(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ペレット群における、前記第2のエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレット(ペレット2)に対する前記第1のエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレット(ペレット1)の含有重量比率(ペレット1/ペレット2)は、95/5〜50/50である請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形材料。
前記混合物は、第1のエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットと第2のエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットのドライブレンド物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形材料。
前記第1のエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットは、最大長径1〜10mm、最大短径1〜10mmの楕円ないし円形の断面を有し、前記第2のエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットは、最大長径1〜10mm、最大短径1〜10mmの楕円ないし円形の断面を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形材料。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の成形材料は、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(EVOH樹脂)ペレット群からなる成形材料であって、
前記EVOH樹脂ペレット群を構成する各ペレットは、断面が略円形ないし楕円形のペレットであり、
前記ペレット群は、エチレン単位の含有量が20〜34モル%の第1のEVOH樹脂ペレット(ペレット1)及びエチレン単位の含有量が35〜60モル%の第2のEVOH樹脂ペレット(ペレット2)を含むペレット混合物であって、且つ前記第1のEVOH樹脂ペレットと前記第2のEVOH樹脂ペレットのエチレン単位の含有量の差は10〜30モル%である。
【0025】
<エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(EVOH樹脂)ペレット>
(1)EVOH樹脂
本発明の成形材料として用いられるエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(EVOH樹脂)とは、エチレンとビニルエステル系モノマーを共重合させた後にケン化させることにより得られるエチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物で、非水溶性の熱可塑性樹脂である。
通常、上記ビニルエステル系モノマーは、経済的な面から、一般的には酢酸ビニルが用いられる。重合法も公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合、バルク重合のいずれであってもよく、一般的にはメタノールを溶媒とする溶液重合が用いられる。また、連続式、回分式のいずれであってもよい。
共重合体中にエチレンを導入する方法としては通常のエチレン加圧重合を行えばよい。エチレン単位の含有量はエチレンの圧力によって制御することが可能であり、通常は25〜80kg/cm
2の範囲から、目的とするエチレン含有量に応じて選択される。
【0026】
得られたエチレン−ビニルエステル共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。かかるケン化は、上記で得られた共重合体がアルコール又は含水アルコールに溶解された状態で、アルカリ触媒又は酸触媒を用いて行うことができる。
以上のようにして合成されるEVOH樹脂は、エチレン単位とビニルアルコール構造単位を主とし、ケン化されずに残存した若干量のビニルエステル構造単位を含むものである。
【0027】
EVOH樹脂ペレットの材料として用いるEVOH樹脂には、以下に示すコモノマーに由来する構造単位が、さらに含まれていてもよい。前記コモノマーとしては、プロピレン、イソブテン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のα−オレフィン、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、3−ブテン−1、2−ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類やそのエステル化物、アシル化物などのヒドロキシ基含有α−オレフィン誘導体、不飽和カルボン酸又はその塩・部分アルキルエステル・完全アルキルエステル・ニトリル・アミド・無水物、不飽和スルホン酸又はその塩、ビニルシラン化合物、塩化ビニル、スチレン等のコモノマーが挙げられる。
【0028】
さらに、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の「後変性」されたEVOH系樹脂を、EVOH樹脂として用いてもよい。
以上のような変性物の中でも、共重合によって一級水酸基が側鎖に導入されたEVOH樹脂は、延伸処理や真空・圧空成形などの二次成形性が良好になる点で好ましく、中でも1,2−ジオール構造を側鎖に有するEVOH樹脂が好ましい。
【0029】
成形材料に用いるEVOH樹脂ペレット群を構成するEVOH樹脂のエチレン単位の含有量(エチレン単位含有率)は、20〜60モル%である。エチレン単位含有率が低すぎると、得られる成形品、特に延伸フィルムの高湿時のガスバリア性や外観性が低下する傾向にあり、逆に高すぎると延伸フィルムのガスバリア性が低下する傾向にある。
【0030】
成形材料に用いるEVOH樹脂におけるビニルエステル成分のケン化度は、通常90モル%以上、好ましくは93〜99.99モル%、特に好ましくは98〜99.99モル%である。かかるケン化度が低すぎる場合には延伸フィルムのガスバリア性や耐湿性等が低下する傾向にあり好ましくない。
