(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第二の金属製バーは、前記固定ボルトが螺合する前記ねじ穴を有する水平部材と、前記水平部材に対して垂直方向に延在した垂直部材とを有したL字型固定部材とされることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載のサイドステー取付部構造。
前記第二の金属製バーは、前記固定ボルトが螺合する前記ねじ穴を有する水平部材と、前記水平部材に対して垂直方向に延在した垂直部材とを有したL字型固定部材とされることを特徴とする請求項9〜11のいずれかの項に記載のサイドステー取付部構造。
前記サイドステー挿入部は、前記ヘルドフレームステーブの中空部に嵌合する厚さを有した概略矩形状をした板状部材であって、前記サイドステー本体とは反対側の先端部から前記サイドステー本体側へと所定長さに亘って前記先端部が開口したU字状の溝が垂直方向に形成され、
前記サイドステー挿入部は、前記サイドステー挿入部の前記U字状溝が、前記上板側から挿通された前記固定ボルトに嵌り合うようにして前記前記ヘルドフレームステーブ内へと挿入され、
前記前記ヘルドフレームステーブ内へと挿入された前記サイドフレームを、前記固定ボルトと前記第二の金属製バーとにより固定する、
ことを特徴とする請求項1〜15のいずれかの項に記載のサイドステー取付部構造。
【背景技術】
【0002】
ヘルドフレームは、織機において経糸を通すためのヘルド(ソウコウ)を支持するものであり、製織に際し、一対のヘルドフレームを交互に上下運動させて経糸を開口させ、その開口に緯糸を打込むためのものである。
【0003】
一般に、ヘルドフレーム1は、
図1にその一例を示すように、長手方向(矢印A方向)に延在した上下枠フレームステーブ、即ち、両フレーム本体2と、両フレーム本体2の長手方向両端部に配置された、両フレーム本体2を連結するサイドステー3とを有する。またフレーム本体2の長さ方向に直交する短手方向(矢印B方向)の、互いに対向した一端側には、フレーム本体2の長手方向に沿ってヘルド4を支持するフックハンガー用の支持突起部5が一体に形成されている。
【0004】
また、フレーム本体2とサイドステー3は、一般的に、連結部6によって、取り外し可能な構造で接続されている。その他に、ヘルドフレーム1同志の干渉を防ぐための案内板7や、ヘルドフレーム1に上下動の動力を伝達する箇所のカップリング8がヘルドフレーム1には取付けられている。
【0005】
フレーム本体2は、現在ほとんどはアルミ製である。アルミ製フレーム本体2の場合は、
図2に示すように、中空構造であるが、中空部分の強度を出すために数本の横リブ21の入った構造となっている。
【0006】
しかし、織機の織りスピードを上げると、アルミニウムの強度、特に疲労強度がもたず、現況では、連続使用で半年を
待たずに取替えを余儀なくされている。
【0007】
近年、織機の高速化に対応するために、種々の軽い繊維強化複合材(FRP)製ヘルドフレームが提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1には、FRP製フレームステーブとサイドステーとの結合方法が開示され、特許文献2には、FRP製ヘルドフレームの剛性、強度を確保しつつ、破損、磨耗したミドルフックハンガ、ロッド受部等の部品交換を容易にする構造が提案されている。
【0009】
現在、織機の高速化、幅広化が世界の潮流となってきており、幅広化は、織機として既に、幅、即ち、
図2にて紙面に直交する方向の長手方向長さが3500mmを超えるものの製作まで進んでいる。この機種のフレーム本体は、アルミ製だが、幅広化に伴いフレーム本体にかかる荷重が増加し、それに強度や剛性が充分追従できず、速度を上げるとフレーム本体の破損に至る。そのために、速度を上げての織りができず、幅広化のメリットを享受していないのが実情である。
【0010】
一方、強化繊維として炭素繊維を用いた繊維強化複合材、即ち、CFRPを用いたフレーム本体が提案され、一部使用されているが、まだ製品の強度や剛性が足りないため、幅が1500mm程度のものにしか適用されていないのが実情である。その理由は、軽量化になっても、強度や剛性の不足から、織機の速度を上げられないためである。
【0011】
つまり、CFRP製でありながら、強度や剛性の不足から幅広化に対応できない理由の一つとして、CFRP製ヘルドフレーム構造が、中空構造若しくは内部に発泡材を入れただけの構造になっているため、充分な強度を確保できず、特に疲労強度を確保するのが難しいからである。そのために、現状では、幅の狭い織機でしか用いられず、しかも十分な高速化を図れないものとなっている。
【0012】
CFRP製ヘルドフレームの強度、剛性を確保するために、中実構造にすれば、それなりの効果はでるが、重量的にアルミ製より重くなり、且つコストも高くなり、使用するメリットはほとんどなくなる。
【0013】
そこで、本発明者らは、限られた構造の中で、最大の強度、剛性を発揮し、且つ軽量で疲労強度に強い構成とし、それによって、今まで達成できなかった幅広化した織機の生産性を大きく改善することのできる繊維強化複合材製ヘルドフレームを提供するために、特許文献3において、繊維強化複合材製ヘルドフレームを提案した。
【0014】
特許文献3に記載する繊維強化複合材製ヘルドフレームの概略構成を
図3に示す。本例において、繊維強化複合材製ヘルドフレームは、細長形状の長手方向(長さL)に延在する略平板状のフレーム本体2と、このフレーム本体2の下方端には、その長手方向に沿っ
て一体に支持突起5が連接されている。フレーム本体2は、内層にハニカム構造体4を有し、内層の両面には、内層のハニカム構造体4を挟持する態様で表面層としての長繊維強化複合材11(11a、11b)が配置されている。更に、内層のハニカム構造体4の周囲端面の一部若しくは全部が、幅3mm〜30mmの範囲で、短繊維強化複合材、樹脂又は発泡材をハニカム構造体4内に詰めこむことによって補強部9を形成する。
【0015】
しかし、特許文献3で提案したヘルドフレームにおいては、サイドステーと連結する際、従来の方式、例えば、特許文献1に示されるような方式を採用せざるを得なかった。このような方式においては、連結するために金具の挿入が必要となり、そのために、ハニカムの除去、金具の接着等の煩雑な作業が必要となり、コストアップの原因となっていた。
【0016】
また、従来の連結方法は、何種類もの金具を用いて連結する方式のため、この箇所の重量が重くなり、軽量化のメリットが半減するものとなっていた。
【0017】
そこで、本発明者らは、特許文献4に示す繊維強化複合材製ヘルドフレームを提案した。
図4にフレーム本体2の全体構成を示す。本例では、フレーム本体2は、上記
図3に示す特許文献3のフレーム本体2と同様の構成とされ、内層にハニカム構造体9を有し、表面層に長繊維強化複合材11(11a、11b)を配置し、且つ内層のハニカム構造体9の周囲端面の一部若しくは全部が、幅3mm〜30mmの範囲で、短繊維強化複合材、樹脂又は発泡材をハニカム構造体4内に詰めこむことによって補強部10が形成される。ただ、本例では、
