ元素、アルカリ土類元素など一般に触媒材料として使用可能な材料を、本発明の目的を阻害しない範囲で適宜添加することができる。
【0032】
本発明においてゼオライト(A)は、全ゼオライト量に対してFe元素を含むゼオライトが50〜100重量%含まれる事が好ましく、60〜100重量%含まれる事がより好ましい。鉄元素を含まないゼオライトはSCRとしての活性も低いため、そのようなゼオライトの量が増える事は望ましくない。
【0033】
3.複合酸化物(B)
複合酸化物(B)は、本触媒の脱硝成分であって、実質的にシリカ、酸化タングステン、セリア、及びジルコニアからなる酸化物である。
【0034】
本触媒においては、複合酸化物(B)の組成が、シリカ:20重量%以下、酸化タングステン:1〜50重量%、セリア:1〜60重量%、及びジルコニア:30〜90重量%、より好ましくはシリカ:5重量%以下、酸化タングステン:3〜30重量%、セリア:5〜40重量%、及びジルコニア:50〜90重量%となるようにする。
複合酸化物(B)中の各成分の機能については、明確ではないものもあるが、おおよそ次のように考えられる。
【0035】
シリカは、各種金属酸化物と比較してBET比表面積の高いことで知られており、シリカとその他元素で構成される複合酸化物系でのBET比表面積を増加させることで、活性点数を増大させる可能性がある。
またセリアは、NOx吸着機能材料として知られており、本材料系においてもNOx吸着を促進することでNH
3とNOxのSCR反応を促進でき、ジルコニアは、その他成分を熱的に安定な状態で高分散させる為の分散保持材料としての効果を期待できる。
一方、タングステンの酸化物は、酸性が強く、アルカリ成分である尿素やアンモニアの吸着力が大きいので、タングステンの酸化物を使用することで脱硝性能が高くなるという作用効果を期待できる。
【0036】
本触媒は、構成材料のなかでタングステン(W)の役割が重要であり、セリウム(Ce)とWの界面がDeNOx反応を促進するような構造にすることが好ましい。これは、複合酸化物(B)を構成するSi/W/Ce/Zr材料の内、SiとZrを除いたW/Ce材料と、SiとCeを除いたW/Zr材料と、Siを抜いたW/Ce/Zr材料の4種類の材料粉末を用い、触媒化せず粉末のままでアンモニア−SCRのモデルガス浄化性能を評価すると、W/Ce材料とW/Zr材料の比較では、W/Zr材料よりもW/Ce材料のNOx浄化性能が高くなるからである。
この複合酸化物(B)は、上記の組成、構造になれば、製法によって特に限定されない。一例を示せば、珪素、タングステン、セリウム、ジルコニウムを含む硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、塩化物等の形態を有する出発原料を一度に水溶液中に可溶させた後、混合し、pH調整等により沈殿物として沈降させるか蒸発乾固させるかして得られた固形物を焼成してもよいし、単一もしくは複数の金属塩に上記処理を行うことにより酸化物を形成させた後、残りの金属塩を一度にまたは逐次に担持してもよい。
一度にすべての元素を加えて製造するか、最初に核となる粉末を単数もしくは数種類の元素から製造した後、残りの元素を一度にまたは逐次に担持させることにより、各々の元素を最適な組成で含有する複合酸化物(B)を調製することができる。
【0037】
4.複合酸化物(C)
内燃機関が高回転あるいは高負荷で稼動する時には排気ガスは高温となる。通常高温時には加水分解成分の補助が無くとも尿素の熱分解・加水分解が促進され、脱硝反応が進行しやすい。また還元剤がアンモニアの場合、本発明の触媒層に加水分解成分の複合酸化物(C)は含まれないものでもよい。
しかし、還元剤が尿素である場合は、特に低温でのNH
3生成を促進し脱硝反応を促進させる目的で、本触媒には前記の脱硝成分であるゼオライト(A)、複合酸化物(B)に加え、尿素成分の加水分解成分として複合酸化物(C)を含有することが望ましい。
