【文献】
Il-Yong Park et al.,BD180 - a new 0.18 μm BCD (Bipolar-CMOS-DMOS) Technology from 7V to 60V,Power Semiconductor Devices and IC's,2008年 5月18日,pp.64-pp.67
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3領域よりも低い不純物濃度を有し、かつ前記第4領域とpn接合を構成するように前記第3および第4領域の下に形成された第2導電型の第5領域をさらに備えた、請求項1に記載の半導体装置。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】アナログ・デジタル混載チップの構成を概略的に示す平面図である。
【
図2】本発明の実施の形態1における半導体装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図2に示したSTI構造の溝の断面形状を説明するための溝の拡大断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の第1工程を概略的に示す断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の第2工程を概略的に示す断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の第3工程を概略的に示す断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の第4工程を概略的に示す断面図である。
【
図8】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の第5工程を概略的に示す断面図である。
【
図9】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の第6工程を概略的に示す断面図である。
【
図10】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の第7工程を概略的に示す断面図である。
【
図11】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の第8工程を概略的に示す断面図である。
【
図12】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の第9工程を概略的に示す断面図である。
【
図13】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の第10工程を概略的に示す断面図である。
【
図14】STI構造の溝の側壁に角部を有しない比較例の半導体装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図15】OLT試験の下での時間の経過によるドレイン電流Idsの変動の結果を示す図である。
【
図16】OLTストレス条件下での比較例の電子電流密度分布図(A)および
図2に示す構成の階段型の電子電流密度分布図(B)である。
【
図17】OLTストレス条件下での比較例のインパクトイオン化率分布図(A)および
図2に示す構成の階段型のインパクトイオン化率分布図(B)である。
【
図18】OLTストレス条件下での比較例および
図2に示す構成(階段型)の各々の
図17の点P1と点P2との間の半導体基板の界面に沿ったインパクトイオン化率分布を示す図である。
【
図19】STI構造のエッジ部に電荷をおいた場合のゲート電圧Vgとドレイン電流IdsとのVg−Id特性を示す図である。
【
図20】STI構造のエッジ部におく電荷を変えた場合のオン状態(Vg=3.3V、Vd=0.1V)での電流経路を比較した図である。
【
図21】本発明の実施の形態2における半導体装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図22】本発明の実施の形態2における半導体装置の製造方法の第1工程を概略的に示す断面図である。
【
図23】本発明の実施の形態2における半導体装置の製造方法の第2工程を概略的に示す断面図である。
【
図24】OLTストレス条件下での比較例の電子電流密度分布図(A)および実施の形態2の階段型の電子電流密度分布図(B)である。
【
図25】OLTストレス条件下での比較例のインパクトイオン化率分布図(A)および実施の形態2の階段型のインパクトイオン化率分布図(B)である。
【
図26】OLTストレス条件下での比較例および
図21に示す構成(階段型)の各々の
図25の点P3と点P4との間の半導体基板の界面に沿ったインパクトイオン化率分布を示す図である。
【
図27】本発明の実施の形態3における半導体装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図28】本発明の実施の形態3における半導体装置の製造方法の第1工程を概略的に示す断面図である。
【
図29】本発明の実施の形態3における半導体装置の製造方法の第2工程を概略的に示す断面図である。
【
図30】OLTストレス条件下での従来型の電子電流密度分布図(A)および実施の形態3の階段型の電子電流密度分布図(B)である。
【
図31】OLTストレス条件下での比較例のインパクトイオン化率分布図(A)および実施の形態3の階段型のインパクトイオン化率分布図(B)である。
【
図32】OLTストレス条件下での比較例および
図27に示す構成(階段型)の各々の
図31の点P5と点P6との間の半導体基板の界面に沿ったインパクトイオン化率分布を示す図である。
【
図33】本発明の実施の形態4における半導体装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図34】本発明の実施の形態5における半導体装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図35】STI構造の溝のソース側の側壁に角部を設けた場合であって、その角部の位置を変えた場合のドレイン電流の変動の様子を示す図である。
【
図36】OLTストレス条件下でのX2が40%の電子電流密度分布図(A)、X2が120%の電子電流密度分布図(B)、およびX2が200%の電子電流密度分布図(C)である。
【
図37】X2を40%、120%および200%とした場合におけるOLTストレス条件下での
図36の点P1と点P2との間の半導体基板の界面に沿った電子電流を示す図である。
【
図38】OLTストレス条件下でのX2が40%の電界強度分布図(A)、X2が120%の電界強度分布図(B)、およびX2が200%の電界強度分布図(C)である。
【
図39】X2を40%、120%および200%とした場合におけるOLTストレス条件下での
図38の点P1と点P2との間の半導体基板の界面に沿った電界強度を示す図である。
【
図40】OLTストレス条件下でのX2が40%のインパクトイオン化率分布図(A)、X2が120%のインパクトイオン化率分布図(B)、およびX2が200%のインパクトイオン化率分布図(C)である。
【
図41】X2を40%、120%および200%とした場合におけるOLTストレス条件下での
図40の点P1と点P2との間の半導体基板の界面に沿ったインパクトイオン化率を示す図である。
【
図42】本発明の実施の形態7における半導体装置の構成であって、平面視において角部が溝の一部に形成された構成を概略的に示す平面図である。
【