【0031】
成形材料に用いるEVOH樹脂ペレット群を構成するEVOH樹脂のメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)は、通常1〜100g/10分であり、好ましくは2〜50g/10分、特に好ましくは3〜30g/10分である。MFRが大きすぎると、成形品の機械強度が悪化する傾向があり、小さすぎると、成形時の押出加工性が悪化する傾向がある。
【0032】
以上のようなEVOH樹脂を合成するための共重合の条件としては、特に限定しないが、通常、以下のような条件が好ましく用いられる。
かかる共重合に用いられる溶媒としては、通常、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコールやアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられ、工業的には、メタノールが好適に使用される。
溶媒の使用量は、目的とする共重合体の重合度に合わせて、溶媒の連鎖移動定数を考慮して適宜選択すればよく、例えば、溶媒がメタノールの時は、S(溶媒)/M(モノマー)=0.01〜10(重量比)、好ましくは0.05〜7(重量比)程度の範囲から選択される。
【0033】
共重合に当たって使用する重合触媒としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル等の公知のラジカル重合触媒やt−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、α,α’ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート等のパーオキシエステル類、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−iso−プロピルパーオキシジカーボネート]、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2− エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、ジイソブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類などの低温活性ラジカル重合触媒等が挙げられる。
重合触媒の使用量は、触媒の種類により異なり一概には決められないが、重合速度に応じて任意に選択される。例えば、アゾビスイソブチロニトリルや過酸化アセチルを用いる場合、ビニルエステル系モノマーに対して10〜2000ppmが好ましく、特には50〜1000ppmが好ましい。
【0034】
上記触媒とともにヒドロキシラクトン系化合物またはヒドロキシカルボン酸を共存させることが好ましい。ペレットの着色を抑制することができる。該ヒドロキシラクトン系化合物としては、分子内にラクトン環と水酸基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、グルコノデルタラクトン等を挙げることができ、好適にはL−アスコルビン酸、エリソルビン酸が用いられ、また、ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸等を挙げることができ、好適にはクエン酸が用いられる。
【0035】
かかるヒドロキシラクトン系化合物またはヒドロキシカルボン酸の使用量は、回分式及び連続式いずれの場合でも、ビニルエステル系モノマー100重量部に対して0.0001〜0.1重量部、さらには0.0005〜0.05重量部、特には0.001〜0.03重量部が好ましい。かかる使用量が少なすぎると共存の効果が十分に得られないことがあり、逆に多すぎるとビニルエステル系モノマーの重合を阻害する結果となって好ましくない。かかる化合物を重合系に仕込むにあたっては、特に限定はされないが、通常は低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブタノール等)やビニルエステル系モノマーを含む脂肪族エステル(酢酸メチル、酢酸エチル等)や水等の溶媒又はこれらの混合溶媒で希釈されて重合反応系に仕込まれる。
【0036】
共重合反応は、使用する溶媒や圧力により一概にはいえないが、通常は溶媒の沸点以下で行われ、通常は40〜80℃が好ましく、好ましくは55〜80℃で行う。かかる温度が低すぎると重合に長時間を要し、重合時間を短縮しようとすると触媒量が多量に必要となり、逆に高すぎると重合制御が困難となり好ましくない。
【0037】
重合時間は、回分式の場合、4〜10時間(更には6〜9時間)が好ましい。該重合時間が短すぎると重合温度を高くしたり、触媒量を多く設定しなければならず、逆に重合時間が長すぎると生産性の面から好ましくない。連続式の場合、重合缶内での平均滞留時間は2〜8時間(更には2〜6時間)が好ましく、該滞留時間が短すぎると重合温度を高くしたり、触媒量を多く設定しなければならず、逆に重合時間が長すぎると生産性の面で問題があり好ましくない。
【0038】
重合率(ビニルエステル系モノマー)は生産性の面から重合制御が可能な範囲でできるだけ高く設定され、好ましくは20〜90%である。該重合率が低すぎると、生産性や未重合の酢酸ビニルモノマーが多量に存在する等の問題があり、逆に高すぎると、重合制御が困難となり好ましくない。
【0039】
所定時間の重合後、所定の重合率に達した後、必要に応じて重合禁止剤を添加し、未反応のエチレンガスを蒸発除去した後、未反応ビニルエステルを追い出す。
エチレンを蒸発除去したエチレン−ビニルエステル共重合体から未反応のビニルエステルを除去する方法としては、例えば、ラシヒリング(Raschig ring)を充填した塔の上部から前記共重合体溶液を一定速度で連続的に供給し、塔下部よりメタノール等の有機溶剤蒸気を吹き込みながら、塔頂部よりメタノール等の有機溶剤と未反応ビニルエステルの混合蒸気を留出させ、塔底部より未反応ビニルエステルを除去した前記共重合体溶液を取り出す方法などが採用される。
【0040】
未反応ビニルエステルを除去した前記共重合体溶液にアルカリ触媒を添加し、前記共重合体中のビニルエステル成分をケン化する。