このような加水分解成分としては、チタニアを必須成分とし、必要によりジルコニア、酸化タングステン、シリカ、アルミナのうち少なくとも一つを含む酸化物(チタニア、ジルコニア、酸化タングステン、シリカ、アルミナ、これらの複合酸化物)を使用する事ができる。また、これら加水分解成分は、複合酸化物として使用するが上記酸化物の中から選択された1種以上の粒子とのクラスターとして使用しても良く、他に希土類金属成分、遷移金属成分等が添加されていてもよい。
【0038】
複合酸化物(C)の組成としてチタニアの量が多すぎると耐熱性が劣ることがあり、一方、少なすぎると尿素の分解性能が低下し、触媒の低温活性が低下することがある。また、排気ガスの浄化にあたり、本触媒の前段に後述するようなDPFを配置すると煤の燃焼により排気ガス温度が600℃を超えるような場合がある。チタニアのみであるとこのような時に活性が低下してしまうことがあるので、耐熱性を向上させる目的でシリカやジルコニアの酸化物を含有させる。
【0039】
したがって、本触媒に使用される加水分解成分、すなわち複合酸化物(C)は、チタニア、シリカ、及びジルコニアからなる複合酸化物であることが好ましい。また、その組成が、チタニア:70〜95重量%、シリカ:1〜10重量%、及びジルコニア:5〜20重量%であることがより好ましい。
この複合酸化物(C)は、公知の方法で製造できる。すなわち、チタン、珪素、ジルコニウムを含む硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩等の形態を有する出発原料を一度に水溶液中に可溶させた後、混合し、pH調整等により沈殿物として沈降させるか蒸発乾固させるかして得られた固形物を焼成してもよいし、単一もしくは複数の金属塩に上記処理を行なうことにより酸化物を形成させた後、残りの金属塩を一度にまたは逐次に担持してもよい。
【0040】
本触媒の脱硝成分は、ゼオライト(A)と複合酸化物(B)である。高回転時の脱硝性能の向上を図ろうとした場合、触媒層中の脱硝成分の割合を高めておくことが効果的である。
本触媒の脱硝成分であるゼオライト(A)と複合酸化物(B)に対する加水分解促進成分である複合酸化物(C)の重量比は、[(C)/((A)+(B))]が、0/100〜3/7である。[(C)/((A)+(B))]=1/100〜3/7である事が望ましく、1/50〜1/5がより望ましい。ゼオライト(A)または複合酸化物(B)の量が多すぎると、還元成分である尿素の分解性能が劣る場合があり、量が少なすぎるとNOxの浄化性能が劣る場合がある。
【0041】
本触媒では、脱硝成分中の複合酸化物(B)の混合割合を高めておく事が効果的である。その理由として、例えば次の3つの要素によりその効果が得られていると考えられる。
まず第1には、脱硝成分中の複合酸化物(B)の混合割合を高めることにより、触媒層でのガスの拡散性が向上する可能性がある点である。後述するように触媒の圧力損失は、脱硝成分がゼオライト(A)のみで構成される比較触媒よりも、ゼオライト(A)と複合酸化物(B)を含む本触媒の方が低い。これは触媒層が薄いことを示している。特に低温側では、触媒に含まれる各種材料表面の固体酸点にNH
3が吸着・脱離を繰り返しながら、触媒中に拡散していくと考えられる。触媒中により均一に拡散する方が、触媒中の脱硝成分に還元剤がいきわたることとなり、結果的に脱硝効率が上がると考えられる。
また、第2には複合酸化物(B)がゼオライト(A)よりもNH
3−SCRにおける脱硝反応の反応速度が高いことも一因であると考えられる。材料粉末を触媒化せず粉末のままで、NH
3−SCRのモデルガス浄化性能評価をすると、ゼオライト(A)よりも複合酸化物(B)の方がNOx浄化率が高くなるからである。
なお、この第2の考えに基づけばゼオライト(A)を使用せず、複合酸化物(B)のみで脱硝成分を構成させる方が、高温高SV時の脱硝効率が高くなる筈であるが、実際にはそのようにはならない。その理由として、複合酸化物(B)のNH
3吸着量がゼオライト(A)よりも少ないことが関係する可能性がある。ゼオライト(A)よりもNH
