(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769761
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】打楽器
(51)【国際特許分類】
G10D 13/02 20060101AFI20150806BHJP
G10D 13/00 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
G10D13/02
G10D13/00 251
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-140222(P2013-140222)
(22)【出願日】2013年7月3日
(65)【公開番号】特開2015-14654(P2015-14654A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2014年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】513168792
【氏名又は名称】大曲 陽佐
(74)【代理人】
【識別番号】100156959
【弁理士】
【氏名又は名称】原 信海
(72)【発明者】
【氏名】大曲 陽佐
【審査官】
冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0110321(US,A1)
【文献】
登録実用新案第3173661(JP,U)
【文献】
特開2000−293166(JP,A)
【文献】
柏木 文吾,新アウトドア・サイエンス・クラブ アルキメデスの目デス!,子供の科学 8月号,日本,(株)誠文堂新光社,2012年 6月10日,第75巻 第7号,p.68
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 13/02
G10D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板部と、該天板部に対向配置された底板部と、前記天板部と底板部との間に立設された打板部と、該打板部に対向配置された背板部とを具備する多面体殻状の本体を備え、該本体内にバズ音を生成するバズ音生成部が前記打板部に対向配置してあり、前記打板部を叩打して演奏するようになしてある場合、
前記バズ音生成部は、一又は複数の弦の両端部を支持部材に固定することによって当該弦を弧状になして構成してあることを特徴とする打楽器。
【請求項2】
2組の第1バズ音生成部を具備し、一方の第1バズ音生成部は、前記打板部の天板部近傍であって、打板部の一側縁近傍の位置に、また他方の第1バズ音生成部は、前記打板部の天板部近傍であって、打板部の他側縁近傍の位置にそれぞれ配置してある請求項1記載の打楽器。
【請求項3】
更に2組の第2バズ音生成部を具備し、一方の第2バズ音生成部は、前記打板部の底板部近傍であって、打板部の一側縁近傍の位置に、また他方の第2バズ音生成部は、前記打板部の底板部近傍であって、打板部の他側縁近傍の位置にそれぞれ配置してあり、
両第2バズ音生成部に具備された弦の直径は前記第1バズ音生成部に具備された弦の直径より小さくなしてある請求項2記載の打楽器。
【請求項4】
前記支持部材は、支持部材の一側面と打板部の裏面とのなす角が鋭角になるようにしてあり、当該支持部材の一側面に前記弦が突設してある請求項1から3のいずれかに記載の打楽器。
【請求項5】
前記背板部の天板部近傍の高さ位置に、生成した音を外部へ放出するための放音穴が開設してある請求項1から4のいずれかに記載の打楽器。
【請求項6】
前記打板部は本体に接着固定してある請求項1から5のいずれかに記載の打楽器。
【請求項7】
前記打板部の両側には側板部が設けてあり、少なくとも一方の側板部には当該側板部を貫通する貫通孔が開設してあり、該貫通孔の開口度を調整する調整蓋が回動可能に設けてある請求項1から請求項6のいずれかに記載の打楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多面体殻状の打楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
