(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
如何なる重合防止剤又はスカベンジャも使用することなく、コア−シース−シェルポリマー粒子を含有するエマルションを製造する方法であって、該粒子が不透明剤として有用であり、該方法が、
(i)重合単位として、コアの重量ベースで5重量パーセント〜100重量パーセントの、酸官能基を含有する親水性モノエチレン性不飽和モノマーと、コアの重量ベースで0重量パーセント〜95重量パーセントの、少なくとも1つの非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーとを含むコアモノマー系からコア(A)を乳化重合する工程と、
(ii)重合単位として、シース高分子層の総重量ベースでそれぞれ、少なくとも20重量%の親水性モノエチレン性不飽和モノマーと、少なくとも20重量%の疎水性モノエチレン性不飽和モノマーと、1重量%〜20重量%の、酸官能基を含有する親水性モノエチレン性不飽和モノマーとを含むシースモノマー系(E1)を前記コアの存在下で乳化重合することによって、揮発性塩基、固定塩基又は永久塩基の浸透を可能にするシース高分子層(B)でコア(A)を封入する工程と、
(iii)重合単位として、高分子シェルの総重量ベースでそれぞれ、1重量パーセント〜10重量パーセントの、酸官能基を含有する親水性モノエチレン性不飽和モノマーと、90重量パーセント〜99重量パーセントの少なくとも1つの非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーとを含むシェルモノマー系(E2)を乳化重合することによって、高分子シェル(C)でコアシース粒子を封入する工程と、
(iv)揮発性塩基、固定塩基又は永久塩基で、得られるコア−シース−シェルポリマー粒子を高温において中和及び膨潤させる工程であって、該膨潤を、5重量%〜50重量%の、前記シェルモノマー系(E2)の少なくとも1つの非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーを含むモノマー溶剤系の存在下において行い、該モノマーが、溶剤として作用し、更に、作製されたポリマー層を介する前記コアへの前記塩基の浸透を促し、該塩基の添加前、添加後又は添加中に該モノマー溶剤系を添加することができる工程と、
(v)前記膨潤工程後に、モノマーを重合することによって、工程(iv)における前記モノマー溶剤系の前記少なくとも1つの非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーの濃度を、ポリマー固体ベースで10000ppm未満へと低減させる工程であって、それにより、乾燥させた場合に、粒子が含まれる組成物中で不透明化を起こすミクロボイドを有する粒子のエマルションを生成する工程と、
を含み、
E1+E2のモノマーの総量ベースで0.05重量%〜0.45重量%の総量の水溶性重合触媒を、シースモノマー系(E1)と同時に重合リアクタ内に供給するか、又は工程(ii)におけるE1の乳化重合を開始する直前に該重合リアクタ内に供給する、方法。
工程(iv)において、前記モノマー溶剤系が、15重量%〜30重量%の前記少なくとも1つの非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーを含む、請求項1又は2に記載の方法。
前記コア(A)を、30重量%〜40重量%の(メタ)アクリル酸と60重量%〜70重量%のメチル(メタ)アクリレートとを含むコアモノマー系から重合させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
前記シース高分子層(B)を、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも40重量%のスチレンと、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも40重量%のメチル(メタ)アクリレートと、1重量%〜20重量%の(メタ)アクリル酸とを含むシースモノマー系(E1)から重合させる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
前記シェルモノマー系(E2)が、重合単位として、1重量パーセント〜10重量パーセントの(メタ)アクリル酸と、90重量パーセント〜99重量パーセントのスチレンとを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
前記揮発性塩基、固定塩基又は永久塩基が、アンモニア、アミン、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム及び遷移金属アミノ化合物からなる群から選択され、好ましくは水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムから選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
工程(iv)における前記モノマー溶剤系の前記少なくとも1つの非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーがスチレンである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
工程(v)において、前記膨潤工程が完了した後にレドックス触媒により開始させることによって前記モノマー溶剤系を重合させる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、特許文献4の方法により開示される粒子と少なくとも同じ又はこれに匹敵する性能、とりわけ同様の不透明度を有するコア−シース−シェル不透明化高分子粒子を製造する方法を提供することであり、それらの粒子は、揮発性塩基である膨潤剤の使用に関連する臭気問題を有してはおらず、かかる複雑で有毒の高価な化合物を使用することなく、とりわけかかる重合防止剤なしに得られるものとし、また、特許文献4のものよりも安全かつはるかに効率的な、それ故より安価な手段で得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下の開示から明らかとなるこの目的等は、如何なる重合防止剤又はスカベンジャも使用することなく、すなわち如何なる重合防止剤又はスカベンジャの使用を排除して、乾燥させた場合に、粒子が含まれる組成物中で不透明化を起こすミクロボイドを有するコア−シース−シェルポリマー粒子を含有するエマルションを製造する方法であって、該粒子が不透明剤として有用であり、該方法が、
