特許第5769850号(P5769850)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5769850
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】係留気球
(51)【国際特許分類】
   B64B 1/50 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
   B64B1/50
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-126492(P2014-126492)
(22)【出願日】2014年6月19日
【審査請求日】2014年7月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンクモバイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】中島 潤一
(72)【発明者】
【氏名】宮島 春弥
(72)【発明者】
【氏名】藤井 輝也
【審査官】 黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第08167246(US,B1)
【文献】 米国特許第03318553(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0286089(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0075523(US,A1)
【文献】 米国特許第05470032(US,A)
【文献】 特開平04−066391(JP,A)
【文献】 国際公開第00/066424(WO,A1)
【文献】 米国特許第05065163(US,A)
【文献】 特開2000−177695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64B 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に気体が充填されたときに扁平形状になる気球と、
それぞれの一端が前記気球の表面に接続された複数の係留索と、
前記気球が受ける気流の風速に応じて、前記複数の係留索の何れかの長さを調整する索長調整部と、を有し、
前記索長調整部は、前記複数の係留索の何れか1つの長さを調整する弾性部材を有し、
前記弾性部材は、前記複数の係留索の何れか1つの所定の部分に、前記弾性部材に張力が印加されていないときの長さが前記所定の部分の長さよりも短くなるように並列接続され、
前記弾性部材は、中空部が内部に形成され、前記弾性部材に張力が印加されていないときに、前記所定の部分が前記中空部に配置される、ことを特徴とする係留気球。
【請求項2】
前記気球の表面に接合されると共に、前記索長調整部により長さを調整される係留索に接続される膜状のスクープを更に有する、請求項に記載の係留気球。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、係留気球に関する。
【背景技術】
【0002】
災害等で基地局の動作が停止した場合、動作を停止した基地局がカバーしていたエリアでは、携帯電話等の携帯端末の通信ができなくなる通信障害が発生する。通信障害が発生した場合に、動作を停止した基地局を早急に回復して通信障害を解消することが求められる。しかしながら、基地局が倒壊した場合等、基地局の機能を早急に復旧することが困難な場合がある。
【0003】
一方、気球と、気球を係留するために気球に接続された係留索とを有す係留気球が知られている。係留気球は、風力発電装置等の大型構造物を建設するときの上空の風速調査、風速及び気温等の鉛直分布の調査、及び災害時の被害状況の確認のための映像撮影等に使用されることが知られている。しかしながら、係留気球は、強風を受けると適切な位置を維持できないおそれがある。
【0004】
特許文献1には、強風を受けた場合でも適切な位置することができる係留気球が記載されている。特許文献1に記載される係留気球は、気球、及び気球に接続された係留索に加えて、気球が強風を受けた場合でも気球が適切な位置を保つように機能するスクープを有する。スクープは、気球が適切な位置を保つのに適切な空気抵抗を気球に付与するように多孔性材料で形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5065163号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者は、災害等で動作を停止した基地局を早急に復旧することが困難な場合に、基地局の機能を代替する中継局を気球に搭載して、動作を停止した基地局がカバーしていたエリアの通信障害を早急に回復することを見出した。中継局を搭載した気球を約100[m]の高度まで上昇させて係留することにより、半径3[km]以上のエリアをカバーする中継局を実現することができる。