内部が空洞の箱体の正面を主な打板部とし、当該打板部を奏者が掌で叩打して演奏を行うカホンと称される打楽器がある。かかる箱状の打楽器にあっては、スネアドラムを叩打したときに生じる音に比喩される、所謂バズ音を生成させることが要求されている。このバズ音を生成させる打楽器として、ギターの弦といったワイヤを前記打板部の裏面に張設するワイヤ型と、複数のワイヤ又はコイル線を互いに平行に配し、各両端を固定片にて固定してなり、スネアドラムに用いられる響き線を前記打板部の裏面に張設する響き線型とが開発されている。
【0003】
図7は、後述する特許文献1に開示されたワイヤ型の打楽器を示す分解斜視図であり、図中、51は直方体殻状の本体である。本体51の正面は奏者が掌で叩打する打板部51aになしてあり、打板部51aは図示しないネジによって着脱可能になしてある。この打板部51aの裏面に、バズ音を発生させるための複数の弦62,62,…が配置してある。前記本体51を構成する天板部51bの下面には弦62,62,…の一端を固定する筒状の第1固定部71が、その中心軸が本体51の奥行き方向と平行になるように垂設してあり、また本体51を構成する底板部51dの上面であって、前記第1固定部71に対向する位置には前記弦62,62,…の他端を固定する筒状の第2固定部72がその中心軸が本体51の奥行き方向と平行になるように取り付けてある。
【0004】
第1固定部71の内部は、本体51の幅方向へ配列した小筒状の複数(
図7にあっては4つ)のセル71a,71a,71a,71aに分割してあり、各セル71a,71a,71a,71a内には図示しないスライド部がそれぞれ摺動可能に挿入してある。また、第2固定部72の内部も、本体51の幅方向へ配列した小筒状の複数(
図7にあっては6つ)のセル72a,72a,72a,72a,72a,72aに分割してあり、本体51の両側からそれぞれ2つ目のセル72a,72a内には図示しないスライド部が摺動可能に挿入してある。第1固定部71を構成する各(
図7にあっては外側の2つの)スライド部の先端には複数(
図7にあっては3本)の弦62,62,62、62,62,62の一端が固定してあり、第2固定部72を構成する両スライド部の先端には両組の複数の弦62,62,62、62,62,62の他端がそれぞれ固定してある。
【0005】
第1固定部71を構成する各スライド部の基端にはナットがそれぞれ埋設してあり、各ナットには長脚のボルトの一端が螺入してある。同様に、第2固定部72を構成する両スライド部の基端にはナットがそれぞれ埋設してあり、各ナットには長脚のボルトの一端が螺入してある。そして、これらボルトの他端は本体51の背板部を貫通させて、本体51の背板部の背面側に配設された操作ノブ(いずれも図示せず)に連結してある。
【0006】
一方、前述した第2固定部72には平板状の支持部73,73がその一端部を第2固定部72から突出するように取り付けてあり、該支持部73,73によって弦62,62,62、62,62,62を打板部51aに密接させるようになっている。
【0007】
このような打楽器にあっては、各操作ノブを各別に操作することによって、適宜のスライド部を進退させ、当該スライド部に固定された弦62,62,…を打板部51aへ密接する方向,又は打板部51aから離隔する方向へ移動させるとともに、弦62,62,…を緊張又は弛緩させ、それによって所要のバズ音に調整することができる。
【0008】
一方、
図8は響き線型打楽器の内部構成の一例を示す背面図であり、背板部を取り外した状態を示している。本体81を構成する一側板部81cの裏面であって、天板部81b近傍の高さ位置には、基板部91が打板部81aから適宜の間隙を隔てて固定してあり、該基板部91の打板部81a側の縁部には板状の支持部92がヒンジによって揺動可能に取り付けてある。基板部91にはアーム部93が片持ち支持されており、該アーム部93の先端に垂下したバネ部材(図示せず)によって前記支持部92は打板部81a側へ付勢されている。
【0009】
