(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769991
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】コンクリート充填鋼柱
(51)【国際特許分類】
E04B 1/30 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
E04B1/30 C
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-62359(P2011-62359)
(22)【出願日】2011年3月22日
(65)【公開番号】特開2012-197598(P2012-197598A)
(43)【公開日】2012年10月18日
【審査請求日】2014年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 芳顯
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 健正
【審査官】
星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−040044(JP,A)
【文献】
特開平07−071088(JP,A)
【文献】
特開平08−135017(JP,A)
【文献】
特開平01−263344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/30
E04B 1/16
E04B 1/18
E01D 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼柱(1、2)と、
前記鋼柱(1、2)の内部に充填された充填コンクリート(6、7)と、
前記鋼柱(1、2)の内部に配置された一対の拘束部材(4、5)とを備え、
前記一対の拘束部材(4、5)は、鋼柱軸直交方向に配置される板状部(4a)と、前記板状部(4a)の外周部に立設された鋼管(4b)とを有し、
前記充填コンクリート(6、7)は、前記一対の拘束部材(4、5)により鋼柱軸方向に2つに分離されており、
前記一対の拘束部材(4、5)のうち一方の拘束部材(4)は、2つに分離された前記充填コンクリート(6、7)のうち一方の充填コンクリート(6)に、鋼柱軸直交方向の拘束力を与えるものであり、
前記一対の拘束部材(4、5)のうち他方の拘束部材(5)は、2つに分離された前記充填コンクリート(6、7)のうち他方の充填コンクリート(7)に、鋼柱軸直交方向の拘束力を与えるものであり、
前記一対の拘束部材(4、5)は、前記鋼柱(1、2)に地震力による曲げが作用した場合、相対回転が生じて離間を部分的に許容することを特徴とするコンクリート充填鋼柱。
【請求項2】
前記一対の拘束部材(4、5)の前記板状部(4a)は、地震荷重が作用する前の初期状態では互いに接触していることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート充填鋼柱。
【請求項3】
前記鋼柱(1、2)のうち前記一対の拘束部材(4、5)付近の部分(2)は、高性能鋼材で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリート充填鋼柱。
【請求項4】
前記一対の拘束部材(4、5)は、前記鋼柱(1、2)の局部座屈の発生が予測される位置に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のコンクリート充填鋼柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己修復機能を持つコンクリート充填鋼柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土木構造物におけるコンクリートを内部に充填した鋼柱の代表例として、橋梁等のコンクリート充填鋼製橋脚がある。
一般に、鋼製橋脚は極大地震時には塑性変形が生じ、地震後には大きな残留変形が発生する。そのため、耐震安全性の問題だけではなく地震後の使用性においても問題が生じ、変形部の修繕や交換、原位置への復帰作業が必要となる。
非特許文献1および非特許文献2は橋脚内部に部分的にコンクリート充填を施した鋼製橋脚の耐震性能に関する研究であり、無充填の橋脚に較べ耐力、変形能とも高い耐震性能を有することが示されている。
これは、部分充填されたコンクリートがダイヤフラムを介して伝達される圧縮力を分担することにより鋼柱には引張力が作用するため、 鋼柱での局部座屈の発生が抑制されることによるものである。
しかし、従来のコンクリート充填橋脚では、初期においてはコンクリートが引張力を負担するために、鋼柱に圧縮力が作用し局部座屈が生じやすい。また地震動による繰り返し載荷の振幅が進むにつれてコンクリートに対する鋼柱軸と直交する方向の拘束力が低下してコンクリートが圧壊するためにコンクリートが圧縮力を分担できなくなり、最終的には鋼柱での局部座屈が進行することで耐力が低下し残留変形が増大する。
また、無充填鋼柱に比べコンクリート充填鋼柱は変形能に優れるが、鋼柱にき裂が生じる ことにより終局状態を迎え耐力が低下してしまう懸念も存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】後藤芳顯,水野貢介,Ghosh Prosenjit Kumar,藤井雄介:充填コンクリートとの相互作用を考慮した矩形断面鋼製橋脚の繰り返し挙動のFEM解析,土木学会論文集A,Vol.66,No.4,pp.816-835,2010.
