【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段(手段1)としては、包囲されて形成された内部領域に混合流路を有するケーシングと、気体状の第1原料を前記ケーシング内の前記混合流路に導入する第1原料導入管と、液体状の第2原料を前記ケーシング内の前記混合流路に導入する第2原料導入管と、前記混合流路内の前記第2原料を加熱して気化させる加熱部と、前記混合流路から前記第1原料及び前記第2原料を前記ケーシング外に導出する導出管とを有し、前記混合流路において前記第1原料及び前記加熱部によって気化された前記第2原料を混合して燃料電池の発電反応に利用される混合ガスを生成する原料混合器を備える燃料電池用原料供給装置であって、前記第1原料導入管の内端側及び前記第2原料導入管の内端側は、それぞれ前記混合流路に開口する開口部を有しており、前記混合ガスは、前記混合流路に沿って前記導出管側に流れるものであり、前記混合ガスが流れる方向に対して、前記第2原料導入管の開口部が、前記第1原料導入管の開口部の後方に配置されて
おり、前記第2原料導入管の開口部は、前記混合流路に沿って前記導出管側に向けて前記混合ガスが流れる方向とは反対方向に開口していることを特徴とする燃料電池用原料供給装置がある。
また、上記課題を解決するための手段(手段3)としては、包囲されて形成された内部領域に混合流路を有するケーシングと、気体状の第1原料を前記ケーシング内の前記混合流路に導入する第1原料導入管と、液体状の第2原料を前記ケーシング内の前記混合流路に導入する第2原料導入管と、前記混合流路内の前記第2原料を加熱して気化させる加熱部と、前記混合流路から前記第1原料及び前記第2原料を前記ケーシング外に導出する導出管とを有し、前記混合流路において前記第1原料及び前記加熱部によって気化された前記第2原料を混合して燃料電池の発電反応に利用される混合ガスを生成する原料混合器を備える燃料電池用原料供給装置であって、前記第1原料導入管の内端側及び前記第2原料導入管の内端側は、それぞれ前記混合流路に開口する開口部を有しており、前記混合ガスは、前記混合流路に沿って前記導出管側に流れるものであり、前記混合ガスが流れる方向に対して、前記第2原料導入管の開口部が、前記第1原料導入管の開口部の後方に配置されており、前記第1原料導入管が前記混合流路に沿って前記導出管側に向けて前記混合ガスが流れる方向と同じ方向に延びるとともに、前記第2原料導入管が前記第1原料導入管に直交する方向に延びていることを特徴とする燃料電池用原料供給装置がある。
【0009】
手段1
,3に記載の発明によると、混合ガスが流れる方向において、液体状の第2原料が流れる第2原料導入管の開口部が、気体状の第1原料が流れる第1原料導入管の開口部よりも後方に配置されている。このため、混合流路に導入された第2原料が加熱部によって気化されて膨張したとしても、混合流路に導入された第1原料が第2原料に押されて第1原料導入管内に逆流することを回避できる。その結果、第1原料の供給が安定するため、第1原料と第2原料とを混合して混合ガスを安定して生成することができる。しかも、膨張した第2原料の進行方向が混合ガスが流れる方向と同一になることにより、混合ガスが第2原料に押されて導出管側に流れるようになるため、混合ガスの供給が安定するようになる。ゆえに、燃料電池での発電を安定させることができる。
【0010】
なお、燃料電池用原料供給装置が備える原料混合器は、気体状の第1原料をケーシング内の混合流路に導入する第1原料導入管と、液体状の第2原料をケーシング内の混合流路に導入する第2原料導入管とを有する。ここで、気体状の第1原料としては、例えば、炭化水素ガス、不活性ガス、水蒸気などが挙げられる。第1原料として炭化水素ガスを選択した場合、炭化水素ガスの種類は特に限定されないが、例えば、天然ガス、ナフサ、石炭ガス化ガス等であることが好ましい。また、第1原料として不活性ガスを選択した場合、不活性ガスの種類は特に限定されないが、例えば、窒素、アルゴン等であることが好ましい。なお、1種類の第1原料のみを用いてもよく、複数種類の第1原料を併用してもよい。また、第2原料と同じ原料を気化したものを第1原料として用いてもよく、複数種類の第2原料を気化したものを用いることもできる。
