(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レンズ光学系の一部を構成するAFレンズ群の現在位置にてAF評価データを取得し、光軸方向へ前記AFレンズ群を駆動させてコントラストAF動作を行うことが可能なカメラ又はカメラシステムにおいて、
前記AFレンズ群を初期位置から合焦位置を通り過ぎた直後のレンズ群の位置である合焦位置付近へ駆動させ、第1のAF評価データを取得し、
前記AFレンズ群を、前記合焦位置付近へ駆動させた方向とは逆方向へ所定のパルス数分、逆転駆動させて第2のAF評価データを取得し、
さらに、前記第1のAF評価データと前記第2のAF評価データとを比較し、
前記第2のAF評価データが、前記第1のAF評価データから変化した場合には、
前記第2のAF評価データを取得するために前記AFレンズ群を駆動させた所定のパルス数からパルス数1を減算したパルス数をバックラッシュ量として記憶する、ことを特徴とするカメラ又はカメラシステム。
【背景技術】
【0002】
近年のデジタルスチルカメラやビデオカメラを用いて撮影する場合、自動焦点調整機能(AF)を採用することが一般的となっている。AFの方式は、主に大きく2つの方式に分類され、位相差検出方式(位相差AF)とコントラスト検出方式(コントラストAF)とがある。
【0003】
位相差AFでは、撮影レンズの光軸に対して、左右若しくは上下から分割して入射する光束の像を位相差AFセンサへ導き、この2つの像の位相差を検出してピントのズレ量及びズレ方向を判断する。判断されたピントのズレ量及びズレ方向に基づいて、ズレ量に相当する駆動パルス数をAF駆動部に与え、AFレンズ群を駆動させる。このAFレンズ群の駆動をズレ量が0になるまで繰り返すことで合焦位置を決定する。
【0004】
一方、コントラストAFでは、AFレンズ群の現在位置におけるAF評価データを撮像素子より取得し、AFレンズ群を僅かに駆動させて順次新たなAF評価データを取得し、現在位置でのAF評価データと直前のAF評価データとの比較を繰り返すことで合焦位置を探索する。AFレンズ群は、AF評価データの増大する方向へ駆動され、カメラ制御部は、AF評価データが極大値をとるAFレンズ群の位置を合焦位置として決定する。ここでのAF評価データは、撮像素子の所定の領域で取得される輝度信号の高周波成分から算出されるコントラストデータである。
【0005】
さらに近年、デジタルスチルカメラやビデオカメラにおいてライブビューモードを備えるものが普及している。特に従来の一眼レフカメラにおいてもライブビューモードが採用されてきており、一眼レフファインダーを覗くのではなく、撮像素子により光電変換された像をLCD等の表示装置に表示させ、被写体を観察することが可能である。
【0006】
一眼レフカメラにおけるライブビューモードでは、ミラーを跳ね上げたまま被写体像を撮像素子へ露光し続ける状態であるため、上述した位相差AFセンサには光が導かれず、位相差AFを行うことは一般的に不可能である。
【0007】
このため、一眼レフカメラでのライブビューモードにおけるAFには、撮像素子で光電変換された画像信号を利用したコントラストAFが採用される。
【0008】
ここで、
図5を用いて、コントラストAFの例を示す。
【0009】
コントラストAFでは、例えば、まずAFレンズ群を無限遠位置である
図5のA地点から、至近端位置であるB地点まで所定量移動するごとにAF評価データを取得し、AFレンズ群位置を軸としてプロットする。そして、AF評価データが極大値となるC地点でのAFレンズ群位置を合焦位置と判断し、この合焦位置を目標としてAFレンズ群を駆動させ、AF動作を行う。
【0010】
ライブビューモード等において採用される上記のコントラストAFでは、位相差AFに比べ、バックラッシュによる問題が発生しやすい。
【0011】
バックラッシュとは、カメラ又はカメラシステムに含まれる減速機構や連結機構において意図して設けられたアソビや、設計上の公差により発生するガタ等を指す。バックラッシュを含む機構を駆動制御するためには、そのバックラッシュ量を正確に考慮することが肝要である。バックラッシュ量を考慮せずに駆動制御すると、バックラッシュ量に相当する駆動パルス数が、バックラッシュにより吸収されてしまい、被駆動部の実際の移動量が不足するため、正確な駆動制御を実行できない。
