特許第5769804号(P5769804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5769804不飽和脂肪酸誘導体からのω−アミノカルボン酸及びそれらのエステルの合成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769804
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】不飽和脂肪酸誘導体からのω−アミノカルボン酸及びそれらのエステルの合成
(51)【国際特許分類】
   C07C 227/08 20060101AFI20150806BHJP
   C07C 229/08 20060101ALI20150806BHJP
   C07C 211/03 20060101ALI20150806BHJP
   C07C 209/26 20060101ALI20150806BHJP
   C07C 45/40 20060101ALI20150806BHJP
   C07C 47/02 20060101ALI20150806BHJP
   C07C 69/67 20060101ALI20150806BHJP
   C07C 67/333 20060101ALI20150806BHJP
   B01J 25/02 20060101ALI20150806BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150806BHJP
【FI】
   C07C227/08
   C07C229/08
   C07C211/03
   C07C209/26
   C07C45/40
   C07C47/02
   C07C69/67
   C07C67/333
   B01J25/02 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-515738(P2013-515738)
(86)(22)【出願日】2010年12月7日
(65)【公表番号】特表2013-530971(P2013-530971A)
(43)【公表日】2013年8月1日
(86)【国際出願番号】EP2010069039
(87)【国際公開番号】WO2011160730
(87)【国際公開日】20111229
【審査請求日】2013年3月14日
(31)【優先権主張番号】102010026196.3
(32)【優先日】2010年6月25日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ハネン
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト ヘーガー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ロース
【審査官】 斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/004220(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/004219(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/055273(WO,A1)
【文献】 MILLER W. R.,NYLON-9 VIA 9-AMINONONANOIC ACID FROM SOYBEAN OIL,INDUSTRIAL AND ENGINEERING CHEMISTRY PRODUCT RESEARCH AND DEVELOPMENT,米国,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,1971年 1月 1日,V10 N4,P442-447
【文献】 JOURNAL OF THE AMERICAN OIL CHEMISTS' SOCIETY,1968年,V45 N12,P888-894
【文献】 油化学辞典−脂質・界面活性剤−,丸善株式会社,2006年 5月30日,第二版,p.337
【文献】 PERKINS R. B.,NYLON-9 FROM UNSATURATED FATTY DERIVATIVES: PREPARATION AND CHARACTERIZATION,JOURNAL OF THE AMERICAN OIL CHEMISTS' SOCIETY,ドイツ,SPRINGER,1975年11月 1日,V52,P473-477
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 227/08
C07C 229/08
C07C 209/26