3吸着量の少ない複合酸化物(B)のみでは脱硝反応を十分に進ませる為のNH
3吸着量が足りず、共存させるゼオライト(A)でのNH
3の吸着分、およびゼオライト(A)から脱離してくるNH
3の複合酸化物(B)への再吸着によるNOxとの反応機会の増加が、ゼオライト(A)と複合酸化物(B)を併用することによるシナジー効果の一因であるとも考えられる。
【0042】
5.一体構造型担体
本触媒は、少なくともゼオライト(A)と複合酸化物(B)脱硝成分を一体構造型担体の表面に被覆しており、さらに尿素の加水分解促進成分である複合酸化物(C)を含む組成物を被覆していることが好ましい。
【0043】
ここで、一体構造型担体は、特に限定されるものではなく、公知のハニカム構造型担体の中から選択可能である。このようなハニカム構造型担体としては、フロースルー型担体や、DPFに用いられるウォールフロー型担体があり、本発明にはそのどちらも使用可能であるが、圧力損失低減の観点からフロースルー型担体が好ましい。
また、このようなハニカム構造型担体は、その全体形状も任意であり、円柱型、四角柱型、六角柱型など、適用する排気系の構造に応じて適宜選択できる。さらに開口部の孔数についても処理すべき排気ガスの種類、ガス流量、圧力損失あるいは除去効率などを考慮して適正な孔数が決められるが、通常、ディーゼル自動車の排気ガス浄化用途としては、1平方インチ当たり100〜1500個程度が好ましく、100〜900個であることがより好ましい。1平方インチ当たりのセル密度が100個以下であると、排気ガスと触媒の接触面積を確保する事ができず、充分な排気ガスの浄化機能が得られない。また1平方インチ当たりのセル密度が1500個を超えると、著しい排気ガスの圧力損失が生じる。
【0044】
また、このようなハニカム構造型担体のセルの壁の厚みとしては2〜12mil(ミリインチ)が好ましく、4〜8milがより好ましい。また、ハニカム構造型担体の材質にはステンレス等の金属、コーディエライト等のセラミックスがあり、いずれでもよい。
なお、本触媒に使用される一体構造型担体としては、ハニカム構造型担体の他にも、細い繊維状物を編んだシート状構造体、比較的太い繊維状物からなるフェルト様の不燃性構造体が使用できる。これら一体構造型担体は、背圧が高まる恐れはあるものの、触媒成分の担持量が大きく、また排気ガスとの接触面積が大きいので、他の構造型担体よりも処理能力を高くできる場合がある。
【0045】
本触媒の成分を上記フロースルー型ハニカム担体に被覆して使用する場合、その被覆量は、1平方インチ当たりの開口部の孔数100〜1500個、セルの壁の厚み4〜8milの担体であれば、触媒の総量としては30〜330g/Lが好ましく、35〜300g/Lがより好ましい。
【0046】
また、触媒層を構成する脱硝成分のゼオライト(A)、複合酸化物(B)及び尿素加水分解成分の複合酸化物(C)の被覆量が、20〜320g/Lであることが好ましく、30〜300g/Lがより好ましい。被覆量が少なすぎると、本発明の脱硝効果が充分に得られない場合があり、多すぎるとハニカムの孔が目詰まりを起たり、排気ガスの背圧が著しく上昇し、エンジンの性能を低下させる恐れがある。
そして、ゼオライト(A)の被覆量が、触媒層の全体に対して、10〜80重量%であること、複合酸化物(B)の被覆量が、触媒層の全体に対して、20〜90重量%であること、複合酸化物(C)の被覆量が、触媒層の全体に対して、1〜30重量%であることが好ましい。
この範囲であれば加水分解促進成分の複合酸化物(C)に対して、十分な量の脱硝成分ゼオライト(A)、複合酸化物(B)が含まれているため、大きな脱硝効果を得ることができる。より好ましいゼオライト(A)の被覆量は、触媒層の全体に対して、15〜70重量%であること、複合酸化物(B)の被覆量が、触媒層の全体に対して、30〜85重量%であること、複合酸化物(C)の被覆量が、触媒層の全体に対して、2〜20重量%である。
