(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の技術では、合成樹脂シートをサドルの裏面に沿うように湾曲させて、その状態で渦巻き溝内に電熱線を装着する必要があるため、電熱線に十分なテンション(張力)を加えることができず、電熱線にたわみや位置ずれが生じてしまうことがあった。よって、自動巻き上げ機等の機械を用いて自動(オート)で電熱線を巻きつけることが困難であり、しかも電熱線を手作業で渦巻き溝内に巻きつけるには非常に手間と時間がかかるため、特許文献1の技術では、融着インナーの生産性が悪いという問題があった。また、そのように、電熱線にたわみや位置ずれが生じると、電熱線どうしが接触してショートする等の不具合が発生する危険性も高くなる。
【0004】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、融着インナーおよびそれを用いた分岐サドル継手を提供することである。
【0005】
この発明の他の目的は、生産性に優れ、しかも電熱線どうしが接触してショートすることがない、融着インナーおよびそれを用いた分岐サドル継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0013】
第
1の発明は、分岐孔を有する電気融着型の分岐サドル継手を成形するために用いられる融着インナーであって、インナー本体、インナー本体の表面から突出して形成され、分岐孔の形成位置の周囲に渦巻き状に並べて配置された複数の突起、突起に引っ掛けることによってインナー本体の表面上に渦巻き状に巻回された電熱線、複数の突起よりも内側に設けられる内側支持ピン、複数の突起よりも外側に設けられる外側支持ピン、および内側支持ピンと外側支持ピンとの間に設けられる中間支持ピンを備え、電熱線の内周端が内側支持ピンを起点にして外側支持ピンまで引き出され、中間支持ピンの上面の高さが、突起の最上部の高さよりも高くかつ内側支持ピンおよび外側支持ピンの高さよりも低くなるように設定された、融着インナーである。
【0015】
第
2の発明は、分岐孔を有する電気融着型の分岐サドル継手を成形するために用いられる融着インナーであって、インナー本体、インナー本体の表面から突出して形成され、分岐孔の形成位置の周囲に渦巻き状に並べて配置された複数の突起、および突起に引っ掛けることによってインナー本体の表面上に渦巻き状に巻回された電熱線を備え、複数の突起が分岐孔の形成位置から外側に向かう方向に列状に並ぶことにより突起群が構成され、複数の突起群が分岐孔の形成位置の周囲に分布し、複数の突起群よりも内側に設けられる内側支持ピン、複数の突起群よりも外側に設けられる外側支持ピン、および内側支持ピンと外側支持ピンとの間に設けられる中間支持ピンをさらに備え、電熱線の内周端が内側支持ピンを起点にして外側支持ピンまで引き出され、中間支持ピンの上面の高さが、突起の最上部の高さよりも高くかつ内側支持ピンおよび外側支持ピンの高さよりも低くなるように設定された、融着インナーである。
【0016】
第
2の発明では、内側支持ピン(22)と外側支持ピン(24)との間には、中間支持ピン(28)が設けられる。中間支持ピンは、インナー本体(12)の表面からたとえば垂直方向に突出して形成され、その上面(28a)の高さは、突起(18)の最上部の高さよりも高くなるように設定されている。このため、電熱線
(14
)の“横断部分”
(14B
)が“渦巻き部分”
(14A
)と接触しないように、電熱線
(14
)を突起
(18
)の最上部以上の高さに保持することが可能である。
【0017】
第
3の発明は、第
2の発明に従属し、内側支持ピンおよび外側支持ピンの少なくともいずれか一方と中間支持ピンとの間に設けられる補助支持ピンをさらに備える。
【0018】
第
3の発明では、たとえば、内側支持ピン(22)と中間支持ピン(28)との間、ならびに外側支持ピン(24)と中間支持ピン(28)との間には、複数の補助支持ピン(32)が設けられる。補助支持ピンは、インナー本体(12)の表面からたとえば垂直方向に突出して形成され、電熱線(14)の“横断部分”(14B)に沿って、列状に並ぶように配置される。
【0019】
第
