特許第5769877号(P5769877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5769877ダイヤモンドセンサ、検出器及び量子装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769877
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】ダイヤモンドセンサ、検出器及び量子装置
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/04 20060101AFI20150806BHJP
   C23C 16/27 20060101ALI20150806BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   C30B29/04 A
   C23C16/27
   G01N24/00 Z
【請求項の数】16
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-509687(P2014-509687)
(86)(22)【出願日】2012年5月4日
(65)【公表番号】特表2014-522364(P2014-522364A)
(43)【公表日】2014年9月4日
(86)【国際出願番号】EP2012058231
(87)【国際公開番号】WO2012152685
(87)【国際公開日】20121115
【審査請求日】2013年12月25日
(31)【優先権主張番号】1107730.2
(32)【優先日】2011年5月10日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】61/484,550
(32)【優先日】2011年5月10日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503458043
【氏名又は名称】エレメント シックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】トゥウィッチェン ダニエル ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】マーカム マシュー リー
【審査官】 今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−526682(JP,A)
【文献】 特表2010−520146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/04
C23C 16/27
G01N 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶合成CVDダイヤモンド材料であって、
成長セクタと、
前記成長セクタ内に位置する1つ又は2つ以上のタイプの複数個の点欠陥とを有し、
少なくとも1つのタイプの点欠陥は、前記成長セクタ内で点欠陥の結晶学的配向が選択的に整列しており、
前記少なくとも1つのタイプの点欠陥のうちの少なくとも60%は、点欠陥の結晶学的配向の選択的整列状態を示し、
前記少なくとも1つのタイプの点欠陥は、負に帯電した窒素空孔欠陥(NV-)である、単結晶合成CVDダイヤモンド材料。
【請求項2】
前記少なくとも1つのタイプの点欠陥のうちの少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%は、前記選択的整列状態を示す、請求項1記載の単結晶合成CVDダイヤモンド材料。
【請求項3】
前記選択的整列は、{110},{111}又は{113}結晶面、好ましくは{110}結晶面に対して面外である、請求項1又は2記載の単結晶合成CVDダイヤモンド材料。
【請求項4】
前記選択的整列は、{110}結晶面に対して面外の<111>方向である、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の単結晶合成CVDダイヤモンド材料。
【請求項5】
前記選択的に整列した点欠陥は、前記単結晶合成CVDダイヤモンド材料の{110},{111}又は{113}成長セクタ、好ましくは{110}成長セクタ内に位置する、請求項1〜4のうちいずれか一に記載の単結晶合成CVDダイヤモンド材料。
【請求項6】
前記選択的に整列した点欠陥は、前記単結晶合成CVDダイヤモンド材料の外面から100μmの範囲内に位置し、前記外面は、{110},{111}又は{113}表面、好ましくは{110}表面である、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の単結晶合成CVDダイヤモンド材料。
【請求項7】
前記選択的に整列した点欠陥は、前記単結晶合成CVDダイヤモンド材料の{100}成長セクタ内に位置する、請求項1又は2記載の単結晶合成CVDダイヤモンド材料。
【請求項8】
前記選択的整列は、{100}結晶面に対して面外である、請求項1、2又は7記載の単結晶合成CVDダイヤモンド材料。
【請求項9】
前記選択的に整列した点欠陥は、前記単結晶合成CVDダイヤモンド材料の外面から100μmの範囲内に位置し、前記外面は、{100}表面である、請求項1、2、7又は8記載の単結晶合成CVDダイヤモンド材料。
【請求項10】
前記単結晶合成CVDダイヤモンド材料は、20ppb以下、10ppb以下、5ppb以下、1ppb以下若しくは0.5ppb以下の中性単一置換窒素濃度、0.15ppb以下、0.1ppb以下、0.05ppb以下、0.001ppb以下、0.0001ppb以下又は0.00005ppb以下のNV-又は0.1ppm以上、0.5ppm以上、1.0ppm以上、2.0ppm以上、3ppm以上、4ppm以上若しくは5ppm以上のNV-濃度及び0.9%以下、0.7%以下、0.4%以下、0.1%以下、0.01%以下若しくは0.001%以下の全濃度の13Cのうちの1つ又は2つ以上を有する、請求項1〜9のうちいずれか一に記載の単結晶合成CVDダイヤモンド材料。
【請求項11】
前記少なくとも1つのタイプの点欠陥は、0.05ms以上、0.1ms以上、0.3ms以上、0.6ms以上、1ms以上、5ms以上又は15ms以上のデコヒーレンス時間T2を有し、対応のT2*値は、800μs以下、600μs以下、400μs以下、200μs以下、150μs以下、100μs以下、75μs以下、50μs以下、20μs以下又は1μs以下である、請求項1〜10のうちいずれか一に記載の単結晶合成CVDダイヤモンド材料。
【請求項12】
前記単結晶合成CVDダイヤモンド材料は、0.1mm以上、0.5mm以上、1mm以上、2mm以上又は3mm以上の少なくとも1つの寸法を有する、請求項1〜11のうちいずれか一に記載の単結晶合成CVDダイヤモンド材料。
【請求項13】
前記単結晶合成CVDダイヤモンド材料は、0.1μm以上、1μm以上、10μm以上、100μm以上、200μm以上又は500μm以上の厚さを有する層を形成している、請求項1〜12のうちいずれか一に記載の単結晶合成CVDダイヤモンド材料。
【請求項14】
請求項1〜13のうちいずれか一に記載の単結晶合成CVDダイヤモンド材料から成る装置コンポーネント。
【請求項15】
光取り出し構造体が光の取り出しを増大させるために前記単結晶合成CVDダイヤモンド材料の表面のところに形成され、前記少なくとも1つのタイプの点欠陥は、前記光取り出し構造体に対して選択的に整列している、請求項14記載の装置コンポーネント。
【請求項16】
装置であって、
請求項14又は15記載の装置コンポーネントと、
前記単結晶合成CVDダイヤモンド材料中の前記複数個の点欠陥のうちの1つ又は2つ以上を光学的にポンピングする光源とを含み、前記少なくとも1つのタイプの点欠陥は、前記光源に対して選択的に整列している、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知、検出及び量子処理用途に用いられる合成化学蒸着(CVD)ダイヤモンド材料に関する。
【背景技術】
【0002】
合成ダイヤモンド材料中の点欠陥、特に量子スピン欠陥及び/又は光学的活性欠陥は、種々の検知、検出及び量子処理用途に用いられることが提案されており、かかる用途としては、磁力計、スピン共鳴装置、例えば核磁気共鳴(NMR)及び電子スピン共鳴(ESR)装置、磁気共鳴イメージング(MRI)用のスピン共鳴画像化装置及び例えば量子コンピューティング用の量子情報処理装置が挙げられる。
【0003】
多くの点欠陥は、合成ダイヤモンド材料において研究されており、かかる点欠陥としては、珪素含有欠陥、例えば珪素空孔欠陥(Si‐V)、珪素複空格子点欠陥(Si‐V2)、珪素空孔水素欠陥(Si‐V:H)、珪素複空格子点水素欠陥(Si‐V2:H)、ニッケル含有欠陥、クロム含有欠陥及び窒素含有欠陥、例えば窒素空孔欠陥(N‐V)、二窒素空孔欠陥(N‐V‐N)及び窒素空孔水素欠陥(N‐V‐H)が挙げられる。これら欠陥は、典型的には、中性電荷状態又は負電荷状態で見受けられる。注目されるように、これら点欠陥は、2つ以上の結晶格子点にわたって延びる。本明細書で用いられる点欠陥という用語は、かかる欠陥を含むが、これらよりも大きなクラスタ欠陥、例えば10個又はそれ以上の格子欠陥にわたって延びるクラスタ欠陥又は拡張欠陥、例えば多くの格子点にわたって延びる場合のある転位を含まないようになっている。
【0004】
合成ダイヤモンド材料中の窒素空孔欠陥(NV-)は、有用な量子スピン欠陥として多大な興味を引き付けている。というのは、かかる欠陥は、幾つかの望ましい特徴を有するからであり、かかる特徴としては、
(i)コヒーレンス時間が極めて長いことによりそのスピン状態を高い中実度でコヒーレント的に操作できる(これは、横緩和時間T2を用いて定量化できると共に比較できる)。
(ii)その電子構造により、欠陥を光学的に電子基底状態に光学的にポンピングすることができ、それによりかかる欠陥を非極低温であっても特定の電子スピン状態に置くことができる。これは、小型化が望ましい或る特定の用途について高価な且つ嵩張った極低温冷却装置の必要性をなくすことができる。さらに、欠陥は、全てが同一のスピン状態を有するフォトンの源として機能することができる。
(iii)その電子構造は、フォトンを介して欠陥の電子スピン状態を読み取ることができる発光性及び非発光性電子スピン状態を有する。これは、検知用途、例えば磁力計、スピン共鳴分光及びイメージングに用いられる合成ダイヤモンド材料から情報を読み取る上で好都合である。さらに、これは、長距離量子通信及びスケール変更可能な量子コンピュータ計算のための量子ビット又はキュービット(qubit)としてNV-欠陥を用いる方向に向かう重要な要素である。かかる結果として、NV-欠陥は、ソリッドステート量子情報処理(QIP)に関する競合的候補になっている。
【0005】
ダイヤモンド中のNV-欠陥は、図1aに示されているように炭素空孔に隣接して位置する置換窒素原子から成る。その2つの不対電子は、電子基底状態のスピントリプレット(3A)を形成し、縮退度ms=±1副準位は、2.87GHzだけms=0準位から隔てられている。NV-欠陥の電子構造がスタイナート等(Steinert et al.),「ハイ・センシティビティ・マグネチック・イメージング・ユージング・アン・アレイ・オブ・スピンズ・イン・ダイヤモンド(High sensitivity magnetic imaging using an array of spins in diamond)」,043705,レビュー・オブ・サイエンティフィック・インスツルメンツ(Review of Scientific Instruments)81,2010年(以下、「スタイナート等」という場合がある)に記載された図1bに示されている。ms=0副準位は、光学的にポンピングされたときに高い蛍光レートを示す。これとは対照的に、欠陥がms=±1準位で励起されると、この欠陥は、非発光一重項状態(1A)にクロスオーバし、その後ms=0に緩和する高い確率を示す。その結果、スピン状態を光学的に読み取ることができ、ms=0状態は、「明るい(bright)」状態であり、ms=±1状態は、「暗い」(dark)」状態である。外部磁界(磁場という場合がある)を加えると、スピン副準位ms=±1の縮退がゼーマン分裂により壊される。これにより、共鳴線が加えられる磁界の大きさ及びその方向に応じて分かれる。この依存性は、ベクトル磁気測定法に利用できる。と言うのは、共鳴スピン遷移は、マイクロ波(MW)周波数をスイープし、その結果、スタイナート等の図2aに示されているように光学検出磁気共鳴(ODMR)スペクトルの固有のディップ(dip )を生じさせることにより調査できる。