【0007】
しかしながら、中継局を搭載した気球として扁平形状の気球を使用した場合、気球が気流を受けると、気球が傾くおそれがある。扁平形状の気球は、気球が受ける気流の方向から見た投影面積が所定の面積になることが好ましいが、気流を受けることにより気球の傾きが増大し、気流の方向から見た投影面積が増大する。
【0008】
本発明は、気球が気流を受けたときでも気球の傾きが増大するおそれが低い係留気球を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を実現するため、本発明に係る係留気球は、内部に気体が充填されたときに扁平形状になる気球と、それぞれの一端が気球の表面に接続された複数の係留索と、気球が受ける気流の風速に応じて、複数の係留索の何れかの長さを調整する索長調整部と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る係留気球では、索長調整部は、複数の係留索の何れか1つの長さを調整する弾性部材を有することが好ましい。
【0011】
本発明に係る係留気球では、弾性部材は、複数の係留索の何れか1つの所定の部分に、弾性部材に張力が印加されていないときの長さが所定の部分の長さよりも短くなるように並列接続されることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る係留気球では、弾性部材は、中空部が内部に形成され、弾性部材に張力が印加されていないときに、並列接続された係留索の所定の部分が中空部に配置されることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る係留気球では、索長調整部は、所定の方向に対する気球の傾斜角を検出する傾斜検出部と、傾斜検出部が検出した傾斜角に応じて、係留索の長さを決定する索長決定部と、索長決定部が決定した長さになるように、係留索の長さを変更する索長変更部と、を有することが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る係留気球は、気球の表面に接合されると共に、索長調整部により長さを調整される係留索に接続される膜状のスクープを更に有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、気球が気流を受けたときでも気球の傾きが増大するおそれが低い係留気球が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】空中に位置する第1実施形態に係る係留気球の斜視図である。
図2】(a)は図1に示す気球の部分断面側面図であり、(b)は(a)に示す気球の底面図である。
図3図1に示すスクープの平面図である。
図4】第1実施形態に係る索長調整部材と、索長調整部材が接続された係留索との接続関係を示す図であり、(a)は係留索に張力が印加されていない状態を示す図であり、(b)は係留索に張力が印加されている状態を示す図である。
図5】従来の係留気球と、実施形態に係る係留気球との比較を示す図であり、(a)は従来の気球が水平方向から気流をほとんど受けない場合を示し、(b)は(a)のときの気流方向から見た気球の投影面を示し、(c)は従来の気球が水平方向から風速が大きい気流を受けた場合を示し、(d)は(c)のときの気流方向から見た気球の投影面を示し、(e)は気球が水平方向から気流をほとんど受けない場合を示し、(f)は(e)のときの気流方向から見た気球の投影面を示し、(f)は気球が水平方向から風速が大きい気流を受けた場合を示し、(g)は(f)のときの気流方向から見た気球の投影面を示す。
図6】第2実施形態に係る索長調整部材と、索長調整部材が接続された係留索との接続関係を示す図であり、(a)は係留索に張力が印加されていない状態を示す図であり(b)は係留索に張力が印加されている状態を示す図である。
図7】第3実施形態に係る索長調整装置と、索長調整装置が接続された係留索との接続関係を示す図であり、(a)は係留索に張力が印加されていない状態を示す図であり、(b)は係留索に張力が印加されている状態を示す図である。
