(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記脱塩室は、少なくとも前記カチオン交換体が充填された第1の小脱塩室と、少なくとも前記アニオン交換体が充填された第2の小脱塩室と、前記第1の小脱塩室と前記第2の小脱塩室との間に位置するイオン交換膜と、前記第1の小脱塩室と前記第2の小脱塩室とを直列に接続する脱塩室接続流路と、を有し、
前記第1の濃縮室は前記第1の小脱塩室の前記陰極室側で、カチオン交換膜を介して前記第1の小脱塩室に隣接し、
前記第2の濃縮室は前記第2の小脱塩室の前記陽極室側で、アニオン交換膜を介して前記第2の小脱塩室に隣接する、請求項1に記載の電気式脱イオン水製造装置。
2以上の前記脱塩室が設けられ、各脱塩室の前記陰極室側に前記第1の濃縮室が、各脱塩室の前記陽極室側に前記第2の濃縮室が設けられ、隣接する前記脱塩室に挟まれる前記第1及び第2の濃縮室は共用されている、請求項2に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【背景技術】
【0002】
脱イオン水の製造装置として、イオン交換体に被処理水を通水して脱イオンを行う製造装置が知られている。この装置ではイオン交換体のイオン交換基が飽和して脱塩性能が劣化したときに、酸やアルカリといった薬剤によって再生を行う必要がある。すなわち、イオン交換基に吸着した陰イオンや陽イオンを、酸あるいはアルカリ由来のH
+、OH
-と置き換える処理が必要となる。近年、このような運転上の不利な点を解消するため、薬剤による再生が不要な電気式脱イオン水製造装置(以下、脱イオン水製造装置という)が実用化されている。
【0003】
脱イオン水製造装置は、電気泳動と電気透析とを組み合わせた装置である。脱イオン水製造装置は例えば、アニオン交換膜とカチオン交換膜との間に位置しイオン交換体が充填された脱塩室と、アニオン交換膜及びカチオン交換膜の外側に各々位置する濃縮室と、さらにその外側に位置する電極室(陽極室及び陰極室)と、を有している。
【0004】
脱イオン水製造装置により脱イオン水を製造するには、電極に直流電圧を印加した状態で脱塩室に被処理水を通水する。被処理水中のイオン成分は脱塩室内のイオン交換体で吸着され、脱イオン化(脱塩)が行われる。脱塩室ではまた、印加電圧によって脱塩室のアニオン交換体とカチオン交換体の界面で水分解が起こり、水素イオンと水酸化物イオンが発生する(2H
2O→2H
++2OH
-)。イオン交換体に吸着されたイオン成分はこの水素イオン及び水酸化物イオンと交換されて、イオン交換体から遊離する。遊離したイオン成分はイオン交換膜まで電気泳動し、イオン交換膜で電気透析されて、濃縮室に排出される。このように、脱イオン水製造装置では、水素イオン及び水酸化物イオンが、イオン交換体を再生する酸、アルカリの再生剤として連続的に作用する。このため、薬剤による再生は基本的に不要であり、薬剤によるイオン交換体の再生を行わずに連続運転ができる。
【0005】
従来の脱イオン水製造装置では、脱イオン水製造装置で処理される水(原水)の一部が、陽極室及び陰極室に電極水として供給されている。原水はCa
2+,Mg
2+等の硬度成分を含んでいる。一方、陰極室では水の電気分解によってOH
-が発生し、陰極室を流れる電極水はアルカリ性に傾く。OH
-は硬度成分と反応し、Ca(OH)
2、Mg(OH)
2等の水酸化物のスケールとなって電極に付着する。電極にスケールが付着すると、スケールの付着した部分で電極の電気抵抗が上昇し、脱イオン水製造装置の運転電圧の増加を招く。
【0006】