ゼオライト(A)の被覆量が、触媒層の全体に対して、10重量%未満では、脱硝性能が不十分となり、80重量%を超えても脱硝性能の上昇は小さく高コストとなる。複合酸化物(B)の被覆量が、触媒層の全体に対して、20重量%未満もしくは、90重量%を超えると鉄元素を含むゼオライト(A)との複合効果が期待できないためである。また、複合酸化物(C)の被覆量が、触媒層の全体に対して、1重量%未満では、尿素の分解性能が不十分となり、30重量%を超えると脱硝成分の減少により脱硝性能が悪化する問題が生じることがある。
【0047】
6.積層構造
また、本触媒は、一体構造型担体の上に一層構造で被覆してもよいが、二層構造以上となるように被覆し積層することができる。すなわち、一体構造型担体の表面に、少なくとも鉄元素を含むゼオライト(A)と、シリカ、酸化タングステン、セリア、及びジルコニアからなる複合酸化物(B)と、チタニア、シリカ、及びジルコニアからなる複合酸化物(C)を含む触媒層が上下二層に被覆されていることが好ましい。
二層構造以上となるように被覆し積層することで性能が向上する理由は、つぎのように考えることができる。すなわち比較的低温におけるNOx浄化率には、ガス拡散の関係で触媒層の中でも比較的上層部位の寄与が高温条件と比べて高くなる。一方で比較的高温におけるNOx浄化率には、低温条件と比較して触媒層全体の寄与が高くなる。これらの特性を考えた場合に、より反応速度の速い触媒成分、すなわち複合酸化物(B)の含有比率の高いゼオライト(A)との混合層を上層に配置し、下層には上層の不利点を補う為の機能層、すなわちNH
3吸着量が少ないという複合酸化物(B)の特性を補う為に上層とは逆にゼオライト(A)比率の高い混合層を下層に配置するのが性能向上に寄与すると考えられる。
具体的に本触媒においては、下層がゼオライト(A)50〜90重量%、複合酸化物(B)10〜40重量%、及び複合酸化物(C)1〜30重量%を含むこと、一方、上層がゼオライト(A)10〜40重量%、複合酸化物(B)50〜90重量%、及び複合酸化物(C)1〜30重量%を含むことがより好ましい。
また下層の被覆量が全体の20〜80重量%であり、上層の被覆量が全体の80〜20重量%であることが好ましい、更には下層の被覆量が全体の20〜50重量%であり、上層の被覆量が全体の80〜50重量%であることがより好ましい。このように下層の被覆量に対して、反応速度が速い脱硝成分である複合酸化物(B)をより高濃度で含む上層の被覆量を多くすることで、十分に高い脱硝性能をあげることができる。
本触媒を多層化する場合、一つの層に含まれる鉄元素を含むゼオライトは、本触媒全体のゼオライト量のうち、50重量%以上であることが好ましく、80重量%以上が鉄元素を含むゼオライトであることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましい。一つの層に含まれる鉄元素を含まないゼオライトの量が多くても、他の層に含まれる一つの層に含まれる鉄元素を含むゼオライトの量が充分であれば、触媒全体としてSCRとしての活性を補うことができる。
加水分解促進成分として複合酸化物(C)に含まれるチタニアは、上層、下層の両方に存在させても良いが、上層での濃度が高い方が好ましい場合もある。排気ガス中に尿素が供給される場合、尿素は、SCR触媒表面から触媒内部へ拡散して行くが、上層にチタニアが含まれると、いち早くNH
3に分解し、下層に至るSCR触媒全体で、NOxとの反応性の高いNH
3として供給され、排気ガスの浄化が促進されるからである。
【0048】
7.触媒の製造
本触媒は、その製造方法によって特に制限されず、従来公知の方法によって製造することができる。
まず、触媒成分として、前記のゼオライト(A)、及び複合酸化物(B)、必要により複合酸化物(C)を用意する。その後、これら触媒成分と必要に応じてバインダーや界面活性剤などの添加剤を水系媒体と混合してスラリー状混合物にしてから、一体構造型担体へ塗工して、乾燥、焼成する事により一体構造型触媒とする。
【0049】
