(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献2のエンジンは、空気通路からの空気がピストンの外周の凹部を通って第2掃気口から第2掃気通路に導入されるようになっているので、構造が複雑であるのに伴って製造コストが高くつく。また、第2掃気通路内に導入する空気量は、比較的大形の鋳造品であるピストンの凹部の形状により決定されるので、空気量の設定や調整を容易に行うことができない。
【0007】
本発明は、簡単で安価な構造としながらも、シリンダのバリの除去および空気量の調整が容易な空気掃気型の2サイクルエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る空気掃気型の2サイクルエンジンは、クラン
ク室と燃焼室とを連通させる一つ以上の掃気通路と、空気を供給する空気通路と、前記空気通路からの空気を前記掃気通路の上部にシリンダの径方向外方から導入する導入通路と、前記導入通路を外側方から覆うカバーと、前記カバーとの間で、前記掃気通路の上部と前記導入通路の一部とを形成する掃気ブロックとを備えている。
【0009】
この構成によれば、掃気ブロックには、掃気通路の上部と導入通路の一部とが形成されているから、この掃気ブロックを取り付ける前のシリンダは、掃気ブロックを嵌め込む開口面積の大きな開口部を通じて掃気口が外部に露呈されるので、製造時の型抜き工程で掃気口の開口縁部などに発生したバリを良好な作業性で容易に除去することができる。また、シリンダに取り付けた掃気ブロックおよびカバーとシリンダとの間に、空気通路からの空気を導入通路を介して掃気通路に導入する構造が設けられているので、空気をピストンの外周の凹部を介して掃気通路に導く構造(特許文献2)に比べて、構造が簡素となり、安価に製造できる。
【0010】
本発明において、前記燃焼室に開口する掃気口の上縁が前記シリンダの周壁における掃気口上縁部により形成されており、前記掃気口上縁部の径方向外側に前記掃気ブロックの上部の径方向内端部が位置していることが好ましい。これにより、ピストンの下降時に掃気口が開口され始めるタイミングは、シリンダの周壁に形成された掃気口の上縁部の位置により一義的に決定されるから、掃気ブロックのシリンダへの取付位置のずれに起因して、掃気ブロックの上部の径方向内端部がシリンダの掃気口の上縁に対して位置ずれしても、空気による掃気のタイミングがばらつくことがない。この構成は、例えば、シリンダの周壁における掃気口上縁部に対し径方向外側部に設けた段差部に掃気ブロックの上部の径方向内端部を当接させることで容易に実現できる。
【0011】
本発明において、前記掃気ブロックが、前記シリンダの周壁を径方向に貫通して設けた掃気開口部に嵌合して取り付けられ、前記カバーが、前記掃気開口部の径方向外端面に取り付けられている。この構成によれば、掃気ブロックとカバーとが別体で形成されているから、形状や製造方法等の掃気ブロックの設計上の自由度が増す。
【0012】
本発明において、主として前記クランク室内の混合気を前記燃焼室に供給する第1掃気通路と、主として前記導入通路からの空気を前記燃焼室に供給する第2掃気通路とを備え、前記導入通路が前記第1掃気通路の径方向外側を通って前記第2掃気通路に連通していることが好ましい。これにより、第1掃気通路の径方向外側を通って第2掃気通路に連通する導入通路の一部を掃気ブロックに容易に一体形成することができ、この掃気ブロックの導入通路から第2掃気通路への連通部分の通路面積を任意に設定することにより、空気通路から第2掃気通路に導入する空気量を調整することができる。
【0013】
本発明において、前記第1掃気通路を形成する通路壁における径方向外側部に、前記導入通路内の空気を導入する導入孔が形成されていることが好ましい。これにより、空気通路から導入通路に導かれた空気を第1掃気通路にも導入することで、第2掃気通路内の空気と合わせて、吹き抜け防止用の十分な空気量が確保される。
【0014】
第1および第2掃気通路を備える場合、前記掃気ブロックは、径方向に延びる通路上壁部と、この通路上壁部における径方向内端部から中間部にかけての内側半部からそれぞれ下方に延びる第1仕切壁部および第2仕切壁部とが一体形成され、前記第1仕切壁部と前記第2仕切壁部との間に前記第1掃気通路の上部が形成され、前記第2仕切壁部と前記シリンダとの間に前記第2掃気通路の上部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、前記第1および第2仕切壁部が掃気ブロックに一体形成されているので、第1および第2掃気通路の上部を容易に形成することができる。
