(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一態様は、溶湯の湯面から介在物や雰囲気中のガス等が巻き込まれる量を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、溶湯を受ける受け部と、前記受け部の下に配置され、前記受け部から前記溶湯が導入される鋳型と、前記鋳型の外周の外側に配置され、前記鋳型に導入された溶湯を攪拌する電磁誘導攪拌機構と、前記鋳型内で凝固された金属を前記鋳型の下方の外側に移動させる移動機構と、を具備し、前記受け部の内径は、前記鋳型の内径より小さいことを特徴とする鋳造装置である。
【0008】
本発明の一態様によれば、受け部の内径を鋳型の内径より小さく形成して溶湯の湯面の表面積を小さくしているため、鋳型に導入された溶湯を電磁誘導攪拌機構によって攪拌した際に、その攪拌力が受け部内の溶湯に伝わりにくくなり、受け部内の溶湯が鋳型内のように強く攪拌されることを抑制できる。その結果、受け部内の溶湯の湯面が強く攪拌されることがなく、溶湯の湯面から介在物や雰囲気中のガス等が巻き込まれる量を低減することができる。
【0009】
また、本発明の一態様において、前記電磁誘導攪拌機構は、前記鋳型内の前記溶湯を周方向に回転させる機構であっても良い。
また、本発明の一態様において、前記受け部内に配置された少なくとも一枚の邪魔板をさらに具備し、前記少なくとも一枚の邪魔板は、前記受け部内の前記溶湯の回転を阻害するものであることが好ましい。
【0010】
また、本発明の一態様において、前記電磁誘導攪拌機構は、前記鋳型内の前記溶湯を一方の周方向とその逆の周方向に交互に回転させる機構であることが好ましい。これにより、溶湯の湯面の流速を抑えることができる。
【0011】
本発明の一態様は、受け部に溶湯を導入し、前記受け部内の溶湯を、前記受け部の下に配置された鋳型に導入し、前記鋳型に導入された溶湯を電磁誘導攪拌機構によって攪拌し、前記鋳型内で凝固された金属を前記鋳型の下方の外部に引き出す鋳造方法であって、前記受け部の内径は、前記鋳型の内径より小さいことを特徴とする鋳造方法である。
【0012】
また、本発明の一態様において、前記電磁誘導攪拌機構によって攪拌する際、前記鋳型に導入された溶湯を周方向に回転させることも可能である。
また、本発明の一態様において、前記溶湯を周方向に回転させる際、前記受け部内に配置された少なくとも一枚の邪魔板によって前記受け部内の前記溶湯の回転を阻害することが好ましい。
【0013】
また、本発明の一態様において、前記電磁誘導攪拌機構によって攪拌する際、前記鋳型に導入された溶湯を一方の周方向とその逆の周方向に交互に回転させることが好ましい。
【0014】
本発明の一態様は、受け部に溶湯を導入し、前記受け部内の溶湯を、前記受け部の下に配置された鋳型に導入し、前記鋳型に導入された溶湯を電磁誘導攪拌機構によって攪拌し、前記鋳型内で凝固された金属を前記鋳型の下方に引き出すマグネシウム合金ビレットの製造方法であって、前記受け部の内径は、前記鋳型の内径より小さいことを特徴とするマグネシウム合金ビレットの製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様を適用することで、溶湯の湯面から介在物や雰囲気中のガス等が巻き込まれる量を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一態様に係る鋳造装置の構成を模式的に示す断面図である。
この鋳造装置は、溶湯100を導入する機構101と、この機構101から溶湯100が導入される受け部としてのメタル受け内筒102を有している。溶湯100を導入する機構101は溶解炉(図示せず)に接続されている。この機構101は、前記溶解炉で溶融した溶湯100をメタル受け内筒102に導入するものである。この溶湯100は、酸化しやすい金属又は酸化しやすい元素を含有する金属の溶湯であり、例えば希土類元素を含有するマグネシウム合金、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金などの溶湯である。
【0019】
