(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トランスグルタミナーゼがカルシウム依存性であって、組成物グラム当たり少なくとも0.5ユニットの活性を与える量存在し、組成物がさらにカルシウムを含有する、請求項1に記載の組成物。
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化グアニジン、チオグリコール酸塩、システイン、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム、またはホルムアルデヒドをいずれも含有しない、請求項1に記載の組成物。
組成物を滞留させるステップの後、処理された毛髪を濡らし;毛髪をセットするステップの間またはその後に、処理された毛髪を乾かすために加熱乾燥装置を使用する、請求項9に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
毛髪をまっすぐに矯正するさまざまな方法が知られているが、それぞれに程度の差はあれ、利点と欠点がある。縮毛矯正の技術には、毛髪のタンパク質の一次構造を変化させるもの、タンパク質の二次構造もしくは三次構造を変化させるもの、ならびに毛髪のカールしやすい自然の傾向に逆らって、まっすぐに矯正された形状に毛髪を保持するものがある。
【0003】
親出願US13/013,482(参考としてその全体を本明細書に含める)において、本発明者らは新規で有用な縮毛矯正組成物を開示したが、これは、pH 5.0から7.5に維持された美容上(化粧上)許容される基剤中に、ポリリジンおよびトランスグルタミナーゼを含有し、好ましくはピロ亜硫酸ナトリウム(メタ重亜硫酸ナトリウム)、Na
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5も含有するものであって、さらに必要に応じてトルマリンおよびカルシウムを含有する。この組成物の有効性はpHに依存する。しかしながら、こうした製品は有効な縮毛矯正剤ではあるが、時間の経過につれて有効性が減少することが認められた。本発明において、この問題に対する本発明者らの解決策の結果として、新規の改良された縮毛矯正組成物が得られる。
【0004】
ヒト毛髪
米国特許第5,395,490号は、参考としてその全体を本明細書に含めるものとする。米国特許第5,395,490号のいくつかの図は、ヒトの毛髪繊維、毛髪のタンパク質成分、およびジスルフィド結合のエネルギーレベルを示す。ヒトの毛髪繊維は、3つの主要な形態的成分;キューティクル(毛小皮)、コルテックス(皮質)、および細胞膜複合体を含んでいるが、それ自体は、ケラチンペプチド鎖のタンパク質マトリックスからなる。
【0005】
ヒト毛髪の自然の形状および構造的完全性は、ジスルフィド結合(システイン-システイン結合)の配置にある程度依存する。ヒト毛髪において、ペプチド鎖のある部分を同一鎖の別の部分に結び付けるジスルフィド結合は、タンパク質の三次構造に関与するが、2つの異なるペプチド鎖を結び付けるジスルフィド橋は四次構造に関与する。さらに、ジスルフィド結合は、結合のごく近傍でタンパク質二次構造を保護することが知られている。ジスルフィド結合は、水素結合を遮蔽することによってこれを達成することができる。
【0006】
したがって、毛髪の形状に長期的変化をもたらすには、ジスルフィド結合の変更が必要、および/または有効であると一般に考えられている。ジスルフィド結合を再配置しない毛髪形成処理は、結果的に、比較的短期間持続する毛髪形状の変化となる。たとえば、毛髪をスタイリングするために熱を使用すると、毛髪の一時的なストレート化をもたらすことができる。しかしながら、スタイリングされた毛髪は、空気中の湿気にさらされた結果、または洗髪の結果として、短時間で自然の形状に戻ることになる。毛髪をストレートにするために熱および水分を使用すると、毛髪の水素結合を切断および再構成することができるが、ジスルフィド結合は実質的に影響を受けない。水素結合はそれだけでは、毛髪の形状を長時間保持するには不十分であると考えられるが、その理由は、それより強いジスルフィド結合が最終的に、毛髪に再び元の形をとらせるからである。したがって、永続的な縮毛矯正には、相当数のジスルフィド結合の切断および再形成が必要であると考えられる。これを実行するためのさまざまな化学的処理が知られている。
【0007】
化学的縮毛矯正処理
化学薬品で毛髪を処理することによる縮毛矯正はよく知られている。使用される縮毛矯正剤によって、程度の多少はあれ、タンパク質構造の損傷を抑制することができる。すなわち、処理された毛髪のさまざまなタイプのタンパク質構造を破壊することもあるが、選んだタイプのタンパク質構造だけを破壊することもある。たとえば、一次構造を変化させる縮毛矯正製品は、毛髪タンパク質アミノ酸の内部の化学結合を弱める、および/または切断することによって、それを達成する。タンパク質構造のどこが変化したかにかかわらず、効果的な縮毛矯正処理は天然のカールをゆるめてストレートにする。一部の縮毛矯正剤は、他のものより効果的および/または効率的であるかもしれないが、通常、毛髪および頭皮に生じるダメージには両立し得ない兼ね合いがあり、そのダメージを制限するために補助的処理が必要である。一方、毛髪および頭皮へのダメージをいくぶん小さくできる可能性のある処理は、望ましい結果を達成するために、操作に長時間を要する可能性があり、またはかなり多量の製品を適用する必要があるかもしれず、または複数回の適用を必要とするかもしれない。
【0008】
一次構造を変化させる既知の縮毛矯正製品の中で、本発明者らは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、およびグアニジン水酸化物を含有する製品の名前を挙げることができる。水酸化物の縮毛矯正製品を繰り返し使用すると毛髪にきわめて有害となる可能性があることが一般に認められている。
【0009】
三次構造およびおそらくは四次構造も破壊する縮毛矯正製品の中で、本発明者らは、チオグリコール酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム、ピロ亜硫酸ナトリウム(Na
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5)、およびシステインの名前を挙げることができる。これらの含硫薬剤は、それらが毛髪タンパク質に与える損傷に、より標的化されている。これらの薬剤は本来、タンパク質全体を破壊するのではなくて、シスチンのジスルフィド結合を選択的に弱め、もしくは切断することによって作用する。第一に、含硫薬剤は、機械的圧力を加えると同時に、ジスルフィド結合を還元するために使用される。次に、新しい配置で新たなジスルフィド結合を形成させるので、毛髪にはあらたな形状が与えられる。この新たなジスルフィド結合の形成を助けるために酸化剤を使用してもよい。縮毛矯正の技術分野において、チオグリコール酸アンモニウムまたはシステインを繰り返し使用すると、毛髪に大いにダメージを与えると考えられるが、亜硫酸アンモニウムおよび亜硫酸水素アンモニウムもダメージを引き起こす。