【0015】
第1仕切壁部および第2仕切壁部が一体形成される場合、さらに、前記通路上壁部の下面から下方に延び、かつ前記第1仕切壁部および第2仕切壁部の各々の上部側面に連なる第1および第2ガイド壁部とが一体形成され、前記第1および第2ガイド壁部は、前記第1仕切壁部および第2仕切壁部の高さよりも短い上下方向の長さを有し、これの下端部から内端に向け斜め上方に傾斜するガイド面を有していることが好ましい。これらガイド面により、混合気および空気が燃焼室内の上部に向かって供給されるので、燃焼室内に混合気および空気が効率よく充填される。
【0016】
第1仕切壁部および第2仕切壁部が一体形成される場合、前記掃気ブロックは前記シリンダの掃気開口部に接続されており、前記掃気開口部の周壁と前記第1仕切壁部との間に前記導入通路の上流部が形成され、前記通路上壁部における第1および第2仕切壁部の径方向外端に対応する位置から前記通路上壁部の径方向外端にかけての外側半部の下側に、前記導入通路の下流部が形成されていることが好ましい。これにより、導入通路が前記掃気開口部の周壁と掃気ブロックとカバーとの組合せによって容易に形成される。
【0017】
本発明において、前記掃気ブロックの上部を形成する通路上壁部の先端部分に上方に突出した第1段差部が形成され、前記シリンダにおける前記第1掃気通路が開口する第1掃気口の上縁の径方向外側部分に、前記第1段差部を当接させる上方に凹入した第2段差部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、第1掃気口の上縁がシリンダの周壁における掃気口上縁部により形成されているので、掃気ブロックの通路上壁部の径方向内端部の上下方向位置にばらつきが生じても、これに影響されることなく、第1掃気口が開口され始めるタイミングは、第1掃気口の上縁部により一義的に決定され,ばらつきが極力抑制される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の空気掃気型の2サイクルエンジンによれば、掃気通路の上部と導入通路の一部とを掃気ブロックに形成したから、掃気ブロックが取り付けられる前のシリンダは、掃気ブロックを嵌め込む開口部を通じて掃気口が外部に露呈されるので、製造時に掃気口の開口縁部などに発生したバリを良好な作業性で容易に除去することができる。また、掃気ブロックおよびカバーとシリンダとの間に、空気通路からの空気を導入通路を介して掃気通路に導入する構造が設けられているので、空気をピストンの外周に設けた凹部を介して掃気通路に導く構造と比べて簡素化された構造とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示す第1実施形態に係る2サイクルエンジンにおいて、内部に燃焼室1aが形成されたシリンダ1が、内部にクランク室2aが形成されたクランクケース2の上部に連結されている。シリンダ1およびクランクケース2はそれぞれ、アルミニウム合金のような金属製であり、鋳型により成形された鋳造品である。シリンダ1の内部に形成されたシリンダボアには、軸方向(
図1の上下方向)に往復動するピストン7が設けられ、このピストン7とシリンダボアの上壁との間に前記燃焼室1aが形成されている。シリンダ1の一側部(右側)には、吸気系を構成する燃料供給装置の一例である気化器3とエアクリーナ4が接続され、他側部(左側)には排気系を構成するマフラー5が接続されており、クランクケース2の下部には燃料タンク6が取り付けられている。
【0021】
前記クランクケース2の内部には、軸受81を介してクランク軸8が支持されている。このクランク軸8の軸心とは変位した位置に中空状のクランクピン82が設けられ、このクランクピン82と前記ピストン7に設けた中空状のピストンピン71との間が、大端部軸受86および小端部軸受87を介してコンロッド83により連結されている。前記クランク軸8にはクランクウェブ84が設けられ、シリンダ1の上部には点火プラグPが設けられている。
【0022】
前記シリンダ1と気化器3の間には、高温のシリンダからの断熱を目的として樹脂製のインシュレータ9が設けられている。このインシュレータ9内の上部には、外部から取り込んだ空気Aを供給する空気通路10が形成され、下部側には、この空気通路10とほぼ平行に混合気通路11が形成されている。混合気通路11はシリンダ1の内周面に開口する混合気口11aを有している。