メタル受け内筒102は円筒形状の部分を有し、その内径は例えば140mmである。メタル受け内筒102の外側には加熱コイル104が配置されている。加熱コイル104は、メタル受け内筒102内に導入された溶湯の温度を一定に保持するための温度調節機構であり、溶湯が保持温度より低い場合は加熱コイルによって加熱され、溶湯の温度が一定に保持される。
【0020】
メタル受け内筒102の上方には蓋103が配置されており、メタル受け内筒102内の溶湯100を密封することができるようになっている。また、この鋳造装置は、メタル受け内筒102内に不活性ガスを導入する不活性ガス導入機構(図示せず)を有しており、この不活性ガス導入機構によってメタル受け内筒102内を不活性ガス雰囲気に保持できるようになっている。
【0021】
メタル受け内筒102の下には鋳型(モールド)106が配置されており、鋳型106はメタル受け内筒102に繋げられて連結されている。この連結された部分は密閉されるように構成されている。鋳型106は円筒形状の部分を有し、その内径は例えば200mmである。メタル受け内筒102の内径は、鋳型106の内径より小さい。これにより、溶湯100の湯面100aの表面積を小さくすることができ、その結果、湯面100aに発生する介在物の量を極力減らすことができる。
メタル受け内筒102の内径dと鋳型106の内径Dとの関係は、下記式(1)を満たし、より好ましくは下記式(2)を満たすものである。
0.2≦d/D≦0.9 ・・・(1)
0.5≦d/D≦0.8 ・・・(2)
上記式(1)、(2)において下限を設けている理由は、メタル受け内筒102の内径dが小さすぎるとメタル受け内筒102に保持できる溶湯100の量が減るため、メタル受け内筒102に次から次へと溶湯100が流れ込み、メタル受け内筒102内の溶湯100の温度の均一性が保てなくなるためである。
【0022】
鋳型106には一次冷却機構107が設けられており、この一次冷却機構107は鋳型106の外側に水などの冷媒を通すことにより鋳型106を冷却し、その結果、鋳型106内に導入された溶湯100を冷却する機構である。
【0023】
鋳型106の外周の外側には電磁攪拌機構(電磁攪拌コイル)108が配置されており、この電磁攪拌コイル108は鋳型を覆っている。電磁攪拌機構108は、鋳型106に導入された溶湯100を攪拌する機構であり、例えば鋳型106内の溶湯100を周方向に回転させる機構であり、好ましくは鋳型106内の溶湯を一方の周方向とその逆の周方向に交互に回転させる機構である。このように交互に回転させることで、溶湯100の湯面100aの流速を抑えることができる。
なお、電磁攪拌コイル108によって形成される磁束は、溶湯100の湯面100aからなるべく離れていることが好ましい。これにより、鋳造時に湯面100aを荒らさないようにすることができる。例えば、電磁攪拌機構108を上下移動させる移動装置(図示せず)を設け、この移動装置によって電磁攪拌機構108を鋳型106の下方に移動させて鋳型106の下方で磁束を形成すること、または移動装置によって電磁攪拌機構108を上下に移動させながら磁束を形成すること、または電磁攪拌機構108を上下に移動させながら磁束を鋳型106の下方で強く形成することにより、湯面が荒れないような湯面と磁束の位置関係を築くことができる。また、電磁攪拌機構108内に独立して制御できるコイルを複数個上下に配置した多層式のコイルを用い、鋳型の下方のコイルのみによって磁束を発生させること、または磁束が鋳型106の上下に移動するように形成すること、または磁束が鋳型106の上下に移動するように形成し且つ磁束を鋳型106の下方で強く形成することにより、鋳造時に湯面100aを荒らさないようにすることができる。
【0024】
この鋳造装置は、鋳型106内で凝固された金属110を鋳型106の下方の外側に移動させる移動機構を有している。この移動機構は、鋳型106の下方に配置された下型109と、この下型109を昇降させる昇降テーブル(図示せず)を有している。
【0025】
下型109の面の形状は例えば円形又は多角形等の種々の形状を用いることができる。下型109は、下型109を鋳型106に連結した際の連結部が密閉されるように構成されている。
【0026】
前記昇降テーブルは、下型109を鋳型106から遠ざかる方向である下方に移動させ、且つ下型109を鋳型106に近づける方向である上方に移動させる機構である。また、鋳型106には、さらに二次冷却機構112が配置されており、この二次冷却機構112によって凝固された金属110が冷却されるようになっている。