図8】第4実施形態に係る索長調整システムの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の図面を参照して、本発明に係る係留気球について説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明との均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0018】
実施形態に係る係留気球は、扁平形状の気球が受ける気流の風速にかかわらず、気球の傾斜を一定に保つように、気流の風速に応じて係留索の何れかの長さを調整する索長調整部を有する。索長調整部の一例は複数の係留索の何れか1つの長さを調整する弾性部材であり、索長調整部の他の例は所定の方向に対する気球の傾斜角に応じて係留索の長さを変更する索長調整システムである。実施形態に係る係留気球では、索長調整部が気流の風速に応じて係留索の長さを調整することにより、気球の傾きを一定に保つことができる。
【0019】
図1は、空中に位置する第1実施形態に係る係留気球の斜視図である。
【0020】
係留気球1は、気球10と、スクープ20と、第1〜第3係留索30〜32と、主係留索33と、中継局40と、索長調整部材50とを有する。
【0021】
図2(a)は内部に気体が充填された気球10の部分断面側面図であり、図2(b)は内部に気体が充填された気球10の底面図である。
【0022】
気球10は、外袋11と、ヘリウム収納袋12と、空気収納袋13と、ペイロード用ドーム14と、3つの係留索取付け部15とを有する。気球10は、ヘリウム収納袋12及び空気収納袋13と外袋11との二重構造となっているので、外袋11は、ガスバリア性を有する材料で形成される必要はない。外袋11は、合成繊維等の堅固、軽量且つ風を通さない材料で形成される。ヘリウム収納袋12は、ヘリウムを充填する袋であり、外袋11と比較して強度及び耐久性が低く且つ軽量な材料により形成される。例えば、ヘリウム収納袋12は、プラスチックフィルムを溶着することにより形成される。空気収納袋13は、外袋11と比較して強度及び耐久性が低く且つ軽量な材料により形成される。空気収納袋13は、ヘリウム収納袋12と同様に、プラスチックフィルムを溶着することにより形成される。ペイロード用ドーム14は、有底の円筒状の部材であり、底部が空気収納袋13に接するように配置される。ペイロード用ドーム14は、発泡スチロール等の堅固且つ軽量な素材により形成される。ペイロード用ドーム14の凹部には、中継局40が配置される。
【0023】
気球10は、ヘリウム収納袋12にヘリウムが充填され且つ空気収納袋13に空気が充填されているとき、高さ方向に短軸を有する回転楕円体状の形状を有する。すなわち、内部に気体が充填されているとき、気球10は、円形状の平面形状を有し且つ楕円状の正面形状を有する扁平形状となる。一例では、気球10は、直径4.6[m]の円状の平面形状を有し且つ、長径4.6[m]、短径2.66[m]の楕円状の正面形状を有する。
【0024】
3つの係留索取付け部15は、正面から見たときに長径に沿うように気球10の表面に配置される。3つの係留索取付け部15のそれぞれは、第1〜第3係留索30〜32の何れか1つの一端に接続される。スクープ20が接合される部分に近接する位置に配置される係留索取付け部15には第1係留索30の一端が接続され、他の2つの係留索取付け部15には、第2係留索31及び第3係留索32の一端がそれぞれ接続される。
【0025】
図3は、スクープ20の平面図である。
【0026】
スクープ20は、一方の面から他方の面に空気を透過するように編み込まれたポリエステルにより形成される可とう性の面21を有する膜材である。スクープ20は、姿勢安定膜とも称される。スクープ20は、底辺23と、底辺23の反対に位置する頂角28で一端が接続された第1等辺24及び第2等辺25と、底辺23の両端から第1等辺24及び第2等辺25の他端にそれぞれ伸びる第1切欠辺26及び第2切欠辺27とにより囲まれた形状を有する。第1等辺24及び第2等辺25は互いに長さが等しく、第1切欠辺26及び第2切欠辺27は互いに長さが等しい。すなわち、スクープ20は、底角部分が切欠された二等辺三角形状に形成される。スクープ20の底辺23、第1切欠辺26及び第2切欠辺27のそれぞれの近傍で、気球10に接合される。スクープ20の頂角28には、スクープ20と第1係留索30とを接続する接続索29が接続される。スクープ20の頂角28と第1係留索30とが接続索29を介して接続されることにより、係留気球1が空中に上げられたときに、ヨットの帆のようにスクープ20が風を受けて、係留気球1は、スクープ20が風下となるように風見安定する。