図44】本発明の実施の形態7における半導体装置の構成であって、平面視において角部が溝の全体に形成された構成を概略的に示す平面図である。
【
図45】RESURF型のMOSトランジスタにおいてSTI構造の溝のソース側の側壁に傾斜部が設けられた構成を示す概略断面図である。
【
図46】RESURF型のMOSトランジスタにおいてSTI構造の溝のドレイン側の側壁に傾斜部が設けられた構成を示す概略断面図である。
【
図47】RESURF型のMOSトランジスタにおいてSTI構造の溝のソース側およびドレイン側の双方の側壁に傾斜部が設けられた構成を示す概略断面図である。
【
図48】非RESURF型のMOSトランジスタにおいてSTI構造の溝のソース側およびドレイン側の双方の側壁に傾斜部が設けられた構成を示す概略断面図である。
【
図49】STI構造下の半導体領域を通してSTI構造の一方側から他方側へ電流を流す素子においてSTI構造の溝の両側壁に傾斜部が設けられた構成を示す概略断面図である。
【
図50】
図45〜
図49に示したSTI構造の溝の断面形状を説明するための溝の拡大断面図である。
【
図51】OLTストレス条件下での比較例の電子電流密度分布図(A)および
図45に示す傾斜型の構成の電子電流密度分布図(B)である。
【
図52】OLTストレス条件下での比較例のインパクトイオン化率分布図(A)および
図45に示す傾斜型の構成のインパクトイオン化率分布図(B)である。
【
図53】OLTストレス条件下での比較例および
図45に示す構成(傾斜型)の各々の
図52に示す点P11と点P12との間の半導体基板の界面に沿うインパクトイオン化率分布を示す図である。
【
図54】OLTストレス条件下での比較例の電子電流密度分布図(A)および
図46に示す傾斜型の構成の電子電流密度分布図(B)である。
【
図55】OLTストレス条件下での比較例のインパクトイオン化率分布図(A)および
図46に示す傾斜型の構成のインパクトイオン化率分布図(B)である。
【
図56】OLTストレス条件下での比較例および
図46に示す構成(傾斜型)の各々の
図55に示す点P13と点P14との間の半導体基板の界面に沿うインパクトイオン化率分布を示す図である。
【
図57】STI構造の側壁が階段形状を有し、かつその側壁に角部が複数ある構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
まず実施の形態1における半導体装置の構成について
図1および
図2を用いて説明する。
【0013】
図1を参照して、アナログ・デジタル混載チップCHは、たとえばアナログ素子形成領域ANと、ロジック素子形成領域LOと、メモリー素子形成領域NVMと、パワー素子形成領域PWとを有している。アナログ素子形成領域ANには、たとえば抵抗などのアナログデバイスが形成されており、ロジック素子形成領域LOには、たとえばCMOS(Complementary MOS)トランジスタなどが形成されている。メモリー素子形成領域NVMには、たとえばスタックゲート型の不揮発性メモリなどが形成されており、パワー素子形成領域PWには、たとえばLDMOSトランジスタなどが形成されている。
【0014】
図2を参照して、上記のLDMOSトランジスタは、半導体基板SUBと、n
+ソース領域(第1領域)SOと、n
+ドレイン領域(第2領域)DRと、p型ウエル領域(第3領域)WLと、n型ドリフト領域(第4領域)DRIと、p
-エピタキシャル領域(第5領域)EPと、ゲート電極層GEと、STI構造TR、BIとを主に有している。
【0015】
半導体基板SUBはたとえばシリコンよりなっており、主表面に溝TRを有している。この溝TR内には埋め込み絶縁膜BIが形成されている。この溝TRと埋め込み絶縁膜BIとによりSTI構造が構成されている。このSTI構造を構成する溝TRは、底部BTと、互いに対向する一方壁部FSおよび他方壁部SSとを有している。
【0016】
n
+ソース領域SOは、溝TRに対してその溝TRの一方壁部FS側に位置する半導体基板SUBの主表面に形成されている。このn
+ソース領域SOと隣接するように半導体基板SUBの主表面にはp
+ボディコンタクト領域IRが形成されている。p型ウエル領域WLは、n
+ソース領域SOおよびp
+ボディコンタクト領域IRの下に位置し、かつn
+ソース領域SOと溝TRとの間に挟まれる半導体基板SUBの主表面の一部に位置するように形成されている。このp型ウエル領域WLは、p
+ボディコンタクト領域IRよりも低いp型不純物濃度を有しており、かつn
+ソース領域SOとpn接合を構成している。
【0017】
n
+ドレイン領域DRは、溝TRに対してその溝TRの他方壁部SS側に位置する半導体基板SUBの主表面に形成されている。n型ドリフト領域DRIは、n
+ドレイン領域DRおよび溝TRの下に位置し、かつ溝TRとn
+ソース領域SOとの間に挟まれる半導体基板SUBの主表面の一部に位置するように半導体基板SUBに形成されている。このn型ドリフト領域DRIは、n
+ドレイン領域DRよりも低いn型不純物濃度を有している。このn型ドリフト領域DRIは、p型ウエル領域WLの横に隣接して形成されており、かつp型ウエル領域WLとpn接合を構成している。
【0018】
p
-エピタキシャル領域EPは、n型ドリフト領域DRIとp型ウエル領域WLとの双方の下に位置するように半導体基板SUBに形成されている。このp
-エピタキシャル領域EPは、n型ドリフト領域DRIとp型ウエル領域WLとの双方に接して形成されている。このp
-エピタキシャル領域EPはn型ドリフト領域DRIとpn接合を構成しており、そのpn接合の一部は半導体基板SUBの主表面に沿う面内(主表面にほぼ平行な面内)に位置している。p
-エピタキシャル領域EPは、p型ウエル領域WLよりも低いp型不純物濃度を有している。
【0019】
ゲート電極層GEは、半導体基板SUBの主表面に位置するp型ウエル領域WL上およびn型ドリフト領域DRI上にゲート絶縁膜GIを介在して形成されている。またゲート電極層GEは、そのドレイン側の端部が埋め込み絶縁膜BI上に乗り上げるように形成されており、これによりゲート電極層GEを用いたフィールドプレート効果を得ることができる。
【0020】
n
+ソース領域SOおよびp
+ボディコンタクト領域IRの双方に電気的に接続するようにソース導電層SCLが半導体基板SUBの主表面上に形成されている。またn
+ドレイン領域DRに電気的に接続するようにドレイン導電層DCLが半導体基板SUBの主表面上に形成されている。
【0021】
本実施の形態においては、STI構造を構成する溝TRの一方壁部FSおよび他方壁部SSの少なくともいずれかの壁部に角部が形成されている。この角部は、本実施の形態ではたとえば溝TRのソース側の一方壁部FSに形成されている。具体的には、溝TRの一方壁部FSにたとえば凸状の角部CP1Aと凹状の角部CP2Aが形成され、これにより一方壁部FSは断面視において階段形状を有している。
【0022】
この2つの角部CP1A、CP2Aは、半導体基板SUBの主表面に位置する溝TRの上側部分UP1と底部BTとの間に位置している。また本実施の形態における溝TRの上側部分UP1と底部BTとの間に位置する角部には、溝TRの底部BTと一方壁部FSとの交差部に生じるエッジ部ED1は含まれない。
【0023】
上記の角部は、
図2の断面視において直角形状であってもよく、鈍角形状であってもよく、また鋭角形状であってもよい。
【0024】
次に、溝TRの一方壁部FSの階段形状について
図3を用いて説明する。