(i)重合単位として、コアの重量ベースで5重量パーセント〜100重量パーセントの、酸官能基を含有する親水性モノエチレン性不飽和モノマーと、コアの重量ベースで0重量パーセント〜95重量パーセントの、少なくとも1つの非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーとを含むコアモノマー系からコア(A)を乳化重合する工程と、
(ii)重合単位として、シース高分子層の総重量ベースでそれぞれ、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも40重量%の親水性モノエチレン性不飽和モノマーと、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも40重量%の疎水性モノエチレン性不飽和モノマーと、1重量%〜20重量%の、酸官能基を含有する親水性モノエチレン性不飽和モノマーとを含むシースモノマー系(E1)を上記コアの存在下で乳化重合することによって、揮発性塩基、固定塩基又は永久塩基の浸透を可能にするシース高分子層(B)でコア(A)を封入する工程と、
(iii)重合単位として、高分子シェルの総重量ベースでそれぞれ、1重量パーセント〜10重量パーセントの、酸官能基を含有する親水性モノエチレン性不飽和モノマーと、90重量パーセント〜99重量パーセントの少なくとも1つの非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーとを含むシェルモノマー系(E2)を乳化重合することによって、高分子シェル(C)でコアシース粒子を封入する工程と、
(iv)揮発性塩基、固定塩基又は永久塩基で、得られるコア−シース−シェルポリマー粒子を高温において中和及び膨潤させる工程であって、該膨潤を、5重量%〜50重量%の、上記シェルモノマー系(E2)の少なくとも1つの非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーを含むモノマー溶剤系の存在下において行い、該モノマーが、溶剤として作用し、更に、作製されたポリマー層を介する上記コアへの上記塩基の浸透を促し、該塩基の添加前、添加後又は添加中に該モノマー溶剤系を添加することができる工程と、
(v)上記膨潤工程後に、モノマーを重合することによって、工程(iv)における上記モノマー溶剤系の上記少なくとも1つの非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーの濃度を、ポリマー固体ベースで10000ppm未満へと低減させる工程であって、それにより、乾燥させた場合に、粒子が含まれる組成物中で不透明化を起こすミクロボイドを有する粒子のエマルションを生成する工程と、
を含み、
E1+E2のモノマーの総量ベースで0.05重量%〜0.45重量%の総量の水溶性重合触媒を、シースモノマー系(E1)と同時に該重合リアクタ内に供給するか、又は工程(ii)におけるE1の乳化重合を開始する直前に該重合リアクタ内に供給する、方法に関する本発明により達成することができる。
【0010】
本発明は、上記方法によって得られる上記コア−シース−シェルポリマー粒子を含有するエマルションに更に関し、また、該エマルションを少なくとも部分的に乾燥させることによって得られる、ボイドを有するコア−シース−シェルポリマー粒子に関する。膨潤したコア−シース−シェルポリマー粒子は、粒子が水性エマルションの形態である場合、液体の水で満たされるボイドを有する。乾燥させると、ボイドは空気で満たされるため、粒子にそれらの不透明性がもたらされる。
【0011】
本発明による主な重合反応は、シェルに上記コア−シースを更に封入させるためのブリッジとして機能するシースに、酸性のアルカリ膨潤可能なコアポリマー(又はシード)を封入することにある。本発明によれば、或る特定の場合に応じた限定の範囲内で、触媒は、シースモノマー系E1と一緒に投与されるか、又はE1の添加を開始する直前に噴射され、触媒を添加した後反応のいずれの段階でも更なる触媒を添加又は噴射することなく、触媒は全てモノマー系E1及びモノマー系E2を反応させる上で存在するものだけである。それ故、始めから終わりまでの反応全体のいずれの段階においても防止剤もスカベンジャも添加されない。反応するしないにかかわらず、膨潤工程において溶剤として作用した、工程(iv)における上記モノマー溶剤系の上記少なくとも1つの非イオン性モノエチレン性不飽和モノマー、好ましくはスチレンモノマーはそれ自体、高分子粒子を製造する方法の根本的な部分ではない。
【0012】
重合プロセスを本発明に従って実行する場合、モノマー系E1(シース)及びモノマー系E2(シェル)を所定の範囲内で重合させた後、コアを中和することにより粒子の膨潤を実施するために、モノマー溶剤系、好ましくはスチレンモノマーと膨潤中和剤(好ましくはNaOH、KOH)との両方を一緒に存在させる。それらのいずれか一方が存在しなければ、膨潤は起こらず、結果として、不透明性は生じない。しかし、両方が存在すれば、シェルは、シェル及びシースに拡散し得る塩基に対して浸透性となり、コアを中和して、その拡大を誘起するため、粒子が膨潤する。上述したように、工程(iv)では、モノマー溶剤系を塩基の添加前、添加後又は添加中に添加することができる。
【0013】
通常、膨潤した粒子は、意図される用途(塗料、紙等)に応じて約300nm〜約1000nmの直径を有する。塗料用の不透明剤として使用される場合、約300nm〜500nmの直径が好ましい。この生成物を乾燥させると、モノマー溶剤系の遊離モノマー、好ましくはスチレンモノマーとして水が蒸発すると考えられ、また、所望の特性を全て有する不透明剤が得られるであろう。上記工程(v)を実施しない場合には、生成物は当然ながら望ましくないモノマー、すなわちスチレンの匂いがする。したがって、工程(v)では、プロセスの最後に、「匂いのある」遊離モノマーが重合により除去される。したがって、触媒量、界面活性剤量、コア対シェル比、官能性酸モノマーの濃度等についての制限を設定する場合、それは、モノマー系E1+E2におけるモノマーに対するパーセンテージとして、又は言い換えれば、「重合される(実際の)モノマー(すなわち、E1+E2中に存在するモノマー)ベースの」これらの量について言及される。
【0014】
本発明の方法は、少なくとも以下の点で特許文献1のものと異なる:
水溶性重合触媒の総量がE1+E2におけるモノマーの総量ベースで0.05重量%〜0.45重量%の範囲内であり、触媒をシースモノマー系E1と同時に重合リアクタ内に供給するか、又は工程(ii)におけるE1の乳化重合を開始する直前に重合リアクタ内に供給するのに対し、特許文献1は、実施例2A〜実施例3Eにおいて、重合されるモノマーに対するパーセンテージとして算出される1.42重量%の触媒量を使用しており、また触媒をシェルモノマーの供給とともに投与している;
特許文献1のシースモノマー系は、重合単位として、シース高分子層の総重量ベースでそれぞれ、少なくとも20重量%の親水性モノエチレン性不飽和モノマーと、少なくとも20重量%の疎水性モノエチレン性不飽和モノマーと、1重量%〜20重量%の、酸官能基を含有する親水性モノエチレン性不飽和モノマーとを必ず含むとしておらず、代わりに、20重量%のブチル(メタ)アクリレートと、80重量%のメチル(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリル酸との系が採用されている;
高分子シェル(C)を構成するためのシェルモノマー系(E2)は必ず、酸官能基を含有する親水性モノエチレン性不飽和モノマーを含むのに対して、特許文献1の実施例はいずれも含んでいない;
本発明の方法は、8〜10という大きい不透明度を有する不透明化粒子を提供するのに対し、特許文献1により得られる粒子は、はるかに小さい、すなわち1〜3という不透明度を示す。
【0015】
或る特定のプロセスパラメータを改良することによって、本発明の方法は、特許文献1の方法により得られるものよりもはるかに大きい不透明度を有する膨潤した多段階エマルションポリマーを生成することができる。
【0016】
本発明の方法は、少なくとも以下の点で特許文献4のものと異なる:
如何なる重合防止剤もスカベンジャも全く使用していない;
水溶性重合触媒の総量がE1+E2におけるモノマーの総量ベースで0.05重量%〜0.45重量%の範囲内であり、触媒をシースモノマー系E1と同時に重合リアクタ内に供給するか、又は工程(ii)におけるE1の乳化重合を開始する直前に重合リアクタ内に供給するのに対し、特許文献4では、実施例17〜実施例49において、重合されるモノマーに対するパーセンテージとして算出される0.64重量%〜1.33重量%の触媒量を使用しており、また触媒をシェルモノマーの供給とともに投与している;
特許文献4のシースモノマー系は、重合単位として、シース高分子層の総重量ベースでそれぞれ、少なくとも20重量%の親水性モノエチレン性不飽和モノマーと、少なくとも20重量%の疎水性モノエチレン性不飽和モノマーと、1重量%〜20重量%の、酸官能基を含有する親水性モノエチレン性不飽和モノマーとを必ず含むとしておらず、代わりに、9重量%のブチル(メタ)アクリレートと、89重量%のメチル(メタ)アクリレートと、2重量%の(メタ)アクリル酸との系が採用されている;
高分子シェル(C)を構成するためのシェルモノマー系(E2)が必ず、酸官能基を含有する親水性モノエチレン性不飽和モノマーを含むのに対して、特許文献4の実施例はいずれも含んでいない。
【0017】
或る特定のプロセスパラメータを改良することによって、本発明の方法は、特許文献4の方法により得られるものと同程度の大きい不透明度を有する膨潤した多段階エマルションポリマーを生成することができるが、複雑で有毒の高価な化合物を使用することを避け、とりわけ如何なる重合防止剤もスカベンジャも使用しない。本発明の方法は全体として、特許文献4のものよりもはるかに効率的かつ安価である。
【0018】
幾つかの他の相違は別にしても、特許文献3に開示されている方法は、非単独重合性モノマーの使用を厳密に要求するものである。それとは対照的に、本発明の方法は、かかるタイプのモノマーの使用を何ら規定しておらず、本方法では、これに類似する任意の他の化学物質も、任意の他の代替的な化学薬品も同様の役割を果たしていない。さらに、本発明の方法は、特許文献3で必ず使用される特許請求の範囲に記載の化学物質の「代わりに」使用される任意の特別な化学薬品を規定も要求もしていない。本発明の方法はそれどころか、教示する技術を実施するのに付加的な化学物質を何も必要としない。以下に示す実験の部に提示するように、特許文献3に開示されている方法により得られる不透明化ポリマーは、本発明により得られる不透明剤によりもたらされる大きい不透明度とは対照的に、非常に小さい不透明性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書中で使用される場合、「エマルションポリマー」は、乳化重合法によって調製される水不溶性ポリマーを指す。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「ポリマーエマルション」は、別個の水不溶性ポリマー粒子が分散した水性組成物を指す。
【0021】
本明細書中で使用される場合、アクリレート及びメタクリレートは、「(メタ)アクリレート」と称し、アクリル酸及びメタクリル酸は、「(メタ)アクリル酸」と称する。
【0022】
本発明の多段階ポリマー粒子の段階は、コア段階ポリマー(A)、シース段階ポリマー(B)及びシェル段階ポリマー(C)を含む。
【0023】
コア、シース及びシェル自体も2つ以上の段階からなっていてもよい。本発明の多段階ポリマーのコアは、重合単位として、コアの重量ベースで5重量パーセント〜100重量パーセントの、酸官能基を含有する少なくとも1つの親水性モノエチレン性不飽和モノマーと、コア段階ポリマーの重量ベースで0重量パーセント〜95重量パーセントの少なくとも1つの非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーとを含むエマルションポリマーである。
【0024】
コアポリマーの総重量ベースで少なくとも5重量パーセントの、酸官能基を含有する少なくとも1つの親水性モノエチレン性不飽和モノマーを含有するコアは、概して好適な膨潤度をもたらすと考えられる。好ましくは、コアは、重合単位として、コアの総重量ベースで、5重量パーセント〜100重量パーセント、より好ましくは20重量パーセント〜60重量パーセント、最も好ましくは30重量パーセント〜50重量パーセントの濃度で、酸官能基を含有する親水性モノエチレン性不飽和モノマーを含む。親水性コアポリマーは、一段階若しくは逐次重合工程で生成されていてもよく、又は連続的な複数の工程によって生成されていてもよい。
【0025】