【0010】
ホルムアルデヒドに基づく縮毛矯正製品も知られているが、ここ数ヶ月で保健機関による詳細な調査の対象となった。概して、既知の化学的処理は刺激が強く、ヒトの毛髪および皮膚にダメージを与えると考えられる。毛髪に与えられるダメージは、シスチン含量の減少(S-S結合が少ないほどタンパク質構造が失われていることを示す)、水接触角の低下(疎水性の減少)、キューティクルへの微小なダメージ(膨らんで盛り上がる)の増加、機械的破壊強度の低下として評価される。化学的な毛髪スタイリングの悪影響の、目に見える現れとしては、乾燥して、痛みやすく、またはコシのない毛髪、ならびにツヤの喪失および/または色落ちがあげられる。
【0011】
さまざまな美容院および小売りの毛髪処理が毛髪に引き起こす可能性のあるダメージに加えて、ユーザーの健康へのリスクも関心事である。起こりうるあらゆる健康リスクは、毛髪処理を受ける人に関係するが、特に、毛髪処理の化学薬品、および/または毛髪処理の過程で発生する化学物質に、繰り返し、または持続してさらされることを経験する、ヘアースタイリング専門技術者に関わるものである。一般に、小売り消費者もしくは美容専門技術者は、毛髪処理化学薬品と身体的に接触する可能性、および/または、毛髪処理製品から放出されるガスに曝される可能性がある。皮膚の刺激、アレルギー反応、および頭痛は、市販製品およびプロ用製品中に存在しうる1つもしくは複数の化学物質への過度の暴露の、症状の一部である。長時間暴露された後でも有害反応を引き起こさない製品が、あまり安全でない製品より確実に好ましい。
【0012】
トランスグルタミナーゼ
トランスグルタミナーゼは、タンパク質に結合したグルタミンとタンパク質に結合したリジンとを共有結合させる能力を持つ酵素ファミリーである。トランスグルタミナーゼ(以下、TGアーゼ)は、利用可能なグルタミン残基のアミド転移反応により、タンパク質の翻訳後修飾を触媒する。この活性の主な結果は、タンパク質におけるグルタミル-リジン架橋である。グルタミンは毛髪中で容易に利用できるが、リジンの存在はそれより少ない。一部のTGアーゼは、毛髪を含めて身体中に自然に存在する。動物、植物、および微生物起源に存在するTGアーゼもある。トランスグルタミナーゼの利用可能な起源は、粘菌、アルファルファ、モルモット、および細菌などであるが、これらに限定されない。TGアーゼは、局所的に用いられると、毛髪のタンパク質全体の構造に影響を及ぼす可能性がある。
【0013】
共有の同時係属出願US2009-0126754は、巻いた髪のカールを保持するために局所に適用されるトランスグルタミナーゼを使用すること(遊離リジンなし)を記載する。しかしながら、市販のトランスグルタミナーゼ混合物が2%、5%、および10%の濃度で存在するとき、その製品は適用後30分以内に、それぞれ25%、33%、および16%ほど、カールした毛髪がゆるんで伸びる状態を引き起こすことも報告された。それにもかかわらず、カールは完全にはなくならず、毛髪は、こうした製品をTGアーゼのみに基づく商業的に実現可能な縮毛矯正製品と見なすに十分なほどには、まっすぐにならなかった。
【0014】
他の局所的なトランスグルタミナーゼの使用が数多く提案されてきた。JP 2719166は、トランスグルタミナーゼおよび多価アルコールを含有する組成物を記載しており、毛髪の水分保持を高めることによって、ダメージを受けた毛髪の処理に有用であると言われている。JP 3-083908は、荒れた皮膚の手当をするために、ポリエチレングリコール、または他の水溶性材料と併用するトランスグルタミナーゼの使用を提案する。それは、皮膚、毛髪、もしくは爪に活性成分を結合させるのに用いるためにも推奨された(US 5,490,980)。WO01/21145は、毛髪染料の耐変色性を向上させるためにトランスグルタミナーゼを使用することを教示する。WO01/21139は、ダメージを受けたケラチン繊維の再構築に使用するために、トランスグルタミナーゼと、トランスグルタミナーゼに対して基質活性を有する活性物質を組み合わせることを提案する。米国特許第5,525,336号は、皮膚、毛髪、もしくは爪に適用して保護層を形成するために、角質細胞タンパク質とトランスグルタミナーゼの組み合わせを記載する。
【0015】
トルマリン
二次もしくは三次構造を変化させる縮毛矯正製品には、トルマリンを含有するものがある。トルマリンは、四面体6個からなるリングを特徴とする、対称中心のない菱面体晶ホウケイ酸塩である。それは半貴石であり、さまざまな量のアルミニウム、鉄、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、もしくはカリウムなどの元素とともに構成される結晶質ケイ酸塩である。毛髪タンパク質に及ぼす熱活性化トルマリンの有益な効果および利点は、共有の出願であるWO2010/096598、WO2010/096605、およびWO2010/096610の中で詳細に検討されており、参考としてその全体が本明細書に組み入れられる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本明細書の全体を通じて、「局所」は、毛髪、特にヒト頭髪の表面への適用を意味する。縮毛矯正処理に関して「永続的(パーマネント)」という言葉は、縮毛矯正された毛髪の形状が、ラウリル硫酸ナトリウム含有シャンプーで少なくとも12回洗髪する間、維持されることを意味する。好ましくは、縮毛矯正された毛髪が1日1回のシャンプー洗髪、および周囲の大気条件にのみ暴露されるならば、毛髪のストレートさは、少なくとも2週間、より好ましくは少なくとも1ヶ月、そしてもっとも好ましくは少なくとも2ヶ月間、維持される。さらに、処理された毛髪がびっしょり濡れると(すなわち入浴時)、新しい形状は失われる可能性がある。しかしながら、「永続的(パーマネント)」は、ひとたび乾かせば、以前びしょ濡れだった毛髪も、かなりの程度まで毛髪処理後の形状に戻ることを意味する。本明細書を通じて、「含む」は、事物の集合体が、必ずしも列挙された事物に限定されないことを意味する。
【0021】
トランスグルタミナーゼ