支持部92の打板部81aに対向する面には、響き線を両端固定部間の略中央位置で切断してなる一対の響き線片96,96の固定部がそれぞれ固定してあり、両響き線片96,96の他端側は支持部92から突出して、本体81を構成する他側板部81cの近傍位置まで延設されている。前述した如く支持部92が打板部81a側へ付勢されているため、両響き線片96,96の他端側は、打板部81aの裏面であって一側板部81cの近傍位置から他側板部81cの近傍位置までの領域に強く密接されている。なお、打板部81a及び/又は前述した背板部はネジによって着脱可能になしてあり、打板部81a及び/又は背板部を取り外して、響き線片96,96を保守点検し得るようになしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−8040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示されたワイヤ型の打楽器にあっては、弦62,62,…に与えられた張力によって弦62,62,…が伸長して、弦62,62,…によって生じるバズ音が変化するため、一定のバズ音を得るべく弦62,62,…に与える張力を調整する必要があった。更には、前記張力によって弦62,62,…が経時的に劣化して行くため、適宜期間ごとに弦62,62,…を張り替えなければならず、弦62,62,…の調整及び張り替え作業に多くの手間を要していた。また、弦62,62,…の調整及び張り替え作業を行うために、前述した如く打板部51aはネジによって着脱可能にしてあるが、かかるネジ止による締力に耐え得るように、打板部51aは所要寸法以上の厚さ寸法にしなければならず、打板部51aを叩打した際の音質を向上させ、また叩打の強弱による音の表現の幅を広げるには限界があった。
【0012】
一方、前述した響き線型の打楽器にあっては、響き線を両端固定部間の略中央位置で切断してなる一対の響き線片96,96を用いているため、バズ音を発生させるべく、響き線片96,96の他端側を打板部81aの裏面に強く当接させる必要があった。これは、響き線を両端固定部間の略中央位置で切断してなる響き線片96にあっては、響き線を構成する複数のワイヤの先端が自由であるので、各ワイヤの先端、即ち響き線片96の他端側を打板部81aの裏面に強く当接させないと、バズ音を生成する際に各ワイヤの先端が暴れてしまい、良好なバズ音を生成することができないからである。
【0013】
しかし、響き線片96,96の他端側を打板部81aの裏面に強く当接さると、打板部81aを弱く叩打した場合に響き線片96,96が反応しないことがあり、叩打の強弱による表現の幅を広げるには限界があった。また、響き線片96,96の他端側を打板部81aの裏面に強く密接させているため、定期的に響き線片96,96を保守点検する必要があり、多くの手間を要していた。更に、打板部81a及び/又は背板部はネジによって着脱可能にしてあるが、かかるネジ止による締力に耐え得るように、打板部81a及び/又は背板部は所要寸法以上の厚さ寸法にしなければならなかった。このように、打板部81aを着脱可能になした場合は、前同様、当該打板部81aを叩打した際の音質を向上させ、また叩打の強弱による音の表現の幅を広げるには限界があった。また、背板部を着脱可能になした場合は、背板部の反響による音質の向上に限界があった。
【0014】
更に、ワイヤ型及び響き線型いずれの打楽器にあっても、弦62,62,…及び響き線片96,96の他端側が打板部51a,81aの中央領域にかかっている。ところで、打板部51a,81aの中央領域にあっては打板部51a,81aの他の領域を叩打した場合に比べて低い音が生じるため、かかる領域を叩打した際の音にバズ音が混入しなければ、バスドラムに対応する音として使用することができる。しかし、前述したように、従来のいずれの打楽器にあっても、弦62,62,…及び響き線片96,96の他端側が打板部51a,81aの中央領域にかかっているため、打板部51a,81aの中央領域を叩打すると必ずバズ音が混入してしまうという問題があった。
【0015】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであって、音の表現の幅を広げることができる一方、保守点検をほとんど不要とし、またバズ音とバズ音が殆ど混入しない音とを各別に生成することができ、更には音質を向上させることができる打楽器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)本発明に係る打楽器は、天板部と、該天板部に対向配置された底板部と、前記天板部と底板部との間に立設された打板部と、該打板部に対向配置された背板部とを具備する多面体殻状の本体を備え、該本体内にバズ音を生成するバズ音生成部が前記打板部に対向配置してあり、前記打板部を叩打して演奏するようになしてある場合、前記バズ音生成部は、一又は複数の弦の両端部を支持部材に固定することによって当該弦を弧状になして構成してあることを特徴とする。