【0027】
第1〜第3係留索30〜32のそれぞれは、係留気球1が空中にあるときに受ける気流による張力で切断されない材料で形成される。第1係留索30の一端はスクープ20が接合される部分に近接する位置に配置される係留索取付け部15に接続され、第2係留索31及び第3係留索32のそれぞれの一端は他の2つの係留索取付け部15に接続される。第1〜第3係留索30〜32のそれぞれの他端は、結節点34において、主係留索33の一端と接続される。一例では、結節点34における第1〜第3係留索30〜32のそれぞれの他端と主係留索33の一端とは、接続金具を介して接続される。第1係留索30は、スクープ20の頂角と接続索29を介して接続される。一例では、第1係留索30と接続索29とは、接続金具を介して接続される。
【0028】
第1係留索30の長さは、第2係留索31及び第3係留索32の長さよりも長く、第2係留索31及び第3係留索32の長さは互いに等しい。
【0029】
主係留索33は、第1〜第3係留索30〜32と同様に、係留気球1が空中にあるときに受ける気流による張力で切断されない材料で形成される。主係留索33の他端は、不図示のウインチに接続される。主係留索33の他端に接続されるウインチから主係留索33が巻き出されるとき、係留気球1は巻出量に応じて空中に上昇し、ウインチから主係留索33が巻き取られるとき、係留気球1は巻取量に応じて空中から下降する。
【0030】
中継局40は、不図示の中継用アンテナ及び対移動局用アンテナを有し、移動体通信網に接続される基地局と、基地局がカバーしていたエリア内に位置する携帯端末との間の通信網を形成する。
【0031】
索長調整部材50は、第1係留索30の結節点34の近接する位置に第1係留索30の一部と並列するように接続される弾性部材である。一例では、索長調整部材50は、平ゴム又はコールゴムとも称される平板状のゴムひもから形成されてよく、またバネから形成されてもよい。
【0032】
図4は、第1係留索30と、索長調整部材50との接続関係を示す図である。図4(a)は第1係留索30に張力が印加されていない状態を示す図であり、図4(b)は第1係留索30に張力が印加されている状態を示す図である。
【0033】
索長調整部材50は、第1接続部51及び第2接続部52において第1係留索30と並列接続される。索長調整部材50は、第1係留索30と並列接続されるので、第1係留索30に張力が印加されると、索長調整部材50にも張力が印加される。張力が印加されていないときの索長調整部材50の第1接続部51と第2接続部52との間の長さはLaである。また、第1係留索30の第1接続部51及び第2接続部52の間の長さは、索長調整部材50の第1接続部51及び第2接続部52の間の長さLaよりも長いLbである。張力が印加されていないときの索長調整部材50の接続部間の長さLaは、第1係留索30の接続部間の長さLbよりも短いので、張力が印加されていないとき、第1係留索30の接続部間の部分は弛んでいる。
【0034】
索長調整部材50の接続部間の長さLaは、気球10が気流を受けていないときに、係留索取付け部15と第1接続部51との間の長さ及び結節点34と第2接続部52との間の長さとの和が第2係留索31及び第3係留索32の長さと等しくなるように規定される。第1係留索30の接続部間の長さLbは、所定の風速の気流を気球10が受けたときの索長調整部材50の伸びが所望の長さになるように、索長調整部材50を形成する材料のヤング率を勘案して規定される。一例では、第1係留索30の接続部間の長さLbは、気球10が風速5[m/s]の気流を水平方向から受けたときに、気球10の長径の方向が水平方向になるように規定される。本明細書において、気球が水平方向から気流を受けるというとき、気球が受ける気流が水平成分を有していることをいい、気球が水平方向から気球を受けないというとき、気球が受ける気流が水平成分を有していないことをいう。また、気球が風速X[m/s]の気流を水平方向から受けるという場合、気流の方向にかかわらず、気球が受ける気流の水平成分がX[m/s]であることをいう。
【0035】