【0012】
位相差AFでは、AFレンズ群の現在位置と合焦位置とについて、2つの像の位相差を利用したAF評価データのズレ量(デフォーカス量)が0に収束するよう常にフィードバックすることでAFレンズ群の駆動を繰り返す、クローズドループ制御であるため、上記バックラッシュによる影響はあまり問題とはならない。
【0013】
これに対して、コントラストAFでは、AF評価データが極大値となるAFレンズ群の位置を合焦位置(目標位置)として一旦決定すると、現在位置から合焦位置までの距離に相当する駆動パルス数を予め算出し、AFレンズ群を駆動及び停止させるのみのオープンループ制御であるため、合焦停止精度に関してバックラッシュの影響を受けやすい。
【0014】
コントラストAFにおけるバックラッシュの発生について、
図5と
図4を用いて詳細に説明する。
図4は、バックラッシュの発生元となる減速機構の歯車の一部を拡大し模式化したものである。実際には、複数の減速機構や連結機構等によるバックラッシュ量の総和が、カメラ又はカメラシステム全体のバックラッシュとなっている。
【0015】
まず、
図4(a)は、
図5においてAFレンズ群を無限遠位置(A地点)から至近端位置(B地点)まで駆動させる場合での、駆動し始めの駆動歯車Xの歯Xgと被駆動歯車Yの歯Ygとの位置関係を示す。
図4(a)の状態から、さらに駆動歯車Xが駆動され続けると、
図4(b)に示すように、歯Xgは駆動方向にある歯Ygに必然的に接触することとなる。すなわち、コントラストAFにおいて、無限遠位置(A地点)から至近端位置(B地点)までAFレンズ群を駆動させる間に、バックラッシュは確実に除去されることとなる。
【0016】
しかしながら、AF評価データを取得し、その極大値となるAFレンズ群位置(C地点)の特定が完了した後で、AFレンズ群をB地点からA地点へ向かってC地点まで逆転駆動させる際にバックラッシュによる影響が発生してしまう。すなわち、
図4(b)に示すような歯Xgが歯Ygに接触した状態から駆動歯車Xを逆転駆動させて被駆動歯車Yを駆動させるには、
図4(c)に示すように、駆動歯車Xの逆転駆動開始時において歯Xgが逆転駆動方向の歯Ygに接触するまで、逆転駆動方向にあるバックラッシュを除去するだけのための駆動をしなければならない。
【0017】
ここでバックラッシュ量を正確に把握出来ていないと、コントラストAFは上述したようにオープンループ制御であるため、駆動歯車Xの逆転駆動開始時において、バックラッシュ除去のために駆動量が消化され、被駆動歯車Yは実際には駆動されず、AFレンズ群の合焦位置での停止精度に悪影響が発生してしまう。
【0018】
図5及び
図4を用いたバックラッシュの説明では、AFレンズ群が駆動可能範囲すべてで駆動されるコントラストAF動作にそって説明したが、一般的な「山登りAF」においても、AF評価データが極大値となる合焦位置に向かってAFレンズ群が逆転駆動されることについては同様であるため、バックラッシュの影響を受けやすいことに変わりはない。
【0019】
従来、上述したコントラストAFにおいて発生するバックラッシュの影響を除去するため、次の特許文献等が開示されている。
【0020】
特許文献1(特開昭60−52812号公報)には、交換レンズごとにバックラッシュ量に関するデータ予め記憶し、フォーカシングレンズを駆動する際にバックラッシュ量に相当する駆動量を補正する自動焦点調節装置の発明が記載されている。
【0021】
特許文献2(特開昭63−172241号公報)には、第一の駆動トルクで被駆動部材を駆動し始めた後、第一のトルクよりも低く被駆動部材を駆動するために必要な駆動トルクよりも低い第二の駆動トルクでバックラッシュを除去し、さらに第三のトルクで被駆動部材を駆動する駆動装置を備えた光学機器の発明が記載されている。
【0022】
特許文献3(特開平3−29909号公報)には、合焦光学系を両端の移動制限により区切られた区間で駆動させ、このときに検出された駆動量と予め記憶された予定駆動量との差分に基づいてバックラッシュ量を算出する電動合焦装置の発明が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