【0017】
本発明の打楽器にあっては、天板部と、該天板部に対向配置された底板部と、前記天板部と底板部との間に立設された打板部と、該打板部に対向配置された背板部とを具備する多面体殻状の本体を備えており、この本体内にバズ音を生成するバズ音生成部が前記打板部に対向配置してある。そして、バズ音生成部は、一又は複数の弦の両端部を支持部材に固定することによって当該弦を弧状になして構成してある。このように、弧状になした一又は複数の弦を備えるバズ生成器にあっては、当該弦に張力が与えられていないため、弦の調整又は張り替えといった保守点検が殆ど不要である。
【0018】
一方、弦の先端部分が弧状であるため、弦の先端部分を打板部へ当接させる力を可及的に弱くしても、弦の先端部分が暴れることなく良好なバズ音を生成することができる。そのため、弦の先端部分を打板部へ当接させる力を可及的に弱くすることによって、打板部を弱く叩打したときでもバズ音生成部の弦を反応させることができ、叩打の強弱による音の表現の幅を広げることができる。
【0019】
更に、バズ音生成部は、前述したように一又は複数の弦の両端部を支持部材に固定することによって当該弦を弧状になして構成してあるため、コンパクトである。従って、打板部においてバズ音生成部が配設された部分を叩打した場合はバズ音を生成することができ、それ以外の部分を叩打した場合はバズ音が殆ど混入しない音を生成することができる。
【0020】
(2)本発明に係る打楽器は、2組の第1バズ音生成部を具備し、一方の第1バズ音生成部は、前記打板部の天板部近傍であって、打板部の一側縁近傍の位置に、また他方の第1バズ音生成部は、前記打板部の天板部近傍であって、打板部の他側縁近傍の位置にそれぞれ配置してあることを特徴とする。
【0021】
本発明の打楽器にあっては、2組の第1バズ音生成部を具備している。そして、一方の第1バズ音生成部は、前記打板部の天板部近傍であって、打板部の一側縁近傍の位置に配置してあり、また、他方の第1バズ音生成部は、前記打板部の天板部近傍であって、打板部の他側縁近傍の位置に配置してある。打板部の天板部近傍であって、打板部の一側縁近傍の位置は、打板部の角部近傍の部分であるので他の部分より高い音が生成される。そして、この位置に第1バズ音生成部が配設されており、第1バズ音生成部によるバズ音が加わるため、スネアドラムに近い音が生成される。
【0022】
一方、打板部の両第1バズ音生成部の間隙の部分には、いずれの第1バズ音生成部もかからない。打板部の高さ方向の上位位置であって、打板部の幅方向の中央部分は、打板部の角部より低い音が生成される。そして、この部分にはいずれの第1バズ音生成部もかからないため、バズ音が殆ど生成されない。従って、打板部のかかる部分を叩打することによって、スネアドラムより低いタムに近い音が生成される。
【0023】
一方、打板部の中央部分は他の部分より低い音が生成されるが、この部分にもいずれの第1バズ音生成部もかからないため、バズ音が殆ど生成されない。従って、打板部のかかる部分を叩打することによって、最も低いバスドラムに近い音が生成される。このように、音の表現の幅を広げることができると共に、バズ音とバズ音が殆ど混入しない音とを各別に生成することができる。
【0024】
(3)本発明に係る打楽器は、更に2組の第2バズ音生成部を具備し、一方の第2バズ音生成部は、前記打板部の底板部近傍であって、打板部の一側縁近傍の位置に、また他方の第2バズ音生成部は、前記打板部の底板部近傍であって、打板部の他側縁近傍の位置にそれぞれ配置してあり、両第2バズ音生成部に具備された弦の直径は前記第1バズ音生成部に具備された弦の直径より小さくなしてあることを特徴とする。
【0025】
本発明の打楽器にあっては、更に2組の第2バズ音生成部を具備している。一方の第2バズ音生成部は、前記打板部の底板部近傍であって、打板部の一側縁近傍の位置に配置してあり、また、他方の第2バズ音生成部は、前記打板部の底板部近傍であって、打板部の他側縁近傍の位置に配置してある。そして、両第2バズ音生成部に具備された弦の直径は第1バズ音生成部に具備された弦の直径より小さくなしてある。
【0026】