コアポリマーを生成するのに有用な、酸官能基を含有する好適な親水性モノエチレン性不飽和モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルオキシプロピオン酸、(メタ)アクリルオキシプロピオン酸、イタコン酸、アコニット酸、マレイン酸又は無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等を含む、少なくとも1つのカルボン酸基を含有するモノエチレン性不飽和モノマーが挙げられる。アクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。
【0026】
親水性コアポリマーを生成するのに好適な非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエン、エチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸の(C
1〜C
20)アルキルエステル又は(C
3〜C
20)アルケニルエステル、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、コア(A)が、30重量%〜40重量%の(メタ)アクリル酸と60重量%〜70重量%のメチル(メタ)アクリレートとを含むコアモノマー系から重合される。
【0028】
一段階プロセスによって得られるか又は幾つかの段階を伴うプロセスによって得られるかにかかわらず、コアは、膨潤していない状態の直径として50nm〜300nm、好ましくは100nm〜250nmの平均粒径を有する。コアがシードポリマーから得られる場合、シードポリマーは、30nm〜100nmの平均粒径を有するのが好ましい。
【0029】
本発明の多段階ポリマー粒子は、中間段階、すなわちシース高分子層(B)を含有する。シース高分子層(B)は部分的に又は完全にコア(A)を封入し、それ自体がシェル(C)によって部分的に又は完全に封入されるものである。シース高分子層(B)は、コアの存在下で乳化重合を実行することによって調製される。
【0030】
コアを生成するのに有用な、酸官能基を含有する親水性モノエチレン性不飽和モノマー及び非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーは、シース高分子層を生成するのにも有用である。
【0031】
好ましくは、シース高分子層は、少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも40重量%のスチレンと、少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも40重量%のメチル(メタ)アクリレートと、1重量%〜20重量%の(メタ)アクリル酸とを含むシースモノマー系(E1)から重合される。
【0032】
通常、シースモノマー系(E1)は、シェルモノマー系(E2)が重合を開始する前に少なくとも約90%重合される。シース高分子層(B)の総量は、重量基準でコアの重量の1倍〜5倍である。一段階プロセスによって得られるか又は幾つかの段階を伴うプロセスによって得られるかにかかわらず、工程(ii)後のコア−シース粒子は通常、膨潤していない状態の直径として100nm〜300nm、好ましくは150nm〜250nmの平均粒径を有する。
【0033】
本発明の多段階的ポリマーのシェル(C)は、重合単位として、高分子シェルの総重量ベースでそれぞれ、1重量パーセント〜10重量パーセントの、酸官能基を含有する親水性モノエチレン性不飽和モノマーと、90重量パーセント〜99重量パーセントの少なくとも1つの非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーとを含むシェルモノマー系(E2)を重合したエマルションの生成物である。
【0034】
コアに好適な非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーはシェルにも好適である。スチレンが好ましい。また、シェルは、重合単位として、シェルの重量ベースで1重量パーセント〜10重量パーセント、好ましくは1重量パーセント〜5重量パーセントの、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルオキシプロピオン酸、(メタ)アクリルオキシプロピオン酸、イタコン酸、アコニット酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等を含む、酸官能基を含有する1つ又は複数のモノエチレン性不飽和モノマーを含有する。アクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。
【0035】
また、シェルは、シェルの総重量ベースで、20重量パーセント未満、好ましくは0.1重量パーセント〜3重量パーセントのポリエチレン性不飽和モノマー、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート及びトリエチレングリコールジメチルアクリレート等のアルキレングリコールジアクリレート及びジメタクリレート;1,3−グリセロールジメタクリレート;1,1,1−トリメチロールプロパンジメタクリレート;1,1,1−トリメチロールエタンジアクリレート;ペンタエリスリトールトリメタクリレート;1,2,6−ヘキサントリアクリレート;ソルビトールペンタメタクリレート;メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、ジビニルベンゼン、ビニルメタクリレート、ビニルクロトネート、ビニルアクリレート、ビニルアセチレン、トリビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、ジビニルアセチレン、ジビニルエタン、ジビニルスルフィド、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジアリルシアナミド、エチレングリコールジビニルエーテル、ジアリルフタレート、ジビニルジメチルシラン、グリセロールトリビニルエーテル、ジビニルアジペート;ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート;ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート;グリコールモノジシクロペンテニルエーテルの不飽和エステル;アリルメタクリレート、アリルアクリレート、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、イタコン酸ジアリル等を含む末端エチレン性不飽和を有するα,β−不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸のアリルエステル等を任意に含有していてもよい。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、シェルモノマー系(E2)が、重合単位として、1重量パーセント〜10重量パーセントの(メタ)アクリル酸と、90重量パーセント〜99重量パーセントのスチレンとを含む。