特許文献1に記載された発明では、バックラッシュ量が交換レンズごとに固定値として記憶されているため、バックラッシュ量の経年変化や個体ごとのバラツキに対応できず、精度の高いバックラッシュの補正ができない。
【0025】
特許文献2に記載された発明では、駆動トルクを3段階に変化させて設定し、それぞれの駆動トルクを給電レベルと給電時間の複雑なパラメータにより制御しなければならないため、精度の高いバックラッシュの補正を行うためには調整コストが高くなる。
【0026】
また、駆動トルクを変化させるための制御手段を追加する必要があり、部品コストが高くなる。
【0027】
また、設計時に設定したそれぞれの段階での駆動トルクや駆動時間が適切であったとしても、駆動機構を構成する部品が経年変化してしまうことで、適切な駆動トルクや駆動時間でなくなってしまうおそれがある。
【0028】
特許文献3に記載された発明では、合焦光学系を両端の移動制限により区切られた区間で駆動させることが必要であるため、バックラッシュ量の測定に時間がかかってしまう。
【0029】
また、バックラッシュ量の測定時に駆動させた駆動量と比較する予定駆動量は、設計値に基づいているものであるため、両端の移動制限により区切られた物理的な区間が経年変化や衝撃により変化してしまうと、駆動させた駆動量と予定駆動量との差異を測定したとしても、正確なバックラッシュ量を測定できたことにはならないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記課題を解決するため、本発明に係る第1の発明は、レンズ光学系の一部を構成するAFレンズ群の現在位置にてAF評価データを取得し、光軸方向へ前記AFレンズ群を駆動させてコントラストAF動作を行うことが可能なカメラ又はカメラシステムにおいて、前記AFレンズ群を初期位置から
合焦位置を通り過ぎた直後のレンズ群の位置である合焦位置付近へ駆動させ、第1のAF評価データを取得し、前記AFレンズ群を、
前記合焦位置付近へ駆動させた方向とは逆方向へ所定のパルス数分、逆転駆動させて第2のAF評価データを取得し、さらに、前記第1のAF評価データと前記第2のAF評価データとを比較し、前記第2のAF評価データが、前記第1のAF評価データから変化した場合には、前記第2のAF評価データを取得するために前記AFレンズ群を駆動させた所定のパルス数からパルス数1を減算したパルス数をバックラッシュ量として記憶する、ことを特徴とするカメラ又はカメラシステムとした。
【0031】
さらに、本発明に係る第2の発明は、第1の発明のカメラ又はカメラシステムにおいて、前記第1のAF評価データと前記第2のAF評価データとを比較し、前記第2のAF評価データが、前記第1のAF評価データと同じ場合には、前記AFレンズ群を初期位置へ戻し、再度初期位置から
前記合焦位置付近へ駆動させ、第1のAF評価データを取得し、前記AFレンズ群を、
前記合焦位置付近へ駆動させた方向とは逆方向へ、前回、前記第2のAF評価データを取得するために前記AFレンズ群を駆動させた所定のパルス数よりも多いパルス数分、逆転駆動させて第2のAF評価データを取得することを繰り返す、ことを特徴とする第1の発明のカメラ又はカメラシステムとした。
【0032】
さらに、本発明に係る第3の発明は、第1又は第2の発明のカメラ又はカメラシステムにおいて、前記コントラストAF動作において、逆転駆動時に逆転駆動パルス数に対し前記バックラッシュ量を加算してバックラッシュを補正する、ことを特徴とする第1又は第2の発明のカメラ又はカメラシステムとした。
【0033】
さらに、本発明に係る第4の発明は、第1乃至第3の発明のいずれかのカメラ又はカメラシステムにおいて、前記バックラッシュ量は、パルス数としてバックラッシュ量記憶部に記憶される、ことを特徴とする第1乃至第3の発明のいずれかのカメラ又はカメラシステムとした。
【0034】
さらに、本発明に係る第5の発明は、第1乃至第4の発明のいずれかのカメラ又はカメラシステムにおいて、前記バックラッシュ量の測定はカメラのバックラッシュキャリブレーションモードにより開始される、ことを特徴とする第1乃至第4の発明のいずれかのカメラ又はカメラシステムとした。
【0035】