打板部を叩打する力が弱い場合、本体の高さ方向の高位に配設された両第1バズ音生成部はあまり反応しない一方、弱い振動であっても打板部の高さ方向の低位まで伝達して、そこに配設された両第2バズ音生成部が反応してバズ音が生成される。一方、打板部を叩打する力が強い場合、打板部の高さ方向の低位に配置された両第2バズ音生成部のバズ音に加えて、打板部の高さ方向の高位に配置された両第1バズ音生成部のバズ音も生成されるため、より迫力のあるバズ音が生成される。このように、打板部を叩打する力が強い場合はより迫力のあるバズ音が生成され、打板部を叩打する力が弱い場合はより小さなバズ音が生成されるため、音の表現幅が広い。
【0027】
(4)本発明に係る打楽器は、前記支持部材は、支持部材の一側面と打板部の裏面とのなす角が鋭角になるようにしてあり、当該支持部材の一側面に前記弦が突設してあることを特徴とする。
【0028】
本発明の打楽器にあっては、前記支持部材は、支持部材の一側面と打板部の裏面とのなす角が鋭角になるようにしてあり、当該支持部材の一側面に前記弦が突設してある。これによって、弧状になされた弦の先端部分を打板部の裏面に当接させることができる。
【0029】
(5)本発明に係る打楽器は、前記背板部の天板部近傍の高さ位置に、生成した音を外部へ放出するための放音穴が開設してあることを特徴とする。
【0030】
本発明の打楽器にあっては、背板部の天板部近傍の高さ位置に、生成した音を外部へ放出するための放音穴が開設してある。放音穴は1つでも複数でもよく、その形状も楕円又は長円等、適宜の形状でよい。
【0031】
ところで、打板部の天板部側の領域を叩打すると高音側の音が生じるが、背板部のかかる高さ位置に放音穴を開設することによって、背板部にて当該音を遮ることなく直接放出させることができ、高音側の音質が向上する。一方、低音側の音は打板部の中央位置を叩打することによって生成することができるが、低音側の音には前述した如き高音側の音のような放音穴の位置依存性が無いため、放音穴を背板部の中央より高い適宜位置に開設した場合であっても低音側の音質に悪影響を及ぼすことはない。
【0032】
(6)本発明に係る打楽器は、前記打板部は本体に接着固定してあることを特徴とする。
【0033】
本発明の打楽器にあっては、前述したようにバズ音生成部の保守点検が殆ど不要であるので、打板部は本体に接着固定してある。このように打板部を本体に接着固定するので、打板部の厚さ寸法をより薄くすることができる。従って、打板部の音質を向上させることができる。
【0034】
(7)本発明に係る打楽器は、前記打板部の両側には側板部が設けてあり、少なくとも一方の側板部には当該側板部を貫通する貫通孔が開設してあり、該貫通孔の開口度を調整する調整蓋が回動可能に設けてあることを特徴とする。
【0035】
本発明の打楽器にあっては、打板部の両側には側板部が設けてあり、少なくとも一方の側板部には当該側板部を貫通する貫通孔が開設してある。そして、この貫通孔の開口度を調整する調整蓋が回動可能に設けてある。本打楽器による演奏をマイクで集音する際にハウリングを生じる場合があるが、蓋部材によって貫通孔の開口度を調整することによって、前記ハウリングを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明に係る打楽器の一例を示す外観斜視図である。
【
図2】本発明に係る打楽器の一例を示す外観斜視図である。
【
図5】
図3及び
図4に示した支持部材の一端部側を示す部分斜視図である。
【
図7】従来のワイヤ型の打楽器を示す分解斜視図である。
【
図8】響き線型打楽器の内部構成の一例を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明に係る打楽器について図面を用いて詳述する。なお、本実施の形態で説明する事柄は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲での変形又は改造を含むことはいうまでもない。
【0038】
図1及び
図2は本発明に係る打楽器の一例を示す外観斜視図であり、
図1は正面側を、
図2は背面側をそれぞれ示している。また、
図3は
図1に示した打楽器の側断面図であり、
図4は
図1に示した打楽器の背面断面図である。本打楽器は直方体殻状の本体1を備えている。該本体1は、奏者が叩打する打板部1aを正面にして、打板部1aの両側に配された側板部1c,1c、打板部1aに対向配置された背板部1e、打板部1a、両側板部1c,1c及び背板部1eの上端に担持され、それらで囲繞される領域を塞止する天板部1b、並びに天板部1bに対向配置された底板部1dで構成されており、底板部1dの下面の適宜位置には脚部20,20,20,20が取り付けてある。