【0006】
スタイナート等は、イオン打ち込みを採用して負に帯電したNV-センタの均質層を超高純度[100]型IIaダイヤモンド中に作った。アンサンブルNV-センサは、複数の検出スピンからの増幅蛍光信号に起因して高い磁気感度を提供することが分かった。別のオプションは、ベクトル再構成である。と言うのは、ダイヤモンド格子は、スタイナート等の図2bに示されているように別々の四面体NV-方位を課すからである。これら軸の各々に沿う磁界投影像を単一複合スペクトルとして測定することができ、数値アルゴリズムを用いると、全磁界ベクトルを再構成することができる。外部磁界の大きさ(B)及び包囲(θB,ψB)は、非制約最小二乗アルゴリズムに基づいてODMRスペクトルを分析することによって計算できる。
【0007】
量子用途に適した材料を製造する上での大きな問題の1つは、量子ビットがデコヒーレンスするのを阻止することであり又は少なくとも、システムがデコヒーレンスするのに要する時間を長くすることである(即ち、「デコヒーレンス時間を長くする」)。長いT2時間は、例えば量子コンピュータ計算のような用途において望ましい。というのは、これにより、アレイ状に配置された量子ゲートの動作の時間を長くすることができ、かくして、複雑な量子コンピュータ計算を実施することができるからである。長いT2時間も又、検知用途における電気及び磁気環境中の変化に対する感度を向上させるのに望ましい。
【0008】
国際公開第2010/010344号パンフレットは、高い化学的純度、即ち、低い窒素含有量を有する単結晶ダイヤモンド材料を用いると、量子スピン欠陥を有するソリッドステートシステムを形成することができるということを開示しており、この場合、ダイヤモンド材料の表面は、結晶欠陥の存在を最小限に抑えるために処理される。かかる材料が量子スピン欠陥のホストとして用いられる場合、室温において長いT2時間が得られ、装置の読み取り/書き込みを行うために用いられる光学遷移の温度及び頻度は安定している。
【0009】
国際公開第2010/010352号パンフレットは、化学蒸着(CVD)法を用いてダイヤモンド材料を前処理する条件を注意深く制御することによって、極めて高い化学的純度を極めて高い同位体純度と合わせ持つダイヤモンド材料を提供することが可能であることを開示している。CVD法を用いる材料の化学的純度と同位体純度の両方を制御することによって、量子スピン欠陥のホストとして用いるのに特に適した合成ダイヤモンド材料を得ることが可能である。かかる材料が量子スピン欠陥のホストとして用いられる場合、室温で長いT2時間が得られ、装置の読み取り/書き込みに用いられる光学遷移の周波数は、安定性がある。低い窒素濃度及び低い濃度の13Cを有する合成ダイヤモンド材料の層が開示されている。合成ダイヤモンド材料の層は、極めて低い不純物レベルを有すると共に極めて低い関連点欠陥を有する。加うるに、合成ダイヤモンド材料の層は、低い転位密度、低い歪並びにかかる合成ダイヤモンド材料の光吸収が本質的に、完全なダイヤモンド格子の光吸収である成長温度と関連した熱力学的値に十分に近い空孔及び自己格子間濃度を有する。
【0010】
上述のことに照らして、国際公開第2010/010344号パンフレット及び同第2010/010352号パンフレットが高品質「量子等級」単結晶ダイヤモンド材料を製造する方法を開示していることは明らかである。「量子等級」ダイヤモンドという用語は、本明細書では、ダイヤモンド材料の量子スピン特性を利用する用途に用いるのに適したダイヤモンド材料について用いられている。具体的に説明すると、量子等級ダイヤモンド材料の高い純度により、当業者に知られている光学技術を用いて単一欠陥中心を隔離することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2010/010344号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2010/010352号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】スタイナート等(Steinert et al.),「ハイ・センシティビティ・マグネチック・イメージング・ユージング・アン・アレイ・オブ・スピンズ・イン・ダイヤモンド(High sensitivity magnetic imaging using an array of spins in diamond)」,043705,レビュー・オブ・サイエンティフィック・インスツルメンツ(Review of Scientific Instruments)81,2010年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
量子材料に関する1つの問題は、かかる材料の欠陥からの単一格子放出が非常に弱い場合があるということである。例えば、ダイヤモンドのNV-欠陥は、低い温度であっても0.05オーダのデバイ‐ウォーラー因子と関連した広域スペクトル放出を示す。この場合、ゼロフォノンライン(Zero-Phonon Line:ZPL)の単一格子の放出は、極めて弱く、典型的には、毎秒数千フォトンのオーダのものである。かかる計数率は、妥当なデータ収集時間内でのスピン状態と光学遷移との間の結合に基づいて新型QIPプロトコルの実現にとっては不十分な恐れがある。
【0014】
発光量が弱いという問題に加えて、高い屈折率のダイヤモンド材料は、全反射に起因して、小さい立体角内において収集できるフォトンが極めて少ないということを意味していることが明らかである。したがって、磁気測定及び量子情報処理を含む用途についてダイヤモンド材料中の量子スピン欠陥からの光収集を増加させる必要がある。この点に関し、国際公開第2010/010344号パンフレットと同第2010/010352号パンフレットの両方は、本明細書において説明する量子等級ダイヤモンド材料が量子欠陥中心から出力された光を収集して収束するために巨視的曲率を有する表面、例えば約10μm〜約100μmの曲率半径を備えたレンズを有するのが良いことを開示している。
【0015】
上述のことにもかかわらず、量子装置用途用のダイヤモンド材料中の量子スピン欠陥からの発光強度及び/又は光収集を一段と増大させる必要がある。さらに、検知用途に関し、量子ダイヤモンド材料中の量子スピン欠陥の感度を増強させる必要がある。さらに又、或る特定の用途、例えば量子情報処理に関し、2つ又は3つ以上の量子スピン欠陥相互間の結合の強度を向上させる必要がある。さらに、或る特定の用途に関し、量子ダイヤモンド材料中の量子スピン欠陥の検知及び発光機能の方向性を向上させる必要がある。かかる技術進歩により、ダイヤモンド量子装置の性能が向上すると共に/或いはダイヤモンド量子材料と関連して検知、検出及び/又は処理機能を実施するのに必要な関連装置コンポーネントを単純化すると共に小型化するのが助長させる。かかる問題をNV-欠陥と関連して上述したが、同様な問題は、合成ダイヤモンド材料内の他の点欠陥についても明らかであることは理解されよう。
【0016】
本発明の或る特定の実施形態の目的は、上述の問題のうちの1つ又は2つ以上を少なくとも部分的に解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
合成CVDダイヤモンド材料中の欠陥を含む2つの珪素の選択的整列又はアライメント(preferential alignment)が最近報告された(これについては、「イー・ピー・アール・オブ・ア・デフェクト・イン・シー・ブイ・ディ・ダイヤモンド・インボルビング・ボース・シリコン・アンド・ハイドロジェン・ザット・ショウズ・プリファレンシャル・アライメント(EPR of a defect in CVD diamond involving both silicon and hydrogen that shows preferential alignment)」,フィジカル・レビュー・ビー(Physical Review B),2010年,第82巻,155205を参照されたい)。成長したばかりのCVDダイヤモンド材料中の欠陥のかかる選択的配向が成長方向にフィンガプリントをもたらし、成長面上で生じるプロセスを明らかにし、そして成長後処理に関する証拠を提供すると共に/或いは欠陥移動メカニズムに対する洞察を提供することができるということが示唆された。すなわち、2つの珪素欠陥の選択的配向を単結晶ダイヤモンド材料をどのようにして作ったかということを突き止める手段として用いることができ、かくして、他形式のダイヤモンド材料に対してかかる単結晶ダイヤモンド材料を区別することができる。これは、例えば処理済み宝石を未処理の宝石から識別するよう宝石を分類する手段として有用な場合がある。
【0018】
本発明者は、今や、合成CVDダイヤモンド材料中の他の点欠陥も又、選択的に整列させることができることを見出し、具体的には、NV-欠陥は、上述したような量子スピン用途において有用であることが判明した。さらに、本発明者は、適当な基板の注意深い選択、基板の成長面の注意深い処理及びCVD成長条件の注意深い制御によって、極めて高い点欠陥整列度を達成することができるということを見出した。さらに又、本発明者は、点欠陥の選択的整列を用いると、検知、検出及び量子装置用途に関して合成CVDダイヤモンド材料中の点欠陥からの発光強度及び/又は光収集を増大させ、かかる用途において点欠陥の感度を増強させ、点欠陥相互間の結合強度を向上させ、そして点欠陥の検知及び発光機能の方向性を向上させることができるということを認識した。かかる技術進歩は、検知、検出及び量子装置の性能を向上させることができると共に/或いは合成CVDダイヤモンド材料と関連して検知、検出及び/又は処理機能を実施するのに必要な関連装置コンポーネントを単純化すると共に小型化するのを助長することができる。これらの認識により、単結晶CVDダイヤモンド材料をこれが特定の用途について望ましいタイプの整列度の高い欠陥を有するよう特に処理することができる。さらに、これらの認識により、装置コンポーネントをこれが選択的に配向された欠陥の使用を最適化するよう特に処理できる。すなわち、装置形態は、単結晶合成CVDダイヤモンド材料中の点欠陥の選択的配向を最大限活用するよう処理でき、かくして性能が向上する。
【0019】
上述のことに照らして、本発明の第1の観点によれば、単結晶合成CVDダイヤモンド材料であって、
成長セクタと、
成長セクタ内に位置する1つ又は2つ以上のタイプの複数個の点欠陥とを有し、
少なくとも1つのタイプの点欠陥は、成長セクタ内で選択的に整列しており、
少なくとも1つのタイプの点欠陥のうちの少なくとも60%は、選択的整列状態を示し、
少なくとも1つのタイプの点欠陥は、負に帯電した窒素空孔欠陥(NV-)であることを特徴とする単結晶合成CVDダイヤモンド材料が提供される。
【0020】
本発明の第2の観点によれば、検知、検出又は量子スピン装置で用いられる合成CVDダイヤモンド装置コンポーネントであって、この装置コンポーネントは、上述したような材料で作られていることを特徴とする合成CVDダイヤモンド装置が提供される。かかる装置コンポーネントでは、好ましくは、点欠陥からの光の取り出しを向上させるよう選択的に整列した点欠陥に対して定められた位置及び方位を有する光取り出し表面又は構造体が提供される。