かかるケン化にあたっては、上記で得られた共重合体をアルコール又は含水アルコールに溶解した状態で、アルカリ触媒又は酸触媒を用いて行われる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブタノール等が挙げられるが、メタノールが特に好ましく用いられる。アルコール中の共重合体の濃度は系の粘度により適宜選択されるが、通常は10〜60重量%の範囲から選ばれる。ケン化に使用される触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒;硫酸、塩酸、硝酸、メタスルフォン酸、ゼオライト、カチオン交換樹脂等の酸触媒が挙げられる。
【0041】
かかるケン化触媒の使用量については、ケン化方法、目標とするケン化度等により適宜選択されるが、アルカリ触媒を使用する場合は通常、ビニルエステル系モノマー等のモノマーの合計量に対して0.001〜0.1当量、好ましくは0.005〜0.05当量が適当である。かかるケン化方法に関しては目標とするケン化度等に応じて、バッチ鹸化、ベルト上の連続ケン化、塔式の連続ケン化の何れも可能で、ケン化時にアルカリ触媒量を低減できることやケン化反応が高効率で進み易い等の理由により、好ましくは、一定加圧下での塔式ケン化が用いられる。
また、ケン化時の圧力は目的とするEVOH樹脂のエチレン単位含有率により一概に言えないが、2〜7kg/cm
2の範囲から選択され、ケン化温度は80〜150℃、好ましくは100〜130℃であり、ケン化時間は0.5〜3時間から選択される。なお、反応後のEVOH樹脂は必要に応じて中和することが好ましい。
【0042】
ペレット原料となるEVOH樹脂として、上記のようにして合成されたEVOH樹脂に、本発明の効果を阻害しない範囲において、一般にEVOH樹脂に配合する配合剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、可塑剤、光安定剤、界面活性剤、抗菌剤、乾燥剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、架橋剤、硬化剤、発泡剤、結晶核剤、防曇剤、生分解用添加剤、シランカップリング剤、酸素吸収剤などを添加配合した、EVOH樹脂組成物を用いてもよい。
【0043】
(2)ペレットの製造
本発明の成形材料を構成するEVOH樹脂ペレット群を構成する各ペレットは、断面が略円形ないし楕円形であるペレットである。前記断面は、ペレットの特に限定しない断面であり、任意の切断断面が略円形ないし楕円形であること、いわゆる角がないことを意味する。このようなペレットは、通常、溶融押出ししてEVOH樹脂を溶融状態で切断することにより得られる。
EVOH樹脂を溶融押出しし、冷却固化するまでの間にカッターで切断すると、切断により生じた端縁部分が冷却固化する間に垂れ、また表面張力により球状になろうと作用することから、角のない、全体が曲面で構成されたペレットが得られる。具体的には、溶融押出し時の形状(通常、四角柱、円柱)にもよるが、真球状の他、断面が略円ないし略楕円の球状、円盤状、ラクビボール状といった形状を有している。
【0044】
図1に、本発明の成形材料を構成するペレット群の写真を示す。比較のために、
図2にストランドカット方式により得られた円柱状ペレット群の写真を示す。
図2の円柱状ペレット群では、ペレットの傾きの角度により、角が認められるのに対して、
図1では、いずれの方向からみても略円形ないし楕円形であって、角がないことがわかる。
【0045】
ペレットの具体的製造方法について、以下に詳述する。
ペレット製造のために、溶融押出機に投入するEVOH樹脂原料としては、(i)上記EVOH樹脂の合成方法において、ケン化により得られたEVOH樹脂の溶液又はスラリーをそのまま、あるいは当該溶液またはスラリーの含水率を適宜調整した後のEVOH樹脂含水組成物を用いてもよいし、(ii)ストランドカット方式で得られたEVOH樹脂のペレット(乾燥EVOH樹脂ペレット)を溶融し、かかる溶融状態のEVOH樹脂(乾燥EVOH樹脂)を用いてもよい。
【0046】
(2−1)EVOH樹脂含水組成物を原料として用いる場合
押出機に投入するペレット原料としてEVOH樹脂含水組成物を用いる場合、EVOH樹脂100重量部に対し、アルコールを0〜10重量部、水を10〜500重量部含有するEVOH樹脂含水組成物であることが好ましい。
【0047】
アルコール含有量が多いEVOH樹脂含水組成物を用いた場合、後工程でアルコールが揮散することを防止できず、作業環境あるいは周辺環境の保全が困難となる。また、アルコール除去のために、ペレット洗浄水の温度を上げた場合、ペレットが相互に膠着しやすくなり、逆に低温での洗浄は洗浄時間が長くなって生産効率の低下の原因となる。
一方、水の含有量が多いEVOH樹脂含水組成物を用いた場合、溶融状態で切断する際に、切断後のペレットが相互に融着したり、ペレット形状が不均質になる傾向があり、逆に水の含有量が少ない場合には、EVOH樹脂含水組成物の流動性が不足し、ペレットの生産性が低下する傾向にある。
【0048】
ペレット製造用EVOH樹脂含水組成物の含水率を調整する方法としては特に限定しないが、含水率を上げるためには、樹脂に水をスプレーする方法、樹脂を水中に浸漬させる方法、樹脂を水蒸気と接触させる方法などを採用できる。含水率を下げるためには、適宜乾燥すればよく、たとえば流動式熱風乾燥機あるいは静置式熱風乾燥機を用いて乾燥することができる。乾燥斑を低減するという観点から流動式熱風乾燥機を使用することが好ましい。さらに、熱劣化を抑制する観点から、乾燥温度を120℃以下とすることが好ましい。
【0049】
ケン化後のEVOH樹脂溶液は、通常アルコールを多量に含む溶液として得られるが、ケン化後のEVOH樹脂溶液を水蒸気と接触させることにより、アルコールの含有量の少ないEVOH含水組成物を容器から導出し、ペレット製造用原料として用いることができる。
【0050】
EVOH樹脂含水組成物をペレット原料として押出機に投入する場合、押出機内でのEVOH樹脂含水組成物の温度は、70〜170℃が好ましく、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上で170℃以下である。EVOH樹脂含水組成物の温度が70℃未満の場合は、EVOH樹脂が完全に溶融しない恐れがあり、170℃を超える場合は、EVOHが熱劣化を受けやすくなる恐れがある。なお、樹脂組成物の温度は、押出機シリンダーに設置した温度センサーにより押出機先端部吐出口付近で検出した温度をいう。