【0039】
これら打板部1a、両側板部1c,1c、背板部1e、天板部1b及び底板部1dは木材、樹脂又は/及び金属材等、適宜の材料を用いることができる。例えば、打板部1a及び背板部1eには無垢の板材を用い、両側板部1c,1c、天板部1b及び底板部1dには合板材を用いることによって、所要の音質及び強度を得ると共に、材料コストを廉価にすることができる。なお、本実施の形態では、直方体殻状の本体1を備える場合について説明するが、本発明はこれに限らず、4面又は8面体等、多面体殻形であればよい。
【0040】
図3及び
図4に示したように、打板部1aと両側板部1c,1cとが接合する角部、背板部1eと両側板部1c,1cとが接合する角部にはそれぞれ、打板部1a及び両側板部1c,1cの高さ寸法と同じ長さ寸法の縦桟15,15,15,15が固着してある。また、互いに対向する各縦桟15,15、15,15、15,15、15,15の上端部間及び下端部間にはそれぞれ横桟16,16、16,16、…,…が架設してあり、横桟16,16、16,16、…,…は天板部1bと打板部1a、両側板部1c,1c及び背板部1eとが接合する各角部、並びに打板部1a、両側板部1c,1c及び背板部1eの下縁内面に固着してある。これら縦桟15,15,15,15及び横桟16,16、16,16、…,…によって、本体1の骨格フレームが形成されている。
【0041】
前述した天板部1b、両側板部1c,1c及び底板部1dは、所要の強度が得られる厚さ寸法の板材を用いて構成してある。一方、打板部1a及び背板部1eはそれらより薄い適宜厚さ寸法の板材を用いており、縦桟15,15,15,15及びそれらに対向配置された横桟16,16、16,16、並びに両側板部1c,1cの端面に接着剤を用いて接着させてある。ここで、天板部1b、両側板部1c,1c及び底板部1dの厚さ寸法としては10〜13mm程度を採用することができ、打板部1a及び背板部1eの厚さ寸法としては3〜5mm程度を採用することができる。なお、天板部1b、両側板部1c,1c及び底板部1dには合板を用い、打板部1a及び背板部1eには無垢材を用いた場合を示している。
【0042】
ここで、従来の打楽器では、打板部を、天板部、両側板部及び底板部の端面にネジ止していたため、比較的薄い厚さ寸法の打板部を用いた場合、叩打した際の衝撃によって打板部のネジ止された部分が次第に崩壊して行き、これによって音質が漸次低下する。そのため、叩打による衝撃に耐え得る厚さ寸法の打板部になしてあるが、叩打の強弱による音の表現幅は狭かった。これに対して、本発明に係る打楽器にあっては、前述した如く打板部1aを縦桟15,15,15,15及び横桟16,16、16,16、並びに両側板部1c,1cの端面に接着させてあるため、より薄い厚さ寸法の打板部1aであっても叩打した際の衝撃に耐え得ることができ、音質の低下を回避することができる。また、より薄い適宜厚さ寸法の打板部1aを配設することによって、叩打の強弱による音の表現幅を拡大させることができる。更に、より薄い適宜厚さ寸法の背板部1eを用いることによって、叩打した際の音質を向上させることができる。
【0043】
図2に示したように、この背板部1eの中央より高い適宜位置には横長の放音穴2が開設してあり、これによって打板部1aの天板部1b側の領域を叩打した際に生じる高音側の音を背板部1eによって遮ることなく直接放出させることができるため、高音側の音質が向上する。一方、後述するように低音側の音は打板部1aの中央位置を叩打することによって生成することができるが、低音側の音には前述したような放音穴2の位置依存性が無いため、放音穴2を背板部1eの中央より高い適宜位置に開設した場合であっても低音側の音質に悪影響を及ぼすことはない。なお、放音穴2は1つでも複数でもよく、その形状も楕円又は長円等、適宜の形状でよい。
【0044】
前述した底板部1dは図示しないネジによって両側板部1c,1cの端面に着脱可能に固定してあり、底板部1dを取り外すことによって、後述する第1バズ音生成部21,21及び第2バズ音生成部22,22を調整し得るようになっている。
【0045】
ところで、
図1に示したように、側板部1cの適宜位置には当該側板部1cを貫通する貫通孔3が開設してあり、該貫通孔3は回動可能に設けられた蓋部材4によって適宜の開口度になるように開閉されるようになっている。本打楽器による演奏をマイクで集音する際にハウリングを生じる場合があるが、蓋部材4によって貫通孔3の開口度を調整することによって、前記ハウリングを防止することができる。