3の発明によれば、万が一電熱線の“横断部分”がたるんでも、その電熱線を補助支持ピンによって支持することで、“横断部分”が“渦巻き部分”に接触してショートすることを防止することができる。
【0022】
第
4の発明は、第1ないし第
3のいずれかの発明の融着インナーがサドルの裏面に一体的に成形された、分岐サドル継手である。
【0023】
第
4の発明では、分岐サドル継手(100)は、たとえば本管から枝管を取り出す際に本管の外面に電気融着接合される合成樹脂製の継手である。この分岐サドル継手の成形時には、サドル(102)の裏面に融着インナー(10)が一体的に成形される。
【0024】
この発明によれば、電熱線をインナー本体の表面上の突起に引っ掛けて配置するようにしたため、融着インナーの生産性が向上され、しかも電熱線どうしが接触してショートする等の不具合が生じることがない。
【0025】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1を参照して、この発明の一実施例である融着インナー10は、
図2に示すような電気融着型の分岐サドル継手100を成形するために用いられるものであり、ポリエチレン等の合成樹脂からなるインナー本体12と、インナー本体12に装着されるニクロム線等の電熱線14とを備えている。
【0028】
分岐サドル継手100は、ポリエチレン等の合成樹脂製の本管(図示せず)から枝管を取り出す際に本管の外面に電気融着接合されるポリエチレン等の合成樹脂製の継手であり、
図2に示すように、分岐孔104が形成されたサドル102を備えている。サドル102の径は、たとえば50mmである。なお、この実施例におけるサドル102の「裏面」とは、分岐サドル継手100のサドル102と本管との接合面の側を意味する。
【0029】
また、実際には、分岐サドル継手100のサドル102の裏面に沿うように円弧状に湾曲させたインナー本体12に電熱線14が装着されるが、
図1、および
図3では、図面の簡素化のために、平板形状のインナー本体12に電熱線14を装着した状態の融着インナー10を図示していることに留意されたい。以下、同様である。
【0030】
図1および
図3に示すように、インナー本体12は、射出成形等により形成される略矩形の板状体であり、その中央には、平面視略真円形の貫通孔16が形成されている。貫通孔16は、分岐サドル継手100の成形時にサドル102の分岐孔104に対応する位置に、すなわち分岐孔104の形成位置に形成されている。インナー本体12の長辺方向の長さは、たとえば150mmであり、その短辺方向の長さは、たとえば100mmであり、その厚さは、たとえば1mmである。
【0031】
そして、分岐サドル継手100の成形時には、このインナー本体12の「長辺方向」がサドル102の軸方向に対応するとともに、インナー本体12の「短辺方向」がサドル102の周方向に対応し、そしてインナー本体12の貫通孔16がサドル102の分岐孔104に対応することとなる。
【0032】
インナー本体12の表面(サドル102の裏面との接合面の側)には、複数の突起18が設けられている。突起18は、たとえば略切頭円錐形状を有しており、インナー本体12の表面から垂直方向に突出して形成される。突起18の高さは、たとえば3mmである。突起18は、貫通孔16を中心にした渦巻き状に並べて配置され、そして、電熱線14は、各突起18に引っ掛けることにより渦巻き状に配置される。すなわち、電熱線14の“渦巻き部分”14Aは、電熱線14を各突起18に引っ掛けながら渦巻き状に巻回することによって形成される。
【0033】
また、突起18は、インナー本体12の貫通孔16から外側に向かう方向に一定の間隔を隔てて列状に並ぶように配置されており、貫通孔16の周囲に適宜分布する複数、この実施例では10つの突起群20を構成する。以下、突起群20を配置位置などに応じて区別する場合には20に添え字a〜jを付した20a〜20jなどを用い、これらを包括して表現する場合には20を用いる。
【0034】
突起群20は、全体としてインナー本体12の長辺方向に長い楕円形になるように分布しており、具体的には、突起群20aと突起群20gとが、突起群20bと突起群20fとが、突起群20cと突起群20hとが、突起群20dと突起群20iとが、そして突起群20eと突起群20jとが貫通孔16を挟んで互いに平行になるように配置されている。