図4に示すように、フレーム本体2は、両側部に形成したサイドステー取付突起部60をサイドステー3の溝3Aに挿入して固定する構成とされた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上記特許文献4に記載するような繊維強化複合材製ヘルドフレームは、フレーム本体2の曲げ強度や曲げ弾性率が大幅に向上するのみでなく、端面の応力集中に対しても補強され、曲げ疲労に対しても強いものとなり、広幅の織機において、従来以上の織りスピードアップのみならず、連続織り時間も、大幅に向上させることができる、といった特長を有するものである。
【0020】
ヘルドフレームにて、フレーム本体であるヘルドフレームステーブを炭素繊維強化複合材製とする目的は、軽量化と高剛性化による、織機の高速化、制振性達成にある。勿論、長尺化対応、品質向上が達成されることは必須である。
【0021】
そのためには、限られた断面形状のなかで、如何に効率的な炭素繊維強化複合材(CFRP)の配置をするか、いかに効率的な組立をするかが重要である。
【0022】
本発明は、上記観点から、繊維強化複合材製ヘルドフレームを更に発展させたものである。
【0023】
本発明の目的は、軽量化と高剛性化による、織機の高速化、制振性を達成することができ、しかも、組立分解が容易である炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステー
ブとサイドステーとを連結するためのサイドステー取付部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的は本発明に係る炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステー
ブとサイドステーとを連結するためのサイドステー取付部構造にて達成される。要約すれば
、本発明によれば、
細長形状とされ長手方向に延在し、長手方向両端部にサイドステーが取り付けられる中空構造を有した炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブ
を、前記サイドステーに取り付けるためのサイドステー取付部構造であって、
前記炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブは、
長手方向に延在する矩形状の炭素繊維強化複合材製の両側板と、
前記両側板の上端及び下端を長手方向に沿って互いに連結する炭素繊維強化複合材製の上板及び下板と、
前記上板の長手方向両端部において各々前記上板の下面に一体的に取り付けられた、前記サイドステーを取り付けるための第一の金属製バーと、
を備え、
前記上板及び前記下板は、炭素繊維を長手方向に引き揃えて作製された一方向炭素繊維強化複合材にて作製され、長手方向に直交する上下方向の厚さが5mm以上20mm以下とされ
、
前記サイドステーは、垂直方向に延在するサイドステー本体と、前記サイドステー本体から前記ヘルドフレームステーブ側へと突出し、中空構造の前記ヘルドフレームステーブ内へと挿入可能なサイドステー挿入部とを備え、
前記上板側から前記上板、前記第一の金属製バー及び前記サイドステー挿入部を貫通するようにして固定ボルトを挿通し、前記固定ボルトの下端には、ねじ穴を有する第二の金属製バーを螺合させ、
前記ヘルドフレームステーブ内へと挿入された前記サイドステー挿入部を、前記固定ボルトと前記第二の金属製バーとにより前記ヘルドフレームステーブに固定する、
ことを特徴とする
サイドステー取付部構造が提供される。
【0025】
本発明の一実施態様によれば、前記上板の長手方向両端部に各々取り付けられた二つの前記第一の金属製バーの間にて前記上板の下面に補強板を設け、
前記補強板は、炭素繊維を長手方向に引き揃えて作製された一方向炭素繊維強化複合材にて作製され、長手方向に直交する上下方向の厚さが5mm以上20mm以下とされる。
【0028】
本発明の
他の実施態様によれば、前記サイドステー挿入部は、上面に凸状突起が形成されており、
前記第一の金属製バーの前記サイドステー挿入部上面と接する下面には、前記サイドステー挿入部を前記ヘルドフレームステーブに挿入したとき前記サイドステー挿入部の前記凸状突起に係合する凹状溝が形成されている。
【0029】
本発明の他の実施態様によれば、前記第二の金属製バーは、金属製のリベットで前記両側板に結合し、
前記両側板は、前記第一の金属製バーと前記第二の金属製バーとの間に位置して、前記両側板の各側端から長手方向に所定長さにてスリットが形成されている。
【0030】
本発明の他の実施態様によれば、前記第一の金属製バーの下方に位置して調整用移動金属製バーを配置し、固定ボルトにて前記上板及び前記第一の金属製バーに固定し、
前記サイドステー挿入部は、前記調整用移動金属製バーと前記第二の金属製バーとの間に挿入し、
前記上板側から前記上板、前記第一の金属製バー、前記調整用移動金属製バー及び前記サイドステー挿入部を貫通するようにして固定ボルトを挿通し、前記固定ボルトの下端に配置したねじ穴を有する前記第二の金属製バーに螺合させる。
【0031】
本発明の他の実施態様によれば、前記サイドステー挿入部は、上面に凸状突起が形成されており、
前記調整用移動金属製バーの前記サイドステー挿入部上面と接する下面には、前記サイドステー挿入部を前記ヘルドフレームステーブに挿入したとき前記サイドステー挿入部の前記凸状突起に係合する凹状溝が形成されている。
【0032】
本発明の他の実施態様によれば、前記第一の金属製バーの位置に対応する領域にて、少なくとも一方側の側板に開口部が形成されている。
【0033】
本発明の他の実施態様によれば、前記第二の金属製バーの下方部に位置して第三の金属製バーを設け、
前記第三の金属製バーは、金属製のリベットで前記両側板に結合し、
前記第二の金属製バーは、下面に凸状突起が形成されており、前記第二の金属製バーの下面と対向する前記第三の金属製バーの上面には凹状溝が形成されており、前記サイドステーを前記ヘルドフレームステーブに取り付けたとき、前記第二の金属製バーの凸状突起が前記第三の金属製バーの凹状溝に嵌合する。
【0034】
本発明の他の実施態様によれば、前記第二の金属製バーは、前記固定ボルトが螺合する前記ねじ穴を有する水平部材と、前記水平部材に対して垂直方向に延在した垂直部材とを有したL字型固定部材とされる。
【0035】
本発明の他の実施態様によれば、前記第二の金属製バーは、前記固定ボルトが螺合する前記ねじ穴を有する水平部材と、前記水平部材に対して垂直方向に延在した垂直部材とを有したL字型固定部材とされ、
前記垂直部材の上面には、前記第一の金属製バー又は前記調整用移動金属製バーの下面に形成された
凹状溝に嵌合する突起が形成されている。
他の実施態様によれば、前記水平部材の下方部に位置して第三の金属製バーを設け、
前記第三の金属製バーは、金属製のリベットで前記両側板に結合し、
前記水平部材は、下面に凸状突起が形成されており、前記水平部材の下面と対向する前記第三の金属製バーの上面には凹状溝が形成されており、前記サイドステーを前記ヘルドフレームステーブに取り付けたとき、前記水平部材の凸状突起が前記第三の金属製バーの凹状溝に嵌合する。
【0036】