さらに、本発明に係る第6の発明は、第1乃至第5の発明のいずれかのカメラ又はカメラシステムにおいて、前記バックラッシュ量が、所定のパルス数以上である場合には、バックラッシュ量の測定に失敗したと判断する、ことを特徴とする第1乃至第5の発明のいずれかのカメラ又はカメラシステムとした。
【発明の効果】
【0036】
本発明により、経年変化するバックラッシュ量を迅速に測定可能であり、測定したバックラッシュ量に基づきAFレンズ群の駆動量に相当する駆動パルス数を補正可能な、カメラ又はカメラシステムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明にかかる実施例について図面を用いて詳細に説明する。
【0039】
本発明の実施例に係るカメラシステムは、カメラボディに対してレンズ交換可能なレンズ交換式カメラシステムとする。
【0040】
本実施例に係るカメラシステムについて、
図1のブロック図を用いて説明する。
【0041】
図1は、本発明に係る実施例のカメラシステム全体を示すブロック図である。100はカメラボディ、200は交換レンズを示している。
【0042】
カメラボディ100の構成について説明する。
【0043】
カメラボディ100において、101はバッテリ、102は電源装置を示している。バッテリ101からは、電源装置102を介してカメラボディ100や交換レンズ200の制御系等に電力が供給されている。また、バッテリ101からは、カメラボディ100や交換レンズ200の駆動系等に電力が供給されている。カメラボディ100から交換レンズ200への電力供給は後述するマウントに設けられた接続端子を介して行われる。
【0044】
103は撮像装置を示している。撮像装置103には撮像素子やシャッタ等が含まれ、一眼レフカメラの場合にはクイックリターンミラー等が含まれる。
【0045】
104はカメラCPUを示している。カメラCPU104は、電源装置102から電力供給を受け、カメラボディ100の各種駆動系を各種センサからの情報に基づいて制御したり、後述するレンズCPUとの通信を行ったりする。
【0046】
105はAFセンサ(位相差AFセンサ)、106はAEセンサを示している。
【0047】
カメラCPU104は、AFセンサ105により得られた信号値を演算して測距を行い、測距の情報をレンズCPUへ送信し、交換レンズ200にAF動作を行わせる。また、カメラCPU104は、AEセンサ106により得られた信号値を演算して測光を行い、測光の情報に基づいて撮像装置103の露光量を決定し、レンズCPUにより交換レンズ200の絞り制御等を行わせる。
【0048】
107はカメラボディ100の操作系を示している。
【0049】
操作系107によりカメラCPU104へ、撮影者の命令が入力される。カメラCPU104は、この命令に従って各種駆動系の制御やレンズ制御部との通信等を行う。
【0050】
操作系107には、カメラボディ100の電源を入切する電源ボタンや、撮影方法を設定するモードダイヤルや、AF動作や撮影を指示するためのレリーズボタンや、その他メニューボタン等を含む。
【0051】
操作系107のうち、特にレリーズボタンは2段階で押下する機構となっており、1段階押下した状態を「レリーズ半押し」とし、2段階押下した状態を「レリーズ全押し」とする。また、レリーズ半押しの際、カメラボディ100は、交換レンズ200に対してAF動作を命令するとともに、交換レンズ200が手ブレ補正機構を有している場合は、手ブレ補正動作を開始するように命令する。さらに、レリーズ全押し状態となることで、カメラボディ100は撮影動作を開始する。
【0053】
カメラCPU104の命令で撮影装置103により取得された画像信号は、画像処理部108に送られ、ガンマ補正、YCbCr信号への変換、ノイズ除去等の一連の画像処理が施される。
【0055】
画像処理部108により一連の画像処理が施された画像信号は、記憶装置109にメモリされる。
【0057】
表示装置110は、撮像素子等により得られる撮影前のスルー画を表示したり、撮影後に記憶装置109に格納された画像信号を再生表示したり、カメラボディ100等の設定情報を表示したりする。
【0058】
111は、本発明において測定したバックラッシュ量を記憶するためのバックラッシュ量記憶部を示している。
【0059】