図3を参照して、溝TRの一方壁部FSの上側部分UP1から底部BTまでの深さ方向(厚み方向)の寸法をS1とし、割合(%)をX2、Y2としたとき、角部CP1Aは溝TRの底部BTからS1×Y2だけ浅い位置(半導体基板SUBの主表面に近い位置)に位置している。また一方壁部FSと底部BTとの接合部(エッジ部)ED1は、半導体基板SUBの主表面からS1の深さで、かつ溝TRの上側部分UP1から横方向(半導体基板SUBの主表面に沿う方向)にS1×X2だけドレイン側(他方壁部SS側)に位置している。
【0025】
ここで、割合X2が80%の場合、割合Y2は40%以上80%以下であることが好ましい。また割合X2が40%以上120%以下の範囲では、X2:Y2=1:2であることが好ましい。
【0026】
次に、本実施の形態の半導体装置の製造方法について
図4〜
図13を用いて説明する。
なお
図4〜
図13においては
図1に示したアナログ・デジタル混載チップにおけるスタックゲート型の不揮発性メモリNVMおよびCMOSトランジスタとともに、
図2に示すLDMOSトランジスタ(以下、「SS−LDMOSトランジスタ」と称する)が示されている。
【0027】
図4を参照して、SS−LDMOSトランジスタ領域(第1素子領域)、CMOSトランジスタ領域(第2素子領域)および不揮発性メモリ領域(第3素子領域)の各々にp
-エピタキシャル領域EPを有する半導体基板SUBが準備される。
【0028】
図5を参照して、イオン注入などによって半導体基板SUBの主表面に、それぞれの素子に必要な不純物拡散層が形成される。たとえばSS−LDMOSトランジスタ領域にはn型ドリフト領域DRIとp型ウエル領域WLとが形成される。pMOSトランジスタ領域にはn型領域WL1が形成され、nMOSトランジスタ領域および不揮発性メモリ領域NVMのそれぞれにはp型領域WL2が形成される。
【0029】
図6を参照して、STI構造を形成するためのハードマスク(絶縁膜)HMが半導体基板SUBの主表面全面上に形成される。
【0030】
図7を参照して、ハードマスクHM上に、通常の写真製版技術により、パターニングされたフォトレジストPR1が形成される。このフォトレジストPR1をマスクとしてハードマスクHMに異方性エッチングが施される。この後、フォトレジストPR1がたとえばアッシングなどにより除去される。
【0031】
図8を参照して、上記のエッチングによりハードマスクHRがパターニングされて、半導体基板SUBの一部表面が露出する。このパターニングされたハードマスクHMをマスクとして、半導体基板SUBの露出した主表面に異方性エッチングが施される。
【0032】
図9を参照して、上記のエッチングにより、SS−LDMOSトランジスタ領域に半導体基板SUBの主表面にSTI構造用の溝(第1の溝)TRAが形成される。また上記のエッチングにより、SS−LDMOSトランジスタ領域の溝(第1の溝)TRAと同じ工程で、CMOSトランジスタ領域にもSTI構造用の溝(第3の溝)TRAが形成され、かつ不揮発性メモリ領域にもSTI構造用の溝(第4の溝)TRAが形成される。これらの溝TRAの各々は、互いに対向する1対の側壁を有するように形成され、かつ互いにほぼ同じ深さとなるように形成される。
【0033】
図10を参照して、通常の写真製版技術により、パターニングされたフォトレジストPR2が形成される。このフォトレジストPR2は、SS−LDMOSトランジスタ領域において溝(第1の溝)TRAのソース側の側壁を覆うとともに、溝(第1の溝)TRAのソース側とドレイン側との側壁の間の中央部およびドレイン側の側壁を開口するように形成される。またフォトレジストPR2は、CMOSトランジスタ領域において溝(第3の溝)TRAの全体を開口し、かつ不揮発性メモリ領域において溝(第4の溝)TRAの全体を覆うように形成される。
【0034】
図11を参照して、このフォトレジストPR2をマスクとして半導体基板SUBに異方性エッチングが施される。これにより、SS−LDMOSトランジスタ領域の溝(第1の溝)TRAの中央部およびドレイン側の側壁の下側に深く延びる溝(第2の溝)TRBが形成される。またSS−LDMOSトランジスタ領域の溝(第2の溝)TRBの形成と同時に、CMOSトランジスタ領域の溝(第3の溝)TRAはSS−LDMOSトランジスタ領域の溝(第2の溝)TRBとほぼ同じ深さに延びた溝TRBとなる。
【0035】
SS−LDMOSトランジスタ領域では、溝(第1の溝)TRAと溝(第2の溝)TRBとにより、一方壁部FSに階段形状を構成する角部CP1A、CP2Aを有する溝TRが形成される。角部CP1A、CP2Aの深さは、不揮発性メモリ領域の溝(第4の溝)TRAの深さとほぼ同じ深さとなる。またSS−LDMOSトランジスタ領域の溝TRの底部BTの深さはCMOSトランジスタ領域の溝(第3の溝)TRBの深さとほぼ同じ深さとなる。この後、フォトレジストPR2がたとえばアッシングなどにより除去される。
【0036】
図12を参照して、溝TR、TRA、TRBの各々を埋め込むように埋め込み絶縁膜BIが形成される。
【0037】
図13を参照して、SS−LDMOSトランジスタ領域においては、ゲート絶縁膜GI、ゲート電極層GE、ソース領域SO、ドレイン領域DRおよびp
+ボディコンタクト領域が形成される。CMOSトランジスタ領域においては、ゲート絶縁膜GI、ゲート電極層GE、およびソース・ドレイン領域SDが形成される。不揮発性メモリ領域においては、ゲート絶縁膜GI、フローティングゲート電極FG、ゲート間絶縁膜GBI、コントロールゲート電極CGおよびソース・ドレイン領域SDが形成される。
【0038】
以上により、本実施の形態の半導体装置が製造される。
次に、本実施の形態の半導体装置の作用効果について
図14に示す比較例と対比して説明する。
【0039】
図14を参照して、比較例の半導体装置は、
図2に示す本実施の形態の構成と比較して、STI構造を構成する溝TRの一方壁部FSに角部が構成されていない点において異なっている。このため、比較例における溝TRの一方壁部FSおよび他方壁部SSの双方は、溝TRの上側部分UP1から底部に至るまで直線状の断面形状を有している。
【0040】
なお、比較例の上記以外の構成については
図2に示す本実施の形態の構成とほぼ同じであるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0041】
本発明者は、
図2に示す本実施の形態の構成と
図14に示す比較例の構成とについてOLT(Operating Life Test)試験におけるドレイン電流Idsの劣化量について調べた。その結果を
図15に示す。
【0042】
なおOLT試験とは、測定素子に対し一定のストレス(電圧や温度)を与え、ドレイン電流Idsの劣化量やしきい値電圧Vthの経時変化量を評価する方法である。今回の試験においては、オン耐圧60V以上の素子に対し、ゲート電圧Vgを3.3Vとし、かつドレイン電圧Vdを45Vとして、ワーストケース動作時のストレスを与えてドレイン電流Idsを測定した。
【0043】
図15の結果から、
図2に示す本実施の形態の構成におけるドレイン電流の劣化を、
図14に示す比較例の構成におけるドレイン電流の劣化に対して半分程度に抑制でき、高い素子信頼性が得られることがわかった。
【0044】
また本発明者は、Ids劣化抑制効果の検証を行うために、デバイス・シミュレーションによってOLT試験のストレス状態を再現し、素子内部状態の比較を行った。
図16は比較例(A)と
図2に示す本実施の形態の構成(B)とのストレス条件下における電子電流密度分布を示しており、
図17は比較例(A)と
図2に示す本実施の形態の構成(B)とのストレス条件下におけるインパクトイオン化率分布を示している。
図16(B)、
図17(B)における階段形状は、
図3で説明されたX2が120%で、Y2が40%の形状とした。また
