(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、非水系コーティング剤に少量配合することにより、コーティング剤の泡立ちを抑制しワキ防止性を向上させ、ワキが発生しやすい条件下においても塗装膜の平滑性を損なうことなくワキの発生が抑えられ優れた美観性を示す熱硬化及び/又は熱乾燥された塗装膜が得られる非水系コーティング剤用の消泡剤、その消泡剤を配合した非水系コーティング剤、及びその非水系コーティング剤を塗装した塗装膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、様々な検討を重ねた結果、従来の塗料用の消泡剤に用いられていたモノマーと比較的極性の高いモノマーとを、共重合させることにより得られる重合物が、従来の消泡剤より高い消泡性が得られることを見出し本発明を完成させた。
【0011】
前記の目的を達成するためになされた、請求の範囲の請求項1に記載された非水系コーティング剤用の消泡剤は、N−ビニルラクタムモノマー、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートモノマー、下記化学式(I)
【化1】
(式(I)中、R
1は水素原子、又はメチル基、R
2は水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基、nは2〜3の正数を示す。)で表される(メタ)アクリレートモノマー、下記化学式(II)
【化2】
(式(II)中、R
3は水素原子、又はメチル基、R
4は水素原子、メチル基、又はエチル基、R
5はメチル基、又はエチル基を示す。)で表される(メタ)アクリルアミドモノマー、及び炭素数2〜4のアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーから選ばれる少なくとも1種類の親水性モノマーを2〜
20重量部と、炭素数8〜22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート及び/又は炭素数8〜18のアルキル基を有するビニルエーテルの疎水性モノマーの
80〜98重量部と、
(メタ)アクリル酸モノマー、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニルモノマー、炭素数1〜7の直鎖状又は環状のアルキルビニルエーテルモノマー、ビニルエステルモノマー、水酸基含有アクリル系単量体とラクトン類化合物との反応物であるラクトン変性(メタ)アクリレートモノマー、及びエーテル基含有アルキル(メタ)アクリレート類から選ばれる希釈モノマーを、前記親水性モノマーと前記疎水性モノマーとの総重量に対し、最大で30重量%とを共重合した共重合物が、含有されており、その重量平均分子量を10000〜350000とすることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の非水系コーティング剤用の消泡剤は、請求項1に記載されたものであって、前記親水性モノマーが、N−ビニル−2−ピロリドン、及びN−ビニル−ε−カプロラクタムから選ばれる少なくとも何れかの前記N−ビニルラクタムモノマー;前記化学式(I)のR
2をメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及び/又はtert−ブチル基とする前記(メタ)アクリレートモノマー;N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、及びN,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドから選ばれる少なくとも何れかの前記(メタ)アクリルアミドモノマー;及び/又は2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及び2−メチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも何れかの前記ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートモノマーであることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の非水系コーティング剤は、請求項1又は2に記載の消泡剤と、非水系コーティング成分とが、含まれていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の塗装膜は、請求項3に記載の非水系コーティング剤が塗装されて形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の消泡剤は、熱硬化型及び/又は熱乾燥型である非水系のコーティング剤に少量配合して使用することができる。この消泡剤は、非水系コーティング剤に添加することで、その非水系コーティング剤の泡立ちを抑えることができ、従来の消泡剤に比べて優れた消泡性及びワキ防止性を発現することができる。
【0016】
本発明の非水系コーティング剤は、泡立ちが抑えられたものであって、熱硬化及び/又は熱乾燥されることで、平滑性に優れた被膜を形成することができる。この非水系コーティング剤を基材に塗装し、熱硬化及び/又は熱乾燥した際に、ワキが発生しやすい厚膜部分においてもワキの発生を抑えることができるため、ワキの無い平滑性に優れた塗装膜を得ることができる。また、この非水系コーティング剤を基材に塗装して形成した塗装膜の上からさらに、同種又は異種のコーティング剤を塗装することができ、それらの層間の密着性に差異を生じることなく塗装膜を形成することができる。