このため、電極水中の硬度成分を抑えるために、脱イオン水製造装置の入口側に2段の逆浸透膜を備える技術、あるいは脱イオン水製造装置の入口側に軟化装置を備える技術が知られている。また、陰極室でのスケール生成を防止するため、硬度成分をほとんど含んでいない脱塩室出口水を電極水として用いる技術が知られている(特許文献1,2)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の脱イオン水製造装置のいくつかの実施形態について説明する。本明細書では、「被処理水」は脱イオン水製造装置に流入する水と、脱イオン水製造装置の脱塩室でイオン交換処理を受けている途中の水を意味し、「処理水」は、脱イオン水製造装置で所定のイオン交換処理が全て終わり、所望の水質となって脱イオン水製造装置から流出する水を意味する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る脱イオン水製造装置の概略構成図である。脱イオン水製造装置1は、アニオン交換膜a1とカチオン交換膜c1との間に位置しイオン交換体が充填された脱塩室Dと、カチオン交換膜c1及びアニオン交換膜a1の外側に各々位置する第1及び第2の濃縮室C1,C2と、さらにその外側に位置する電極室(陰極室E1及び陽極室E2)と、を有している。脱塩室Dの上流側に位置する脱イオン水製造装置1の入口配管13には、被処理水が適切な入口圧力と流量で脱イオン水製造装置1に流入するように、給水ポンプ9が設けられている。図示は省略するが、給水ポンプ9と脱イオン水製造装置1との間にRO(逆浸透膜)装置を設けることもできる。脱イオン水製造装置1の処理水の出口には出口配管14が接続されている。
【0016】
陰極室E1は陰極3を収容している。陰極3は、金属の網状体あるいは板状体からなっており、例えばステンレス製の網状体あるいは板状体を用いることができる。
【0017】
陽極室E2は陽極4を収容している。陽極4は金属の網状体あるいは板状体からなっている。被処理水がCl
-を含む場合、陽極4に塩素が発生する。このため、陽極4には耐塩素性能を有する材料を用いることが望ましく、一例として、白金、パラジウム、イリジウム等の金属、あるいはチタンをこれらの金属で被覆した材料が挙げられる。
【0018】
陰極室E1及び陽極室E2には電極水が流入する。後述するように、電極水は脱塩室Dで硬度成分が除去された処理水である。硬度成分の存在による陰極室E1でのスケール発生を防止するためには、陰極室E1を流れる電極水の一部、好ましくは全てが、脱塩室Dで硬度成分が除去された処理水であることが望ましい。
【0019】
脱イオン水製造装置1の電気抵抗を抑えるために、陰極室E1及び陽極室E2にイオン交換体が充填されていることが好ましい。イオン交換体は陽極室E2と陰極室E1のいずれか一方だけに充填されてもよい。陰極室E1及び陽極室E2に充填するイオン交換体としては、イオン交換樹脂、イオン交換繊維、モノリス状多孔質イオン交換体等が挙げられ、最も汎用的なイオン交換樹脂が好適に用いられる。陽極室E2に充填されるイオン交換体の充填形態としては、カチオン交換体の単床形態、カチオン交換体とアニオン交換体との混床形態または複床形態が挙げられる。陰極室E1に充填されるイオン交換体の充填形態としては、アニオン交換体の単床形態、アニオン交換体とカチオン交換体との混床形態または複床形態が挙げられる。
【0020】
脱塩室Dは陽極室E2と陰極室E1との間に位置し、アニオン交換体とカチオン交換体とが充填され、硬度成分を含んだ被処理水が流通するようにされている。本実施形態の脱塩室Dは2つの小脱塩室からなる2室構成を採用している。すなわち、脱塩室Dは、第1の小脱塩室D1と第2の小脱塩室D2とを有し、第1の小脱塩室D1と第2の小脱塩室D2は、これらの間に位置する中間イオン交換膜mによって区画されている。第1の小脱塩室D1の出口と第2の小脱塩室D2の入口とは脱塩室接続流路11で接続されている。
図1では、脱塩室接続流路11は一部のみが表示されているが、符号A同士を結ぶ不図示のラインも脱塩室接続流路11の一部を構成している。脱塩室接続流路11は、第1の小脱塩室D1と第2の小脱塩室D2とを直列に連結し、第1の小脱塩室D1から流出した被処理水をさらに第2の小脱塩室D2に供給する。
図1では、第1の小脱塩室D1と第2の小脱塩室D2における被処理水の流れは同一方向であるが、対向流であってもよい。
【0021】
第1の小脱塩室D1には少なくともカチオン交換体が充填され、主に被処理水中のカチオン成分(Na
+、Ca
2+、Mg