C07C 211/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ω−アミノ酸又はそれらのエステルの製造方法であって、次の工程:
a.不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸誘導体をオゾン分解する工程、
b.前記オゾン分解から得られた反応混合物をω−アミノ酸又はそれらのエステルに還元的アミノ化する工程、
その際に前記オゾン分解及び前記還元的アミノ化を直接、前記オゾン分解からの反応混合物を単離又は後処理せずに連続して実施し、かつ前記オゾン分解及び前記還元的アミノ化を、溶剤として溶剤の全量を基準として水を少なくとも0.5質量%有する混合物でのC1〜C5 アルコールを用いて実施する
ことを特徴とする、ω−アミノ酸又はそれらのエステルの製造方法。
【請求項2】
前記溶剤が溶剤の全量を基準として1〜20質量%の水を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記溶剤が溶剤の全量を基準として2〜15質量%の水を含有する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記溶剤が溶剤の全量を基準として5〜10質量%の水を含有するが、しかし反応される二重結合の数に対して少なくとも化学量論量で存在する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1個の二重結合を有する脂肪酸又は脂肪酸誘導体を使用する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸誘導体として、オレイン酸、オレイン酸アルキルエステル、ウンデシレン酸、ウンデシレン酸アルキルエステル、エルカ酸、エルカ酸アルキルエステルの群から選択される化合物を使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記還元的アミノ化を水素及び触媒を用いて実施する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記触媒がラネー−ニッケルである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
1〜C5 アルコールとして第二級又は第三級のアルコールを使用する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
1〜C5 アルコールとして2−プロパノール又はt−ブタノールを使用する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記還元的アミノ化を30〜100バールの圧力で実施する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記還元的アミノ化を50〜150℃の温度で実施する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
脂肪アミンの製造方法であって、次の工程:
a.不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸誘導体をオゾン分解する工程、
b.前記オゾン分解から得られた反応混合物を脂肪アミンに還元的アミノ化する工程、
その際に前記オゾン分解及び前記還元的アミノ化を直接、前記オゾン分解からの反応混合物を単離又は後処理せずに連続して実施し、かつ前記オゾン分解及び前記還元的アミノ化を、溶剤として溶剤の全量を基準として水を少なくとも0.5質量%有する混合物でのC1〜C5 アルコールを用いて実施する
ことを特徴とする、脂肪アミンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン分解及び引き続き還元的アミノ化によるω−アミノ酸又はそれらのエステルの製造方法に関する。本発明のさらなる対象は、不飽和脂肪酸又は脂肪酸誘導体のオゾン分解及び引き続き還元的アミノ化による脂肪アミンの製造方法である。
【0002】
本発明の意味でのオゾン分解は、オゾンの作用による炭素−炭素二重結合の開裂であると理解される。後処理の仕方に応じて、カルボニル化合物、アルコール又はカルボン酸が得られる。
【0003】
その反応は、オレフィン(1)のC,C−二重結合へのオゾンの1,3−双極性付加環化により、その一次オゾニド(1,2,3−トリオキソラン、2)の形成下に行われる。基Rは水素、アルキル基、アルキレン基、アルキニル基又はアリール基を意味する。基Rは1分子中で同じか又は異なっていてよく、かつ場合により置換されている。この化合物(2)は不安定な中間体であり、この中間体は直接、アルデヒドフラグメント(3)とカルボニルオキシド(4)とに分解する。前記化合物は次の図式で示される:
【化1】
【0004】
前記カルボニルオキシドは、一方では重合することができ、もしくは1,2,4,5−テトラオキソラン(5)に二量化することができ、又はさらなる付加環化において二次オゾニド(1,2,4−トリオキソラン、6)に再結合することができる。化合物6から出発して、アルデヒド(7、8)は還元的後処理を経て、もしくはカルボン酸(9、10)は酸化的後処理を経て、製造されることができる。そしてまた前記アルデヒドはさらにアルコールまで還元されることができる。
【0005】
この反応順序の本質的な欠点はたいてい爆発性の二次オゾニド、ポリマーペルオキシドもしくは1,2,4,5−テトラオキソランの形成であり、これらは一部には安定な化合物であり、そしてその後の反応工程もしくは後処理工程において蓄積されうるものであり、かつかなりの危険がある。さらに二次オゾニドの酸化的後処理もしくは還元的後処理の際に1酸化当量もしくは1還元当量、例えばジメチルスルフィド、トリフェニルホスフィン等が使用されなければならない。この理由から、経済的に是認できる費用で大規模に工業的に実施可能なプロセスへの転換は難しい。
【0006】
二次オゾニドもしくはより高分子量のオゾニド付加物の形成を回避するために、技術水準において求核試薬、例えばアルコールを用いるカルボニルオキシド(4)の捕捉が記載されている。たいてい前記求核試薬は同様にその溶剤である。二次オゾニドへの二次開裂生成物(3)のカルボニル基との再結合はこのようにして抑制される(S.L. Schreiber et al. Tet. Lett. 1982, 23 (38), 3867; R.E. Claus, S.L. Schreiber Organic Syntheses, Coll. Vol. 7, 1990, 68)。
【0007】
【化2】
【0008】
幾つかの場合に、その後の工程においてヒドロペルオキシド基(11)はアセチル化され、かつ塩基性触媒反応下に分解され、その際に、使用されたアルコールのカルボン酸エステル(13)が形成される。
【0009】
【化3】
【0010】
他の研究において、同じ目的のためにカルボン酸が溶剤として使用される(独国特許出願公開(DE-A1)第2207699号明細書、独国特許出願公開(DE-A1)第2433408号明細書、独国特許出願公開(DE-A1)第3037487号明細書)。前記カルボン酸のカルボキシル基は前記カルボニルオキシド4に付加する。ヒドロペルオキシド誘導体(14)の後処理はそしてまた前記のように行われる。しかしながらその塩基性開裂の際に生じる混合無水物(15)はさらに水で、熱時に遊離酸(16)に開裂されなければならない。
【0011】
【化4】
【0012】
非対称オレフィン、例えばオレイン酸メチルエステルのオゾン分解の場合に、これまでの考察によれば、その一次オゾニドの開環の2つの可能性がある。以下に、プロトン性溶剤としての酢酸中でのオレイン酸メチルエステルのオゾン分解に基づく異なる反応経路が示されている。
【0013】
前記二重結合へのオゾンの付加後に、その一次オゾニド18の5位での開裂(経路a)もしくはその1,2,3−トリオキソランの4位での開裂(経路b)が行われることができる。それぞれのカルボニルオキシド中間体は前記酢酸により捕捉される。それに続く後処理工程において、化合物20及び24のヒドロペルオキシド基は無水酢酸でアセチル化される。今や比較的良好な脱離基(酢酸エステル基)及び酸性プロトンが存在するので、塩基としての酢酸ナトリウムの添加下に既に、酢酸エステル基の脱離下での脱プロトン化が行われ、それから化合物21及び25からまず最初に22及び26の無水物が形成される。水でのこれらの無水物の開裂後に、相応するモノカルボン酸もしくはジカルボン酸モノメチルエステルが得られる。
【0014】
【化5】
【0015】
結果として、すなわち予測されうる4種の生成物のランダム分布が得られる。前記反応経路の効果的な制御は不可能であるので、この手順は、例えば、還元的アミノ化を経て所望の9−アミノノナン酸もしくはそれらのエステルが得られる9−オキソ−ノナン酸メチルエステルの合成に極めて適していない。
【0016】
この問題の解決アプローチ、すなわち二次オゾニドの形成を回避しながらのω−オキソカルボン酸及びそれらのエステルの製造は、Dussault et al.(P.H. Dussault et al., Org. Lett. 2006, 8 (15), 3199)により他の系に基づき記載されたように、触媒としてのNMMO(N−メチルモルホリン−N−オキシド)の存在下でのオゾン分解にある。しかしながら欠点は、ここで満足のいく結果を達成するために、オレイン酸メチルエステルのオゾン分解の場合に3当量のNMMOが使用されなければならないことにある。