カメラボディ100と交換レンズ200との物理的な接続はマウント300を介して行われる。また、カメラボディ100と交換レンズ200との電気的な接続はマウント300に設けられた接点端子群を介して行われる。
【0060】
本実施例のカメラボディ100側のマウント300の接点端子群には、制御用電源端子C_VDD、クロック信号端子C_CLK、コマンド信号端子C_CMD、アンサ信号端子C_ANS、モータ用電源端子C_MP、グランド端子C_GNDが含まれる。
【0061】
制御用電源端子C_VDDからは交換レンズ200のレンズ制御部に対して電力が供給され、モータ用電源端子C_MPからは交換レンズ200の各種駆動系に対して電力が供給される。
また、コマンド信号端子C_CMDからはカメラボディ100が交換レンズ200に対してレンズデータを求めるコマンド信号CMDが出力され、アンサ信号端子C_ANSへは交換レンズ200から送信されるレンズデータ等のアンサ信号ANSが入力される。
【0062】
次に交換レンズ200の構成について説明する。交換レンズ200には、不図示のレンズ光学系が含まれる。
【0063】
交換レンズ200において、201はレンズCPUを示している。レンズCPU201は、カメラボディ100から電力供給を受け、カメラCPU104と通信を行ったり、交換レンズ200内の各種駆動系を制御したりする。
【0064】
202はエンコーダを示している。エンコーダ202からの信号により、レンズ制御部201は、現在のAFレンズ群位置を検知したり、さらに交換レンズ200がズームレンズの場合には、現在の焦点距離を検知したりする。
【0065】
交換レンズ200内の各種駆動系として、次の駆動系があげられる。
【0066】
203は絞り、204は絞り駆動部を示す。絞り203は、レンズCPU201からの命令を受けた絞り駆動部204により駆動される。また、絞り駆動部204には、カメラボディ100から電力が供給される。
205はAFレンズ群、206はAF駆動部を示す。AFレンズ群205は、不図示のレンズ光学系の一部であり、レンズCPU201から命令を受けたAF駆動部206により駆動される。また、AF駆動部206には、カメラボディ100からの電力が供給される。
【0067】
交換レンズ200において、300はマウントを示し、前述した通り、交換レンズ200がカメラボディ100と物理的に接続するための接続部である。また、マウント300には、カメラボディ100側と同様に交換レンズ200とカメラボディ100が電気的に接続するための接点端子群が設けられている。
【0068】
接点端子群として、交換レンズ200においても、前述したカメラボディ100のマウント300に設けられた各接点端子に対応する、制御用電源端子L_VDD、クロック信号端子L_CLK、コマンド信号端子L_CMD、アンサ信号端子L_ANS、モータ用電源端子L_MP、グランド端子L_GNDが設けられている。
【0069】
次に、本発明に係るバックラッシュ量の測定方法について詳細に説明する。
【0070】
本実施例では、カメラボディ100に、バックラッシュ量測定のためのモードとして、「バックラッシュキャリブレーションモード」を設けた。バックラッシュキャリブレーションモードでは、後述するバックラッシュ量の測定をカメラボディ主体で行う。
【0071】
カメラボディ主体によるバックラッシュキャリブレーションモードは、撮影者がカメラボディ100の操作系107を操作することにより、カメラボディ100に搭載されたメニュー設定等において実行される。
【0072】
次に、本実施例のバックラッシュ量測定のフローについて、
図2のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0073】
まず、撮影者がカメラボディ100の操作系107を操作することにより、メニュー設定を呼び出し、その中からバックラッシュキャリブレーションモードを選択する(S101)。
【0074】
さらに、撮影者はカメラボディ100の操作系107を操作し、バックラッシュキャリブレーションモードを実行する(S102)。
【0075】
バックラッシュキャリブレーションモードが実行されると、カメラCPU104は、まず、AFレンズ群205を合焦位置付近から逆転駆動させるパルス数の初期値をN=N0として任意に設定する(S103)。AFレンズ群205の合焦位置付近からの逆転駆動については、後述する。