【0017】
本発明の塗装膜は、その表面がワキの無い平滑性に優れたものであり、塗膜表面の美観を向上させことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0019】
本発明の消泡剤は、N−ビニル−2−ピロリドンのようなN−ビニルラクタムモノマー(A1)、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートモノマー(A2)、下記化学式(I)
【化1】
(式(I)中、R
1は水素原子、又はメチル基、R
2は水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基、nは2〜3の正数を示す。)で表される(メタ)アクリレートモノマー(A3)、下記化学式(II)
【化2】
(式(II)中、R
3は水素原子、又はメチル基、R
4は水素原子、メチル基、又はエチル基、R
5はメチル基、又はエチル基を示す。)で表される(メタ)アクリルアミドモノマー(A4)、及び炭素数2〜4のアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー(A5)から選ばれる少なくとも1種類以上の親水性モノマーと、炭素数8〜22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B1)及び/又は炭素数8〜18のアルキル基を有するビニルエーテル(B2)の疎水性モノマーとを、2〜40重量部:60〜98重量部、好ましくは2〜20重量部:80〜98重量部の重量比で、共重合した共重合物を、含有するものである。この消泡剤は、熱硬化型及び/又は熱乾燥型である非水系コーティング剤に少量配合されて使用される。
【0020】
その共重合物中において、親水性モノマー(A1〜A5)の含有量が2〜20重量部であれば、塗料中で適度に不相溶を保ちつつ、かつ、従来の塗料用の消泡剤に用いられていた疎水性モノマー(B1、B2など)と、比較的極性の高い親水性モノマー(A1〜A5)とを共重合させることで両親媒性の構造をとる為、ポリマー分子の自己分散性が向上し、塗料中でポリマーの凝集体である消泡剤粒子が従来の消泡剤より小さく分散される。よって、泡の界面への接触頻度や吸着する面積が増加し、泡の合一や、最表層での破泡がますます促され、消泡性やワキ防止性の効果が優れるものと推察する。一方、その含有量が2重量部未満であると、例えばN−ビニルラクタム構造、テトラヒドロフルフリル構造、前記化学式(I)で表される構造、前記化学式(II)で表される構造、及び/又はヒドロキシアルキル構造を非含有である共重合物を含む消泡剤と比較して、両親媒性の構造による効果が十分に発揮しない為、消泡性やワキ防止性の効果は従来の消泡剤と同等程度にとどまる。また、その含有量が20重量部を超えると、共重合物の極性が高くなることで、塗料と相溶性が高くなり、消泡性やワキ防止性が発現しないばかりか悪化することもある。親水性モノマー(A1〜A5)の含有量は、4〜10重量部であると一層好ましい。
【0021】
また、その共重合物中において、疎水性モノマー(B1〜B2)の含有量は、80重量部未満であると、前記の理由と同様に消泡性やワキ防止性が十分に得られないことがある。一方、98重量部を超えると、前記の理由と同様に従来の技術からなる、例えばN−ビニルラクタム構造、テトラヒドロフルフリル構造、前記化学式(I)で表される構造、前記化学式(II)で表される構造、及び/又はヒドロキシアルキル構造を非含有である共重合物を含む消泡剤と同様に、消泡性やワキ防止性の効果の改善を得ることができない。疎水性モノマー(B1〜B2)の含有量は、90〜96重量部であると一層好ましい。
【0022】
これらモノマーを共重合した共重合物の重量平均分子量は、10000〜350000である。その重量平均分子量が10000未満であると、十分なワキ防止性が得られない。一方、350000を超えると、コーティング剤に添加される際に、コーティング剤中の樹脂との相溶性が悪くなり過ぎてしまい、コーティング剤が濁ったり、コーティング剤を塗装した後の塗装膜表面に、凹みが生じたりする。共重合物の重量平均分子量は、20000〜200000であると好ましい。
【0023】
前記化学式(1)で表される(メタ)アクリレートモノマー(A3)は、その式中のR
2が水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基である。その炭素数1〜4のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。これらは夫々単独で用いてもよく、併用して用いてもよい。
【0024】
前記化学式(II)で表される(メタ)アクリルアミドモノマー(A4)は、具体的には、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。これらは夫々単独で用いてもよく、併用して用いてもよい。
【0025】
炭素数2〜4のアルキル基を有するヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートモノマー(A5)は、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは夫々単独で用いてもよく、併用して用いてもよい。
【0026】