本発明の他の実施態様によれば、前記サイドステー挿入部は、前記ヘルドフレームステーブの中空部に嵌合する厚さを有した概略矩形状をした板状部材であって、前記サイドステー本体とは反対側の先端部から前記サイドステー本体側へと所定長さに亘って前記先端部が開口したU字状の溝が垂直方向に形成され、
前記サイドステー挿入部は、前記サイドステー挿入部の前記U字状溝が、前記上板側から挿通された前記固定ボルトに嵌り合うようにして前記ヘルドフレームステーブ内へと挿入され、
前記ヘルドフレームステーブ内へと挿入された前記サイドフレームを、前記固定ボルトと前記第二の金属製バーとにより固定する。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、軽量化と高剛性化による、織機の高速化、制振性を達成することができ、しかも、組立分解が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明が具現化されるヘルドフレームの一例を示す正面図である。
【
図2】アルミ製ヘルドフレームステーブの断面図である。
【
図3】繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブの一例を示す斜視図である。
【
図4】繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブとサイドステーとを連結するためのサイドステー取付部構造の一例を示す斜視図である。
【
図5】本発明に係る炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブの一実施例の斜視図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明に係る炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブの一実施例の断面図であり、
図6(b)は、本発明に係る炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブの他の実施例の断面図である。
【
図7】
図7(a)は、本発明に係るサイドステー取付部構造の一実施例を説明する斜視図であり、
図7(b)は、
図7(a)に示すサイドステー取付部構造の一部の拡大斜視図である。
【
図8】本発明に係る炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブの他の実施例の斜視図である。
【
図9】本発明に係る炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブの他の実施例の斜視図である。
【
図10】本発明に係るサイドステー取付部構造の他の実施例を説明する図であり、
図10(a)は、サイドステー取付部構造の全体を示す斜視図であり、
図10(b)は、
図10(a)に示すサイドステー取付部構造の一部の拡大斜視図である。
【
図11】本発明に係るサイドステー取付部構造の他の実施例を説明する図であり、
図11(a)は、サイドステー取付部構造の全体を示す斜視図であり、
図11(b)及び
図11(c)は、
図11(a)に示すサイドステー取付部構造の一部の拡大斜視図である。
【
図12】本発明に係るサイドステー取付部構造の他の実施例を説明する図であり、
図12(a)は、サイドステー取付部構造の全体を示す斜視図であり、
図12(b)は、
図12(a)に示すサイドステー取付部構造の一部の拡大斜視図である。
【
図13】本発明に係るサイドステー取付部構造の他の実施例を説明する図であり、
図13(a)は、サイドステー取付部構造の全体を示す斜視図であり、
図13(b)及び
図13(c)は、
図13(a)に示すサイドステー取付部構造の一部の拡大斜視図である。
【
図14】本発明に係るサイドステー取付部構造の他の実施例を説明する斜視図である。
【
図15】本発明に係るサイドステー取付部構造の他の実施例を説明する図であり、
図15(a)は、サイドステー取付部構造の全体を示す斜視図であり、
図15(b)は、
図15(a)に示すサイドステー取付部構造の一部の拡大斜視図であり、
図15(c)は、正面図である。
【
図16】本発明に係るサイドステー取付部構造の他の実施例を説明する正面図である。
【
図17】本発明に係るサイドステー取付部構造の他の実施例を説明する図であり、
図17(a)は、サイドステー取付部構造の全体を示す斜視図であり、
図17(b)は、
図17(a)に示すサイドステー取付部構造の一部の拡大斜視図である。
【
図18】本発明に係るサイドステー取付部構造の他の実施例を説明する図であり、
図18(a)は、サイドステー取付部構造の全体を示す斜視図であり、
図18(b)は、
図18(a)に示すサイドステー取付部構造の一部の拡大斜視図であり、
図18(c)は、正面図である。
【
図19】本発明に係るサイドステー取付部構造の他の実施例を説明する正面図である。
【
図20】本発明に係るサイドステー取付部構造の他の実施例を説明する図であり、
図20(a)は、サイドステー取付部構造の全体を示す斜視図であり、
図20(b)は、
図20(a)に示すサイドステー取付部構造の一部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係る炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステー
ブとサイドステーとを連結するためのサイドステー取付部構造を図面に則して更に詳しく説明する。
【0040】
実施例1
(ヘルドフレームの全体構成)
図5、
図6、
図7に、本発明の炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブ2の一実施例の概略構成を示す。
図5及び
図6は、それぞれ、繊維強化複合材製ヘルドフレーム1(
図1参照)を構成する、上枠ヘルドフレームステーブ2、即ち、中空構造を有する上方側のフレーム本体2を示す斜視図及び横断面図である。
図7は、フレーム本体2と、フレーム本体2の長手方向一方の側部に位置するサイドステー3の一部を示す斜視図である。
【0041】
以下の説明では、本実施例のヘルドフレームステーブ2の構成をより良く理解し得るように、単に説明のために、
図5にてY方向を上下方向(又は、短手方向)といい、X方向を左右方向(又は、長手方向)という。
【0042】
本実施例にて、ヘルドフレームは、全体構成は、
図1に示す従来のヘルドフレーム1と同様の構成とされ、細長形状の長手方向に延在する中空構造を有したフレーム本体とされるフレームステーブ2と、このフレーム本体2の長手方向両側部に一体に設けられたサイドステー3とを備えている。
【0043】
フレーム本体2は、
図5に示すように、中空の構造体とされる中空構造部2Aを有しており、また、この中空構造部2Aの長手方向に直交する短手方向の一端側には、即ち、このフレーム本体2の長手方向に沿った下端縁側には、フレーム本体2の長手方向に沿ってヘルド4(
図1参照)を支持するフックハンガー用の支持突起部5が一体に形成されている。
【0044】
また、フレーム本体2の長手方向の両端部上端は、
図7に示すように、サイドステー3とフレーム本体2とを結合するための構造、即ち、サイドステー取付部構造60とされる。
【0045】