【0011】
一方、液体状の第2原料としては、例えば、液状炭化水素、液状アルコール、水などが挙げられる。第2原料として液状炭化水素を選択した場合、液状炭化水素の種類は特に限定されないが、例えば、ヘキサン、1−ヘキセン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、ベンゼン等であることが好ましい。また、第2原料として液状アルコールを選択した場合、液状アルコールの種類は特に限定されないが、例えば、エチルアルコール(エタノール)、メチルアルコール(メタノール)、プロピルアルコール等であることが好ましい。なお、第2原料は水であるとともに、第1原料は炭化水素ガスであることが好ましい。
【0012】
また、第1原料導入管の内端側及び第2原料導入管の内端側は、それぞれ混合流路に開口する開口部を有している。ここで、「内端側」とは、第1,第2原料導入管の内端の「端面」の他に、端面の付近の部位(端部)も含んでいる。なお、
手段1に記載の発明において、第2原料導入管の開口部は、混合流路に沿って導出管側に向けて混合ガスが流れる方向とは反対方向に開口してい
る。このようにすれば、第2原料の導入方向が、混合ガスが流れる方向とは反対方向になるため、第1原料導入管の開口部と第2原料導入管の開口部とを最大限に離間させることが可能となる。ゆえに、混合流路に導入された第2原料が気化されて膨張したとしても、膨張した第2原料は第1原料導入管の開口部に到達しにくくなる。その結果、第1原料が膨張した第2原料に押されて第1原料導入管内に逆流する可能性が小さくなる。よって、第1原料の供給がよりいっそう安定し、混合ガスがより確実に生成されるため、燃料電池での発電がよりいっそう安定する。なお、第2原料導入管の開口部は、第1原料導入管の開口部と同じ方向に開口していてもよい。このようにした場合、第2原料導入管を第1原料導入管と同じ形状に形成できるため、原料混合器の構造を簡略化することができる。
【0013】
また、
手段3に記載の発明では、第1原料導入管が混合流路に沿って導出管側に向けて混合ガスが流れる方向と同じ方向に延びるとともに、第2原料導入管が第1原料導入管に直交する方向に延びてい
る。このようにすれば、第1原料導入管を流れてきた第1原料が第2原料に押されたとしても、第1原料が第1原料導入管内に逆流しにくくなる。その結果、第1原料の供給がよりいっそう安定し、混合ガスがより確実に生成されるため、安定した燃料改質が可能となり、燃料電池での発電がよりいっそう安定する。
【0014】
しかも、第2原料導入管は、ケーシングの内壁から混合流路に延びる第1管部と、第1管部の先端側に連結され、混合流路に沿って導出管側に向けて混合ガスが流れる方向とは反対方向に延びる第2管部とを備え、第2原料導入管の開口部が、第2管部に形成されることが好ましい。このようにすれば、第2原料導入管が一直線上に延びる管である場合に比べて、第2原料導入管の開口部を第1原料導入管の開口部から離間させることができる。この場合、第2原料導入管の開口部から混合流路に導入された第2原料が加熱部によって気化されて膨張したとしても、膨張した第2原料が第1原料導入管の開口部に到達しにくくなるため、第1原料が第2原料に押されて第1原料導入管内に逆流しにくくなる。その結果、第1原料の供給がよりいっそう安定し、混合ガスがより確実に生成されるため、安定した燃料改質が可能となり、燃料電池での発電がよりいっそう安定する。
【0015】