【0035】
図4に示すように、突起群20の内側および外側には、それぞれ1つずつ、合計2つの支持ピン22,24が設けられる。この実施例では、一方の支持ピン(以下、「内側支持ピン」ということがある)22が、突起群20の内側であってかつ電熱線14の内周側の端が引っ掛けられる突起18(つまり、突起群20bの中で最内側の突起18)の近傍に設けられ、もう一方の支持ピン(以下、「外側支持ピン」ということがある)24が、突起群20の外側であってかつ内側支持ピン22から電熱線14の“渦巻き部分”14Aを横断する方向に延ばした直線上に設けられる。
【0036】
図5に示すように、各支持ピン22,24は、たとえば略切頭円錐形状を有しており、インナー本体12の表面から垂直方向に突出して形成されている。各支持ピン22,24には、突起18の最上部よりも高い位置に、電熱線14を巻き付けて係止させるための切り欠き26が形成されている。
【0037】
そして、
図4に示すように、電熱線14の“渦巻き部分”14Aの内周側の端が、内側支持ピン22に複数回巻き付けられて切り欠き26に係止され、そのまま突起群20の内側から外側へ引き出されて、外側支持ピン24に複数回巻き付けられて切り欠き26に係止される。こうすることによって、電熱線14は、突起18の最上部以上の高さに支持された状態で“渦巻き部分”14Aの上方を横断することとなる。すなわち、このような電熱線14の“横断部分”14Bは、電熱線14を内側支持ピン22を起点にして外側支持ピン24まで引き出す(導く)ことによって形成される。
【0038】
また、内側支持ピン22と外側支持ピン24との間には、中間支持ピン28が設けられる。中間支持ピン28は、インナー本体12の表面から垂直方向に突出して形成され、この実施例では、たとえば内側支持ピン22および外側支持ピン24の配置位置の中間地点に設けられる。
【0039】
中間支持ピン28は、四角柱状に形成され、その上面28aの高さは突起18の最上部の高さよりも高く、かつ支持ピン22,24の高さよりも低く設定される。中間支持ピン28の上面28aには、
図6に示すように、位置ずれ防止部30が形成されている。位置ずれ防止部30は、上面28aの両端部のそれぞれから垂直上方向に突出して形成され、電熱線14の“横断部分”14Bを挟み込むことによって、電熱線14の位置ずれ等を防止する。
【0040】
さらに、
図4に示すように、中間支持ピン28の前後、具体的には、内側支持ピン22と中間支持ピン28との間、ならびに外側支持ピン24と中間支持ピン28との間には、複数の補助支持ピン32が設けられる。補助支持ピン32は、インナー本体12の表面から垂直方向に突出して形成され、電熱線14の“横断部分”14Bに沿って、その横断方向に一定の間隔を隔てて列状に並ぶように配置される。
【0041】
図3に戻って、インナー本体12の長辺方向の両端部には、たとえばインナー本体12の対角線上に、それぞれ始端ピン34、および終端ピン36が設けられる。始端ピン34、および終端ピン36は、インナー本体12に電熱線14を装着するときに、電熱線14の始端および終端を巻き付けるための部位であり、インナー本体12の表面から突出して形成されている。
【0042】
また、インナー本体12の長辺方向の両端部には、それぞれ案内ピン38が設けられている。案内ピン38は、始端ピン34、および終端ピン36と、突起18との間の電熱線14の張力(テンション)を保つことを目的としたピンであり、インナー本体12の表面から突出して形成され、電熱線14が引っ掛けられる。具体的には、始端ピン40から延びる電熱線14が、一方の案内ピン38を介して、巻き始めの突起18に引っ掛けられ、突起群20の外側へ引き出された電熱線14が、もう一方の案内ピン38を介して、終端ピン36に巻き付けられる。
【0043】
図7および
図8を参照して、この実施例の融着インナー10を製造する方法を以下に示す。
【0044】
先ず、インナー本体12を分岐サドル継手100のサドル102の裏面に沿うように湾曲させ、その状態で固定治具108を装着することによって、インナー本体12の形状を固定する。
【0045】
そして、自動巻き上げ機110を用いて自動(オート)でインナー本体12の表面上に電熱線14を装着する。ただし、自動巻き上げ機110の種類は、特に限定されず、この発明の要旨ではないため、