本実施例の繊維強化複合材製ヘルドフレーム1にて、フレーム本体2の中空構造部2Aは、
図5及び
図6(a)に示すように、長手方向に延在する矩形状の両側板11(11a、11b)と、両側板11a、11bの上端及び下端を連結する横リブ10、即ち、上板10a及び下板10bと、にて構成される。
【0046】
本発明によれば、上板10aの長手方向両端部には、各々、サイドステー取付部構造60を構成するために、上板10aの下面に金属製のサイドステー固定部材、即ち、例えば、鋼、ステンレススチール、銅、アルミ等で作製された金属製バー(第一の金属製バー)20が設けられる。本実施例では、金属製バー20は、横断面形状が矩形状とされ、幅T20は両側板11a、11bの内面間の距離T3と同じとされ、両側板11a、11bの内側に配置される。金属製バー20の側板11の長手方向に沿った長手方向長さ(L20)は所定長さ、例えば、3〜8cm、通常、5cm程度とされる。厚さ(H3)は、5〜10mmとされ、通常、5mm程度とされる。金属製バー20は、上部の上板10aに接着剤にて固着される。また、金属製バー20は、
図8に示すように、更に、金属製バー20の側面を両側板側から貫通する金属製の、例えば、鋼、ステンレススチール、銅、アルミ等で作製されたリベット22にて両側板11(11a、11b)に結合することも可能である。
【0047】
更には、
図9に示すように、フレーム本体2の長手方向両端部に配置したサイドステー固定部材を構成する金属製バー20、20の間に、上板10aと同様の構成とされる炭素繊維強化複合材料から成る追加の横リブ(即ち、補強板)10cを上板10aの下面に接着などにより固着しても良い。
【0048】
図5及び
図6(a)を参照すると、フレーム本体2の下方に一体に形成される支持突起部5は、フレーム本体2の一方側の側板11aの下端縁長手方向に沿って、側板11aと一体に形成された矩形状の支持板5aと、支持板5aの下方端に隣接して形成された横断面形状が四角形とされる突部5bとにて構成される。実際には、詳しくは後述するが、
図6(b)に示すように、支持板5aは、フレーム本体2の側板11a、11bを、下方へと更に延長し、下端にて突起材5cを囲包するように互いに接合して形成することもできる。
【0049】
フレーム本体2の中空構造とされる中空構造部2A、更には、支持突起部5は、実質的に炭素繊維強化複合材にて作製される。理解を容易とするために一例として、本実施例におけるフレーム本体2の具体的寸法を挙げれば、以下の通りである。
【0050】
フレーム本体2の中空構造部2Aの上下方向の長さW1は118mm、支持突起部5の上下方向の長さW2は37mmとされる。即ち、フレーム本体2の全体の幅Wは、155mm,フレーム本体2の下端、即ち、下板10bから突起部5bまでの上下方向の長さW3は25mmとされる。フレーム本体2の長手方向の長さLは、3500mmを越える長さとし得るが、本実施例では2374mmとした。
【0051】
また、本実施例では、両側板11a、11bの外表面間の大きさT1は9mmとされ、各側板11a、11bの厚さT2は1mm(即ち、両側板11a、11bの内側面間の距離T3は7mm)とした。また、支持板5aの厚さT4は、2mmとした。特に、フレーム本体2の上板10a及び下板10b、並びに、補強板10cは、長繊維の炭素繊維を一方向に揃えて、長手方向に配列して形成された一方向炭素繊維強化複合材とされ、厚さH1、H2、H4(
図9)は5mm以上20mm以下(通常、5〜10mm)とされる。特に上板10a、下板10bに関して言えば、5mm未満では、ヘルドフレームステーブ2に要求される所要の強度が得られなくなる。一方、上限値としては、20mmとされるが、20mmを越えると、強度は上がるが、ヘルドフレームステーブを炭素繊維強化複合材で作製する重要な要因をなす、ヘルドフレームステーブの「軽量化」の点でメリットがなくなってしまう。つまり、ヘルドフレームステーブをアルミニウムにて作製した従来の場合と同様な重さとなってしまう虞がある。本実施例では、軽量化を考慮して、上板10a、下板10bの厚さH1、H2(及び、必要に応じて使用される補強板10cの厚さH4)は、下限値である5mmとした。勿論、H1、H2、H4の値は、設計に応じて、それぞれ異なる値とすることもできる。
【0052】
次に、本実施例の炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブ2の各部材について、詳しく説明する。
【0053】
(フレーム本体)
本実施例の繊維強化複合材製ヘルドフレーム1にて、中空構造とされるフレーム本体、即ち、ヘルドフレームステーブ2の両側板11(11a、11b)を形成する炭素繊維強化複合材に使用される長繊維の形態は、一方向に引き揃えられたUD形状、2軸に織られた平織り及び朱子織り形状、または、3軸に織られた3軸織り形状が単独で、または、複数組み合わされて使用することができる。横リブ10としての上板10a、下板10b(更には、補強板10c)は、上述のように、一方向に引き揃えられたUD形状とされる。
【0054】
また、炭素繊維強化複合材に使用されるマトリックス樹脂は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、または、フェノール樹脂のいずれかが使用できる。
【0055】
炭素繊維強化複合材の繊維体積含有率は、30〜70%、通常、50〜60%とされる。
【0056】
(支持突起部)
図6(b)に示すように、本実施例によれば、上記フレーム本体2に連接して一体に設けられるフックハンガー用の支持突起部5の支持板5aは、フレーム本体2の両側板11(11a11b)を形成する炭素繊維強化複合材を互いに接着することにより形成される。また、支持突起部5の先端部は、フックハンガー用として機能するために所定の形状寸法を有した突起5bを有する。この突起5bは、支持板5aを形成する炭素繊維強化複合材11a、11bの間に、長繊維強化複合材、短繊維強化複合材、樹脂、或いは、樹脂発泡材から成る突起材5cを介在させて一体に形成することができる。突起材5cは、強化繊維は、炭素繊維に限定されず、ガラス繊維、有機繊維などを使用することができる。
【0057】
(サイドステー取付部構造)
上述のように、サイドステー取付部構造60は、フレーム本体2の両側端部上端にサイドステー3の固定部材として配置された金属製バー20を有している。
【0058】
図7(a)、(b)に、上記フレーム本体2の長手方向右側端に設置された金属製バー20と、右側のサイドステー3とを連結するためのサイドステー取付部構造60の一実施例を示す。フレーム本体2の左側端も右側端と同様にサイドステー3が配置され、同様のサイドステー取付部構造とされるが、
図7(a)、(b)には省略されている。
【0059】
図7(a)に示すように、上板10aと、フレーム本体2の長手方向両端に各々設置された金属製バー20とには、それぞれ、上板10aから金属製バー20を上下方向に同中心にて貫いた貫通穴12、21が形成されている。
【0060】
図7(b)に示すように、断面が矩形状とされる金属製バー20は、好ましくは、その下面に長手方向に沿って、横断面が矩形状とされる凹状の溝22が加工されている。
【0061】