【0021】
本発明の第3の観点によれば、上述したような装置コンポーネントを有する装置が提供される。この装置は、単結晶合成CVDダイヤモンド材料中の複数個の選択的に整列した点欠陥のうちの1つ又は2つ以上を光学的にポンピングする光源を有するのが良い。光源は、光源と点欠陥との結合を向上させるよう選択的に整列した点欠陥に対して配向されるのが良い。
【0022】
本装置は、オプションとして、選択的に整列した点欠陥と相互作用するよう構成されたコンポーネントを更に有するのが良い。例えば、この装置は、単結晶合成CVDダイヤモンド材料中の1つ又は2つ以上の選択的に整列した点欠陥からの発光を検出する検出器を有するのが良い。検出器は、感度及び/又は検出方向を向上させるよう1つ又は2つ以上の選択的に配向された点欠陥に対して位置決めされると共に配向されるのが良い。
【0023】
本装置は、オプションとして、単結晶合成CVDダイヤモンド材料中の選択的に配向された点欠陥のうちの1つ又は2つ以上を操作する振動型電磁発生器、例えば無線周波発生器又はマイクロ波発生器を有するのが良い。マイクロ波発生器は、この発生器と点欠陥との間の結合を向上させるために1つ又は2つ以上の選択的に配向された点欠陥に対して位置決めされると共に配向されるのが良い。例えば、磁力計用途では、マイクロ波発生器は、単結晶合成CVDダイヤモンド材料中の複数個の点欠陥のうちの1つ又は2つ以上を操作するマイクロ波周波数範囲を走査するよう構成されているのが良い。スピン共鳴装置用途では、マイクロ波発生器は、単結晶合成CVDダイヤモンド材料中の複数個の選択的に整列した点欠陥のうちの1つ又は2つ以上を操作するマイクロ波周波数範囲を走査するよう構成されているのが良く、スピン共鳴装置は、単結晶合成CVDダイヤモンド材料に隣接して位置したサンプル内の量子スピンを操作する周波数範囲を走査するよう構成された無線周波又はマイクロ波発生器を更に有する。
【0024】
本装置は、オプションとして、流体サンプルを受け入れるマイクロフルイディックチャネルを有するマイクロフルイディック装置を形成することができ、単結晶合成CVDダイヤモンド材料は、マイクロフルイディックチャネルに隣接して配置される。マイクロフルイディックチャネル及び点欠陥は、流体サンプルと単結晶合成CVDダイヤモンド材料中の点欠陥との結合を向上させるよう互いに対して配向されるのが良い。
【0025】
本装置は、オプションとして、スピン共鳴画像化装置であっても良く、検出器は、スピン共鳴画像を形成するよう単結晶合成CVDダイヤモンド材料中の複数個の選択的に整列した点欠陥からの発光を空間的に分解するよう構成されている。
【0026】
本装置は、オプションとして、量子情報処理装置を形成することができる。例えば、マイクロ波発生器が情報を少なくとも1つのタイプの点欠陥に書き込むために単結晶合成CVDダイヤモンド材料中の少なくとも1つのタイプの点欠陥を選択的に操作するよう構成されるのが良く、検出器は、情報を少なくとも1つのタイプの点欠陥から読み取るために少なくとも1つのタイプの点欠陥のうちの1つ又は2つ以上を選択的にアドレス指定するよう構成される。
【0027】
次に、本発明の良好な理解を得ると共に本発明をどのようにすれば実施することができるかを示すために、添付の図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、これは例示に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1(a)】NV-欠陥の原子構造を示す図である。
図1(b)】NV-欠陥の電子構造を示す図である。
図2(a)】変化するマイクロ波周波数により操作される複数のNV-欠陥から得られた固有蛍光スペクトルを示す図である。
図2(b)】ダイヤモンド結晶中の4本の結晶NV-軸の方位を示す図である。
図3】{110}結晶面に陰影を付けた状態のダイヤモンドユニットセルを示す図であり、2つの考えられる面内NV-方位のうちの一方及び2つの考えられる面外NV-方位のうちの一方を示す図である。
図4】本発明の実施形態としてのダイヤモンド量子装置に用いられる単結晶CVDダイヤモンド材料の方位{110}の層を作製する方法を示す図である。
図5】本発明の実施形態としてのスピン共鳴装置の略図である。
図6】本発明の別の実施形態としてのスピン共鳴装置の略図である。
図7】本発明の別の実施形態としてのスピン共鳴装置の略図である。
図8】本発明の別の実施形態としてのスピン共鳴装置の略図である。
図9】本発明の別の実施形態としてのスピン共鳴装置の略図である。
図10】本発明の実施形態としてのダイヤモンド量子装置に用いられる単結晶CVD合成ダイヤモンド材料の方位{110}の層を有するマイクロフルイディックセルの略図である。
図11】例えば図10に示されているマイクロフルイディックセルに用いられるスピン共鳴装置の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態は、適当な基板の注意深い選択、基板の成長面の注意深い処理及びCVD成長条件の注意深い制御によって、単結晶合成CVDダイヤモンド材料中に極めて高い点欠陥整列度を達成することができ、これを利用すると、検知、検出及び量子スピン装置用途において感度及び/又は方向性を向上させることができるという認識に基づいている。
【0030】
上述の単結晶CVD合成ダイヤモンド材料及び装置コンポーネントは、プラズマ曝露エッチングによって曝露して5×103個/mm2以下、好ましくは102個/mm2以下の欠陥密度を有する成長面を備えた単結晶ダイヤモンド基板を用意することによって製造できる。成長面をCVD合成ダイヤモンドの単結晶、単結晶天然ダイヤモンド又はHPHT合成ダイヤモンドの単結晶で形成するのが良い。さらに、単結晶ダイヤモンド基板の成長面をこれが{100}結晶面ではない結晶面、具体的には{110}、{111}又は{113}結晶面を基準として5°の範囲内に位置するよう選択されると共に処理されるのが良い。例えば、単結晶ダイヤモンド基板の成長面をこれが所望の結晶面を基準として0.1°〜5°、0.1°〜3°、0.1°〜2°、0.1°〜1°又は0.5°〜1°の範囲内に位置するよう選択されると共に処理されるのが良い。次に、単結晶合成CVDダイヤモンド材料の層をドーパント含有ガスの存在下で成長面上で成長させるのが良く、この場合、成長は、選択的に整列したNV-点欠陥を備えた単結晶合成CVDダイヤモンド材料を形成するよう制御される。
【0031】
合成中、CVD成長のためのプロセスガスは、プロセスガスの5%以下、4%以下、3%以下又は2%以下の濃度で炭素含有原料ガスを含むのが良い。さらに、成長速度は、好ましくは、ゆっくりであるよう制御されると共に様々に配向されたマイクロファセットの形成を減少させるよう制御される。
【0032】
本明細書において説明しているような選択的に整列した欠陥を達成する一手法は、多段成長プロセスを含む。第1段では、プラズマ曝露エッチングで曝露して5×103個/mm2以下の欠陥密度を有する(001)成長面を有する単結晶ダイヤモンド基板を前処理する。単結晶CVD合成ダイヤモンドの第1の層を(001)成長面上で成長させる。次に、単結晶CVD合成ダイヤモンドの第1の層をスライスして{110}成長面を形成し、{110}成長面をこれがプラズマ曝露エッチングで曝露して5×103個/mm2以下、好ましくは102個/mm2以下の欠陥密度を備えるよう処理する。しかる後、第2の成長段を実施し、かかる第2の成長段では、単結晶合成CVDダイヤモンド材料の層をドーパント含有ガスの存在下で{110}成長面上で成長させて選択的に整列したNV-点欠陥を備えた単結晶合成CVDダイヤモンド材料を形成する。
【0033】
上述の方法は、{110}成長面を利用するが、単結晶ダイヤモンド基板の成長面は、{110}、{111}又は{113}結晶面、最も好ましくは{110}結晶面を基準として5°の範囲内に位置するよう選択されるのが良い。したがって、選択的に整列した欠陥は、単結晶合成CVDダイヤモンド材料の層内の{110}、{111}又は{113}成長セクタ、最も好ましくは{110}成長セクタ内に配置されることになろう。選択的整列は、{110}、{111}又は{113}結晶面、好ましくは{110}結晶面に対して面外であるのが良い。オプションとして、選択的整列は、{110}結晶面に対して面外の<111>方向である。
【0034】
加うるに、選択的に整列した欠陥は、例えば単結晶合成CVDダイヤモンド材料の層が薄く作られる場合、{110}、{111}又は{113}外面の近くに位置するのが良い。最も好ましくは、選択的に整列した欠陥は、{110}外面の近くに位置する。外面は、完全には結晶面に沿って位置することはないので、{110}、{111}又は{113}外面は、{110}、{111}又は{113}結晶面を基準として5°の範囲内に位置する外面として定義できる。選択的に整列した欠陥は、かかる配向外面から100μm以下、50μm以下、20μm以下、10μm以下、1μm以下、500nm以下、200nm以下、50nm以下、20nm以下又は10nm以下の距離のところに位置決めされるのが良い。かかる構成は、使用中、欠陥から放出されたフォトンを取り出す一方でダイヤモンド材料の層内に吸収されるフォトンの数を減少させる上で有利であると言える。
【0035】
単結晶ダイヤモンド基板を成長面がこの結晶面の近くに位置するがこれから僅かにオフカットされるよう処理するのが良い。例えば、成長したばかりの単結晶合成CVDダイヤモンド材料中の点欠陥の良好な選択的整列度を単結晶ダイヤモンド基板の成長面が所望の結晶面を基準として0.1°〜5°、0.1°〜3°、0.1°〜2°、0.1°〜1°又は0.5°〜1°の範囲内に配向されるよう得ることができる。{110}、{111}及び{113}結晶成長面は、選択的整列を可能にする対称性を有するが、{110}成長面が好ましいと考えられる。というのは、{111}結晶成長面は、多くの望ましくない欠陥を含む傾向があり、一般に、成長する貧弱な表面であり、他方、{113}成長面は、前処理するのが困難だからである。
【0036】
上述したことに加えて、単結晶合成CVDダイヤモンド材料を比較的低い成長速度で成長させて点欠陥がこれらの最も熱力学的に安定した方位で一ユニットとして成長することができるようにすることによって点欠陥の良好な選択的整列度を得ることができるということが判明した。所要の比成長速度は、特定の成長条件、CVD化学的性質及び選択的に整列させるべき点欠陥のタイプに従って様々であろう。例えば、比較的低い、例えばプロセスガスの5%以下、4%以下、3%以下又は2%以下の炭素ガス源(例えば、メタン)を用いて単結晶合成CVDダイヤモンド材料を成長させることが有益であることが判明した。低炭素ガス源は、成長速度を減少させることができるが、点欠陥の選択的整列が向上することが判明した。代替的に又は追加的に、或る特定の構成では、単結晶合成CVDダイヤモンド材料を比較的低い成長温度で成長させることが有利であることが判明した。この点に関し、単結晶合成CVDダイヤモンド材料を成長させる基板の温度を基板の成長面のところの温度が1100℃以下、1050℃以下、1000℃以下、950℃以下、900℃以下、850℃以下又は800℃以下であるように制御するのが良い。基板の成長面のところの温度は、好ましくは、650℃を超え、700℃を超え又は750℃を超える。このように、点欠陥の良好な選択的整列度を得ることができるということが判明した。
【0037】
上述のことに関連して、理論によって束縛されるものではないが、成長中、成長面を粗くすることにより、様々に配向されたマイクロファセットを作ることができると共に互いに異なる結晶面上に成長させた材料が点欠陥の選択的配向を減少させると考えられる。基板の注意深い選択及び前処理並びにCVD結晶プロセスの注意深い制御により、様々に配向されたマイクロファセットの形成を減少させることができると共に点欠陥の選択的配向を増大させることができる。