【0037】
一段階プロセスによって得られるか又は幾つかの段階を伴うプロセスによって得られるかにかかわらず、工程(iii)後のコア−シース−シェル粒子は通常、膨潤していない状態の直径として250nm〜1000nmの平均粒径を有する。塗料用の不透明剤として使用することが意図される場合、300nm〜450nmの平均粒径が好ましい。
【0038】
シェル(C)中における酸官能性モノエチレン性不飽和モノマーの存在は幾つかの機能を果たすことができる:
(1)最終的な多段階エマルションポリマー粒子の安定化;及び
(2)シェルを、多段階エマルションポリマー粒子の先に形成された段階に適合させること。
【0039】
本明細書中で使用される場合、「逐次的に乳化重合された」又は「逐次的にエマルション生成された」という用語は、先に形成されたエマルションポリマーの分散ポリマー粒子の存在下における乳化重合プロセスにより水性媒体中に調製され、その結果、先に形成されたエマルションポリマーの分散粒子を含有する媒体中に導入される1つ又は複数の逐次的なモノマー電荷の乳化重合物の堆積によって、先に形成されたエマルションポリマーのサイズが増大するポリマー(ホモポリマー及びコポリマーを含む)を指す。
【0040】
本発明の方法は、コア、シース高分子層及び/又はシェルが一段階又は逐次重合工程で生成されていてもよく、又は重合に続く連続的な複数の工程によって生成されていてもよいと考えられる。
【0041】
本発明によれば、E1+E2におけるモノマーの総量ベースで0.05重量%〜0.45重量%の総量の水溶性重合触媒が使用される。工業規模で、すなわち約10000kg〜50000kgの容量のリアクタ内で本発明の方法を実施する場合、水溶性重合触媒は、E1+E2におけるモノマーの総量ベースで0.10重量%〜0.30重量%の総量で使用されるのが好ましい。その理由は、実験室条件下又はパイロットプラントにおけるそれらの使用と比較した場合の、実際の施設の条件下におけるかかる触媒の効率の向上にある。
【0042】
触媒は、シースモノマー系E1と同時に重合リアクタ内に供給されるか、又は工程(ii)におけるE1の乳化重合を開始する直前に重合リアクタ内に供給される。水溶性重合触媒は、水性乳化重合に利用される水溶性フリーラジカル開始剤であるのが好ましい。好適な水溶性フリーラジカル開始剤としては、過酸化水素;tert−ブチルペルオキシド;和光純薬工業株式会社製のV−50のようなジアゾ開始剤;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸リチウム等のアルカリ金属過硫酸塩;過硫酸アンモニウム;並びにこのような開始剤と還元剤との混合物が挙げられる。還元剤としては、アルカリ金属メタ重亜硫酸塩、アルカリ金属ヒドロ亜硫酸塩及びアルカリ金属次亜硫酸塩等の亜硫酸塩;ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム;並びにアスコルビン酸及びイソアスコルビン酸等の還元糖が挙げられる。
【0043】
工程(ii)及び/又は工程(iii)では、1つ又は複数の非イオン性又はアニオン性の乳化剤又は界面活性剤を単独で又は併せて使用してもよい。好適な非イオン性の乳化剤としては、tert−オクチルフェノキシエチルポリ(39)−エトキシエタノール、ドデシルオキシポリ(10)エトキシエタノール、ノニルフェノキシエチル−ポリ(40)エトキシエタノール、ポリエチレングリコール2000モノオレエート、エトキシ化ヒマシ油、フッ素化アルキルエステル及びフッ素化アルコキシレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ヤシ油脂肪酸スクロース、ジ(2−ブチル)フェノキシポリ(20)エトキシエタノール、ヒドロキシエチルセルロースポリブチルアクリレートグラフトコポリマー、ジメチルシリコーンポリアルキレンオキシドグラフトコポリマー、ポリ(エチレンオキシド)ポリ(ブチルアクリレート)ブロックコポリマー、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとのブロックコポリマー、30モルのエチレンオキシドでエトキシ化された2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、N−ポリオキシエチレン(20)ラウリン酸アミド、N−ラウリル−N−ポリオキシエチレン(3)アミン及びポリ(10)エチレングリコールドデシルチオエーテルが挙げられる。好適なアニオン性の乳化剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウム、ノニルフェノキシエチルポリ(1)エトキシエチルサルフェートアンモニウム塩、スチレンスルホン酸ナトリウム、ドデシルアリルスルホコハク酸ナトリウム、アマニ油脂肪酸、エトキシ化ノニルフェノールのリン酸エステルのナトリウム塩又はアンモニウム塩、オクトキシノール−3−スルホン酸ナトリウム、ココイルサルコシンナトリウム、1−アルコキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホン酸ナトリウム、α−オレフィン(C
14〜C
16)スルホン酸ナトリウム、ヒドロキシアルカノールの硫酸塩、N−(1,2−ジカルボキシエチル)−N−オクタデシルスルホスクシンアミド酸四ナトリウム、N−オクタデシルスルホスクシンアミド酸二ナトリウム、アルキルアミドポリエトキシスルホコハク酸二ナトリウム、スルホコハク酸のジナトリウムエトキシ化ノニルフェノール半エステル、及びtert−オクチルフェノキシエトキシポリ(39)エトキシエチルサルフェートのナトリウム塩が挙げられる。1つ又は複数の界面活性剤は概して、多段階ポリマーの重量ベースで0パーセント〜3パーセントの濃度で使用される。1つ又は複数の界面活性剤は、任意のモノマー電荷の添加前、モノマー電荷の添加中又はそれらの両方で添加することができる。シェルを形成するための或る特定のモノマー/乳化剤系では、反応媒体においてガム又は凝固ガムを生じる傾向が、先に形成された粒子上に形成されるポリマーの堆積を損なうことなく、シェルポリマーの総重量ベースで約0.05重量%〜約2.0重量%の乳化剤の添加によって低減又は妨げら得る。