一方、サイドステー3は、上下方向に延在した横断面が矩形状とされる金属製部材とされるサイドステー本体30と、その上端に直角方向に突出して一体に形成され、フレーム本体中空構造部2Aへと挿入されてフレーム本体2に取り付けられる挿入部31とを有している。サイドステー3、即ち、サイドステー本体30及び挿入部31としては、鋼、ステンレススチール、アルミニウムなどが使用される。
【0062】
挿入部31は、サイドステー本体30から直角方向に所定の長さL30、例えば、30〜80mmだけ延び、フレーム本体2の側面中空部へと装着可能とされる概略矩形状をした板状部材とされる。また、挿入部31の厚さT30は、6〜6.5mmと側面中空部厚みT3(本実施例ではT3=7mm)より少し薄めで、高さH30は、20〜70mmとされる。
【0063】
本実施例では、挿入部31の先端部には、サイドステー本体30とは反対側の先端面から所定長さ(L30の1/2程度)に亘ってU字形状の溝32が上下方向に貫通して形成されている。
【0064】
更に、好ましくは、上述した金属製バー20に形成された溝22に嵌合するために、挿入部31の上面には、サイドステー本体31から溝32の方向へと長手方向に沿って所定長さ(L30の1/2程度)に亘って、金属製バー20の溝22に嵌合するに適した横断面形状、即ち、本実施例では矩形状とされる凸状突起33が形成される。従って、サイドステー3の挿入部31をフレーム本体2の側端部中空部へと差し込むと、サイドステー3の挿入部31の上面凸状突起33が金属製バー20の下面溝22に嵌合し、サイドステー3がフレーム本体2の側端部に一体的に長手方向に整列して装着される。
【0065】
なお、本実施例によると、
図10に示すように、上板10aに固着された第一の固定部材としての固定の金属製バー(第一の金属製バー)20の下方に所定距離離間して第二の固定部材としての可動の第二の金属製バー40が配置される。
【0066】
第二の金属製バー40は、第一の金属製バー20と同様の材料及び形状寸法とすることができる。ただ、ねじ穴41が加工されている。つまり、第二の金属製バー40は、サイドステー固定ボルト38のナット部材として機能する。なお、第一の金属製バー20に形成された溝22は有していない。
【0067】
本例では、上記構成にて、サイドステー3をフレーム本体2の中空構造部2Aの側部に挿入するに先立って、
図10(a)に示すように、先ず、サイドステー固定ボルト38を、上板10aから第一の金属製バー20へと貫通穴12、21を貫いて貫通し、第二の金属製バー40ねじ穴41に螺合させる。次いで、第一の金属製バー20と第二の金属製バー40とで挿入部31を挟持するように、挿入部31のU字溝32に固定ボルト38の軸部が嵌合するようにしてサイドステー31の挿入部31をフレーム本体2の中空部に挿入する。
【0068】
これにより、サイドステー3の挿入部31の上面凸状突起33が金属製バー20の溝22に嵌合し、サイドステー3がフレーム本体2の側面に一体的に装着される。サイドステー挿入部31の下面は、第二の固定金属製バー40の上面に当接される。
【0069】
従って、サイドステー3の挿入部31は、固定ボルト38により、第一の金属製バー20と第二の金属製バー40とによって挟持され、サイドステー3は、フレーム本体2の側端部にしっかりと固着される。
【0070】
図11に、本実施例1のサイドステー取付部構造60の他の変更実施例1−1を示す。
【0071】
上記実施例1では、
図10に示すように、可動の固定部材として第二の金属製バー40が使用され、サイドステー3の挿入部31をフレーム本体2の側端中空部へと差し込むに先立って、
図10に示すように、可動の第二の金属製バー40がフレーム本体2の側部中空部に配置され、固定ボルト38の先端部が螺合された。
【0072】
本変更実施例1−1においても、実施例1における第二の金属製バー40と同様の第二の金属製バー40Aが使用されるが、ただ、本変更実施例1−1における第二の金属製バー40Aは、その下面部において長手方向(即ち、フレーム本体2の長手方向)に延在して突起部40A1が形成されている点で相違している。第二の金属製バー40Aの全体構成及び機能は実施例1の第二の金属製バー40と同様とされる。
【0073】
更に、本変更実施例1−1では、可動の第二の金属製バー40Aの下方部に位置して、固定の第三の金属製バー50が設置される。第三の金属製バー50は、側面を両側板側から貫通するリベット51にて両側板11(11a、11b)に固定される。
【0074】
また、第三の金属製バー50の上面には、上記第二の金属製バー40Aの下面部に形成された突起部40A1に嵌合する形状とされる凹状溝52が長手方向(即ち、フレーム本体2の長手方向)に沿って形成されている。
【0075】
上記構成にて、本変更実施例1−1においても、実施例1にて説明したと同様にして、サイドステー3の挿入部31は、固定ボルト38により、第一の金属製バー20と第二の金属製バー40Aとによって挟持され、サイドステー3は、フレーム本体2の側端部にしっかりと固着される。
【0076】
更に、本変更実施例1−1では、第二の金属製バー40Aの下面突起部40A1が、フレーム本体2に固定された第三の金属製バー50の上面に形成された凹溝52に嵌合しており、この構成によって、サイドステー3の横振れを抑制することができる。
【0077】
実施例2
次に、
図12を参照して本発明に係るサイドステー取付部構造60の他の実施例を説明する。
【0078】
上記実施例1では、サイドステー3の挿入部31をフレーム本体2の側端中空部へと差し込むに先立って、
図10に示すように、可動の第二の金属製バー40がフレーム本体2の側部中空部に配置され、固定ボルト38の先端部が螺合された。
【0079】
本実施例2では、
図12に示すように、上記可動の第二の金属製バー40の代わりに、第二の金属製バーとしてL字型固定部材35が使用される。即ち、L字型固定部材35は、垂直部材35aと水平部材35bとから成り、垂直部材35aの上面には、金属製バー20の溝22に嵌合する所定長さの凸状突起36が形成される。水平部材35bには、垂直方向にサイドステー固定ボルト38に螺合するねじ穴37が形成されている。水平部材35bは、固定ボルト38のナット部材としての機能をなす。サイドステー3の構成は、実施例1で説明したと同じとされる。
【0080】
本実施例においても、先ず、
図12に示すように、サイドステー固定ボルト38を、上板10aから第一の金属製バー20へと同中心にて形成された貫通穴12、21を貫いて貫通し、L字型固定部材35のねじ穴37にねじ込む。この時、垂直部材35aの凸状突起36は、第一の金属製バー20の溝22に嵌合しており、サイドステー挿入部31と、L字型固定部材35の水平部材35bとを整列させる機能をなす。これによって、サイドステー3の挿入部31は、固定ボルト38により、金属製バー20とL型固定部材35の水平部材35bによって挟持され、サイドステー3は、フレーム本体2にしっかりと固着される。
【0081】
本実施例2においても、更に他の変更実施例2−1として、
図13に示すように、水平部材35bの下方部に位置して第三の金属製バー50を設置することができる。
【0082】