【0038】
例えば、ダイヤモンド格子中、NV-中心のC3Vは対称軸は、4つの<111>結晶軸のうちの任意の1つに沿って向くことができる。QIP用途に関し、NV-光ダイポールは、NV-空胴結合にとって重要である。磁気測定用途では、NV-欠陥の全て又は少なくとも大部分が選択的に配向されているアンサンブルシステムにおいて最も高い感度の磁力計が得られよう。本発明者は、NV-配向の制御がCVD合成ダイヤモンド成長プロセス中に{110}結晶面上に作られるNV-欠陥について可能であることを見出した。具体的に言えば、{110}結晶面中へのNV-欠陥の入り込みが方位{110}の成長中にほぼ完全に抑制できることが判明した。
【0039】
図3は、{110}結晶面に陰影を付けた状態のダイヤモンドユニットセルを示している。2つの考えられる面内NV-配向のうちの一方が2つの考えられる面外NV-配向のうちの一方と一緒に示されている。面内配向は、{110}成長中、<111>対称軸が{110}成長面に対して面外に位置した状態でNV-欠陥の大部分が配向されるよう抑制される。
【0040】
これは、欠陥の選択的配向が感度、結合強度を増大させることができるのでNV-欠陥に関与する多くの技術にとって意味を持つと共に/或いはダイポール発光方向が既知であるので装置を作製するのを容易にする。例えば、
(i)バルク磁力計では、多くの欠陥が同一方向に整列するので感度を向上させることができる。
(ii)単一欠陥磁力計では、NV-欠陥をこれがナノ構造体、例えばナノピラーに最適に結合することができるよう整列させることができる。
(iii)量子コンピュータでは、NV-欠陥のアンサンブルを超伝導キュービット(量子ビット)に共鳴結合することができ、本発明の実施形態により提供される整列状態に向上により、共鳴線幅を減少させることができる。
(iv)測定に基づく量子コンピュータ処理方式では、欠陥の方位を含む同一の欠陥を必要とする同一のフォトンを有することが要件である。
【0041】
{110}表面上における合成CVDダイヤモンド材料の成長が知られているが、本発明者は、方位{110}の基板上における高品質合成単結晶CVDダイヤモンド材料の成長が検知、検出及び量子装置用途で用いられる配向欠陥を達成する上で有利であることを見出した。この点に関し、国際公開第2010/010344号パンフレット及び同第2010/010352号パンフレットは、量子等級CVD合成ダイヤモンド材料の成長がダイヤモンド基板上で起こるのが良く、成長が起こる基板の表面は、実質的に、方位{100}、{110}又は{111}の表面であることを開示している。これら表面は、基板の成長面にとって有利であることが記載されている。というのは、これら表面の各々は、低い屈折率を有し、このことは、表面中に存在するステップエッジの数が最小限に抑えられることを意味するからである。さらに、(001)主要面を有する方位{100}の基板が好ましいことが記載されている。この記載された好みとは対照的に、本発明者は、方位{110}、{111}又は{113}の基板上における高品質量子等級単結晶合成CVDダイヤモンド材料の成長が成長条件を適切に制御した場合、量子装置用途で用いられる選択的に配向されたNV-欠陥を達成する上で有利であることを見出した。
【0042】
電子常磁性共鳴(EPR)分光法を用いて合成CVDダイヤモンド材料中の常磁性点欠陥の配向を分析することができる。互いに異なる配向状態でスペクトルを取ることによって、特定の点欠陥の選択的整列が起こるかどうかそしてどれほど起こるかを突き止めることが可能である。例えば、本発明の実施形態に従って成長させた単結晶合成CVDダイヤモンド材料の<110>成長面に平行なEPRスペクトル及びこれに垂直なEPRスペクトルを取ることによって、<111>結晶軸が{110}成長面に対して面外に向き、即ち、<110>又は<−1−11>方向にある状態でNV-欠陥の実質的に全てを配向させると共に<111>対称軸が成長平面内に位置し、即ち、<−11−1>又は<1−1−1>方向に向いた状態で入り込むNV-欠陥が実質的にないことを決定することが可能である。この場合、選択的配向は、EPR分析により測定して成長面に対し面外の<111>方向(<111>又は<−1−11>)であり、その結果、NV-欠陥のうちの少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%が<111>方向において成長面の外に位置するようになっている。
【0043】
上述の測定技術によっては、<111>及び<−1−11>方向における2つの面外配向を区別することができないが、本発明者は、成長面のところでの成長メカニズムを理解することによって、この結果が本質的に、全てのNV-欠陥の99.7%超が成長面の外における空孔内での成長により入り込んだN原子によって成長することを意味していると考えている。
【0044】
かかる作用効果は、通常、合成CVDダイヤモンド材料が{100}成長面上で成長したときにNV-欠陥について観察されることがないが、本発明者は、成長面のところでの成長メカニズムの知識により、{111}又は{113}成長面を用いると、他の点欠陥タイプについて、同様な作用効果も又観察できると考えている。確かに、NVH-欠陥につき且つSiV0、SiV-及びSiV20欠陥を含む数個の珪素含有欠陥について同様な作用効果が既に本発明者によって観察されている。基板の注意深い前処理及び成長条件の注意深い制御により、様々に配向されたマイクロファセットの生成を減少させることによって、選択的配向レベルを増大させることができる。以下の説明は、本出願人が「選択的配向」によって意味している内容を明らかにしている。
【0045】
結晶中、様々な配向状態で起こる化学的に同一の欠陥(又は色中心)に遭遇する。これら様々に配向した欠陥の各々を結晶の対称性よりも高くはないはずである欠陥の対称性に妥当な作業の使用により組に属する一要素から発生させることができる。これら対称関連コピーを「対称性関連部位」と呼ぶことができる。
【0046】
これらコピーの各々は、光吸収、光放出、電子常磁性共鳴スペクトル並びに他の光学的、電気的及び機械的特性を含む欠陥関連特性に対して別々の寄与を生じさせることができる。
【0047】
存在する様々に配向した欠陥のうちの任意の1つの確率が互いに異なる対称性関連部位の数の逆元に等しい場合、任意特定の欠陥配向のためのバイアス又はこれに対するバイアスが存在せず、欠陥は、利用可能な対称性関連部位全体にわたってランダムに配向していると言われる。しかしながら、もしそうではなく、考えられる欠陥配向の特定の欠陥配向又はサブセットが他のものと比較して好都合である場合、欠陥は、選択的に配向していると言われる。選択的整列の量は、利用可能な部位全体にわたる欠陥の分布状態で決まる。化学的に同一の欠陥が全て対称性関連部位の組のうちの1つだけの中で整列している場合、欠陥は、完全に選択的に配向していると説明できる。対称性関連部位のサブセット全体にわたる均等な選択的配向は、有用である場合がある。というのは、特定の用途に関し、このサブセットは、完全に選択的に配向された系と同一の仕方で挙動する場合があるからである。互いに異なる対称性を有する欠陥について選択的配向をどのようにして計算することができるかの例が例示目的で以下に与えられている。
【0048】
実施例1:D2d
d対称性を備えた結晶では、D2d対称性を備えた欠陥の3つの考えられる対称性関連部位(配向)が存在する。対称性関連部位が全て等しい場合、恐らくは、欠陥は、ランダムに配向されている。
【0049】
一特定の部位を見出す確率がn(この場合、0≦n≦1)であり、他の2つの各々に関する確率が(1−n)/2である場合、選択的配向度は、完全に選択的に配向された状態(n=1;100%選択的整列状態)とランダムに配向された状態(n=1/3;0%選択的整列状態)と3つの考えられる対称性関連部位のうちの2つにのみ等しい確率を備えた状態の配向された状態(n=0)との間で様々な場合がある。
【0050】
3つの考えられる対称性関連部位の占有の確率が全て異なる場合、即ち、n、(1−n−p)/2及び(1−n+p)/2である場合、3つの対称性関連部位のうちで互いに異なる分布状態に関する全ての確率は、線0≦n≦1、p≧0及びn+p≦1によって制限される。
【0051】
実施例2:C3V
対称性関連部位の三回対称軸が配向可能な4つの方向は、
であり(そして、欠陥が反転対称性を備えていない場合、これらの逆数)は、a、b、c、dと表示される。
【0052】
[001]に沿う成長方向について考察する。
【0053】
部位(a),(b),(c)及び(d)の対称軸は、成長方向に対して等しい角度をなす(arccos(√(1/3)))。三回対称欠陥の選択的配向(0%選択的整列状態)が[001]に沿う成長については見込まれない。同じ説明は、全ての<100>方向に沿う成長について当てはまる。
【0054】
[110]に沿う成長方向について考察する。
【0055】
部位(a)及び(b)の対称軸は、成長方向に対して等しい角度をなす(arccos(√(2/3)))。部位(c)及び(d)の対称軸は、成長方向に対して等しい角度をなす(90°)。
【0056】
かくして、部位(a)及び部位(b)は、等価と取り扱い可能であり、部位(c)及び部位(d)は、等価と取り扱い可能である。
【0057】
部位(a)又は部位(b)のいずれかを見出す確率がn/2(この場合、0≦n≦1)であり、部位(c)か部位(d)かのいずれかに関する確率が(1−n)/2である場合、選択的配向度は、部位(a)及び部位(b)における完全に選択的に配向された状態(n=1)とランダムに配向された状態(n=1/2;0%選択的整列状態)と部位(c)及び部位(d)における完全に選択的に配向された(又は、部位(a)及び部位(b)から遠ざかっている)状態(n=0;100%選択的整列状態)との間で様々な場合がある。
【0058】
0≦n≦1/2の場合、部位(c)及び部位(d)における選択的配向度は、(1−n/(1−n))×100%と特定できる。
【0059】
1/2≦n≦1の場合、部位(a)及び部位(b)における選択的配向度は、(1−(1−n)/n)×100%と特定できる。
【0060】
同じ説明は、全ての<110>方向に沿う成長について当てはまるが、互いに異なる対称性関連部位は、等価として対をなしている。
【0061】
[111]に沿う成長方向について考察する。
部位(a)の対称軸は、0°の成長方向に対して角度をなしている。部位(b),(c),(d)の対称軸は、成長方向に対して等しい角度をなしている(arccos(√(1/3)))。かくして、部位(a)は、一義的であり、部位(b),(c),(d)は、等価であると取り扱われる。
【0062】
いずれかの部位(a)を見出す確率はn(この場合、0≦n≦1)であり、いずれかの部位(b),(c)又は(d)に関する確率が(1−n)/3である場合、選択的配向度は、部位(a)における完全に選択的に配向された状態(n=1;100%選択的整列状態)と、ランダムに配向された状態(n=1/4;0%選択的整列状態)と部位(a)から遠ざかった完全に選択的に配向された状態(n=0)との間で様々な場合がある。
【0063】
1/4≦n≦1の場合、部位(a)における選択的配向度は、(1−(1−n)/3n)×100%と特定できる。
【0064】
0≦n≦1/4の場合、部位(a)から遠ざかる選択的配向度は、(1−3n/(1−n))×100%と特定できる。
【0065】
同じ説明は、全ての<111>方向に沿う成長について当てはまるが、互いに異なる対称性関連部位は、等価として対にされる。
【0066】