炭素数8〜22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B1)は、炭素数8〜22のアルキル基を有するアルキルアクリレート、又は炭素数8〜22のアルキル基を有するアルキルメタクリレートである。炭素数8〜22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B1)としては、例えば、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、イソウンデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、イソヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソオクタデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0027】
炭素数8〜18のアルキル基を有するビニルエーテル(B2)としては、例えば、n−オクチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、イソノニルビニルエーテル、イソデシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ヘキサデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0028】
この共重合物は、前記親水性モノマー(A1〜A5)と、前記疎水性モノマー(B1〜B2)との他に、これらと共重合可能な希釈モノマー(C)が含有され、共重合されていてもよい。
【0029】
希釈モノマー(C)は、その種類に特に制限はなく、本発明の消泡剤の消泡性及びワキ防止性を阻害しない範囲で共重合させることができる。具体的な希釈モノマー(C)の含有量は、前記親水性モノマー(A1〜A5)と、前記疎水性モノマー(B1〜B2)との総重量に対し、30重量%以内であると好ましい。
【0030】
希釈モノマー(C)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸のような(メタ)アクリル酸モノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソヘプチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリレートモノマー;(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリンのような(メタ)アクリルアミド類;スチレン、ビニルトルエンのような芳香族ビニルモノマー;n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルのような炭素数1〜7直鎖状、又は環状のアルキルビニルエー
テルモノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニルのようなビニルエステルモノマー;水酸基含有アクリル系単量体と、β−プロピオラクトン、ジメチルプロピオラクトン、ブチルラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプリロラクトン、γ−ラウリロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−カプロラクトンなどのラクトン類化合物との反応物など、例えば、ダイセル化学社製、カプロラクトン変性メタクリル酸ヒドロキシエステル類である商品名プラクセルFM5、プラクセルFM2D、プラクセルFM3、プラクセルF1DDM、プラクセルFA2D、プラクセルFA10Lなどのラクトン変性(メタ)アクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール(エチレングリコールの重合数4〜100のもの)エステル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの重合数1〜100のもの)エステル、(メタ)アクリル酸ポリ(エチレン−プロピレン)グリコール(エチレングリコール−プロピレングリコールの重合数1〜100のもの)エステル、(メタ)アクリル酸ポリ(エチレン−テトラメチレン)グリコール(エチレングリコール−テトラメチレングリコールの重合数2〜100のもの)エステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール(エチレングリコールの重合数4〜100のもの)エステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの重合数1〜100のもの)エステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリ(エチレン−プロピレン)グリコール(エチレングリコール−プロピレングリコールの重合数1〜100のもの)エステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリ(エチレン−テトラメチレン)グリコール(エチレングリコール−テトラメチレングリコールの重合数1〜100のもの)エステル、(メタ)アクリル酸ブトキシポリ(エチレン−プロピレン)グリコール(エチレングリコール−プロピレングリコールの重合数1〜100のもの)エステル、(メタ)アクリル酸オクトキシポリ(エチレン−プロピレン)グリコール(エチレングリコール−プロピレングリコールの重合数1〜100のもの)エステル、(メタ)アクリル酸ラウロキシポリエチレングリコール(エチレングリコールの重合数1〜100のもの)エステル、(メタ)アクリル酸ステアロキシポリエチレングリコール(エチレングリコールの重合数1〜100のもの)エステル、(メタ)アクリル酸フェノキシポリエチレングリコール(エチレングリコールの重合数1〜100のもの)エステルなどのようなエーテル基含有アルキル(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0031】