【0051】
使用する押出機は特に限定しないが、ペレットの取扱い容易性の観点から、ノズルの口径(直径)は、通常1〜10mmであり、好ましくは2〜5mmである。
カッター刃の枚数は、通常2〜8枚であり、好ましくは3〜6枚である。
カッター刃は、通常、押出機のダイスの吐出口に接するように取り付けられることが好ましく、よって、ダイス−カッター間距離は0mmであるが、0.01〜0.2mm程度の距離があってもよい。
カッター刃の回転数は、通常500〜2000rpmであり、好ましくは1000〜1500rpmである。
なお、ペレットのサイズ、形状は、上記のノズルの口径、カッター刃の枚数、カッター刃の回転数等を適宜調節することにより、調整することができる。
【0052】
ダイスから押し出されるEVOH樹脂含水組成物、すなわち溶融状態にあるEVOH樹脂は、冷却固化する前にカットされる(ホットカット方式)。ホットカット方式は、大気中でカット(空中ホットカット方式)、冷却水で満たされたカッター設置容器内に押出され、冷却水中でカット(水中カット方式)のいずれでもよい。水中カット方式は、例えば、アンダーウォーターペレタイジング装置を用いて行うことができる。
【0053】
冷却水は、水に限定しない。水/アルコール混合液;ベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジプロピルエーテル等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル等の有機エステル類なども用いることができる。これらのうち、取扱い性が容易という点から、水、又は水/アルコール混合溶液が用いられる。水/アルコール混合溶液において、水/アルコール(重量比)は通常90/10〜99/1である。なお、上記アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールを用いることができ、工業上、メタノールが好ましく用いられる。
【0054】
水中カット方式における冷却水の温度は、溶融状態で押し出されたEVOH樹脂が瞬時に固化(凝固)しない程度の温度であり、カット前に冷却水と接触する場合には、冷却水の温度は−20〜50℃とすることが好ましく、より好ましくは−5〜30℃である。
【0055】
(2−2)乾燥EVOH樹脂ペレットを原料として用いる場合
本発明の成形材料を構成するEVOH樹脂ペレットの原料として、乾燥EVOH樹脂ペレットを用いる場合、乾燥EVOH樹脂ペレットを押出混練機に投入し、溶融押出しする。
原料として用いる乾燥EVOH樹脂ペレットのサイズ、形状は特に限定しない。
押出混練機内におけるEVOH樹脂の温度は、EVOH樹脂含水組成物の場合よりも高温に設定する必要がある。具体的には、通常150〜300℃であり、好ましくは200〜285℃であり、特に好ましくは240〜270℃である。設定温度が150℃未満の場合は、EVOH樹脂ペレットが完全に溶融しない傾向にある。逆に、EVOH樹脂温度が300℃を超える場合、EVOH樹脂が熱劣化を受けやすくなる傾向がある。樹脂温度は、押出機シリンダーに設置した温度センサーにより押出機先端部吐出口付近で検出した温度をいう。
【0056】
使用する押出機は特に限定しないが、ペレットの取扱いの容易性の観点から、ノズルの口径(直径)は、通常1.0〜5.0mmであり、好ましくは2.0〜3.5mmφである。
カッター刃の枚数は、通常2〜8枚であり、好ましくは3〜6枚である。
カッター刃は、通常、押出機のダイスの吐出口に接するように取り付けられることが好ましく、よって、ダイス−カッター間距離は0mmであるが、0.01〜0.2mm程度の距離があってもよい。
カッター刃の回転数は、通常1000〜2000rpmであり、好ましくは1250〜1750rpmである。
なお、ペレットの形状は、上記のノズルの口径、カッター刃の枚数、カッター刃の回転数等を適宜調節することにより、調整することができる。
【0057】
EVOH樹脂含水組成物を原料として用いる場合と同様に、溶融状態でのカットは、空中ホットカット方式、水中ホットカット方式のいずれを採用してもよい。水中カット方式における冷却水としては、EVOH樹脂含水組成物を原料として用いる場合に列挙したような冷却水を用いることができる。ただし、乾燥EVOH樹脂ペレットを原料とする場合、EVOH樹脂含水組成物を原料として用いる場合よりも凝固しやすいことから、水中カット方式における冷却水の温度は、EVOH樹脂含水組成物を原料とする場合よりも高く、通常0〜90℃であり、好ましくは20〜70℃である。
【0058】
以上のようにして得られたペレットは、水洗することが好ましい。特に、EVOH樹脂含水組成物を原料として得られるペレットでは、通常、ケン化時に使用する触媒の残渣であるアルカリ金属塩を含んでいることが多いので、かかるペレットの場合、最終的に得られる成形品についての着色などの品質低下を防止するために、通常、水洗される。
【0059】
水洗は、10〜60℃の水槽中で実施される。例えば、EVOH樹脂ペレット100重量部に対して200〜1000重量部(好ましくは300〜600重量部)の水で、20〜50℃(好ましくは25〜35℃)で、0.5〜5時間、1〜5回(好ましくは1回)実施することが好ましい。このような水洗により、EVOH樹脂中の炭素数が5以下のアルコール、酢酸、酢酸ナトリウム含有量が調整され、また、オリゴマーや不純物も除去することができる。
【0060】
水洗により、EVOH樹脂ペレット100重量部に対して、通常、炭素数が5以下のアルコールを0.0001〜1重量部、酢酸を0.01〜1重量部、酢酸ナトリウムを0.01〜1重量部に調整することができる。
【0061】
水洗後、必要に応じて、EVOH樹脂ペレットを、添加物の水溶液と接触させる。
添加物としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の有機酸類またはこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)、亜鉛塩などの塩;または、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸類、またはこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)、亜鉛塩などの塩等の熱安定剤が挙げられる。