図18は、
図17(A)、(B)の各々の点P1と点P2との間の半導体基板の界面に沿うインパクトイオン化率分布を示している。
【0045】
図16〜
図18の結果から、比較例および
図2に示す本実施の形態の構成のいずれも溝TRのエッジ部ED1付近および角部CP1A付近において高い電子電流密度と高いインパクトイオン化率とを示していることがわかった。また、
図2に示す構成におけるエッジ部ED1付近および角部CP1A付近での電子電流密度およびインパクトイオン化率の方が、
図14に示す比較例のエッジ部ED1付近での電子電流密度およびインパクトイオン化率よりも低いことがわかった。
【0046】
インパクトイオン化は、電界により加速された電子が結晶格子と衝突することによって電子・正孔対を発生させる現象である。比較例においては溝TRのエッジ部ED1において電流が集中することで電子電流密度が大きくなり、結果としてインパクトイオン化率が高くなったと考えられる。一方、本実施の形態においては、溝TRの一方壁部FSを階段状にしたことでエッジ部ED1と凸状の角部CP1Aとに電流集中が分散したことで電流集中が緩和されて、インパクトイオン化率が低くなったと考えられる。
【0047】
また本発明者は上記インパクトイオン化によって発生したホットキャリアが、溝TRのエッジ部ED1の界面にトラップされた場合、電気特性にどの様な影響を及ぼすかの検証を行った。この検証においては、デバイス・シミュレーションによって溝TRのエッジ部ED1の界面にマイナス電荷を発生させ、擬似的に電子トラップ状態を再現して検証した。
【0048】
図19は、溝TRのエッジ部ED1に電荷をおいた場合と電荷をおかない場合とにおけるVg−Ids特性を示している。この
図19の結果から、溝TRのエッジ部ED1におかれるマイナス電荷が大きいほどオン電流が低下する傾向が見られた。
【0049】
また
図20は、溝TRのエッジ部ED1に−1.0×10
12の電荷量をおいた場合(A)と、−0.5×10
12の電荷量をおいた場合(B)と、電荷をおかない場合(C)とのオン状態(Vg=3.3V、Vd=0.1V)での電流経路を比較のために並べた図である。この
図20の半導体基板内の実線は電流電位の等高線であり、複数の等高線は溝TR側に近いほどマイナス側に高い電流電位を示している。
【0050】
この
図20の結果から、溝TRのエッジ部ED1のマイナス電荷が大きくなるほど溝TRのエッジ部ED1を大きく迂回して電流が流れることがわかった。電流が迂回する分、電流経路が長くなるのでオン抵抗が上昇し、電流能力が低下したと考えられる。
【0051】
これにより、OLT試験におけるIdsの劣化は、インパクトイオン化によって発生したホットキャリアが溝TRのエッジ部ED1の界面にトラップされたことが原因で生じており、溝TRのエッジ部ED1におけるインパクトイオン化率と相関関係にあることがわかった。
【0052】
以上より、本実施の形態のSS−LDMOSトランジスタにおいては、溝TRの一方壁部FSを階段形状にすることにより、比較例の構成よりも電流集中を緩和できるので、インパクトイオン化によるホットキャリアの発生と溝TRのエッジ部ED1の界面における電子トラップが抑制され、Ids劣化の低減が可能になったと考えられる。
【0053】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2の半導体装置の構成について
図21を用いて説明する。
【0054】
図21を参照して、本実施の形態の構成は、
図2に示す実施の形態1の構成と比較して、溝TRのドレイン側の他方壁部SSが階段形状となっており、溝TRのソース側の一方壁部FSが階段形状になっていない点において異なっている。本実施の形態の構成では、溝TRの他方壁部SSは凸状の角部CP1Bと凹状の角部CP2Bとを有することにより断面視において階段形状となっている。
【0055】
この2つの角部CP1B、CP2Bは、半導体基板SUBの主表面に位置する溝TRの上側部分UP2と底部BTとの間に位置している。また本実施の形態における溝TRの上側部分UP2と底部BTとの間に位置する角部には、溝TRの底部BTと他方壁部SSとの交差部に生じるエッジ部ED2は含まれない。
【0056】
上記の角部は、
図21の断面視において直角形状であってもよく、鈍角形状であってもよく、また鋭角形状であってもよい。
【0057】
なお、これ以外の本実施の形態の構成は、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
次に、溝TRの他方壁部SSの階段形状について
図3を用いて説明する。
図3を参照して、溝TRの上側部分UP2から底部BTまでの深さ方向の寸法をS2とし、割合(%)をX1、Y1としたとき、他方壁部SSの角部CP1Bは溝TRの底部BTからS2×Y1だけ浅い位置(半導体基板SUBの主表面に近い位置)に位置している。また他方壁部SSと底部BTとの接合部(エッジ部)ED2は、半導体基板SUBの主表面からS2の深さで、かつ溝TRの上側部分UP2から横方向(半導体基板SUBの主表面に沿う方向)にS2×X1だけソース側(一方壁部FS側)に位置している。
【0059】
ここで、割合X1が120%の場合、割合Y1は40%であることが好ましい。また割合X1が200%の場合、Y1は60%以上80%以下であることが好ましい。
【0060】
次に、本実施の形態の半導体装置の製造方法について
図22および
図23を用いて説明する。
【0061】
本実施の形態の製造方法は、まず
図4〜
図9に示す実施の形態1の工程と同様の工程を経る。この後、
図22を参照して、通常の写真製版技術により、パターニングされたフォトレジストPR2が形成される。このフォトレジストPR2は、SS−LDMOSトランジスタ領域において溝(第1の溝)TRAのドレイン側を覆うとともに、溝(第1の溝)TRAのソース側とドレイン側との間の中央部およびソース側を開口するように形成される。またフォトレジストPR2は、CMOSトランジスタ領域において溝(第3の溝)TRAの全体を開口し、かつ不揮発性メモリ領域において溝(第4の溝)TRAの全体を覆うように形成される。
【0062】
図23を参照して、このフォトレジストPR2をマスクとして半導体基板SUBに異方性エッチングが施される。これにより、SS−LDMOSトランジスタ領域の溝(第1の溝)TRAの中央部およびソース側の側壁の下側に深く延びる溝(第2の溝)TRBが形成される。またSS−LDMOSトランジスタ領域の溝(第2の溝)TRBの形成と同時に、CMOSトランジスタ領域の溝(第3の溝)TRAはSS−LDMOSトランジスタ領域の溝(第2の溝)TRBとほぼ同じ深さに延びた溝TRBとなる。
【0063】
SS−LDMOSトランジスタ領域では、溝(第1の溝)TRAと溝(第2の溝)TRBとにより、他方壁部SSに階段形状を構成する角部CP1B、CP2Bを有する溝TRが形成される。角部CP1B、CP2Bの深さは、不揮発性メモリ領域の溝(第4の溝)TRAの深さとほぼ同じ深さとなる。またSS−LDMOSトランジスタ領域の溝TRの底部BTの深さはCMOSトランジスタ領域の溝(第3の溝)TRBの深さとほぼ同じ深さとなる。この後、フォトレジストPR2がたとえばアッシングなどにより除去される。
【0064】
この後、
図12および
図13に示す実施の形態1と同様の工程を経ることにより、本実施の形態の半導体装置が製造される。
【0065】
次に、本実施の形態の半導体装置の作用効果について
図14に示す比較例と対比して説明する。
【0066】
本発明者は、デバイス・シミュレーションによってOLT試験のストレス状態を再現し、素子内部状態の比較を行った。