つまり、本変更実施例2−1においても、上記実施例2におけるL字型固定部材35と同様のL字型固定部材35Aが使用されるが、ただ、本変更実施例2−1における水平部材35bは、その下面部において長手方向(即ち、フレーム本体2の長手方向)に延在して突起部35b1が形成されている点で相違している。L字型固定部材35Aの全体構成及び機能は上記実施例2におけるL字型固定部材35と同様とされる。
【0083】
本変更実施例2−1では、上述のように、水平部材35bの下方部に位置して、固定の第三の金属製バー50が設置される。第三の金属製バー50は、側面を両側板側から貫通するリベット51にて両側板11(11a、11b)に固定される。
【0084】
また、第三の金属製バー50の上面には、水平部材35bの下面部に形成された突起部35b1に嵌合する形状とされる凹状溝52が長手方向(即ち、フレーム本体2の長手方向)に沿って形成されている。
【0085】
上記構成にて、本変更実施例2−1においても、上記実施例2にて説明したと同様にして、サイドステー3の挿入部31は、固定ボルト38により、第一の金属製バー20とL字型固定部材35Aとによって挟持され、サイドステー3は、フレーム本体2の側端部にしっかりと固着される。
【0086】
更に、本変更実施例2−1では、L字型固定部材35Aの水平部材35bの下面突起部35b1が、フレーム本体2に固定された第三の金属製バー50の上面に形成された凹溝52に嵌合しており、この構成によって、サイドステー3の横振れを抑制することができる。
【0087】
実施例3
図14に、サイドステー取付部構造60の他の実施例を示す。上記実施例1では、
図10に示すように、可動の固定部材として第二の金属製バー40が使用された。
【0088】
本実施例3では、可動の第二の金属製バー40の代わりに、固定の第二の金属製バー42が使用される。実施例1における第一の金属製バー20及びサイドステー3の構成は、実施例1で説明した構成と同じとされる。
【0089】
ただ、本実施例では、第二の固定金属製バー42は、側面を両側板側から貫通する金属製リベット44にて両側板11(11a、11b)に固定される。第二の固定金属製バー42のその他の構成は、実施例1の第二の金属製バー40と同様とされる。
【0090】
本実施例によると、フレーム本体2の両側板11(11a、11b)には、第一の固定金属製バー20と第二の固定金属製バー42との間に位置して、フレーム本体2の側端面から所定長さに亘ってスリット45が形成されている。スリット45は、その長さL45が、好ましくは、上面及び下面固定金属製バー20、42の長手方向長さより2〜3cm以上長くされ、スリット幅W45は1〜2mm程度とされる。
【0091】
上記構成にて、本変更実施例では、フレーム本体2の第一の固定金属製バー20と第二の固定金属製バー42との間の側面中空部にサイドステー3の挿入部31が差し込まれる。これにより、サイドステー3の挿入部31の上面凸状突起33が金属製バー20の溝22に嵌合し、サイドステー3がフレーム本体2の側面に一体的に装着される。サイドステー挿入部31の下面は、第二の固定金属製バー42の上面に当接される。
【0092】
次いで、
図14に示すように、サイドステー固定ボルト38を、上板10aから金属製バー20へと貫通穴12、21を貫いて貫通し、更に、サイドステー挿入部31のU字状溝32を貫通し、第二の固定金属製バー42のねじ穴43にねじ込む。これによって、サイドステー3の挿入部31は、固定ボルト38により、第一の金属製バー20及び第二の金属製バー42とによって挟持され、固定ボルト38を固定の金属製バー42に螺合して締め付けることによって、サイドステー3は、フレーム本体2に固着される。勿論、上述の各実施例にて説明したように、最初に、サイドステー固定ボルト38を、上板10aから金属製バー20へと貫通穴12、21を貫いて貫通し、更に、第二の固定金属製バー42のねじ穴43に螺合させ、その後、サイドステー挿入部31を、固定ボルト38のねじ軸にサイドステー挿入部31のU字状溝32が嵌合するようにして、挿入することもできる。
【0093】
いずれにしても、サイドステー挿入部31を第一の金属製バー20及び第二の金属製バー42によって挟持し、固定ボルト38を固定の金属製バー42に螺合して締め付けたとき、両側板11(11a、11b)にはスリット45が形成されているので、両側板11(11a、11b)は多少上下方向への変形が可能とされる。これにより、サイドステー挿入部31は、フレーム本体側部にしっかりと固定される。
【0094】
実施例4
図15に、サイドステー取付部構造60の他の実施例を示す。上記実施例1では、
図10に示すように、サイドステー3の挿入部31は、固定ボルト38により、第一の金属製バー20と第二の金属製バー40とによって挟持され、サイドステー3は、フレーム本体2の側端部にしっかりと固着される。
【0095】
本実施例4では、
図15に示すように、実施例1の第一の金属製バー20と同様に構成された第一の金属製バー20Aの下方に位置して調整用移動金属製バー20Bが配置される。即ち、第一の金属製バー20Aは、接着剤にて上板10aに固着されているが、調整用移動金属製バー20Bは、固定ボルト55にて上板10a及び第一の金属製バー20Aに固定される。本実施例では、第一の金属製バー20Aの下面には凹状溝22は形成されていないが、好ましくは、調整用移動金属製バー20Bの下面に、サイドステー挿入部31の上面凸状突起33に係合する凹状溝22が形成される。
【0096】
本実施例においても、実施例1と同様の構成とされ、サイドステー3の挿入部31は、調整用移動金属製バー20Bと、第二の金属製バー40とによって挟持され、サイドステー3は、フレーム本体2の側端部にしっかりと固着される。
【0097】
通常、ヘルドフレームにて、サイドステー3とフレーム本体2との取付精度は極めて重要である。特に、
図15(c)に示すように、サイドステー3の挿入部31の上面31uと、ヘルド(図示せず)を取り付ける支持突起部5(即ち、支持突起部5の突部5bの上面5u)との間の垂直距離L0が規定寸法に組み立てられていることが必要である。そのために、もしこの寸法が規定値と異なって組み立てられた場合には、調整用移動金属製バー20Bの厚さを調整することにより、既定寸法L0を得るようにする。
【0098】
本実施例では、第一の金属製バー20Aと調整用移動金属製バー20Bとの間にシム(調整用金属薄板)等を挟み、調整用移動金属製バー20Bの厚さを調整することができる。勿論、厚さの異なる調整用移動金属製バー20Bを複数準備しておき、適当なサイズのものを適宜使用するようにしても良い。また、これらを併用して、調整用移動金属製バー20Bの厚さ調整を行なうこともできる。
【0099】
図16に示すように、本実施例においても、更に、変更実施例4−1として、フレーム本体2の両側板11(11a、11b)に、或いは、一方の側板11には、第一の金属製バー20Aの位置に対応する領域に、機械加工により細長長円形の開口部59を形成することもできる。この構成とすることにより、該開口部59を介して、第一の金属製バー20Aの取付、シムの設置等を作業性良く簡単に実施することができ、組立の作業効率を向上させる。
【0100】
上記構成の本実施例4及び変更実施例4−1によれば、サイドステー3とフレーム本体2との取付精度を、より簡単な構造にて、向上させることができる。