これらのうち、特に、酢酸、ホウ酸およびその塩を含むホウ素化合物、酢酸塩、リン酸塩を添加することが好ましい。
かかる添加物の水溶液と接触させることにより、前記EVOH樹脂ペレット中に添加物を含有させ、溶融成形時の熱安定性等の各種物性を向上させることができる。
添加物の水溶液と接触させる方法としては、3%以下(好ましくは0.3〜1.5%)の添加物の水溶液を、EVOH樹脂ペレット100重量部に対して200〜1000重量部(好ましくは300〜600重量部)使用して、10〜80℃(好ましくは20〜60℃、特に好ましくは30〜40℃)で、0.5〜5時間、1〜3回(好ましくは1回)実施される。
【0062】
添加物の水溶液と接触させる操作により、EVOH樹脂ペレット100重量部に対して、通常、酢酸を0.001〜1重量部、ホウ素化合物を、ホウ素換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)で0.001〜1重量部、酢酸塩やリン酸塩(リン酸水素塩を含む)を、金属換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)で0.0005〜0.1重量部に調整することが好ましい。
【0063】
以上のようにして、各成分の濃度を調整した含水EVOH樹脂ペレットを乾燥する。乾燥後のEVOH樹脂ペレットの含水率は、通常1重量%以下、特には0.5重量%以下とされる。
かかる乾燥方法として、種々の乾燥方法を採用することが可能であり、例えば、遠心脱水機を用いる方法、空送中に水を切る方法、静置乾燥法、流動乾燥法等が挙げられ、幾つかの乾燥方法を組み合わせた多段階の乾燥工程を採用することも可能である。
【0064】
このようにして得られたEVOH樹脂ペレットに、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲において、一般にEVOH樹脂に配合する配合剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、光安定剤、界面活性剤、抗菌剤、乾燥剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、架橋剤、硬化剤、発泡剤、結晶核剤、防曇剤、生分解用添加剤、シランカップリング剤、酸素吸収剤などを配合してもよい。
【0065】
<ペレット混合物の調製>
本発明の成形材料は、上記のようにして製造されるEVOH樹脂ペレット群において、エチレン単位の含有量が20〜34モル%の第1のEVOH樹脂ペレット(ペレット1)及びエチレン単位の含有量が35〜60モル%の第2のEVOH樹脂ペレット(ペレット2)を含むペレット混合物であって、且つ前記第1のEVOH樹脂ペレットと前記第2のEVOH樹脂ペレットのエチレン単位の含有量の差は10〜30モル%である組合せを含むところに特徴がある。
エチレン単位の含有量(エチレン単位含有率)の差が上記範囲内にある2種類のEVOH樹脂ペレットを組み合わせることで、1種類のEVOH樹脂ペレットでは解決できなかったフィード性の問題を解決することができる。詳細な理由は不明であるが、エチレン単位含有率が高いEVOH樹脂ペレット(ペレット2)がペレット1に先立って溶融することにより、ペレット1間の隙間を埋める潤滑剤のように作用することができ、スクリュとペレット1の摩擦を低減することができたのではないかと考える。
【0066】
エチレン単位含有率が、上記所定範囲にあるEVOH樹脂ペレットは、上述のEVOH樹脂の合成時に、エチレン導入量(エチレン圧力)をコントロールすることにより、合成することができる。
【0067】
(1)第1のEVOH樹脂ペレット(ペレット1)
第1のEVOH樹脂ペレット(ペレット1)のエチレン単位含有率は、20〜34モル%、好ましくは22〜33モル%、特に好ましくは24〜32モル%である。
【0068】
ペレット1は、エチレン単位含有率が上記範囲内にあるEVOH樹脂を用いて、上述のペレット製造方法に基づいて製造することができる。
ペレットのサイズ、形状は、使用する押出機、ダイス形状、カッティング条件(特にダイスからカッターとの距離、カッター回転数など)により調節することができる。
【0069】
ペレット1のサイズは特に限定しないが、断面の最大長径(m)が、通常1.0〜10mm、好ましくは3.0〜6.0mm、より好ましくは3.5〜5.5mm、特に好ましくは4.3〜5.2mmであり、最大短径(n)が、通常1.0〜10mm、好ましくは2.5〜6.0mm、より好ましくは3.0〜5.5mm、特に好ましくは3.5〜5.2mmである。ペレットのサイズが小さくなりすぎると、ペレット群が粉末状態となるため、成形材料としての取扱いが困難になる傾向がある。逆にペレットサイズが大きくなりすぎると、溶融押出成形する際のフィード性が悪くなる傾向がある
また、長径(m)と短径(n)の比(m/n)は、通常1.0〜2.0、好ましくは1.0〜1.8、特に好ましくは1.0〜1.5である。かかる長径と短径の比(長径/短径)が大きくなりすぎると、ペレット形状が針状に近づき、溶融押出成形する際のフィード性が悪くなる傾向がある。
なお、かかる長径(m)と短径(n)の比(m/n)=1である場合は、ペレットが真球であることを意味している。
【0070】
(2)第2のEVOH樹脂ペレット(ペレット2)
第2のEVOH樹脂ペレット(ペレット2)は、エチレン単位含有率が、35〜60モル%、好ましくは36〜55モル%、特に好ましくは38〜51モル%で、EVOH樹脂ペレット1よりエチレン単位含有率が10〜30モル%高い。エチレン単位含有率差が小さくなりすぎると、エチレン単位含有率が高いペレット2の優先的な溶融が達成されず、エチレン単位含有率が異なる2種類のEVOH樹脂ペレットを用いることの効果が得られにくい。
【0071】
ペレット2は、エチレン単位含有率が上記範囲内にあるEVOH樹脂を原料として用いて、上述のペレット製造方法に基づいて製造することができる。