図24は比較例(A)と
図21に示す本実施の形態(B)とのストレス条件下における電子電流密度分布を示しており、
図25は比較例(A)と
図21に示す本実施の形態(B)とのストレス条件下におけるインパクトイオン化率分布を示している。
図24(B)、
図25(B)における階段形状は、
図3で説明されたX1が120%で、Y1が40%の形状とした。また
図26は、
図25(A)、(B)の各々の点P3と点P4との間の半導体基板の界面に沿うインパクトイオン化率分布を示している。
【0067】
図24〜
図26の結果から、比較例および本実施の形態のいずれも溝TRのエッジ部ED2付近および角部CP1B付近において高い電子電流密度と高いインパクトイオン化率とを示していることがわかった。また、本実施の形態におけるエッジ部ED2付近および角部CP1B付近での電子電流密度およびインパクトイオン化率の方が、比較例のエッジ部ED2付近での電子電流密度およびインパクトイオン化率よりも低いことがわかった。
【0068】
上記の結果については実施の形態1と同様に考えることができる。つまり、比較例においては溝TRのエッジ部ED2において電流が集中することで電子電流密度が大きくなり、結果としてインパクトイオン化率が高くなったと考えられる。一方、本実施の形態においては、溝TRの他方壁部SSを階段形状にしたことでエッジ部ED2と凸状の角部CP1Bとに電流集中が分散したことで電流集中が緩和されて、インパクトイオン化率が低くなったと考えられる。
【0069】
これにより、本実施の形態のSS−LDMOSトランジスタにおいては、溝TRの他方壁部SSを階段形状にすることにより、比較例の構成よりも電流集中を緩和できるので、インパクトイオン化によるホットキャリアの発生と溝TRのエッジ部ED2の界面における電子トラップが抑制され、Ids劣化の低減が可能になったと考えられる。
【0070】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3の半導体装置の構成について
図27を用いて説明する。
【0071】
図27を参照して、本実施の形態の構成は、
図2に示す実施の形態1の構成と比較して、溝TRのソース側の一方壁部FSだけでなく、溝TRのドレイン側の他方壁部SSも階段形状となっている点において異なっている。本実施の形態の構成では、溝TRのソース側の一方壁部FSは凸状の角部CP1Aと凹状の角部CP2Aとを有することによりは断面視において階段形状となっている。また溝TRのドレイン側の他方壁部SSは凸状の角部CP1Bと凹状の角部CP2Bとを有することによりは断面視において階段形状となっている。
【0072】
一方壁部FSにおける2つの角部CP1A、CP2Aは、半導体基板SUBの主表面に位置する溝TRの上側部分UP1と底部BTとの間に位置している。
【0073】
また他方壁部SSにおける2つの角部CP1B、CP2Bは、半導体基板SUBの主表面に位置する溝TRの上側部分UP2と底部BTとの間に位置している。
【0074】
これらの角部の各々は、
図27の断面視において直角形状であってもよく、鈍角形状であってもよく、また鋭角形状であってもよい。
【0075】
なお、これ以外の本実施の形態の構成は、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0076】
また溝TRの一方壁部FSおよび他方壁部SSの各々の階段形状については、上記の実施の形態1および2にて
図3を用いて説明した形状と同様である。
【0077】
つまり
図3を参照して、角部CP1Aは溝TRの底部BTからS1×Y2だけ浅い位置(半導体基板SUBの主表面に近い位置)に位置している。また階段形状の一方壁部FSと底部BTとの接合部(エッジ部)ED1は、半導体基板SUBの主表面からS1の深さで、かつ溝TRの上側部分UP1から横方向(半導体基板SUBの主表面に沿う方向)にS1×X2だけドレイン側(他方壁部SS側)に位置している。
【0078】
ここで、割合X2が80%の場合、割合Y2は40%以上80%以下であることが好ましい。また割合X2が40%以上120%以下の範囲では、X2:Y2=1:2であることが好ましい。
【0079】
また
図3を参照して、他方壁部SSの角部CP1Bは溝TRの底部BTからS2×Y1だけ浅い位置(半導体基板SUBの主表面に近い位置)に位置している。また階段形状の他方壁部SSと底部BTとの接合部(エッジ部)ED2は、半導体基板SUBの主表面からS2の深さで、かつ溝TRの上側部分UP2から横方向(半導体基板SUBの主表面に沿う方向)にS2×X1だけソース側(一方壁部FS側)に位置している。
【0080】
ここで、割合X1が120%の場合、割合Y1は40%であることが好ましい。また割合X1が200%の場合、Y1は60%以上80%以下であることが好ましい。
【0081】
次に、本実施の形態の半導体装置の製造方法について
図28および
図29を用いて説明する。
【0082】
本実施の形態の製造方法は、まず
図4〜
図9に示す実施の形態1の工程と同様の工程を経る。この後、
図28を参照して、通常の写真製版技術により、パターニングされたフォトレジストPR2が形成される。このフォトレジストPR2は、SS−LDMOSトランジスタ領域において溝(第1の溝)TRAのドレイン側およびソース側を覆うとともに、溝(第1の溝)TRAのドレイン側およびソース側に挟まれた中央部を開口するように形成される。またフォトレジストPR2は、CMOSトランジスタ領域において溝(第3の溝)TRAの全体を開口し、かつ不揮発性メモリ領域において溝(第4の溝)TRAの全体を覆うように形成される。
【0083】
図29を参照して、このフォトレジストPR2をマスクとして半導体基板SUBに異方性エッチングが施される。これにより、SS−LDMOSトランジスタ領域の溝(第1の溝)TRAの中央部の下側に深く延びる溝(第2の溝)TRBが形成される。またSS−LDMOSトランジスタ領域の溝(第2の溝)TRBの形成と同時に、CMOSトランジスタ領域の溝(第3の溝)TRAはSS−LDMOSトランジスタ領域の溝(第2の溝)TRBとほぼ同じ深さに延びた溝TRBとなる。
【0084】
SS−LDMOSトランジスタ領域では、溝(第1の溝)TRAと溝(第2の溝)TRBとにより溝TRが形成される。この溝TRは、一方壁部FSに階段形状を構成する角部CP1A、CP2Aを有し、かつ他方壁部SSに階段形状を構成する角部CP1B、CP2Bを有する。角部CP1A、CP2A、CP1B、CP2Bの深さは、不揮発性メモリ領域の溝(第4の溝)TRAの深さとほぼ同じ深さとなる。またSS−LDMOSトランジスタ領域の溝TRの底部BTの深さはCMOSトランジスタ領域の溝(第3の溝)TRBの深さとほぼ同じ深さとなる。この後、フォトレジストPR2がたとえばアッシングなどにより除去される。
【0085】
この後、
図12および
図13に示す実施の形態1と同様の工程を経ることにより、本実施の形態の半導体装置が製造される。
【0086】
次に、本実施の形態の半導体装置の作用効果について
図14に示す比較例と対比して説明する。
【0087】
本発明者は、デバイス・シミュレーションによってOLT試験のストレス状態を再現し、素子内部状態の比較を行った。
図30は比較例(A)と
図27に示す本実施の形態(B)とのストレス条件下における電子電流密度分布を示しており、
図31は比較例(A)と
図27に示す本実施の形態(B)とのストレス条件下におけるインパクトイオン化率分布を示している。
図30(B)、
図31(B)における階段形状は、
図3で説明されたX1、X2が120%で、Y1、Y2が40%の形状とした。また
図32は、