【0076】
次に、カメラCPU104は、AF駆動部206に一般的なコントラストAFの手法である「山登りAF」を開始するように命令し、AFレンズ群205を、まず初期位置(無限遠位置)へ移動させる(S104)。そして、AFレンズ群205を、一般的な山登りAFの手法に従って、AF測距点においてAF評価データが極大値付近となる合焦位置付近X1まで駆動させ、停止させる(S105)。
【0077】
S105における山登りAFでは、まず、駆動パルス数をカウントするためのパルスカウンタを0にリセットし、さらに初期位置(無限遠位置)におけるAF評価データを取得する。そして、パルスカウンタを「1」繰り上げ、AFレンズ群205を至近端位置方向へ1パルス数分、僅かに駆動させ、さらにAF評価データを取得する。そして、AFレンズ群205の駆動前後において取得した両者のAF評価データを比較する。このようにして、AF評価データの極大値が発見されるまで、パルスカウンタを「1」繰り上げ、AFレンズ群205を駆動させ、さらにAF評価データの取得・比較することを順次繰り返す。
【0078】
また、S105の山登りAFにおいて、AFレンズ群205が停止する位置は、AF評価データが極大値となるAFレンズ群205の位置からさらに進んだ「合焦位置付近X1」とした。すなわち、「合焦位置付近X1」は、AF評価データが極大値となる「合焦位置」を通り過ぎた直後のAFレンズ群205の位置を意味する。
【0079】
したがって、S105では、AFレンズ群205は、一方向へ駆動され続けた後であるため、バックラッシュは、
図4(b)に示すように完全に除去された状態にある。
【0080】
バックラッシュキャリブレーションモードにおいては、上述した通り、山登りAF(S105)によるAFレンズ群205の最初の停止位置を、合焦位置ではなく「合焦位置付近X1」としている。これは、バックラッシュキャリブレーションモードにおいては、一般的な山登りAFのように、AF評価データが極大値となる「合焦位置」を通り過ぎた後に、再び「合焦位置」へ戻るための逆転駆動を実行する必要がないためである。
【0081】
次に、カメラCPU104は、S105の山登りAFによりAFレンズ群205が停止した合焦位置付近X1においてAF評価データを取得し、これをAF評価データY1とする(S106)。また、カメラCPU104は、AF評価データY1を取得した時点でのパルスカウンタの値をP1とする。
【0082】
本実施例において、AF評価データY1を取得するために山登りAFを利用し、AFレンズ群205の停止位置を「合焦位置付近X1」とした理由は、後述するAFレンズ群205の逆転駆動においてAF評価データの変化をより敏感に検出するためである。
【0083】
図6に示すように、AFレンズ群205が合焦位置付近X1にある場合では、AF評価データが極大値付近にあるため、AFレンズ群205の駆動に対するAF評価データの変化の傾きが大きく、AF評価データの変化を敏感に検出するのに適している。
【0084】
次に、カメラCPU104は、S106でAF評価データY1を取得するために駆動させた方向とは逆方向へAFレンズ群205を駆動させるようにAF駆動部206に対して命令する。これによりAFレンズ群205は合焦位置付近X1からNパルス数分、逆転駆動され、停止する(S107)。ここで、Nパルス数の初期値は、S103で設定したN0である。
【0085】
S107で、AFレンズ群205が、Nパルス数分、逆転駆動される際、パルスカウンタはN繰り下がる。
【0086】
次に、S107で、合焦位置付近X1からNパルス数分、逆転駆動されて停止したAFレンズ群205の位置X2において、AF評価データを取得し、これをAF評価データY2とする(S108)。また、カメラCPU104は、AF評価データY2を取得した時点でのパルスカウンタの値をP2とする。
【0087】
AF評価データY2は、S107で、AFレンズ群205がNパルス数分、逆転駆動されるたびに更新される。
【0088】
次に、S106及びS108において、AF評価データY1とAF評価データY2の取得が完了した後、両者のAF評価データに差異があるかどうか判断する(S109)。