本発明の消泡剤は、これらの共重合物のみからなるものであってもよく、これらの共重合物を不活性溶媒で溶解又は懸濁させたものであってもよい。
【0032】
不活性溶媒は、この共重合物を溶解又は懸濁させることができるもので、コーティング剤に混和できるものであると好ましい。不活性溶媒としては、具体的に、キシレン、トルエン、シクロヘキサンのような炭化水素系溶媒、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンのようなケトン系溶媒、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテルのようなエーテル系溶媒、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテートのようなエステル系溶媒、n−ブチルアルコール、セカンダリーブチルアルコール、イソブチルアルコール、シクロヘキサノール、2−エチルヘキサノール、3−メチル−3−メトキシブタノールのようなアルコール系溶媒が挙げられる。これらの不活性溶媒は、単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0033】
本発明の消泡剤の一調製例について以下に示す。
【0034】
N−ビニルラクタムモノマー(A1)、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートモノマー(A2)、前記化学式(I)で表される(メタ)アクリレートモノマー(A3)、前記化学式(II)で表される(メタ)アクリルアミドモノマー(A4)、及び炭素数2〜4のアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー(A5)から選ばれる少なくとも1種類以上の親水性モノマーと、炭素数8〜22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B1)及び/又は炭素数8〜18のアルキル基を有するビニルエーテル(B2)の疎水性モノマーと、必要に応じて希釈モノマー(C)とを混合し、重合開始剤、さらに必要に応じて連鎖移動剤の存在下において、溶媒中で、これらのモノマーを重合して、共重合物を合成し、消泡剤を得る。さらに必要に応じて、得られた共重合物と不活性溶媒とを混合することで、共重合物が不活性溶媒中に溶解又は懸濁した消泡剤を調製することができる。
【0035】
この共重合物は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、グラフト共重合体であってもよい。
【0036】
重合方法としては、例えば、ラジカル共重合、アニオン共重合が挙げられる。
【0037】
重合反応で用いられる溶媒は、合成後の共重合物を溶解又は懸濁させる前記不活性溶媒で例示したものと同じものを挙げることができ、これらの溶媒から適宜選択し、使用することができる。
【0038】
重合反応に用いられる重合開始剤は、使用する重合反応の種類に応じて適宜選択される。ラジカル重合開始剤としては、例えば、tert−ブチルパーオキシ−2エチルヘキサノエートが挙げられる。
【0039】
得られた消泡剤は、熱硬化及び/又は熱乾燥により被膜を形成する非水系コーティング成分に少量配合されることで、泡立ちを抑制した非水系コーティング剤となる。本発明の消泡剤が配合された非水系コーティング剤は、消泡性やワキ防止性を発現すると共に、場合により、レベリング性やハジキ防止性や基材への湿潤性を向上させることができる。また、その非水系コーティング剤を基材上に塗装して硬化や乾燥させた塗装膜の上から同種又は異種のコーティング剤をさらに塗装して硬化や乾燥させた場合、消泡剤の有無によって層間の密着性に差異が生じることはない。
【0040】
本発明の非水系コーティング剤は、消泡剤と非水系コーティング成分とが配合されており、熱硬化及び/又は熱乾燥により被膜を形成することができるものである。この非水系コーティング剤は、その成分中に含まれる樹脂が熱処理により架橋反応して硬化するものを熱硬化型、またその成分に含まれる溶剤を熱処理により乾燥させるものを熱乾燥型とする。非水系コーティング剤は、含有される樹脂を架橋反応させて硬化させることで被膜を形成するものであってもよく、含有される溶剤を乾燥させることで被膜を形成するものであってもよく、溶剤を乾燥させるとともに樹脂を架橋反応させ硬化させることで被膜を形成するものであってもよい。
【0041】
この非水系コーティング剤は、消泡剤と非水系コーティング成分とを同時に又は任意の順で混合することで、調製することができる。例えば、予め混合された非水系コーティング成分に、消泡剤を配合し、混練することで非水系コーティング剤を得ることができる。
【0042】
この非水系コーティング剤中、前記消泡剤は、非水系コーティング剤全量に対する固形分換算値で、0.01〜5重量%配合されていると好ましく、0.05〜1重量%配合されているとより好ましい。
【0043】
非水系コーティング成分は、特に限定されないが、例えば、顔料や染料のような着色剤、樹脂、希釈溶媒、触媒、界面活性剤が挙げられる。また、必要に応じて、増感剤、帯電防止剤、レベリング剤、基材湿潤剤、ハジキ防止剤、分散剤、粘度調整剤が、この非水系コーティング剤に配合されていてもよい。
【0044】