【0101】
実施例5
図17に、サイドステー取付部構造60の他の実施例を示す。本実施例5は、
図15に示す上記実施例4の変更実施例である。
【0102】
本実施例5においても、実施例4における第二の金属製バー40と同様の第二の金属製バー40Aが使用されるが、ただ、本実施例5における第二の金属製バー40Aは、その下面部において長手方向(即ち、フレーム本体2の長手方向)に延在して突起部40A1が形成されている点で相違している。第二の金属製バー40Aの全体構成及び機能は実施例4の第二の金属製バー40と同様とされる。
【0103】
更に、本実施例5では、可動の第二の金属製バー40Aの下方部に位置して、固定の第三の金属製バー50が設置される。第三の金属製バー50は、側面を両側板側から貫通するリベット51にて両側板11(11a、11b)に固定される。
【0104】
また、第三の金属製バー50の上面には、上記第二の金属製バー40Aの下面部に形成された突起部40A1に嵌合する形状とされる凹状溝52が長手方向(即ち、フレーム本体2の長手方向)に沿って形成されている。
【0105】
上記構成にて、本実施例5おいても、実施例4にて説明したと同様にして、サイドステー3の挿入部31は、固定ボルト38により、第一の金属製バー20A(調整用移動金属製バー20B)と第二の金属製バー40Aとによって挟持され、サイドステー3は、フレーム本体2の側端部にしっかりと固着される。
【0106】
更に、本実施例5では、第二の金属製バー40Aの下面突起部40A1が、フレーム本体2に固定された第三の金属製バー50の上面に形成された凹溝52に嵌合しており、この構成によって、サイドステー3の横振れを抑制することができる。
【0107】
実施例6
図18に、サイドステー取付部構造60の他の実施例を示す。本実施例6は、
図15に示す実施例4の変更実施例である。
【0108】
本実施例6では、
図18に示すように、実施例4における上記可動の第二の金属製バー40の代わりに、第二の金属製バーとしてL字型固定部材35が使用される。
【0109】
本実施例6のL字型固定部材35は、
図12を参照して説明した実施例2におけるL字型固定部材35と同様の構成とされる。
【0110】
即ち、L字型固定部材35は、垂直部材35aと水平部材35bとから成り、垂直部材35aの上面には、金属製バー20の溝22に嵌合する所定長さの凸状突起36が形成される。水平部材35bには、垂直方向にサイドステー固定ボルト38に螺合するねじ穴37が形成されている。水平部材35bは、固定ボルト38のナット部材としての機能をなす。サイドステー3の構成は、実施例1で説明したと同じとされる。
【0111】
本例においても、先ず、
図18に示すように、サイドステー固定ボルト38を、上板10aから第一の金属製バー20Aへと同中心にて形成された貫通穴12、21を貫いて貫通し、L字型固定部材35の水平部材35bのねじ穴37にねじ込む。この時、垂直部材35aの凸状突起36は、調整用移動金属製バー20Bの溝22に嵌合しており、サイドステー挿入部31と、L字型固定部材35の水平部材35bとを整列させる機能をなす。これによって、サイドステー3の挿入部31は、固定ボルト38により、第一の金属製バー20A(調整用移動金属製バー20B)とL型固定部材35の水平部材35bによって挟持され、サイドステー3は、フレーム本体2にしっかりと固着される。
【0112】
図19に示すように、本実施例においても、上記変更実施例4−1と同様に、更に、変更実施例6−1として、フレーム本体2の両側板11(11a、11b)に、或いは、一方の側板11には、第一の金属製バー20Aの位置に対応する領域に、機械加工により細長長円形の開口部59を形成することもできる。この構成とすることにより、該開口部59を介して、第一の金属製バー20Aの取付、シムの設置等を作業性良く簡単に実施することができ、組立の作業効率を向上させる。
【0113】
上記構成の本実施例6及び変更実施例6−1によれば、サイドステー3とフレーム本体2との取付精度を、より簡単な構造にて、向上させることができる。
【0114】
実施例7
図20に、サイドステー取付部構造60の他の実施例を示す。本実施例7は、
図18に示す上記実施例6の変更実施例である。
【0115】
本実施例7においては、
図20に示すように、水平部材35bの下方部に位置して第三の金属製バー50を設置することができる。
【0116】
つまり、本実施例7においても、上記実施例6におけるL字型固定部材35と同様のL字型固定部材35Aが使用されるが、ただ、本実施例7における水平部材35bは、その下面部において長手方向(即ち、フレーム本体2の長手方向)に延在して突起部35b1が形成されている点で相違している。L字型固定部材35Aの全体構成及び機能は上記実施例6におけるL字型固定部材35と同様とされる。
【0117】
本実施例7では、水平部材35bの下方部に位置して、固定の第三の金属製バー50が設置される。第三の金属製バー50は、側面を両側板側から貫通するリベット51にて両側板11(11a、11b)に固定される。
【0118】
また、第三の金属製バー50の上面には、水平部材35bの下面部に形成された突起部35b1に嵌合する形状とされる凹状溝52が長手方向(即ち、フレーム本体2の長手方向)に沿って形成されている。
【0119】
上記構成にて、本実施例7においても、実施例6にて説明したと同様にして、サイドステー3の挿入部31は、固定ボルト38により、調整用移動金属製バー20BとL字型固定部材35Aの水平部材35bとによって挟持され、サイドステー3は、フレーム本体2の側端部にしっかりと固着される。
【0120】
更に、本実施例7では、L字型固定部材35Aの下面突起部35b1が、フレーム本体2に固定された第三の金属製バー50の上面に形成された凹溝52に嵌合しており、この構成によって、サイドステー3の横振れを抑制することができる。
【0121】
本実施例7においても、
図19を参照して説明したように、実施例6の変更実施例6−1と同様に、フレーム本体2の両側板11(11a、11b)に、或いは、一方の側板11には、第一の金属製バー20Aの位置に対応する領域に、機械加工により細長長円形の開口部59を形成することもできる。
【0122】
上記各実施例にて、本発明に係る炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブ及びサイドステー取付部構造について詳しく説明したが、次に、織機のヘルドフレームに上記構成とされる本発明の炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブ2を使用した場合の特徴について纏めて説明する。
【0123】
上述したように、織機のヘルドフレームでは、ヘルドフレームステーブを炭素繊維強化複合材製とし、軽量化と高剛性化による、織機の高速化、制振性を達成することが希求されている。勿論、長尺化対応、品質向上は達成されることが必須である。
【0124】
そこで、
(1)上下のヘルドフレームステーブ(フレーム本体)2を、サイドフレーム3にて連結して構成されるヘルドフレーム1(
図1参照)は、上下の撓みを如何に少なくするかが設計上重要なポイントとなる。このためには、各ヘルドフレームステーブ2の上下方向両端縁部に高弾性率の炭素繊維強化複合材を集中して投入することが考えられる。