【0089】
S109で、AF評価データY1とAF評価データY2との間に差異があると判断された場合には、S107でAFレンズ群205を逆転駆動させたNパルス数により、バックラッシュがすべて除去され、実質的にAFレンズ群205が駆動されたものと判断される(S110)。
【0090】
AF評価データY1とAF評価データY2とに差異があるということは、合焦位置付近X1で取得したAF評価データY1から変化が確認されたということであり、すなわち、AFレンズ群205が、S107におけるNパルス数分の逆転駆動により、合焦位置付近X1から“実質的に”駆動され始めたということを意味している。
【0091】
S109で、AF評価データY1とAF評価データY2との間に差異がないと判断された場合には、S107においてAFレンズ群205を逆転駆動させたNパルス数では、依然としてバックラッシュが除去されている途中であるとし、実質的にAFレンズ群205が駆動されていないと判断される(S111)。
【0092】
そして、さらにAFレンズ群205を逆転駆動させ、バックラッシュをすべて除去するため、S107で逆転駆動させたNパルス数に1を加算し、「N=N+1」としてNパルス数を更新する(S112)。
【0093】
S112で、Nパルス数を更新した後、このより多いNパルス数をもって、AF評価データY1とAF評価データY2とに差異が確認されるまで、S104から山登りAF及び逆転駆動を繰り返す(A)。
【0094】
次に、S109で、AF評価データに変化が確認された場合において、AF評価データY1に対応するパルスカウンタの値P1とAF評価データY2に対応するパルスカウンタの値P2との差異(=|P1−P2|)が所定のパルス数Pd以上であるかどうか判断する(S113)。所定のパルス数Pd以上である場合には、AF評価データに変化が確認されたとしても、バックラッシュ量の測定に失敗したと判断し、AF評価データY1の取得からやり直すため、S103へ戻る。
【0095】
ここで、所定のパルス数Pdとは、予めカメラCPU104に記憶され、バックラッシュを除去するための十分なパルス数を示す。
【0096】
例えば、S106でAF評価データY1を取得するためにAFレンズ群205を移動させた合焦位置付近X1において、AF評価データの変化が平坦であった場合、AF評価データの変化がないままAFレンズ群205が実質的に逆転駆動されてしまうおそれがある。この場合、バックラッシュの除去に十分以上のパルス数分、駆動されてしまう可能性がある。そこで、P1とP2との差異が所定のパルス数Pd以上である場合には、バックラッシュ量の測定自体に失敗したと判断することとする。
【0097】
所定のパルス数Pdは、減速機構に用いるギヤの仕様や連結機構に用いる連結部材の仕様などから設計値として予め決定されたり、耐用試験により予期されるバックラッシュの経年変化等から実験的に予め決定されたりする。
【0098】
次に、S113で、AF評価データに変化が確認された際の、AF評価データY1に対応するパルスカウンタの値P1とAF評価データY2に対応するパルスカウンタの値P2との差異(=|P1−P2|)が許容範囲内であると確認された場合には、AF評価データに変化が確認される直前までに駆動されたパルス数である「N−1」を、バックラッシュがすべて除去されるためのバックラッシュ量と決定し、これをバックラッシュ量記憶部111に記憶する(S114)。
【0099】
以上で、バックラッシュ量を測定するための、バックラッシュキャリブレーションモードが終了する。
【0100】
次に、バックラッシュキャリブレーションモードで測定したバックラッシュ量を用いた、本実施例のAF動作のフローについて、
図3のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0101】
まず、撮影者が、操作系107に含まれるレリーズボタンをレリーズ半押しすることにより、一般的な山登りAFが開始される(S201)。
【0102】
山登りAFが開始されると、カメラCPU104はAF駆動部206に命令して、AFレンズ群205を無限遠位置まで駆動させる(S202)。また、ここで駆動パルス数をカウントするためのパルスカウンタを0にリセットする。
【0103】