ペレットのサイズ、形状は、使用する押出機、ダイス形状、カッティング条件(特にダイスからカッターとの距離、カッター回転数など)により調節することができる。
【0072】
ペレット2のサイズは特に限定しないが、断面の最大長径(m')が、通常1.0〜10mm、好ましくは3.0〜6.0mm、より好ましくは3.5〜5.5mm、特に好ましくは4.3〜5.2mmであり、最大短径(n')が、通常1.0〜10mm、好ましくは2.5〜6.0mm、より好ましくは3.0〜5.5mm、特に好ましくは3.5〜5.2mmである。ペレットのサイズが小さくなりすぎると、ペレット群が粉末状態に近づき、取扱い性が低下する。また、ペレットサイズが大きくなりすぎると、溶融押出成形する際のフィード性が悪くなる傾向がある。
EVOH樹脂ペレット2における長径(m')と短径(n')の比(m'/n')は、通常1.0〜2.0、好ましくは1.0〜1.8、特に好ましくは1.0〜1.5である。かかる長径と短径の比(長径/短径)が大きくなりすぎると、ペレット形状が針状に近づき、溶融押出成形する際のフィード性が悪くなる傾向がある。
【0073】
EVOH樹脂ペレット1とEVOH樹脂ペレット2のサイズは、上記範囲内であればよく、平均サイズ、形状が互いに等しくてもよいし、異なっていてもよい。好ましくは、ペレット1、ペレット2ともに、真球に近い球状であり、断面楕円の円盤状の場合には、先に溶融するペレット2の平均サイズが大きいことが好ましい。
【0074】
(3)ペレット1とペレット2の混合
本発明の成形材料は、以上のようなEVOH樹脂ペレット1とEVOH樹脂ペレット2の混合物を含んでいる。
EVOH樹脂ペレット1とEVOH樹脂ペレット2の配合比率(ペレット1/ペレット2)(重量比)は、通常95/5〜50/50であり、好ましくは90/10〜55/45、特に好ましくは85/15〜60/40である。ガスバリア性に優れるエチレン単位含有率が低い方のEVOH樹脂ペレット1では、特にフィード性の改善が求められていたが、エチレン含有率が上記範囲内にあるEVOH樹脂ペレット2との混合物とすることにより、フィード性の問題を解決することが可能となる。
【0075】
すなわち、本発明によれば、EVOH樹脂ペレットとして、エチレン単位含有率が20〜34モル%で、断面が略円形ないし楕円形である第1のEVOH樹脂ペレット(ペレット1)と、エチレン単位含有率が35〜60モル%で、断面が略円形ないし円形である第2のEVOH樹脂ペレット(ペレット2)を含むペレット混合物であって、且つ前記第1のEVOH樹脂ペレットと前記第2のEVOH樹脂ペレットのエチレン単位含有率の差が10〜30モル%であるペレット混合物を用いることで、EVOH樹脂ペレットを成形材料として用いて溶融押出成形する際のスクリュによるフィード性を改良することができる。
【0076】
EVOH樹脂ペレット1とEVOH樹脂ペレット2を混合する方法としては、例えば、機械的混合法、具体的には、バンバリーミキサー等でドライブレンドする方法が好ましく用いられる。
【0077】
本発明の成形材料は、上記EVOH樹脂ペレット1と上記EVOH樹脂ペレット2との混合物の他、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、さらにエチレン含有率が異なるEVOH樹脂ペレット(第3のEVOH樹脂ペレット)を含有してもよい。この場合、第3のEVOH樹脂ペレットは、溶融状態でカットされた、いわゆる角のないペレットであることが好ましい。本発明の成形材料を構成するEVOH樹脂ペレット群における第3のEVOH樹脂ペレットの含有率は、40重量%以下であることが好ましく、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。
【0078】
従って、EVOH樹脂ペレット総量に対するEVOH樹脂1の含有率は55〜90重量%とすることが好ましく、より好ましくは60〜85重量%である。
【0079】
<成形材料の用途>
以上のような構成を有する本発明の成形材料は、フィード性に優れるので、EVOH樹脂成形品を製造するための溶融成形材料として好ましく用いられる。溶融状態でカットすることにより得られる、所謂角のないペレットを用いた場合であっても、1種類のEVOH樹脂ペレット群ではフィード性を満足することができず、エチレン単位含有率が異なるEVOH樹脂ペレットの混合物であっても、ストランドカット方式で作製されるEVOH樹脂ペレット同士の混合物ではフィード性を満足できない。さらに、溶融状態でカットすることにより得られる、所謂角のない、エチレン単位含有率が異なる2種類のペレット混合物を用いた場合であっても、エチレン単位含有率差が小さい場合には、フィード性の改善が十分でない。この点、エチレン単位含有率の差が10〜30モル%である、エチレン単位含有率が20〜34モル%の第1のEVOH樹脂ペレット(ペレット1)とエチレン単位含有率が35〜60モル%の第2のEVOH樹脂ペレット(ペレット2)を含むペレット混合物であって、且つ所謂角のないペレットの混合物である場合に、優れたフィード性を確保することができる。理由は明らかではないが、角がないペレット群は、溶融可塑化の際のスクリュに対する摩擦が低減されること、さらにエチレン単位含有率が高いEVOH樹脂ペレットが優先して溶融することにより、EVOH樹脂ペレットの潤滑剤として機能することができ、溶融可塑化の早期の段階で、優れた流動性を達成することができたのではないかと推測する。
【0080】
本発明の成形材料は、溶融成形、特にフィルム、シート、繊維などの溶融押出し成形用材料として好適に用いることができる。かかる溶融成形方法としては、押出成形法(T−ダイ押出、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、異型押出等)、射出成形法が主として採用される。
【0081】
使用する成形機の条件、種類は特に限定しないが、異なる種類のペレットが溶融混練押出しの間に、均一に混ざる必要がある。かかる観点から、溶融可塑化部は、スクリュ式、プランジャ式のいずれを用いることもできるが、好ましくはスクリュ式である。押し出し機は縦型、横型のいずれでもよく、シングルスクリュタイプ、ツインスクリュタイプのいずでもよい。また、スクリュのL/D(スクリュ長さ/スクリュ径)、圧縮比(C)も特に限定しないが、通常L/Dは20〜35、好ましくは25〜30、通常Cは1.5〜8、好ましくは2〜5の範囲内から選択される。