2+等)が除去される。カチオン交換体としては、イオン交換樹脂、イオン交換繊維、モノリス状多孔質イオン交換体等が挙げられ、最も汎用的なイオン交換樹脂が好適に用いられる。カチオン交換体の種類としては、弱酸性カチオン交換体、強酸性カチオン交換体等が挙げられる。第1の小脱塩室D1にはアニオン交換体がさらに充填されていてもよい。第1の小脱塩室D1に充填されるイオン交換体の充填形態としては、カチオン交換体の単床形態、カチオン交換体とアニオン交換体との混床形態または複床形態が挙げられる。
【0022】
第2の小脱塩室D2には少なくともアニオン交換体が充填され、主に被処理水中のアニオン成分(Cl
-、CO
32-、HCO
3-、SiO
2(シリカは、特別な形態をとることが多いため、一般のイオンとは異なった表示とする。)等)が除去される。アニオン交換体としては、イオン交換樹脂、イオン交換繊維、モノリス状多孔質イオン交換体等が挙げられ、最も汎用的なイオン交換樹脂が好適に用いられる。アニオン交換体の種類としては、弱塩基性アニオン交換体、強塩基性アニオン交換体等が挙げられる。第2の小脱塩室D2にはカチオン交換体がさらに充填されていてもよい。第2の小脱塩室D2に充填されるイオン交換体の充填形態としては、アニオン交換体の単床形態、アニオン交換体とカチオン交換体との混床形態または複床形態が挙げられる。
【0023】
中間イオン交換膜mの種類は、被処理水の水質、脱イオン水(処理水)に求められる水質、第1及び第2の小脱塩室D1,D2に充填されるイオン交換体の種類等を勘案して選択することができる。中間イオン交換膜mは、アニオン交換膜もしくはカチオン交換膜の単一膜、または、アニオン交換膜とカチオン交換膜の両方を備えたバイポーラ膜などの複合膜のいずれであってもよい。
【0024】
第1の小脱塩室D1の陰極室E1側には、カチオン交換膜c1を介して第1の小脱塩室D1に隣接する第1の濃縮室C1が設けられている。第2の小脱塩室D2の陽極室E2側には、アニオン交換膜a1を介して第2の小脱塩室D2に隣接する第2の濃縮室C2が設けられている。第1の濃縮室C1と陰極室E1とはアニオン交換膜a2で、第2の濃縮室C2と陽極室E2とはカチオン交換膜c2で、それぞれ仕切られている。アニオン交換膜a2の代わりにカチオン交換膜を、カチオン交換膜c2の代わりにアニオン交換膜を設けることもできる。
【0025】
第1及び第2の濃縮室C1,C2には、被処理水の一部、または他の水源から供給された水が流入する。第1の濃縮室C1に供給された水は、第1の小脱塩室D1から排出されるカチオン成分を取り込み、脱イオン水製造装置1の外部に放出する。第2の濃縮室C2に供給された水は、第2の小脱塩室D2から排出されるアニオン成分を取り込み、脱イオン水製造装置1の外部に放出する。脱イオン水製造装置1の電気抵抗を抑えるために、第1及び第2の濃縮室C1,C2にイオン交換体が充填されていてもよい。
【0026】
このように脱塩室Dが第1の小脱塩室D1と第2の小脱塩室D2の2つの小脱塩室に区画され、各々の外側に第1及び第2の濃縮室C1,C2が隣接する構成(脱塩室2室構成)は、被処理水の多段処理が可能であり、脱イオン性能の向上に効果的である。しかも第1の小脱塩室D1と第2の小脱塩室D2との間に濃縮室を設ける必要がないため、陽極陰極間の印加電圧が抑えられ、消費電力が下がり運転費の低減を図ることが可能である。
【0027】
陰極室E1、陽極室E2、第1及び第2の小脱塩室D1,D2、第1及び第2の濃縮室C1,C2は各々、積層され互いに密着して設けられた多数の枠体2(図では、全体を符号2で示している)によって形成された内部空間に形成されている。枠体2の材料は、絶縁性を有し被処理水が漏洩しないものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ABS、ポリカーボネート、m−PPE(変性ポリフェニレンエーテル)等の樹脂を挙げることができる。
【0028】