上述したことに照らして、本発明者は、非{100}結晶面、例えば{100}、{111}及び{113}結晶面上で成長させたNV-欠陥の高い選択的配向度を達成することが可能であることを示した。かかる選択的配向を達成する背景となる理論は、{100}結晶面には当てはまらない。しかしながら、驚くべきこととして、本発明者は、{100}結晶面上で成長させることによってほぼ同じ選択的配向効果を何とか達成するようにした。この点に関し、注目したこととして、或る特定の条件下においては、単結晶CVD合成ダイヤモンド表面を成長させることは、平坦ではなく、むしろ、当該技術分野において知られているように一連のテラスとライザを有する。ライザは、基板成長面外に位置し、これらライザは、基板成長面の主要結晶成分とは異なる結晶成分を有する。したがって、{100}結晶面上における成長の場合、ライザは、非{100}結晶成分を有する。これらライザは、上述の理由でNV-欠陥の選択的配向を示すことが判明した。この発見に鑑みて、本発明者は、{100}結晶面上における成長を改良して成長プロセス中に作られるライザのサイズ/面積を増大させることができれば、主{100}結晶面がNV-欠陥の選択的配向を示していない場合であっても比較的高い選択的配向度を達成することができるということを認識した。これは、極めて大きなライザが単結晶CVD合成ダイヤモンド成長において通常は望ましくはないという見解とは対照的である。
【0067】
テラス表面積に対するライザ表面積の比率又は百分率を増大させるには、成長温度を変化させると共に成長化学的特性を変化させるのが良い。例えば、CVD合成雰囲気中のメタン含有量を変化させることは、ライザ表面積を変化させることが判明しており、この作用効果を用いると、NV-点欠陥の選択的配向を増大させることができる。さらに、成長温度を変化させることは、ライザ表面積を変化させることが判明しており、この作用効果も又、ライザ表面積を増大させると共にNV-点欠陥の選択的配向を増大させるために利用できる。したがって、成長条件を注意深く制御することによって、{100}、{111}及び{113}結晶面に加えて、{100}結晶面上で成長させたNV-欠陥の比較的高い選択的配向度を達成することも又可能である。したがって、或る特定の実施形態によれば、選択的に整列した点欠陥は、単結晶CVD合成ダイヤモンド材料の{100}成長セクタ内に位置するのが良い。さらに、選択的整列は、{100}結晶面に対して面外に位置するのが良い。さらに又、選択的に整列した点欠陥は、単結晶合成CVDダイヤモンド材料の外面を基準として100μmの範囲内に位置するのが良く、この外面は、{100}表面である。
【0068】
成長させたばかりのCVDダイヤモンド材料中の点欠陥の選択的配向が成長方向のフィンガプリント、成長プロセス及び成長後処理に関する証拠を提供する場合があることを示唆しているに過ぎないフィジカル・レビュー・ビー(Physical Review B),第82巻,2010年,155205における先行技術の開示とは異なり、本発明者は、点欠陥の選択的配向を利用すると、検知、検出及び量子用途のための装置コンポーネントの性能を向上させることができるということ及び高い選択的配向レベルを成長条件の注意深い制御によってかかる用途に使用可能に達成できるということを認識した。かかる装置コンポーネントでは、上述したような合成CVDダイヤモンド材料の結晶成長セクタに対して選択的配向状態で点欠陥を設けることができる。加うるに、装置コンポーネントが感度、方向性及び/又は光取り出しを向上させるために点欠陥に対して適当に整列するよう他の特徴を装置コンポーネント中に形成することが可能である。所望の用途に応じて材料を適当な形状に切断することによって合成単結晶CVDダイヤモンドコンポーネントを形成することができ、このコンポーネントの1つ又は2つ以上の表面は、選択的に配向された点欠陥に対して所望の仕方で配向される。例えば、レンズ又は他の光取り出し構造体は、点欠陥の選択的配向に対する光取り出し構造体の位置及び配向が使用中、点欠陥によって放出される光の光取り出し具合を向上させるよう形成することができる。同様に、光取り入れ表面又は構造体が外部刺激と点欠陥の結合を向上させるよう点欠陥に対して位置決めされると共に配向されるのが良い。例えば、流体サンプルを受け入れるチャネルを装置コンポーネント中に形成するのが良く、点欠陥は、このサンプルと点欠陥との結合を増強するようチャネル配向に対して選択的に配向されるのが良い。
【0069】
単結晶合成CVDダイヤモンド材料は、20ppb以下、10ppb以下、5ppb以下、1ppb以下若しくは0.5ppb以下の中性単一置換窒素濃度、0.15ppb以下、0.1ppb以下、0.05ppb以下、0.001ppb以下、0.0001ppb以下又は0.00005ppb以下のNV-又は0.1ppm以上、0.5ppm以上、1.0ppm以上、2.0ppm以上、3ppm以上、4ppm以上若しくは5ppm以上のNV-濃度及び0.9%以下、0.7%以下、0.4%以下、0.1%以下、0.01%以下若しくは0.001%以下の全濃度の13Cのうちの1つ又は2つ以上を有するのが良い。高純度量子等級単結晶CVD合成ダイヤモンド材料の使用により、ダイヤモンド材料中の1つ又は2つ以上の量子スピン欠陥のデコヒーレンス時間が向上し、当業者に知られている光学的技術を用いて単一欠陥中心を隔離することが可能である。この材料は、所望の最終使用に応じて2つのカテゴリ、即ち、低NV-濃度材料又は高NV-濃度材料のうちの1つに分類可能である。
【0070】
単結晶合成CVDダイヤモンド材料は、0.1mm以上、0.5mm以上、1mm以上、2mm以上又は3mm以上の少なくとも1つの寸法を有するのが良い。さらに、単結晶合成CVDダイヤモンド材料は、0.1μm以上、1μm以上、10μm以上、100μm以上、200μm以上又は500μm以上の厚さを有する層を形成するのが良い。単結晶合成CVDダイヤモンド材料の特定のサイズ及び寸法は、或る程度までは、装置形態及びその意図した使用で決まるであろう。しかしながら、多くの用途に関し、単結晶合成CVDダイヤモンド材料は、感度を向上させるに足るほどの点欠陥を有するよう十分大きいことが必要であるのが良く、他方、点欠陥の分布状態は、点欠陥のデコヒーレンス時間を向上させると共に/或いは光学的技術を用いて単一欠陥中心を隔離することができるほど十分分散している。
【0071】
点欠陥は、0.05ms以上、0.1ms以上、0.3ms以上、0.6ms以上、1ms以上、5ms以上又は15ms以上のデコヒーレンス時間T2を有するのが良く、対応のT2*値は、800μs以下、600μs以下、400μs以下、200μs以下、150μs以下、100μs以下、75μs以下、50μs以下、20μs以下又は1μs以下である。
【0072】
点欠陥は、単結晶合成CVDダイヤモンドの表面から100nm以下、80nm以下、50nm以下、20nm以下又は10nm以下の距離を置いたところに位置決めされるのが良い。点欠陥は、その表面に隣接した磁界又は電界の変化に対する感度を増大させるためにこの表面の近くに配置されることが有利である場合がある。
単結晶合成CVDダイヤモンド材料は、単結晶CVD合成ダイヤモンド中に配置できる層を形成することができる。単結晶CVD合成ダイヤモンドは、全体が層で構成されても良く、或いは、層は、単結晶CVD合成ダイヤモンドの一部分しか形成しなくても良い。例えば、単結晶CVD合成ダイヤモンドは、選択的に整列した点欠陥を有する量子等級材料の層及び不純物を多く含む低級材料の1つ又は2つ以上の層から成っていても良い。この構成は、低級材料の厚い層を形成するのが容易であり且つ安価なので有用な場合がある。
【0073】
上述の方式は、単結晶CVD合成ダイヤモンド中への光取り出し構造体の提供を費用効果の良い仕方で達成するために特に有用な場合がある。単結晶CVD合成ダイヤモンドの表面のところに形成される光取り出し構造体は、光の取り出しを増加させると共に合成ダイヤモンド材料中の点欠陥からの光収集を増加させる上で有用である。一構成形式では、光取り出し構造体は、単結晶CVD合成ダイヤモンドの表面中に形成され、それにより、光取り出し構造体は、単結晶CVD合成ダイヤモンドの表面によって一体に形成される。かかる一体型光取り出し構造体を形成するため、より多くのダイヤモンド材料が必要な場合があり、オプションとして、この追加の材料の少なくとも一部分は、量子用途で用いられる量子スピン欠陥を含む層よりも低い等級のもので作られるのが良い。適当な光取り出し構造体は、凸面、マイクロレンズアレイ、固体浸漬レンズ(SIL)、複数個の表面凹み又はナノ構造体、回折格子、フレネルレンズ及び被膜、例えば反射防止膜のうちの1つ又は2つ以上を含む。
【0074】
図4は、本発明の実施形態としてのダイヤモンド量子装置に用いられる配向状態のNV-を有するCVD合成ダイヤモンド材料の層を形成する際に関与する方法ステップを示している。最初に、(001)単結晶ダイヤモンド基板2を用意する。これは、天然ダイヤモンド材料、HPHT又はCVD合成ダイヤモンドで作られるのが良い。これら互いに異なる種類のダイヤモンド材料の各々は、それ自体の別個の特徴を有し、かくして、別個の物として識別可能であるが、この基板に関する重要な特徴は、成長面が良好な表面仕上げを有するよう注意深く前処理される。
【0075】
良好な表面仕上げという用語は、プラズマ曝露エッチングによって曝露して5×103個/mm2以下の欠陥密度を有する表面を有する。欠陥密度は、最も容易には、例えば後述の形式の短時間のプラズマエッチングを用いて欠陥を明らかにするよう最適化されたプラズマ又は化学エッチング(プラズマ曝露エッチングと呼ばれている)を用いた後の光学的評価によって特徴付けられる。
【0076】
2つのタイプの欠陥を次によって曝露することができる。
【0077】
1)基板材料品質に固有の欠陥。選択した天然ダイヤモンドでは、これら欠陥の密度は、50/mm2という低いものである場合があり、より代表的な値は、102/mm2であり、他のものにおいては、かかる値は、106/mm2以上である場合がある。
2)研磨の結果として生じた欠陥(研磨線に沿ってチャター軌道を形成する転位構造及び微小割れを含む)。これらの密度は、サンプルによって相当なばらつきがある場合があり、代表的な値は、約102/mm2から研磨度が貧弱な領域又はサンプルでは最高104/mm2以上までである。
【0078】
好ましい低い欠陥密度は、欠陥に関連付けられた表面エッチング特徴部の密度が5×103/mm2未満、より好ましくは102/mm2未満であるようなものである。注目されるべきこととして、低い表面粗さを有するよう表面を単に研磨することによっては、これら基準を必ずしも満たすものではないということに注目されるべきである。というのは、プラズマ曝露エッチングは、表面のところ及びその直ぐ真下のところの欠陥を露出させるからである。さらに、プラズマ曝露エッチングは、表面欠陥、例えば微小割れ及び単純な研磨により除去できる表面特徴部に加えて、固有の欠陥、例えば転位を曝露することができる。
【0079】
かくして、CVD成長が起こる基板表面のところ及びその下の欠陥レベルを基板の注意深い選択及び前処理によって最小限に抑えることができる。「前処理」と呼ばれているプロセスは、鉱山採収(天然ダイヤモンドの場合)又は合成(合成材料の場合)に基づいて材料に適用されるプロセスである。というのは、各段は、基板としての前処理が完了したときに最終的に基板表面を形成する平面のところの材料中の表面欠陥密度に影響を及ぼす場合があるからである。特定の処理ステップとしては、従来型ダイヤモンドプロセス、例えば機械的鋸引き、ラップ仕上げ及び研磨(この用途では、低い欠陥レベルが得られるよう特別に最適化されている)並びにそれほど従来技術ではない技術、例えばレーザ加工、反応性イオンエッチング、イオンビームフライス加工又はイオン打ち込み及びリフトオフ技術、化学的/機械的研磨並びに液体化学処理とプラズマ処理技術の両方が挙げられる。加うるに、好ましくは、0.08mm長さにわたってスタイラスプロフィルメータにより測定された表面RQは、最小限に抑えられるべきであり、プラズマエッチングに先立つ代表的な値は、数ナノメートル以下、即ち、10ナノメートル未満である。RQは、平坦からの表面プロフィールの二乗平均偏差である(表面高さのガウス分布に関し、RQ=1.25Raである。定義に関しては、例えば、アイ・エム・ハッチング(IM Hutchings)著,「トライボロジー:フリクション・アンド・ウェア・オブ・エンジニアリング・マテリアルズ(Tribology: Friction and Wear of Engineering Materials)」,エドワード・アーノルド出版社(Edward Arnold),1992年,ISBN0−340−56184を参照されたい)。