本発明のある態様は、1つもしくは複数のトランスグルタミナーゼを含んでなる。本発明のある実施形態で使用されるトランスグルタミナーゼは、動物、植物および微生物起源を含めて、さまざまな起源から得られる。利用可能なトランスグルタミナーゼの起源は、粘菌、アルファルファ、モルモット、および細菌などであるが、それらに限定されない。重量パーセントを単位として、本発明の縮毛矯正製品に使用されるトランスグルタミナーゼの量は、さまざまに変化する可能性があり、使用される個別の酵素の能力に左右される。
【0022】
多くのTGアーゼはカルシウム依存性であるが、これはグルタミンとリジンとの間の架橋結合がカルシウムの存在を必要とすることを意味する。炭酸カルシウム(CaCO
3)は毛髪中に存在するが、カルシウム依存性TGアーゼを使用する場合、カルシウムが基本製剤中にも与えられれば好ましい。たとえば、製剤中のカルシウムはCaCO
3として添加されてもよい。典型的には、炭酸カルシウムの有用な量は、約0.05%から約0.50%まで、たとえば、0.1%から0.2%までとすることができる。哺乳類TGアーゼは、どちらかといえばカルシウム依存性である。
【0023】
あるいはまた、本発明のある実施形態は、カルシウム非依存性TGアーゼを使用するが、これはどちらかといえば微生物ベースである。カルシウム非依存性TGアーゼを使用する場合、基本製剤に追加のカルシウムを添加する必要はないはずである。カルシウム非依存性TGアーゼの一例は、Activa(商標名)TG-TIの商標名でAjinomoto USAから市販されている。この製品は、マルトデキストリンと粉末微生物酵素の公称比99:1の組み合わせである。この微生物TGアーゼ(MTGアーゼ)は、Streptomyces mobaraensis(以前はStreptoverticillium mobaraenseとして分類された)の変異株に由来する。報告されたActiva(商標名)TG-TIの活性は81 - 135 U/gである。役立つ可能性のある他のAjinomoto製品の限定的でない例を、Yiming Biological Products Co., Ltd. (Jiangsu, China)製のいくつかの製品とともに、以下の表に示す。
【0024】
ある意味では、好ましいトランスグルタミナーゼ製品は、もっとも高い比活性およびもっとも単純な補助成分を有するものであって、それは、そうした製品が適用時に最高の反応性を示し、望ましくない副反応の可能性が低いと考えられるからである。他の点では、動物由来でない材料が好ましく、商業上の観点からはコストも一要因となる。
【0025】
ポリリジン
同時係属出願US2009-0126754において、2%未満の濃度のActiva(商標名)TG-TIは、局所適用したときに、毛髪のカールを促進することが報告された。市販のTGアーゼは、比較的高濃度で適用すると、縮毛矯正効果を有することも報告された。しかしながら、ある程度の縮毛矯正は見られたものの、TGアーゼのみに基づく縮毛矯正製品を作製するほどには十分に毛髪は縮毛矯正されなかった。その後、US13/013,482において、本発明者らは、総合的な縮毛矯正に役立つ、TGアーゼおよびポリリジンを併用する組成物を記載した。TGアーゼの局所適用はまた、毛髪の表面近くで、局所組成物中に供給される遊離ポリリジンとタンパク質結合グルタミンとの共有結合を触媒する能力を有すると思われる。
【0026】
ポリリジンは、約25 - 30個のL-リジン残基を含む必須アミノ酸L-リジンの天然ホモポリマーである。それは、Streptomyces属の細菌発酵によって製造することができる。α炭素基で連結される通常のペプチド結合に対して、ポリリジンのリジンアミノ酸は、εアミノ基およびカルボキシル官能基で結合している。ポリリジンは、正電荷を持つ親水性アミノ基を有するカチオン性ポリマーである。
【0027】
本発明者らは、局所毛髪組成物中に十分なTGアーゼおよび十分なポリリジンが与えられれば、その結果は、毛髪表面上の連続被膜となることに気づいた。US13/013,482で本発明者らは、架橋された表面バリア被膜の存在を示した。本発明者らはさらに、ポリリジンの表面被膜が防湿バリアとして機能し、処理された毛髪への周囲の湿度の影響を減少させることを示した。少なくとも2つの点で、この被膜は本発明の縮毛矯正組成物に貢献する。第1に、いったんポリリジン被膜がTGアーゼの作用により毛髪上に形成されれば、その被膜は防湿バリアとしての機能を果たすことが認められるのであって、このバリアは、縮毛矯正された毛髪を、タンパク質分解性のダメージから、ならびに環境要因、たとえば2例を挙げると周囲の湿度および汚染など、によって引き起こされるダメージから保護する。第2に、ポリリジン連続被膜は、乾燥すると、被膜の機械的強度によって保持をもたらすことができる。
【0028】
本発明者らは、ポリリジンの表面バリア被膜の形成が、TGアーゼによって触媒される、タンパク質結合リジンとタンパク質結合グルタミンとの間に生じるタンパク質の架橋と混同されるべきでないことを強調しておく。本発明者らの知る限り、表面バリア被膜は、遊離ポリリジンなしでは、毛髪へのTGアーゼの適用から形成されない。TGアーゼおよび非重合リジンの適用から、毛髪上にこのタイプの連続被膜が形成されるとも思われない。表面バリア被膜が形成されるためには、リジンは、ポリリジンとして局所組成物により供給されなければならない。防湿被膜は毛髪に共有結合しているので、洗髪を多数回行った後でも、容易に流出しない。
【0029】
このバリア被膜は、本発明の縮毛矯正システムの任意部分であって、それは縮毛矯正された毛髪がカールした状態に戻らないようにする。したがって、本発明のある実施形態は、ポリリジンを含んでなることが好ましい。ポリリジンの有用な濃度は、商業的に有用な縮毛矯正組成物中で、縮毛矯正組成物の全重量を基準として約0.00001%から約2%までであるが、約0.1%から約1.5%までが好ましく、約0.5%から約1%までがより好ましい。
【0030】
本発明者らはまた、4% Activa(商標名)TG-TI材料(活性 = 81-135U/g)および0.5%ポリリジンを含有する組成物を用いて、縮毛矯正効果が起こるのに要する時間の長さを測定した。テストサンプルのすべてに縮毛矯正効果があり、最大の縮毛矯正効果は30分で達成されることがわかった。45分の時点でサンプルにおいて追加の縮毛矯正は観察されなかった。本発明の組成物は追加の、もしくは異なる縮毛矯正活性物質を含有しているので、縮毛矯正効果を達成するために要する時間は変化しうることに注意すべきである。
【0031】
TGアーゼの濃度
本発明の実施形態で使用されるTGアーゼの濃度は、材料の力価、意図する用途、ならびに組成物における他の縮毛矯正技術の存在によって決まる。
【0032】