溶融成形温度は、通常150〜300℃の範囲から一般に選択される。
【0082】
成形によりフィルム、シートは、そのまま各種用途に用いることもできるが、通常はさらに強度を上げたり他の機能を付与したりするために他の基材と積層して積層体として用いられる。本発明の成形材料を用いて得られたEVOH樹脂フィルム、シート又はその積層体は、優れたガスバリア性に基づいて、食品包装材料、工業薬品包装材料、農薬包装材料などの包装材料として用いられる。また、EVOH樹脂フィルム、シート又はその積層体は、さらにカップやボトルなどに二次成形してもよい。
【0083】
積層体に用いられる他の基材としては熱可塑性樹脂が有用である。熱可塑性樹脂としては例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン類、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のポリオレフィン類、これらポリオレフィン類を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したグラフト化ポリオレフィン類、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂(共重合ポリアミドも含む)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等のハロゲン化ポリオレフィン、芳香族または脂肪族ポリケトン、更にこれらを還元して得られるポリアルコール類等が挙げられるが、積層体の物性(特に強度)等の実用性の点から、ポリオレフィン系樹脂やポリアミド系樹脂が好ましく、特にはポリエチレン、ポリプロピレンが好ましく用いられる。
【0084】
これら基材樹脂には、本発明の趣旨を阻害しない範囲において、従来知られているような酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、核材、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、ワックス等を含んでいても良い。
【0085】
本発明の樹脂組成物を他の基材と積層するときの積層方法は公知の方法にて行うことができる。例えば、本発明の樹脂組成物のフィルム、シート等に他の基材を溶融押出ラミネートする方法、逆に他の基材に該樹脂を溶融押出ラミネートする方法、該樹脂と他の基材とを共押出する方法、該樹脂(層)と他の基材(層)とを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法、他の基材上に該樹脂の溶液を塗工してから溶媒を除去する方法等が挙げられる。
これらの中でも、コストや環境の観点から考慮して共押出しする方法が好ましい。本発明の成形材料を用いる場合であっても、他の熱可塑性樹脂との押出し成形に適用することができる。本発明の成形材料はフィルム成形性に優れているので、すなわち溶融押出しされるフィルム幅の変動等が抑制されているので、他の熱可塑性樹脂との溶融共押出しに適用した多層構造体の製造に好適に利用することができる。
【0086】
積層体の層構成は、本発明の成形材料に由来するEVOH樹脂層をa(a1、a2、…)、熱可塑性樹脂層をb(b1、b2、…)とするとき、a/bの二層構造のみならず、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2、b2/b1/a/b1/a/b1/b2等任意の組み合わせが可能である。また、該積層体を製造する過程で発生する端部や不良品当等を再溶融成形して得られる、該EVOH樹脂と熱可塑性樹脂の混合物を含むリサイクル層をRとするとき、b/R/a、b/R/a/b、b/R/a/R/b、b/a/R/a/b、b/R/a/R/a/R/b等とすることも可能である。
【0087】
上記の如き積層体は、更なる物性改善のために、加熱延伸処理が施すことが好ましい。加熱延伸処理等については、公知の延伸方法を採用することができる。
延伸方法としては、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法等の他、深絞成形、真空成形等のうち延伸倍率の高いものも採用できる。二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。延伸温度は80〜170℃、好ましくは100〜160℃程度の範囲から選ばれる。
【0088】
延伸処理後、熱固定を行うことが好ましい。熱固定は周知の手段で実施可能であり、上記延伸フィルムを、緊張状態を保ちながら80〜170℃、好ましくは100〜160℃で2〜600秒間程度熱処理を行う。
【0089】
積層フィルムを、生肉、加工肉、チーズ等を熱収縮包装する用途に用いる場合は、延伸後の熱固定は行わず製品フィルムとし、上記生肉、加工肉、チーズ等を該フィルムに収納して、50〜130℃好ましくは70〜120℃で2〜300秒程度の熱処理を行って、該フィルムを熱収縮させて密着包装する。
【0090】
積層体の形状としては特に限定されず、フィルム、シート、テープ、ボトル、パイプ、フィラメント、異型断面押出物等が例示される。積層体は必要に応じ、熱処理、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液又は溶融コート処理、製袋加工、深絞り加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行うことができる。
【実施例】
【0091】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
尚、例中「部」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0092】
<EVOH樹脂ペレットの製造>
(1)EVOH樹脂ペレット(UP1)
ストランドカット方式で製造された、含水率0.1%の円柱状のEVOH樹脂ペレット(エチレン単位含有率:29モル%、ケン化度:99.6モル%、MFR:4.0g/10分(210℃、荷重2160g))を原料として、二軸押出機に投入し、以下の条件で溶融混練し、該溶融状態のEVOH樹脂溶融液を冷却水中に押出す際に、吐出口に取り付けられたカッター(16枚刃)にてカッティングした(水中カット方式)。乾燥により、