【0080】
基板の表面損傷を最小限に抑える特定の一方法は、ホモエピタキシャルダイヤモンド成長が起こる予定の表面上に現場プラズマエッチングを行うことである。原理的には、このエッチングは、現場である必要はなく、成長プロセスの直前である必要もないが、最も大きな利点は、これが現場である場合に達成される。というのは、これにより、それ以上の物理的損傷又は化学汚染の恐れが回避されるからである。現場エッチングは又、一般的に、成長プロセスも又プラズマを利用している場合に最も好都合である。プラズマエッチングは、析出又はダイヤモンド成長プロセスに類似の条件であるが、原料ガスを含んでいる炭素が存在せずしかも一般にエッチング速度の良好な制御を与えるよう僅かに低い温度での条件を用いるのが良い。例えば、プラズマエッチングは、以下の技術のうちの1つ又は2つ以上から成るのが良い。
(i)主として水素を用いるが、オプションとして少量のAr及び必要な少量のO2を用いる酸素エッチング。典型的な酸素エッチング条件は、50〜450×102Paという圧力、1〜4パーセントの酸素含有量を含むエッチングガス、0〜30パーセントのアルゴン含有量及び残部水素であり、全ての割合は、体積による割合であり、基板温度は、600〜1100℃(より代表的には800℃)、代表的な持続時間は、3〜60分である。
(ii)(i)に類似しているが、酸素が存在していない水素エッチング。
(iii)アルゴン、水素及び酸素だけを利用している訳ではない別のエッチング方法、例えばハロゲン、他の不活性ガス又は窒素を利用したエッチング方法を利用することができる。
【0081】
典型的には、かかるエッチングでは、酸素エッチングを行い、次に水素エッチングを行い、次に炭素原料ガスの導入によって直接合成に進む。エッチング時間/温度は、処理に起因して生じた残りの表面損傷を除去することができ、しかも表面汚染物を除去することができるが、非常に粗い表面を生じさせず、しかも表面と交差し、かくして深いピットを生じさせる長い欠陥、例えば転位に沿って広範囲にエッチングを行わないように選択される。エッチングが強力なので、この段階に関しては、チャンバ設計及びそのコンポーネントの材料選択がプラズマによってチャンバから気相に又は基板表面に移送される材料がないようなものであることが特に重要である。酸素エッチングに続く水素エッチングは、結晶結果に対する特異性が低く、かかる欠陥を激しく攻撃する酸素エッチングによって引き起こされる角精度を四捨五入し、次の成長のための滑らかで良好な表面を提供する。
【0082】
図4に示されているように(001)単結晶ダイヤモンド基板2の成長面を適切に前処理して、ステップAでは基板2上での方位(001)の単結晶CVD合成ダイヤモンド材料の一次層4のCVD成長を行う。この層は、図1と関連して上述したように<100>方位の刃状タイプの転位を含むであろう。
【0083】
ステップBでは、方位(001)の単結晶CVD合成ダイヤモンド材料の一次層4を対角線(図4に点線で示されている)に沿って垂直方向にスライシングしてステップCで示されているように{110}単結晶ダイヤモンドプレート6を得る。これは、レーザを用いて達成できる。次に、{110}単結晶ダイヤモンドプレート6を基板として使用するのが良く、ステップDに示されているようにこの基板上に方位{110}の単結晶CVD合成ダイヤモンド材料8を成長させる。
【0084】
{110}基板6の成長面は、方位{110}の単結晶CVD合成ダイヤモンド材料8の成長に先立って、良好な表面仕上げが得られるよう(001)基板に関連して説明したのと同様な仕方で処理されるのが良い。良好な表面仕上げという表現は、この場合も又、プラズマ曝露エッチングによって曝露して5×103個/mm2以下、より好ましくは102個/mm2以下の欠陥密度を有する表面であることを意味している。
【0085】
{110}単結晶基板6上の成長は、高純度量子等級CVD合成ダイヤモンド材料を生じさせる条件下において実施されるのが良く、以下これらについて詳細に説明する。
【0086】
成長後、単結晶CVD合成ダイヤモンド材料8の方位{110}の層をステップEで示されているように水平にスライスしてステップFに示されているように単結晶CVD合成ダイヤモンド材料の自立型の{110}方位層を生じさせるのが良い。
【0087】
窒素分子として計算して250十億分率(ppb)以下、200ppb以下、150ppb以下又は120ppb以下の窒素濃度を有する気相を用いて量子ダイヤモンドコンポーネントの少なくとも一部分を成長させるのが良い。CVD反応器内のガス中の窒素含有量の減少の結果として、CVDダイヤモンド材料中の窒素含有量が減少し、従って吸収係数が低くなると共にデコヒーレンス時間が長くなる。CVD反応器ガス中の窒素含有量は、0.001ppbを超え、0.1ppbを超え、1ppbを超え又は10ppbを超えるのが良い。
【0088】
CVD成長プロセスは、高い化学的純度に加えて高い同位体純度の原料ガスを用いるのが良い。例えば、炭素原料ガスは、99%以上、99.3%以上、99.6%以上、99.9%以上、99.99%以上又は99.999%以上であるように増大した12C分率を有するのが良い。これは、単一フォトンエミッタのデコヒーレンス時間を一段と長くすることができる。ただし、天然存在比の12Cを用いても良いことも又想定される。
【0089】
上述のことに照らして、量子ダイヤモンドコンポーネントは、20ppb以下、10ppb以下、5ppb以下、1ppb以下若しくは0.5ppb以下の中性単一置換窒素濃度、0.15ppb以下、0.1ppb以下、0.05ppb以下、0.001ppb以下、0.0001ppb以下又は0.00005ppb以下のNV-及び0.9%以下、0.7%以下、0.4%以下、0.1%以下、0.01%以下若しくは0.001%以下の全濃度の13Cのうちの1つ又は2つ以上を含む少なくとも1つの高純度の部分を備えたダイヤモンド材料で作られるのが良い。
【0090】
CVD成長プロセスで用いられるガス組成物は、色中心の形成又はこれらの電荷安定化に関連した他の不純物、例えば珪素又は燐を更に含む可能性がある。しかしながら、低い窒素濃度に加えて、或る特定の実施形態によれば、CVD成長プロセスは、好ましくは、CVD成長中にダイヤモンド材料中に混入される場合のある極めて低い濃度の他の不純物を含むガス組成物を用いる。したがって、ダイヤモンド材料の少なくとも一部分は、好ましくは、100ppb以下の硼素濃度、100ppb以下の珪素濃度、5ppm以下の任意の単一非水素不純物濃度、水素及びその同位体を除く10ppm以下の全不純物含有量及び単結晶ダイヤモンドホスト材料中の1018cm3以下の濃度の水素不純物のうちの1つ又は2つ以上を含む。高純度材料は、好ましくは、低い集中度の転位を更に含む。例えば、高純度単結晶ダイヤモンド材料は、106転位cm2以下、104転位cm2以下、3×103転位cm2以下、103転位cm2以下、102転位cm2以下又は10転位cm2以下の転位束密度を含むのが良い。これは、もしそのようにしなければ高純度ダイヤモンド材料を通って伝搬する場合のある転位の形成を阻止するために注意深い基板前処理及び窒素の使用によって達成できる。
【0091】
また、低い表面粗さRqを達成するようダイヤモンドホスト材料の表面を処理することが望ましい。国際公開第2010/010344号パンフレット及び同第2010/010352号パンフレットに記載されているように、ホスト材料として本発明の合成ダイヤモンド材料を用いて高いT2値及び高いスペクトル安定性を得ることができ、この場合、量子スピン欠陥は、かかる処理済み表面から100μmの以下の距離を置いたところに位置決めされるべきである。本発明の実施形態によれば、量子スピン欠陥は、好ましくは、かかる処理済み表面から100μm以下、好ましくは50μm、好ましくは20μm、好ましくは10μm、好ましくは1μm、好ましくは500nm、好ましくは200nm、好ましくは50nm、好ましくは20nm又は好ましくは10nmの距離のところに位置決めされるべきである。量子スピン欠陥のこの位置決めは、量子スピン欠陥を例えば導波路への光結合によって特徴付けると共に「読み出す」ことができるよう最終用途にとって容易に接近可能であることを意味している。かくして、量子等級単結晶ダイヤモンド中に量子スピン欠陥を形成することが有利であり、この場合、ダイヤモンド材料の表面は、中心が量子スピン欠陥の形成される場所の最も近くに位置する表面上の点上に位置する半径が約5μmの円によって定められる領域内の単結晶ダイヤモンドの表面粗さRqが約10nm、5nm、1nm又は0.5nm以下であるよう処理される。
【0092】
また、量子スピン欠陥の近くの表面のところでの低い表面粗さに加えて、表面下損傷が量子スピン欠陥の近くでは少ないようにすることが有用である。エッチング、例えばプラズマエッチング及び研磨によって表面下損傷を減少させるのが良い。また、ダイヤモンドが量子スピン欠陥とマイナスの相互作用を行う種を末端基としないようにするために量子スピン欠陥の近くに位置するダイヤモンド表面のところの表面末端基の種類を制御することが有用な場合がある。例えば、量子スピン欠陥の近くに位置するダイヤモンド表面が非ゼロスピンを有する種、例えば水素又は幾つかの表面電荷再分配プロセス(例えば、水素で生じることが知られているプロセス)をもたらす恐れのある種ではなく、スピンゼロ種、例えば酸素を末端基とするようにすることが有用な場合がある。
【0093】
多段成長プロセスを用いて量子ダイヤモンドコンポーネントを形成するのが良く、それにより、量子ダイヤモンドコンポーネントは、この中に位置する低品質と高品質の両方のダイヤモンド材料を有し、1つ又は2つ以上の量子スピン欠陥は、高品質ダイヤモンド材料中に位置する。例えば、窒素分子として計算して300十億分率(ppb)以上且つ5百万分率(ppm)以下の窒素濃度を有する気相を用いて単結晶ダイヤモンド材料の第1の層を成長させるのが良い。窒素分子として計算して0.001ppb以上且つ250ppb以下の窒素濃度を有する気相を用いて第2の層を成長させるのが良い。天然存在比で又は炭素原料ガスの全C含有量の少なくとも99%の量で12Cを含む炭素原料ガスを有する気相を用いて第2の層を成長させても良い。第2の層は、上述したような高純度量子等級ダイヤモンド材料を含むのが良い。現場成長によって、1つ又は2つ以上の量子スピン欠陥を第2の層中に形成することができる。
【0094】