縮毛矯正効果に関するガイドラインとして、縮毛矯正組成物は1グラムごとに、少なくとも約0.5ユニットのTGアーゼ活性を与えるが、たとえば、組成物グラム当たり、少なくとも約1ユニットのTGアーゼ活性、より好ましくは少なくとも約3ユニットのTGアーゼ活性、さらにもっと好ましくは少なくとも約4ユニットのTGアーゼ活性、そしてもっとも好ましくは少なくとも約5.5ユニットのTGアーゼ活性を与える。縮毛矯正組成物グラム当たり約5.5ユニットのTGアーゼ活性を越えると、TGアーゼ/ポリリジンに起因する追加的な縮毛矯正効果はほとんど認められない。しかしながら、有害な影響がなければ、もっと多くの活性を使用することができる。これらのガイドラインに従って、既知の力価を有する任意のトランスグルタミナーゼ製品の最適濃度を決定することは、十分、当技術分野の技術の範囲内である。
【0033】
具体例として、Activa(商標名)TG-TIの力価が100 U/g - Activa(商標名)TG-TIであるとしよう。0.5 U/g組成物の活性を与えるためには、0.5%濃度のActiva(商標名)TG-TIが必要となる。5.5 U/g組成物の活性を与えるためには、5.5%濃度のActiva(商標名)TG-TIが必要となる。具体的に、ポリリジンと組み合わせたActiva(商標名)TG-TI材料について、商業的に有用な縮毛矯正組成物中で有用な濃度は、組成物全体の約0.5から約10重量%である。好ましい濃度は、組成物全体の約1.0から約5.0重量%の間であるが、特に、組成物全体の約2から約4重量%までである。約2%のActiva(商標名)TG-TIがもっとも好ましいが、それは、これより多く使用すると目に見える細粉が蓄積する可能性のあることが判明したためである。
【0034】
毛髪還元剤
本発明の実施形態には、本明細書に記載の組成物中で局所適用したとき、毛髪のシスチン結合を還元する効果のある1つもしくは複数の薬剤が含まれる。興味深いのは、含硫薬剤、たとえば亜硫酸塩、チオグリコール酸塩、およびシステイン;特に亜硫酸水素塩、より詳細には、ピロ亜硫酸ナトリウムである。本発明の組成物において、亜硫酸水素塩は、それが過酸化物酸化を用いることなく永続的な縮毛矯正をもたらすという点で、チオール類よりとりわけ好ましい。本発明の組成物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化グアニジン、チオグリコール酸塩、システイン、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム、もしくはホルムアルデヒドを含まないことが好ましい。
【0035】
亜硫酸塩は、ジスルフィド結合(S - S)をブンテ塩としても知られるチオ硫酸結合(- S - SO
3)に還元することによって毛髪をストレートにする、縮毛矯正剤である。いったんブンテ塩が形成されたら、毛髪を手で扱って、ストレートに矯正した状態にすることができる。縮毛矯正後、ブンテ塩は、過酸化物処理なしで、再酸化することができる。たとえば、毛髪処理におけるブンテ塩の形成は、水で洗い流すことによって逆転させて、シスチン結合を再構築することができるが、比較的ゆっくりとしか逆行しないことが文献に報告されている。逆行の速度は、毛髪のpHを上昇させること、たとえば中性もしくはアルカリ性シャンプーで洗髪することによって、高めることができる。
【0036】
本発明で特に有用な亜硫酸塩はピロ亜硫酸ナトリウム、Na
2S
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5である。本発明者らがUS13/013,482に示したように、TGアーゼおよびピロ亜硫酸ナトリウムを含有する組成物で処理した毛髪に生じたダメージは、さまざまな市販製品と比較して、有意に小さかった。
【0037】
チオグリコール酸塩、たとえばチオグリコール酸アンモニウム(別名Perm salt)、およびシステインも、局所的に適用されると、毛髪のシスチン結合を還元するので、本発明において補助的な還元剤として使用することができる。溶液中で、遊離アンモニアは、毛髪を膨潤させて、チオグリコール酸をコルテックスに浸透させ、シスチン結合を還元してシステイン残基を形成させる。また、水で洗い流すことによって、または過酸化水素によって、シスチン結合を復元することもできる。
【0038】
毛髪のシスチン結合を還元する効果のある1つもしくは複数の薬剤を、典型的には、商業的に有用な縮毛矯正組成物中で、組成物の全重量の約0.1%から約10%までの濃度で使用することができる。ピロ亜硫酸ナトリウムの好ましい濃度は、重量比で、組成物の約1%から約8%までである;より好ましくは約5%から約8%であり、さらにより好ましいのは約6%から約7.75%までである;もっとも好ましいのは少なくとも6.5%から約7.75%までである。
【0039】
活性トルマリン
活性トルマリンの毛髪成形能力は、共有の出願、WO2010/096598、WO2010/096605、およびWO2010/096610に記載されており、これらは参考としてその全体を本明細書に組み入れる。
【0040】
出願WO2010/096598は、商業的に許容されるパーソナルケア組成物を作製する方法を記載しており、その組成物は、ジスルフィド結合の再構成によってヒト毛髪を再形成するために十分なエネルギーを供給することができるが、価格は手頃なままであり、美的な要求および規制上の要件に合致するものである。約70℃以上に加熱されたトルマリンが約20μmにピーク波長を有する光のスペクトルを放射することが開示された。さらに、ジスルフィド結合の比色分析によって、加熱された(すなわち活性化された)トルマリンが、対照と比較して、酸性pHで毛髪のS-S結合の約6-13%を還元するのに有効であることが示された。そこに記載された方法にしたがって活性トルマリンで縮毛矯正された毛髪が、統計的に有意なほどには弱くならないことも示された。実際、活性トルマリンで処理された毛髪は、結果的に、処理された毛髪においてタンパク質の新しい二次構造の形成をもたらすことが明らかになった。具体的には、テストしたサンプルにおいて、トルマリン含有組成物による処理は、強いβ構造、強いα+β構造、および強いコイルドコイル構造の発達をもたらした。このように、活性トルマリンを含有する局所組成物は、ジスルフィド結合を切断することができ、しかも毛髪の二次構造を強化することができることが認められた。
【0041】
WO2010/096605には、活性トルマリン組成物で処理された毛髪が、熱変性から毛髪を保護するのに有効であり、タンパク質変性を引き起こすために必要な熱エネルギーを増加させるのにも有効であることが記載されている。トルマリンは、既知の熱処理および化学的処理に特有のタイプの毛髪にダメージをまったく与えないと思われた。
【0042】