これに対して技術的に関連した、不飽和脂肪酸エステルの前記オゾン分解及び前記アルデヒドの直接取得の反応操作は、溶剤としての水(約5%)を有するアセトンの混合物の使用にある。しかしながら、Dussaultにより記載された実験の場合に末端オレフィンのみが使用された(P.H. Dussault, C. E. Schiaffo, J. Org. Chem. 2008, 73, 4688)。
【0017】
独国特許出願公開(DE-A1)第34 40 620号明細書には、脂肪酸誘導体のオゾン分解の際の水の作用が記載されている。前記オゾン分解の際に既にかつ前記オゾニドの還元的開裂の際にはじめてではなく反応混合物中に水が存在する場合に、アルデヒドが生じることが観察された。しかしながら、アルデヒドの高められた収率は、水素及び金属触媒での還元的後処理の際にはじめて記載された。その際に前記水は好ましくは還元工程においてはじめて添加された。前記オゾン分解段階におけるオゾニドの形成の問題はそれにより残っている。
【0018】
前記のオゾン分解法は、前記還元的アミノ化の条件と適合しておらず、かつ前記オゾン分解段階における爆発性オゾニドの発生を確実に回避しないという欠点を有する。
【0019】
さらに、前記オゾン分解の際に使用される多くの溶剤、例えばカルボン酸及びケトンは前記還元的アミノ化における使用に適していない、それというのもこれらは副生物の形成をまねくからである。
【0020】
故に本発明の技術的課題は、一方ではオゾニドの形成を回避し、かつ他方では前記還元的アミノ化におけるオゾン分解からの前記反応生成物の直接変換を可能にする、ω−アミノ酸又はそれらのエステルの製造方法を提供することであった。
【0021】
この技術的課題は、次の工程:
a)不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸誘導体をオゾン分解する工程、
b)オゾンとの反応から得られた前記反応混合物をω−アミノ酸又はそれらのエステルに還元的アミノ化する工程、
その際に前記反応を、溶剤として溶剤の全量を基準として水を少なくとも0.5質量%有する混合物でのC1〜C5−アルコールを用いて実施する
ことにより特徴付けられている、ω−アミノ酸又はそれらのエステルの製造方法により解決される。
【0022】
本発明の意味でのオゾン分解として、脂肪酸又は脂肪酸誘導体とオゾンとの反応であると理解される。
【0023】
こうして実施される方法が、技術水準の従来の方法と比較して、より安全な実施を可能にすることが意外なことに見出された。オゾニドもしくは中間的に生じるカルボニルオキシドは、存在している水と直接反応する。オゾニド及び水の付加物は、カルボニル基及び過酸化水素の形成下に直ちに分解する。それゆえ、危険な二次オゾニドもしくはオリゴマーオゾニド又はポリマーオゾニドの形成とはならず、これらは、水素及び金属触媒又は錯金属水素化物を用いる前記オゾン分解の中間体を還元的後処理する定着した方法の場合に例外なく、まず最初に生じるであろう。本方法のさらなる利点は、1つの反応工程において専らアルデヒドが得られることである。
【0024】
少なくとも0.5質量%の水との混合物での溶剤としてのC1〜C5−アルコールの使用の際に、前記オゾン分解の反応生成物が分離又は後処理せずに直接、還元的アミノ化に供給されることができ、かつこのやり方でω−アミノ酸が高い収率で製造されることができることが確かめられた。それゆえ、本発明による方法は単純かつ安全な経路を示しているので、不飽和脂肪酸エステルから相応するω−アミノカルボン酸及び脂肪アミンも製造することができる。
【0025】
特別な実施態様において、前記溶剤は溶剤の全量を基準として、水を1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%及び特に好ましくは5〜10質量%含有する。
【0026】
脂肪酸又は脂肪酸誘導体として、二重結合を少なくとも1個有するものが使用される。その際に、脂肪酸及び脂肪酸誘導体として特に好ましいのは、オレイン酸、オレイン酸アルキルエステル、ウンデシレン酸、ウンデシレン酸アルキルエステル、エルカ酸、エルカ酸アルキルエステルの群から選択される化合物である。
【0027】
本発明による方法のための出発物質として、しかし他の不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸誘導体が使用されることもできる。これらには例えばミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、イコセン酸、セトレイン酸及びネルボン酸及びそれらのエステルが属する。これらはモノ不飽和脂肪酸である。さらに、ポリ不飽和脂肪酸、例えばリノール酸、リノレン酸、カレンド酸(Calendulasaeure)、プニカ酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸、チムノドン酸、イワシ酸(Clupanodonsaeure)及びセルボン酸又はそれらのエステルも使用されることができる。