図31(A)、(B)の各々の点P5と点P6との間の半導体基板の界面に沿うインパクトイオン化率分布を示している。
【0088】
図30〜
図32の結果から、比較例および本実施の形態のいずれも溝TRのエッジ部ED1付近、ED2付近、角部CP1A付近および角部CP1B付近において高い電子電流密度と高いインパクトイオン化率とを示していることがわかった。また、本実施の形態におけるエッジ部ED1、ED2付近および角部CP1A、CP1B付近での電子電流密度およびインパクトイオン化率の方が、比較例のエッジ部ED1付近およびエッジ部ED2付近での電子電流密度およびインパクトイオン化率よりも低いことがわかった。
【0089】
上記の結果については実施の形態1と同様に考えることができる。つまり、比較例においては溝TRのエッジ部ED1、ED2において電流が集中することで電子電流密度が大きくなり、結果としてインパクトイオン化率が高くなったと考えられる。一方、本実施の形態においては、溝TRの一方壁部FSおよび他方壁部SSの各々を階段形状にしたことでエッジ部ED1、ED2と凸状の角部CP1A、CP1Bとに電流集中が分散したことで電流集中が緩和されて、インパクトイオン化率が低くなったと考えられる。
【0090】
これにより、本実施の形態のSS−LDMOSトランジスタにおいては、溝TRの一方壁部FSおよび他方壁部SSの各々を階段形状にすることにより、比較例の構成よりも電流集中を緩和できるので、インパクトイオン化によるホットキャリアの発生と溝TRのエッジ部ED1、ED2の界面における電子トラップが抑制され、Ids劣化の低減が可能になったと考えられる。
【0091】
(実施の形態4)
上記の実施の形態1〜3においては、SS−LDMOSトランジスタがRESURF型の場合について説明したが、SS−LDMOSトランジスタは非RESURF型であってもよい。以下、その構成について
図33を用いて説明する。
【0092】
図33を参照して、本実施の形態の構成は、
図27に示す実施の形態3の構成と比較して、n型埋め込み領域BLが形成されている点、およびn型ドリフト(オフセット)領域DRIがp型ウエル領域WLの下側に回りこむように形成されている点において異なっている。
【0093】
n型埋め込み領域BLは、p
-エピタキシャル領域EP上に位置してp
-エピタキシャル領域EPと互いにpn接合を構成するように半導体基板SUBに形成されている。このn型埋め込み領域BL上には、p
-エピタキシャル領域EPAが形成されている。
【0094】
n型ドリフト領域DRIは、p型ウエル領域WLの下側に回りこむように形成されており、かつn型埋め込み領域BLに接するように形成されている。これにより、非RESURF型のSS−LDMOSトランジスタが形成されている。
【0095】
なお、これ以外の本実施の形態の構成は、上述した実施の形態3の構成とほぼ同じであるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0096】
本実施の形態のように非RESURF型のSS−LDMOSトランジスタにおいても、溝TRの一方壁部FSおよび他方壁部SSの少なくともいずれかの壁部に角部CP1A、CP2A、CP1B、CP2Bを形成することにより、溝TRの壁部における電界集中を緩和でき、電子トラップによる電気特性の劣化を抑制することができる。
【0097】
なお本実施の形態においては、溝TRの一方壁部FSおよび他方壁部SSの双方に角部を設けた構成について説明したが、角部は一方壁部FSおよび他方壁部SSのいずれか一方のみに設けられていてもよい。
【0098】
(実施の形態5)
上記の実施の形態1〜4においては、角部を有する溝をLDMOSトランジスタに適用した場合について説明したが、角部を有する溝は、その溝の下側に位置する半導体基板内に電流を流す素子に適用することもできる。以下、その構成について
図34を用いて説明する。
【0099】
図34を参照して、本実施の形態においては、半導体基板SUBにp
-エピタキシャル領域EPが形成されている。このp
-エピタキシャル領域EP上に、p
-エピタキシャル領域EPとpn接合を構成するようにn型領域DIが形成されている。このn型領域DI上の半導体基板SUBの主表面にSTI構造が形成されている。
【0100】
このSTI構造は、半導体基板SUBの主表面に形成された溝TRと、その溝TR内を埋め込む埋め込み絶縁膜BIとを有している。この溝TRの一方壁部FSには角部CP1A、CP2Aが設けられており、他方壁部SSには角部CP1B、CP2Bが設けられている。これらの角部の形状および位置は実施の形態3の構成とほぼ同じであるため、その説明は省略する。
【0101】
溝TRの一方壁部FS側の半導体基板SUBの主表面には、n型領域DIよりもn型不純物濃度の高いn
+領域IR2が形成されている。また溝TRの他方壁部SS側の半導体基板SUBの主表面には、n型領域DIよりもn型不純物濃度の高いn
+領域IR1が形成されている。n
+領域IR2には電極CL2が電気的に接続されており、n
+領域IR1には電極CL1が電気的に接続されている。
【0102】
n
+領域IR2はたとえば比較的低い電圧が印加されるものであり、n
+領域IR1はたとえば比較的高い電圧が印加されるものである。このような電圧の印加により、n
+領域IR2とn
+領域IR1との間で溝TRの下の半導体基板SUBの領域を通して電流を流すことが可能となっている。
【0103】
本実施の形態のように溝TRの下側に位置する半導体基板SUB内に電流を流す素子においても、溝TRの一方壁部FSおよび他方壁部SSの少なくともいずれかの壁部に角部を形成することにより、溝TRの壁部における電界集中を緩和でき、電子トラップによる電気特性の劣化を抑制することができる。
【0104】
なお本実施の形態においては、溝TRの一方壁部FSおよび他方壁部SSの双方に角部を設けた構成について説明したが、角部は一方壁部FSおよび他方壁部SSのいずれか一方のみに設けられていてもよい。
【0105】
(実施の形態6)
本発明者は、
図2に示す実施の形態1における溝TRの一方壁部FSの階段形状について好ましい形状を検討した。その検討内容および検討結果を
図35〜
図37を用いて説明する。
【0106】
まず本発明者は溝TRの一方壁部FSの階段形状におけるX2依存性を評価した。この評価は、Y2を40%として、X2を40%、120%および200%の3水準に振り分けることにより行った。またこの評価におけるOLTストレス条件はVg=3.3V、Vd=45Vとし、Idsの測定条件はVg=3.3V、Vd=0.2Vとした。その結果を
図35に示す。
【0107】
図35の結果から、X2が0%のときに比較して、X2が40%、120%および200%のいずれの場合においてもIds劣化抑制の効果が得られることがわかった。またX2パラメータについては、X2が120%、200%、40%の順にIds劣化の抑制効果が高いことがわかった。
【0108】
また上記の各X2における電子電流分布、電界強度分布およびインパクトイオン化率分布を調べた。その結果を
図36〜
図41に示す。
【0109】
図36は、OLTストレス条件下でのX2が40%(A)、X2が120%(B)、およびX2が200%(C)の各電子電流分布を示している。
図37は、
図36(A)〜(C)の各々の点P1と点P2との間の半導体基板の界面に沿うOLTストレス条件下での電子電流分布を示している。
図38は、OLTストレス条件下でのX2が40%(A)、X2が120%(B)、およびX2が200%(C)の各電界強度分布を示している。
図39は、
図38(A)〜(C)の各々の点P1と点P2との間の半導体基板の界面に沿うOLTストレス条件下での電界強度分布を示している。
