特許第5770007号(P5770007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770007
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】交差点照明システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20150806BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   B60Q1/14 Z
   G08G1/16 C
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-95602(P2011-95602)
(22)【出願日】2011年4月22日
(65)【公開番号】特開2012-224292(P2012-224292A)
(43)【公開日】2012年11月15日
【審査請求日】2014年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(72)【発明者】
【氏名】金森 昭貴
(72)【発明者】
【氏名】多々良 直樹
【審査官】 石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−306894(JP,A)
【文献】 特開2008−094151(JP,A)
【文献】 特開2003−159985(JP,A)
【文献】 特開2009−255639(JP,A)
【文献】 特開2004−086363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/14
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方を照明する車両用灯具と、車両前方の交差点を検出する検出手段と、交差点を検出してから車両が交差点の手前で停止または充分に減速するまでの期間を通して、交差点の内側領域が検出前よりも暗くなるように、車両用灯具の配光パターンを切り替える制御手段とを備えたことを特徴とする交差点照明システム。
【請求項2】
前記検出手段が交差点を検出してから車両が交差点の手前で停止または充分に減速するまでの期間を通して、車両用灯具が交差点の手前までの領域を限定的に照明するように、制御手段が車両用灯具の配光パターンを切り替える請求項1記載の交差点照明システム。
【請求項3】
前記検出手段が交差点を検出してから車両が交差点の手前で停止または充分に減速するまでの期間を通して、車両用灯具が交差点の内側領域を相対的に暗く、交差点の側方領域を相対的に明るく照明するように、制御手段が車両用灯具の配光パターンを切り替える請求項1記載の交差点照明システム。
【請求項4】
前記車両が交差点に進入する直前に、車両用灯具が水平方向の照明範囲を拡張するように、制御手段が車両用灯具の配光パターンを切り替える請求項1、2または3記載の交差点照明システム。
【請求項5】
前記車両が交差点に進入する直前に、車両用灯具が点滅光を発生するように、制御手段が車両用灯具の配光パターンを切り替える請求項1〜4の何れか一項に記載の交差点照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前方の交差点を車両用灯具で照明するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーナビゲーション装置(カーナビ装置と略す)を利用した交差点照明システムが知られている。例えば、特許文献1には、夜間走行時にカーナビ装置のルート案内機能を利用し、車両前方に交差点を検出したときに、その形状データに従い前照灯のビーム制御を行い、ステアリング操作に連動して右左折方向の路面を先行照明し、交差点通過時の安全性を高める技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−048481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の照明システムによると、交差点の見通しがよくなる反面、車両がスピードを出し過ぎるおそれがあった。例えば、図8に示すように、信号機がなく一時停止義務のある交差点Cで、車両51の前照灯52が交差点Cを終始同じ配光パターンPで明るく照明し続けるため、車両51が交差点Cの手前で一時停止を怠ったり、充分に減速しないまま交差点Cに進入してしまうという危険があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、交差点の手前で車両を一時停止または充分に減速させることができる交差点照明システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は次のような交差点照明システムを提供する。
(1)車両前方を照明する車両用灯具と、車両前方の交差点を検出する検出手段と、検出後に交差点の視認性が低くなるように、車両用灯具の配光パターンを切り替える制御手段とを備えたことを特徴とする交差点照明システム。
【0007】
(2)検出手段が交差点を検出した後に、車両用灯具が交差点の手前までの領域を限定的に照明するように、制御手段が車両用灯具の配光パターンを切り替える(1)に記載の交差点照明システム。
【0008】
(3)検出手段が交差点を検出した後に、車両用灯具が交差点の内側領域を相対的に暗く、交差点の側方領域を相対的に明るく照明するように、制御手段が車両用灯具の配光パターンを切り替える(1)に記載の交差点照明システム。
【0009】
(4)車両が交差点に進入する直前に、車両用灯具が水平方向の照明範囲を拡張するように、制御手段が車両用灯具の配光パターンを切り替える(1)、(2)または(3)に記載の交差点照明システム。
【0010】