【0023】
前記気化器3は、空気通路10と混合気通路11の両方の通路面積を単一の図示しない回転バルブによって調節する。さらに、前記シリンダ1には排気通路12が形成され、この排気通路12のシリンダ1の内周面に開口する排気口12aと前記混合気口11aとは、シリンダ1の軸心回りにほぼ180°離れて対向している。この排気通路12からの排気ガス(燃焼ガス)は、前記マフラー5を経て図示しない排気口から外部に排出される。
【0024】
シリンダ1とクランクケース2の内部には、
図2に示すように、燃焼室1aとクランク室2aとを直接連通させる第1掃気通路13が設けられ、さらに、燃焼室1aとクランク室2aとをクランク軸8の軸受81を介して連通させる第2掃気通路14が前記第1掃気通路13よりも排気口12a寄りに形成されている。第1、第2掃気通路13,14の上端の第1,第2掃気口13a,14aは、排気口12aの上端よりも低い位置に配置され、かつ、第2掃気口14aの上端が第1掃気口13aの上端よりも高い位置に設定されている。これら第1、第2掃気通路13,14は、
図2のIII-III線に沿った断面図である
図3に示すように、排気通路12の軸心C1を中心にして対称に各一対設けられている。ただし、第1、第2掃気通路13,14は各1つずつでもよい。
【0025】
インシュレータ9の空気通路10からの空気Aは、ピストン7が上昇する吸気行程時に、クランク室2aの負圧を受けて、後述する導入通路16(
図3)から第2掃気通路14内に一旦導入されるとともに、一部が第1掃気通路13にも一旦導入される。
図2の混合気通路11からの混合気Mは、吸気行程においてピストン7が上昇したときに、クランク室2aの負圧を受けて、シリンダ1の内周面に設けた混合気口11aからクランク室2aに直接導入される。
【0026】
図3に示すように、シリンダ1の内部には、空気通路10を第1および第2掃気通路13,14にそれぞれ連通する一対の導入通路16が形成されている。シリンダ1における第1掃気通路13よりもインシュレータ9寄りに、空気通路10にそれぞれ連通する一対の導入通路上流部16aが形成されている。シリンダ1における各一対の第1および第2掃気通路13,14に対し外方側でそれぞれ対向する外周部には、シリンダ1の周壁を径方向に貫通する掃気開口部18が形成されており、その径方向外側の開口縁18aと第1掃気通路13および第2掃気通路14との間に、導入通路下流部16bが形成されている。掃気開口部18は、後述の掃気ブロック20が嵌め込まれて接続された状態で、掃気ブロック20の外側方からカバー21により閉塞されている。カバー21は、ボルト30を、
図4に示すシリンダ1の掃気開口部18を取り囲む矩形状の開口周壁18bに設けられた一対のねじ孔18cにねじ込むことにより、シリンダ1に固定されている。この実施形態では、掃気ブロック20とカバー21とがユニットUとして一体形成されている。
【0027】
図5(a)〜(d)に示すように、掃気ブロック20は、前記ボルト30(
図3)が挿通される取付孔27、27を有するカバー21と、径方向に延びる、この実施形態では、カバー21の内面上部からカバー21に直交する方向に延びる通路上壁部22と、この通路上壁部22におけるカバー21から離間した径方向内端部22aから中間部にかけての内側半部22c(
図5(b)からそれぞれ下方に延びる第1仕切壁部23および第2仕切壁部24と、通路上壁部22の下面から下方に延び、かつ第1仕切壁部23および第2仕切壁部24の各々の上部側面に連なる第1および第2ガイド壁部25,26とが、鋳造のような型成形により一体形成されている。ガイド壁部25,26は、第1仕切壁部23および第2仕切壁部24の高さよりも短い上下方向の長さを有し、これの下端部から先端(内端)に向け斜め上方に傾斜するガイド面25a,26aを有している。
【0028】
前記掃気ブロック20は、通路上壁部22、第1仕切壁部23、第2仕切壁部24およびガイド壁部25,26を
図4の掃気開口部18内に嵌め込み、カバー21の取付孔27,27(
図5(a))に挿通したボルト30(
図3)により、シリンダ1に取り付けられる。
【0029】
図6に示すシリンダ1の周壁に形成された第1掃気通路13は、シリンダ1の内周面に開口する第1掃気口13aと、この第1掃気口13aからシリンダ1の下端を越えてクランクケース2の上部に達する上下方向の連通路13bと、前記クランクケース2の上部の内周面に開口する流入口13cとを有している。この第1掃気通路13の外方側に設けられた導入通路下流部16bは、掃気ブロック20のカバー21と、通路上壁部22の外側半部と、第1仕切壁部23と、第1ガイド壁部25と、シリンダ1の開口周壁18bの下部とで囲まれて形成されている。