気球10が受ける気流により印加される張力が増加するとき、索長調整部材50は、印加される張力に応じて長さを長くする。そして、索長調整部材50の長さが、第1係留索30の第1接続部51と第2接続部52との間の長さLbに等しくなると、印加される張力が増加しても、索長調整部材50の長さは増加しない。また、気球10が受ける気流により印加される張力が減少するとき、索長調整部材50は、印加される張力に応じて長さをLbから短くする。そして、印加される張力が0になると、索長調整部材50の長さはLaに戻る。
【0036】
図5は、従来の係留気球と、実施形態に係る係留気球1との比較を示す図である。図5(a)は従来の気球が水平方向から気流をほとんど受けない場合を示し、図5(b)は図5(a)のときの気流方向から見た気球の投影面を示す図である。図5(c)は従来の気球が水平方向から風速が大きい気流を受けた場合を示し、図5(d)は図5(c)のときの気流方向から見た気球の投影面を示す図である。図5(e)は気球10が水平方向から気流をほとんど受けない場合を示し、図5(f)は図5(e)のときの気流方向から見た気球10の投影面を示す図である。図5(f)は気球10が水平方向から風速が大きい気流を受けた場合を示し、図5(g)は図5(f)のときの気流方向から見た気球10の投影面を示す図である。図5(a)、5(c)、5(e)及び5(g)において、矢印は気球が受ける気流を示す。図5(d)において、実線は図5(c)のときの気流方向から見た気球の投影面を示し、破線は図5(b)に示す図5(a)のときの気流方向から見た気球の投影面を示す。図5(h)において、実線は図5(g)のときの気流方向から見た気球10の投影面を示し、破線は図5(f)に示す図5(e)のときの気流方向から見た気球の投影面を示す。
【0037】
従来の係留気球101は、索長調整部材50を有しないことが係留気球1と相違する。また、従来の係留気球101は、第1〜第3係留索130〜132の長さは互いに等しいことが係留気球1と相違する。
【0038】
従来の係留気球101は、第1〜第3係留索130〜132の長さは互いに等しいので、水平方向から気流をほとんど受けないとき、気球110は長径が水平方向になるように位置する。水平方向から気流をほとんど受けないときは、長径が水平方向になるように気球110が位置するので、気流方向から見た気球10の投影面190は、気球10を正面から見たときの投影面と略一致する。しかしながら、従来の繋留気球101は、水平方向から受ける気流の風速が大きくなるに従ってスクープ20が受ける気流が大きくなるため傾斜していき、気流の風速の増加に従って気流方向から見た気球110の投影面191は大きくなる。
【0039】
係留気球1では、水平方向から気流をほとんど受けないとき、従来の繋留気球101と同様に、気球110は長径が水平方向になるように位置し、気流方向から見た気球10の投影面90は、気球10を正面から見たときの投影面と略一致する。係留気球1では、水平方向から受ける気流の風速が大きくなるに従って、索長調整部材50が伸びることにより、気球10は、索長調整部材50の第1接続部51と第2接続部52との間の長さがLbになるまで気球110は長径が水平方向になる状態を維持する。係留気球1では、気球10は、気流の風速が大きくなっても長径が水平方向になる状態を維持するので気流方向から見た気球10の投影面91は、気流の風速が大きくなっても気球10を正面から見たときの投影面と略一致する。
【0040】
係留気球1では、気球10が受ける気流の風速が大きくなるに従って伸びる索長調整部材50が、スクープ20に接続される第1係留索30の所定の部分に並列接続される。気流の風速が大きくなるに従って索長調整部材50が伸びることにより、気球10は、気球10が受ける気流の風速にかかわらず一定の傾斜を維持できる。
【0041】
図6は、第2実施形態に係る索長調整部材と、索長調整部材が接続された第1係留索30との接続関係を示す図である。図6(a)は第1係留索30に張力が印加されていない状態を示す図であり、図6(b)は第1係留索30に張力が印加されている状態を示す図である。
【0042】
第2実施形態では、索長調整部材50の代わりに、索長調整部材50とは形状が異なる索長調整部材60が第1係留索30に並列接続される。
【0043】
第2実施形態に係る索長調整部材60は、索長調整部材50と同様に弾性部材であるが、一方の面から他方の面に貫通する貫通孔61が形成されることが索長調整部材50と相違する。第1係留索30は、貫通孔61の一方の貫通面の近傍で索長調整部材60に接続されると共に、索長調整部材50の貫通孔61には、第1係留索30の索長調整部材60に並列接続される部分が貫通孔61の端部で索長調整部材60に接続されて配置される。張力が印加されていないときの索長調整部材60の長さはLaであり、第1係留索30の索長調整部材60に並列接続される部分の長さはLbである。索長調整部材50の長さLaは、索長調整部材50の接続部間の長さLaと同様に、気球10が気流を受けていないときの索長調整部材60を介する第1係留索30の長さが第2係留索31及び第3係留索32の長さと等しくなるように規定される。第1係留索30の索長調整部材60に並列接続される部分の長さLbは、第1係留索30の接続部間の長さLbと同様に、索長調整部材50を形成する材料のヤング率を勘案して規定される。