触媒成分と水系媒体を所定の比率で混合してスラリー状混合物を得る際、水系媒体は、スラリー中で各触媒成分が均一に分散できる量を用いれば良い。このとき必要に応じて各種添加剤を添加することができる。添加剤としては粘性の調整やスラリー分散性向上のために使用される界面活性剤の他、pH調整のための酸、アルカリを配合し、界面活性剤、分散用樹脂等を配合する事ができる。スラリーの混合方法としては、ボールミルなどによる粉砕混合が適用可能であるが、他の粉砕、もしくは混合方法を適用しても良い。
【0050】
次に、一体構造型担体へスラリー状混合物を塗工する。塗工方法は、特に限定されないが、ウォッシュコート法が好ましい。塗工した後、乾燥、焼成を行う事により本触媒の組成物が担持された一体構造型触媒が得られる。なお、乾燥温度は、100〜400℃が好ましく、100〜300℃がより好ましい。また、焼成温度は、400〜700℃が好ましく、特に400〜600℃が好ましい。乾燥時間は0.5〜3時間、焼成時間は0.5〜3時間が好ましい。加熱手段については、電気炉やガス炉等の公知の加熱手段によって行う事ができる。
また、一体構造型担体へ本触媒の成分を複数層形成するには、複数のスラリー状混合物を用意して上記の操作を2回繰り返せばよい。その際、ウォッシュコート法により2回塗工した後に乾燥、焼成してもよく、ウォッシュコート法により塗工した後に乾燥し、その上に二層目以降を被覆した後で乾燥、焼成してもよい。
【0051】
8.排気ガス浄化装置
本発明の排気ガス浄化装置は、排気ガス流路に、一酸化窒素、炭化水素の酸化機能を有する酸化触媒(DOC)と、パティキュレートマターを捕集し燃焼除去するフィルター(DPF)と、尿素水溶液もしくはアンモニア水溶液を供給する噴霧手段と、前記の選択還元型触媒をこの順序で配置したことを特徴とする。
【0052】
ディーゼルエンジンは、その構造上の特徴からガソリンエンジンと比べると比較的排気ガスの温度が低く、その温度は概ね室温〜700℃である。特に始動時や低負荷時には排気ガス温度が低い。しかし、排気ガスの温度が低い場合には触媒の温度も充分に上昇せず、浄化性能が充分に発揮されず、排気ガス中のNOxが充分に浄化されずに排出されやすい。
【0053】
排気ガス中のNOxの浄化においては、排気ガス中のNOとNO
2の比が1:1の状態でSCR触媒に接触させる事が望ましい。前述の脱硝反応式(3)の反応速度が最も速いためである。そのため、排気ガス流れに対し、本触媒の前段にNO酸化機能を配置する酸化手段として、排気ガス中のHC、COを酸化する酸化触媒(DOC)や、排気ガス中に含まれる可燃性粒子成分を捕集するフィルター(DPF)を配置するのである。
酸化触媒としては、公知の白金、またはパラジウムのうち少なくとも一種が担持された活性アルミナを主成分とする触媒を用いることができる。なおその酸化触媒としては、活性アルミナがLaを含むものを使用することもできる。さらにセリウムでイオン交換したβ型ゼオライトを含有する触媒を用いても良い。
【0054】
このようにDOCには、貴金属成分として白金成分またパラジウム成分を含むことが好ましく、この貴金属成分の量は金属換算で0.1〜4g/L含む事が好ましく、0.5〜3g/L含むことがより好ましい。貴金属成分が多すぎると高コストとなってしまい、少なすぎると好適なNO
2/NOx比にならない事がある。
また、この貴金属成分には金属換算で30〜100w%の白金を含む事が好ましく、50〜100w%の白金を含む事がより好ましい。ディーゼル自動車の燃料に使用される軽油には硫黄成分が含まれているから、排気ガスにより触媒成分中の貴金属が被毒してしまうことがある。一方、貴金属成分のパラジウムは硫黄被毒し易い傾向が知られており、これに対し白金は硫黄被毒し難い傾向が知られている。そのため、本発明に使用されるDOCには貴金属成分として白金を主成分として使用する事が好ましい。
【0055】