【0030】
掃気ブロック20の通路上壁部22は、掃気開口部18の上縁部に沿って挿入され、径方向内端22aがシリンダ1の周壁内面と面一に位置決めされている。したがって、第1掃気口13aの上端部は掃気ブロック20の通路上壁部22により形成されている。掃気ブロック20の第1仕切壁部23は、導入通路下流部16bと第1掃気通路13の上部とを区画しており、第1ガイド壁部25の下端とシリンダ1の開口周壁18bの下部との間に、導入通路下流部16b内の空気を第1掃気通路13に導入する導入孔31が形成されている。したがって、主としてクランク室2a内の混合気Mを燃焼室1aに供給する第1掃気通路13の上部には、ピストン7が上昇する吸気工程時に導入通路16を流れる空気Aの一部が導入孔31を通って導入される。なお、導入孔31は無くてもよい。
【0031】
図7に示すように、第2掃気通路14は、シリンダ1の内周面に開口する第2掃気口14aと、この第2掃気口14aからシリンダ1の下端を越えてクランクケース2の中間高さにある、クランク軸受81の外側面に達する上下方向の連通路14bとを有している。連通路14bの下端は、軸受81の内外輪間の隙間、およびクランクウェブ84と軸受81間の隙間を通って、クランク室2aに連通している。この第2掃気通路14の外方側には、
図6の導入通路下流部16bが延びており、この導入通路下流部16bは、掃気ブロック20のカバー21と通路上壁部22の外側半部と第2ガイド壁部26とシリンダ1の開口周壁18bの下部とで囲まれて形成されている。
【0032】
このようにして、
図3の掃気開口部18の周壁18bと第1仕切壁部23との間に導入通路上流部16aが形成され、
図5(b)の通路上壁部22における中間部、つまり第1および第2仕切壁部23,24(
図7)の径方向外端23e,24eに対応する部位から、通路上壁部22の径方向外端22e、すなわち、カバー21の内面にかけての外側半部22dの下側に、導入通路下流部16bが形成されている。
【0033】
図7の第2掃気通路14においても、掃気開口部18に挿入された掃気ブロック20の通路上壁部22は、その径方向内端22aがシリンダ1の周壁内面と面一に位置決めされている。したがって、第2掃気口14aの上端部は掃気ブロック20の通路上壁部22により形成されている。掃気ブロック20の第2仕切壁部24は、第1掃気通路13(
図6)の上部と第2掃気通路14の上部とを区画しており、第2ガイド壁部26の下端とシリンダ1との間に、導入通路下流部16bを第2掃気通路14に連通させる連通口32が形成されている。これにより、第2掃気通路14には、吸気工程時に導入通路16を流れる空気Aが連通口32を通って導入される。
【0034】
つまり、
図3に示すように、第1仕切壁部23と第2仕切壁部24との間に第1掃気通路13の上部が形成され、第2仕切壁部24とシリンダ1の内周壁との間に第2掃気通路14の上部が形成されている。これら第1および第2仕切壁部23,24を掃気ブロック20に一体形成することにより、第1および第2掃気通路13,14の上部を容易に設けられる。
図2に示すように、インシュレータ9における空気通路10の下流側出口には、これに連らなる導入通路16の圧力が所定値以下に低下したときに、空気通路10を閉じるリードバルブ15が取り付けられている。
【0035】
次に、以上の構成としたエンジンの作用について説明する。
図7に示すように、吸気行程においてシリンダ1内のピストン7が上死点付近に至り、シリンダ1やクランク室2aの内部が負圧状態のときに、混合気Mがシリンダ1の内周面に開口する混合気口11aからクランク室2a内へと直接導入される。この導入された混合気Mにより、
図2の大端部軸受86や小端部軸受87が潤滑される。このとき、クランク室2aに直接連通する第1掃気通路13と、軸受81を介してクランク室2aに連通している第2掃気通路14とが共に負圧になるので、この第1および第2掃気通路13,14に連らなる導入通路16が負圧になって、インシュレータ9の空気通路10の出口に取り付けたリードバルブ15が開放され、前記空気通路10からの空気Aが、
図3の導入通路16から導入孔31および連通口32を通って第1および第2掃気通路13,14に一旦導入される。このように、吸気行程において