上述したことに加えて、特に好ましい一実施例では、2層成長プロセスを用い、この場合、第1の層は、「通常の」高品質ダイヤモンド材料であり、次に、高い欠陥整列を含む層を同一の反応器チャンバ内で第1の層上に成長させる。これは、プロセスガス組成及び成長運動を変更して例えば炭素含有ガスの濃度を減少させると共に/或いは基板の表面のところの成長温度を低くすることによって第1の成長プロセスと第2の成長プロセスを切り替えることによって達成できる。両方の層を連続プロセスで形成することによって、層相互間の境界部インターフェースには、実質的に不純物がない。実質的に不純物のないインターフェースをインターフェースとして定義するのが良く、ドープ層の厚さの20%、50%又は100%まで延びるインターフェースの各側の領域内において、不純物濃度は、1014、3×1014、1015、3×1015、1016、3×1016又は1017を超えず、2倍以上、3倍以上、5倍以上、10倍以上、30倍以上、100倍以上、300倍以上又は1000倍以上濃度が変化することはない。多数のプロフィール測定値をインターフェース全体にわたって取るのが良く、それによりこの基準がインターフェースの実質的に全体にわたって満たされていることを示し、例えば、全ての測定値が所要の基準を満たした状態で測定をインターフェースを横切る線に沿って1mm間隔で1回、2回、3回、5回又は10回行うのが良い。典型的な不純物は、窒素及び珪素を含むであろう。したがって、高い欠陥整列状態の単結晶ダイヤモンド材料の薄い層(例えば、厚さ10nm〜1mm)を低い欠陥整列度を有する支持単結晶ダイヤモンド層上に形成するのが良い。さらに、2つの層相互間のインターフェースは、不純物が例えばダイポールスピン結合によって選択的に配向した欠陥と相互作用するのを阻止するよう高純度インターフェースである。
【0095】
高純度単結晶CVD合成ダイヤモンド層を上述したように方位{110}ダイヤモンド基板上に形成した。単一のNV-中心を共焦点画像を走査する際に解像することができる。NV-配向状態を突き止めるため、9つの互いに異なる直線励起偏波について画像を得た。表面垂線を[110]と定義した場合、直線偏波は、同じステップにおいて0〜160°のばらつきがあり、偏波角0は、[001]に対応している。励起偏波依存性を用いると、互いに異なるNV-配向を区別することができる。特に、面外中心とは著しく異なる偏波依存性を有する2つの面内中心を区別することが可能である。NV-欠陥の大部分を[110]成長面に対して面外に配向させたことが判明した。
【0096】
上述した合成CVDダイヤモンド装置コンポーネントは、ダイヤモンド量子装置を形成するために使用できる。かかる装置の一例が図5に示されている。量子装置50は、方位{110}に主要面を有する単結晶CVD合成ダイヤモンド材料の層52で形成されたダイヤモンド量子コンポーネント52を有する。この層は、上述したように選択的に配向されたNV-欠陥54を有する。量子装置は、層52中の複数個の量子スピン欠陥54のうちの1つ又は2つ以上を光学的にポンピングする光源56を更に有する。
【0097】
光源56は、図1(a)に示されているように量子スピン欠陥を励起させて電子移動を行うようにするのに適当な周波数まで同調される。欠陥の電子構造により、欠陥を光学的に電子基底状態に光学的にポンピングすることができ、それによりかかる欠陥を非極低温であっても特定の電子スピン状態に置くことができる。これは、小型化が望ましい或る特定の用途について高価な且つ嵩張った極低温冷却装置の必要性をなくすことができる。それ以上の移動及びその後の崩壊及び蛍光放出の結果として、全てが同一のスピン状態を有するフォトンの放出が生じる。したがって、この装置構成は、全て同一のスピン状態を有するフォトンの源として機能することができ、これは、フォトニクスを利用した別の量子処理用途に有用である。強力な励起及び良好な光取り出しを達成するためにNV-欠陥をダイヤモンド量子コンポーネントの1つ又は2つ以上の表面に対し且つ光源に対して配向させるのが良い。
【0098】
図6は、同様なダイヤモンド量子装置60を示している。この装置60は、{110}形態に配向された単結晶CVD合成ダイヤモンドの層64を含むダイヤモンド量子コンポーネント62を更に有する。層64は、上述したように選択的に配向されているNV-欠陥を有する。量子装置は、層64中の複数個の量子スピン欠陥のうちの1つ又は2つ以上を光学的にポンピングする光源66を更に有している。
【0099】
図6に示されたダイヤモンド量子装置60は、単結晶CVD合成ダイヤモンドコンポーネント62が放出中のNV-欠陥からの光出力を増加させるための光取り出し構造体68を有するよう形成されている点において図5に示されたダイヤモンド量子装置とは異なっている。図示の構成例では、単結晶CVD合成ダイヤモンドコンポーネント62は、固体浸漬レンズの状態に形成されている。このレンズは、全体が、量子等級材料の方位{110}の層から形成されても良く、或いは、量子等級材料の方位{110}の層が納められた複合構造体であっても良い。例えば、単結晶CVD合成ダイヤモンドコンポーネント62は、量子等級材料の方位{110}の層又はこれよりも低い等級の材料の1つ又は2つ以上の別の層を有する合成CVDダイヤモンド材料の単結晶で構成されても良い。
【0100】
図7は、別の実施例としてのダイヤモンド量子装置70を示している。この装置は、上述したような選択的に配向されているNV-欠陥74を含む方位{110}の単結晶CVD合成ダイヤモンドコンポーネント72及び光源76を有する。装置70は、これが単結晶CVD合成ダイヤモンドコンポーネント72中の1つ又は2つ以上の崩壊中の量子スピン欠陥74からの発光を検出する検出器78を更に有している点において図5及び図6に示されている装置とは異なっている。
【0101】
この装置構成例では、結果的にms=±1状態への電子移動を生じさせるNV-欠陥の摂動の結果として、蛍光発光量の減少が生じ、次にこれを検出器78によって検出することができる。
【0102】
図8は、別の実施例としてのダイヤモンド量子装置80を示している。この装置は、上述したような選択的に配向されているNV-欠陥84を含む方位{110}の単結晶CVD合成ダイヤモンドコンポーネント82及び光源86を有する。装置80は、単結晶CVD合成ダイヤモンドコンポーネント82中の1つ又は2つ以上の崩壊中の量子スピン欠陥84からの発光を検出する検出器88を更に有している。装置80は、これが単結晶CVD合成ダイヤモンド層中の複数個の量子スピン欠陥のうちの1つ又は2つ以上を操作するマイクロ波発振器89を更に有している点で図7に示されている装置とは異なっている。
【0103】
この装置構成例では、ダイヤモンド量子装置は、磁力計として機能することができ、マイクロ波発振器89は、単結晶CVD合成ダイヤモンドコンポーネント82中の複数個の量子スピン欠陥のうちの1つ又は2つ以上を操作するマイクロ波周波数範囲を走査するよう構成されている。或る特定の周波数では、NV-欠陥は、ms=0状態からms=±1状態への電子移動を生じ、その結果、NV-欠陥からの蛍光発光量が減少する。この電子移動が起こる周波数は、外部磁界又は電界により摂動を受けるms=±1状態のエネルギーレベルで決まることになる。したがって、蛍光発光量の減少が生じる周波数を用いると、外部磁界又は電界を測定することができる。
【0104】
図8に示されている装置の改造型形態では、この装置は、ms=±1状態の縮退を分割する静磁場発生器を更に有するのが良く、この分割の大きさは、この場合、蛍光発光量の減少が起こる周波数の変化をもたらす外部磁界又は電界によって摂動を受け、この変化は、外部磁界又は電界の大きさ及び/又は方向の変化に対応している。
【0105】
変形例として、図8に示されているダイヤモンド量子装置は、量子情報処理装置として機能するよう構成されても良い。かかる構成例では、マイクロ波発振器89は、情報を複数個の量子スピン欠陥に書き込むために単結晶CVD合成ダイヤモンドコンポーネント中の複数個の量子スピン欠陥を選択的に操作するよう構成されるのが良く、検出器88は、情報を複数個の量子スピン欠陥から読み取るために複数個の量子スピン欠陥のうちの1つ又は2つ以上を選択的にアドレス指定するよう構成されるのが良い。
【0106】
図9は、別の実施例としてのダイヤモンド量子装置90を示している。この装置は、上述したような選択的に配向されたNV-欠陥を有する単結晶CVD合成ダイヤモンドコンポーネント92及び光源94を含む。装置90は、単結晶CVD合成ダイヤモンドコンポーネント92中の1つ又は2つ以上の崩壊中の量子スピン欠陥からの発光を検出する検出器95及び単結晶CVD合成ダイヤモンドコンポーネント中の複数個の量子スピン欠陥のうちの1つ又は2つ以上を操作するマイクロ波発振器96を更に有する。マイクロ波発振器96は、単結晶CVD合成ダイヤモンド層の複数個の量子スピン欠陥のうちの1つ又は2つ以上を操作するマイクロ波周波数範囲を走査するよう構成されている。装置90は、単結晶CVD合成ダイヤモンドコンポーネント92に隣接して配置されたサンプル99中の量子スピンを操作する周波数範囲を走査するよう構成された無線又はマイクロ波周波数発振器98を更に有する。
【0107】
この装置構成例は、スピン共鳴装置として機能することができる。かかる装置は、静磁場発生器を更に含むのが良い。かかる構成例では、サンプル99は、静的フィールド、例えば静磁場を受ける。静磁場をサンプル99に及ぼすことによって、サンプル中の核のスピンは、加えられた磁界と選択的に整列する。次に、振動フィールドをサンプルに加えて周波数を変化させる。振動フィールドが核スピンと共鳴関係になると、振動フィールドは、核スピンをフリップさせてこれを静的フィールドの方向とは逆に配向させる。この移動の結果として、局所磁界の変化が生じ、これを検知したり検出したりすることができる。互いに異なる核は、周りの電子の局所遮蔽効果及び密に間隔を置いて位置する核スピン相互間のスピン‐スピン相互作用に起因して加えられた振動フィールドの互いに異なる周波数でスピンフリップすることになる。
【0108】
これまでのところ、上述の装置は、標準型NMR装置のように機能するが、極めて小さなサンプル量で且つ極めて小さい静磁場で機能し、それにより、小型磁石の使用を可能にし(又は、事実、地磁界が用いられる場合磁石を不要にし)、かくして装置の全体としての小型化を可能にする。標準型NMR装置とは対照的に、核スピン反転に起因して生じる局所磁界の変化は、サンプル99に隣接して単結晶CVDS合成ダイヤモンドコンポーネント92中に存在する1つ又は2つ以上の量子スピン欠陥を用いて検出される。
【0109】
NV-欠陥は、上述の静磁場B0内に配置される。したがって、NV-欠陥内の電子スピン状態の縮退ms=±1が図1(b)に示されているように分割される。NV-欠陥は、532nmの光学レーザ源で励起され、3A基底状態から3E励起状態への電子の励起が生じる。励起されたms=0電子は、遷移の際に発光を行う基底状態に戻った際に蛍光を呈し、この蛍光を検出する。振動マイクロ波場をNV-欠陥に加えて周波数を変化させる。振動マイクロ波場がNV-中心の電子スピンと共鳴状態になると、これにより、電子は、遷移を行ってms=±1状態になる。共鳴スピン遷移を調べるには、マイクロ波(MW)周波数をスイープし、その結果、図2(a)を参照してスタイナート等によって上述されているように光学検出磁気共鳴(ODMR)スペクトルの固有のディップを生じさせるのが良い。
【0110】
いまや、ms=±1状態のエネルギーは、静磁場B0に依存するが、かかるエネルギーを振動rf磁界により引き起こされるサンプル中の核スピン反転によって生じる磁界の局所変化によって摂動させる。したがって、電子スピン共鳴がNV-欠陥中で生じるマイクロ波周波数は、サンプル中の核スピンが振動rf磁界と共鳴状態になると、シフトされる。これらの変化は、蛍光が生じるディップのシフトによって検出される。したがって、マイクロフルイディックサンプル中の核スピン共鳴は、NV-欠陥中の電子スピン共鳴の変化により光学的に検出される。かくして、光信号を処理すると、NMRデータを生成することができる。これは、化学シフトデータを示すNMRスペクトルの形態をしているのが良い。代替的に又は追加的に、複数の光学読みがマイクロフルイディックチャネルに沿う種々の位置で取られた場合、サンプルについて磁気共鳴画像(MRI)を生じさせることができる。かかるスピン共鳴画像化装置では、検出器は、スピン共鳴画像を形成するよう単結晶合成CVDダイヤモンド材料中の複数個の量子スピン欠陥からの発光を空間的に分解するよう構成されるのが良い。代替的に又は追加的に、電界(電場)の変化は、この技術を利用して測定できる。
【0111】