図40は、OLTストレス条件下でのX2が40%(A)、X2が120%(B)、およびX2が200%(C)の各インパクトイオン化率分布を示している。
図41は、
図40(A)〜(C)の各々の点P1と点P2との間の半導体基板の界面に沿うOLTストレス条件下でのインパクトイオン化率分布を示している。
【0110】
図36〜
図41の結果から、溝TRのエッジ部ED1における電子電流はX2=40%が最も高く(
図37参照)、電界強度はX2=200%が最も高くなった(
図39参照)。またインパクトイオン化率はX2=120%が最も低くなった(
図41参照)。
【0111】
よって、X2=40%では電子電流が高インパクトイオン化率の原因となり、かつX2=200%では電界強度が高インパクトイオン化率の原因となり、それらの中間のX2=120%で最も低いインパクトイオン化率になったと考えられる。
【0112】
これらの結果からも、Idsの変動は溝TRのエッジ部ED1、角部CP1に相関があることが確認された。
【0113】
また本発明者は、溝TRの一方壁部FSの階段形状におけるX2およびY2の値をそれぞれ変えたときのインパクトイオン化率を調べるシミュレーションを行った。その結果を以下の表1に示す。
【0115】
表1の結果から、X2=80%に対してY2=40%〜80%の範囲に角部CP1Aが位置する場合、最も低いインパクトイオン化率を示した。また、X2=40%〜120%の範囲では、X2:Y2=2:1の比率で角部CP1Aが位置する場合に、低いインパクトイオン化率を示す傾向があることがわかった。
【0116】
また本発明者は、溝TRの他方壁部SSの階段形状におけるX1およびY1の値をそれぞれ変えたときのインパクトイオン化率を調べるシミュレーションを行った。その結果を以下の表2に示す。
【0118】
表2の結果から、(X1,Y1)=(120%,40%)および(200%,60%〜80%)において、最も低いインパクトイオン化率を示すことがわかった。
【0119】
(実施の形態7)
本実施の形態においては、角部の平面レイアウトについて
図42〜
図44を用いて説明する。
【0120】
図42および
図43を参照して、ゲート電極層GEおよびp
+ボディコンタクト領域IRは平面視(
図42)においてドレイン領域DRの外周に位置するように形成されている。素子終端部RSに電流を流さない場合には、ソース領域SOは平面視においてドレイン領域DRの短手方向(
図42中矢印M方向)に対向する位置に形成されており、ドレイン領域DRの長手方向(
図42中矢印N方向)に対向する位置を含む素子終端部RSには形成されていない。つまり、平面視においてソース領域SOとドレイン領域DRとの間に位置するように、角部CP1A、CP2Aは溝TRの一部に形成されている。この場合、ソース領域SOとドレイン領域DRとは平面視における長手方向(
図42中矢印N方向)に互いに同じ寸法を有している。
【0121】
この構成において、角部CP1A、CP2Aの各々は、ソース領域SOおよびドレイン領域DRの間でソース領域SOおよびドレイン領域DRのそれぞれと短手方向に対向する位置に形成されている。また角部CP1A、CP2Aの各々は素子終端部RSには形成されておらず、かつソース領域SOおよびドレイン領域DRと同じ長手方向(
図42中矢印N方向)の寸法を有している。
【0122】
図44および
図43を参照して、素子終端部RSに電流を流す場合には、ソース領域SOは平面視(
図44)においてドレイン領域DRの外周に位置するように形成されており、素子終端部RSにも形成されている。つまり、平面視においてソース領域SOとドレイン領域DRとの間に位置するように、角部CP1A、CP2Aは溝TRの全体に形成されている。この場合、ソース領域SOは平面視においてドレイン領域DRの長手方向(
図42中矢印N方向)および短手方向(
図42中矢印M方向)の双方に形成されている。
【0123】
この構成において、角部CP1A、CP2Aの各々は、ソース領域SOおよびドレイン領域DRの間でドレイン領域DRの周囲を取り囲むように形成されている。このため、角部CP1A、CP2Aの各々は素子終端部RSにも形成されている。
【0124】
以上のように溝TRの角部CP1A、CP2Aの各々は、平面視においてソース領域SOとドレイン領域DRとに挟まれる領域に配置されていることが好ましい。
【0125】
また溝TRの他方壁部SSに設ける角部CP1B、CP2Bの各々も、上記の角部CP1A、CP2Aと同様、平面視においてソース領域SOとドレイン領域DRとに挟まれる領域に配置されていることが好ましい。
【0126】
(実施の形態8)
上記の実施の形態1〜7においては、溝TRの一方壁部FSおよび他方壁部SSが断面視において階段形状となるように角部を形成した場合について説明したが、角部は溝TRの一方壁部FSおよび他方壁部SSの各々に断面視において傾斜部を形成するように設けられてもよい。以下、溝TRの一方壁部FSおよび他方壁部SSの各々に傾斜部を形成するような角部を有する構成について
図45〜49を用いて説明する。
【0127】
図45を参照して、この構成は、
図2に示す実施の形態1における溝TRの一方壁部FSの階段形状を傾斜部を有する形状に変更した構成である。具体的には、溝TRの一方壁部FSは凸状の角部CPAを有している。この角部CPAと底部BTとの間の壁部は、角部CPAと上側部分UP1との間の壁部に対して傾斜した傾斜部INC1となっている。この凸状の角部CPAの角度θ1は鈍角である。また傾斜部INC1は断面視において直線状である。
【0128】
また
図46を参照して、この構成は、
図21に示す実施の形態2における溝TRの他方壁部SSの階段形状を傾斜部を有する形状に変更した構成である。具体的には、溝TRの他方壁部SSは凸状の角部CPBを有している。この角部CPBと底部BTとの間の壁部が角部CPBと上側部分UP2との間の壁部に対して傾斜した傾斜部INC2となっている。この凸状の角部CPBの角度θ2は鈍角である。また傾斜部INC2は断面視において直線状である。
【0129】
また
図47を参照して、この構成は、
図27に示す実施の形態3における溝TRの一方壁部FSおよび他方壁部SSの各々の階段形状を傾斜部を有する形状に変更した構成である。具体的には、溝TRの一方壁部FSは凸状の角部CPAを有している。この角部CPAと底部BTとの間の壁部が角部CPAと上側部分UP1との間の壁部に対して傾斜した傾斜部INC1となっている。また溝TRの他方壁部SSは凸状の角部CPBを有している。この角部CPBと底部BTとの間の壁部が角部CPBと上側部分UP2との間の壁部に対して傾斜した傾斜部INC2となっている。この凸状の角部CPAの角度θ1およびCPBの角度θ2のそれぞれは鈍角である。また傾斜部INC1、INC2のそれぞれは断面視において直線状である。
【0130】
また
図48を参照して、この構成は、
図33に示す実施の形態4における溝TRの一方壁部FSおよび他方壁部SSの各々の階段形状を傾斜部を有する形状に変更した構成である。溝TRの一方壁部FSの角部CPAおよび他方壁部SSの角部CPBのそれぞれは
図47の構成における角部CPAおよび角部CPBと同じ形状を有しているため、その説明は省略する。
【0131】
また
図49を参照して、この構成は、
図34に示す実施の形態5における溝TRの一方壁部FSおよび他方壁部SSの各々の階段形状を傾斜部を有する形状に変更した構成である。溝TRの一方壁部FSの角部CPAおよび他方壁部SSの角部CPBのそれぞれは
図47の構成における角部CPAおよび角部CPBと同じ形状を有しているため、その説明は省略する。
【0132】