図2のクランク室2aの負圧を受けてリードバルブ15が開放しているときは、第2掃気通路14内に加えて第1掃気通路13内にも空気Aが導入されるため、混合気Mの吹き抜け防止用の十分な空気量が確保される。
【0036】
つづいて、掃気行程では、
図3に示すように、第1掃気通路13および第2掃気通路14の第1、第2掃気口13a,14aから空気Aが燃焼室1a内に先に導入されるとともに、混合気通路11(
図2)からクランク室2a内に導入されている混合気Mが第1掃気通路13を介して第1掃気口13aから燃焼室1a内に噴出される。このとき、まず、第1掃気口13aおよび第2掃気口14aから空気Aが噴出され、少し遅れて第1掃気口13aから混合気Mが噴出されるようになっており、しかも、空気Aの方が混合気Mよりも排気口12a寄りから燃焼室1aに導入されるので、先に導入された空気Aにより、排気口12aからの前記混合気Mの吹き抜けを防止できる。第1掃気口13aからの空気Aの噴出量は第2掃気口14aに比べて少なく、第1掃気口13aは主として混合気Mを燃焼室1a内に供給する。第2掃気口14aからは主として空気Aが燃焼室1a内に供給され、空気Aに続いて少量の混合気Mが燃焼室1a内に供給されることもある。このとき、
図6に示すガイド面25aおよび
図7に示すガイド面26aにより、混合気Mおよび空気Aが燃焼室1aの上部に向かって噴出されるので、燃焼室1a内に混合気Mおよび空気Aが効率よく充填される。
【0037】
この実施形態の2サイクルエンジンでは、
図5(a)に示す掃気ブロック20が、
図5(b)および
図5(c)に示す導入通路16を外側方から覆うカバー21と、第1掃気通路13および第2掃気通路14の上部をそれぞれ形成する通路上壁部22と、導入通路16の一部を形成する第1および第2仕切壁部23,24とを一体に備えている。したがって、この掃気ブロック20の取り付け前の
図6に示すシリンダ1は、掃気ブロック20を嵌め込むための掃気開口部18が外部に露出している。これにより、この掃気開口部18を通し、掃気開口部18の径方向内端部、つまり、第1および第2掃気口13a,14aの径方向内端縁に径方向外方からアクセスできるので、製造時の型抜き工程後に掃気開口部18の縁部などに発生したバリを良好な作業性で容易に除去することができる。
【0038】
また、上述のように多くの部材が一体形成された掃気ブロック20は形状の大きなものとなるから、この掃気ブロック20を嵌め込むシリンダ1の掃気開口部18も大きな開口面積となり、これによってもバリの除去作業が一層容易となる。しかも、
図3に示すシリンダ1と掃気ブロック20との間で、空気通路10からの空気Aを導入通路16を介して第1および第2掃気通路13,14に導入する構造となっているので、空気をピストンの外周に設けられた凹部を介して掃気通路に導く構造(特許文献2)に比べて、簡素化された構造となるから、安価に製造できる。
【0039】
また、
図3から明らかなように、導入通路16が第1掃気通路13の径方向外側を通って第2掃気通路14に連通しているので、導入通路16の一部を掃気ブロック20に容易に一体形成することができる。しかも、この掃気ブロック20の形状変更により導入通路16の通路面積を任意に設定することができ、これよって空気通路10から第2掃気通路14に導入する空気量を容易に調整することができる。
【0040】
また、導入通路16が第1掃気通路13の径方向外側を通る構造になっているので、掃気ブロック20における掃気通路13,14の通路壁の一部を形成する仕切壁部23,24とシリンダ1との間に、導入通路16内の空気Aを第1掃気通路13にも導入する導入孔31を容易に形成することができる。これにより、導入通路16から第1掃気通路13内に導入された空気Aにより混合気Mの吹き抜け防止用の十分な空気量が確保される。
【0041】
図8は本発明の第2実施形態に係る2サイクルエンジンの掃気ブロック20を取り外した状態の斜視図である。この実施形態では、掃気ブロック20の通路上壁部22の先端部分、つまり、径方向内端22aの近傍部分に上方に突出した第1段差部22bが形成され、シリンダ1に掃気ブロック20を取り付けた正面断面図である
図9に示すように、シリンダ1における燃焼室1aに開口する第1掃気口13aの上縁の径方向外側部分に、前記第1段差部22bを当接させる上方に凹入した第2段差部1bが形成されている。
【0042】
第1実施形態のエンジンでは、
図5(a)に示す掃気ブロック20の取付孔27とこれに挿通されるボルト30(
図3)との間の僅かな隙間や掃気ブロック20およびシリンダ1の寸法誤差等により、掃気ブロック20を