【0028】
さらに好ましい実施態様において、前記オゾン分解及び前記還元的アミノ化は直接、前記オゾン分解からの前記反応混合物の単離又は後処理なしで連続して行われる。
【0029】
特に好ましい溶剤として、第二級又は第三級のアルコール、極めて特に好ましくは2−プロパノール又はt−ブタノールが使用される。
【0030】
前記オゾン分解の実施は通常、溶剤としてのアルコール中で行われる。前記反応混合物はさらに、溶剤の全量を基準として水を少なくとも0.5質量%含有する。通常、前記不飽和脂肪酸エステルは0.1〜1モル/Lの濃度で存在する。より高い濃度の脂肪酸エステルが使用される場合には、添加される水の量が、反応される二重結合の数に対して常に少なくとも化学量論的に選択されることが顧慮されるべきである。前記オゾン分解は好ましくは0〜25℃の温度で実施される。通常、オゾン製造のためにオゾン発生器を利用する。このオゾン発生器は供給ガスとして工業用空気又は二酸化炭素と酸素との混合物を使用する。オゾン発生器中でオゾンは無音放電により製造される。その際に、酸素ラジカルが形成され、これが酸素分子と反応してオゾンになる。
【0031】
前記オゾン分解の実施後に、得られた反応混合物は、さらに後処理又は単離せずに前記還元的アミノ化に供給される。この還元的アミノ化は好ましくはラネー−ニッケル触媒及び水素を用いて実施される。この還元的アミノ化はそれ自体として技術水準において知られており、かつ常用のプロセスパラメーターに従って行われる。好ましくは、前記還元的アミノ化の際の圧力は30〜100バール、好ましくは50〜100バールの範囲内及びその温度は50〜150℃の範囲内である。
【0032】
前記還元的アミノ化の際に、好ましくは水素が前記オゾン分解からの反応生成物に供給される。このためには、前記オゾン分解からの反応混合物はオートクレーブ中へ移され、かつ前記触媒が装入される。前記オートクレーブの密封後に、アンモニア及び水素は加圧下に添加される。前記反応混合物は加熱され、かつ前記反応の実施後に前記オートクレーブは放圧され、かつ前記反応生成物は後処理される。前記反応の際に、脂肪アミン並びにω−アミノ酸又はそれらのエステルが高い収率で生じる。
【0033】
本発明による方法の利点は、前記オゾン分解における二次オゾニド又はまたオリゴマーオゾニドのような爆発性の副生物の形成が水の添加により回避されることである。さらに、本発明による方法の場合に、1つの反応工程におけるアルデヒドの直接形成が、例えば技術水準において必要であるような水素/触媒、錯金属水素化物、ジメチルスルフィド、トリフェニルホスフィン、亜鉛/酢酸のようなさらなる還元当量を使用せずに行われる。前記オゾン分解の反応混合物が直ちに前記還元的アミノ化においてさらに反応されることができるので、後処理工程が回避され、ひいてはその全収率の増加及び全体ではるかにより費用のかからない反応実施も可能になる。本発明による方法はさらに、前記オゾン分解からの反応混合物の還元的アミノ化が直接実施されることができることを可能にする。
【0034】
以下の例は本発明をより詳細に説明するものである。
【0035】

オレイン酸メチルエステル(4g、95質量%純度、0.012モル)を、ガス導入管を備えた二つ口フラスコ中に、t−ブタノール(20mL)及び水(1mL、0.056モル)の溶剤混合物中で装入する。二酸化炭素中の酸素5体積%からなる供給ガスを40mL/分の流速でオゾン発生器に導く。使用されるオゾン発生器はAnseros社の型式'COM-AD'の装置である。前記オゾン発生器はその際に最大出力にセットされている。オゾン含有ガス混合物をよく撹拌しながら反応混合物中へ導く。廃ガス流を、ガス洗浄びんを経て約5質量%ヨウ化カリウム水溶液へ導く。60分後に基質は変換されており、その上でガス導入を中断する。反応混合物はGC分析によれば9−ノナナール39.5質量%及び9−オキソ−ノナン酸メチルエステル38.2質量%の含量を有する。
【0036】
反応混合物を100mL鋼製オートクレーブ中へ充てんし、ラネー−ニッケル(1.2g)を入れる。前記オートクレーブの密封後に、圧力シリンダを介してアンモニア(11.35g、0.67モル)を添加する。水素70バールを押し込み、80℃に加熱する。6時間後に反応混合物を冷却し、前記オートクレーブを放圧する。GC分析によれば、前記アルデヒドは完全に反応した。その際に9−アミノノナン46.4質量%及び9−アミノノナン酸メチルエステル24.0質量%が形成された。