【0044】
索長調整部材60では、第1係留索30の索長調整部材60に並列接続される部分が貫通孔61の内部に配置されるので、第1係留索30の索長調整部材60に並列接続される部分が他の索等に絡まるおそれがない。また、索長調整部材60では、不図示のウインチに巻き取されて気球10を空中から下降するときに、第1係留索30の索長調整部材60に並列接続される部分がウインチに巻き込まれるおそれはない。
【0045】
索長調整部材60では、一方の面から他方の面に貫通する貫通孔61が形成されるが、実施形態は、貫通孔61には限定されず、第1係留索30の索長調整部材60に並列接続される部分が配置される空間が索長調整部材60の内部に形成されていればよい。
【0046】
図7は、第3実施形態に係る索長調整装置と、索長調整装置が接続された第1係留索30との接続関係を示す図である。図7(a)は第1係留索30に張力が印加されていない状態を示す図であり、図7(b)は第1係留索30に張力が印加されている状態を示す図である。
【0047】
第3実施形態では、索長調整部材50の代わりに、索長調整装置70が第1係留索30に接続される。
【0048】
索長調整装置70は、第1係留索30に接合される円形の回転部71を有する。回転部71は、第1係留索30の長さを調整するように機能するぜんまいばね72を有する。回転部71は、印加される張力が増加すると、外周に巻き回された第1係留索30を巻き出す。また、回転部71は、印加される張力が減少すると、外周に巻き回して第1係留索30を巻き取る。索長調整装置70は、張力が印加されていないとき、第1係留索30の長さが第2係留索31及び第3係留索32の長さと等しくなるように、第1係留索30を回転部71の外周に巻き回す。
【0049】
図8は、第4実施形態に係る索長調整システムの機能ブロック図である。
【0050】
第4実施形態では、索弾性部材である索長調整部材50の代わりに、気球10の傾斜角に応じて第1係留索30の長さを調整する索長調整システム80が配置される。
【0051】
索長調整システム80は、中継局40に隣接して気球10のペイロード用ドーム14の凹部に配置される索長制御部81と、第1係留索30を巻き出すと共に巻き取ることにより、第1係留索30の長さを変更する索長変更部82とを有する。索長制御部81は、傾斜検出部811と、記憶部812と、索長決定部813と、索長送信部814と、バス815とを有する。索長変更部82は索長受信部821と、モータ駆動部822と、モータ823とを有する。一例では、索長変更部82は、モータ823により第1係留索30を巻き出すと共に巻き取るウインチである。
【0052】
傾斜検出部811は、気球10の水平方向に対する傾斜角を検出し、検出した傾斜角を示す傾斜角信号を記憶部812に出力する。記憶部812は、傾斜検出部811から入力される傾斜角信号に対応する傾斜角を記憶すると共に、索長決定部813が処理を実行するためのコンピュータプログラム(本明細書では、プログラムとも称する)を記憶する。索長決定部813は、記憶部812に記憶されるプログラム及び気球の傾斜角に基づいて、気球10の長径の方向が水平方向になるように第1係留索30を巻き出す又は巻き取る長さを決定し、決定した長さを示す索長信号を生成して、索長送信部814に出力する。索長送信部814は、索長決定部813から入力された索長信号を無線信号に変調して、索長変更部82の索長受信部821に送信する。バス815は、傾斜検出部811、記憶部812、索長決定部813及び索長送信部814を互いに接続し、傾斜検出部811、記憶部812、索長決定部813及び索長送信部814の間の信号を伝送する。
【0053】
索長受信部821は、索長送信部814から受信した無線信号を索長信号に復調してモータ駆動部822に出力する。モータ駆動部822は、索長送信部814から入力された索長信号に対応する長さの第1係留索30を巻き出す又は巻き取るように、モータ823を駆動する。モータ823は、気球10の長径の方向が水平方向になるようにモータ駆動部822により第1係留索30を巻き出す又は巻き取る。