脱イオン水製造装置1はさらに、脱塩室Dに充填されたカチオン交換体の少なくとも一部を通過した被処理水または処理水の一部を取り出し、昇圧して、陰極室E1に電極水として供給する電極水供給手段5を有している。本実施形態では、電極水供給手段5は、第2の小脱塩室D2の出口から処理水の一部を分取し、陰極室E1の入口に処理水を電極水として供給する陰極室接続流路6と、陰極室接続流路6上に設けられた昇圧ポンプ8と、を有している。陰極室接続流路6は、出口配管14から分岐し枠体2の外を延びる配管である。図示は省略するが、陰極室接続流路6の、例えば昇圧ポンプ8の前後に弁を設けることができる。
【0029】
陰極室E1の出口と陽極室E2の入口は電極室接続流路12によって接続されている。
図1では、電極室接続流路12は一部のみが表示されているが、符号B同士を結ぶ不図示のラインも電極室接続流路12の一部を構成している。電極室接続流路12は例えば、枠体2の外を延びる配管である。
図1では、陰極室E1と陽極室E2における電極水の流れは同一方向であるが、対向流であってもよい。さらに、陰極室E1、陽極室E2における電極水の流れの向き、第1の小脱塩室D1、第2の小脱塩室D2における被処理水の流れの向きは任意の方向とすることができ(
図1において、右向きでも左向きでもよい)、個々の部屋毎に決定することができる。また、陰極室E1と第1の濃縮室C1を一体化してもよく、陽極室E2と第2の濃縮室C2を一体化してもよい。
【0030】
次に、被処理水の流れと脱イオンの原理について説明する。給水ポンプ9を起動し、入口配管13を通して、硬度成分を含んだ被処理水を第1の小脱塩室D1及び第2の小脱塩室D2に順次流入させる。脱塩室D(第1の小脱塩室D1)の入口における被処理水の圧力は0.1MPa以上、0.4MPa以下であることが望ましい。第2の小脱塩室D2を流出した処理水は出口配管14を通って脱イオン水製造装置1の外部に送出されるとともに、その一部が陰極室接続流路6を通って、陰極室E1に電極水として流入する。この電極水は陰極室E1を流出した後、電極室接続流路12を通って、陽極室E2に流入する。被処理水の一部を第1及び第2の濃縮室C1,C2に流入させてもよい。この状態で、陽極陰極間に所定の電圧を印加する。
【0031】
被処理水は、第1の小脱塩室D1でカチオン成分が除去される。具体的には、Na
+等のカチオン成分が、第1の小脱塩室D1で、第1の小脱塩室D1に充填されたカチオン交換体に吸着される。脱塩室Dでは、水分解反応によって水が水素イオン(H
+)と水酸化物イオン(OH
-)とに解離する反応が連続的に進行している。H
+はカチオン交換樹脂に吸着したNa
+等のカチオン成分と交換され、第1の小脱塩室D1に充填されたカチオン交換体が再生される。除去されたNa
+等のカチオンは陽極陰極間の電位によって陰極側に引き寄せられ、カチオン交換膜c1を通過して第1の濃縮室C1に流入し、脱イオン水製造装置1の外部に放出される。
【0032】
このようにしてNa
+等のカチオン成分が除去された被処理水は、第2の小脱塩室D2に流入する。被処理水は、第2の小脱塩室D2でアニオン成分が除去される。具体的には、Cl
-等のアニオン成分が、第2の小脱塩室D2で、第2の小脱塩室D2に充填されたアニオン交換体に吸着される。第2の小脱塩室D2では、水分解反応によって生成したOH
-がアニオン交換樹脂に吸着したCl
-等のアニオン成分と交換され、アニオン交換体が再生される。除去されたCl
-等のアニオン成分は陽極陰極間の電位によって陽極側に引き寄せられ、アニオン交換膜a1を通過して第2の濃縮室C2に流入し、脱イオン水製造装置1の外へ放出される。
【0033】
陰極室E1には第1の小脱塩室D1(及び場合により第2の小脱塩室D2)で、カチオン成分、具体的には硬度成分が除去された処理水が流入する。このため、陰極室E1におけるOH
-と硬度成分との反応が抑えられ、陰極室E1でのスケール発生と電極3へのスケール付着が抑制される。電極3の表面での電気抵抗の局所的な増加が抑えられ、陽極陰極間に印加する電圧が小さくて済む。このため、脱イオン水製造装置1の運転コストを抑えることができる。
【0034】