図6のシリンダ1に取り付けたとき、通路上壁部22の径方向内端22aの上下方向位置が、前記隙間または寸法誤差の分だけばらつく。それにより、掃気行程での下降するピストン7によって第1掃気口13aが開き始めるタイミングにばらつきが生じる。
【0043】
これに対し、第2実施形態のエンジンでは、
図9の燃焼室1aに開口する第1掃気口13aの上縁が前記シリンダ1の周壁における掃気口上縁部13aaにより形成されているので、掃気ブロック20の通路上壁部22の径方向内端22aの上下方向位置にばらつきが生じても、これに影響されることなく、第1掃気口13aが開口され始めるタイミングは、第1掃気口13aの上縁部13aaにより一義的に決定され,ばらつきが極力抑制される。第2掃気口14についてもこれと同様である。
【0044】
図10は本発明の第3実施形態に係る2サイクルエンジンにおけるシリンダ1、掃気ブロック20Aおよびカバー21を分解状態で示す斜視図である。この実施形態では、掃気ブロック20Aとカバー21が一体ではなく、別体に形成されている。カバー21は板状である。掃気ブロック20Aはシリンダ1の掃気開口部18に嵌合されて、第1の取付手段であるスプリングピン62によりシリンダ1に取り付けられ、カバー21は掃気開口部18の径方向外端面60に第2の取付手段であるボルト64,64により着脱自在に取り付けられる。掃気ブロック20Aの通路上壁部22の上面に、径方向外縁22eから径方向内方に向かって延びる第1係合溝66が形成されている。
【0045】
図11の下方斜視図に示すように、掃気ブロック20Aは、第2実施形態の掃気ブロック20とほぼ同一形状であり、径方向に延びる通路上壁部22と、この通路上壁部22におけるカバー21(
図10)から離間した径方向内端部22aから中間部にかけての内側半部22cからそれぞれ下方に延びる第1仕切壁部23および第2仕切壁部24と、通路上壁部22の下面から下方に延び、かつ第1仕切壁部23および第2仕切壁部24の各々の上部側面に連なる第1および第2ガイド壁部25,26とが、鋳造のような型成形により一体形成されている。ガイド壁部25,26は、第1仕切壁部23および第2仕切壁部24の高さよりも短い上下方向の長さを有し、これの下端部から先端(内端)に向け斜め上方に傾斜するガイド面25a,26aを有している。また、掃気ブロック20Aの通路上壁部22の先端部分、つまり、径方向内端部22aの近傍部分に上方に突出した第1段差部22bが形成されている。
【0046】
図12に示すように、シリンダ1の掃気開口部18の内周面の一部を形成する開口上面における第1係合溝66に対応する位置に、第2係合溝68が形成されており、掃気ブロック20Aをシリンダ1の掃気開口部18の内側に嵌合したとき、これら第1および第2係合溝66,68により横断面円形状の係合孔70が形成されている。この係合孔70にスプリングピン62を打ち込んで掃気ブロック20Aをシリンダ1の掃気開口部18の内側に取り付ける。このとき、掃気ブロック20Aは掃気開口部18の内周面との間にほとんど隙間のない状態で、掃気開口部18内に嵌合されて、シリンダ1の周方向および軸方向に正確に位置決めされる。つづいて、カバー21の内面21a(
図10)を、掃気開口部18の端面60に当接させた状態で、ボルト64,64をカバー21の取付孔27,27に挿通し、掃気開口部18の周壁18bに設けたねじ孔18c,18cにねじ込むことで、カバー21をシリンダ1に取り付ける。掃気ブロック20Aの径方向外端面74は、掃気開口部18の径方向外端面60よりも若干径方向内方寄りに位置しており、したがって、カバー21の内面21a(
図10)との間に隙間が形成されている。
【0047】
この実施形態では、第1の取付手段としてスプリングピン62を利用したが、接着剤または点溶接により、掃気ブロック20Aをシリンダ1の掃気開口部18に取り付けてもよい。また、カバー21にねじ孔を形成し、このねじ孔にねじ体をねじ込んでねじ体の先端を掃気ブロック20Aの径方向外端面(外側面)に当接させて押圧することで、掃気ブロック20Aを掃気開口部18内に取り付けることもできる。第3実施形態によれば、掃気ブロック20Aとカバー21とが別体で形成されているから、形状や設計方法等の掃気ブロック20Aの設計上の自由度が増す。
【0048】
なお、本発明は、以上の実施形態で示した内容に限定されるものではなく、本発明の要
旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。