【0054】
索長調整システム80では、索長決定部813は傾斜検出部811が検出した傾斜角に応じて第1係留索30の長さを決定し、索長変更部82は、第1係留索30の長さが、索長決定部813が決定した長さになるように係留索の長さを変更する。
【0055】
索長調整システム80では、スクープ20に接続される第1係留索30の長さを変更するように形成されるが、索長調整システムは、第1係留索30ではなく、第2係留索31及び第3係留索32の長さを変更するように形成してもよい。また、索長調整システムは、第1係留索30、第2係留索31及び第3係留索32の3本の繋留索全ての長さを変更するように形成してもよい。
【0056】
実施形態に係る係留気球では、気球10が受ける気流の風速にかかわらず水平方向から受ける気流に対して一定の傾斜を維持できるので、気流に対する気球10の投影面積は略変化しない。実施形態に係る係留気球では、水平方向から受ける気流に対する気球10の投影面積は略変化しないので、気球10が受ける気流の風速にかかわらず、気球10の姿勢を最適な状態に維持できるので、突風が吹いたときの気球10の姿勢の変動を小さくできる。また、実施形態に係る係留気球では、気球10が受ける気流の風速にかかわらず、気球10の姿勢を最適な状態に維持できるので、気球10が空中にあるときの見た目の不安定感がなくなる。なお、実施形態に係る係留気球では、扁平形状の気球10は、気球10が水平方向から受ける気流の風速が5[m/s]を超えると20[m/s]まで水平方向から略一定の傾斜で風見安定することが確認されている。
【0057】
実施形態に係る係留気球では、索長調整部材50、60、索長調整装置70及び索長調整システム80は、気球10が気球10の長径の方向が水平方向になるように機能する。しかしながら、索長調整部材50、60、索長調整装置70及び索長調整システム80は、気球が気球10の長径の方向が水平方向に対して所定の傾斜を有するようにしてもよい。例えば、索長調整部材50の接続部間の長さLaを、気球10が気流を受けていないときの索長調整部材50を介する第1係留索30の長さが第2係留索31及び第3係留索32の長さより短くするように規定してもよい。索長調整部材50の接続部間の長さLaをこのように規定することにより、スクープ20が配置される風下端に対して気球10の風上端が上方に位置するヘッドアップした状態にすることができる。
【0058】
実施形態に係る係留気球では、気球10は、内部に気体が充填されているときに高さ方向に短軸を有する回転楕円体状の形状を有し且つスクープ20が接合されているが、気球の実施形態は、このような実施形態に限定されない。例えば、気球の形状は、流線形でもよく、ドーナッツ状でもよく、風見安定するように垂直尾翼を有する形状、又は垂直尾翼及び水平尾翼を有する形状としてもよい。スクープ20、垂直尾翼及び水平尾翼のような風見安定するための構造を有する場合、索長調整部材50、60等の索長調整部材は、第1係留索30等の風下側に配置される係留索に並列接続してもよい。風見安定するための構造を有しない場合、長調整部材50、60等の索長調整部材は、第1〜第3係留索30〜32の全てに並列接続してもよい。
【0059】
実施形態に係る係留気球では、第1〜第3係留索30〜32によって気球10が係留されるが、第1〜第3係留索30〜32の代わりに2本、又は4本以上の係留索を配置してもよい。この場合、索長調整部材50、60は、2本、又は4本以上の係留索の何れかに並列接続される。また、主係留索33を有さずに、第1〜第3係留索30〜32によって、気球10がウインチに係留されてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 係留気球
10 気球
20 スクープ
30〜34 係留索
50、60 索長調整部材
70 索長調整装置
80 索長調整システム
【要約】
【課題】気球が気流を受けたときでも気球の傾きが増大するおそれが低い係留気球を提供する。
【解決手段】本発明に係る係留気球1は、気球10と、それぞれの一端が気球10の表面に接続された複数の係留索30〜33と、索長調整部50とを有する。索長調整部50は、気球10が受ける気流の風速に応じて複数の係留索30〜33の何れかの長さを調整する。本発明に係る係留気球10は、気球10の表面に接合されると共に、索長調整部50が長さを調整する係留索に接続される膜状のスクープ20を更に有してもよい。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8