非水系コーティング成分中に、高温にすることで架橋反応が促進して硬化膜を形成する樹脂を含有することで熱硬化型の非水系コーティング剤を得ることができる。この樹脂成分としては、一般的な塗料に用いられているアクリルメラミン硬化塗料、ポリエステルメラミン硬化塗料、酸エポキシ硬化塗料、水酸基とイソシアネートとの反応によるアクリルウレタンやポリエステルウレタン硬化塗料のような熱硬化性樹脂を含んでいるものであれば何れのものでもよい。また、非水系コーティング成分中に、例えば、ニトロセルロースラッカーやアクリルラッカーを含有することで、熱処理により溶剤を乾燥させることで被膜を形成する熱乾燥型の非水系コーティング剤を得ることができる。
【0045】
非水系コーティング成分である希釈溶媒は、一般的に用いられる有機溶媒であれば、特に限定されない。希釈溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン、シクロヘキサンのような炭化水素系溶媒;シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンのようなケトン系溶媒;メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテルのようなエーテル系溶媒;酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテートのようなエステル系溶媒;n−ブチルアルコール、セカンダリーブチルアルコール、イソブチルアルコール、シクロヘキサノール、2−エチルヘキサノール、3−メチル−3−メトキシブタノールのようなアルコール系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、複数を混合して用いてもよく、さらに水と混合して用いてもよい。
【0046】
熱硬化型及び/又は熱乾燥型である非水系コーティング剤は、基材上に塗装され熱硬化及び/又は熱乾燥されることで、塗装膜を形成する。
【0047】
この非水系コーティング剤の焼付温度は、樹脂成分を架橋させられればよく、特に制限されない。一般的に架橋反応を伴うものであれば120〜280℃であると好ましい。非水系コーティング剤の乾燥温度は、溶剤を乾燥させられればよく、特に制限されない。溶剤を乾燥させるだけで被膜を形成する場合は、60〜120℃といった比較的低い温度で行うことができる。
【0048】
非水系コーティング剤の塗装方法は、例えば、スピンコート、スリットコート、スプレーコート、ディップコート、バーコート、ドクターブレード、ロールコート、フローコートが挙げられる。
【0049】
本発明の塗装膜は、消泡剤を含有する非水系コーティング剤が基材上で硬化又は乾燥した平滑な表面を有する被膜である。
【0050】
基材としては、特に限定されないが、例えば、プラスチック、ゴム、紙、木材、ガラス、金属、石材、セメント材、モルタル材、セラミックスの素材で形成されたもので、家電製品や自動車の外装材、日用品、建材が挙げられる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
本発明の消泡剤を調製した例を調製例1〜10に示し、本発明の適用外の消泡剤を調製した例を比較調製例1〜9に示す。
【0053】
(調製例1)
撹拌装置、還流冷却管、滴下ロート、温度計及び窒素ガス吹き込み口を備えた1000mLの反応容器に、シクロヘキサノンを100重量部加えて、窒素ガス雰囲気下で110℃に昇温した。シクロヘキサノンの温度を110℃に維持し、下記表1に示す滴下溶液(a−1)を滴下ロートにより2時間で等速滴下して、モノマー溶液を調製した。滴下終了後、モノマー溶液を120℃まで昇温させ、2時間反応させて共重合物を合成した。その後、それの残分が30%となるようにシクロヘキサノンで希釈し、非水系コーティング剤用の消泡剤を得た。異なる分子量の分子を分離できるゲル浸透クロマトグラフィー(カラムは東ソー株式会社製で製品名TSKGEL SUPERMULTIPORE HZ−M、溶出溶媒はTHF、以下同様)で、この消泡剤中の共重合物を分子量ごとに溶出し、分子量分布を求めた。予め分子量既知のポリスチレン標準物質から校正曲線を得ておき、この消泡剤中の共重合物の分子量分布と比較して、共重合物の重量平均分子量を求めた。その結果、この消泡剤中の共重合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で100000であった。
【0054】
(調製例2)
調製例1中の滴下溶液を(а−2)に変更したこと以外は、調製例1と同様の方法で、非水系コーティング剤用の消泡剤を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーで求めたこの消泡剤中の共重合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で50000であった。
【0055】
(調製例3)
調製例1中の滴下溶液を(а−3)に変更し、滴下温度を90℃に変更したこと以外は、調製例1と同様の方法で、非水系コーティング剤用の消泡剤を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーで求めたこの消泡剤中の共重合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で200000であった。
【0056】
(調製例4)
調製例1中の滴下溶液を(а−4)に変更し、滴下温度を120℃に変更したこと以外は、調製例1と同様の方法で、非水系コーティング剤用の消泡剤を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーで求めたこの消泡剤中の共重合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で60000であった。
【0057】
(調製例5)