【0027】
また、この鋳造装置は、前述したメタル受け内筒102の上方の蓋103を閉じて、下型109と鋳型106とを密閉して連結させることにより、蓋103、メタル受け内筒102、鋳型106及び下型109によって作られる内部空間を真空ポンプ(図示せず)によって真空排気する真空排気機構を有しているとともに、この内部空間に不活性ガス、例えばArガスを導入する不活性ガス導入機構(図示せず)を有している。不活性ガスは、溶融している金属、あるいは、合金に含まれている元素と反応しないガスのことである。例えば、マグネシウムに対しては、Arガスと窒素ガスの混合ガスであってもよい。
【0028】
次に、本発明の一態様に係る鋳造方法について
図1を参照しつつ説明する。ここで用いる溶湯100は、例えば希土類元素を含有するマグネシウム合金である。
【0029】
蓋103を閉じ、下型109を昇降テーブルによって上昇させて前述した内部空間を密閉状態にし、前述した真空排気機構によって内部空間を真空排気する。これにより、内部空間の酸素や水分(H
2O)が除去される。また、真空排気する際に内部空間を温度上昇させることによって真空度を高め易くする効果が期待でき、効果的に真空排気を実施することが可能となる。この後、不活性ガス導入機構によって内部空間に不活性ガスを導入する。これにより、内部空間は不活性ガス雰囲気(例えばArガス雰囲気)に置換される。この置換された内部空間の圧力は、大気圧又は大気圧に近い圧力であることが好ましい。
【0030】
このように酸素を除去して不活性ガス雰囲気にする理由は、マグネシウム合金の溶湯100を内部空間に導入した際に酸素によってマグネシウム合金が燃焼するのを防止するためである。詳細には、内部空間を密閉系にすることで、内部空間に酸素が供給されなくなり、原理的に燃焼(酸化)を起こりにくくすることができる。ただし、真空中ではマグネシウムが蒸発してしまうため、不活性ガスを内部空間に充満させることで、マグネシウムの蒸発を防ぎ、酸化も抑制することができる。また、希土類元素などの高価な金属元素の酸化を抑えることができ、その結果、コスト低減効果が期待できる。
【0031】
また、水分を除去する理由は、水分はマグネシウムと激しく反応してマグネシウム合金を酸化させ、H
2ガスを発生させ、またマグネシウム合金に水素が含有されてしまうため、水分を除去すれば水分とマグネシウムとの反応を防止することができるからである。
【0032】
この後、溶解炉で溶融した溶湯100を、不活性ガス雰囲気に置換されたメタル受け内筒102に溶湯導入機構101によって導入する。この導入された溶湯100によりメタル受け内筒102を満たし、鋳型106内に溶湯100を導入する。この導入した溶湯100を、一次冷却機構107によって冷却された鋳型106の内面側から冷却し、凝固が開始される。このように溶湯100が凝固している最中に、溶湯100を電磁誘導攪拌機構108によって鋳型106の一方の周方向とその逆の周方向に交互に回転させることで攪拌する。なお、本発明の一態様では、溶湯を電磁誘導攪拌機構108によって鋳型106の一方の周方向とその逆の周方向に交互に回転させて攪拌しているが、一方方向の周方向のみに回転させても良いし、その他の方法で攪拌しても良い。
【0033】
次いで、下型109を昇降テーブルによって所定の速度で下降させる。これにより、下型109上にマグネシウム合金ビレットが形成される。
【0034】
上述したように溶湯導入機構101によって溶湯100を導入することと下型109を下降させることを連続的に行うことにより、所定の長さのマグネシウム合金ビレットを製造することができる。なお、マグネシウム合金ビレットを製造している間(鋳造中)は不活性ガスを内部空間に供給し続けることが好ましい。これにより、湯面100aに発生する介在物の量を極力減らすことができる。
【0035】
本発明の一態様によれば、鋳型106内の溶湯100を攪拌させながら凝固させることにより、凝固する金属の結晶粒成長を分断しながら凝固を進めることができる。これにより、凝固した金属の組織を微細化させることができる。
【0036】