上述のプロセスを用いて生成されたデータをスピン共鳴画像化装置のディスプレイスクリーン上に表示するのが良い。変形例として、データをワイヤード又はワイヤレスかのいずれかにより処理及び表示のための外部装置、例えばラップトップ型又はデスクトップ型コンピュータに伝送しても良い。この場合、量子装置内の処理及び表示は、単純化できると共にサイズ及びコストを減少させることができる。適当なコンピュータプログラムを提供してこれが携帯型量子装置により収集されたデータを受け入れ、処理し、そして表示するために標準型コンピュータ上でランするのが良い。
【0112】
上述したような量子装置は、流体サンプルを受け入れるマイクロフルイディックチャネルを有するマイクロフルイディック装置であるように構成でき、単結晶CVD合成ダイヤモンドコンポーネントは、マイクロフルイディックチャネルに隣接して配置される。かかる構成例では、マイクロフルイディックチャネル及び量子センサとして働く単結晶CVD合成ダイヤモンド層を例えば図10に示されているマイクロフルイディックセル中に組み込むことができる。
【0113】
図10は、ダイヤモンドを利用したマイクロフルイディックセル100の一例を示している。マイクロフルイディックセル100は、流体サンプルを入れることができるチャネル104に隣接して位置決めされた少なくとも1つのダイヤモンドセンサ102を有する。少なくとも1つのダイヤモンドセンサ102は、上述したような選択的に配向されているNV-欠陥から成る1つ又は2つ以上の量子スピン欠陥106を有し、ダイヤモンドセンサ102は、チャネル104内に配置されたサンプル内の磁界及び/又は電界の変化を検知するようチャネル104に隣接して位置決めされている。図示の構成例は、チャネル104の互いに反対側に設けられた2つのダイヤモンド検知要素102を有する。しかしながら、マイクロフルイディックセルは、1つだけ又は変形例として複数個のダイヤモンド検知要素を含んでも良いことが想定される。
【0114】
マイクロフルイディックチャネルは、好ましくは、1mm以下、特に100nm〜1mm、オプションとして500nm〜500μmの少なくとも1つの寸法を有する。マイクロフルイディックチャネルのサイズは、或る特定の化学種に対して選択性であるように選択されるのが良い。2つ以上のチャネルが設けられるのが良い。互いに異なるチャネルは、化学種のサイズの差に基づいて互いに異なる化学種に対して選択性であるよう互いに異なるサイズを有するのが良い。
【0115】
図11は、マイクロフルイディックセル、例えば図10に示されたマイクロフルイディックセルに用いられるスピン共鳴装置110を示している。スピン共鳴装置110は、静磁場発生器(B0)、第1の可変振動磁場発生器(B1)及び第2の可変振動磁場発生器(B2)を有する。第1の可変振動磁場発生器(B1)は、好ましくは、高周波発生器であり、第2の可変振動磁場発生器(B2)は、好ましくは、マイクロ波発生器である。スピン共鳴装置は、セル受け入れベイ114の周りに設けられた磁気遮蔽体112を更に有するのが良い。一構成例では、地球の磁界は、静磁場として用いられ、かくして、追加の静磁場発生器は不要である。かかる構成例では、遮蔽体は、センサを外部振動場から遮蔽するが、静磁場に対してはそうではないように構成されているのが良い。かかる遮蔽体は、当業者には知られている。スピン共鳴装置は、セル受け入れベイ114内に設けられたダイヤモンド利用マイクロフルイディックセル中の量子スピン欠陥を励起するよう構成された光源116及びダイヤモンド利用マイクロフルイディックセル中の量子スピン欠陥からの光出力信号を検出する光学検出器118を更に有する。光源は、レーザ光源であるのが良い。光源は、マイクロフルイディックチャネルに沿う種々の位置での流体の分析を可能にするようマイクロフルイディックチャネルに沿う種々の位置で量子スピン欠陥を選択的に励起するよう構成されているのが良い。代替的に又は追加的に、検出器は、マイクロフルイディックチャネルに沿う種々の位置での流体の分析を可能にするようマイクロフルイディックチャネルに沿う種々の位置で量子スピン欠陥からの放出光を選択的に検出するよう構成されていても良い。
【0116】
別の構成例では、上述の磁場発生器に代えて電場発生器を用いても良い。NV-欠陥の電子構造は、本発明の実施形態を用いて磁場の代替手段として又はこの追加手段として電場を測定することができるようなものである。
【0117】
1つ又は2つ以上のプロセッサ120が放出光データを受け入れたり処理したりするよう検出器58に連係した状態スピン共鳴装置内に設けられるのが良い。1つ又は2つ以上のプロセッサ120は、結果を出力する出力部122に連係されるのが良い。出力部122は、スピン共鳴データを表示したりするディスプレイスクリーンを含むのが良い。1つ又は2つ以上のプロセッサ120及びディスプレイ122は、スピン共鳴装置中に組み込まれるのが良い。代替的に又は追加的に、出力部122は、データを処理したり表示したりする外部装置、例えばラップトップ型又はデスクトップ型コンピュータにデータを伝送するようになっていても良い。
【0118】
かかる装置は、図9を参照して上述したように機能することができる。ダイヤモンド材料中の1つ又は2つ以上の量子スピン欠陥のデコヒーレンス時間を長くするための高純度量子等級単結晶ダイヤモンド材料の使用に代えて又はこれに加えて、適当なパルスシーケンスを選択してこれを用いると、デコヒーレンス時間を長くすることができる。したがって、上述した装置は、デコヒーレンス時間を長くし、かくして感度を向上させるためにパルス化信号を1つ又は2つ以上の量子スピン欠陥に与えるよう構成されるのが良い。代表的なパルスシーケンスでは、π/2パルス、次にπパルス、次に別のπ/2パルスである。
【0119】
合成実施例
(001)の約5°の範囲内の1対のほぼ平行な主要面を備えた合成タイプIbHPHTダイヤモンドプレートを選択した。このプレートを以下のステップを含むプロセスによって単結晶CVDダイヤモンド材料のホモエピタキシャル合成に適した正方形基板の状態に作った。
i)全て<100>エッジを備えたプレートを作るために基板をレーザ切断する。
ii)成長が行われるべき主要な表面をラップ仕上げすると共に研磨し、ラップ仕上げされると共に研磨された部分の寸法は、約4.0mm×4.0mmであり、厚さ300μmであり、全ての面は{100}である。基板表面のところ又はその下の欠陥レベルを欧州特許第1,292,726号明細書及び同第1,290,251号明細書に開示されているように基板の注意深い前処理によって最小限に抑える。プラズマ曝露エッチングを用いることによってこの処理により導入された欠陥レベルを明らかにすることが可能である。曝露エッチング後に測定可能な欠陥密度が主として、材料品質で決まり、5×103mm2未満であり、一般的には102mm2未満である基板を作ることが日常的に可能である。この段階での表面粗さは、少なくとも50μm×50μmの測定面積全体にわたって10nm未満であった。高温ダイヤモンド材料ろう付けを用いて基板を基板キャリヤに取り付けた。次に、基板及びそのキャリヤをCVD反応器チャンバ内に導入し、ガスを以下のようにチャンバ内に送り込むことによってエッチング及び成長サイクルを開始させた。
【0120】
最初に、180トルの圧力及び840℃の基板温度で50/25/3000sccm(毎秒標準立方センチメートル)のO2/Ar/H2を用いて現場酸素プラズマエッチングを実施し、次に、水素エッチングを行い、酸素をこの段階でガス流から除去した。次に、第1段成長プロセスを160sccmのメタンの追加によって開始させた。窒素を添加して気相中に800ppbのレベルを達成した。水素がプロセスガス中にも存在した。この段階における基板温度は、857℃であった。これら成長条件を選択して先の試験に基づいて2.0±0.2範囲のαパラメータ値を与え、そして結晶学的検査によって訴求的に確認した。成長期間の終了時、基板を反応器から取り出し、CVDダイヤモンド層をレーザ鋸引き及び機械的研磨技術によって基板から取り出した。
【0121】
成長後のCVDダイヤモンドプレートの研究により明らかになったこととして、成長後のCVDダイヤモンドプレートの(001)面上には双晶及び割れがなく、かかる成長後のCVDダイヤモンドプレートは、<110>側面により境界付けられ双晶のない頂(001)面の合成後寸法は、8.7mm×8.7mmに増大した。
【0122】
次に、IbHPHTプレートの製作について上述したのと同一の技術(切断、ラップ仕上げ、研磨及びエッチング)を用いてこのブロックを加工して主要面(110)及び十分に前処理された表面を備え、寸法3.8×3.2mm、厚さ200μmのプレートを製作した。次に、合成段階中、基板温度が800℃であり、窒素をドーパントガスとして導入しなかった点を除き上述したのと同じ条件を用いてこれを取り付けて成長させた。これにより、(110)主要面を備えたCVDサンプルが製作され、CVDブロックは、典型的な寸法4.5×4.5mm、厚さ3.0mmを有していた。
【0123】
次に、この第2の成長済みCVD層を加工し、先に前処理したCVD基板から除去した。アンサンブルEPR分析の結果の示すところによれば、窒素は主として、NV欠陥としてではなくNsとしてCVDダイヤモンド中に混入された。Nsの測定濃度は、3ppbであった。
【0124】
共焦点画像を走査する際に単一NV中心を解像した。NV-配向状態を突き止めるため、9つの互いに異なる直線励起偏波について画像を得た。表面垂線を[110]と定義した場合、直線偏波は、同じステップにおいて0〜160°のばらつきがあり、偏波角0は、[001]に対応している。励起偏波依存性を用いると、互いに異なるNV-配向を区別することができる。600個を超える単一NV中心の分析結果の示すところによれば、選択的に内部成長したNV欠陥は、全てのNVsの99.7%を超える割合を占めた。これは、次の数値解析と一致している。
【0125】
選択的配向状態を定める場合、P%を以下のように定める。
上式において、nは、下に位置する格子の対称性に従う統計学的に均等な部位の個数、qは、特定の配向状態に位置した全ての欠陥の%(この場合、その配向状態は、これに沿って整列した欠陥の最も高い%を示す配向状態のサブセットのうちの1つである)、mは、好ましい配向の原因により課せられる対称性下において関連した対称性であるこのサブセット中の欠陥の個数である。かくして、分布がランダムである場合、P=0%であり、欠陥が全て、好ましい配向の原因により課せられる対称性下において関連した対称性である配向状態のサブセット中の配向状態に沿って全て整列しているときにP=100%である。
【0126】
本出願人は、選択的配向整列状態の%を計算することができ、この場合、分布の実際の対称性が今日まで行われた測定値の対称性以上であるという仮定を立てている(以下のa参照)。
a)<111>配向状態に対する選択的配向整列状態が(110)成長面から外れて位置するが、成長方向に対する+ve又は−ve方向において面外に向いた状態の(+ve又は−ve平面垂線上に解像して)区別がないと仮定すると、選択的配向整列Pは、次式によって与えられ、
⇒(110)成長面から外れて位置すると共に面外に向いた<111>配向に対する33.1%選択配向整列。
【0127】
注目すべきこととして、成長方向に対する+ve又は−ve方向において面外に向いた状態の(+ve又は−ve平面垂線上に解像して)区別があるはずがない理由に関して理論的正当化が見出されるべきであり、選択的配向整列Pは、次式によって与えられ、
⇒(110)成長面から外れて位置すると共に面外に向いた<111>配向に対する99.4%選択配向整列。
【0128】
好ましい実施形態を参照して本発明を具体的に図示すると共に説明したが、特許請求の範囲の記載に基づいて定められる本発明の範囲から逸脱することなく形態及び細部の種々の変更を行うことができることが当業者には理解されよう。
図1(a)】
図1(b)】
図2(a)】
図2(b)】
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11