【0044】
乳化剤の低濃度を維持しながら乳化重合を実行することによって、続くポリマー形成段階で、先の工程又は段階により生じた既存の分散ポリマー粒子上に、直前に形成されたポリマーが堆積する。原則として、乳化剤の量は、特定のモノマー系に関する臨界ミセル濃度に相当する量未満に保たれていなければならないが、この制限が好ましく、また単一様式の生成物を生成する一方で、系によっては、好ましくないか又は過剰な数の分散ミセル又は分散粒子の形成を伴うことなく、乳化剤が臨界ミセル濃度を幾らか超えることがある。各段階においてその後形成されたポリマーの堆積が、先の段階で形成される分散ミセル又は分散粒子上で起こるように、重合の様々な段階におけるミセルの数を制御することを目的として、乳化剤の濃度を低く保っている。
【0045】
所与の段階で形成されるポリマーの粘度平均分子量は、100000、又は連鎖移動剤を使用する場合にはそれよりも低い分子量から、数百万という分子量までの範囲をとり得る。約20000程度と低い値等の、範囲の下の方の分子量を有するコアを生成することが望ましい場合には、如何なるポリエチレン性不飽和モノマーも使用することなく代わりに例えば0.05%〜2%以上の連鎖移動剤を使用することによって、そのようなコアを生成することが往々にして最も現実的であり、連鎖移動剤の例はsec−ブチルメルカプタン等のアルキルメルカプタンである。
【0046】
コア対シースの重量比は概して、1:0.5〜1:10の範囲内、好ましくは1:1〜1:5の範囲内である。コア対シェルの重量比は概して、1:5〜1:20の範囲内、好ましくは1:8〜1:15の範囲内である。好ましくは、高分子シェル(C)の重量は、粒子の総モノマー重量の50%超を構成する。最終生成物の乾燥密度を減少させようとする場合、コアを封入しながらシェルを可能な限り少なくすることが好ましい。
【0047】
最終生成物の乾燥密度を最低限に抑えるためには、コアを完全に封入するのに必要とされるのと同程度のシェルポリマーのみを堆積させることが好ましい。親水性コアポリマーが完全に封入されると、室温で約1時間という標準的な分析条件の下ではアルカリ金属塩基で滴定されない。封入の程度は、シェル重合の最中にサンプルを取り出して水酸化ナトリウムで滴定することによって求めることができる。
【0048】
工程(iv)において、好適な膨潤剤は、多段階エマルションポリマー及びモノマーの存在下において、シェルに浸透しかつコアを膨潤させることができるものを含む。膨潤剤は、水性又はガス状の、揮発性塩基若しくは固定塩基、又はそれらの組合せとすることができる。
【0049】
本発明の工程(iv)において好適な膨潤剤としては、揮発性塩基、例えば、アンモニア、水酸化アンモニウム、好ましくは水酸化アンモニウム水溶液、並びにモルホリン、トリメチルアミン及びトリエチルアミン等の揮発性低級脂肪族アミン等;固定塩基又は永久塩基、例えば水酸化カリウム、水酸化リチウム、亜鉛アンモニウム錯体、銅アンモニウム錯体、銀アンモニウム錯体、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等が挙げられる。水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。
【0050】
膨潤剤の量は、コアの完全な中和をもたらすのに必要とされる量よりも少ないか、これに等しいか、又はこれよりも多くてもよい。好ましくは、膨潤剤の量は、コア+シース+シェルに含まれる酸の総量ベースで、すなわちコア、シース及びシェルの合計に対して75パーセント〜150パーセントの範囲内である。
【0051】
膨潤は概して、高温条件下及びモノマー溶剤系の存在下において極めて効率的である。これらの条件下で、膨潤は概して、1つ又は複数の膨潤剤を添加してから30分以内、好ましくは20分以内、最も好ましくは10分以内に完了する。
【0052】
好ましくは、中和及び膨潤させる工程(iv)における高温は、約50℃〜約120℃、好ましくは約80℃〜約95℃である。
【0053】
シェルに浸透してコアの親水性官能基の少なくとも一部を、好ましくは少なくとも約6〜少なくとも約10のpHに中和させる塩基性膨潤剤をコアに施すことによって、親水性コアポリマーの水和による膨潤がもたらされる場合に、多段階エマルションポリマーのコアポリマーは膨潤する。コアの膨潤又は拡大は、シェルの内周の細孔内へのコアの外周の部分的な融合、またシェル及び粒子全体の部分的な拡張又は膨張を伴い得る。
【0054】
本発明によれば、上記膨潤は、上記シェルモノマー系(E2)における5重量%〜50重量%、好ましくは15重量%〜30重量%、より好ましくは20重量%〜30重量%の少なくとも1つの非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーを含むモノマー溶剤系の存在下で起こり、該モノマーは、溶剤として作用し、更に、作製されたポリマー層を介するコアへの塩基の浸透を促す。工程(iv)の上記モノマー溶剤系は、塩基の添加前、添加後又は添加中に添加してもよい。好ましくは、上記モノマーはスチレンである。
【0055】
工程(iv)における上記モノマーの存在は、シェルを可塑化することによるか否かにかかわらず、多段階ポリマーの膨潤を促進するのに役立ち、シェル又はそれらの組合せを介する輸送を助ける。しかしながら、モノマーの存在は、膨潤を最大限にするとともに膨潤した多段階エマルションポリマーの乾燥バルク密度を最小限に抑えようとする場合に好ましくない。したがって、上記モノマーの存在により生じる最終生成物の如何なる匂いも回避するために、モノマー溶剤系及び膨潤剤の両方の存在下において多段階エマルションポリマーを膨潤させた後、モノマー溶剤系の上記モノマーの濃度を、ポリマー固体ベースで、10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満まで低減させる。これは、工程(iv)に使用されるモノマー溶剤系のモノマーを重合することによって達成される。好ましくは、本発明の上記工程(v)において、膨潤工程が完了した後にレドックス触媒により開始させることによって上記モノマー溶剤系を重合させる。それらのレドックス触媒は当該技術分野で既知のものである。通常使用される系はtBHP/SSFである。重合はシェルで起こるため、得られるポリマー、好ましくはポリスチレンは、粒子のシェル(C)の構成成分となる。