なお、第2原料導入管は加熱部に熱伝導可能に接触していることが好ましい。このようにすれば、加熱部の熱が第2原料導入管内を流れる第2原料に伝わりやすくなる。よって、第2原料が確実に加熱されるため、第2原料を安定的に気化させることができる。さらに、第2原料導入管が第1管部と第2管部とを備える場合、第1管部が加熱部から離間する一方、第2管部が加熱部に熱伝導可能に接触していることが好ましい。このようにした場合、第2原料導入管と加熱部との接触面積が小さくなるため、第2原料導入管内での第2原料の気化が最小限に抑えられる。その結果、気化されない微量の不純物が第2原料導入管内に蓄積することに起因した第2原料導入管の閉塞が防止されるため、第2原料の供給が安定し、燃料電池用原料供給装置の信頼性が向上する。
【0016】
また、加熱部は、ケーシングに熱伝導可能に接触し、燃料電池での発電反応によって加熱されて燃料電池から排出された排ガスが流れる排ガス流路構造体を備え、液体状の第2原料が、排ガス流路構造体に導入した排ガスとの間で熱交換を行うことにより、加熱されて気化されることが好ましい。このようにした場合、排ガス流路構造体を流れる排ガスの熱が第2原料の気化に用いられるため、燃料電池用原料供給装置全体の効率を向上させることができる。
【0017】
なお、第2原料導入管が、ケーシングの内壁から混合流路に延びる第1管部と、第1管部の先端側に連結され、混合流路に沿って導出管側に向けて混合ガスが流れる方向とは反対方向に延びる第2管部とを備え、第1管部が排ガス流路構造体から離間する一方、第2管部が排ガス流路構造体に熱伝導可能に接触する場合、排ガス流路構造体内の排ガスと第2管部内の第2原料とが同じ方向に流れることが好ましい。このようにした場合、第2管部が排ガス流路構造体に接触するため、第2原料を第2管部内で効率的に加熱することができる。また、排ガス流路構造体内の排ガスと第2管部内の第2原料とが同じ方向に流れるため、第2管部の内端は、排ガス流路構造体の下流部分に接触するようになる。なお、排ガス流路構造体の下流部分を流れる排ガスの温度は、上流部分を流れる排ガスの温度よりも低い。よって、第2管部の内端は、排ガスの温度が相対的に低い部分に接触するため、第2原料が第2原料導入管の内端からケーシング内に導入された際に、第2原料が急激に気化する可能性を小さくすることができる。
【0018】
また、燃料電池用原料供給装置は、原料混合器から供給された混合ガスを改質することによって水素を生成し、生成した水素を燃料電池に供給する改質器をさらに備えることが好ましい。このようにすれば、既存の第1原料及び第2原料を混合して得られた混合ガスを用いて、燃料電池の発電反応に必要な水素を得ることができる。
【0019】
なお、上記手段1において、前記ケーシングを構成する複数の壁部の少なくとも1つが、前記ケーシングの内部領域と前記ケーシングに隣接する前記加熱部とを区画する区画壁である場合には、前記区画壁に前記第2原料導入管を熱伝導可能に接触させることができる。
【0020】
さらに、複数の壁部の少なくとも1つが区画壁である場合には、前記ケーシングの高さ方向の長さを、前記ケーシングの横方向の長さよりも短く設定し、前記ケーシングの下側に、前記加熱部を前記区画壁を介して配置することもできる。
【0021】
また、前記第2原料導入管が、前記ケーシングの内壁から前記混合流路に延びる第1管部と、前記第1管部の先端側に連結され、前記第1管部内を流れてきた前記第2原料の進行方向を変更させる方向に延びる進行方向変更部と、前記進行方向変更部の先端側に連結され、前記混合流路に沿って前記導出管側に向けて前記混合ガスが流れる方向とは反対方向に延びる第2管部とを備える場合には、前記第1管部を前記加熱部から離間させる一方、前記第2管部を前記加熱部に接触させることができる。なお、この場合、前記第1管部の長さを、前記第2管部の長さよりも長くすることもできる。
【0022】
上記課題を解決するための別の手段(手段2)としては、上記手段1
または3に記載の燃料電池用原料供給装置と、前記燃料電池を構成し、電解質層と、前記電解質層の両側に配置される燃料電極層及び空気電極層とを有する発電セルを備え、前記発電セルでの発電反応により電力を発生する燃料電池スタックと、熱交換媒体と、前記燃料電池での発電反応後に前記燃料電池から排出され