電極水は陰極室E1及び陽極室E2を流通するため、陰極室E1及び陽極室E2(さらに電極室接続流路12)での圧力損失の総和以上の入口圧力で陰極室E1に流入する必要がある。昇圧ポンプ8は、この必要入口圧力以上の圧力が陰極室E1の入口で得られるように、陰極室E1に流入する処理水を昇圧する。もし昇圧ポンプ8が設けられていないと、陰極室E1の必要入口圧力は給水ポンプ9によって与えられる必要がある。しかし、そのために給水ポンプ9の揚程を高めると、ポンプ流量が減少する。ポンプの揚程を高めつつ同じポンプ流量を確保しようとすると、ポンプの大型化を招く。また、電極水として利用される処理水は全体の一部であるにも拘わらず、脱塩室に流入する被処理水全体を昇圧する必要があるため、給水ポンプ9のポンプ動力の無駄が生じる。
【0035】
これに対し、本実施形態では、電極水として利用される処理水だけに陰極室E1の必要入口圧力を与えるため、小型のポンプで十分であり、給水ポンプ9の大型化と比べて費用及び運転コストの面で有利である。特に、本実施形態では脱イオン水製造装置1に供給された水が、第1の小脱塩室D1、第2の小脱塩室D2、陰極室E1、及び陽極室E2を直列で順次流通するため、圧力損失が高くなりやすく、本発明が好適に適用できる。
【0036】
本実施形態では、2つの小脱塩室D1,D2を通過した処理水を電極水として用いるため(すなわち硬度成分が除去されているため)、被処理水がまず第2の小脱塩室D2に流入し、次に第1の小脱塩室D1に流入するようにしてもよい。
【0037】
次に、本発明の脱イオン水製造装置1の他の実施形態について説明する。以降の説明では、主に第1の実施形態または先行して説明される実施形態との差異について述べる。
【0038】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態に係る脱イオン水製造装置1の概略構成図である。電極水供給手段5の陰極室接続流路6は、第1の小脱塩室D1の出口と第2の小脱塩室D2の入口との間から被処理水の一部を分取する。すなわち、第1の実施形態と併せて考えれば、被処理水の一部は、被処理水の流れ方向における少なくとも第1の小脱塩室D1の下流側で分取されればよい。昇圧ポンプ8は陰極室接続流路6上に設けられ、陰極室E1の入口に被処理水を電極水として供給する。本実施形態では、第1の小脱塩室D1を流出した被処理水の一部が電極水として使用される。第1の小脱塩室D1はカチオン交換樹脂が(または主にカチオン交換樹脂が)充填されているため、硬度成分は第1の小脱塩室D1で十分に、または相当程度除去することができる。陰極室E1に供給される電極水は第2の小脱塩室D2を通っていないため、脱塩室出口(第1の小脱塩室D1の出口)での圧力損失が小さく、昇圧ポンプ8を小型化することができる。
【0039】
(第3の実施形態)
図3は、本発明の第3の実施形態に係る脱イオン水製造装置1の概略構成図である。昇圧ポンプ8の下流側で、陰極室接続流路6から濃縮室接続流路16が分岐している。濃縮室接続流路16は、第1及び第2の濃縮室C1,C2またはそれらのいずれか一方に被処理水を供給する。図では、第1及び第2の濃縮室C1,C2を流れる水は脱塩室Dを流れる被処理水と対向流となっているが、同一方向に流れるようにしてもよい。本実施形態では、被処理水がまず第2の小脱塩室D2に流入し、次に第1の小脱塩室D1に流入するようにしてもよい。
【0040】
第1及び第2の濃縮室C1,C2に被処理水、または他の水源からの水が供給される場合、これらの水はアニオン成分及びカチオン成分を相当量含有している。第1及び第2の濃縮室C1,C2には脱塩室Dで被処理水から除去されたアニオン成分及びカチオン成分が流入するため、第1及び第2の濃縮室C1,C2を流れる水のアニオン成分及びカチオン成分の量は、第1及び第2の小脱塩室D1,D2中の被処理水のそれと比べて大きくなる。例えば、第1の小脱塩室D1でイオン交換によって除去された硬度成分はカチオン交換膜c1を通って第1の濃縮室C1に流入する。第1の濃縮室C1に被処理水を供給した場合、第1の濃縮室C1を流れる水には被処理水に元々含まれる硬度成分が存在している。このため、第1の濃縮室C1に含まれる硬度成分と、第1の小脱塩室D1(特に出口付近)の被処理水に含まれる硬度成分と、の比率は非常に大きなものとなる。この結果、第1の濃縮室C1に含まれる硬度成分が電位に逆らって第1の小脱塩室D1に逆流する可能性がある。第1及び第2の濃縮室C1,C2にアニオン成分及びカチオン成分の少ない被処理水を供給することで、第1及び第2の濃縮室C1,C2におけるアニオン成分及びカチオン成分の濃度を下げることができ、逆流のおそれが低減する。