WO2010/096610には、活性トルマリン組成物で処理された毛髪が、毛髪中の強固に結合した水分レベルを増加させるのに有効であることが記載されている。トルマリンは、既知の熱処理および化学的処理に特有のタイプの毛髪にダメージをまったく与えない思われた。
【0043】
WO2010/096598、WO2010/096605、およびWO2010/096610において、トルマリンの有効な濃度は約1%から約10%までであると記載された。本発明で、本発明者らは、トルマリンがTGアーゼおよびポリリジンを含有する組成物中に含まれる場合に、有意な縮毛矯正効果を観察した。下限近くの濃度、すなわち約1%から約4%までは、WO2010/096598、WO2010/096605、およびWO2010/096610に記載のトルマリンの利益の一部もしくはすべてを得るのに有用である。高濃度で使用したことによって生じる可能性のある、白っぽい残留物を避けるために、1%から2%までの間が好ましく、約1%がより好ましいと考えられる。
【0044】
本発明で熱活性化トルマリンを使用する場合、熱を加えてトルマリンを活性化する前に、ユーザーが組成物を皮膚に適用し、TGアーゼが作用する間待つのであれば、好ましい。これは、トルマリンを活性化するために加えられる熱、好ましくは約70℃が、TGアーゼの破壊を引き起こすのに十分であるからである。したがってTGアーゼは、30℃を越えて熱を加える前に作用させておくべきである。好ましくは、熱を加える前に、ユーザーは約15分から約45分間待つことになる。好ましい待ち時間は、25分から45分の間、特に約30分である。
【0045】
組成物
親出願US13/013,482において、本発明者らは、ピロ亜硫酸ナトリウム、Na
2S
2O
5を含有する効果的な縮毛矯正組成物を記載した。そこで検討されたように、トランスグルタミナーゼの至適活性は、pHが約5から約9まで、たとえば約5.0から約7.5までの溶媒中で観察される。TGアーゼ活性に基づいて、pHは約5.5から7.5までが好ましいが、約6.0から約7.0までがより好ましい。TG活性に関して、厳密に6.0から厳密に6.5までのpHがもっとも好ましい。さらに、ピロ亜硫酸ナトリウムはシスチンを還元する。pHが約3から8までで反応が起こりうるが、反応平衡がシスチンの還元方向にシフトしていれば、好ましい。したがって、シスチンの還元については、約5.5から約7.5までのpH環境が好ましい。同じ理由で、約5.5から約6.5までのpHがより好ましいが、シスチンの還元のためには約5.8から約6.2までがさらにより好ましい。しかしながら、こうした組成物は、製造後数日間は有効であるが、組成物の製造日から1、2週間後には有効性の相当部分を失うことが観察されている。同時に、本発明者らは、pHの低下、および組成物からの二酸化硫黄(SO
2)の放出を観察した。
【0046】
慎重な検討を経て、ピロ亜硫酸ナトリウム(Na
2S
2O
5)は比較的酸性であるが、それが(製品中もしくは周囲の大気中の)水と反応して、亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO
3)を生成するようである。その後、十分に低いpHで、亜硫酸水素ナトリウムは酸化されて、硫酸水素ナトリウム(NaHSO
4)になる。硫酸水素ナトリウムは、かなり低い酸解離定数(水中pK
a = 1.99)を有し、解離は二酸化硫黄(SO
2)の放出につながる。ピロ亜硫酸ナトリウムと亜硫酸水素ナトリウムの反応は可逆的であり、亜硫酸水素ナトリウム寄りに動的平衡が確立される。その結果、低pHでのTGアーゼの不活化に加えて、ピロ亜硫酸ナトリウムの減少に起因して、有効性が低下する。また、二酸化硫黄の放出は望ましくない。したがって、もっと有望な商品を得るために、これらの問題に対処しなければならない。
【0047】
これらの問題は、動的平衡をピロ亜硫酸ナトリウムの生成方向に駆動(移動)させ、亜硫酸水素ナトリウムの生成から遠ざける手段を、組成物中に含めることによって対処される。その結果が次のような組成物であって、その組成物においてピロ亜硫酸ナトリウムは亜硫酸水素ナトリウムと動的平衡状態にあるが、その平衡はピロ亜硫酸ナトリウムの方にシフトしている。
【0048】
イオン性バッファー系、酸素除去系、および他の利益
本発明の必須の構成要素は、本明細書に記載の他の利益を与えるだけでなく、動的平衡をピロ亜硫酸ナトリウム生成方向に駆動させ、亜硫酸水素ナトリウムの生成から遠ざける系である。
【0049】
そのような系のある実施形態は、硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)および亜硫酸ナトリウム(Na
2SO
3)を含有するpHバッファー/酸素除去系である。これらを添加することは、反応平衡を逆方向に駆動させて、ピロ亜硫酸ナトリウムのレベルを回復/維持し、組成物のpHを安定化し、さらにSO
2の放出を防止または抑制する。
【0050】
亜硫酸ナトリウム
亜硫酸ナトリウム(Na
2SO
3)は、本発明の組成物に添加されると、酸素除去剤として機能し、それによって、酸化される亜硫酸水素ナトリウムの量を減少させるので、最終的にSO
2の生成を減少させる。
【0051】
加えて、亜硫酸ナトリウムは、還元剤として機能し、ヒト毛髪中のS-S結合からブンテ塩を形成することができる。したがって、亜硫酸水素ナトリウムおよびピロ亜硫酸ナトリウムを含有する組成物は、ピロ亜硫酸ナトリウムを単独で含有する組成物よりすぐれた縮毛矯正効果を与える。
【0052】
硫酸ナトリウム
硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)は、本発明の組成物に添加されると、動的平衡をピロ亜硫酸ナトリウム生成の方向に駆動させ、亜硫酸水素ナトリウム(二酸化硫黄の放出につながる)の生成から遠ざける。
【0053】
さらに、硫酸ナトリウムはTGアーゼの活性を強化することができる。したがって、亜硫酸水素ナトリウムおよびTGアーゼを含有する組成物は、TGアーゼを単独で同量含有する組成物よりすぐれた縮毛矯正効果を与える。
【0054】
本発明者らが強調するのは、本発明の実施形態の組成物において、ピロ亜硫酸ナトリウムと亜硫酸水素ナトリウムが動的平衡状態にあることである。すなわち、組成物中で、ピロ亜硫酸ナトリウムは亜硫酸ナトリウムへの変換が進行中であり、逆もまた同様であるが、ピロ亜硫酸ナトリウムと亜硫酸水素ナトリウムの比は安定しており、相当な期間にわたって変動はほとんどない。「相当な期間」は、pHドリフトに関する次項で定義する。
【0055】
ピロ亜硫酸ナトリウムおよび亜硫酸水素ナトリウムが存在するが動的平衡状態にない組成物は、本明細書に記載の組成物に先行するものではない。たとえば、2つの材料が先行技術の組成物中に存在するが、何らかの理由で相互に反応することができないか、または何らかの理由で反応が止まっているならば、その組成物はピロ亜硫酸ナトリウムおよび亜硫酸水素ナトリウムが動的平衡状態にある組成物に対する特許請求の範囲に合致しない。