【0056】
本発明の方法は、特許文献4の方法により得られるものと同程度の大きい不透明度を有する、膨潤した多段階エマルションポリマー粒子を生成することができるが、複雑で有毒の高価な化合物を使用せず、とりわけ如何なる重合防止剤もスカベンジャも使用しない。
【0057】
不透明剤としてのこれらの膨潤した多段階エマルションポリマー粒子の性能は、以下のように判断した。参照としては、Rohm and Haas Companyにより供給されるRopaque UltraEと市場で呼ばれている最良の(ほとんど唯一の)製品を採用した。乾燥させると、明澄透明なフィルムを生じる典型的なアクリルポリマーエマルションを採用した。常に同量(固体対固体)の試験用生成物を配合し、また同じことを参照用生成物で行い、常に同程度の乾燥フィルム厚及び乾燥基準での同程度の不透明剤対ポリマー比を有するような固形分のあらゆるわずかな相違も説明している。サンプルは白黒標準Lenetaチャートに塗布する。乾燥させて(60℃のオーブンで20分)、サンプルの不透明性を比較した。参照用生成物では10の値が得られ、不透明性がない場合(透明フィルム)には0の値が得られる。
【0058】
膨潤した多段階エマルションポリマーが少なくとも部分的に乾燥されて、ボイドを有するポリマー粒子を生成する場合、これらのボイドを有するポリマー粒子は、それらが添加されるペーパーコーティング配合物に光沢、輝度及び不透明性等の好ましい性質をもたらす。
【0059】
本発明の方法により生成される、ボイドを有するポリマー粒子は、水性塗料及びペーパーコーティング等のコーティング組成物に有用である。本発明の方法により生成される、ボイドを有するポリマー粒子は、それらが添加されるペーパーコーティング配合物に光沢、輝度及び不透明性の改善をもたらす。また、本発明の方法により生成される、ボイドを有するポリマー粒子は、それらが添加される、塗料等の水性コーティング組成物に不透明性をもたらす。
【実施例】
【0060】
以下の実施例において本発明を更に例示するが、これらに何ら限定されるものではない。
【0061】
実施例1
以下のようにプロセスを実施した。初めに、反応水を重合リアクタ内に添加した後、90℃〜92℃に加熱した。この後、従来手段によって調製したシード粒子を導入した。これらのシード粒子は、65重量%のメチルメタクリレートと、35重量%のメタクリル酸とで構成されるものとした。平均粒径は147nmであり、固形分は30%であった。シード粒子を添加するときに、温度を78℃〜82℃に下げた。
【0062】
続いて、プレエマルション−I(E1)、すなわちシースモノマー系の供給を開始した。初めに15分間、流速は正常速度の1/2(すなわち、約0.5g/分で15分間)、その後、45分間、正常の流速(すなわち、約1.2g/分で45分間)とした。反応温度は、80℃〜83℃とし、反応時間は60分とした。シースモノマー系(E1)と一緒に触媒を供給した。触媒及びE1は同時に供給を止めた。供給が完了した後、温度が80℃〜82℃で安定するまでそれを15分〜30分放置した。
【0063】
この後、シェルモノマー系(E2)、すなわちプレエマルション−IIの供給を80℃〜82℃で開始した。その後、温度を84℃〜85℃に徐々に上げ、10分〜20分後に92℃〜94℃に上げた。反応時間は70分とした。その後、E2の供給を止めた後15分〜30分のうちに、温度を88℃〜90℃に下げた。
【0064】
この後、プレエマルション−III(E3)、すなわちモノマー溶剤系を5分で添加した。その後、温度が85℃〜87℃付近で安定するまでそれを10分放置させた。続いて、中和剤(苛性溶液)の供給を開始し、約60分かけた。エマルションは全て添加するまで85℃〜89℃に保った。中和後、混合物を混合しながら15分保持した。その後、レドックス触媒を84℃〜88℃で添加した(初めにt−BHP、その後、SSF)。90℃〜95℃への5℃〜8℃の温度上昇が観測された。10分後、エマルションを冷却させた。40℃未満で、殺生物剤(Thor GmbHから市販されているActicide(登録商標)MV)を添加した。最終的な後処理(work-up)後、分析的研究のためにそれぞれのサンプルを採取した。以下に、個々の工程におけるリアクタの装填量を示す。
【0065】
【表1】
【0066】
分析仕様から以下の結果が得られた。
【0067】
【表2】
【0068】
実施例2
以下のようにプロセスを実施した。初めに、反応水を重合リアクタ内に添加した後、90℃〜92℃に加熱した。この後、触媒を添加(噴射)した後、従来手段によって調製したシード粒子を添加した。これらのシード粒子は、65重量%のメチルメタクリレートと、35重量%のメタクリル酸とで構成されるものとした。平均粒径は147nmであり、固形分は30%であった。シード粒子を添加するときに、温度を78℃〜82℃に下げた。
【0069】
続いて、プレエマルション−I(E1)、すなわちシースモノマー系の供給を開始した。初めに15分間、流速は正常速度の1/2(すなわち、約0.5g/分で15分間)、その後、45分間、正常の流速(すなわち、約1.2g/分で45分間)とした。反応温度は、80℃〜84℃とし、反応時間は60分とした。供給が完了した後、温度が80℃〜82℃で安定するまでそれを15分〜30分放置させた。
【0070】
この後、シェルモノマー系(E2)、すなわちプレエマルション−IIの供給を80℃〜82℃で開始した。その後、温度を84℃〜85℃に徐々に上げ、10分〜20分後に92℃〜94℃に上げた。反応時間は70分とした。その後、E2の供給を止めた後15分〜30分のうちに、温度を88℃〜90℃に下げた。
【0071】
この後、プレエマルション−III(E3)、すなわちモノマー溶剤系を5分で添加した。その後、温度が85℃〜87℃付近で安定するまでそれを10分放置させた。続いて、中和剤(苛性溶液)の供給を開始し、約60分かけた。エマルションは全て添加するまで85℃〜89℃に保った。中和後、混合物を混合しながら15分保持した。その後、レドックス触媒を84℃〜88℃で添加した(初めにt−BHP、その後、SSF)。90℃〜95℃への5℃〜8℃の温度上昇が観測された。10分後、エマルションを冷却させた。40℃未満で、殺生物剤(Thor GmbHから市販されているActicide(登録商標)MV)を添加した。最終的な後処理後、分析的研究のためにそれぞれのサンプルを採取した。以下に、個々の工程におけるリアクタの装填量を示す。