【0041】
(第4の実施形態)
図4は、本発明の第4の実施形態に係る脱イオン水製造装置1の概略構成図である。電極水供給手段5は、第2の小脱塩室D2の出口から処理水の一部を分取し、陽極室E2の入口に処理水を供給する陽極室接続流路7を有している。昇圧ポンプ8は陽極室接続流路7上に設けられている。陽極室E2の出口と陰極室E1の入口とは電極室接続流路12で接続されている。本実施形態では、処理水はまず陽極室E2に流入し、次に陰極室E1に流入する。この場合でも、陰極室E1に流入する処理水には硬度成分がほとんど含まれないため、陰極室E1でのスケール発生を抑制することができる。本実施形態では、被処理水がまず第2の小脱塩室D2に流入し、次に第1の小脱塩室D1に流入するようにしてもよい。
【0042】
(第5の実施形態)
図5は、本発明の第5の実施形態に係る脱イオン水製造装置1の概略構成図である。本実施形態は第4の実施形態と同様の構成であるが、陽極室接続流路7は、第1の小脱塩室D1の出口と第2の小脱塩室D2の入口との間から被処理水の一部を分取し、陽極室E2に供給する。すなわち、第4の実施形態と併せて考えれば、被処理水の一部は、被処理水の流れ方向における少なくとも第1の小脱塩室D1の下流側で分取されればよい。昇圧ポンプ8は陽極室接続流路7上に設けられ、陽極室E2の出口と陰極室E1の入口とは電極室接続流路12で接続されている。本実施形態では、第2の実施形態と同様、脱塩室出口圧力が高いため、昇圧ポンプ8の小型化が可能である。
【0043】
(第6の実施形態)
図6は、本発明の第6の実施形態に係る脱イオン水製造装置1の概略構成図である。本実施形態は第3の実施形態と同様の構成であるが、昇圧ポンプ8の下流側で、陽極室接続流路7から濃縮室接続流路16が分岐している。濃縮室接続流路16は、第1及び第2の濃縮室C1,C2またはそれらのいずれか一方に被処理水を供給する本実施形態の効果は第3の実施形態と同様である。本実施形態では、被処理水がまず第2の小脱塩室D2に流入し、次に第1の小脱塩室D1に流入するようにしてもよい。
【0044】
(第7の実施形態)
図7は、本発明の第7の実施形態に係る脱イオン水製造装置1の概略構成図である。本実施形態では、第1の実施形態に対し、第1及び第2の副脱塩室S1,S2が追加されている。第1の副脱塩室S1は第2の濃縮室C2と陽極室E2との間に設けられ、それぞれカチオン交換膜c2とカチオン交換膜c3とによって仕切られている。第2の副脱塩室S2は第1の濃縮室C1と陰極室E1との間に設けられ、それぞれアニオン交換膜a2とアニオン交換膜a3で仕切られている。第1の副脱塩室S1は第1の脱塩室D1と同様の構成を有しているが、カチオン交換体だけが単床充填されている。第2の副脱塩室S2は第2の脱塩室D2と同様の構成を有しているが、アニオン交換体だけが単床充填されている。
【0045】
第1の副脱塩室S1は第1の脱塩室D1と並列に接続されており、第2の副脱塩室S2は第2の脱塩室D2と並列に接続されている。一方、第1の脱塩室D1及び第1の副脱塩室S1と、第2の脱塩室D2及び第2の副脱塩室S2とは、脱塩室接続流路11によって、直列に接続されている。第1の副脱塩室S1と第2の副脱塩室S2のいずれか一方または両方を省略することもできる。本実施形態では、被処理水がまず第1の小脱塩室D1及び第1の副脱塩室S1に流入し、次に第2の小脱塩室D2及び第2の副脱塩室S2に流入するが、まず第2の小脱塩室D2及び第2の副脱塩室S2に流入し、次に第1の小脱塩室D1及び第1の副脱塩室S1に流入するようにしてもよい。
【0046】
第1の副脱塩室S1では、Na
+等のカチオン成分は、第1の副脱塩室S1に充填されたカチオン交換体に吸着される。陽極室E2では、電気分解反応(2H
2O→O
2+4H
++4e
-)によって水から酸素ガスとH
+とが生成される反応が、連続的に進行している。酸素ガスは陽極室E2内を上昇し、電極水とともに脱イオン水製造装置1の外へ排出される。H