【0056】
追加された硫酸ナトリウムは、イオン性バッファーとして機能し、製品のpHを相当な期間、望ましい範囲内;たとえば、約5.0から約7.5、より好ましくは約5.5から約7.0、さらにもっと好ましくは約6.0から約6.5、そしてもっとも好ましくは6.0から6.2に維持する;あるいは、規定のpH範囲は5.0 - 6.5、好ましくは5.5 - 6.0とすることができる。周囲の大気条件で密封容器の中で、本発明の1つもしくは複数の実施形態による市販組成物のpHは、少なくとも30日間、より好ましくは少なくとも60日間、より好ましくは少なくとも90日間、より好ましくは少なくとも180日間、より好ましくは少なくとも1年間、そしてもっとも好ましくは少なくとも2年間、規定の範囲内で安定していることが好ましい。また、50℃で保存された密封容器内で、本発明の1つもしくは複数の実施形態による市販組成物のpHは、少なくとも7日間、より好ましくは少なくとも14日間、より好ましくは少なくとも30日間、そしてもっとも好ましくは少なくとも60日間、規定の範囲内で安定していることが好ましい。
【0057】
さらに、硫酸ナトリウムによってもたらされたTGアーゼ活性の強化、および亜硫酸ナトリウムの還元力に起因して、TG濃度を低下させて同等の活性を達成することが可能になると考えられる。TGアーゼの相対的費用および脆弱性を考慮すると、これは、親出願US13/013,482の組成物に優る予想外の利点である。
【0058】
本発明の組成物に添加されるべき亜硫酸ナトリウムおよび硫酸ナトリウムの量は、全硫酸塩に対する全亜硫酸塩の割合として表される。たとえば、亜硫酸塩と硫酸塩の比(硫酸塩に対する亜硫酸塩の割合)は、1:1から10:1までの間の任意の割合とすることができる。たとえば、その割合は、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1、5:1などとすることができる。1:1から5:1までのすべての割合が本明細書に明記されており、そうした割合のうち2つは、本明細書に明記される範囲の包括的な終点として用いることができる。たとえば、本発明の組成物は、6.7% ピロ亜硫酸ナトリウム、3% 亜硫酸ナトリウム、および2% 硫酸ナトリウムを含有することができる。この場合、亜硫酸塩と硫酸塩の比(硫酸塩に対する亜硫酸塩の割合)は4.85:1である。別の例では、本発明の組成物は、3.0% ピロ亜硫酸ナトリウム、1.5% 亜硫酸ナトリウム、および1% 硫酸ナトリウムを含有することができる。この場合、亜硫酸塩と硫酸塩の比(硫酸塩に対する亜硫酸塩の割合)は4.5:1である。
【0059】
本発明の組成物において、ならびにそうした組成物を作製する方法において、硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)がピロ亜硫酸ナトリウムより前に組成物に添加されれば、好ましい。ピロ亜硫酸ナトリウムより前に硫酸ナトリウムを組成物に添加することによって、硫酸ナトリウム(最終生成物)の平衡濃度は増加するが、それが最終的に、ピロ亜硫酸ナトリウム(初期生成物)の濃度を安定化する。さらに、ピロ亜硫酸ナトリウムより先に硫酸ナトリウムを組成物に添加することによって、組成物のpHを約5より高い値で安定させることができるが、それは、硫酸ナトリウムから放出される二酸化硫黄の量を有意に減少させる。
【0060】
好ましくは、本発明の組成物は、pH調整剤として水酸化ナトリウムのような水酸化物を使用しない。
【0061】
本発明の組成物は、好ましくは水性である。イオン性バッファー/酸素除去系は、無水組成物もしくは比較的小量の水を含む組成物ではあまり機能しないと予想される。好ましくは、本発明の組成物は水を、少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、そしてもっとも好ましくは少なくとも70%含有する。
【0062】
組成物およびその使用に関する他の検討事項
加熱および/または界面活性剤は、トランスグルタミナーゼ活性を低下させる可能性がある。たとえば、トランスグルタミナーゼの安定性は、35-40℃を越えて加熱されると損なわれる。したがって、TGアーゼの温度が35℃を越えて上昇すると考えられる期間に、確実にTGアーゼが、確実に、35℃以上の温度に曝されないように、取り扱い、保管、処理、製造、および流通に注意すべきである。
【0063】
さらに、毛髪に適用後、本発明の組成物を約15分から約45分間、毛髪上に残存させておくべきであることが判明した。好ましい滞留時間は25分から45分、特に約30分である。効果的な縮毛矯正のための滞留時間は、典型的な既知の市販縮毛矯正製品より格段に少ないが、この既知の製品は、ユーザーがそれを洗い流すことができるまでに48-72時間の滞留時間を要する。これは本発明の非常に重要な利点である。
【0064】
さらに、アニオン界面活性剤、特に35℃を越える熱を伴うアニオン界面活性剤は、TGアーゼの活性を低下させる可能性がある。したがって、意図した使用条件下でトランスグルタミナーゼの活性を有意に変化させることのない界面活性剤を選択するよう、調剤に注意すべきである。組成物の性質が、TGアーゼおよびアニオン界面活性剤が相互に隔離されるような状態であるならば、TGアーゼを損なうことなく本発明の組成物中にアニオン界面活性剤を含めることは可能であるかもしれない。そうでなければ、アニオン界面活性剤を組成物に使用しないことが好ましい。アニオン界面活性剤の例には、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩、およびカルボン酸塩がある。硫酸エステル塩としては、アルキル硫酸塩、たとえばラウリル硫酸アンモニウムおよびラウリル硫酸ナトリウム(別名、ドデシル硫酸ナトリウム);アルキルエーテル硫酸塩、たとえばラウレス硫酸ナトリウム(別名、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES))、およびミレス硫酸ナトリウムがある。スルホン酸塩には、ドクサート、たとえばスルホコハク酸ジオクチルナトリウム;スルホン酸塩フッ素系界面活性剤、たとえばペルフルオロオクタンスルホン酸塩(PFOS)、およびペルフルオロブタンスルホン酸塩;ならびにアルキルベンゼンスルホン酸塩がある。リン酸エステル塩としては、アルキルアリールエーテルリン酸塩、およびアルキルエーテルリン酸塩がある。カルボン酸塩には、アルキルカルボン酸塩、たとえば脂肪酸塩(石けん)およびステアリン酸ナトリウム;ラウロイルサルコシンナトリウム;カルボン酸塩フッ素系界面活性剤、たとえばペルフルオロノナン酸塩およびペルフルオロオクタン酸塩がある。