(実施の形態9)
本発明者は、
図45および
図46の各々に示す構成について、デバイス・シミュレーションによってOLT試験のストレス状態を再現し、
図14に示す比較例との素子内部状態の比較を行った。その比較検討の内容および検討結果を
図50〜56を用いて説明する。
【0133】
まず、溝TRの一方壁部FSおよび他方壁部SSの傾斜部の形状について
図50を用いて説明する。
【0134】
図50を参照して、溝TRの一方壁部FSの上側部分UP1から底部BTまでの深さ方向の寸法をS1とし、割合(%)をX2、Y2としたとき、角部CPAは溝TRの底部BTからS1×Y2だけ浅い位置(半導体基板SUBの主表面に近い位置)に位置している。また一方壁部FSと底部BTとの接合部(エッジ部)ED1は、半導体基板SUBの主表面からS1の深さで、かつ溝TRの上側部分UP1から横方向(半導体基板SUBの主表面に沿う方向)にS1×X2だけドレイン側(他方壁部SS側)に位置している。
【0135】
また溝TRの他方壁部SSの上側部分UP2から底部BTまでの深さ方向の寸法をS2とし、割合(%)をX1、Y1としたとき、角部CPBは溝TRの底部BTからS2×Y1だけ浅い位置(半導体基板SUBの主表面に近い位置)に位置している。また他方壁部SSと底部BTとの接合部(エッジ部)ED2は、半導体基板SUBの主表面からS2の深さで、かつ溝TRの上側部分UP2から横方向(半導体基板SUBの主表面に沿う方向)にS2×X1だけソース側(一方壁部FS側)に位置している。
【0136】
次に、
図45の構成において溝TRの一方壁部FSのX2を40%、Y2を120%としてOLT試験のストレス状態を再現したときの素子内部状態について説明する。
【0137】
図51は比較例(A)と
図45の構成(B)とのストレス条件下における電子電流密度分布を示しており、
図52は比較例(A)と
図45の構成(B)とのストレス条件下におけるインパクトイオン化率分布を示している。また
図53は、
図52(A)、(B)の各々の点P11と点P12との間の半導体基板の界面に沿うインパクトイオン化率分布を示している。
【0138】
図51〜
図53の結果から、比較例および
図45の構成のいずれも溝TRのエッジ部ED1付近および角部CPA付近において高い電子電流密度と高いインパクトイオン化率とを示していることがわかった。また、
図45の構成におけるエッジ部ED1付近および角部CPA付近での電子電流密度およびインパクトイオン化率の方が比較例のエッジ部ED1付近での電子電流密度およびインパクトイオン化率よりも低いことがわかった。
【0139】
以上より、
図45の構成のSS−LDMOSトランジスタにおいては、溝TRの一方壁部FSを傾斜部を有する形状にすることにより、比較例の構成よりも電流集中を緩和できるので、インパクトイオン化によるホットキャリアの発生と溝TRのエッジ部ED1の界面における電子トラップが抑制され、Ids劣化の低減が可能になったと考えられる。
【0140】
次に、
図46の構成において溝TRの他方壁部SSのX1を40%、Y1を120%としてOLT試験のストレス状態を再現したときの素子内部状態について説明する。
【0141】
図54は比較例(A)と
図46の構成(B)とのストレス条件下における電子電流密度分布を示しており、
図55は比較例(A)と
図46の構成(B)とのストレス条件下におけるインパクトイオン化率分布を示している。また
図56は、
図55(A)、(B)の各々の点P11と点P12との間の半導体基板の界面に沿うインパクトイオン化率分布を示している。
【0142】
図54〜
図56の結果から、比較例および
図46の構成のいずれも溝TRのエッジ部ED2付近および角部CPB付近において高い電子電流密度と高いインパクトイオン化率とを示していることがわかった。また、
図46の構成におけるエッジ部ED2付近および角部CPB付近での電子電流密度およびインパクトイオン化率の方が比較例のエッジ部ED2付近での電子電流密度およびインパクトイオン化率よりも低いことがわかった。
【0143】
以上より、
図46の構成のSS−LDMOSトランジスタにおいては、溝TRの他方壁部SSを傾斜部を有する形状にすることにより、比較例の構成よりも電流集中を緩和できるので、インパクトイオン化によるホットキャリアの発生と溝TRのエッジ部ED1の界面における電子トラップが抑制され、Ids劣化の低減が可能になったと考えられる。
【0144】
以上より、
図45〜
図49に示すような溝TRの一方壁部FSおよび他方壁部SSの少なくともいずれかに傾斜部をなす角部を有する構成において、そのような角部のない比較例と比べて溝の壁部における電界集中を緩和でき、電子トラップによる電気特性の劣化を抑制することができる。
【0145】
次に本発明者は、
図45に示す構成における溝TRの一方壁部FSと、
図46に示す構成における溝TRの他方壁部SSとのそれぞれの傾斜部の形状について好ましい形状を検討した。その検討内容および検討結果を以下に説明する。
【0146】
まず本発明者は、
図50における溝形状の定義に基づいて、
図45に示す構成の溝TRの一方壁部FSについてX2およびY2の値をそれぞれ変えたときのインパクトイオン化率を調べるシミュレーションを行った。その結果を以下の表3に示す。
【0148】
表3の結果から、X2=40%〜120%の範囲では、X2:Y2=1:2の比率で角部CPAが位置する場合に、低いインパクトイオン化率を示す傾向があることがわかった。
【0149】
また本発明者は、
図50における溝形状の定義に基づいて、
図46に示す構成の溝TRの他方壁部SSについてX1およびY1の値をそれぞれ変えたときのインパクトイオン化率を調べるシミュレーションを行った。その結果を以下の表4に示す。
【0151】
表4の結果から、X1=80%以上、Y1=40%以上の範囲で低いインパクトイオン化率を示す傾向になることがわかった。一方、上記の範囲以外の範囲では、比較例(X1=0%、Y1=0%)よりも高いインパクトイオン化率を示す、高低差の大きい傾向となることがわかった。
【0152】
(その他)
実施の形態1〜7においては溝TRの一方壁部FS、他方壁部SSの階段形状は段部が1段の場合について説明したが、
図57に示すように2段以上の複数の段部を有していてもよい。複数の段部を有する場合には、一方壁部FSおよび他方壁部SSの各々には、凸状の角部CP1と凹状の角部CP2との組が複数組形成されることなる。
【0153】
また実施の形態8および9における溝TRの一方壁部FSおよび他方壁部SSの各々は、傾斜部を構成するための角部を複数有していてもよい。
【0154】
また溝TRの一方壁部FS、他方壁部SSの断面視における形状は、実施の形態1〜7における階段形状と実施の形態8および9における傾斜部を有する形状とが適宜組み合わされた形状であってもよい。
【0155】
またこのような一方壁部FSおよび他方壁部SSの少なくともいずれかに角部を有する本発明の構成は、LDMOSトランジスタのn
+ドレイン領域DRをp型のエミッタ領域に変えた構成のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)に適用されてもよい。また本発明の構成は、ゲート絶縁膜がシリコン酸化膜よりなるMOSトランジスタだけでなく、MIS(Metal Insulator Semiconductor)トランジスタに適用されてもよい。
【0156】
また上記において示した素子はp型およびn型の導電型がそれぞれ逆の導電型よりなる構成を有していてもよい。
【0157】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。