調製例1中の滴下溶液を(а−5)に変更し、滴下温度を120℃に変更したこと以外は、調製例1と同様の方法で、非水系コーティング剤用の消泡剤を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーで求めたこの消泡剤中の共重合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で60000であった。
【0058】
(調製例6)
調製例1中の滴下溶液を(а−6)に変更したこと以外は、調製例1と同様の方法で、非水系コーティング剤用の消泡剤を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーで求めたこの泡剤中の共重合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で100000であった。
【0059】
(調整例7)
調製例1中の滴下溶液を(а−7)に変更したこと以外は、調製例1と同様の方法で、非水系コーティング剤用の消泡剤を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーで求めたこの泡剤中の共重合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で100000であった。
【0060】
(調整例8)
調製例1中の滴下溶液を(а−8)に変更したこと以外は、調製例1と同様の方法で、非水系コーティング剤用の消泡剤を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーで求めたこの消泡剤中の共重合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で50000であった。
【0061】
(調整例9)
調製例1中の滴下溶液を(а−9)に変更したこと以外は、調製例1と同様の方法で、非水系コーティング剤用の消泡剤を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーで求めたこの泡剤中の共重合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で100000であった。
【0062】
(調整例10)
調製例1中の滴下溶液を(а−10)に変更したこと以外は、調製例1と同様の方法で、非水系コーティング剤用の消泡剤を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーで求めたこの泡剤中の共重合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で100000であった。
【0063】
(比較調製例1)
調製例1中の滴下溶液を(b−1)に変更したこと以外は、調製例1と同様の方法で、非水系コーティング剤用の消泡剤を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーで求めたこの消泡剤中の共重合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で100000であった。
【0064】
(比較調製例2)
調製例1中の滴下溶液を(b−2)に変更したこと以外は、調製例1と同様の方法で、非水系コーティング剤用の消泡剤を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーで求めたこの消泡剤中の共重合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で100000であった。
【0065】
(比較調製例3)
調製例1中の滴下溶液を(b−3)に変更し、滴下温度を100℃に変更したこと以外は、調製例1と同様の方法で、非水系コーティング剤用の消泡剤を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーで求めたこの消泡剤中の共重合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で150000であった。
【0066】
(比較調製例4)
調製例1中の滴下溶液を(b−4)に変更したこと以外は、調製例1と同様の方法で、非水系コーティング剤用の消泡剤を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーで求めたこの消泡剤中の共重合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で100000であった。
【0067】
(比較調製例5)
調製例1中の滴下溶液を(b−5)に変更したこと以外は、調製例1と同様の方法で、非水系コーティング剤用の消泡剤を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーで求めたこの消泡剤中の共重合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で50000であった。
【0068】
(比較調製例6)
調製例1中の滴下溶液を(b−6)に変更し、滴下温度を90℃に変更したこと以外は、調製例1と同様の方法で、非水系コーティング剤用の消泡剤を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーで求めたこの消泡剤中の共重合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で380000であった。
【0069】
(比較調製例7)