図7では詳細を図解していない。
【0046】
具体的には、先ず、始端ピン34に複数回電熱線14を巻き付けて、その電熱線14を、案内ピン38を介して巻き始めの突起18となる突起群20eの最外側の突起18に引っ掛け、そのまま各突起18に引っ掛けながら渦巻き状に巻回する。
【0047】
そして、電熱線14を巻き終わりの突起18となる突起群20bの最外側の突起18まで巻いた後、その電熱線14を内側支持ピン22に複数回巻き付けて、突起群20の内側から外側へ引き出し、外側支持ピン24に複数回巻き付ける。それから、案内ピン38を介して終端ピン36に複数回巻き付ける。このようにして、
図8に示すように、インナー本体12の表面上に電熱線14が装着される。
【0048】
続いて、インナー本体12の表面上に電熱線14を装着した後、ヒータなどの加熱器(図示せず)によって突起18の先端を過熱して溶融させる。すると、その溶融部分が幅広になるため、これによって突起18に引っ掛けている電熱線14が外れないように係止される。以上により、融着インナー10の製造作業を終了する。
【0049】
さらに、このような融着インナー10を用いて、
図2に示すような分岐サドル継手100を製造する場合には、先ず、融着インナー10を、インナー本体12の表面を上にした状態で下金型の上に載置して、インナー本体12の貫通孔16内に金属製の筒体等を挿入固定し、上金型を型閉めする。このとき、インナー本体12の一方の案内ピン38と始端ピン34との間で電熱線14に電源接続端子106を取り付けるとともに、もう一方の案内ピン38と終端ピン36との間にも電源接続端子106を取り付けておく。それから、金型内にポリエチレン等の溶融樹脂を射出して、金型内に溶融樹脂を充満させ、融着インナー10と溶融樹脂とを一体的に融着接合させる。そして、溶融樹脂が固化するのを待って型開きすると、サドル102の裏面に融着インナー10が一体的に成形された分岐サドル継手100が得られる。
【0050】
このような融着インナー10においては、インナー本体12を分岐サドル継手100のサドル102の裏面に沿う形状に湾曲させると、インナー本体12の表面上の突起18がインナー本体12に対して直交する方向(つまり、インナー本体12の法線方向)に突き出すため、この突起18に引っ掛けながら電熱線14を渦巻き状に巻回することにより、電熱線14を突起18に安定的に係止させた状態で、電熱線14を配置することが可能である。
【0051】
ここで、特許文献1の電熱マットのように、電熱線をインナー本体(合成樹脂シート)の渦巻き溝に嵌め込んで装着する場合には、上述したように、電熱線を十分なテンションを加えた状態で巻くことができないため、自動巻き上げ機等の機械を用いて電熱線を巻くことが難しく、また電熱線どうしが接触してショートする等の不具合が発生してしまう。
【0052】
しかしながら、この実施例では、電熱線14を突起18に安定的に係止させることができるので、自動巻き上げ機等の機械を用いてインナー本体12に電熱線14を装着することが容易に行える。したがって、融着インナー10の生産性が向上される。
【0053】
さらに、電熱線14を十分なテンションを加えた状態で巻くことができるので、電熱線14にたわみや位置ずれが生じてしまうこともない。つまり、電熱線14どうしが接触してショートする等の不具合が生じない。
【0054】
また、この実施例では、複数の突起18が貫通孔16から外側に向かう方向に列状に並ぶことによって突起群20が構成され、複数の突起群20が貫通孔16の周囲に適宜分布している。このため、突起18の先端をヒータなどの加熱器によって過熱して溶融させる作業を行う際に、各突起群20を構成している突起18をまとめて溶融させることができる。つまり、一度に溶融(固定)できる突起18の数が多くなるため、作業性が向上する。
【0055】
さらにまた、この実施例では、内側支持ピン22と外側支持ピン24との間に中間支持ピン28が設けられる。中間支持ピン28の上面28aの高さが突起18の最上部の高さよりも高く設定されていることにより、電熱線14の“横断部分”14Bが“渦巻き部分”14Aと接触しないように、電熱線14を突起18の最上部以上の高さに保持することが可能である。そして、中間支持ピン28の上面28aの高さが支持ピン22,24の高さよりも低くなるように設定されていることにより、インナー本体12に電熱線14を装着する際にも、この中間支持ピン28を支障とせずに、内側支持ピン22から外側支持ピン24へと電熱線14を導くことが可能である。