【0046】
打板部1aの両側部に対向する縦桟15,15の間であって天板部1b近傍の位置には、第1バズ音生成部21,21に共有された棒状の支持部材23が打板部1aの裏面から適宜間隙を隔てて横臥してあり、該支持部材23の両端側の適宜位置にはそれぞれ、弧状になした複数本(
図4にあっては3本)の弦24,24,24、24,24,24が同心状に突設してある。また、打板部1aの両側部に対向する縦桟15,15の間であって底板部1d近傍の位置には第2バズ音生成部22,22に共有された棒状の支持部材23が打板部1aの裏面から適宜間隙を隔てて横臥してあり、該支持部材23の両端側の適宜位置にはそれぞれ、弧状になした複数本(
図4にあっては3本)の弦26,26,26、26,26,26が同心状に突設してある。
【0047】
図5は
図3及び
図4に示した支持部材23の一端部側を示す部分斜視図であり、
図6は
図5に示した支持部材23の端面図である。支持部材23は側断面視が一側から他側へ亘って漸次高さ寸法が減少する台形状をなしており、支持部材23の端部は他の部分より一段低くして前述した縦桟15(
図3参照)に連結させる連結部23aになしてある。支持部材23の他側面には、第1バズ音生成部21又は第2バズ音生成部22を構成する弦24,24,24、26,26,26(いずれも
図4参照)の数に応じた複数対の(
図5では3対)の固定用孔23b,23b、23b,23b、23b,23bが支持部材23の長手方向へ適宜の距離を隔てて貫通してあり、対をなす固定用孔23b,23b、23b,23b、23b,23bに前述した弦24,24,24、26,26,26(
図4参照)の両端をそれぞれ挿入させてネジ等によって固定するようになっている。
【0048】
このような固定用孔23b,23b、23b,23b、23b,23bは支持部材23の他端側にも設けてあり、前同様、対をなす固定用孔に弦24,24,24、26,26,26(
図4参照)の両端をそれぞれ挿入させてネジ等によって固定する。
【0049】
かかる支持部材23の他側面にそれぞれ第1バズ音生成部21又は第2バズ音生成部22を構成する弦24,24,24、26,26,26を弧状に固定しておき、
図3及び
図4に示したように、第1バズ音生成部21,21にあっては支持部材23の他側面が天板部1bに対向するように配置し、また第2バズ音生成部22,22にあっては支持部材23の他側面が底板部1dに対向するように配置して、両支持部材23,23の連結部23a(23a),23a(23a)(
図6参照)を対向する縦桟15,15に連結固定してある。なお、支持部材23の連結部23aと他の部分との段差寸法は、前述した縦桟15の厚さ寸法より小さくしてあり、これによって支持部材23と打板部1aとの間に適宜の間隙が形成されるようになっている。
【0050】
前述したように支持部材23は側断面視が一側から他側へ亘って漸次高さ寸法が減少する台形状をなしており、支持部材23,23の連結部23a(23a),23a(23a)を縦桟15,15に連結させた場合、支持部材23,23の他側面と打板部1aとのなす角が鋭角になり、これによって支持部材23,23の他側面に固定された弦24,24,24、24,24,24、26,26,26、26,26,26が打板部1aに押しつけられるようになっている。従って、第1バズ音生成部21,21の弦24,24,24、24,24,24に対向する部分を叩打した場合、打板部1aの振動によって各組の弦24,24,24、24,24,24が打板部1aと細かく接離してバズ音が発生する。なお、支持部材23,23の他側面と打板部1aとのなす角は、第1バズ音生成部21,21及び第2バズ音生成部22,22を構成する各弦24,24,24、24,24,24、26,26,26、26,26,26が打板部1aに比較的弱い当接力で当接するように調整してある。
【0051】
図4に示したように、第1バズ音生成部21,21の弦24,24,24、24,24,24に対向する部分は、打板部1aの角部近傍の部分であるので他の部分より高い音が生成される。そして、これにバズ音が加わるため、スネアドラムに近い音が生成される。
【0052】