【非特許文献2】後藤芳顯,Ghosh Prosenjit Kumar,川西直樹:充填コンクリートとの相互作用を考慮した円形断面鋼製橋脚の繰り返し挙動のFEM解析,土木学会論文集A,Vol.65,No.2,487-504,2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンクリート充填鋼柱では圧縮軸力を充填コンクリートが分担することで鋼柱に引張力が作用し、局部座屈による塑性変形が抑制され残留変形の復元がなされる。
しかし、初期においてはコンクリートが引張力を負担するために、鋼柱に圧縮力が作用し局部座屈が生じやすい。また、鋼柱の塑性変形が進行した際に、充填コンクリートに対して圧縮軸力に直交する方向の拘束力を保持する機構が失われるため、コンクリートが圧壊する。そのため、残留変形を復元する自己復元能力が失われる。
したがって、極大地震後には、発生した残留変形を修復して原位置へ復帰する作業が必要となり、修復を要するという問題がある。よって、地震後の使用性の観点からメンテナンスフリー化を実現するには至っていない。
また、鋼柱としてのメンテナンスフリー化を実現するためには、複数回の地震動下においてもき裂の発生を抑止する必要がある。
本発明は上記点に鑑みて、高い耐震性能と高いメンテナンスフリー性との両立を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
鋼柱(1、2)と、
前記鋼柱(1、2)の内部に充填された充填コンクリート(6、7)と、
前記鋼柱(1、2)の内部に配置された一対の拘束部材(4、5)とを備え、
前記一対の拘束部材(4、5)は、鋼柱軸直交方向に配置される板状部(4a)と、前記板状部(4a)の外周部に立設された鋼管(4b)とを有し、
前記充填コンクリート(6、7)は、前記一対の拘束部材(4、5)により鋼柱軸方向に2つに分離されており、
前記一対の拘束部材(4、5)のうち一方の拘束部材(4)は、2つに分離された前記充填コンクリート(6、7)のうち一方の充填コンクリート(6)に、鋼柱軸直交方向の拘束力を与えるものであり、
前記一対の拘束部材(4、5)のうち他方の拘束部材(5)は、2つに分離された前記充填コンクリート(6、7)のうち他方の充填コンクリート(7)に、鋼柱軸直交方向の拘束力を与えるものであ
り、
前記一対の拘束部材(4、5)は、前記鋼柱(1、2)に地震力による曲げが作用した場合、相対回転が生じて離間を部分的に許容することを特徴とする。
これによると、充填コンクリートが拘束板により拘束されることによりコンクリートの圧壊を抑制できるので、高い耐震性能と高いメンテナンスフリー性との両立を実現できる。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のコンクリート充填鋼柱において
、
前記一対の拘束部材(4、5)の前記板状部(
4a)は、地震荷重が作用する前の初期状態では互いに接触していることを特徴とする
。
請求項
3に記載の発明では、請求項1
または2に記載のコンクリート充填鋼柱において、
前記鋼柱(1、2)のうち前記一対の拘束部材(4、5)付近の部分(2)は、高性能鋼材で構成されていることを特徴とする。
これにより、鋼柱におけるき裂の発生を抑制することができる。
請求項
4に記載の発明では、請求項1ないし
3のいずれか1つに記載のコンクリート充填鋼柱において、
前記一対の拘束部材(4、5)は、前記鋼柱(1、2)の局部座屈の発生が予測される位置に配置されていることを特徴とする。
【0006】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本鋼柱における拘束板の配置を模式的に示した図である。
【
図3】本鋼柱に地震力が作用した際の動作機構を模式的に示した図である。
【
図4】他の実施形態における拘束板の構造を模式的に示した図である。(a)がスタッドを取り付けた第3実施形態での拘束板、(b)が第4実施形態での拘束板を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
まず、実施形態の概要を説明する。コンクリート充填鋼製橋脚は一般に耐力および変形能に優れる。実施形態ではそれに自己修復機能を付加することで残留変形を抑制し、高い耐震性能とメンテナンスフリー化の両立を実現する。
自己復元機能を確保するために、充填コンクリートが上下に分離するように2枚の拘束板を取り付ける。この拘束板は鋼板などで製作され鋼管等 によりコンクリートと十分に一体化される。また、この拘束板は鋼脚の局部座屈の発生が予測される位置に鋼柱軸に直交して一対設置される。
この拘束板は荷重が小さい初期においても充填コンクリートには引張力が生じないように充填コンクリートが上下分離するように機能する。これにより、鋼柱には初期の状態でもコンクリート に生じる引張力の反力としての圧縮力が作用しない。さらに、鋼柱の塑性変形が進行し充填コンクリートへの鋼柱軸直交方向の拘束力が減少した場合においても、この拘束板により拘束力を確保する。これにより充填コンクリートの強度低下を抑制し、コンクリートの圧壊を防止する。結果として、載荷の過程を通して常に、充填コンクリートが圧縮力を分担するとともに、鋼柱に引張力が作用し局部座屈による塑性変形が抑制される。