また、本発明の一態様に係る鋳造装置では、メタル受け内筒102の内径を鋳型106の内径より小さくして湯面100aの表面積を小さく形成しているため、鋳型106内の溶湯100を攪拌させても、その攪拌力がメタル受け内筒102内の溶湯100に伝わりにくくすることができる。その結果、メタル受け内筒102の溶湯100が強く攪拌されることを抑制でき、メタル受け内筒102内の溶湯100の湯面100aが強く攪拌や回転することを抑制できる。従って、その湯面100aから介在物や雰囲気中のガス等を反応しやすい金属の溶湯100内に巻き込む量を少なくすることができ、鋳造されたマグネシウム合金ビレット中に含まれる介在物を低減することができる。
また、溶湯100が凝固している最中に、溶湯100を電磁誘導攪拌機構108によって鋳型106の一方の周方向とその逆の周方向に交互に回転させることで、湯面100aの流速を抑えることができる。その結果、湯面100aを荒らさないようにすることができる。
【0037】
ところで、近年、環境負荷ガス排出量低減要求が高まり自動車や航空機に代表される輸送機器には更なるエネルギー効率の向上が求められている。そんな中で実用金属中最も軽いマグネシウムは非常に高い注目を集めながらも、広く普及するに至っていない。その原因の一つとして塑性加工性が他の実用金属と比較して著しく劣っており、製品への適用を困難にしていた。本発明の一態様では、微細で均一な鋳造組織を有する鋳造材を作製することによりこれまで困難であった鍛造成形等を可能にし、生産部品への適用の幅を広げることが期待できる。
【0038】
また、本発明の一態様では、マグネシウム合金の鋳造時に外部磁場を印加することによって、溶湯100を攪拌し、凝固時の結晶粒成長を抑制する。これにより鋳造材の結晶粒を微細化すると共に、均一な組織にすることが可能となる。更に、印加する磁場の向きをある時間内で反転を繰り返すことにより、溶湯100の攪拌する向きを従来の一方方向のみではなく、双方向に攪拌することが可能となる。これによりビレット中心部に鋳造欠陥の少ない良好な鋳造材を取得することが出来る。鋳造ビレットの結晶粒を微細化することにより、押出しや鍛造等の塑性加工性を向上させることが可能となる。また、長周期積層構造相によって強化されるマグネシウム合金では、鋳造組織を微細化することにより、溶体化処理の効率が向上し、コストダウンに繋がる。
【0039】
また、本発明の一態様である、鋳造中に一方方向のみの攪拌を行うことにより結晶粒の微細化を実施するような場合は、最も鋳造欠陥の発生し易いビレット中心部と攪拌による渦中心が一致することにより強く攪拌した場合にはビレットの中心部に欠陥が生じて健全なビレットの取得が困難なことがある。その為に強い攪拌が出来ずに微細化材を併用する等の対策が必要であり、コストアップの要因の一つとなることがある。
これに対し、本発明の一態様では、攪拌の方向を一方方向のみではなく相互方向とすることにより、攪拌による渦中心に逆回転が加わり渦中心への溶湯100の流込を促すことによって鋳造欠陥を抑制することが可能となる。これにより健全なビレットを取得することが可能となると供に、より強磁場を印加することが可能となるためにZr等の微細化材を使用することなく微細な鋳造組織を有する鋳造ビレットを取得することが可能となる。
【0040】
(第2の実施形態)
図2(A)は、本発明の一態様に係る鋳造装置の一部を模式的に示す断面図であり、
図2(B)は、
図2(A)に示す2B−2B線の断面図であり、
図1と同一部分には同一符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0041】
メタル受け内筒102には、湯面100a近傍に位置する第1の邪魔板121が配置されている。第1の邪魔板121は、鋳型106内の溶湯100の周方向の回転力が湯面100aに伝わりにくくするためのものであり、第1の邪魔板121の板面が溶湯の回転方向に対して垂直に配置されている。
【0042】
本実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、第1の邪魔板121をメタル受け内筒102に配置するため、メタル受け内筒102内で溶湯100に回転力が発生しても、その回転力を第1の邪魔板121によって弱めることができる。これにより、溶湯100の湯面100aが強く攪拌や回転することをより確実に抑制することができる。