本SCR触媒は、これらDOC、DPFの後段に配置される。本発明が適用される燃焼機関は、ディーゼルエンジンの場合、排気量1L程度の小型自動車から、排気量50Lを超えるような重機用(ヘビーデューティー)ディーゼルエンジンまであり、また、それらディーゼルエンジンから排出される排気ガス中のNOxは、その稼動状態、また燃焼制御の方法等により大きく異なる。そして、これらディーゼルエンジン排気ガス中のNOx浄化用SCR触媒も、1L程度から50Lを超えるディーゼルエンジン排気量の多様性にあわせて選定できる。
なお、DPFで捕集した可燃性粒子成分は、その後燃焼して除去され、DPF機能が再生される。DPFにおける煤の燃焼にはNO
2を使用する場合がある。NO
2による煤の燃焼は酸素に比べて穏やかであり、燃焼熱によるDPFの破損を誘発し難い。DPFにはこの燃焼再生を促進する目的で酸化触媒を被覆したものがあり、前記のとおり、CSF(Catalyzed Soot Filter)といわれている。本方法では特に断りの無い限り、DPFは、このような酸化触媒を塗布したCSFを包含するものとする。
また、排気ガス中のNOxを浄化する手段として、本方法のようなSCRとは別にNOx吸蔵触媒を使用する場合があり、LNT(Lean NOx Trap)といわれる。LNTに吸蔵されたNOxは、排気ガス中の還元成分であるHCやCOを還元剤としてNOxを浄化するが、本方法はこのようなLNTと組み合わせても良い。
【0056】
9.排気ガス浄化方法
本発明の排気ガス浄化方法は、前記の排気ガス浄化装置を用いて、希薄燃焼機関から排出される排気ガスを酸化触媒(DOC)とフィルター(DPF)に通過させ、排気ガス中の炭化水素成分、一酸化炭素を浄化するとともに、一酸化窒素の多くを二酸化窒素に転化した後、尿素水溶液またはアンモニア水溶液を噴霧供給して、選択還元型触媒を通過させて排気ガス中の窒素酸化物を還元することを特徴とする。
【0057】
排気ガス中のNOxの浄化においては、排気ガス中のNO
2濃度を上昇させ、NOとNO
2の比が1対1の状態にしてSCR触媒に接触させる事が望ましい。前述の反応式(3)の寄与を高め、130〜560℃という低温から高温にかけての広い温度範囲で効率的にNOxの浄化を行うためである。また、本発明によれば、選択還元型触媒が特定の成分組成を有するので、30khr
−1よりも低い空間速度下だけでなく、高SV(30k〜60khr
−1)から超高SV(60khr
−1以上)下でも効果的に浄化でき、耐熱性に優れ、かつ圧力損失も低減できる。
【0058】
本発明で、還元剤として尿素水を使用すると、尿素水は本触媒により分解されてNH
3を発生し、NOxと反応する。アンモニア換算で排気ガス中のNOxに対して[NH
3/NOx=0.5〜1.5]の割合のアンモニアを生成させることが望ましい。しかし、状況によっては全てのNH
3がNOxの浄化に用いられない場合も有る。このとき、NOxの浄化で消費されなかったNH
3はSCR触媒を漏出(スリップ)して排出されてしまう。このような場合にも、本発明によれば、従来の尿素SCRに比べてスリップするNH
3が少ないので、小さいNH
3酸化触媒や、低貴金属量のNH
3酸化触媒を使用することで容易に対処できる。
【実施例】
【0059】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴を一層明確にするが、本発明は、これら実施例の態様に限定されるものではない。なお、本実施例、並びに比較例に使用する触媒は次に示す方法によって調製した。
【0060】
[本SCR触媒(1)の製造]
尿素加水分解成分、すなわち複合酸化物(C)(87重量%TiO
2/10重量%ZrO
2/3重量%SiO
2)54gを用意し、水で濃度を調整しボールミルを用いてミリングして所定の粒子径とした。
複合酸化物(C)のスラリーを攪拌機で攪拌しながら、水、60%硝酸水溶液、複合酸化物(B)、すなわちSi/W/Ce/Zr系材料(1重量%SiO
2/10重量%WO
3/23重量%CeO
2/66重量%ZrO
2)679g、次にゼオライト(A)、すなわちFeイオン交換ゼオライト(Feイオン交換量;2.2重量%Fe
2O
3換算、BEA型、SAR=26)232g、造孔粒子60g、バインダー36gを順次投入して塗布用スラリーとした。