+は第3のカチオン交換膜c3を通って第1の副脱塩室S1に流入する。第1の副脱塩室S1に流入したH
+は、カチオン交換体に吸着したカチオン成分と交換され、カチオン交換体が再生される。除去されたNa
+等のカチオン成分は陽極陰極間の電位によって陰極側に引き寄せられ、第2のカチオン交換膜c2を通過して第2の濃縮室C2に流入し、脱イオン水製造装置1の外に放出される。
【0047】
第2の副脱塩室S2では、Cl
-等のアニオン成分は、第2の副脱塩室S2に充填されたアニオン交換体に吸着される。陰極室E1では、電気分解反応(2H
2O+2e
-→H
2+2OH
-)によって水から水素ガスとOH
-とが生成される反応が、連続的に進行している。水素ガスは陰極室E1内を上昇し、電極水とともに脱イオン水製造装置1の外へ排出される。OH
-は第3のアニオン交換膜a3を通って第2の副脱塩室S2に流入し、アニオン交換体に吸着したアニオン成分と交換され、アニオン交換体が再生される。除去されたCl
-等のアニオン成分は陽極陰極間の電位によって陽極側に引き寄せられ、第2のアニオン交換膜a2を通過して第1の濃縮室C1に流入する。第2の脱塩室D2及び第2の副脱塩室S2でアニオン成分が除去された被処理水は合流し、脱イオン水となって脱イオン水製造装置1の外へ排出される。
【0048】
このように、本実施形態によれば、陰極室E1及び陽極室E2で発生し、従来は利用されることなく捨てられていたH
+及びOH
-をイオン交換体の再生に有効利用することができる。陽極室E2及び陰極室E1におけるH
+及びOH
-の生成効率は高いため、電圧が低くても十分な量のH
+及びOH
-が第1の副脱塩室S1及び第2の副脱塩室S2に移動する。このため、陽極陰極間の印加電圧を抑え、脱イオン水製造装置1の運転費用を低減することができる。
【0049】
(第8の実施形態)
図8は、本発明の第8の実施形態に係る脱イオン水製造装置1の概略構成図である。本実施形態では、各々が第1及び第2の小脱塩室を備えた2つの脱塩室が設けられている。
図8に示す実施形態は、
図1に示す実施形態と比較すると、脱塩室D’と第2の濃縮室C2’が追加されている。脱塩室D’は脱塩室Dと同じ構成であり、第1の小脱塩室D1’と第2の小脱塩室D2’を備え、これらの小脱塩室D1’,D2’が中間イオン交換膜m’で仕切られている。脱塩室D’に充填されるイオン交換体等は脱塩室Dと同じとすることができる。
【0050】
第1の小脱塩室D1’の陰極室E1側には、カチオン交換膜c1’を介して第1の小脱塩室D1’に隣接する第1の濃縮室C1’が設けられている。第1の濃縮室C1’は第2の濃縮室C2と共用されている。第2の小脱塩室D2’の陽極室E2側には、アニオン交換膜a1’を介して第2の小脱塩室D2’に隣接する第2の濃縮室C2’が設けられている。第2の濃縮室C2’と陽極室E2はカチオン交換膜c2で仕切られている。
【0051】
被処理水は脱イオン水製造装置1の手前で分岐して、第1の小脱塩室D1,D1’に流入する。被処理水の一部は第1及び第2の濃縮室C1,C2(C1’),C2’に流入する。第1の小脱塩室D1,D1’を流出した被処理水は一旦合流し、脱塩室接続流路11を通って分岐し、第2の小脱塩室D2,D2’に流入する。
図7では、脱塩室接続流路11は一部のみが表示されているが、符号A同士を結ぶ不図示のラインも脱塩室接続流路11の一部を構成している。第2の小脱塩室D2,D2’を流出した処理水は合流し、その後一部の処理水が陰極室接続流路6を通り、昇圧ポンプ8で昇圧されて、陰極室E1に流入する。本実施形態では、被処理水がまず第2の小脱塩室D2,D2’に流入し、次に第1の小脱塩室D1,D1’に流入するようにしてもよい。
【0052】
このように、脱塩室を複数個設け、各脱塩室に並行に被処理水を通水することによって、大量の被処理水を効率的に処理することが可能である。この場合も、陰極室E1には少なくとも一部のカチオン成分が除去された処理水が流入するため、陰極室E1でのスケール発生を抑制することができる。本実施形態は第1の実施形態に対応しているが、第2〜第6と同様に、脱塩室からの被処理水(処理水)の取り出し位置、陽極室E2と陰極室E1の通水順序、脱塩室で処理された処理水の濃縮室への供給の有無を変更することができる。脱塩室の数は2つに限定されず、必要に応じて3つ以上を並列配置することができる。