【0072】
【表3】
【0073】
分析仕様から以下の結果が得られた。
【0074】
【表4】
【0075】
実施例3
E1と一緒に触媒を供給する実施例1と同様に行い、他の触媒及び防止剤は供給しない。試験T−340、T−325、T−328及びT−329はそれぞれ、1.2g、1.0g、0.8g及び0.6gの触媒(E1+E2のモノマーベースで0.5%、0.42%、0.33%、0.25%に相当)を含有するものとする。得られる不透明性はそれぞれ6、9、10、10である。
【0076】
実施例4
E1直前に触媒を噴射する実施例2と同様に行い、他の触媒及び防止剤は供給しない。試験T−338、T−333、T−327、T−336はそれぞれ、実施例1と同じ勾配の触媒(E1+E2のモノマーベースで0.5%、0.42%、0.33%、0.25%に相当)を含有するものとする。得られる不透明性は6.5、9.5、10、10である。
【0077】
比較例1
既存の触媒(0.42%をE1直前に噴射する)は別にして実施例2に示される同様の配合で、第2の触媒(触媒−2、E1+E2のモノマーベースで0.13%)を添加し、これはE2と同時に投与した。E2及び触媒−2の供給を止めるときに、0.5g(すなわち1.15%)の防止剤である4−ヒドロキシTempoをE3中に添加した。反応の残りの部分は実施例2と同様とする。結果は、参照用の商用生成物、本比較例1、本発明の実施例1及び本発明の実施例2が、全て9.5〜10の範囲の同程度の不透明性を示すものである。
【0078】
比較例2
特許文献1の実施例2A及び実施例2Bを再現した。これらの反応は、同様の原料及びプロセスを用いて技術的に可能な限り正確な再現となるように実行した。反応は両方とも円滑に実行され、物理的問題も化学的問題も示さなかった。得られる生成物は、固体%、pH、粘度、凝固ガムが存在しないこと等に関して予想されるとおりのものであった。得られる不透明度は、上記で説明される0〜10のスケールでそれぞれおよそ1.5及び1.0であった。材料及び工程処理のわずかな相違を考慮に入れても、上記の本発明の実施例1及び実施例2と比較される不透明性の違いは非常に大きなものである。
【0079】
結論
本発明の実施例1及び実施例2は、触媒以外あらゆる点で全く同じである。実施例1(試験363)では、触媒はE1と同時に供給し、両方の供給を同時に止めている。実施例2(試験333)では、E1を開始する直前にリアクタ内に触媒を噴射している。更なる触媒も、プロセスを妨げるような防止剤もスカベンジャもいずれも全く添加していない。実施例1及び実施例2の両方では、重合されるモノマー(E1におけるモノマー+E2におけるモノマー)を基準とする触媒の量は、0.45%以下、実際にはそれぞれ0.33%及び0.42%である。これに関して、実施例1及び実施例2は、100kg〜2000kgの装填量について採用されるパイロットプラント条件のものに類似する、実験室条件(1kg〜5kgの装填量について採用される)下で実行されるプロセスを表すことに留意されたい。しかしながら、上述のように、工業規模で、すなわち約10000kg〜50000kgの容量のリアクタ内で本発明の方法を実施する場合、好ましくは、E1+E2におけるモノマーの総量ベースで0.10重量%〜0.30重量%の総量で水溶性重合触媒を使用する。それ故、これは、実施例1及び実施例2が総触媒量についての好ましい範囲の外にある。
【0080】
得られた生成物は10という不透明度を示す。比較例1の生成物は、本発明の実施例1及び実施例2のものと同様の不透明度を示すが、はるかに大きい触媒量及び好ましくない重合防止剤を使用する。
【0081】
本発明によれば、E2と併せては触媒を使用しないため、触媒の総量が0.45%以下となる。このようにすることによって、高度に複雑な重合防止剤を全く必要とせず、より単純でよりきれいかつより安価な生成物及びプロセスがもたらされ、新たな重合防止剤溶液を調製するという望ましくない如何なる手動操作も回避される。
【0082】
特許文献3との比較
特許文献3における実施例1に厳密に従った。唯一の例外は、推奨される界面活性剤(Alipal CO−436)としたことであり、これは、組成及び特性がAlipal CO−436に酷似するCognis A.G.のDisponil FES 32の代用であった。いずれにせよ、界面活性剤について言及している唯一の部分である特許文献3のパラグラフ[0040]には、基本的にいずれの種類の界面活性剤も許容されている。
【0083】
シード生成では、特許文献3のパラグラフ[0044]〜[0047]に従い、Malvern Instruments製の粒径分析計(Zetasizer, Nano S)によって測定した場合、53nm〜85nmの範囲の粒径のシードが得られた(実施例1の範囲は58nm〜65nmとされている)。
【0084】
ポリマーコア生成では、特許文献3のパラグラフ[0049]〜[0051]に従い、141nm〜151nmのコアが得られた(実施例1は166nmの1つのコアしか言及していない)。粒径を測定する機器は開示されていないため、本出願人は、違い及び傾向を探求するために、言及される値に近づくよう調製することにした。これらの2つのコアに基づき、特にアンモニア及びα−メチルスチレンを添加する段階についてパラグラフ[0053]〜[0056]に厳密に従った。本発明者等は、遊離モノマー(スチレン)の量がそれぞれ、0.05%という実施例1の結果と十分一致する0.037%及び0.047%であることを見出した。
【0085】
しかしながら、不透明性は極めて低い。上記で説明される方法によって不透明性を確認する場合、得られる不透明化ポリマーは、本発明により得られる不透明剤によって提供される9〜10という不透明度とは対照的に、0〜1の範囲の値を示す。
【0086】
これらの粒子の不透明化能を測定する別の方法は、粒子における乾燥密度を測定することによるものである。粒子中のボイドのサイズは、不透明性に相当する光散乱を得る1つの重要な主要素である。ボイドのサイズは、粒子の乾燥密度を測定することによって求めることができる。実施例1の2つ再現から得られる粒子は、0.592g/cm
3及び0.573g/cm
3という上述されるような本発明による実施例の代表的な値をはるかに上回り、かつボイドが形成されない場合の粒子の理論的な乾燥密度、すなわち1.07g/cm
3に近い、1.0164g/cm
3及び0.9865g/cm
3という乾燥密度値を示す。