【0065】
本発明の組成物は、追加的な基準も満足しなければならない。たとえば、組成物は美容上(化粧上)許容され、しかも商業的に実現可能でなければならない。「美容上(化粧上)許容される」および「商業的に実現可能な」などということは、通常、組成物が消費者にとって安全であり、製造、流通、および消費者使用の、典型的な条件下で安定であることを意味する。「安定した」とは、パーソナルケア組成物の1つもしくは複数の特徴が、製造後一定の最短期間以内に許容できないレベルにまで劣化しないことを意味するものとする。好ましくは、その最短期間は、製造から6ヶ月、より好ましくは製造から1年、そしてもっとも好ましくは製造から2年以上である。「安全」は、何よりもまず、組成物が、頭髪に局所適用される製品に関するあらゆる法的規制を満足することを意味する。
【0066】
本発明の組成物は、適切な量で使用されたときに有効でなければならない。毛髪に適用される組成物の量が、消費者もしくは美容専門技術者が適切だと見なす量である場合にのみ、組成物は、永続的に縮毛矯正されるヒト毛髪に有効であると考えられる。たとえば、あるローション組成物が毛髪を再形成するが、1ガロンの組成物が必要であるならば、これは本発明の有効な組成物ではない。パーソナルケア毛髪製品に関する当業者は、消費者および美容専門技術者が何を適切と見なすかについて非常に信頼できる考えを持っている。1回の処理に必要な本発明の組成物の量は、処理される毛髪のタイプおよび量、ならびに求められる効果によって決まる。しかしながら、経験から、約200グラムの本発明の組成物が毛髪に適用され、それが頭全体の肩までの長さの毛髪の処理を完結するのに十分かつ有効であることが示唆される。この数字は指針として提供されるだけであるが、多かれ少なかれ、必要に応じて使用することができる。
【0067】
さらに、トルマリンを使用する場合、基本組成物は、トルマリンにより放出される放射をあまり吸収すべきでなく、基本組成物はトルマリンの活性化もしくは非活性化を妨げるべきでない。
【0068】
これらの指針を前提として、組成物は、本明細書に記載の実施形態にしたがって容易に製剤され、毛髪への局所送達に適したさまざまな製品タイプにすることができる。組成物は、混合物、懸濁液、乳濁液(水/油、油/水、水/シリコーン、シリコーン/水)、液体、エアロゾル、ジェル、クリーム、ローション、セラム、またはムースなどとすることができる。本発明の組成物は、スタイリング製品、カラーリング製品、コンディショナー、もしくはシャンプーなどの形をとることができる。製剤の方法および指針は、たとえば、Harry’s Cosmeticology, 8th edition, M. Reiger, Ed. 2000に見いだすことができ、その内容は参考として本明細書に組み入れられる。
【0069】
本発明のある好ましい実施形態は、水中シリコーン型の乳濁液もしくは懸濁液であって、比較的希薄であり、組成物の全体にわたって活性亜硫酸塩および硫酸塩の分散、特に粒子状物質の分散を可能にする。より希薄な乳濁液もしくは懸濁液も、送達部位での活性物質の浸透および吸収を増加させる。これらの実施形態において、活性のある粒子状物質は、エマルション滴の内外に分散することができる。目安として、本発明のある実施形態は、1,000 - 30,000cps;より好ましくは1,000 - 20,000cps;さらにもっと好ましくは2,000 - 10,000cps;そしてもっとも好ましくは4,000 - 7,000cps (LVT、#3、12RPM、1分、ファクター =100)の粘度を有するものとすることができる。上記から、当業者は、異なるスピンドルおよび回転数を使用しても、同等の粘度の測定値を決定することができる。本発明の好ましい実施形態は、約0.5 - 5ミクロンの活性亜硫酸塩粒子を含有するが、これは約10 - 100ミクロンのエマルション滴の中に分散している。
【0070】
記載された指針の範囲内で、本発明の組成物は、毛髪に利益をもたらすことが知られている任意の成分、安定な製品を提供するために必要とされる任意の成分、ならびに製品を美容上(化粧上)さらに許容されるようにする、または商業的により実現可能となるようにする任意の成分を含有することができる。たとえば、本発明の組成物は、有利なことにヘアーカラーリング剤を含有することができる。当技術分野でよく知られているタイプのヘアーカラーリング反応、および本明細書に記載のジスルフィド結合切断は、相乗効果を示す可能性がある。
【0071】
好ましくは、本発明の組成物は、水酸化物、チオール類、システイン化合物、およびホルムアルデヒド化合物をいずれも含まない。親出願US13/013,482において、データは、そこに記載の組成物がもたらすダメージが、いくつかの市販の製品の半分より小さいことを示すために提示された。本発明者らが本明細書に記載する改良は、そのことを変化させない。本発明の組成物は、同様に、ヒト毛髪に与えるダメージが、システイン、ホルムアルデヒド、水酸化ナトリウム、もしくはチオールを主要な縮毛矯正剤とする市販の製品より有意に小さいことが予想される。
【0072】
1つもしくは複数の望ましくない臭気が組成物から放出される可能性がある限り、こうした臭気を1つもしくは複数の天然または合成の香料またはマスキング剤で弱めることができる。下記は、本発明の組成物の一部の実施形態の例である。
【0073】
表1
表2は、上記表1の例4および例5として示される2つの製剤について、pH値を時間と対比して示す。4つのテストサンプルを、2つは例4にしたがって、2つは例5にしたがって調製した。それぞれのうち一方は室温(RT)で保存し、もう一方は50℃で保存した。
【0074】
表2
結果:
室温で7日後、例4の製剤のpHは依然として5.8 - 5.99の範囲内であって、一方、50℃サンプルについて、pHは依然として5.75 - 5.91の範囲内であった。室温で25日後に、例5の製剤のpHは依然として5.42 - 5.99の範囲内であり、50℃サンプルについては、pHは5.46 - 6.02のままであった。すべての場合において、傾向を示すラインはほとんどフラットであり、わずかに上昇している。本明細書に記載のバッファー系は有効であると結論づけることができる。ピロ亜硫酸ナトリウムと亜硫酸水素ナトリウムとの間の動的平衡は、ピロ亜硫酸ナトリウム寄りに保たれており、組成物の有効性は保持される。
【0075】
製造方法
上記製剤はいずれも、下記の手順に従って調製することができる。
【0076】
ステップ1:以下の段階にしたがって組成物を調製する:
段階