【0043】
(第3の実施形態)
図2(C)は、本発明の一態様に係る鋳造装置の一部を模式的に示す断面図であり、
図2(D)は、
図2(C)に示す2D−2D線の断面図であり、
図1と同一部分には同一符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0044】
メタル受け内筒102には、湯面100a近傍に位置する第1〜第4の邪魔板121〜124が配置されている。第1〜第4の邪魔板121〜124は、鋳型106内の溶湯100の周方向の回転力が湯面100aに伝わりにくくするためのものであり、第1〜第4の邪魔板121それぞれの板面が溶湯の回転方向に対して垂直に配置されている。
【0045】
本実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、第1〜第4の邪魔板121〜124それぞれをメタル受け内筒102に配置するため、メタル受け内筒102内で溶湯100に回転力が発生しても、その回転力を第1〜第4の邪魔板121〜124によって弱めることができる。これにより、溶湯100の湯面100aが強く攪拌や回転することをより確実に抑制することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、4枚の邪魔板をメタル受け内筒102に配置しているが、2枚、3枚または5枚以上の邪魔板をメタル受け内筒102に配置しても良い。
【実施例】
【0047】
図1に示す鋳造装置を用いて以下の鋳造方法により実施例1,2及び比較例それぞれのマグネシウム合金ビレットを作製した。
【0048】
(比較例)
比較例のマグネシウム合金ビレットの製造方法は以下のとおりである。
溶湯としては、溶融させた純Mgに純Znおよび純Yを溶解し、十分攪拌することによって得られたMg96Zn2Y2(at%)合金の溶湯を用いた。鋳型106内での溶湯の水冷凝固時には攪拌を行わなかった。
【0049】
(実施例1)
実施例1のマグネシウム合金ビレットの製造方法は以下のとおりである。
溶湯としては、比較例と同様のものを用いた。鋳型106内での溶湯の水冷凝固時には一方方向のみに電磁攪拌を行った。電磁攪拌機構108のマグネットは2極の回転磁界型を使用し、その出力は10Hz、0〜100Aとし、その際の中心磁束密度は0〜550ガウス程度である。
【0050】
(実施例2)
実施例2のマグネシウム合金ビレットの製造方法は以下のとおりである。
溶湯としては、比較例と同様のものを用いた。鋳型106内での溶湯の水冷凝固時には双方向に(一方方向とその逆方向を交互に)電磁攪拌を行った。電磁攪拌機構108のマグネットは実施例1と同様のものを使用し、その出力は実施例1と同様とし、その際の中心磁束密度は実施例1と同様である。
【0051】
図3は、比較例のマグネシウム合金ビレットの中央を縦に切断した断面の写真であり、
図4は、実施例1のマグネシウム合金ビレットの中央を縦に切断した断面の写真であり、
図5は、実施例2のマグネシウム合金ビレットの中央を縦に切断した断面の写真である。
【0052】
図3〜
図5に示すように、印加する磁場の向きの反転を繰り返した実施例2のビレットでは、溶湯の攪拌する向きを一方方向のみとして実施例1に比べて、ビレット中心部に鋳造欠陥の少ない良好な鋳造材を取得することが出来た。
【0053】
図6は、比較例のマグネシウム合金ビレットのマクロ組織の写真であり、
図7は、実施例1のマグネシウム合金ビレットのマクロ組織の写真であり、
図8は、実施例2のマグネシウム合金ビレットのマクロ組織の写真である。
図9は、
図6より拡大した比較例のマクロ組織の写真であり、
図10は、
図7より拡大した実施例1のマクロ組織の写真であり、
図11は、
図8より拡大した実施例2のマクロ組織の写真である。
図12は、比較例のマグネシウム合金ビレットの中心部のミクロ組織の写真であり、
図13は、実施例1のマグネシウム合金ビレットの中心部のミクロ組織の写真であり、
図14は、実施例2のマグネシウム合金ビレットの中心部のミクロ組織の写真である。
【0054】
図6〜
図14によれば、攪拌の方向を一方方向のみではなく相互方向とした実施例2では、攪拌による渦中心に逆回転が加わり渦中心への溶湯の流込を促すことによって鋳造欠陥を抑制することが出来た。