【0009】
一対の拘束板は対向して接触した状態にて配置される。鋼柱に地震力による曲げが作用した場合には2枚の拘束板に相対回転が生じて離間を部分的に許容し、片当たりの状態にて鋼柱の圧縮力を伝達する。これは、従来のコンクリート充填鋼柱におけるひび割れ発生後の充填コンクリートにおける挙動と同様である。このように、拘束板は鋼柱の変形によって失われるコンクリートに対する鋼柱軸直交方向の拘束を行うが、拘束以外の過度な補強効果は持たないものとする。これは過度な補強により局部座屈が拘束板の設置される断面以外に発生することを抑止するためである。
【0010】
さらに、必要に応じて、拘束板付近の鋼柱に耐力および変形能の優れた高性能鋼材を適用することにより複数回の地震動の繰り返し荷重に対してき裂の発生を抑制する。
【0011】
以下、第1実施形態を具体的に説明する。
図1の部材1、2は鋼柱、部材3はダイヤフラムである。部材4、5は一対の鋼製等の拘束板(拘束部材)であり対向して鋼柱内に配置される。
拘束板は鋼柱軸に直交して配置され、鋼柱軸方向の位置は鋼柱の局部座屈の発生が予測される位置とする。地震荷重が作用する前の初期状態ではこの部材4、5の拘束板は接触している。この拘束板により充填コンクリートは部材6、部材7の2つの領域に分割される。
拘束板4は
図2に示すように鋼板4aにコンクリートの周囲を囲む鋼管あるいは鋼板4bを取り付けた構造である。この構造により拘束板4は充填コンクリート6と一体化し鋼柱軸直交方向の拘束力を充填コンクリート6に与える。拘束板5も同様の構造にて充填コンクリート7と一体化し鋼柱軸直交方向の拘束力を充填コンクリート7に与える。なお、拘束板4、5は、必ずしも板形状である必要はなく、鋼柱軸直交方向の拘束力を充填コンクリート6、7に与えることができるものであればよい。
【0012】
図3は
図1の構造に地震力が作用した際の模式図である。地震時には自重および地震力による軸圧縮力Pと繰り返しの地震力の鋼柱軸直交方向成分Hが作用する。ここで軸圧縮力Pの大部分はダイヤフラム3を介して力a1のように部材6の充填コンクリートに伝達された後、片当たりした拘束板4、5の接触部を介して圧縮力b1、b2として伝達される。
一方、鋼柱については、鋼柱2の圧縮側2aには局部座屈が生じるが、鋼柱2の引張側2bでは引張力a2による引張力c1、c2が作用する。これにより圧縮時に生じた局部座屈変形が除去される。一方、圧縮側2aの局部座屈変形も地震力の水平成分Hの載荷方向 が反転した際に引張力が作用することにより局部座屈変形が復元され残留変形が回復する。また、拘束板4、5は接触しているのみで互いに接合はされていないため、拘束板4、充填コンクリート6、7、拘束板5を介して引張力が伝達されることはない。
一方、拘束板のない従来の充填コンクリートではひび割れ発生前には引張力も伝達される。本実施形態では充填コンクリートにおいて引張力が作用しないためその反力としての圧縮力を鋼柱の圧縮側2aが負担する必要がなくなり、載荷初期においても局部座屈の進行を抑制することができる。
(第2実施形態)
第1実施形態において、鋼柱2に高性能鋼材を用いた形態である。これは大きな繰り返し載荷の加わる局部座屈部2a、2bでのき裂の発生を抑制するためのものである。なお、従来鋼材を用いる鋼柱1と高性能鋼材を用いる鋼柱2の接合位置8は局部座屈部2a、2bでのき裂発生を抑制できる範囲で位置を任意に設定できる。また、鋼柱1、2をともに高性能鋼材とすることもできる。
(第3実施形態)
第1実施形態あるいは第2実施形態において拘束板の形状を
図4(a)のように変更した形態である。本実施形態では
図1の拘束板4を
図4(a)に示す鋼板9aにスタッド9bを取り付けた拘束板に置き換えたものである。この実施形態では、スタッド9bにより拘束板4を充填コンクリート6と一体化させる。同様に、拘束板5と充填コンクリート7を一体化させる。また、
図2で示す鋼管あるいは鋼板4bとスタッド9bの両方を鋼板8に取り付けた構造でもよい。
(第4実施形態)
第1実施形態あるいは第2実施形態において拘束板の形状を
図4(b)のように変更した形態である。
本実施形態では
図1の拘束板4を
図4(b)に示す鋼板10aに鋼製リブ10bを取り付けた拘束板に置き換えたものである。この実施形態では、リブ10bにより拘束板4を充填コンクリート6と一体化させる。同様に、拘束板5と充填コンクリート7を一体化させる。
図4(b)では格子状にリブを配置しているが、他の配置形状も取ることができる 。
また、鋼製リブ10bは
図2で示す鋼管あるいは鋼板4bやスタッド9bと組み合わせて鋼板10aに取り付けた構造でもよい。
【0013】
(他の実施形態)
本発明は、橋脚に限定されることなく、種々の構造物におけるコンクリート充填鋼柱に適用可能である。
【符号の説明】
【0014】
1、2 鋼柱
4、5 拘束板(拘束部材)
6、7 充填コンクリート