た排ガスとの間で熱交換を行う排ガス熱交換装置とを備えたことを特徴とする燃料電池システムがある。
【0023】
手段2に記載の発明によると、燃料電池用原料供給装置が備える原料混合器では、混合ガスが流れる方向において、液体状の第2原料が流れる第2原料導入管の開口部が、気体状の第1原料が流れる第1原料導入管の開口部よりも後方に配置されている。このため、混合流路に導入された第2原料が加熱部によって気化されて膨張したとしても、混合流路に導入された第1原料が第2原料に押されて第1原料導入管内に逆流することを回避できる。その結果、第1原料の供給が安定するため、第1原料と第2原料とを混合して混合ガスを安定して生成することができる。しかも、膨張した第2原料の進行方向が混合ガスが流れる方向と同一になることにより、混合ガスが第2原料に押されて導出管側に流れるようになるため、混合ガスの供給が安定するようになる。ゆえに、燃料電池での発電を安定させることができる。従って、信頼性が高い燃料電池用原料供給装置を備えた好適な燃料電池システムを提供することができる。
【0024】
ここで、燃料電池としては、例えば、ZrO
2系セラミックなどを電解質とする固体酸化物形燃料電池(SOFC)、高分子電解質膜を電解質とする固体高分子形燃料電池(PEFC)、Li−Na/K系炭酸塩を電解質とする溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)、リン酸を電解質とするリン酸形燃料電池(PAFC)などの燃料電池が挙げられる。なお、燃料電池の稼動温度(即ち、イオンが電解質中を移動可能となる温度)は、燃料電池の種類ごとに異なっている。具体的に言うと、SOFCの稼動温度は700℃〜1000℃程度、PEFCの稼動温度は常温〜90℃程度、MCFCの稼動温度は650℃〜700℃程度、PAFCの稼動温度は150℃〜200℃程度である。
【0025】
また、燃料電池システムを構成する燃料電池スタックは発電セルを備えている。燃料電池がSOFCである場合、発電セルを構成する電解質層(固体酸化物層)の形成材料としては、例えばZrO
2系セラミック、LaGaO
3系セラミック、BaCeO
3系セラミック、SrCeO
3系セラミック、SrZrO
3系セラミック、CaZrO
3系セラミックなどがある。
【0026】
さらに、発電セルを構成する燃料電極層は、発電セルにおける負電極として機能する。ここで、燃料電極層の形成材料としては、例えば、希土類元素(Sc、Yなど)により安定化されたZrO
2系セラミック、及び、希土類元素(Sm、Gdなど)をドープしたCeO
2系セラミック等のうち、少なくとも1つのセラミック材料と、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru、Rh、Ni、Fe等の金属材料及びそれら金属材料の合金のうちの少なくとも1つと、を混合した金属セラミック材料の混合物(サーメット)を使用することができる。
【0027】
発電セルを構成する空気電極層は、発電セルにおける正電極として機能する。ここで、空気電極層の形成材料としては、例えば、金属材料、金属の酸化物、金属の複合酸化物などを挙げることができる。金属材料の好適例としては、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru、Rh等やそれらの合金などがある。金属の酸化物の好適例としては、例えば、La、Sr、Ce、Co、Mn、Feの酸化物(La
2O
3、SrO、Ce
2O
3、Co
2O
3、MnO
2、FeO)などがある。金属の複合酸化物の好適例としては、例えば、La、Pr、Sm、Sr、Ba、Co、Fe、Mnを含有する複合酸化物(La
1−xSr
xCoO
3系複合酸化物、La
1−xSr
xFeO
3系複合酸化物、La
1−xSr
xCo
1−yFe
yO
3系複合酸化物、La
1−xSr
xMnO
3系複合酸化物、Pr
1−xBa
xCoO
3系複合酸化物、Sm
1−xSr
xCoO
3系複合酸化物)などがある。