【0125】
これを考慮して、本発明では、中空構造とされるヘルドフレームステーブ2の中空構造部2Aの上下両端縁部に長手方向に長繊維が引き揃えて作製されたUD形状のCFRP(一方向炭素繊維強化複合材)で作られた横リブ10(10a、10b)を配置する構造となっている。
【0126】
つまり、本発明は、斯かる構造によって、上下方向の撓みを決める上下方向のヘルドフレームステーブ2の断面剛性を、より少ない材料で最大に得られる構造となっている。
【0127】
(2)ヘルドフレームステーブ2には、下端にヘルドや織る糸がぶら下がり、そこに荷重がかかる。その荷重を受ける点が次に重要となる。上下方向の撓みを最小にするためには、ヘルドフレームステーブ2の断面剛性をフルに発揮する箇所にこの荷重を受ける点を持って行く必要がある。
【0128】
そのためには、これら荷重を、ヘルドフレームステーブ2の最上部の長手方向に延びた炭素繊維強化複合材の横リブとしての上板10aに持たせるのが最適である。
【0129】
そこで、本発明では、サイドステー3に荷重を直接伝えるための金属製バー20を、横リブとしての上板10aに接着等で一体化して取り付けており、ヘルドフレームステーブ2の断面剛性をフルに発揮できる構造となっている。
【0130】
(3)次に、ヘルドフレームに要求される機能として、サイドステー3を固定する精度がある。
【0131】
サイドステー3は、上下の各ヘルドフレームステーブ2を一定間隔に組み立て、その精度を保持する役目がある。そうしないとヘルドを取り付ける箇所の幅が変わり、ヘルドが取り付け不能になったり、織機で織っている途中で、ヘルドが折損する等の問題は発生する。
【0132】
この精度を決めるのが、ヘルドフレームステーブ2の上部に接着された金属製バー20である。
【0133】
サイドステー3を決められた精度で取り付けること、及び、作業中にこの精度が変わらないことが必須である。サイドステー3を取り付ける面を炭素繊維強化複合材にすると、樹脂面のため、摩耗、疵付き等により、長期間使用している間に変動し、不都合を生じる。このため、サイドステー3を固定する面は、硬く摩耗し難い金属面が必須となる。
【0134】
金属製バー20を取り付ける際の精度出しは、接着時に充分に注意して接着するか、例え精度不良がでても、後で加工することで対応できる構成とする。
【0135】
因みに、サイドステー3を取り付ける精度は、サイドステー3を取り付けた際の、ヘルドを取付ける間隔とされ、±0.1mmである。
【0136】
(4)次に、ヘルドフレーム1に要求される機能は強度であり、サイドステー3を取り付ける固定ボルト38での締め付け力や、稼働中にかかるヘルドや織る糸から来る荷重で壊れないことが重要である。
【0137】
この両方の荷重とも、サイドステー3を取り付けるヘルドフレームステーブ2の上部の長手方向に延びた炭素繊維強化複合材製の横リブ(上板)10aに接着された固定用金属製バー20に掛かる。
【0138】
先ず、サイドステー3を、固定ボルト38を用いて取り付ける際、上部の第一の金属製バー20と下部の第二の金属製バー35、40、42との間にサイドステー3の固定部材(挿入部31)を挟みこみ、これをボルト38で締め付ける。この時、ボルト38の反力は、サイドステーステーブ上部の炭素繊維強化複合材横リブ(上板)10aの上面(ボルト頭の下面)で受けることとなる。そうすると、この炭素繊維強化複合材横リブ(上板)10aの上面とこの下面に接着された、第一の金属製バー20との間に、ボルト38で締め付ける力と同一の圧縮力が掛かってくる。
【0139】
この圧縮力は、中実の炭素繊維強化複合材横リブ(上板)10aと第一の金属製バー20で受けるため、壊れることは無い構造となっている。一方、この圧縮力を側面の炭素繊維強化複合材製側板11(11a、11b)で持たせようとすると、炭素繊維強化複合材が変形、若しくは、破壊して、充分な力を負荷することができない。
【0140】
勿論、安全のため、固定ボルト38の頭の直ぐ下に、金属製の座金をいれて、下面の炭素繊維強化複合材(上板)10aを保護することも有用である。
【0141】
次に、織機で織る際の力は、ヘルドフレームを上下する力が、サイドステー固定部材(挿入部31)から、上面の第一の金属製バー20に入ってくる。その力は、ヘルドフレームステーブ2に取り付けられているヘルドや、織る糸の張力等を持ち上げる力でそれ程大きくない。
【0142】
この力は、ヘルドフレームステーブ2の上面の横方向に伸びた炭素繊維強化複合材製横リブ(上板)10aに入り、その横リブ(上板)10aに接着されているステーブ側面の炭素繊維強化複合材製側板11(11a、11b)を通じて、ステーブ全体に力が伝わっていく。
【0143】
この力に対しては、ヘルドフレームステーブ上面の横方向に伸びた炭素繊維強化複合材製横リブ(上板)10aとステーブ側面の炭素繊維強化複合材製側板11(11a、11b)との接着力が必須となる。従って、接着面積を確保するために、ヘルドフレームステーブ上面の横方向に伸びた炭素繊維強化複合材横リブ(上板)11a、同様に、横リブ(下板)11bの厚さH1、H2は、5mm以上が必要となる。
【0144】
図8に示したように、上面の第一の金属製バー20をリベット22で固定するのは、作業中に、何らかの事情で、接着が剥がれることを防止する安全対策を目的としている。
【0145】
(5)次に、ヘルドフレーム1に要求される機能は、織るスピードの確保である。
【0146】
このためには、現状のアルミ製ヘルドフレームの断面剛性以上の断面剛性を確保することは勿論、ヘルドフレームステーブ2の1次固有振動数も、現状のアルミ製のもの以上にすることが要求される。
【0147】
コスト的に安価な汎用のPAN系炭素繊維(引張弾性率235GPa以上)の炭素繊維を用いてヘルドフレームステーブ2を製作した場合、ヘルドフレームステーブ2の中空構造部2Aの上下面に幅5mm以上の横リブ10(10a、10b)を配置した構造にすれば、上下方向の断面剛性はアルミ製以上のものを確保できることが分かった。
【0148】
1次固有振動数に対しては、使用材料の引張弾性率と密度がポイントとなる。
【0149】
ここで、
アルミの引張弾性率;70GPa、密度;2.7g/cm
3
使用CFRPの平均引張弾性率;107GPa、密度1.6g/cm
3
とし、長さが同じであるとすると、1次固有振動数は、引張弾性率のルート(2分の1乗)に比例し、密度のルート(2分の1乗)に反比例することから、本発明のヘルドフレームステーブ2の1次固有振動数は、アルミ製の約1.6倍となり、1次固有振動数は問題ないことが分かる。
【0150】
(6)ヘルドフレームには、静音性も当然要求されている。特に最近は環境問題ともなっており、特にヨーロッパでは静音性の高いヘルドフレームの要求が高くなっている。
【0151】
これに対し、CFRP製ヘルドフレームステーブは、樹脂との複合であることから、フレームそのもので共振性が少なく、静音性の高い製品となっている。
【0152】
さらに、その効果と高めるために、CFRP製ヘルドフレームステーブの中空部に、サイドステーを取り付ける端部を除いて、ウレタンの発泡材や、ペーパーのハニカム等を入れ、さらに効果を高めることも可能である。