続いて、一体型構造担体、具体的にはハニカムフロースルー型コージェライト担体(300セル5ミル、φ9インチ×7インチ長さ)を塗布用スラリーに浸漬させ、ウォッシュコート法で、一体型構造担体の単位体積あたり280gの触媒成分を被覆し、大気雰囲気下、350℃4時間予備加熱した後に450℃1時間の焼成処理を施した。
得られた本SCR触媒(1)の単位体積あたりの触媒量、並びに組成を表1に記す。なお、表1中、数値はハニカムフロースルー型コージェライト担体の単位体積あたりの担持量[g/L]である。
【0061】
[本SCR触媒(2)の製造]
尿素加水分解成分、すなわち複合酸化物(C)(87重量%TiO
2/10重量%ZrO
2/3重量%SiO
2)54gを用意し、ボールミルに投入し、所定の粒子径とした。
続いて、複合酸化物(C)のスラリーを攪拌機で攪拌しながら、水、60%硝酸水溶液、複合酸化物(B)すなわち、Si/W/Ce/Zr系材料(1重量%SiO
2/10重量%WO
3/23重量%CeO
2/66重量%ZrO
2)679g、次にゼオライト(A)、すなわちFeイオン交換ゼオライト(Feイオン交換量;4.0重量%Fe
2O
3換算、MFI型、SAR=27)232g、造孔粒子66g、バインダー36gを順次投入した。
この塗布用スラリーを一体型構造担体のハニカムフロースルー型コージェライト担体(300セル5ミル、φ9インチ×7インチ長さ)に浸漬させ、ウォッシュコート法で、一体型構造担体の単位体積あたり280gの触媒成分を塗布した。その後に、大気雰囲気下、350℃4時間予備加熱した後に450℃1時間の焼成処理を施した。
得られた本SCR触媒(2)の単位体積あたりの触媒量、並びに組成を表1に記す。
【0062】
[本SCR触媒(3)の製造]
まず尿素加水分解成分、すなわち複合酸化物(C)(87重量%TiO
2/10重量%ZrO
2/3重量%SiO
2)54gを用意し、ボールミルに投入し、所定の粒子径とした。
続いて、このスラリーに、ゼオライト(A)、すなわちFeイオン交換ゼオライト(Feイオン交換量;2.2重量%Fe
2O
3換算、BEA型、SAR=26)357gと、Feイオン交換ゼオライト(Feイオン交換量;4.0重量%Fe
2O
3換算、MFI型、SAR=27)321g、次に複合酸化物(B)すなわち、Si/W/Ce/Zr系材料(1重量%SiO
2/10重量%WO
3/23重量%CeO
2/66重量%ZrO
2)232g、バインダー36gを順次投入して、塗布用スラリーとした。
続いて、一体型構造担体、具体的にはハニカムフロースルー型コージェライト担体(300セル5ミル、φ9インチ×7インチ長さ)を塗布用スラリーに浸漬させ、ウォッシュコート法で、一体型構造担体の単位体積あたり280gの触媒成分を塗布した。その後、大気雰囲気下、550℃30分の焼成処理を施した。
得られた本SCR触媒(3)の単位体積あたりの触媒量、並びに組成を、本SCR触媒(1)同様に表1に記す。
【0063】
[本SCR触媒(4)の製造]
=下層(Bottom)=
まず尿素加水分解成分、すなわち複合酸化物(C)(87重量%TiO
2/10重量%ZrO
2/3重量%SiO
2)54gを用意し、ボールミルに投入し、所定の粒子径とした。
続いて、このスラリーに、ゼオライト(A)、すなわちFeイオン交換ゼオライト(Feイオン交換量;2.2重量%Fe
2O
3換算、BEA型、SAR=26)357gと、Feイオン交換ゼオライト(Feイオン交換量;4.0重量%Fe
2O
3換算、MFI型、SAR=27)321g、次に複合酸化物(B)すなわち、Si/W/Ce/Zr系材料(1重量%SiO
2/10重量%WO
3/23重量%CeO
2/66重量%ZrO
2)232g、バインダー36gを順次投入して、塗布用スラリーとした。
その後、一体型構造担体、具体的にはハニカムフロースルー型コージェライト担体(300セル5ミル、φ9インチ×7インチ長さ)をこの塗布用スラリーに浸漬させ、ウォッシュコート法で、一体型構造担体の単位体積あたり112gの触媒成分を塗布した。その後に、大気雰囲気下で、550℃30分の焼成処理を施し、下層塗布品を得た。