1. メインの釜に水を加える;室温にて、プロペラ混合しながらヒドロキシエチルセルロースをゆっくり添加する。少なくとも30分間水和させておくが、必要ならばプロペラを増やす。
【0077】
2. EDRA-4Naをメインの釜に加え、透明で、均一で、塊がなくなるまで混合する。
【0078】
3. 別に、ヘキシレングリコール、グリセリンおよびキサンタンガムを混合する。溶け合うまでよく混合してから、メインの釜に加える。
【0079】
4. 別に、水および硫酸ナトリウムを、プロペラ混合しながらすべての固体が溶解するまで混合する。この段階は、固体の溶解を促進するために少し加熱してもよい。固体がすべて溶解したら、メインの釜に加える。
【0080】
5. 別に、プロペラを用いて室温で、水、トルマリン、ピロ亜硫酸ナトリウム、トランスグルタミナーゼ、亜硫酸ナトリウム、およびポリリジンを、すべての粒子が溶解するまで混合する。すべての粒子が溶解したら、メインの釜に加える。
【0081】
6. 別に、シリコーン/油相を混合し、メインの釜に加える。均一になるまで混合する。
【0082】
ステップ2:pHが所定の範囲内;たとえば、5.0 - 7.5、より好ましくは約5.5 - 約7.0、さらにより好ましくは約6.0 - 約6.5、そしてもっとも好ましくは6.0 - 6.2にあることを確認する。
【0083】
ステップ3:粘度が所定の範囲内:たとえば、1,000 - 30,000cps;より好ましくは1,000 - 20,000cps;さらにより好ましくは2,000 - 10,000cps;そしてもっとも好ましくは4,000 - 7,000cpsにあることを確認する(LVT、 #3、12rpm1分間、ファクター =100)。
【0084】
ステップ3は、ステップ2の前に行ってもよい。
【0085】
使用法
本発明の組成物は、頭髪全体もしくはその一部のいずれかの、ストレート化されていない毛髪を縮毛矯正するために使用することができる。本発明は、本明細書に記載の組成物を縮毛矯正のために使用することを含む。
【0086】
本発明者らは本発明の組成物を使用する好ましい方法を記載する。任意選択の第1段階として、毛髪は、表面の汚れ、および組成物中の活性物質を妨害する可能性のあるものを毛髪から除去するために、浄化用シャンプーで洗髪されるべきである。シャンプー洗髪を用いない場合、組成物を適用する前に毛髪をぬらしてもよい。組成物が適用されるとき、毛髪はぬれていることが好ましい。
【0087】
その後、ストレート化されていない毛髪の一部を、そのストレート化されていない毛髪に本発明の組成物を適用することによって処理する。組成物は、組成物の市販製品版に付属している説明書の指示どおり、使用前に撹拌(すなわち振盪)してもしなくてもよい。毛髪を根元から先端まで完全に被覆するように、十分量の製品を適用する。処理されるべき毛髪は、根元から先端まで覆われることが好ましい。たとえば、根元から先端まで、毛髪の少なくとも50%が組成物で覆われるが、少なくとも75%がより好ましく、少なくとも95%がもっとも好ましい。上記のように、女性毛髪の平均的な頭部について、これには200グラムの組成物が必要となる可能性があるが、多かれ少なかれ、処理されるべき毛髪の実際の量によって決まる。
【0088】
組成物を毛髪に適用した後、組成物は、追加処理を行う前に、最低滞留時間の間、毛髪上にとどまるようにすべきである。たとえば、滞留時間が少なくとも10-20分、より好ましくは少なくとも20-30分、さらにより好ましくは少なくとも35分、そしてもっとも好ましくは30-35分であれば好ましい。滞留時間の間、処理された毛髪上の組成物が45℃を越える温度に曝されないこと、好ましくは約40℃を越える温度、より好ましくは35℃を超える温度に曝されないことが、特に重要である。滞留時間の間、毛髪構造中のS-S結合は、組成物中のピロ亜硫酸ナトリウムおよび亜硫酸ナトリウムによりブンテ塩へと還元されている。
【0089】
滞留時間後、任意ではあるが好ましいステップとして、毛髪を完全に水で洗い流すべきであるが、好ましくは水の温度は外界温度を超えない。これは、毛髪から組成物の残留物を除去するのはもちろんのこと、ブンテ塩を酸化してS-S結合に戻し、処理を永続的に保つようにするプロセスを開始させることになる。毛髪を洗い流すために、毛髪を溜め水に浸しても、流水で処理してもよい。たとえば、完全に洗い流すには流水下で少なくとも5分かかる可能性がある。
【0090】
洗い流した後(または、すすぎを行わないならば滞留時間後)、処理された毛髪を、機械的な手段によって、ストレートに矯正した形状にセットする。たとえば、毛髪をくしでまっすぐにとかしてもよい。毛髪がぬれている場合、毛髪を乾かすために、毛髪をストレートに矯正した形状にセットしている間、またはその後に、加熱乾燥装置を使用してもよい。毛髪を過度に引っ張ることは、必要ではなく、避けるべきである。好ましくは、加熱乾燥の結果として、毛髪は少なくとも50℃、より好ましくは少なくとも60℃、そしてもっとも好ましくは少なくとも70℃の温度を達成し、毛髪を乾燥させて、トルマリンを活性化するが、その一部は、たとえ洗い流すというオプションステップを行ったとしても、毛髪上に残留することになる。加熱乾燥装置の例には、温風送風ドライヤー、放射加熱、およびヘアアイロンがある。あるいはまた、縮毛矯正されていない毛髪に組成物が適用された後、いつでも、加熱乾燥装置または他の加熱手段を用いてトルマリンを活性化することができる。
【0091】
必要に応じて、組成物を毛髪上に滞留させるステップの後、いずれかの時点で、ヘアアイロンを、処理された毛髪に、ヘアアイロンの通常の方法で適用することができる。ヘアアイロンは任意選択であるが、トルマリンを活性化させるだけでなく光沢を与えるために使用することができる。縮毛矯正のために必要ではなく、永続的な縮毛矯正をもたらすことはできない。ヘアアイロンを使用する場合、滞留時間後に毛髪を洗い流すステップが含まれることが望ましい。これによって、そうしなければヘアアイロンが引き起こすかもしれない煙の発生が、なくなるか、または有意に減少するであろう。煙の発生がほとんど、または全くないことは、本発明の方法の重要な健康上の利点である。また、ヘアアイロンを使用する場合、ヘアアイロンは少なくとも2回、処理された毛髪に通すことが好ましいが、より好ましくは少なくとも5回、もっとも好ましくは10回までである。好ましくはヘアアイロンは少なくとも350°F(176.6℃)であるが、より好ましくは少なくとも400°F(204.4℃)であり、もっとも好ましくは約450°F(232.2℃)である。
【0092】
ブンテ塩の酸化は、しばらくの間(すなわち数日間)、毛髪が水で濡れるたびに続くことになる。ブンテ塩の酸化は、pH 7.0から9.0のシャンプーのようなアルカリ性製品で洗髪することによって強化される可能性がある。