【0056】
さらに、中間支持ピン30の前後に、電熱線14の“横断部分”14Bに沿って複数の補助支持ピン34を設けたことにより、万が一電熱線14の“横断部分”14Bがたるんでも、その“横断部分”14Bが“渦巻き部分”14Aに接触してショートすることを防ぐことができる。
【0057】
なお、上述の実施例では、電熱線14としてニクロム線を使用したが、これに限定される必要はない。たとえば、電熱線14には、銅、鉄クロム、クロメル、銅ニッケル、銅マンガンニッケル等の一般用抵抗用線材を使用することができる。
【0058】
また、上述の実施例では、インナー本体12の貫通孔16の周囲には、10つの突起群20a〜20jが全体としてインナー本体12の長辺方向に長い楕円形になるように分布したが、これに限定される必要はなく、突起群20の分布形状は突起群20の数に応じて適宜変更され得る。
【0059】
たとえば、必ずしも10つの突起群20a〜20jが設けられている必要はなく、少なくとも4つの突起群20が貫通孔16の四方に適宜分布していれば、電熱線14を貫通孔16の周囲に円または円近似形(たとえば、正多角形)に巻くことが可能である。
【0060】
一例を挙げると、
図13に示すこの発明の他の一実施例である融着インナー10は、サドルの径が75mmの分岐サドル継手に適用され、インナー本体12には、14つの突起群20が全体として略真円形になるように分布している。
【0061】
さらに、上述の実施例では、複数の突起18が、貫通孔16の外側に向かう方向(つまり、インナー本体12の中央から外側に向かう方向)に一定の間隔を隔てて列状に並ぶように、具体的には、貫通孔16のほぼ放射方向に列状に並ぶように配置されたが、これに限定される必要はない。たとえば、
図10に示すように、貫通孔16の放射方向に対してやや傾斜した方向に列状に並ぶように突起18を配置するようにしてもよいし、
図11に示すように、貫通孔16の放射方向に対してジグザグ状に並ぶように突起18を配置するようにしてもよい。要は、複数の突起18が貫通孔16の周囲に渦巻き状に並ぶように配置されているのであれば、各突起に引っ掛けながら電熱線14を渦巻き状に配置することが可能であるため、必ずしも突起18を貫通孔16の外側に向かう方向に列状に並べて配置する必要はない。
【0062】
さらにまた、上述の実施例では、突起18がインナー本体12の表面から垂直方向に突出して形成されていたが、これに限定される必要はない。たとえば、図示は省略するが、インナー本体12を分岐サドル継手100のサドル102の裏面に沿う形状に湾曲させたときに、インナー本体12の法線方向よりも外側に傾く方向に突出させるようにしてもよい。こうすることにより、電熱線14をより安定的に係止することが可能である。
【0063】
さらに、突起18を略切頭円錐形状に形成する必要もなく、円柱状に形成するようにしてもよいし、四角柱状に形成するようにしてもよいし、また先端に向かうに従って拡径する形状に形成するようにしてもよい。電熱線14を突起18に引っ掛けて配置することが可能であれば、突起18の形状は適宜変更され得る。
【0064】
また、上述の実施例では、各支持ピン22,24には、突起18の最上部よりも高い位置に切り欠き26が形成され、この切り欠き26に電熱線14を複数回巻き付けて係止させたが、これに限定される必要はない。電熱線14の内周端を内側支持ピン22を起点にして外側支持ピン24まで引き出す(導く)ことができるのであれば、必ずしも支持ピン22,24に切り欠き26が形成されている必要はなく、電熱線14の内周端をただ各支持ピン22,24に巻き付けるだけでもよい。また、たとえば、支持ピン22,24に切り欠き26を形成せずに、電熱線14を支持ピン22,24の側壁に引っ掛けて係止させることによって、内側支持ピン22から外側支持ピン24まで引き出すようにしてもよい。また、支持ピン22,24を略切頭円錐形状に形成する必要もなく、円柱状に形成するようにしてもよいし、四角柱状に形成するようにしてもよいし、また先端に向かうに従って拡径する形状に形成するようにしてもよい。つまり、電熱線14の内周端を内側支持ピン22を起点にして外側支持ピン24まで引き出す(導く)ことができるのであれば、支持ピン22,24の形状は適宜変更され得る。