ところで、第2バズ音生成部22,22の各弦26,26,26、26,26,26の直径は、第1バズ音生成部21,21の各弦24,24,24、24,24,24の直径より小さくしてある。例えば、第2バズ音生成部22,22の各弦26,26,26、26,26,26には1.0mm以上1.3mm以下の直径のギター用弦を用い、第1バズ音生成部21,21の各弦24,24,24、24,24,24には1.2mm以上1.5mm以下の直径のギター用弦を用いるとよい。
【0053】
この場合、打板部1aを叩打する力が弱い場合、第1バズ音生成部21,21の各弦24,24,24、24,24,24はあまり反応しない。ところが、打板部1aの厚さ寸法が小さいため、弱い振動であっても打板部1aの高さ方向の低位まで伝達して、そこに配設された第2バズ音生成部22,22の各弦26,26,26、26,26,26が反応してバズ音が生成される。一方、打板部1aを叩打する力が強い場合、第1バズ音生成部21,21の各弦24,24,24、24,24,24が反応してバズ音が発生するのに加えて、第2バズ音生成部22,22の各弦26,26,26、26,26,26のバズ音も生成されるため、より迫力のあるバズ音が生成される。このように、打板部1aを叩打する力が強い場合はより迫力のあるバズ音が生成され、打板部1aを叩打する力が弱い場合はより小さなバズ音が生成されるため、音の表現幅が広い。
【0054】
また、前述したように第1バズ音生成部21,21にあっては、支持部材23の両端側の適宜位置に2組の弦24,24,24、24,24,24が配設してあり、
図4に示したように支持部材23の中央領域にはいずれの組の弦24,24,24、24,24,24もかからないようになっている。打板部1aの高さ方向の上位位置であって、打板部1aの幅方向の中央部分は、打板部1aの角部より低い音が生成される。そして、この部分には第1バズ音生成部21,21のいずれの組の弦24,24,24、24,24,24もかからないため、バズ音が殆ど生成されない。従って、打板部1aのかかる部分を叩打することによって、スネアドラムより低いタムに近い音が生成される。
【0055】
一方、打板部1aの中央部分は他の部分より低い音が生成されるが、この部分には第1バズ音生成部21,21及び第2バズ音生成部22,22に設けたいずれの組の弦24,24,24、24,24,24、26,26,26、26,26,26もかからないため、バズ音が殆ど生成されない。従って、打板部1aのかかる部分を叩打することによって、最も低いバスドラムに近い音が生成される。
【0056】
このような打楽器にあっては、前述したように、第1バズ音生成部21及び第2バズ音生成部22は、各弦24,24,24、26,26,26の両端部を支持部材23,23に固定することによって当該弦24,24,24、26,26,26を弧状になして構成してあるため、当該弦24,24,24、26,26,26に張力が与えられておらず、従って弦24,24,24、26,26,26の調整又は張り替えといった保守点検が殆ど不要である。
【0057】
一方、弦24,24,24、26,26,26の先端部分が弧状であるため、弦24,24,24、26,26,26の先端部分を打板部1aへ当接させる力を可及的に弱くしても、弦24,24,24、26,26,26の先端部分が暴れることなく良好なバズ音を生成することができる。そのため、弦24,24,24、26,26,26の先端部分を打板部へ当接させる力を比較的に弱くすることによって、打板部1aを比較的弱く叩打したときでも第1バズ音生成部21及び第2バズ音生成部22の弦24,24,24、26,26,26を反応させることができ、叩打の強弱による音の表現の幅を広げることができる。
【0058】
更に、第1バズ音生成部21及び第2バズ音生成部22は、前述したように弦24,24,24、26,26,26の両端部を支持部材23,23に固定することによって当該弦24,24,24、26,26,26を弧状になして構成してあるため、コンパクトである。従って、打板部1aにおいて第1バズ音生成部21及び第2バズ音生成部22が配設された部分を叩打した場合はバズ音を生成することができ、それ以外の部分を叩打した場合はバズ音が殆ど混入しない音を生成することができる。即ち、バズ音の分離能が高い。
【符号の説明】
【0059】
1 本体
1a 打板部
1b 天板部
1c 側板部
1d 底板部
1e 背板部
2 放音穴
3 貫通孔
4 蓋部材
15 縦桟
16 横桟
21 第1バズ音生成部
22 第2バズ音生成部
23 支持部材
24 弦
26 弦