図3,
図4にし示す断面を有するラグビーボール状のEVOH樹脂ペレットを得た。ラグビーボール状ペレットの長軸を含むように切断して得られる断面楕円(
図4参照)のサイズは、最大長径4.6mm、最大短径3.5mmであった。
【0093】
・スクリュ内径:70mm
・L/D:39
・スクリュ回転数:300rpm
・ダイス部温度:260℃
・シリンダ温度(最も高い部分):260℃
・ノズル口径:3.2mmφ
・吐出量:350kg/h
・カッター刃の回転数:1500rpm
・冷却水温度:60℃
【0094】
(2)EVOH樹脂ペレット(UP2)
ストランドカット方式で製造された、含水率0.2%の円柱状のEVOH樹脂ペレット(エチレン単位含有率:44モル%、ケン化度:99.7モル%、MFR:3.6g/10分(210℃、荷重2160g))を原料として、二軸押出機に投入し、以下の条件で溶融混練し、該溶融状態のEVOH樹脂溶融液を冷却水中に押出す際に、吐出口に取り付けられたカッター(3枚刃)にてカッティングした(水中カット方式)。乾燥により、
図5,
図6に示す断面を有する略球状のEVOH樹脂ペレットを得た。互いに直交する方向に切断して得られる断面は、いずれもほぼ円形であり、最大長径4.9mm、最大短径4.8mmであった。
【0095】
・スクリュ内径:70mm
・L/D:37
・スクリュ回転数:100rpm
・ダイス部温度:250℃
・シリンダ温度(最も高い部分):220℃
・ノズル口径:2.4mmφ
・吐出量:100kg/h
・カッター刃の回転数:1500rpm
・冷却水温度:50℃
【0096】
(3)EVOH樹脂ペレット(UP3)の製造
EVOH樹脂の水/メタノール混合溶液(水/メタノール=60/40(重量比)、EVOH樹脂濃度45%)を原料として用いた。吐出口から冷却水中に押出す際に、吐出口に取り付けられたカッター(3枚刃)にてカッティングした(水中カット方式)。乾燥により、断面楕円の最大長径3.9mm、最大短径2.9mmの略ラグビーボール状のEVOH樹脂ペレットを得た。
・ノズル口径:3.3mmφ
・吐出量:15kg/h
・カッター刃の回転数:700rpm
・冷却水温度:3℃
【0097】
(4)EVOH樹脂ペレット(UP4)の製造
原料として、ストランドカット方式で製造された、含水率0.2%の円柱状のEVOH樹脂ペレット(エチレン単位含有率:38モル%、ケン化度:99.7モル%、MFR:3.8g/10分(210℃、荷重2160g))を用いた以外は、EVOH樹脂ペレット(UP2)と同様に製造し、断面が略球状であるEVOH樹脂ペレットを得た。互いに直交する方向に切断して得られる断面は、EVOH樹脂ペレット(UP2)と同様に、いずれもほぼ円形であり、最大長径4.9mm、最大短径4.8mmであった。
【0098】
(5)EVOH樹脂ペレット(SP1)の製造
EVOH樹脂(エチレン単位含有率29モル%、ケン化度99.6モル%、MFR3.4g/10分(210℃、荷重2160g))の水/メタノール混合溶液(水/メタノール=40/60混合重量比、EVOH樹脂濃度45%)を、5℃に維持された凝固浴(水/メタノール=95/5混合重量比)に、内径0.4cm、長さ6.0cmの円筒形のノズルよりストランド状に押出した。冷却凝固により得られた丸棒状ストランドをカッターを用いてカッティングした(ストランドカット方式)後、乾燥し、含水率0.2%で、底面の直径2.5mm、長さ2.6mmの円柱状のEVOH樹脂ペレットを得た。
図7は円柱状ペレットの底面に平行に切断した断面の写真であり、ほぼ円形であった。
図8は、円柱状ペレットの高さ方向に沿って切断した断面であり、四角形であった。
【0099】
(6)EVOH樹脂ペレット(SP2)の製造
EVOH樹脂(エチレン単位含有率44モル%、ケン化度99.7モル%、MFR3.6g/10分(210℃、荷重2160g))の水/メタノール混合溶液(水/メタノール=20/80混合重量比、EVOH樹脂濃度45%)を、5℃に維持された凝固浴(水/メタノール=95/5混合重量比)に、内径0.4cm、長さ6.0cmの円筒形のノズルよりストランド状に押し出した。冷却凝固により得られた丸棒状ストランドを、カッターを用いてカッティングした(ストランドカット方式)後、乾燥し、含水率0.2%で、底面の直径2.5mm、長さ2.6mmの円柱状のEVOH樹脂ペレットを得た。
【0100】
<成形材料No.1〜8の調製及びフィード性の評価>
上記で得られた球状のEVOH樹脂ペレットを、表1に示すような割合(重量比)でドライブレンドして、成形材料を調製した。なお、成形材料No.3〜6は、表1に示すEVOH樹脂ペレット単独を成形材料として用いた。
【0101】
上記で調製した成形材料を、下記条件で製膜し、厚み50μmのEVOH樹脂フィルムを得た。押出機から50cm離れた位置に立ち、製膜時に押出機より聞こえる異音の大きさに基づいて、以下の3段階でフィード性を評価した。
(製膜条件)
・スクリュ内径 19mm
・L/D 25
・スクリュ圧縮比 2
・Tダイ コートハンガータイプ
・ダイ巾 150mm
・押出温度(℃) C1/C2/C3/C4/C5(アダプタ)/C6(ダイ)=190/21
0/210/210/210/210
【0102】
(フィード性)
○:異音はほとんど聞こえない
△:問題となるほどではないが、異音が聞こえる
×:激しい異音が聞こえる
【0103】
【表1】
【0104】
表1からわかるように、ストランドカット方式のEVOH樹脂ペレットでは、EVOH樹脂のエチレン単位含有率に関係なく、フィード性を満足することができない(成形材料No.4,6)。ペレットの製造方法として、水中カット方式を採用した場合であっても、エチレン単位含有率の多少にかかわらず、フィード性を満足することができなかった(成形材料No.3,5)。
エチレン単位含有率が異なる2種類のEVOH樹脂ペレットを用いた場合、ストランドカット方式で製造したEVOH樹脂ペレットの混合物ではフィード性を満足することができなかった(成形材料No.2)が、水中カット方式のEVOH樹脂ペレットの混合物ではフィード性を満足することができた(成形材料No.1)。ただし、エチレン単位含有率差が10モル%未満の組合せでは、フィード性の改善は十分ではなかった(成形材料No.7,8)。