【0053】
(第9の実施形態)
図9は、本発明の第9の実施形態に係る脱イオン水製造装置1の概略構成図である。本実施形態では、脱塩室は従来公知の脱塩室1室構成である。脱イオン水製造装置1は、濃縮室C1〜C3と、濃縮室C1〜C3の間に各々アニオン交換膜a1とカチオン交換膜c1を介して位置する第1及び第2の脱塩室D3,D4と、濃縮室C1,C3の外側に各々アニオン交換膜a2及びカチオン交換膜c2を介して位置する電極室(陰極室E1及び陽極室E2)と、を有している。各脱塩室D3,D4にはカチオン交換体とアニオン交換体とが充填され、一つの脱塩室でカチオン除去とアニオン除去が行われる。カチオン交換体とアニオン交換体は混床形態または複床形態で充填されることが望ましい。被処理水は脱イオン水製造装置1の手前で分岐し、第1及び第2の脱塩室D3,D4に流入する。第1及び第2の脱塩室D3,D4のそれぞれで、カチオン成分とアニオン成分が分離され、隣接する濃縮室C1〜C3に放出される。処理水は第1及び第2の脱塩室D3,D4の出口配管14を通って、脱イオン水製造装置1の外で合流し、その一部が陰極室接続流路6を通って陰極室E1に供給される。その際、陰極室E1に供給される処理水は、陰極室接続流路6に位置する昇圧ポンプ8によって昇圧される。脱塩室1室構成は構造が単純であり、要求水質によってはこのような構成を採用することもできる。本実施形態でも、陽極室E2と陰極室E1の通水順序、脱塩室で処理された処理水の濃縮室への供給の有無を変更することができる。脱塩室の数は2つに限定されず、必要に応じて3つ以上を並列配置することができる。
【0054】
(実施例)
図10に示す構成の脱イオン水製造装置を用いて、脱塩室入口圧力と脱塩室入口流量の関係を検討した。
図10(a)は本発明の一実施例を示しており、脱イオン水製造装置の構成は
図1に示す第1の実施形態と同様とした。脱塩室Dはカチオン交換樹脂が主に充填された第1の小脱塩室と、アニオン交換樹脂が主に充填された第2の小脱塩室とからなり、まずカチオン交換が主に行われ、次にアニオン交換が主に行われる。脱塩室入口の被処理水の圧力は0.20MPa、流量は1700L/hであった。このときの脱塩室出口の処理水の圧力は0.00MPaであり、その一部が昇圧ポンプ8によって圧力0.06MPaまで昇圧された。陰極室E1に電極水として供給される被処理水の流量は20L/hであった。つまり、昇圧ポンプが設けられた本実施例では、1700L/hの被処理水の処理が可能であった。
【0055】
図10(b)は第1の比較例を示しており、
図10(a)に示す実施例から昇圧ポンプを除去したことを除き、実施例と同じ構成である。陰極室E1の入口圧力及び陰極室E1の流量は実施例と同じとし、脱塩室入口圧力も実施例と同じとした。第1の比較例では昇圧ポンプ8がないため、脱塩室出口で圧力0.06MPaの出口圧力を確保する必要がある。そのためには、給水ポンプ9の流量を下げる必要があり、この比較例では1100L/hであった。
【0056】
図10(c)は第2の比較例を示しており、
図10(a)に示す実施例から昇圧ポンプを除去したことを除き、実施例と同じ構成である。陰極室の入口圧力及び陰極室の流量は実施例と同じとし、脱塩室への流量を実施例と同じ1700L/hとした。第2の比較例でも昇圧ポンプ8がないため、脱塩室出口で0.06MPaの出口圧力を確保する必要がある。そのためには、給水ポンプ9の吐出圧(脱塩室入口圧力)を上げる必要があり、この比較例では0.26MPaであった。これは給水ポンプ9の大型化が必要なことを意味する。
【0057】
このように昇圧ポンプを設けずに同じ給水ポンプを用いた場合、処理可能な流量が大幅に低下し(第1の比較例)、処理可能な流量を同程度に維持しようするとポンプが大型化する(第2の比較例)。実施例に示すように、一般に昇圧ポンプで負担する流量及び揚程は給水ポンプと比べてはるかに小さく、小型のポンプで十分である。