【0065】
なお、外側支持ピン24を内側支持ピン22から電熱線14の“渦巻き部分”14Aに直交する方向に延ばした直線上に設けるようにすれば、電熱線14の“横断部分”14Bの距離が最短にできるため、電熱線14の“横断部分”14Bと“渦巻き部分”14Aとが接触してショートする危険性を小さくすることができる。
【0066】
さらにまた、必ずしも電熱線14の内周端を内側支持ピン22を起点にして外側支持ピン24まで引き出すようにする必要もなく、電熱線14の“横断部分”14Bが“渦巻き部分”14Aと接触してショートすることがないように、“渦巻き部分”14Aの内周側の端を当該渦巻き部分”14Aの外側に引き出す(導く)ことができるのであれば、適宜な方法を採用し得る。
【0067】
また、上述の実施例では、内側支持ピン22および外側支持ピン24の配置位置の中間地点に中間支持ピン28が設けられたが、これに限定される必要はなく、中間支持ピン28は、内側支持ピン22と外側支持ピン24との間の任意の位置に設ければよい。
【0068】
さらに、中間支持ピン28は、四角柱状に形成され、その上面28aには、位置ずれ防止部30が設けられたが、これに限定される必要もない。電熱線14を突起18の最上部以上の高さに保持しつつ、内側支持ピン22から外側支持ピン24へと導くことが可能であれば、中間支持ピン28の形状は適宜変更され得る。
【0069】
さらにまた、上述の実施例では、内側支持ピン22と中間支持ピン28との間、ならびに外側支持ピン24と中間支持ピン28との間に複数の補助支持ピン32が設けられたが、これに限定される必要もなく、内側支持ピン22と中間支持ピン28との間の間隔が狭いのであれば、外側支持ピン24と中間支持ピン28との間にのみ補助支持ピン32を設けるようにしてもよいし、外側支持ピン24と中間支持ピン28との間の間隔が狭いのであれば、内側支持ピン22と中間支持ピン28との間にのみ補助支持ピン32を設けるようにしてもよい。
【0070】
ところで、上述の各実施例ではいずれも、電熱線14をインナー本体12の表面上の突起18に引っ掛けて渦巻き状に巻回するようにしたが、これに限定される必要はなく、インナー本体12の表面上の突起18に電熱線14を引っ掛けながら配置するようにすれば、電熱線14を十分なテンションを加えた状態で巻くことができるため、
図1の実施例と同様の効果が得られる。たとえば、
図16に示すように、電熱線14をインナー本体12の表面上の突起18に引っ掛けながらジグザグ状に折り返しさせることによって配置するようにしてもよい。ただし、この場合には、電熱線14を一筆書き可能な形状になるように、さらに貫通孔16の周囲に均等に分布するように配置形状を決める必要がある。
【0071】
さらに、上述の各実施例ではいずれも、インナー本体12の貫通孔16の周囲に突起18を形成し、電熱線14をその突起18に引っ掛けて配置したが、これに限定される必要はない。
【0072】
たとえば、貫通孔16が形成されていないインナー本体12の、サドル12の分岐孔104に対応する位置、つまり分岐孔104の形成位置の周囲に突起18を形成して、突起16に引っ掛けて電熱線14を配置し、その後で機械加工によってインナー本体12に貫通孔16を形成するようにしてもよい。
【0073】
また、同じように、インナー本体12の、サドル12の分岐孔104に対応する位置、つまり分岐孔104の形成位置の周囲に突起18を形成して、突起16に引っ掛けて電熱線14を配置し、その融着インナー10をサドル102の裏面に一体的に成形した後で、インナー本体12に分岐孔104の形成位置に対応させた貫通孔16を機械加工によって形成するようにしてもよい。要は、インナー本体12に貫通孔16が形成されているか否かに拘わらず、インナー本体12における分岐孔104の形成位置の周囲に突起18を形成して、その突起18に電熱線14を引っ掛けて配置していればよい。
【0074】
なお、上述した径や高さ等の具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。