(5)車両が交差点に進入する直前に、車両用灯具が点滅光を発生するように、制御手段が車両用灯具の配光パターンを切り替える(1)、(2)、(3)または(4)に記載の交差点照明システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明の交差点照明システムによれば、交差点の検出を契機に、車両用灯具がその交差点を暗く照明するので、交差点の見通しを意図的に低下させ、運転者に一時停止または充分な減速を徹底させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態を示す交差点照明システムのブロック図である。
図2図1の照明システムの動作を示すフローチャートである。
図3】交差点を検出した直後の配光パターンを示す模式図である。
図4図3に続く配光パターンを示す模式図である。
図5】一時停止後の配光パターンを示す模式図である。
図6】交差点通過後の配光パターンを示す模式図である。
図7】交差点検出後の別の配光パターンを示す模式図である。
図8】従来の照明システムによる配光パターンを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、この実施形態の交差点照明システム1は、車両2の前方を照明する前照灯3と、車両2の現在位置および交差点位置を認識する機能を備えたカーナビ装置4と、カーナビ装置4からの位置情報に基づいて前照灯3の照明範囲に含まれる交差点を検出する交差点検出部5と、車両2の速度を検出する車速センサ6とが設けられている。なお、交差点検出部5は、車載カメラが撮像した画像情報や路車間通信で取得した道路インフラ情報に基づいて交差点を検出することもできる。
【0014】
前照灯3は、配光パターンを形成するシェード7と、シェード7を駆動するアクチュエータ8と、アクチュエータ8および光源(図示略)を制御する前照灯駆動回路9とを備え、前照灯駆動回路9が制御装置10によって制御される。制御装置10は、交差点検出部5と配光パターン記憶部11とに接続され、交差点の検出を契機に前照灯3の配光パターンを切り替え、検出後の交差点が検出前よりも暗く照明されるような制御を行う。
【0015】
具体的には、図2図3に示すように、車両2が交差点Cに接近し、交差点検出部5が前照灯3の照明範囲に交差点Cを検出すると(S11)、制御装置10は前照灯3の配光パターンを通常配光パターンP(図8参照)から限定配光パターンP1に切り替える(S12)。この限定配光パターンP1は、図4に示すように、前照灯3が交差点Cの手前(例えば、一時停止線Sの近辺)までの領域を限定的に照明するパターンであって、車両2が交差点Cに接近するほど車両進行方向の照明距離Lが短くなる。
【0016】
これにより、一時停止線Sまでは明るく照明されるが、それよりも先の領域は暗くなるため、運転者は交差点Cの内側およびその先を見通すことが困難となり、車両2の速度を落として、交差点Cの手前で停車させる。従って、信号機がなく一時停止義務のある交差点Cにおいて、運転者に安全確認を徹底させ、接触または衝突事故を未然に防止することができる。
【0017】
一方、車両2が停止または停車と同等な速度(例えば5キロメートル毎時)以下まで充分に減速すると、制御装置10は、車速センサ6の出力に基づいてそれを確認し(図2:S13)、前照灯3の配光パターンを限定配光パターンP1から拡張配光パターンP2に切り替える(S14)。拡張配光パターンP2は、図5に示すように、車両2が交差点Cに進入する直前に、前照灯3が水平方向の照明範囲Wを左右に拡張するパターンである。
【0018】
拡張配光パターンP2によれば、自車両2の運転者が交差路から交差点Cに進入しようとする歩行者Mや他車両Vを早期に発見することができる。また、車両2が交差点Cに進入する直前に、前照灯3の配光パターンを限定配光パターンP1から点滅配光パターンに切り替えることもできる(S15)。この場合は、前照灯3が発生する点滅光によって、交差路からの歩行者Mや他車両Vに自車両2を早期に発見させることができる。
【0019】
その後、車両2が交差点Cを通過すると、制御装置10は、カーナビ装置4が提供する自車両2および交差点Cの位置情報に基づいて通過を確認し(図2:S16)、図6に示すように、前照灯3の配光パターンを拡張配光パターンP2または点滅配光パターンから通常配光パターンPに切り替える(S17)。なお、図2に鎖線で示すように、車両2が停止または充分に減速した後に(S13)、配光パターンを限定配光パターンP1から通常配光パターンPに直ちに切り替えることも可能である。
【0020】
また、前照灯3の照明範囲に交差点Cを検出した後に、前照灯3の配光パターンを、図7(a)に示す通常走行時のカットラインP3から、図7(b)に示す水平方向中央部を切り欠いた凹形カットラインP4に切り替えることもできる。凹形カットラインP4は、前照灯3が交差点Cの内側領域を相対的に暗く、交差点Cの側方領域を相対的に明るく照明するような配光パターンを形成する。このため、図3図4に示す限定配光パターンP1と同様の作用効果を期待できる。
【0021】
なお、凹形カットラインP4を含む配光パターンは、前照灯3のシェード7をアクチュエータ5で傾動またはスライドすることで切り替えることができるほか、クリアランスランプ12(図1参照)やフォグランプ等の点消灯を制御することで切り替えることもできる。また、車体にカメラを搭載し、カメラで交差点近くの歩行者や他車両を検出したときに、交差点を暗く照明する制御を停止してもよい。その他、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、配光パターンや灯具の種類を適宜変更して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 交差点照明システム
2 車両
3 前照灯
4 カーナビ装置
5 交差点検出部
7 シェード
8 アクチュエータ
10 制御装置
11 配光パターン記憶部
C 交差点
P1 限定配光パターン
P2 拡張配光パターン
P4 凹形カットライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8