=上層(Top)=
まず尿素加水分解成分、すなわち複合酸化物(C)(87重量%TiO
2/10重量%ZrO
2/3重量%SiO
2)54gを用意し、ボールミルに投入し、所定の粒子径とした。
続いて、複合酸化物(C)のスラリーを攪拌機で攪拌しながら、水、60%硝酸水溶液、複合酸化物(B)すなわち、Si/W/Ce/Zr系材料(1重量%SiO
2/10重量%WO
3/23重量%CeO
2/66重量%ZrO
2)679g、次にゼオライト(A)、すなわちFeイオン交換ゼオライト(Feイオン交換量;4.0重量%Fe
2O
3換算、MFI型、SAR=27)232g、造孔粒子66g、バインダー36gを順次投入した。
その後、この塗布用スラリー(C)を上記の下層塗布品にウォッシュコート法で塗布した。こうして、一体型構造担体の単位体積あたり168gの触媒成分を塗布した後に、大気雰囲気下、350℃4時間予備加熱した後に、450℃1時間の焼成処理を施し、SCR(4)を得た。
得られた本SCR触媒(4)の単位体積あたりの触媒量、並びに組成を、本SCR触媒(1)同様に表1に記す。
【0064】
[比較SCR触媒(1)の製造]
上記の本SCR触媒(3)の複合酸化物(B)をBEA型のゼオライト(A)に振り替え、また複合酸化物(C)としてチタン−ケイ素複合酸化物(SiO
2換算ケイ素含有率;10重量%、BET値;100m
2/g)に換えて、比較SCR触媒(1)を得た。
得られた各比較SCR触媒について、単位体積あたりの触媒量[g/L]、並びに組成を、本SCR触媒(1)同様に表1に記す。
【0065】
[比較SCR触媒(2)の製造]
加水分解成分としてチタン−ケイ素複合酸化物(SiO
2換算ケイ素含有率;10重量%、BET値;100m
2/g)54g、Feイオン交換ゼオライト(Feイオン交換量;2.2重量%Fe
2O
3換算、BEA型、SAR=26)696g、Feイオン交換ゼオライト(Feイオン交換量;4.0重量%Fe
2O
3換算、MFI型、SAR=27)179g、バインダー71g、および水をボールミルに投入してミリングし塗布用スラリーとした。
続いて、一体型構造担体、具体的にはハニカムフロースルー型コージェライト担体(300セル5ミル、φ9インチ×7インチ長さ)を塗布用スラリーに浸漬させ、ウォッシュコート法で、一体型構造担体の単位体積あたり280gの触媒成分を被覆し、大気雰囲気下、450℃1時間の焼成処理を施した。
得られた各比較SCR触媒(2)について、単位体積あたりの触媒量[g/L]、並びに組成を、本SCR触媒(1)同様に表1に記す。
【0066】
【表1】
【0067】
(実施例1〜4)(比較例1〜2)
上記のようにして得た本SCR触媒(1)〜(4)について、下記測定条件のもと、NOxの浄化性能と、圧力損失を測定した。また、比較SCR触媒(1)(2)についても、同様に実験し、性能を比較した。なお、圧力損失の測定には、Colorado Springs社製の商品名:Super Flowを使用した。結果を、
図1,2に示す。
【0068】
<測定条件>
・エンジン:ディーゼル5Lエンジン
・還元剤成分:32.5重量%尿素水溶液
・尿素水噴霧量:排気ガス中のNH
3/NOx比率を1.0に制御
・触媒の熱処理条件:630℃×50時間、10vol%水蒸気含有空気気流中
・触媒の床温度とSV;表2を参照
【0069】
【表2】
【0070】
[評価]
上記本SCR触媒(1)〜(4)を用いた実施例と、比較SCR触媒(1)〜(2)を用いた比較例を対比することで、次のことが分かる。
すなわち、本発明の選択還元型触媒、本SCR触媒(1)〜(4)は、
図1に示すとおり従来タイプの比較SCR(1)(2)と比べて、いずれもNOx浄化性能が優れている。また
図2に示すとおり圧力損失が小さく優れている。また、本SCR触媒(4)の性能は本SCR触媒(1)〜(3)と比べた場合、最もNOx浄化性能が高いことが分かる。