次に、カメラCPU104は、AFレンズ群205を移動させた無限遠位置において、AF評価データを取得する(S203)。
【0104】
次に、カメラCPU104は、AFレンズ群205を至近端位置方向へ1パルス数分、駆動させる(S204)。また、パルスカウンタを「1」繰り上げる。
【0105】
さらに、AFレンズ群205が、S204で1パルス数分、駆動された後、AFレンズ群205の現在位置において新たにAF評価データを取得する(S205)。
【0106】
カメラCPU104は、AFレンズ群205の現在位置で取得したAF評価データをYlとする。そして、さらにAFレンズ群205が、1パルス数分、駆動され、新たにAF評価データを取得した場合にはこれを新たなYlとして更新する。同時に前回取得されたAF評価データはYfとし、AFレンズ群205が、1パルス数分、駆動されるたびに更新する。
【0107】
次に、カメラCPU104は、AFレンズ群205の現在位置で取得したAF評価データYlと前回取得したAF評価データYfとを比較する(S206)。「前回取得したAF評価データYf」とは、山登りAF開始直後であれば、AFレンズ群205の無限遠位置において取得したAF評価データであり、山登りAFの途中であれば、S204で1パルス数分、駆動させる前のAFレンズ群205の位置において取得したAF評価データである。
【0108】
S206で、前回取得したAF評価データYfよりも、AFレンズ群205の現在位置で取得したAF評価データYlのほうが小さくない場合、次に取得するAF評価データもこのまま増大し続ける可能性がある。したがって、カメラCPU104は、さらにAFレンズ群205をさらに1パルス数分、駆動させ、新たなAF評価データを取得するため、S204へ戻る。
【0109】
S206で、前回取得したAF評価データYfよりも、AFレンズ群205の現在位置で取得したAF評価データYlのほうが小さい場合、カメラCPU104は、前回取得したAF評価データYfが山登りAFにおけるAF評価データの極大値Ymaxであると判断し、極大値Ymaxに対応するAFレンズ群205の位置を合焦位置Xmaxとして決定する(S207)。
【0110】
次に、カメラCPU104は、AFレンズ群205を現在位置から合焦位置Xmaxへ逆転駆動させるため、現在位置と合焦位置Xmaxとの距離差に相当する逆転駆動パルス数Pbを算出する(S208)。
【0111】
次に、カメラCPU104は、バックラッシュキャリブレーションモードで測定した、バックラッシュをすべて除去するためのバックラッシュ量「N−1」を、バックラッシュ量記憶部111から読み出し、S208で算出した逆転駆動パルス数Pbに加算して、バックラッシュを補正する(S209)。
【0112】
本実施例では、AFレンズ群205を逆転駆動させる際に、逆転駆動パルス数Pbに対して予めバックラッシュに相当するパルス数を加算しておくことで、バックラッシュを考慮した逆転駆動が可能となる。
【0113】
次に、AFレンズ群205は、S209で補正された駆動パルス数分、逆転駆動され、合焦位置Xmaxに到達し、山登りAFを終了する(S210)。
【0114】
なお、バックラッシュキャリブレーションモードは、メニュー設定による選択・実行で開始するのではなく、カメラボディ若しくは交換レンズ等に専用ボタンを設け、これにより開始することとしてもよい。
【0115】
また、バックラッシュキャリブレーションモードは、カメラボディ若しくはカメラシステムの起動時に自動的に実行される制御としてもよい。
【0116】
また、バックラッシュキャリブレーションモードは、本実施例に示したコントラストAF方式に限らず、位相差AF方式においても適用可能である。
【0117】
また、AF動作は、山登りAFの実行を繰り返す制御とし、逆転駆動のたびにバックラッシュの補正を行う制御としてもよい。
【0118】
以上説明したとおり、本発明によれば、AFレンズ群を駆動可能領域すべてについて駆動させる必要がなく、バックラッシュ量の測定が迅速であり、さらに、経年変化するバックラッシュ量を精度よく測定することが可能であり、測定したバックラッシュ量に基づきAFレンズ群の駆動量を補正し、AFレンズ群を精度よく駆動させることが可能なカメラ又はカメラシステムを提供することができる。