調製例1中の滴下溶液を(b−7)に変更し、滴下温度を125℃に変更したこと以外は、調製例1と同様の方法で、非水系コーティング剤用の消泡剤を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーで求めたこの消泡剤中の共重合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で8000であった。
【0070】
(比較調製例8)
調製例1中の滴下溶液を(b−8)に変更したこと以外は、調製例1と同様の方法で、非水系コーティング剤用の消泡剤を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーで求めたこの消泡剤中の共重合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で100000であった。
【0071】
(比較調製例9)
調製例1中の滴下溶液を(b−9)に変更したこと以外は、調製例1と同様の方法で、非水系コーティング剤用の消泡剤を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーで求めたこの消泡剤中の共重合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で50000であった。
【0072】
調製例1〜10の滴下溶液における各成分の配合量を表1、比較調整例1〜9の滴下溶液における各成分の配合量を表2に示す。表中、数値の単位は重量部とする。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
調製例1〜10の消泡剤を用いて本発明を適用する非水系コーティング剤と塗装膜とを調製した例を実施例1〜10に示し、比較調製例1〜9の消泡剤を用いて本発明を適用外のコーティング剤と塗装膜とを調製した例を比較例1〜9に示す。
【0076】
(実施例1)
アクリル樹脂のアクリディックA−345(DIC株式会社の製品名;アクリディックはDIC株式会社の登録商標)の56重量部と、メラミン樹脂のスーパーベッカミンL−117−60(DIC株式会社の製品名;スーパーベッカミンはDIC株式会社の登録商標)の14重量部と、トルエン及びn−ブチルアルコールを4:1体積比で混合したシンナーの30重量部とを、ラボディスパーを用いて2000rpmで30分間混練し、アクリルメラミン硬化クリヤー塗料を調製した。
このアクリルメラミン硬化クリヤー塗料の25℃での粘度は、JIS K−5400−4.5.4に準じ、フォードカップNo.4法により測定した。この測定方法は、一定のカップに、一定量の試料を満たし、一定の口径を持つ穴から流下させ、その流下時間を測定することによって、試料の流動性を評価するものである。このアクリルメラミン硬化クリヤー塗料の流下時間は約18秒であった。
このアクリルメラミン硬化クリヤー塗料と調製例1の消泡剤1.0重量部とを、ラボディスパーを用いて1500rpmで3分間混練し、非水系コーティング剤であるアクリルメラミンコーティング剤を調製した。
【0077】
(実施例2〜10、比較例1〜9)
実施例1中の消泡剤を、調製例2〜10又は比較調製例1〜9の消泡剤に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例2〜10及び比較例1〜9のアクリルメラミンコーティング剤を調製した。
実施例1〜10及び比較例1〜9で得られたアクリルメラミンコーティング剤について、以下の消泡性試験、ワキ防止性試験、膜外観評価試験の各理化学試験を行った。
【0078】
(消泡性試験)
消泡性試験は、半日静置させた消泡剤無添加アクリルメラミン硬化クリヤー塗料を、25mLハーバード型比重瓶に流し込み、それを満たす塗料の重量を測定した。
実施例1〜6及び比較例1〜7で調製した各コーティング剤を、1分間静置後に一部を25mLハーバード型比重瓶に流し込み、それを満たすコーティング剤の重量を測定した。
混練前の重量を100%としたとき、混練後の重量の比を百分率で示すことにより、消泡性を評価した。消泡性が悪いと気泡を巻き込み、重量比が小さくなる。その結果が98%以上の場合を○、94%以上〜98%未満の場合は△、94%未満の場合を×とする3段階で評価した。
【0079】
(ワキ防止性試験)
実施例1〜10及び比較例1〜9で調製した各コーティング剤を、口径1.0mmで吐出圧3.5kg/cm
2のエアスプレーにより、温度25℃、湿度70%の条件下、280cm×95cm×0.3mmのアルミ板に、厚さが段階的に変わるように傾斜吹き付け塗装した。塗装後、直ちに140℃熱風循環式焼付炉内にて20分焼付けると、ワキ評価用硬化塗装膜が形成された。
この硬化塗装膜について磁気誘導式膜厚計(株式会社サンコウ電子研究所;SWT−8000)を用いてワキが発生する最小の膜厚、すなわちワキ限界膜厚を計測し、コーティング剤用の消泡剤の効果を評価するというものである。ワキ限界膜厚が40μm以上の場合を○、30μm以上〜40μm未満の場合を△、30μm未満の場合を×とする3段階で評価した。
【0080】
(膜外観評価試験)
膜外観評価試験は、ワキ防止性試験で得られた実施例1〜10及び比較例1〜9の硬化塗装膜の外観を目視で観察して評価するというものである。膜外観に凹みがなく平滑である場合を○、凹みがあり平滑性に乏しい場合を×とする2段階で評価した。
【0081】
実施例1〜10及び比較例1〜9の各評価試験により得られた結果を表3に示す。
【0082】
【表3】
【0083】
表3から明らかなとおり、実施例1〜10の非水系コーティング剤は、各試験項目とも優れていたが、比較例1〜9のコーティング剤は、何れかの項目が実施例1〜10の非水系コーティング剤に比べ不十分であった。